(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
指標体検出手段が移動棚の移動経路に沿った前後方向の一方側と他方側にそれぞれ備えられており、前記指標体検出手段同士の前後方向距離が指標体列中での指標体同士の前後方向間隔の整数倍であり、
前記移動経路に対する前記移動棚の姿勢傾きの向きの判断が、前記指標体検出手段のそれぞれによる検出状態の差異の有無および差異の状態も用いて行われること
ことを特徴とする請求項3に記載の移動棚設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、幅ズレを少なくする走行軌跡を演算するにあたっては、移動棚をどのように走行させていくべきかについて複雑な計算を行う必要がある。さらに最適な走行軌跡というものはその時点での姿勢傾きや幅ズレの度合い、そして移動棚自身のサイズや本来の走行経路の長さなどの要因(環境条件)によって変化するため、姿勢傾きや幅ズレの度合い(角度にして何度分の姿勢傾きが生じているか、何mm分の幅ズレが発生しているか)を厳密に検出する必要があり、またどのような設備、どのような状況でも汎用的に使用できる走行軌跡というものはなく、設備ごと、状況ごとに環境条件を変えて演算を行いその都度走行軌跡を求める必要があった。
また、上記のような方法により幅ズレの検出を行う場合、幅ズレが発生したことは停止位置でしか検出されないため、1つの停止位置から次の停止位置に至るまでの間では幅ズレが検出されずに大きくなっていってしまう(本来の移動経路から著しく逸脱してしまう)おそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載の発明においては、移動棚の幅方向の両側部分の駆動車輪の走行量をそれぞれ検出して、この走行量に基づいて補正制御をすることも行われているが、この走行量の検出は、床面に圧接させている検知用輪体の摩擦転動に伴う回転体の回転状態を検出することで行っているので、床面の状態が良好でない場合、例えば床面にわずかな凹凸や油汚れなどがあるだけでも、検知用輪体が空転するなどの原因により、正しく走行量を検出できず、ひいては適切な制御ができなくなるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、それほど厳密に姿勢傾きや幅ズレの度合いを検出せずとも移動棚に適切な走行を行わせることが可能な移動棚設備を提供することを目的とする。
また、移動棚が停止位置に至るのを待つことなく、移動している間に姿勢傾きを検出してそれに応じた制御を行えるようにして、姿勢傾きが発生したまま移動し続けることによる幅ズレの発生を抑制することも課題とする。
また、床面の状態が良好でなくとも適切な移動制御を行えるようにすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る移動棚設備は、設備内の底面上を移動可能な移動棚を有する移動棚設備において、前記移動棚設備には、前記移動棚の移動を制御する移動棚制御手段と、前記移動棚の移動経路に沿って延びる指標路が設けられており、前記移動棚は、積荷を収納可能な棚本体と、前記移動棚を予め定められた移動経路に沿って移動させるための複数の駆動輪と、前記指標路に対する検出を行うことが可能な指標路検出手段と、前記移動経路に対する前記移動棚の角速度を検出する角速度計を備えており、前記移動棚制御手段は、前記各駆動輪を予め定められた複数の駆動パターンのうちのいずれかで駆動させて各駆動輪の回転速度を制御することにより、前記移動棚を予め定められた複数の移動パターンのうちのいずれかで移動させることが可能であり、前記角速度計が検出する前記移動棚の角速度に基づき、前記移動経路に対する前記移動棚の姿勢傾きの向きを判断して、前記移動経路に直交する移動棚の左右方向の一方側が前記移動棚の移動の進行方向において他方側よりも先行しているか、遅滞しているか、先行も遅滞もしていないかを判定し、前記指標路検出手段による前記指標路の検出状態に基づき、前記移動経路に直交する左右方向への前記移動棚の幅ズレ方向を判断し、前記姿勢傾きの向きおよび前記幅ズレ方向に応じて、予め定められた複数の前記駆動パターンのうちから1つ、実行するべき駆動パターンを選択することを特徴とする。
この構成によれば、姿勢傾きや幅ズレの度合いを定量的に細かく検出しなくとも、その向きや方向(右向きか左向きか、右寄りか左寄りかなど)という大まかな状態さえ検出できればよいので、検出のための機器の構成を単純化できる。また、角度計を用いて姿勢傾きの検出を行うことにより、移動棚の姿勢傾きが発生しているかどうかが移動している間にわかるため、停止位置に至るのを待つことなく移動棚の姿勢傾きに応じた制御を行うことができる。また、姿勢傾きの検出を床面の状態に影響されることなく行うことができ、実際の姿勢傾きに応じた適切な移動制御を行うことが可能である。
【0010】
また、本発明に係る移動棚設備は、上記構成に加えて、指標路検出手段が、移動棚の移動経路と直交する左右方向に並ぶ複数の検出素子を備えたものとなっており、前記指標路検出手段の備える前記複数の検出素子のうち、どの検出素子が指標路を検出しているかによって、前記移動経路と直交する左右方向への移動棚の幅ズレ方向が判断されるように構成してもよい。
この構成によれば、移動棚の幅ズレについても移動している間に検出することができるので、移動棚が停止位置へ至るのを待つことなく、幅ズレ方向に応じた駆動制御を移動中に行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る移動棚設備は、指標路が、移動棚の移動経路に沿って指標体が一定の間隔で移動棚設備内の床面に並べられた指標体列からなり、指標路検出手段が、前記指標体列を構成する指標体を検出するための指標体検出手段からなり、前記指標体検出手段によって前記指標体が検出された時点で、角速度計の検出している移動棚の角速度に基づく姿勢傾きの向きの判断が行われるように構成してもよい。
この構成によれば、移動経路に沿った移動の際に、一定の距離を移動するごとに姿勢傾きの向きの判断が行われることになるため、姿勢傾きが生じたまま移動し続けてしまう距離を一定以下に抑えることができるので、生じうる幅ズレの量も一定以下に抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る移動棚設備は、上記構成に加えて、指標体検出手段が移動棚の移動経路に沿った前後方向の一方側と他方側にそれぞれ備えられており、前記指標体検出手段同士の前後方向距離が指標体列中での指標体同士の前後方向間隔の整数倍であり、前記移動経路に対する前記移動棚の姿勢傾きの向きの判断が、前記指標体検出手段のそれぞれによる検出状態の差異の有無および差異の状態も用いて行われるように構成してもよい。
この構成によれば、姿勢傾きの向きが複数の方法で調べられることとなるので、姿勢傾きの向きの判断がより確実となる。また、指標体検出手段が指標体を検出するタイミングが前後方向の一方側と他方側(前方側と後方側)とで一致するようになるので、そのタイミングにおける移動棚の実際の姿勢に即した判断が行える。
【0013】
また、本発明に係る移動棚設備は、上記構成に加えて、移動棚の左右方向の一方側を右側、他方側を左側とし、移動棚の右側が左側よりも先行している場合、遅滞している場合、先行も遅滞もしていない場合を、それぞれ左向きの姿勢傾き、右向きの姿勢傾き、姿勢傾きなし、とし、移動経路よりも左側へと幅ズレが発生している場合および右側へと幅ズレが発生している場合を、それぞれ幅ズレ方向が左寄り、幅ズレ方向が右寄り、とし、各駆動輪の回転速度を等しくする駆動パターンを、直線走行とし、移動棚右側に備えられた駆動輪の回転速度を移動棚左側に備えられた駆動輪の回転速度よりも大きくする駆動パターンを、左旋回とし、移動棚右側に備えられた駆動輪の回転速度を移動棚左側に備えられた駆動輪の回転速度よりも小さくする駆動パターンを、右旋回として、移動棚制御手段は、幅ズレがなくかつ姿勢傾きなしの場合、または、幅ズレ方向が右寄りでありかつ姿勢傾きが左向きである場合、または、幅ズレ方向が左寄りでありかつ姿勢傾きが右向きである場合に、前記直線走行の駆動パターンを実行し、幅ズレがなくかつ姿勢傾きが左向きである場合、または、幅ズレ方向が左寄りでありかつ姿勢傾きなしの場合、または、幅ズレ方向が左寄りでありかつ姿勢傾きが左向きである場合に、前記右旋回の駆動パターンを実行し、幅ズレがなくかつ姿勢傾きが右向きである場合、または、幅ズレ方向が右寄りでありかつ姿勢傾きなしの場合、または、幅ズレ方向が右寄りでありかつ姿勢傾きが右向きである場合に、前記左旋回の駆動パターンを実行するように構成してもよい。
この構成によれば、姿勢傾きや幅ズレの度合いに応じて移動棚の移動制御を細かく調整する必要がなく、姿勢傾きの向きと幅ズレの方向に応じて直線走行・右旋回・左旋回という3通りの制御さえ行えるようになっていればよいので、移動制御のための機器の構成を単純化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、姿勢傾きや幅ズレの度合いを厳密に検出しなくともよくて検出のための機器の構成を単純化でき、また移動制御のための機器の構成も単純化できるので、低コストに移動棚設備の構築を行うことができる。
また、移動棚が移動している間に姿勢傾きの検出を行うので、移動棚が停止位置に至るのを待つことなく、移動している間に姿勢傾きに応じた制御を速やかに実行することができる。これにより、移動棚の姿勢が右向きや左向きに傾いたまま走行することによる幅ズレの発生を抑制することができる。
また、床面に多少の凹凸や汚れなどの不具合があったとしても、角速度計による移動棚の角速度の測定はそうした床面の不具合に影響されないので、本発明によれば、床面の状態が良好でなくとも、実際の移動棚の姿勢に基づき適切な制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の実施形態の一例としての移動棚設備の斜視図を示す。
移動棚設備10には複数(ここでは3台)の移動棚11が設けられており、これら移動棚11の移動経路Wの両外端位置にはそれぞれ固定棚13が配置されている。各移動棚11は、固定棚13同士の間において移動経路W上を往復走行することにより、移動棚11同士の間または移動棚11と固定棚13との間に、移動棚11または固定棚13に対して積荷Tの受け渡し作業を行うための通路を形成することができる。
なお、以下においては、移動経路Wに沿う方向を前後方向、移動経路Wに直交する方向を左右方向と呼称し、移動経路W上での移動棚11の移動方向の一方側を前方、他方側を後方とし、前方を基準として
図1中の矢印に示すように前後左右の区別を行う。
【0017】
[固定棚]
図1に示すように、固定棚13は、鋼などの耐荷重性のある材質による棒状材と板状材を組み合わせて積荷Tを収納可能となっている棚本体13aからなり、この棚本体13aを構成する棒状材のうち上下方向に延びる支柱13bは、その下端が移動棚設備10の床面にボルト留めなどにより固定されている。また、
図1には図示しないが、左右方向最外端(左端および右端)の支柱13bの下端近くには、光反射板が取り付けられており、後述するフォトリフレクタからの光を反射できるようになっている。
【0018】
[移動棚]
移動棚11は、固定棚13の棚本体13aと同様に積荷Tを収納可能な棚本体11aと、この棚本体11aを下部で支持する下部フレーム体12を備えている。下部フレーム体12は耐荷重材質製のフレーム材を組み合わせた矩形枠状になっており、棚本体11aのサイズに合わせて、左右方向に幅広(例えば約15m)で、前後方向は左右方向に比べて短くなっている(例えば約2m)。
また、この下部フレーム12の下方左右端には、フォトリフレクタなどの光電センサおよび光反射板からなる停止位置検出器17が取り付けられている。停止位置検出器17の光電センサがフォトリフレクタである場合には、前後方向に向けて投光した光がその先で光反射板により反射されて帰ってくるか否かによって、固定棚13あるいは他の移動棚11に接近しているか否か、すなわち停止すべき位置に至っているか否かが検出できるようになっている。この停止位置検出器17は、移動棚11の前後両側に設けられている。
そして、移動棚11を実際に移動させるための手段として、下部フレーム体12の下方(
図1では見えない位置)に、前後一対の車輪対が、左右方向に複数対設けられている。こうした車輪対は移動棚11全体の重量を分散して支持できるように例えば移動棚11内での積荷T用収納区画の左右区切りとなる支柱11b(上下方向の棒状材)の土台近くに設けるとよく、
図1で例示されているように収納区画が1つの移動棚11あたり上下3層、前後2段、左右4列の場合、車輪対は左右方向を4列に仕切っている5本の支柱11bに対応して5対設けられることとなる。
【0019】
[車輪]
図2に示す下部フレーム体12の拡大側面図においては、車輪対のうち左右方向で最外端(ここでは右端)の一対が示されている。この最外端の車輪対は、そのうち一方(ここでは後方)が駆動輪14R、他方(ここでは前方)が従動輪15Rとなっている。
なお、以下においては、駆動輪14Rのような左右両側に設けられた構成要素について、右側のものと左側のものを区別するため、右側の構成要素を表す符号には「R」を、左側の要素を表す符号には「L」を付す。すなわち、右側の駆動輪14R,従動輪15Rと同様に、移動棚11の左側には、
図2中には図示しないが、左側の駆動輪14L,従動輪15Lが設けられている。その他、以下の説明において「R」が付されている構成要素については、左側にも同様の要素が設けられている。
図2中に示す駆動輪14Rは下部フレーム体12に軸支された駆動車軸16Rを介して、駆動源としての駆動モータ18R(下部フレーム体12に支持されている)により回転駆動力を与えられるようになっている。最外端両側(左右両側)の駆動輪14Rが床面に接触しながら駆動モータ18Rにより回転させられることにより、移動棚11が床面上を前後方向に移動することができるようになっている。
一方、従動輪15Rは従動車軸19Rを介して下部フレーム体12に軸支されており、駆動輪14Rが回転させられることによる移動棚11の移動の際に、床面との摩擦により従動的に回転するようになっている。
なお、ここでは図示しないが、内方側の(左端でも右端でもない)車輪対は、前後両方とも従動輪で構成されている。
【0020】
[角速度計]
図2中に破線で示すように、移動棚11の下部フレーム体12には角速度計36が設けられている。その配置箇所は、本実施形態においては
図2、
図3に示すように前後方向・左右方向共に移動棚11の中央部となっていて、機械式・流体式・光学式といった測定方式により角速度を測定(検出)可能なセンサ(ジャイロスコープ)が、下部フレーム体12を構成するフレーム材で支持されるようにして取り付けられる。
この角速度計36により、移動棚11が移動する際の、その移動棚11の角速度(具体的には単位時間当たりの姿勢傾きの変化量)が検出(測定)されるようになっている。これにより検出される角速度は、基準となる方向からの変化量として検出されるため、移動棚11の移動経路Wに沿った方向(すなわち、予め定められた本来の進行方向)を基準となる方向として設定することにより、移動棚11が移動経路Wに対してどれだけの角速度となっているか、つまりは本来の進行方向に対してどれだけの勢いで姿勢を傾けようとしているか、を検出することができる。
【0021】
[磁気センサおよび磁石]
図2、
図3に示すように、下部フレーム体12の左右方向一方側の側面(ここでは右側面)の前方側と後方側のそれぞれには、指標路検出手段を構成する指標体検出手段としての磁気センサ30A,30Bが設けられている。この磁気センサ30A,30Bは、ホール素子などを用いて、床面近くの磁気の存在および強度を検出できるようになっている。
図2中の吹出しに示すように、磁気センサ30A(および磁気センサ30B)は、複数(ここでは8つ)の検出素子31が並んで構成されたものとなっており、この検出素子31の並び方向が、左右方向と一致するように、すなわち移動棚11の移動方向と直交するように配置されている。そして、磁気センサ30A,30Bは、これら複数の検出素子31のうちどの検出素子31が磁気を検出したか、を示す信号を発信できるようになっている。そして、例えば検出素子31の並びの中央の位置を磁気センサ30A,30Bの基準位置とするとき、磁気を検出した検出素子31がいずれであるかによって、磁気の存在する位置が磁気センサ30A,30Bの基準位置と一致しているか、それとも左右にズレているのかを検出することができる。
本実施形態において、磁気センサ30A,30Bの左右位置および寸法は
図1,
図3に示すように移動棚11の右側面からさらに右側へと延びるものとなっている。また、前後一方側(例えば前側)の磁気センサ30Aと他方側(例えば後側)の磁気センサ30Bとで、左右方向位置が一致するように配置されている。
一方、移動棚設備10の床面には、
図3に示すように、移動棚11の移動経路Wに沿って、一定の間隔(移動棚11の前後方向寸法の5%〜25%、例えば棚前後寸法が2mの場合にその15%:300mm)ごとに指標体としての磁石32が埋め込まれている。
この磁石32からなる指標路としての磁石列34の左右位置については、移動棚11が移動経路W上を左右にぶれることなく(つまり姿勢傾きも幅ズレも起こすことなく、移動棚設備10の運用者が意図した通りに)移動した場合に、磁気センサ30A,30Bに設定された基準位置(例えば中央)が通過していく位置に各磁石32が配置されることにより1列の磁石列34が移動経路Wに沿って延びている。本実施形態においては移動棚11の右側面からさらに右側へと少し離れた位置で磁石列34が前後に延びる形で各磁石32が配置されている。そして、各磁石32同士の前後方向間隔は、前方の磁気センサ30Aと後方の磁気センサ30Bとの距離の整数分の一となっている。つまり、前後の磁気センサ30A,30B同士の距離は、磁石列34中の各磁石32同士の前後方向間隔の整数倍(
図3においては2倍)となっている。
【0022】
[移動棚制御器]
移動棚設備10には、
図4のブロック図に示すように、移動棚11の移動を制御する移動棚制御手段としての移動棚制御器50が設けられている。この移動棚制御器50は移動棚11に直接取り付けられたプロセッサとして構成してもよいが、ここでは、移動棚制御器50は移動棚11から離れた位置に用意され移動棚11の各機器(停止位置検出器17、駆動モータ18L,18R、角速度計36、磁気センサ30A,30Bなど)と無線または有線で通信するコンピュータとして構成されたものとして説明する。
移動棚制御器50は、移動棚11の状態を検出する各種検出器からの信号に基づき、移動棚11の移動を制御する。すなわち、ここでは停止位置検出器17が検出する他の棚への接近の有無と、角速度計36が検出する移動棚11の角速度と、磁気センサ30A,30Bによる磁石32の検出の有無(検出状態)とに基づき、駆動モータ18L,18Rの回転を制御する。
また、角速度計36が検出する角速度については、継時的に積算を行うことにより、移動棚11の姿勢傾きの角度を算出することを行う。具体的には例えば、経過時間を計測可能な計時手段を移動棚制御器50に備えさせておき(あるいは別体として設けた計時手段と移動棚制御器50とを通信可能に接続し)、「ある角速度値が何秒間継続したか」を、計時手段を用いて記録し、[検出された角速度値]×[その角速度値が継続した秒数]を積算することにより、現時点での移動棚11の姿勢傾きが本来の進行方向(基準の向き)に対し角度にして何度分となっているかを算出する。なお、こうした角度算出を行う機能を角速度計36自体に備えさせておき、検出した角速度および算出した角度を移動棚制御器50へと送信するようにしてもよい。
そして、移動棚制御器50は、移動棚設備10内の作業者または遠隔地にいるユーザーからの動作指令を伝達する指令装置60(移動棚11に直接取り付けられた操作パネルや、移動棚11とは別体に用意されたリモコンなど)と通信可能になっており、指令装置60から移動棚11を移動させるように指令を受けたときに、移動棚11の移動を開始させる。
【0023】
[移動制御]
<停止状態>
以下、
図1に示す3つの移動棚11のうち前後方向中央のもの、つまり前方には通路が開いており後方には他の移動棚11がある状態から移動を始める移動棚11の移動制御について、
図1〜
図6に基づき説明する。
図1中の前後方向中央の移動棚11においては、下方の前後左右端に設けられた停止位置検出器17のうち、前方側の停止位置検出器17が、前方には他の棚が存在しないことを検出し、後方側の停止位置検出器17が、後方には他の移動棚11が存在することを検出する。このとき、停止位置検出器17からの信号を受信する移動棚制御器50は、この移動棚11の状態について、停止状態であって角速度もゼロであり、姿勢傾きも幅ズレも発生していないものと判断する。また、この停止状態における移動棚11の姿勢(向き)を、角速度計36の基準の向きとして設定する。
【0024】
<走行開始>
指令装置60から、いずれかの移動棚11を移動(前進または後退)させるよう指令が発せられると、移動棚制御器50はまず、その指令による進行方向に既に他の棚が存在していないかどうかを判断する。すなわち、移動させるよう指令された移動棚11について、指令が前進であるなら前方に、後退であるなら後方に他の棚が存在しているかどうかを、移動させるよう指令された移動棚11に設けられた停止位置検出器17からの信号に基づき判断し、進行方向に他の棚が存在する場合には進行不能であることを通知する信号を指令装置60に返す。
進行方向に他の棚が存在せず(通路が開いており)、進行可能である場合には、移動棚11の左右の駆動輪14L,14R用の駆動モータ18L,18Rをそれぞれ進行方向に対応した回転方向で駆動させて、移動経路Wに沿う前後方向の移動、すなわち移動棚11の前進または後退を開始する(
図6中のステップS1)。なお、走行開始時には、後述する「直線走行」の駆動パターンで左右の駆動輪14L,14Rを回転駆動するとよい。
【0025】
<磁気センサおよび角速度計による検出>
移動棚11が前進または後退の移動をしている間、移動棚制御器50は、移動棚11に設けられた角速度計36が検出する移動棚11の角速度と、前後の磁気センサ30A,30Bによる磁気の検出状態を示す信号とを受信する。
移動棚制御器50は、磁気センサ30A,30Bにより設備の床面に配置された磁石32(の磁気)が検出されるまでは、駆動モータ18L,18Rの制御状態を変更しない(
図6中のステップS2)。この間、角速度計36から受信する角速度を基に、移動棚11が移動経路Wに対して何度の姿勢傾きになっているかの角度算出を連続的に行う。
そして、磁気センサ30A,30Bのいずれかにより磁石32が検出された際には、以下の要領により移動棚11の姿勢傾きおよび幅ズレの状態を判断する(
図6中のステップS3)。
【0026】
<<姿勢傾きの判断>>
移動端11が移動経路W内を前後方向に移動(前進または後退)していくと、
図3に示すように、前後両側の磁気センサ30A,30Bが、それぞれ磁石列34上方を通過し、磁石列34内の磁石32(が発する磁気)を検出する。
磁気センサ30A,30Bが磁石列34内の磁石32を検出したことを表す信号を移動棚制御器50に発信すると、移動棚制御器50は、その時点までに角速度計36の検出する角速度を基に算出してきた移動棚11の姿勢傾きの角度を確認する。
移動棚11の姿勢傾きの角度を確認した結果、角度が0°でない(または予め定められた許容角度値を超えている)場合、移動棚制御器50は、この移動棚11の移動経路Wに対する姿勢が左右方向に傾いている、すなわち姿勢傾きが発生していると判断する。
具体的には、例えば移動経路Wに対して右側への姿勢傾き角度を正の角度とするとき、姿勢傾き角度の正負に応じて、右向きの姿勢傾き(
図3(b)の状態)であるか、左向きの姿勢傾き(
図3(c)の状態)であるか、あるいは角度は0°であり姿勢傾きは発生していない(
図3(a)の状態)か、を判断する。
ただし、姿勢傾きの角度が0°でない場合でも、移動棚設備10の運営者や設計者が予め定めた許容角度値(例えば0.1°)を越えないごくわずかな角度である場合には、姿勢傾きは発生していない、と移動棚制御器50に判断させるようにしてもよい。
【0027】
また、姿勢傾きの向きの判断材料としては、角速度計36の検出する角速度だけでなく、磁気センサ30A,30Bによる磁石32の検出状態をも用いることができる。
姿勢傾きの向きの判断材料としては、磁石32(の発する磁気)を検出しているか否か、という検出状態情報の他に、磁気センサ30A,30Bのそれぞれが有する複数の検出素子31のうち、磁石32を検出したのがどの検出素子31なのか、という検出状態情報を用いる。
具体的には例えば、磁気センサ30A,30B内において左右方向に複数(ここでは8つ)並んだ検出素子31にそれぞれ、
図2,
図3中の左から順にNo.1〜No.8の番号を付けておき、磁気センサ30A,30Bは、
図4に示すように、どのNo.の検出素子31が磁石32を検出したか(どのNo.がONになっているか)を示す信号を検出状態として移動棚制御器50へと発信する。ここで、磁気センサ30A,30B同士の前後方向距離が磁石列34中の各磁石32同士の前後方向間隔の整数倍となっていることにより、前方側の磁気センサ30Aが磁石32を検出するタイミングと、後方側の磁気センサ30Bが磁石32を検出するタイミングとが一致するので、同一のタイミングにおける磁気センサ30A,30Bの検出状態を比較することができる。
そして、姿勢傾きの向きを判断するにあたっては、前方側の磁気センサ30Aにおいて磁石32を検出している(ONになっている)検出素子31のNo.と後方側の磁気センサ30Bにおいて磁石32を検出している検出素子31のNo.との違いが生じているかどうか(検出状態の差異の有無)、どのように違っているか(差異の状態)、に基づき姿勢傾きの向きを調べるようにするとよい。
具体的には、前方側でONになっている検出素子31のNo.と後方側でONになっている検出素子31のNo.が同じであれば姿勢傾きは発生しておらず、前方側でONになっている検出素子31のNo.が後方側でONになっている検出素子31のNo.よりも小さいならば右向き、大きいならば左向きと判断するとよい。例えば、
図3(b)に示すように、前方側でNo.3がONになっており後方側ではNo.6がONになっている場合には、姿勢傾きは右向きであると判断できる。
【0028】
<<幅ズレ方向の判断>>
磁気センサ30A,30Bによる磁石32の検出の際には、移動棚11が左右方向に幅ズレを起こしていないかどうか、そしてその幅ズレ方向が左右方向のどちら寄りになっているか、についても検出(判断)を行う。
移動棚11の幅ズレ方向の判断は、磁気センサ30A,30Bが備える複数の検出素子31のいずれが磁石32(の磁気)を検出したか、に基づいて行う。
例えば
図2中の吹出しに示すように左右方向中央付近のNo.4およびNo.5の検出素子31が磁石32を検出している(ONになっている)状態ならば、磁気センサ30A,30Bの基準位置(中央)と磁気の存在する位置(磁石32の検出位置)とが一致しており、移動棚11に左右方向の幅ズレは発生していないと判断される。
そして、例えば
図3(d)に示すように、左側寄りのNo.2およびNo.3の検出素子31が磁石32を検出している状態ならば、移動棚11全体が移動経路Wに対し左右方向の右側へと寄っているために磁石32の検出位置が左側へとズレたということであり、すなわち移動棚11が右寄りの幅ズレを起こしている(幅ズレ方向が右寄り)と判断される。
さらに、例えば
図3(e)に示すように、右側寄りのNo.6およびNo.7の検出素子31が磁石32を検出している状態ならば、移動棚11全体が移動経路Wに対し左右方向の左側へと寄っているために磁石32の検出位置が右側へとズレたということであり、すなわち移動棚11が左寄りの幅ズレを起こしている(幅ズレ方向が左寄り)と判断される。
このように、磁気センサ30A,30Bによる検出状態について、その磁気センサ30A,30Bが備えている左右方向に複数並んだ検出素子31のうち、基準位置(中央)のものが磁石32を検出した場合には幅ズレなしと判断し、基準位置より左側の検出素子31が磁石32を検出した場合には幅ズレ方向が右寄りと判断し、基準位置より右側の検出素子31が磁石32を検出した場合には幅ズレ方向が左寄りと判断する。
なお、上記においては磁石32の左右位置が検出素子31同士の間であり、2つの検出素子31が磁石32を検出する場合について説明したが、磁石32がいずれかの検出素子31の真下に位置していて、1つの検出素子31のみが磁石32を検出することもある。その場合においても、磁石32を検出した検出素子31が左右のどちら寄りであるかによって幅ズレ方向を判断するとよい。例えば、No.4とNo.5との間を基準位置とする場合にNo.4の検出素子31のみが磁石32を検出したのであれば、基準位置よりも左寄りの検出素子31が磁石32を検出したということであるので、幅ズレ方向が右寄りと判断する。あるいは、No.4やNo.5のみがONになっている状態のような微小な幅ズレについては許容範囲内(幅ズレなし)とし、No.1〜No.3のいずれかがONになったときに右寄り、No.6〜No.8のいずれかがONになったときに左寄り、と判断するようにしてもよい。
また、上記においては姿勢傾きが発生しておらず幅ズレのみが発生した状態について述べているので、前方側の磁気センサ30Aと後方側の磁気センサ30Bとで、磁石32を検出している検出素子31のNo.が一致していることを想定している。しかし、幅ズレと姿勢傾きが同時に発生している場合でも、前方側と後方側のそれぞれでONになっている検出素子No.の平均値が基準値より大きいか小さいかで移動棚11が全体的に左右のどちらかに寄っていると判断できる(平均値が基準値よりも小さければ右寄り、大きければ左寄り)。例えば、No.4とNo.5の間を基準位置とするならば基準値を(4+5)/2=4.5と設定しておき、前方側でNo.1がONになっており後方側ではNo.4がONになっている場合には、平均値は基準値より小さい2.5になっているので幅ズレ方向は右寄りであり、ONになっている検出素子No.は前方側の方が小さいので姿勢傾きは右向きである、と判断できる。
【0029】
<直線走行または左右旋回の駆動パターン選択>
以上のようにして、移動棚11の姿勢傾きの向きと幅ズレ方向が判断されたら、姿勢傾きの向きと幅ズレ方向との組み合わせが、
図5に示す9パターンのいずれに分類されるかを調べ、移動棚11の移動制御について、以下に説明するような、各パターンに対応して定められた種類の駆動パターンにより駆動輪14L,14Rを駆動させる制御を行うことを決定する(
図6中のステップS4)。なお、こうした決定(選択)をソフトウェア的に行う場合は、姿勢傾きの状態を表す変数と幅ズレの状態を表す変数とを、予め用意された変数テーブルと照らし合わせることで、駆動パターンの種類を示す変数が得られるようにするとよい。
【0030】
<<駆動パターンの種類について>>
以下においては、各状況において駆動輪14L,14Rの駆動パターンを、第1の駆動パターンとしての「直線走行」、第2の駆動パターンとしての「右旋回」、第3の駆動パターンとしての「左旋回」のいずれにするかについて説明する。
ここで、「直線走行」とは、各駆動輪の回転速度を(左右の駆動モータ18L,18Rの駆動制御により)等しくするよう制御する駆動パターンであり、つまりは右側の駆動輪14Rの回転速度を、左側の駆動輪14Lの回転速度と同じにする制御である。この直線走行の駆動パターンが実行されると移動棚11は直線的に走行する移動パターンで移動させられることになる。
また、「右旋回」とは、右側の駆動輪14Rの回転速度を、左側の駆動輪14Lの回転速度よりも小さくする(または左側の回転速度を右側よりも大きくする)よう制御する駆動パターンである。この右旋回の駆動パターンが実行されると移動棚11は右向きへ旋回する移動パターンで移動させられることになる。
そして「左旋回」とは、右側の駆動輪14Rの回転速度を、左側の駆動輪14Rの回転速度よりも大きくする(または右側の回転速度を左側よりも小さくする)よう制御する駆動パターンである。この左旋回の駆動パターンが実行されると移動棚11は左向きへ旋回する移動パターンで移動させられることになる。
これらの駆動パターンは、駆動輪14L,14Rをどの程度の速さで回転させるかを取り決めることにより設定することができる。つまり、左側の駆動輪14Lの回転速度設定値と、右側の駆動輪14Rの回転速度設定値とをそれぞれ駆動パターンごとに予め定めておき、いずれかの駆動パターン実行時には、その駆動パターンについて定められた設定値の回転速度で左右の駆動輪14L,14Rをそれぞれ回転させるとよい。
【0031】
<<姿勢傾きの向き・幅ズレ方向の種類と駆動パターンの種類との対応関係>>
移動棚11の姿勢傾きの向きと幅ズレ方向の種類に応じて、実行するべき駆動パターンの種類を以下のように選択する。
図5(a)に示すように、幅ズレがなく、かつ姿勢傾きがない場合には、直線走行の駆動パターンを選択する。
図5(b)に示すように、幅ズレがなく、かつ姿勢傾きが右向きである場合には、左旋回の駆動パターンを選択する。
図5(c)に示すように、幅ズレがなく、かつ姿勢傾きが左向きである場合には、右旋回の駆動パターンを選択する。
図5(d)に示すように、幅ズレ方向が右寄りであり、かつ姿勢傾きがない場合には、左旋回の駆動パターンを選択する。
図5(e)に示すように、幅ズレ方向が右寄りであり、かつ姿勢傾きが右向きである場合には、左旋回の駆動パターンを選択する。
図5(f)に示すように、幅ズレ方向が右寄りであり、かつ姿勢傾きが左向きである場合には、直線走行の駆動パターンを選択する。
図5(g)に示すように、幅ズレ方向が左寄りであり、かつ姿勢傾きがない場合には、右旋回の駆動パターンを選択する。
図5(h)に示すように、幅ズレ方向が左寄りであり、かつ姿勢傾きが右向きである場合には、直線走行の駆動パターンを選択する。
図5(i)に示すように、幅ズレ方向が左寄りであり、かつ姿勢傾きが左向きである場合には、右旋回の駆動パターンを選択する。
以上のようにしてどの種類の制御を行うかが決定されたら、選択された制御すなわち直線走行、左旋回、右旋回のいずれかを実行する(
図6中のステップS5)。
【0032】
<移動の継続と停止制御>
移動棚制御器50は、直線走行、左旋回、右旋回のいずれかの駆動パターンを実行(
図2中の駆動モータ18L,18Rによる駆動輪14L,14Rの回転速度設定値を更新)したら、停止位置検出器17が進行方向に他の棚の存在を検出していないかどうかを確認する(
図6中のステップS6)。
停止位置検出器17による検出がない場合、つまり未だ他の棚に接近しておらず、停止すべき位置へ至っていない場合には、移動棚11の移動を継続し、
図6中のステップS2からステップS5を繰り返す。すなわち、進行方向に存在する次の磁石32を磁気センサ30A,30Bが検出するまで、ステップS5で実行した直線走行、左旋回、右旋回のいずれかの駆動パターンを継続し、磁気センサ30A,30Bが次の磁石32を検出すると、その時点での移動棚11の姿勢傾きと幅ズレを改めて判断し、その時点での姿勢傾きと幅ズレの種類に基づき、次は直線走行、左旋回、右旋回のいずれの駆動パターンを実行するのかを選択・実行する。
これを繰り返すことにより、磁石32の位置を通過するごとに移動棚11の移動状態が調節され、姿勢傾きや幅ズレがあったとしてもそれらは修正されていく。
図5(a)〜(i)に示す各状態に応じてどの種類の駆動パターンを実行するかについては、その駆動パターンに伴う移動パターンでの移動の結果、姿勢傾きと幅ズレの状態が変化していくように選択されており、最終的に姿勢傾きも幅ズレもない状態、すなわち
図5(a)の状態に至るようになっている。
そして、停止位置検出器17が進行方向に他の棚の存在を検出したら、移動棚11が停止すべき位置へ至ったと判断し、駆動モータ18L,18Rの駆動を停止することにより、移動棚11の移動を停止する(
図6中のステップS7)。なおこの停止の際、そのときの姿勢を角速度計36の基準の向きとして再設定するとよい。
【0033】
以上のように制御される移動棚11を有する移動棚設備10においては、床面に一定間隔で設けられた磁石32上を磁気センサ30A,30Bが通過するたびに移動棚11の姿勢傾きや幅ズレが判断され、どのように移動していくべきであるかが姿勢傾きや幅ズレの状態に応じて制御されるので、停止位置に至るのを待つことなく、移動している間に姿勢傾きや幅ズレを補正することができる。また、磁石32の配置間隔が短距離(例えば300mm)であれば、この補正が頻繁に行われることになるので、姿勢傾きが発生したまま移動してしまう期間は短くなり、したがって幅ズレについては未然に防がれるか、発生してもごくわずかなものとなる。
また、移動棚11の姿勢傾きについて、角速度計36により検出される移動棚11の角速度を基に判断するので、床面の状態(凹凸や汚れなど)に影響されずに、実際の姿勢傾きの状態に基づいて制御を行うことができる。
【0034】
また、姿勢傾きが左右どちら向きであるかと幅ズレが左右方向どちら寄りであるかに応じて駆動輪14L,14Rの駆動パターンを決定(直線走行・右旋回・左旋回のいずれかを選択)するようにしているので、姿勢傾きや幅ズレの度合いを定量的に細かく(角度にして何度傾いているか、何mmズレているかを)検出しなくとも、右向きか左向きかといった定性的で大まかな状態さえ検出できればよく、また制御についても回転速度を細かく制御する必要がなく、予め定められた複数のパターンのうちから1つ選択するだけでよいので、検出や制御のための機器の構成を簡単・低コストにすることができる。
【0035】
また、移動棚設備10全体としては複数の移動棚11(
図1では3つ)の移動を制御する必要があるが、1つ1つの移動棚11の制御については姿勢傾きの向きと幅ズレ方向に応じて決められたとおりに駆動パターンを選択するという単純な制御を行うだけでよいので、移動棚11それぞれに対して専用の(最適な走行軌跡を演算するような)移動棚制御器50を用意する必要がなく、複数の移動棚11を1つの移動棚制御器50で制御することも可能となる。
【0036】
また、本実施形態における制御方法では、姿勢傾きの度合いや幅ズレの度合いによって駆動輪14L,14Rの回転速度を細かく調整していくことは行わず、単に姿勢傾きの向きと幅ズレ方向に応じて旋回の方向を決め、姿勢傾きの向きと幅ズレ方向が変化した時点で改めて旋回の方向を変更していくことを繰り返すことになるが、このような具体的な検出値に依存しない制御方法であれば、移動棚11自身のサイズや移動経路Wの前後方向長さなどの移動棚設備10固有の要因(環境条件)によって制御内容を変更するべき要素が少ないため、特定の移動棚設備10で使用した制御内容を他の移動棚設備においてもほとんど変更することなく流用することができる。
【0037】
また、磁気センサ30A,30Bによる検出状態を用いることでも大まかに移動棚11の姿勢傾きを判断することが可能であるので、具体的な角度を調べることが可能な角速度計36と併用することにより、姿勢傾きの判断を確実に行うことができ、また、角速度計36が故障した場合でも姿勢傾きの判断をすることができる。
【0038】
なお、上記の実施形態においては、角速度計36を移動棚11の下部かつ前後方向・左右方向の中央部に設けているが、角速度計36の配置箇所はこれに限るものではなく、移動棚11の姿勢傾きの判断が正しく行える程度に角速度の検出が行える位置に配置されていればよく、例えば移動棚11の上部や前面に取り付けられてもよい。
【0039】
また、上記の実施形態においては、指標体および指標体検出手段として磁石32と磁気センサ30A,30Bを用いているが、これらに代えて、床面に光反射板を設置し、移動棚11下部にフォトリフレクタを設けるような光学的検出方式にしてもよい。
このようにすると、床面が金属板であるなど磁気検出が難しくなる環境であっても検出を滞りなく行える。一方、磁石32と磁気センサ30A,30Bを用いる場合には、床面に多少の光学的汚れがあっても検出が阻害されないという利点がある。また、金属片と金属検知センサを用いるようにしても同様の利点がある。
また、上記の実施形態においては、左右方向に並んだ複数の検出素子31のどれが磁石32を検出してONになるかによって幅ズレを検出しているが、磁気センサ30A,30Bとして磁気の強さや磁力線の方向を検出できるものを使用し、どのような磁気が検出されたかの検出状態に基づいて幅ズレ等を検出するようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施形態においては、磁石32が一定間隔で並べられた磁石列34を指標路としているが、磁石を用いて構成された指標路として、移動経路Wに沿って延びる磁石テープ(または長尺状の磁石板)を設けてもよい。このように構成する場合、指標路としての磁石テープを1本のみとしてもよいが、姿勢傾きと幅ズレの検出確実性を高めるために、磁石テープを複数本設けてもよいし、磁石列34と磁石テープとを併用してもよい。
また、上記の実施形態においては、
図1に示すように磁気センサ30A,30Bを移動棚11の下方で右側面から右方へと突出するように設けているが、磁気センサ30A,30Bを配置する位置はこれに限るものではなく、例えば移動棚11の下面に取り付けてもよい。この場合には下面の磁気センサ30A,30Bから磁石32の検出が可能なように、移動棚11が通過する領域の床面に磁石列34を移動経路Wに沿って設けるとよい。また停止位置検出器17の配置箇所も移動棚11の下方左右端に限るものではなく別の箇所に取り付けてもよい。