(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ファイバの一方側端面からコア測定用の光を入射して、前記光ファイバのコアを透過して前記光ファイバの他方側端面から出射した出射光を検出する第一工程と、前記他方側端面にクラッド測定用の光を照射して、前記他方側端面によって反射された反射光を検出する第二工程と、を同時に行って、前記出射光および前記反射光を一括して画像処理し、前記コアおよびクラッドの構造を測定する光ファイバの構造測定方法であって、
前記光ファイバの他方側端面側の被覆を除去して被覆端面を露出しておき、残った前記被覆端面に遮光手段を設けた状態で、前記第一工程および前記第二工程を行う、光ファイバの構造測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバの被覆材が紫外線硬化型樹脂である場合は、上記の測定方法で特に問題なく同時測定可能である。しかし、光ファイバの被覆材が例えばシリコン系樹脂である場合は、クラッドの外周に位置するプライマリ層の屈折率がクラッドとほぼ同等となる。その場合、光ファイバの構造を測定する際にコアおよびクラッドの画像処理において十分なコントラストが得られず、構造の寸法を正しく同時測定できなくなってしまう場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、クラッドとほぼ同等の屈折率を有する被覆が設けられた光ファイバにおいても、コアおよびクラッドの構造を同時に測定することが可能な光ファイバの構造測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る光ファイバの構造測定方法は、光ファイバの一方側端面からコア測定用の光を入射して、前記光ファイバのコアを透過して前記光ファイバの他方側端面から出射した出射光を検出する第一工程と、前記他方側端面にクラッド測定用の光を照射して、前記他方側端面によって反射された反射光を検出する第二工程と、を同時に行って、前記出射光および前記反射光を一括して画像処理し、前記コアおよびクラッドの構造を測定する光ファイバの構造測定方法であって、
前記光ファイバの他方側端面側の被覆を除去して被覆端面を露出しておき、残った前記被覆端面に遮光手段を設けた状態で、前記第一工程および前記第二工程を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クラッドと同等の屈折率を有する被覆が設けられた光ファイバにおいても、コアおよびクラッドの構造を同時に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る光ファイバの構造測定方法は、
(1) 光ファイバの一方側端面からコア測定用の光を入射して、前記光ファイバのコアを透過して前記光ファイバの他方側端面から出射した出射光を検出する第一工程と、前記他方側端面にクラッド測定用の光を照射して、前記他方側端面によって反射された反射光を検出する第二工程と、を同時に行って、前記出射光および前記反射光を一括して画像処理し、前記コアおよびクラッドの構造を測定する光ファイバの構造測定方法であって、
前記光ファイバの他方側端面側の被覆を除去して被覆端面を露出しておき、残った前記被覆端面に遮光手段を設けた状態で、前記第一工程および前記第二工程を行う。
本願発明者は、コアおよびクラッドの画像処理において十分なコントラストが得られない原因を調査した。その結果、他方側にあるクラッド測定用の光を意図的に遮断すると、コア径などの透過光を用いる測定は正常に測定できることから、このクラッド測定用の光が他方側の被覆内部に伝わり、さらにクラッド内部に伝わって、測定に影響している可能性が高いことを突き止めた。
そこで、本発明では、被覆除去した端面から被覆内部、およびクラッド内部へ光が伝わることを防止するために、残った被覆の端面に光が入射することを防ぐ遮光手段を予め設けている。これにより、クラッド測定用の光が被覆内部に入射することを防ぎ、コアおよびクラッドの画像処理におけるコントラストを正常に保つことができる。したがって、クラッドとほぼ同等の屈折率を有する被覆が設けられた光ファイバにおいても、コア及びクラッドの構造を同時測定することが可能となる。
【0011】
(2) 前記遮光手段は、前記クラッド測定用の光の波長に対して黒色の吸光材である。
被覆にクラッド測定用の光が入射することを、簡易な方法で確実に防ぐことができる。
【0012】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバの構造測定方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの構造測定方法で使用する光ファイバの構造測定装置の概略構成図である。
図1に示すように、光ファイバの構造測定装置1は、コア測定用光源2、光学レンズ3、クラッド測定用光源4、ハーフミラー5、ビデオカメラ6、画像処理装置7を備えている。光ファイバの構造測定時には、
図1に示すように、測定対象である光ファイバ10の長手方向の一方の端部をホルダ8で固定し、他方の端部をホルダ9で固定する。
【0014】
本実施形態の測定対象である光ファイバ10は、
図2に示すように、コア11、クラッド12からなる裸ファイバ13が被覆材14で被覆された光ファイバである。光ファイバ10のコア11およびクラッド12は石英ガラスからなるものである。被覆材14は、内側のプライマリ層14aと外側のセカンダリ層14bの2層で構成されている。
また、
図2では光ファイバ10の各部分の屈折率もあわせて図示している。本実施形態の測定対象である光ファイバ10の被覆は、例えばUV硬化型樹脂(ウレタンアクリレートなど)でも良いが、ここではシリコン系樹脂など、
図2に示すような、プライマリ層14aがクラッド12とほぼ同等の屈折率を有する被覆材14を例に説明する。
【0015】
本実施形態の光ファイバの構造測定方法は、JIS C 6822に準じたNFP法による測定方法である(測定装置としては、例えば、Photon Kinnetics社製 2400 を使用できる)。
本実施形態の光ファイバの構造測定方法では、
図1で示した光ファイバの構造測定装置1を使用する。まず、測定対象である光ファイバ10の一方の端部をホルダ8で固定し、他方の端部をホルダ9で固定する。そして、下記の第一工程によるコア11の透過光(他方側端面からの出射光)の検出と、第二工程によるクラッド12の反射光の検出とを同時に行う。
【0016】
(第一工程)
図1の状態で、コア測定用光源2から発せられた光を光ファイバ10の一方の端部の先端面である一方側端面10aからコア11へ入射させる。入射した光は、光ファイバ10の長手方向に向かってコア11を透過し、光ファイバ10の他方の端部の先端面である他方側端面10bから出射され、光学レンズ3およびハーフミラー5を介してビデオカメラ6で撮影される。この撮影された画像により、光ファイバ10のコア11を透過して他方側端面10bから出射した出射光が画像処理装置7で検出される。
【0017】
(第二工程)
図1の状態で、クラッド測定用光源4から発せられた光をハーフミラー5および光学レンズ3を介して、被覆材14を除去した状態の光ファイバ10の他方側端面10bのクラッド12に対して照射させる。クラッド12の反射光は上記コア11を透過して他方側端面10bから出射された出射光と同時に、ビデオカメラ6で撮影される。この撮影された画像により、クラッド12の反射光が画像処理装置7で検出される。
【0018】
第一工程で検出されたコア11の出射光と、第二工程で検出されたクラッド12の反射光は、画像処理装置7によって、一括して画像処理される。この画像処理により、例えば、コア径、コア非円率、コア偏心量、クラッド径、クラッド非円率およびクラッド偏心量など、コア11およびクラッド12の構造が測定される。
【0019】
次に、
図3、
図4を参照して、光ファイバ10の他方側端面10bが接続される側(他端側)の光ファイバの構造測定装置1の構成および本実施形態の光ファイバの構造測定方法の詳細について説明する。
図3は、光ファイバの他方側端面側を測定している状態を示す図であり、(a)は従来の光ファイバの構造測定方法により測定している状態、(b)は本発明の実施形態に係る光ファイバの構造測定方法により測定している状態、(c)は(a)で測定している光ファイバの端面部分を横から見たところ、(d)は(b)で測定している光ファイバの端面部分を横から見たところを示す図である。
図4は、光ファイバの構造測定の結果の画像の一例を示す図であり、(a)は従来の光ファイバの構造測定方法による結果、(b)は本発明の実施形態に係る光ファイバの構造測定による結果である。
【0020】
図3に示すように、被覆材14が除去された光ファイバ10の他方側端面10bは、光ファイバ10の他方の端部がホルダ9に固定され、構造測定装置1の内部に挿通されている。これにより、クラッド測定用光源4から発せられた光が、
図1で示したハーフミラー5および光学レンズ3を介して、光ファイバ10の他方側端面10bに照射される構成となっている。
【0021】
図3の(a)〜(d)に示すように、光ファイバの構造測定方法を行う際には、光ファイバ10の他方側端面10bの近傍では、ホルダ9から露出する部分は被覆材14が除去され、クラッド12は空気層15にさらされた状態となっている。このため、クラッド測定用光源4からの光は、上記空気層15からも伝搬され(図の光A)、残った被覆材14の(他方側端面10b側の)被覆端面14cにも届く。そして、従来の測定方法を示す
図3の(a)、(c)では、空気層15から伝搬されてきた光Aは被覆端面14cよりプライマリ層14aの内部にも浸透する。
【0022】
被覆材14がシリコン系樹脂である場合は、プライマリ層14aの屈折率がクラッド12とほぼ同等である。このため、プライマリ層14aに浸透しその内部に伝搬された光が、プライマリ層14aに隣接するクラッド12の方にも浸透する。この浸透した光はクラッド12の内部を伝わり、その一部の光は他方側端面10bからも出射されてしまう。このため、
図4の(a)に示す画像のように、ビデオカメラ6で撮影されるコア11とクラッド12のコントラストが十分でなくなってしまう。すなわち、コア11とクラッド12の境界があいまいとなり、画像処理装置7によるコア11の構造の測定が正確にできず、また、それに伴い、クラッド12の構造の測定も、正確にできない。
【0023】
上記のようなコア11およびクラッド12の構造の測定が正確にできないという問題を防ぐ策として、被覆材14を剥いた部分の先端をホルダ9の内部へ隠し、光にさらさない方法も考えられる。しかしながら、この場合、ホルダ9の内部にて被覆材14が均等に満たされない(ホルダ9の内周と裸ファイバ13との間を満たす被覆が一部に無いため、不均一な隙間ができてしまう)影響から、被覆除去した部分においてキンク・曲がりが生じ、構造の測定ばらつきを生じさせるため、適さない。
【0024】
そこで、本実施形態の光ファイバの構造測定方法では、
図3の(b)、(d)に示すように、被覆材14の被覆端面14cおよびその近傍部分に、光が入射することを防ぐ遮光手段16を予め設けている。この遮光手段16は、例えば、クラッド測定用の光の波長に対して黒色となる吸光材を被覆端面14cおよびその近傍部分の光ファイバ10の表面に塗布したものなどであり、例えば油性マジックや、黒色塗料などである。本実施形態では遮光手段16を予め設けて測定を行っているので、空気層15を伝搬してきたクラッド測定用光源4からの光Aは、遮光手段16に遮られて被覆材14の被覆端面14cから被覆材14の内部に浸透することはない。
【0025】
本実施形態の光ファイバの構造測定方法による測定の結果として、ビデオカメラ6で撮影される画像は、例えば
図4の(b)に示すようになる。
図4の(b)の画像では、クラッド12が黒くなっており、明るいコア11の部分とのコントラストが十分にとれている。このように、コア11とクラッド12のコントラストが十分にとれているので、画像処理装置7によるコア11およびクラッド12の構造の測定が正確にできる。
【0026】
以上のように、本実施形態の光ファイバの構造測定方法では、被覆除去した端面から被覆材14の内部へ光が伝わることを防止するために、被覆材14の被覆端面14cに光が入射することを防ぐ遮光手段16を予め設けている。これにより、空気層15を伝搬してきたクラッド測定用光源4からの光Aが、被覆材14におけるプライマリ層14aの内部に入射することを防ぎ、画像処理装置7による画像処理におけるコントラストを正常に保つことができる。したがって、シリコン系樹脂などのクラッド12と同等の屈折率を有する被覆材14が設けられた光ファイバ10においても、コア11及びクラッド12の構造を同時測定することが可能となる。
また、遮光手段16として、クラッド測定用の光の波長に対して黒色の吸光材を用いることにより、被覆材14にクラッド測定用光源4からの光Aが入射することを、簡易な方法で確実に防ぐことができる。