特許第6350165号(P6350165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350165
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】フライアッシュの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/08 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   C04B18/08
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-190749(P2014-190749)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-60673(P2016-60673A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆政
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−85011(JP,A)
【文献】 特開2007−269549(JP,A)
【文献】 実開平7−41228(JP,U)
【文献】 特開2001−121084(JP,A)
【文献】 特開平8−266830(JP,A)
【文献】 特開平7−155740(JP,A)
【文献】 特開平6−233971(JP,A)
【文献】 特開2008−239403(JP,A)
【文献】 特開2008−070222(JP,A)
【文献】 特開2009−025191(JP,A)
【文献】 特開平10−281438(JP,A)
【文献】 特開平04−326951(JP,A)
【文献】 特公平02−049264(JP,B2)
【文献】 特開平04−002644(JP,A)
【文献】 特開平11−139859(JP,A)
【文献】 特開2007−222800(JP,A)
【文献】 特開2010−105854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭燃焼装置から排出されるフライアッシュをセメント原料に利用するためのフライアッシュの処理方法であって、
前記フライアッシュを分級装置により、原炭が持つ二酸化ケイ素の含有率と同等の二酸化ケイ素の含有率を有する粒子径が8μmより大径の固体粒子と、原炭が持つ蒸発成分よりも高い含有率の蒸発・再凝集成分を含有し前記固体粒子よりも小径で粒子径が8μm以下の蒸発・再凝集粒子とに分級し、
前記蒸発・再凝集粒子の一部を除去することで、他の蒸発・再凝集粒子と前記固体粒子からなる調整粒子の二酸化ケイ素の含有率を、45重量%以上の設定含有率に調整して保持することを特徴とするフライアッシュの処理方法。
【請求項2】
前記分級装置には、低圧分級装置を用いたことを特徴とする請求項に記載のフライアッシュの処理方法。
【請求項3】
前記分級装置には、複数段のサイクロンを備えたサイクロン分級装置を用いたことを特徴とする請求項に記載のフライアッシュの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュの処理方法に関し、特に石炭燃焼装置からのフライアッシュの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粉炭ボイラ等の石炭燃焼装置からは排ガスと共に大量のフライアッシュが排出される。このフライアッシュは排ガスから分離され、分離したフライアッシュはセメント原料として利用することが行われている。このように、フライアッシュをセメント原料として利用することは、資源の有効活用を図るうえで好ましい。
【0003】
しかし、石炭燃焼装置から排出されるフライアッシュは、全てがセメント原料として利用できるわけではなく、フライアッシュに含まれる二酸化ケイ素[SiO2]の含有率が重量ベースで45%以上でなければならないと規定されている。
【0004】
従って、フライアッシュに含まれる二酸化ケイ素[SiO2]の含有率が重量ベースで45%以下の場合には、セメント原料として利用することはできないため、埋立て処分することになるが、フライアッシュは強いアルカリ性を示すために成分調整を行った後に埋立て処分する必要があり、処分するのにも手数と費用が掛かるという問題がある。
【0005】
石炭灰(フライアッシュ)を起源とする材料を多量に含有したフライアッシュコンクリートがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−059759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にはフライアッシュコンクリートが記載されているが、セメント原料として利用可能なフライアッシュをどのように調整し、それによってセメント原料に対するフライアッシュの利用可能性を高めることについては全く記載されていない。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、セメント原料に利用可能なフライアッシュを簡単に増加できるようにしたフライアッシュの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、石炭燃焼装置から排出されるフライアッシュをセメント原料に利用するためのフライアッシュの処理方法であって、
前記フライアッシュを分級装置により、原炭が持つ二酸化ケイ素の含有率と同等の二酸化ケイ素の含有率を有する粒子径が8μmより大径の固体粒子と、原炭が持つ蒸発成分よりも高い含有率の蒸発・再凝集成分を含有し前記固体粒子よりも小径で粒子径が8μm以下の蒸発・再凝集粒子とに分級し、
前記蒸発・再凝集粒子の一部を除去することで、他の蒸発・再凝集粒子と前記固体粒子からなる調整粒子の二酸化ケイ素の含有率を、45重量%以上の設定含有率に調整して保持することを特徴とするフライアッシュの処理方法、に係るものである。
【0011】
又、上記フライアッシュの処理方法において、前記分級装置には、低圧分級装置を用いることができる。
【0012】
又、上記フライアッシュの処理方法において、前記分級装置には、複数段のサイクロンを備えたサイクロン分級装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のフライアッシュの処理方法によれば、フライアッシュの成分を調整してセメント原料に利用可能なフライアッシュを簡単に増加できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るフライアッシュの処理方法の一実施例を示すフローシートである。
図2】(a)は分級装置の一例である低圧分級装置の構成を示す説明図、(b)は分級装置の他の例であるサイクロン分級装置の構成を示す説明図である。
図3図2(a)の低圧分級装置で分離したフライアッシュの主な成分と重量%との関係を示すグラフである。
図4図2の分級装置で分級した蒸発・再凝集粒子の一部を除去した場合におけるフライアッシュの主な成分の重量%が変化した状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0016】
図1は本発明に係るフライアッシュの処理方法の一実施例を示すフローシートである。図1に示すように、微粉炭ボイラ1aからなる石炭燃焼装置1の排ガス2は、節炭器3により冷却された後、分級装置4に導かれてフライアッシュを除去する。続いて、排ガス2は脱硝装置5に導かれて脱硝され、更に電気集塵機6により微粉7を除去されることにより、清浄なガスとして排気される。前記微粉炭ボイラ1aの底部からは、クリンカアッシュ8が取り出される。
【0017】
前記分級装置4においては、前記排ガス2に含まれるフライアッシュを、例えば図1及び図3も参照して示すように、原炭が持つ二酸化ケイ素の含有率と同等の二酸化ケイ素の含有率を有する粒子径が8μmよりも大径の固体粒子Aと、原炭が持つ蒸発成分よりも高い含有率の蒸発・再凝集成分を含有し前記固体粒子Aよりも小径(8μm以下)の蒸発・再凝集粒子Bとに分級するようにしている。
【0018】
図2(a)は前記分級装置4の一例を示したもので、低圧分級装置9(LPI:Low Pressure Impactor)の場合を示している。低圧分級装置9は、吸引口10からフライアッシュを含む排ガス2を吸引するようになっており、吸引されたフライアッシュは、コロナチャージャ11で荷電された後、ノズル12を通って複数段のインパクタ13a、13b、13cに順次導入される。フライアッシュは各インパクタ13a、13b、13cのステージ14に衝突して捕集されるようになっている。15は吸引装置である。
【0019】
前記インパクタ13a、13b、13cに排ガス2を導入するノズル12の口径は、前段側が大きく、後段側に向かって小さくなり、後段になるほど排ガス2の流速が高められるようになっている。これにより、前段ではフライアッシュの大きい粒子が分離され、後段ではフライアッシュの小さい粒子が分離されるようになっている。
【0020】
図2(b)は前記分級装置4の他の例を示したもので、サイクロン分級装置18の場合を示している。このサイクロン分級装置18は、第1のサイクロン16と、該第1のサイクロン16よりも小径を有して第1のサイクロン16の後段に配置される第2のサイクロン17を有しており、第2のサイクロン17では、第1のサイクロン16よりも排ガスを高速で回転させて小径の粒子を分離できるようになっている。
【0021】
従って、図2(b)に示すサイクロン分級装置18においても、排ガス2に含まれるフライアッシュを、原炭が持つ二酸化ケイ素の含有率と同等の二酸化ケイ素の含有率を有する粒子径が8μmよりも大径の固体粒子Aと、原炭が持つ蒸発成分よりも高い含有率の蒸発・再凝集成分を含有し前記固体粒子Aよりも小径(8μm以下)の蒸発・再凝集粒子Bとに分離することができる。
【0022】
図3は、図2(a)に示した低圧分級装置9を用いて第1段のインパクタ13aと、第2段のインパクタ13bと、第3段のインパクタ13cの各ステージ14によって分離されたフライアッシュの主な成分と重量%の関係を示している。図3に示すように、第1段のインパクタ13aでは8μmよりも大径の粒子が分離され、第2段のインパクタ13bでは2〜8μmの粒子が分離され、第3段のインパクタ13cでは2μmよりも小径の粒子が分離された。
【0023】
ここで、第1段のインパクタ13aで分離された8μmよりも大径の粒子には、原炭が持つ二酸化ケイ素[SiO2]の含有率である42重量%と同等の含有率である40重量%の二酸化ケイ素[SiO2]を含有する固体粒子Aであることが判明した。一方、第2段のインパクタ13bで分離された2〜8μmの粒子、及び、第3段のインパクタ13cで分離された2μmよりも小径の粒子には、原炭が持つ酸化カルシウム[CaO]等の蒸発成分よりも高い含有率の蒸発・再凝集成分を持つ蒸発・再凝集粒子Bであることが判明した。
【0024】
微粉炭ボイラ1aから排出されるフライアッシュをセメント原料に利用するためには、二酸化ケイ素[SiO2]の含有率が重量ベースで45%以上を保持していなければならないが、石炭の産地等によっては、フライアッシュに含まれる二酸化ケイ素[SiO2]の含有率は45重量%以下のものが多く存在している。即ち、図3に示される原炭の二酸化ケイ素[SiO2]の含有率は約42重量%であり、セメント原料に利用できる45重量%以上を満たしていないことが分かる。
【0025】
ここで、本発明では、分級装置4で分級されたフライアッシュの全体量に対して、例えば10%、或いは、20%の除去量になるように、前記蒸発・再凝集粒子Bの一部を除去することを行った。このように蒸発・再凝集粒子Bの一部を除去した場合における残りの蒸発・再凝集粒子Bと固体粒子Aからなるフライアッシュの成分の重量%の変化を図4に示した。
【0026】
図3に示したように、除去する粒子径が8μm以下の蒸発・再凝集粒子Bは、二酸化ケイ素[SiO2]の含有率が原炭よりも低いため、この蒸発・再凝集粒子Bの一部を除去すると、図4に示すように、必然的に残留する他の蒸発・再凝集粒子Bと前記固体粒子Aからなる調整粒子の二酸化ケイ素[SiO2]の含有率は増加することになる。
【0027】
従って、前記蒸発・再凝集粒子Bを除去する量を調節することで、図4に示すように、回収したフライアッシュの二酸化ケイ素[SiO2]の含有率がセメント原料として利用可能な設定含有率Kである45重量%以上を満たすように調整することができる。
【0028】
本発明者の試験によれば、図3に示すフライアッシュの場合には、図4に示すように、分級装置4によって回収されるフライアッシュの全体量から10%程度の蒸発・再凝集粒子Bを除去することで、セメント原料として十分利用可能であることが判明した。
【0029】
従って、本発明によれば、回収されるフライアッシュから所定量の蒸発・再凝集粒子Bを除去することにより、従来、セメント原料に利用できなかったような二酸化ケイ素[SiO2]の含有率が低いフライアッシュにおいても、セメント原料に有効に利用できるようになる。
【0030】
前記したように、蒸発・再凝集粒子Bを除去する量を調節することにより、回収されるフライアッシュの二酸化ケイ素の含有率が45重量%以上の設定含有率Kに保持されるように容易に調整することができる。
【0031】
前記分級装置4に用いられる低圧分級装置9によれば、精度の高い分級が可能になる。
【0032】
前記分級装置4に用いられるサイクロン分級装置18によれば、簡略な構成によって大量の排ガスからフライアッシュを分離することができる。
【0033】
尚、本発明のフライアッシュの処理方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 石炭燃焼装置
4 分級装置
9 低圧分級装置
16 サイクロン
17 サイクロン
18 サイクロン分級装置
A 固体粒子
B 蒸発・再凝集粒子
図1
図2
図3
図4