(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、
図1〜
図3を用いて説明する。本実施形態では、化学蓄熱システム10を車両用空調装置に適用している。車両用空調装置は、空調ユニットと、空調ユニットの構成機器を作動制御する空調制御装置とを備えている。以下、制御手段である空調制御装置を空調ECUと呼ぶ場合がある。
【0015】
空調ユニットは、例えば、大型車両のキャビンの壁面に配置される。空調ユニットは、空調ダクトを有している。空調ダクトには、内部の空気通路に空気流れを発生させる遠心式のブロワが設けられている。ブロワは空調ECUにより作動制御され、駆動用モータに印加されるブロワ電圧に基づいて所定の回転数で回転するようになっている。ブロワの作動により、空調ダクト内には、吸込口から吹出口や排出口へ向かう空気流れが形成される。
【0016】
空調ダクト内の一つの空気通路には、化学蓄熱システム10の熱交換器11が配設されている。熱交換器11は、凝縮器もしくは蒸発器として機能する多機能熱交換器である。一方、他の空気通路には、化学蓄熱システム10の化学蓄熱反応器(以下、「反応器」ということがある)12が配設されている。化学蓄熱システム10は、熱交換器11、反応器12、弁装置13および水タンク(図示せず)を含んで構成されている。
【0017】
反応器12は、水容器21と蓄熱材22とを有している。水容器21は、例えば金属製の容器体であり、内部に蓄熱材22を収容している。蓄熱材22は、化学蓄熱材であって、物理吸着材とともに水容器21内に収容される。蓄熱材22は、吸熱した際に反応媒体が脱離する脱離反応して蓄熱するとともに、気相の反応媒体が固定化される固定化反応に伴って放熱する。脱離反応は、反応媒体が蓄熱材22から脱離する化学的脱離反応と呼ぶことができる。また、固定化反応は、反応媒体が蓄熱材22に付加する化学的付加反応と呼ぶことができる。また、固定化反応は、気相の反応媒体が蓄熱材22に化学的に吸着される化学的吸着反応と呼ぶこともできる。
【0018】
本実施形態では、例えば、蓄熱材22としてアルカリ土類金属の水酸化物の1つである水酸化カルシウムを用い、反応媒体として水(水蒸気)を用いることができる。したがって、吸熱したときには、下記式(1)の水酸化カルシウムの脱水反応により蓄熱する。
【0019】
Ca(OH)
2+109kJ→CaO+H
2O(Gas) …(1)
また、下記式(2)の酸化カルシウムの水和反応によって水酸化カルシウムに復原することにより、発熱が起こり蓄熱材22から放熱される。
【0020】
CaO+H
2O(Gas)→Ca(OH)
2+109kJ …(2)
水容器21には、水容器21の内部とは隔絶された水容器21の外部となる部分に媒体流路23が形成されている。媒体流路23は、水容器21の外側に形成されている。これによって媒体流路23と水容器21を介して、媒体流路23内を通過する媒体と蓄熱材22とが熱交換可能となる。媒体流路23を通過する熱媒体、本実施形態では空気を想定しており、上記の式(2)の水和反応の際には、蓄熱材22から生じる熱を奪い去る役目を担う。また、水容器21の外部となる部分には、蓄熱材22を加熱する加熱手段である電気ヒータ(図示せず)が配設されている。電気ヒータは媒体流路23に隣接して配置され、水容器21の外面に密着している。
【0021】
加熱手段は、電気ヒータに限定されず、他のヒータであってもよい。また、車両に搭載された内燃機関が排出する排ガスの熱を利用する加熱手段であってもよい。排ガスを直接あるいは排ガスの熱を供給した空気を、媒体流路23を通過するようにすれば、上記の式(1)の脱水反応の際の熱源として利用することができる。
【0022】
図1に示すように、熱交換器11は、容器31と熱交換部32とを有している。容器31および熱交換部32は、いずれも、例えば金属製である。熱交換部32は、複数の扁平チューブ33と扁平チューブ33内に配設されたフィン34とを有している。複数の扁平チューブ33は、互いに間隔を空けて積層され、それぞれの扁平チューブ33が容器31を
図1紙面表裏方向に延びて貫通するように配置されている。
【0023】
したがって扁平チューブ33の内部空間は、容器31の外部と連通しており、
図1紙面表裏方向に延びる空気通路を形成している。扁平チューブ33内の空気通路は、容器31の内部とは隔絶されており、車両用空調装置のブロワにより送風される空気が流れる。フィン34は、例えばコルゲートフィンであり、ろう付け等により扁平チューブ33に接合されている。扁平チューブ33とフィン34とは熱的に接続されている。
【0024】
熱交換器11は、容器31内の水と扁平チューブ33内を流れる空気との熱交換により水の凝縮もしくは蒸発を行なう。容器31内の水蒸気が扁平チューブ33内を流れる空気に放熱して液相の水となる場合には、熱交換器11は凝縮器として機能する。容器31内の水蒸気は、下記式(3)のように凝縮潜熱を空気に放熱する。
【0025】
H
2O(Gas)→H
2O(Liq)+44kJ …(3)
容器31内の液相の水が扁平チューブ33内を流れる空気から吸熱して水蒸気となる場合には、熱交換器11は蒸発器として機能する。容器31内の水は、下記式(4)のように蒸発潜熱を空気から吸熱する。
【0026】
H
2O(Liq)→H
2O(Gas)−44kJ …(4)
図1に示すように、水容器21と容器31とは水蒸気配管14で接続されている。水蒸気配管14により、水容器21の内部と容器31の内部とは連通可能となっている。弁装置13は、水蒸気配管14の内部に形成される水蒸気通路の通路断面積を調節する。弁装置13は、水蒸気配管14を介して水容器21内部と容器31内部との間を移動する水蒸気量を調節する。弁装置13は、空調ECUから出力される制御信号によって、その開度が制御される。
【0027】
水蒸気配管14の容器31側の開口端部は、容器31の上部に開口している。図示例では、水蒸気配管14の容器31側の開口端部は、容器31の天井部に開口している。
【0028】
図1に示すように、熱交換器11の容器31の下部には、水配管35を介して水タンク(図示せず)が接続している。図示例では、水配管35の容器31側の開口端部は、容器31の底部に開口している。
【0029】
水タンクは、内部に容器31内へ供給するための水を貯留する。また水タンクは、容器31内で凝縮して復水した水を貯留する。水配管35には、水タンク内から容器31内へ供給される水の量を調節する流量調節器が設けられている。流量調節器は、空調ECUから出力される制御信号によって、その水供給作動が制御される。また、流量調節器は、水配管35を介して水タンク内から容器31内へ供給した水量に関する情報を出力する。流量調節器には、例えば、マスフローコントローラを用いることができる。
【0030】
容器31の上部には、容器31の内部の圧力を検出する圧力検出手段である圧力センサ36が設けられている。本実施形態では、圧力センサ36は、容器31の天井部に設けられ、常時容器31内の水蒸気の圧力を検出するようになっている。圧力センサ36は検出した圧力情報を空調ECUへ出力する。
【0031】
空調ECUは、CPU、ROM、RAM等を備えている。空調ECUは、マイクロコンピュータ、入力回路、出力回路等を有している。マイクロコンピュータは、種々の演算処理を行う。入力回路は、各種センサ等から入力された信号をA/D変換してマイクロコンピュータに出力する。出力回路は、マイクロコンピュータからの制御信号を出力信号仕様に変換して各制御機器に出力する。
【0032】
空調ECUには、例えば車室内の計器盤近傍に設けられたコントロールパネルの各種スイッチからのスイッチ信号、及び各種センサからの検出信号等が入力される。また、例えば車両を制御する車両制御手段から、車両の速度に関する情報等も入力する。空調ECUは、入力された各種信号や情報等に基づいて、弁装置13、電気ヒータ、ブロワ等を作動制御するようになっている。空調ECUは、入力情報等に基づいて、空調制御および化学蓄熱システム運転モード設定制御等を行なう。
【0033】
空調ECUは、車両に余剰のエネルギーがある場合には、化学蓄熱システム10の蓄熱材22に蓄熱する蓄熱運転を行なうことができる。また、空調ECUは、入力された各種信号や情報等に基づいて、車室内の空調が必要であると判断した場合には、化学蓄熱システム10に蓄えたエネルギーを利用して、冷房運転や暖房運転を行なうことができる。空調ECUは、車両用空調装置を、蓄熱運転モード、冷房運転モード、および暖房運転モードに設定切り替えすることができる。
【0034】
空調ECUは、例えば、車両が所定速度以上の高速走行を行なっているときには、オルタネータにおける余剰発電電力を利用して、化学蓄熱システム10に蓄熱する蓄熱運転を行なう。蓄熱運転する場合は、空調ECUは、反応器12の電気ヒータに通電して蓄熱材22を加熱する。電気ヒータの加熱により、水容器21内では、上記した式(1)のように水酸化カルシウムが脱水反応して化学蓄熱する。
【0035】
脱水反応に伴い水容器21内で発生した水蒸気は、水蒸気配管14内を流通して熱交換器11の容器31内へ導入される。容器31内へ導入された水蒸気は、空気通路を流れる空気により冷却されて、上記の式(3)のように凝縮して液相の水となる。このとき、熱交換器11は、凝縮器として機能している。熱交換器11により凝縮した水は、水配管35を介して水タンク内へ回収される。
【0036】
空調ECUは、車室内を冷房する必要がある場合には、吹出口から車室内へ冷風を吹き出す冷房運転を行なう。水容器21内では、上記した式(2)の酸化カルシウムの水和反応によって水酸化カルシウムに復原することにより、発熱が起こり蓄熱材22から放熱される。蓄熱材22から、空気通路を流れる空気に放熱され、排出口から車室外に放出される。
【0037】
このとき、空調ECUは、弁装置13を開状態としている。水和反応に伴い水容器21内で必要となる水蒸気は、水蒸気配管14内を介して熱交換器11の容器31内から供給される。容器31内では液相の水が空気通路を流れる空気から吸熱して蒸発して水蒸気となる。容器31内の水は、上記の式(4)のように蒸発潜熱を空気から吸熱する。これにより、空気通路を流れ熱交換器11で冷却された空気は、吹出口から車室内へ吹き出す。このとき、熱交換器11は、蒸発器として機能している。
【0038】
空調ECUは、車室内を暖房する必要がある場合には、吹出口から車室内へ温風を吹き出す暖房運転を行なう。水容器21内では、上記した式(2)の酸化カルシウムの水和反応によって水酸化カルシウムに復原することにより、発熱が起こり蓄熱材22から放熱される。蓄熱材22から、媒体流路23を通過する空気に放熱される。
【0039】
このとき、空調ECUは、弁装置13を開状態としている。水和反応に伴い水容器21内で必要となる水蒸気は、水蒸気配管14内を介して熱交換器11の容器31内から供給される。容器31内では液相の水が空気通路を流れる空気から吸熱して蒸発して水蒸気となる。容器31内の水は、上記の式(4)のように蒸発潜熱を空気から吸熱する。これにより、空気通路を流れ熱交換器11で熱交換される空気は、冷却され除湿される。このとき、熱交換器11は、蒸発器として機能している。
【0040】
次に、本実施形態の反応器12の構成について
図2および
図3を用いて、さらに具体的に説明する。
図2では、
図1の切断面線II−IIから見て示している。
【0041】
反応器12は、媒体流路23、水容器21、水蒸気流路24、蓄熱材22および支持部25を含んで構成される。水容器21には、水蒸気入口26が上部に形成されている。水蒸気入口26には、水蒸気配管14が接続されており、熱交換器11からの水蒸気が水蒸気配管14を介して流入する。
【0042】
水容器21の両側には、熱媒体である空気が流れる媒体流路23が形成されている。
図1では、媒体流路23は、上下方向に延び、上方から下方に向かって空気が流れる。空気の流れる方向は、媒体流路23の下方から上方に向かってもよい。また、媒体流路23は、左右方向、すなわち紙面の表裏方向に延び、紙面の表裏方向に向かって空気が流れてもよい。
【0043】
水容器21の内部には、水蒸気入口26から流入した水蒸気が流れる水蒸気流路24が左右方向の中央に形成されている。水蒸気流路24は、上下方向に延びる。また
図2に示すように、水蒸気流路24は、扁平状である。
【0044】
水容器21の内部には、蓄熱材22が設けられている。蓄熱材22は、水蒸気流路24と媒体流路23との間に設けられ、前述のように水蒸気流路24を流れる水蒸気(水)と化学反応して蓄熱することができる。
【0045】
支持部25は、水蒸気流路24内に設けられ、水蒸気流路24に臨む蓄熱材22の一部に接触して水蒸気流路24を支持する。そして支持部25の形状は、水蒸気流路24を流れる水蒸気の一部が水蒸気流路24の下流側に位置する蓄熱材22まで流れ、水蒸気流路24の流れ方向の全域にわたって蓄熱材22と化学反応するように設定されている。
【0046】
支持部25は、板状の支持体27と二つの蓄熱用フィン28とを含んで構成される。支持体27は、金属製の板材である。したがって支持体27は、水蒸気の厚み方向の流れを遮断している。
【0047】
蓄熱用フィン28は、凹凸を有するコルゲートフィンである。蓄熱用フィン28は、支持体27を挟んで、水蒸気流路24の流れ方向に凹凸が延びるように配置されている。そして
図2に示すように、凹凸の配置が同じ向きとなるように、換言すると、凹同士が支持体27を挟んで対向し、凸同士が支持体27を挟んで対向するように配置される。
【0048】
これによって1つの蓄熱用フィン28を見ると、
図3に示すように、蓄熱用フィン28と支持体27に囲まれた水蒸気流路24と、蓄熱用フィン28と蓄熱材22とに囲まれた水蒸気流路24とが形成される。蓄熱用フィン28と支持体27に囲まれた水蒸気流路24は、水蒸気流路24に流入する水蒸気の一部を蓄熱材22に化学反応させることなく、水蒸気流路24の下流側まで案内して、水蒸気流路24の下流側にて蓄熱材22に化学反応させる独立流路29である。また蓄熱用フィン28と蓄熱材22とに囲まれた水蒸気流路24は、水蒸気流路24の流れ方向にわたって蓄熱材22に向かって開口して、水蒸気流路24に流入する水蒸気の一部を蓄熱材22に化学反応させる開放流路30である。換言すると、2つのフィン34の凹凸を組み合わせて、独立流路29および開放流路30とが形成されている。
【0049】
また支持部25の上下方向の長さは、
図1に示すように、水蒸気流路24の長さ以下になっている。したがって支持部25の下方側の端部と、水容器21の底部との間には、隙間がある。これによって独立流路29を通過した水蒸気は、支持部25の下方側の端部で水容器21内に放出される。
【0050】
このような構成の反応器12に水蒸気が流入すると、水蒸気は開放流路30と独立流路29とに分かれて各流路を流下する。開放流路30に流入した水蒸気は、蓄熱材22に開放されているので、蓄熱材22に接触した水蒸気すると化学反応して蓄熱する。したがって開放流路30を流れる水蒸気は、徐々に蓄熱材22と化学反応する。
【0051】
これに対して独立流路29に流入した水蒸気は、支持体27と2つの蓄熱用フィン28とに囲まれているので、蓄熱材22と化学反応することなく、支持体27の下方側の端部まで流れる。そして支持体27の下方側の端部から、水容器21の底部に向かって流れる。するとそこには蓄熱材22が露出している空間であるので、独立流路29と流れた水蒸気が蓄熱材22と反応する。したがって水蒸気流路24の上下方向の全域にわたって、水蒸気と蓄熱材22とを化学反応させることができる。
【0052】
また支持部25は、2つのフィン34の凹凸の底面に、水蒸気が通過可能でかつ蓄熱材22の粒子が通過できない程度の微細な穴を形成してもよい。これによって、水蒸気が微細な穴を通過して、蓄熱材22に到達することができるので、水蒸気と蓄熱材22の化学反応を効率的させることができる。
【0053】
また、3つ以上のフィン34を組み合わせて独立流路29と開放流路30を構成することもできる。3つ以上のフィン34を組み合わせる場合は、少なくとも蓄熱材22に接する両端の2つのフィン以外に穴が開いていれば、水蒸気と蓄熱材22の化学反応を効率的にさせることができる。
【0054】
以上説明したように本実施形態の反応器12では、水蒸気流路24に支持部25が設けられる。支持部25は、水蒸気流路24に臨む蓄熱材22の一部に接触して水蒸気流路24を支持する。したがって支持部25によって、水蒸気流路24を支持して、水蒸気流路24を確保している。そして支持部25の形状は、水蒸気流路24を流れる水蒸気の一部が水蒸気流路24の下流側に位置する蓄熱材22まで流れ、水蒸気流路24の流れ方向の全域にわたって蓄熱材22と化学反応するように設定されている。これによって水蒸気の一部は、支持部25によって水蒸気流路24の下流側まで流れ、下流側にて蓄熱材22と化学反応することができる。したがって上流側に位置する蓄熱材22と下流側に位置する蓄熱材22とで、水蒸気の供給される量を近づけることができる。これによって水蒸気流路24にわたって蓄熱材22に供給される水蒸気のばらつきが少なくすることができる。したがって蓄熱材22により多く水蒸気が供給され、水和反応することができ、水蒸気を有効に用いることができる。
【0055】
また本実施形態では、上流側(手前)の蓄熱材22と反応する開放流路30と、下流側(奥)の蓄熱材22と反応する独立流路29を確保しているため、蓄熱材22を均一に水和反応させることができる。その結果、反応のばらつきを抑制することができ、蓄熱材22反応時の膨張応力も反応器12と支持部25に均一に働き、耐久力が向上する。また反応が均一化するので、熱出力が取り出しやすくなる。
【0056】
また本実施形態では、水蒸気流路24に2つの蓄熱用フィン28を積層している。したがって水蒸気流路24に1つの蓄熱用フィン28を設置する構成に比べると、フィン高さが低くすることができる。したがって蓄熱用フィン28の座屈強度を向上させることができる。
【0057】
また本実施形態では、支持体27は板材であるが、多孔体にしてもよい。支持体27を多孔体にすると、蓄熱材22が膨張および収縮した際の応力を吸収することができるので、反応器12および支持部25の破損を防止することができる。
【0058】
また支持体27を多孔体にすると、支持体27の厚み方向に水蒸気が通過させることができる。したがって支持体27の形状を変えることなく、下流側(奥)の蓄熱材22と反応する水蒸気の通路を大きくすることができるので、蓄熱材22の反応をより均一にすることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、
図4を用いて説明する。本実施形態では、蓄熱用フィン282の構成に特徴を有する。
【0060】
蓄熱用フィン282は、蓄熱材22に向かって凸となっている面積が、凹となっている面積よりも大きい。換言すると、蓄熱材22側位置する表面の50%以上が、
図4に示すように、蓄熱材22と接している。したがって開放流路30の流路断面積よりも、独立流路29の流路断面積のほうが大きくなる。
【0061】
このような本実施形態では、下流側(奥)の蓄熱材22と反応する水蒸気の通路(独立流路29)を大きくすることができるので、蓄熱材22の反応をより均一にすることができる。また蓄熱材22の膨張応力を受圧する面積が増加しているので、膨張応力に対する耐久性が向上することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、
図5を用いて説明する。本実施形態では、支持部25の構成に特徴を有する。
【0063】
支持部25は、2つの蓄熱用フィン28および支持体27に加えて、さらに変更流路40を有する。変更流路40は、水蒸気流路24の下流側の端部に位置し、水蒸気流路24の下流側の端部まで流れてきた水蒸気の流れ方向を、水蒸気流路24の厚み方向に変更する。変更流路40は、蓄熱用フィン28と同じフィン形状であるが、フィン形状に限るものではなく、流路を変更できる形状であればよい。
【0064】
変更流路40は、
図1において蓄熱用フィン28および支持体27の下流側の端部と、水容器21の底部との間に設けられる。そして前述のように独立流路29を流れてきた水蒸気を、水蒸気流路24の厚み方向(
図1の矢印の方向)に導く。
【0065】
このような本実施形態では、水蒸気流路24の下流側に位置する蓄熱材22に対して、独立流路29を流下した水蒸気を効率よく化学反応させることができる。したがって蓄熱性能を向上することができる。また変更流路40はフィン形状であるので、熱容量を小さくすることができる。
【0066】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に関して、
図6を用いて説明する。本実施形態は、前述の第3実施形態と類似しており、第3実施形態とは変更流路404の変更方向が異なる。
【0067】
本実施形態の変更流路404は、水蒸気流路24の下流側の端部まで流れてきた水蒸気の流れ方向を、水蒸気流路24と交わる扁平方向に変更する。したがって扁平方向である水蒸気の流れ方向は、
図1の紙面表裏方向になる。また変更流路404の長さは、水容器21の長さ方向よりも短く、蓄熱材22の一部が露出している。これによって蓄熱材22と水蒸気とを化学反応させることができる。さらに、蓄熱材22の膨張応力に対する耐久性を向上することができる。
【0068】
このような本実施形態であっても、水蒸気流路24の下流側に位置する蓄熱材22に対して、独立流路29を流下した水蒸気を効率よく化学反応させることができる。したがって蓄熱性能を向上することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0070】
上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0071】
前述の第1実施形態では、支持部25の構成は、2つの蓄熱用フィン28と支持体27を含む構成であったが、支持体27を含まず、単に蓄熱用フィン28を2枚以上積層した構成であってもよい。また蓄熱用フィン28の向きを変えて、いわゆるもなか合わせ、鏡合わせのように、2枚の蓄熱用フィン28を積層してもよい。これによって支持体27なしで独立流路29および開放流路30を構成することができる。
【0072】
前述の第1実施形態では、支持体27は独立流路29および開放流路30を含む構成であったがこのような構成に限るものではない。たとえば支持部25は、水蒸気流路24の設けられる筒状であり、蓄熱材22に臨んで開口する開口部を水蒸気流路24の長さ方向に間隔をあけて複数有し、水蒸気流路24に臨む蓄熱材22の一部に接触して水蒸気流路24を支持する構成であってもよい。これによって支持部25の内部を流れる水蒸気は、開口部から徐々に流出し、蓄熱材22と化学反応させることができる。さらに下流側の方が開口部の開口面積が大きくすると、上流側での化学反応を抑制しつつ、下流側まで水蒸気を送って水和反応を生じることができる。
【0073】
前述の第1実施形態では、反応媒体が水であり、蓄熱材22が水酸化カルシウムであった。蓄熱材22は、反応媒体が固定化(吸着)された際に水酸化カルシウムとなり、反応媒体が脱離された際に酸化カルシウムとなるものであった。しかしながら、これに限定されるものではない。水を反応媒体とする場合には、蓄熱材22としては、例えば、下記するものを用いることができる。酸化物系の材料として、上記したCaOのほか、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)等のアルカリ土類金属の無機酸化物を用いることができる。また、酸化リチウム等のアルカリ金属の無機酸化物、酸化アルミニウム(Al)、等の無機酸化物などであってもよい。これらの金属酸化物は、一種、もしくは、二種以上を用いることができる。
【0074】
また前述の第1実施形態では、化学蓄熱システム10は、車両用空調装置の冷熱源として用いられているが、車両用空調装置に限るものではない。たとえば住宅用として用いてもよい。また加熱対象も空気に限るものではなく、空気以外の気体と熱交換してもよく、例えば、水等の液体であってもかまわない。