特許第6350239号(P6350239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6350239干渉型光ファイバセンサシステム及び干渉型光ファイバセンサヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350239
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】干渉型光ファイバセンサシステム及び干渉型光ファイバセンサヘッド
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20180625BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01D5/353 A
   G01H9/00 C
   G01H9/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-236639(P2014-236639)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-99242(P2016-99242A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 節文
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−135737(JP,A)
【文献】 特開平09−196775(JP,A)
【文献】 特開平10−300566(JP,A)
【文献】 特開2000−162057(JP,A)
【文献】 特開昭56−112608(JP,A)
【文献】 特開平09−196748(JP,A)
【文献】 特開平04−309812(JP,A)
【文献】 特開平10−030955(JP,A)
【文献】 特開2005−241298(JP,A)
【文献】 特許第3107986(JP,B2)
【文献】 欧州特許出願公開第00242894(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/353
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源と光学的に接続された第1カプラと、
前記第1カプラと光学的に接続され、前記第1カプラから分岐された測定光及び参照光の一方を入力する第1光経路と、
前記第1カプラと光学的に接続され、前記測定光及び前記参照光の他方を入力する第2光経路と、
前記第1光経路及び前記第2光経路を結合する第2カプラと、
前記第2カプラによって結合された光に基づいて、前記測定光及び前記参照光の変調を計測する計測部と、
加えられた応力によって前記測定光及び前記参照光を変調させる変調部と、を備え、
前記第1光経路における光学長と前記第2光経路における光学長とは互いに等しく、
前記変調部は、共通の芯に巻かれた前記第1光経路及び前記第2光経路を含むコイルであり、
前記コイルに加えられた応力によって前記測定光及び前記参照光の一方に与えられる変調のタイミングと、他方に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっており、
前記計測部は、前記変調部によって変調された前記測定光及び前記参照光による干渉光の強度変動を計測する、
干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項2】
前記第2カプラから出力した光が通る経路は、前記第2カプラから延びると共に前記第2カプラに戻るループ状となっている、
請求項1に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項3】
前記第1光経路及び前記第2光経路の少なくとも一方に遅延線が設けられる、
請求項1又は2に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項4】
光源と、
前記光源と光学的に接続されて2つの分岐端を有するカプラと、
一端が前記カプラの一方の分岐端に接続され、他端が前記カプラの他方の分岐端に接続され、前記カプラから出力された信号光を入力する光経路と、
前記カプラによって結合された光に基づいて、前記信号光の変調を計測する計測部と、
加えられた応力によって前記信号光を変調させる変調部と、を備え、
前記変調部は、前記光経路を含むコイルであり、
前記光経路は、前記コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、前記第1巻き付け部とは別の箇所で前記芯に巻かれた第2巻き付け部と、を有し、
前記第1巻き付け部を通る前記信号光に与えられる変調のタイミングと、前記第2巻き付け部を通る前記信号光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている、
干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項5】
前記カプラにおける光の分岐比は、a:1である、
請求項4に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
ただし、aは1ではない正の実数。
【請求項6】
前記応力は、音響波として伝搬する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項7】
入力端、出力端及び2つの分岐端を有するカプラと、
一端が前記2つの分岐端の一方に接続され、他端が前記2つの分岐端の他方に接続された光経路と、
前記光経路が巻かれるコイルと、を備え、
前記光経路は、前記コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、前記第1巻き付け部とは別の箇所で前記芯に巻かれた第2巻き付け部と、前記第1巻き付け部と前記第2巻き付け部との間に設けられるループ部と、を有し、
前記コイルに加えられた応力によって前記第1巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、前記応力によって前記第2巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている、
干渉型光ファイバセンサヘッド。
【請求項8】
入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第1カプラと、
入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第2カプラと、
一端が前記第1カプラの一方の前記分岐端に接続され、他端が前記第2カプラの前記入力端に接続された第3光経路と、
一端が前記第1カプラの他方の前記分岐端に接続され、他端が前記第2カプラの前記出力端に接続された第4光経路と、
前記第2カプラの一方の前記分岐端から他方の前記分岐端にまで延びるループ状の第5光経路と、
前記第3光経路及び前記第4光経路が巻かれたコイルと、を備え、
前記コイルに加えられた応力によって前記第3光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、前記応力によって前記第4光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている、
干渉型光ファイバセンサヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉型光ファイバセンサシステム及び干渉型光ファイバセンサヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センシングアームとリファレンスアームとを備えた干渉型光ファイバセンサが記載されている。センシングアーム及びリファレンスアームには、温度ドリフトを抑制するための温度補償用ファイバが設けられている。特許文献2には、第1の光ファイバコイルと第2の光ファイバコイルとを備えた干渉型光ファイバセンサが記載されている。この干渉型光ファイバセンサでは、第1の光ファイバコイルと第2の光ファイバコイルとが共通のコイルに巻かれている。このコイルは、永久磁石を挟み込むことが可能な形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241298号公報
【特許文献2】特許第3107986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された干渉型光ファイバセンサでは、温度補償用ファイバとして特殊なファイバを用いているため、製造等のコストの増加が懸念される。特許文献2に記載された干渉型光ファイバセンサでは、特殊な形状のコイルに第1及び第2の光ファイバコイルを巻き付けたものと、永久磁石と、を用意する必要がある。よって、部品点数が多く構成が複雑であるという問題がある。また、上述したような干渉型光ファイバセンサでは、測定光及び参照光の変調を確実に計測できるようにするため、環境による影響を可及的抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で環境による影響を低減させることができる干渉型光ファイバセンサシステム及び干渉型光ファイバセンサヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、光源と、光源と光学的に接続された第1カプラと、第1カプラと光学的に接続され、第1カプラから分岐された測定光及び参照光の一方を入力する第1光経路と、第1カプラと光学的に接続され、測定光及び参照光の他方を入力する第2光経路と、第1光経路及び第2光経路を結合する第2カプラと、第2カプラによって結合された光に基づいて、測定光及び参照光の変調を計測する計測部と、加えられた応力によって測定光及び参照光を変調させる変調部と、を備え、第1光経路における光学長と第2光経路における光学長とは互いに等しく、変調部は、共通の芯に巻かれた第1光経路及び第2光経路を含むコイルであり、コイルに加えられた応力によって測定光及び参照光の一方に与えられる変調のタイミングと、他方に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっており、計測部は、変調部によって変調された測定光及び参照光による干渉光の強度変動を計測する。
【0007】
本発明の他の側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、光源と、光源と光学的に接続されて2つの分岐端を有するカプラと、一端がカプラの一方の分岐端に接続され、他端がカプラの他方の分岐端に接続され、カプラから出力された信号光を入力する光経路と、カプラによって結合された光に基づいて、信号光の変調を計測する計測部と、加えられた応力によって信号光を変調させる変調部と、を備え、変調部は、光経路を含むコイルであり、光経路は、コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、第1巻き付け部とは別の箇所で芯に巻かれた第2巻き付け部と、を有し、第1巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングと、第2巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。
【0008】
また、本発明の一側面に係る干渉型光ファイバセンサヘッドは、入力端、出力端及び2つの分岐端を有するカプラと、一端が2つの分岐端の一方に接続され、他端が2つの分岐端の他方に接続された光経路と、光経路が巻かれるコイルと、を備え、光経路は、コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、第1巻き付け部とは別の箇所で芯に巻かれた第2巻き付け部と、第1巻き付け部と第2巻き付け部との間に設けられるループ部と、を有し、コイルに加えられた応力によって第1巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、応力によって第2巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。
【0009】
更に、本発明の他の側面に係る干渉型光ファイバセンサヘッドは、入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第1カプラと、入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第2カプラと、一端が第1カプラの一方の分岐端に接続され、他端が第2カプラの入力端に接続された第3光経路と、一端が第1カプラの他方の分岐端に接続され、他端が第2カプラの出力端に接続された第4光経路と、第2カプラの一方の分岐端から他方の分岐端にまで延びるループ状の第5光経路と、第3光経路及び第4光経路が巻かれたコイルと、を備え、コイルに加えられた応力によって第3光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、応力によって第4光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で環境による影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステムを示す図である。
図2図2は、第2実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステムを示す図である。
図3図3は、第3実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステムを示す図である。
図4図4は、第4実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。(1)本発明の一側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、光源と、光源と光学的に接続された第1カプラと、第1カプラと光学的に接続され、第1カプラから分岐された測定光及び参照光の一方を入力する第1光経路と、第1カプラと光学的に接続され、測定光及び参照光の他方を入力する第2光経路と、第1光経路及び第2光経路を結合する第2カプラと、第2カプラによって結合された光に基づいて、測定光及び参照光の変調を計測する計測部と、加えられた応力によって測定光及び参照光を変調させる変調部と、を備え、第1光経路における光学長と第2光経路における光学長とは互いに等しく、変調部は、共通の芯に巻かれた第1光経路及び第2光経路を含むコイルであり、コイルに加えられた応力によって測定光及び参照光の一方に与えられる変調のタイミングと、他方に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっており、計測部は、変調部によって変調された測定光及び参照光による干渉光の強度変動を計測する。
【0013】
本発明の一側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムでは、コイルに応力が加えられると測定光及び参照光が変調される。そして、測定光及び参照光の一方に与えられる変調のタイミングと他方に与えられる変調のタイミングとは互いに異なっており、変調された測定光及び参照光の一方は他方よりも遅延される。従って、計測部は、測定光と参照光とを選択的に抽出することができる。よって、簡易な構成で環境による影響を低減させることができ、計測部は測定光及び参照光の変調を確実に計測することができる。
【0014】
(2)上記の干渉型光ファイバセンサシステムでは、第2カプラから出力した光が通る経路は、第2カプラから延びると共に第2カプラに戻るループ状となっていてもよい。これにより、第2カプラから出力される光が通る光経路の本数を減らすことができ部品点数の低減に寄与する。
【0015】
(3)上記の干渉型光ファイバセンサシステムでは、第1光経路及び第2光経路の少なくとも一方に遅延線が設けられてもよい。これにより、計測部は測定光及び参照光の変調をより確実に計測することができる。
【0016】
(4)本発明の他の側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、光源と、光源と光学的に接続されて2つの分岐端を有するカプラと、一端がカプラの一方の分岐端に接続され、他端がカプラの他方の分岐端に接続され、カプラから出力された信号光を入力する光経路と、カプラによって結合された光に基づいて、信号光の変調を計測する計測部と、加えられた応力によって信号光を変調させる変調部と、を備え、変調部は、光経路を含むコイルであり、光経路は、コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、第1巻き付け部とは別の箇所で芯に巻かれた第2巻き付け部と、を有し、第1巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングと、第2巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。
【0017】
本発明の他の側面に係る干渉型光ファイバセンサシステムでは、コイルに応力が加えられると信号光が変調される。そして、第1巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングと第2巻き付け部を通る信号光に与えられる変調のタイミングとは互いに異なっており、第1巻き付け部及び第2巻き付け部の一方を通る信号光は他方を通る信号光よりも遅延される。従って、上述した干渉型光ファイバセンサシステムと同様、簡易な構成で環境による影響を低減させることができる。更に、この干渉型光ファイバセンサシステムでは、光経路を一本の経路で構成することができるので、部品点数を減らすことができる。
【0018】
(5)上記の干渉型光ファイバセンサシステムでは、カプラにおける光の分岐比は、a:1であってもよい(ただし、aは1ではない正の実数)。これにより、カプラに光を透過させる態様で干渉型光ファイバセンサシステムを構成し、変調部の縦列接続を容易に行うことができる。
【0019】
(6)上記の干渉型光ファイバセンサシステムでは、応力は、音響波として伝搬してもよい。
【0020】
(7)本発明の一側面に係る干渉型光ファイバセンサヘッドは、入力端、出力端及び2つの分岐端を有するカプラと、一端が2つの分岐端の一方に接続され、他端が2つの分岐端の他方に接続された光経路と、光経路が巻かれるコイルと、を備え、光経路は、コイルの芯に巻かれた第1巻き付け部と、第1巻き付け部とは別の箇所で芯に巻かれた第2巻き付け部と、第1巻き付け部と第2巻き付け部との間に設けられるループ部と、を有し、コイルに加えられた応力によって第1巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、応力によって第2巻き付け部を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。この干渉型光ファイバセンサヘッドでは、変調部における光経路を一本とすることができ、部品点数を減らすことができる。
【0021】
(8)本発明の他の側面に係る干渉型光ファイバセンサヘッドは、入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第1カプラと、入力端、出力端及び2つの分岐端を有する第2カプラと、一端が第1カプラの一方の分岐端に接続され、他端が第2カプラの入力端に接続された第3光経路と、一端が第1カプラの他方の分岐端に接続され、他端が第2カプラの出力端に接続された第4光経路と、第2カプラの一方の分岐端から他方の分岐端にまで延びるループ状の第5光経路と、第3光経路及び第4光経路が巻かれたコイルと、を備え、コイルに加えられた応力によって第3光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、応力によって第4光経路を通る光に与えられる変調のタイミングと、は互いに異なっている。この干渉型光ファイバセンサヘッドでは、第2カプラから延びる第5光経路がループ状となっている。よって、第2カプラから出力される光が通る光経路の本数を減らすことができ部品点数の低減に寄与する。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステム及び干渉型光ファイバセンサヘッドの具体例を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステム1の構成を示す図である。図1に示されるように、干渉型光ファイバセンサシステム1は、光源11と、第1カプラ12と、第1光経路13と、第2光経路14と、第2カプラ18と、光検出器19と、コイル(変調部)20とを備えている。干渉型光ファイバセンサシステム1は、マッハツェンダ型の干渉計を構成している。
【0024】
光源11は、パルス光である信号光L1を出力する。光源11は、第1カプラ12と光学的に接続されている。第1カプラ12は例えば3dBカプラである。第1カプラ12は、入力端12a、出力端12b及び2つの分岐端12c,12dを有する。光源11から出力された信号光L1は、第1カプラ12の入力端12aに入力される。第1カプラ12における分岐比は、例えば1:1である。第1カプラ12は、光源11からの信号光L1を、パルス光である測定光L2とパルス光である参照光L3とに分岐する。第1カプラ12は、分岐端12cから測定光L2を出力すると共に、分岐端12dから参照光L3を出力する。
【0025】
第1光経路13は、第1カプラ12の分岐端12cと光学的に接続されている。第1光経路13は、第1カプラ12から分岐された測定光L2を入力する。第1光経路13の一端は第1カプラ12に接続され、第1光経路13の他端は第2カプラ18に接続されている。第1光経路13は、第1カプラ12から出力された測定光L2を第1光経路13の一端に入力して導波させる。第1光経路13の途中にはコイル20が配置されている。
【0026】
第2光経路14は、第1カプラ12の分岐端12dと光学的に接続されている。第2光経路14は、第1カプラ12から分岐された参照光L3を入力する。第2光経路14の一端は第1カプラ12に接続され、第2光経路14の他端は第2カプラ18に接続されている。第2光経路14は、第1カプラ12から出力された参照光L3を第2光経路14の一端に入力して導波させる。第2光経路14の途中にはコイル20が配置されている。第2光経路14における光学長は第1光経路13における光学長と等しい。また、第1光経路13及び第2光経路14の材料は、例えば互いに同一である。
【0027】
コイル20は、第1光経路13及び第2光経路14が巻き付けられる芯17を有する。コイル20の芯17に巻き付けられる第1光経路13の長さ及び巻き数は、例えば、芯17に巻き付けられる第2光経路14の長さ及び巻き数と同一である。第1光経路13及び第2光経路14は、互いに所定の間隔Hを有して巻かれている。また、コイル20には、外部から振動等を受けることによって応力が加えられる。コイル20における応力は、例えば音響波として伝搬する。
【0028】
コイル20上における第1光経路13と第2光経路14との距離を間隔H、伝搬する応力の速度をvとした場合、応力が第2光経路14から第1光経路13に伝搬する時間tはH/vとなる。ここで、コイル20に加えられた応力によって測定光L2に与えられる変調のタイミングと、参照光L3に与えられる変調のタイミングとは異なっている。すなわち、例えば第2光経路14側から応力がコイル20に加えられた場合、第1光経路13には、第2光経路14よりも時間tだけ遅れて応力が伝搬される。よって、第1光経路13に応力が伝搬される時間と、第2光経路14に応力が伝搬される時間との差である時間tを遅延時間として利用することができる。
【0029】
第2カプラ18は、第1光経路13及び第2光経路14を結合する。第2カプラ18は、第1光経路13を通った測定光L2と第2光経路14を通った参照光L3とを結合させる。第2カプラ18は、光検出器19と光学的に接続されている。第2カプラ18によって結合された光は、光検出器19に出力される。
【0030】
光検出器19は、第2カプラ18によって結合された光に基づいて、測定光L2及び参照光L3の変調を検出する。光検出器19には測定光L2と参照光L3との干渉光が入力される。光検出器19は、上記干渉光を検出するホモダイン検波を行う。コイル20に応力が生じていない状態では、測定光L2及び参照光L3が第2カプラ18に同時に入力される。よって、光検出器19は、遅延が付与されていない測定光L2、及び遅延が付与されていない参照光L3の干渉光を計測する。
【0031】
一方、コイル20に応力が生じると、この応力によって、コイル20における測定光L2及び参照光L3に位相変調が生じる。具体的には、例えば第2光経路14側からコイル20に応力が加えられた場合、第1光経路13には、第2光経路14よりも時間tだけ遅れて応力が伝搬される。よって、第1光経路13を通る測定光L2と、第2光経路14を通る参照光L3と、の間で位相差が生じ、この位相差に基づいて第2カプラ18の分岐比が変化する。光検出器19は、第2カプラ18における分岐比の変化を検出する。光検出器19は、測定光L2及び参照光L3による干渉光の強度変動を計測する。そして、干渉型光ファイバセンサシステム1は、コイル20に応力が加えられたことを検出する。
【0032】
以上の構成を備える干渉型光ファイバセンサシステム1によって得られる効果について説明する。
【0033】
干渉型光ファイバセンサシステム1では、コイル20に応力が加えられると測定光L2及び参照光L3が変調される。そして、測定光L2に与えられる変調のタイミングと参照光L3に与えられる変調のタイミングとは互いに異なっており、例えば変調された測定光L2は変調された参照光L3よりも遅延される。従って、光検出器19は、測定光L2と参照光L3とを選択的に抽出することができる。よって、簡易な構成で環境による影響を低減させることができ、光検出器19は測定光L2及び参照光L3の変調を確実に計測することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステム1Aの構成を示す図である。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を省略する。後述する第3及び第4実施形態においても重複する説明を省略する。図2に示されるように、干渉型光ファイバセンサシステム1Aは、装置本体2と、2個の干渉型光ファイバセンサヘッド3とを備えている。なお、干渉型光ファイバセンサヘッド3の数は、2個に限定されず、1個又は3個以上であってもよい。装置本体2は、光源11及び光検出器19を備えている。干渉型光ファイバセンサヘッド3は、カプラ22と、光経路23と、コイル20とを備えている。
【0035】
カプラ22は、信号光L4を入力する入力端22aと、信号光L4を出力する出力端22bと、分岐した信号光L4を出力させる2つの分岐端22c,22dとを備えている。一方の分岐端22cには光経路23の一端が接続されており、他方の分岐端22dには光経路23の他端が接続されている。光経路23は、コイル20の芯17に巻かれた第1巻き付け部23aと、第1巻き付け部23aとは別の箇所で芯17に巻かれた第2巻き付け部23bと、第1巻き付け部23aと第2巻き付け部23bとの間に設けられるループ部23cとを有する。
【0036】
ここで、カプラ22における分岐比をa:1(aは正の実数)とすると、aの値は、1以外であり、好ましくは100以上である。すなわち、カプラ22における信号光L4の分岐比は1:1以外の分岐比であり、分岐端22cからの信号光L4の量と分岐端22dからの信号光L4の量とは異なっている。例えば、分岐端22cからの信号光L4と、分岐端22dからの信号光L4と、の比を100:1とすると、分岐端22dから出力される信号光L4よりも、分岐端22cから出力される信号光L4の量が100倍大きくなる。このとき、分岐端22cからの信号光L4は、第1巻き付け部23a、ループ部23c及び第2巻き付け部23bをこの順で通って分岐端22dに入力される。この信号光L4は、出力端22bから別のカプラ22の入力端22aに出力される。このようにして干渉型光ファイバセンサシステム1Aは、カプラ22が信号光L4を透過させるので、いわゆる透過型で構成することが可能となっている。
【0037】
以上、干渉型光ファイバセンサシステム1Aでは、第1実施形態と同様、コイル20に応力が加えられると信号光L4が変調される。そして、第1巻き付け部23aを通る信号光L4に与えられる変調のタイミングと第2巻き付け部23bを通る信号光L4に与えられる変調のタイミングとは互いに異なっている。すなわち、第1巻き付け部23a及び第2巻き付け部23bの一方を通る信号光L4は他方を通る信号光L4よりも遅延される。従って、第1実施形態の干渉型光ファイバセンサシステム1と同様、簡易な構成で環境による影響を低減させることができる。更に、干渉型光ファイバセンサシステム1Aでは、光経路23が一本の経路となっているので、干渉型光ファイバセンサシステム1よりも部品点数を減らすことができる。
【0038】
また、干渉型光ファイバセンサシステム1Aにおいて、カプラ22における光の分岐比はa:1である(ただし、aは1ではない正の実数)。従って、カプラ22に光を透過させる態様で干渉型光ファイバセンサシステム1Aを構成し、干渉型光ファイバセンサヘッド3(コイル20)の縦列接続を容易に行うことができる。
【0039】
(第3実施形態)
【0040】
図3は、第3実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステム1Bの構成を示す図である。図3に示されるように、干渉型光ファイバセンサシステム1Bは、装置本体2と、干渉型光ファイバセンサヘッド3Aとを備えている。なお、図3では、1個の干渉型光ファイバセンサヘッド3Aのみを図示しているが、例えば第1カプラ32の出力端32bを別の第1カプラ32の入力端32aに接続させることによって、複数の干渉型光ファイバセンサヘッド3Aを縦列接続させることも可能である。
【0041】
干渉型光ファイバセンサヘッド3Aは、第1カプラ32、第3光経路33、第4光経路34、第5光経路35及び第2カプラ38を備えている。第3光経路33の一端は第1カプラ32に接続されており、第3光経路33の他端は第2カプラ38に接続されている。第3光経路33は、第3光経路33の途中でコイル20の芯17に巻かれた第1巻き付け部36を有する。第4光経路34は、第4光経路34の途中で芯17に巻かれた第2巻き付け部37を有する。また、第5光経路35は、第2カプラ38からループ状に延びている。
【0042】
第1カプラ32は、信号光L5を入力する入力端32aと、信号光L5を出力する出力端32bと、分岐した信号光L5を出力させる2つの分岐端32c,32dとを有する。第1カプラ32の分岐比は例えば1:1である。第2カプラ38は、第1カプラ32と同様、入力端38aと、出力端38bと、2つの分岐端38c,38dとを有する。一方の分岐端38cには第5光経路35の一端が接続されており、他方の分岐端38dには第5光経路35の他端が接続されている。
【0043】
以上、干渉型光ファイバセンサシステム1Bでは、第1巻き付け部36を通る信号光L5に与えられる変調のタイミングと第2巻き付け部37を通る信号光L5に与えられる変調のタイミングとが互いに異なっている。従って、干渉型光ファイバセンサシステム1Bでは、干渉型光ファイバセンサシステム1,1Aと同様の効果が得られる。
【0044】
また、干渉型光ファイバセンサシステム1Bにおいて、第5光経路35は、第2カプラ38から延びると共に第2カプラ38に戻るループ状となっている。従って、第2カプラ38から出力される信号光L5が通る光経路の本数を減らすことができ部品点数の低減に寄与する。
【0045】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る干渉型光ファイバセンサシステム1Cの構成を示す図である。干渉型光ファイバセンサシステム1Cは、マイケルソン型の干渉計を構成している。干渉型光ファイバセンサシステム1Cは、第1光経路13の出力端に設けられたミラー26と、第2光経路14の出力端に設けられたミラー27とを備えている。また、第1光経路13における光学長と第2光経路14における光学長との差は例えば(4n±1)λ/4である(ただしnは整数、λは信号光L1の波長)。この干渉型光ファイバセンサシステム1Cでは、干渉型光ファイバセンサシステム1,1A,1Bと同様の効果が得られる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、干渉型光ファイバセンサシステム1又は干渉型光ファイバセンサシステム1Cにおいて、第1光経路13及び第2光経路14の少なくとも一方に遅延線が設けられていてもよい。このように遅延線を設けることにより、光検出器19は測定光L2及び参照光L3の変調をより確実に計測することができる。また、干渉型光ファイバセンサシステム1Aの光経路23、又は干渉型光ファイバセンサシステム1Bの第3光経路33若しくは第4光経路34、に遅延線を設けた場合にも同様の効果が得られる。
【0047】
また、上述した実施形態において、第1光経路13は、第1カプラ12から分岐された測定光L2を入力するものとして説明したが、これに限定されるものではない。第1光経路13に参照光が入力され、第2光経路14に測定光が入力されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B,1C…干渉型光ファイバセンサシステム、2…装置本体、3,3A…干渉型光ファイバセンサヘッド、11…光源、12,32…第1カプラ、13…第1光経路、14…第2光経路、17…芯、18,38…第2カプラ、19…光検出器(計測部)、20…コイル(変調部)、22…カプラ、23…光経路、23a…第1巻き付け部、23b…第2巻き付け部、23c…ループ部、33…第3光経路、34…第4光経路、35…第5光経路、36…第1巻き付け部、37…第2巻き付け部、H…間隔、L1,L4,L5…信号光、L2…測定光、L3…参照光。
図1
図2
図3
図4