特許第6350300号(P6350300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350300
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】部品搭載補助装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/14 20060101AFI20180625BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20180625BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B62D65/14 A
   B23P21/00 303A
   B23P19/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-10217(P2015-10217)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132428(P2016-132428A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊成
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−028879(JP,A)
【文献】 実開平04−040089(JP,U)
【文献】 実開昭63−181588(JP,U)
【文献】 特開2002−052425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00−67/00
B23P 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面又は天井に敷設されたレール部材に沿って移動可能に形成された装置本体と、当該装置本体に連結されたアーム部材と、当該アーム部材の先端部に上下方向へ移動可能に支持された把持部材とを備え、当該把持部材に係止された車両用部品を車両内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置であって、
前記装置本体には、バランスシリンダを装着し、当該バランスシリンダのピストンロッドと前記把持部材とを可撓ケーブルを介して連結したこと
前記可撓ケーブルには、アウターケーブルとインナーケーブルとから構成されるリモートコントロールケーブルを備えたことを特徴とする部品搭載補助装置。
【請求項2】
請求項に記載された部品搭載補助装置において、
前記可撓ケーブルは、前記アーム部材に沿って配策されたことを特徴とする部品搭載補助装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された部品搭載補助装置において、
前記装置本体と前記アーム部材とが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されたことを特徴とする部品搭載補助装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載された部品搭載補助装置において、
前記把持部材には、前記車両用部品を係止する爪部を備え、当該爪部が前記車両用部品の自重によって係止状態に作動するように形成されていることを特徴とする部品搭載補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両組立てラインにおいて、車両用部品を保持して車両内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両組み立てラインでは、作業効率を高めるために、大きくて重い車両用部品(例えば、シート部品など)を保持して車両内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置が用いられている。図10に、従来の部品搭載補助装置の一例を示す。
【0003】
図10に示すように、従来の部品搭載補助装置100には、例えば、天井に敷設されたレール部材101と、レール部材101に懸架され水平移動する装置本体102と、装置本体102に水平回転可能に軸支され、上下アーム部材103aを上下方向へ揺動可能に支持するバランス機構103と、上下アーム部材103aの先端部103bに水平回転可能に軸支された多関節アーム部材104と、多関節アーム部材104の先端部に支持された把持部材105とを備えている。この部品搭載補助装置100は、バランス機構103によって、把持部材105に把持された車両用部品(シート部品)Wを、重量バランスを取りながら上下動させ、車両S内の所定位置に搭載補助する。そのため、バランス機構103には、図11に示すように、平行リンクを構成する上下アーム部材103aの基端部に連結ピン103cと可動板103dとを介して連結されたバランスシリンダ103eを備えている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−291962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記部品搭載補助装置100では、バランス機構103が、車両用部品(シート部品)Wと把持部材105と多関節アーム部材104と上下アーム部材103aとが有するすべての重量をバランスさせる必要があり、バランスシリンダ103eを含むバランス機構103全体の大型化が避けられない。また、バランス機構103の大型化は、バランス機構103を支持する装置本体102やその駆動装置等の大型化、複雑化にも繋がるとともに、上下方向・水平方向への旋回角度を規制する安全装置の付加が必要となる。そのため、部品搭載補助装置100は、車両用部品(シート部品)W以外の装置重量が嵩むことによって、部品搭載補助装置100全体の大型化、複雑化がなされていた。
その結果、設備費が増加する問題ばかりでなく、大型の部品搭載補助装置100を配置するため、工程配置が制約されたり、生産台数の変動時における作業編成替えの障害となる問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る部品搭載補助装置は、次のような構成を有している。
(1)床面又は天井に敷設されたレール部材に沿って移動可能に形成された装置本体と、当該装置本体に連結されたアーム部材と、当該アーム部材の先端部に上下方向へ移動可能に支持された把持部材とを備え、当該把持部材に係止された車両用部品を車両内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置であって、
前記装置本体には、バランスシリンダを装着し、当該バランスシリンダのピストンロッドと前記把持部材とを可撓ケーブルを介して連結したことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、装置本体には、バランスシリンダを装着し、当該バランスシリンダのピストンロッドと把持部材とを可撓ケーブルを介して連結したので、装置本体及びアーム部材に対して車両用部品が係止された把持部材だけをその重量バランスを取りながら上下方向へ移動させることができる。そのため、リンク機構等を用いた大型のバランス機構を廃止することができる。その結果、部品搭載補助装置全体の大型化、複雑化を回避することができる。
よって、本発明によれば、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【0009】
(2)(1)に記載された部品搭載補助装置において、
前記可撓ケーブルには、アウターケーブルとインナーケーブルとから構成されるリモートコントロールケーブルを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、可撓ケーブルには、アウターケーブルとインナーケーブルとから構成されるリモートコントロールケーブルを備えたので、把持部材に係止された車両用部品の荷重を、リモートコントロールケーブルを介して直接的にバランスシリンダに伝達することができる。そのため、バランスシリンダには、強度部材となるアーム部材の荷重が作用せず、バランスシリンダに作用する荷重を大幅に低減できる。
その結果、バランスシリンダ自体の小型化に寄与することができ、部品搭載補助装置の更なる簡素化を図ることができる。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載された部品搭載補助装置において、
前記可撓ケーブルは、前記アーム部材に沿って配策されたことを特徴とする。
【0012】
本発明においては、可撓ケーブルは、アーム部材に沿って配策されたので、可撓ケーブルの損傷を防止することができる。また、作業者が部品搭載補助装置を操作する時、可撓ケーブルが邪魔にならず、可撓ケーブルの垂れ下がり等を気遣う必要もない。そのため、狭い作業域でも、部品搭載補助装置を効率的に操作することができる。
その結果、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対してより一層容易に対応できる。
【0013】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された部品搭載補助装置において、
前記装置本体と前記アーム部材とが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、装置本体とアーム部材とが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されたので、車両用部品が係止された把持部材を装置本体における走行車輪等を有する走行部の上方又は下方に配置させることができる。そのため、装置本体の走行部に対する車両用部品及び把持部材に基づく偏心荷重を低減させることができる。
その結果、装置本体の構造を簡素化でき、より簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された部品搭載補助装置において、
前記把持部材には、前記車両用部品を係止する爪部を備え、当該爪部が前記車両用部品の自重によって係止状態に作動するように形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、把持部材には、車両用部品を係止する爪部を備え、当該爪部が車両用部品の自重によって係止状態に作動するように形成されているので、把持部材の爪部を作動させる駆動源や駆動用の配線又は配管を廃止することができる。そのため、把持部材の構造をより一層簡素化させることができるとともに、駆動用の配線や配管を考慮することなく部品搭載補助装置を工程内で移動させることができる。
その結果、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる、より一層簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えが容易に対応できる簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る部品搭載補助装置の側面図である。
図2図1に示す部品搭載補助装置の拡大側面図である。
図3図1に示す把持部材の動作説明図(下降時)である。
図4図1に示す把持部材の動作説明図(上昇時)である。
図5】本発明の第2実施形態に係る部品搭載補助装置の側面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る部品搭載補助装置の斜視図である。
図7図6に示す把持部材の側面図である。
図8図6に示す把持部材の正面図である。
図9図6に示す把持部材における爪部の動作説明図である。(a)は、車両用部品の非係止状態を示し、(b)は、車両用部品の係止状態を示す。
図10】従来の部品搭載補助装置の側面図である。
図11】特許文献1に記載された搭載装置における助力装置(バランス機構)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る実施形態である部品搭載補助装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、第1実施形態の部品搭載補助装置の全体構成を説明し、その操作方法を説明する。次に、第2実施形態及び第3実施形態の部品搭載補助装置における特徴について説明する。
【0020】
<第1実施形態に係る部品搭載補助装置の全体構成>
まず、第1実施形態に係る部品搭載補助装置の全体構成を、図1図4を用いて説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る部品搭載補助装置の側面図を示す。図2に、図1に示す部品搭載補助装置の拡大側面図を示す。図3に、図1に示す把持部材の動作説明図(下降時)を示す。図4に、図1に示す把持部材の動作説明図(上昇時)を示す。
【0021】
図1図4に示すように、第1実施形態の部品搭載補助装置10は、天井に敷設されたレール部材6に沿って移動可能に形成された装置本体1と、当該装置本体1に連結されたアーム部材2と、当該アーム部材2の先端部21に上下方向へ移動可能に支持された把持部材3とを備え、当該把持部材3に係止された車両用部品(シート部品)Wを車両S内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置である。また、部品搭載補助装置10の装置本体1には、エア式のバランスシリンダ4を装着し、当該バランスシリンダ4のピストンロッド41と把持部材3とを可撓ケーブル5を介して連結した構造となっている。
【0022】
車両Sは、搬送台車8に搭載され床面に沿って車両組み立てライン上を移動する。移動方向は、図1図2の紙面と直交する方向である。また、ラインサイドには、車両用部品(シート部品)Wを供給する部品供給装置7が配設されている。部品供給装置7には、車両用部品(シート部品)Wを載置するテーブル台71と、テーブル台71に車両用部品(シート部品)Wを搬送する昇降装置72を備えている。
【0023】
装置本体1には、レール部材6に沿って走行する走行部11と、走行部11から垂下された回転軸部12と、回転軸部12に水平回動可能に支持された基台部13とを備えている。レール部材6は、部品供給装置7と搬送台車8との間で、水平状に敷設されている。走行部11には、左右端に走行車輪が配置され、回転軸部12は、両走行車輪の中間部に配置されている。基台部13は、水平板状に形成され、その下端には、バランスシリンダ4が軸方向を略水平にして装着されている。
【0024】
アーム部材2には、把持部材3を上下方向へ移動可能に支持する先端部21と、装置本体1の基台部13の側端に連結された基端部22と、先端部21と基端部22とを上下方向で連結する中間部23とを備えている。先端部21及び基端部22は、それぞれ水平状に形成され、中間部23は、垂直状に形成されている。アーム部材2は、例えば、パイプ部材からなり、略同一断面に形成された先端部21と中間部23と基端部22とを、側面視で略コ字状に曲げ加工して形成されている。その結果、装置本体1とアーム部材2とが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されている。したがって、車両用部品(シート部品)Wが係止された把持部材3を装置本体1における走行部11の下方に配置でき、装置本体1の走行部材11に対する車両用部品W及び把持部材3に基づく偏心荷重を低減させている。その結果、装置本体1に無駄な補強部材を設ける必要が無く、装置本体1の構造を簡素化することができる。
【0025】
把持部材3には、アーム部材2の先端部21に固定された固定部31と、固定部31に対して上下動する可動部32と、可動部32に連結され車両用部品(シート部品)Wを把持する一対の把持部33とを備えている。固定部31は、略矩形状の基盤311と、基盤311に上下方向へ延設された一対の第1レール部313と、基盤311の上端近傍に突設されたケーブル案内部312とを有する。また、可動部32は、井桁状に形成されたフレーム部321と、フレーム部321に締結され可撓ケーブル5の端部が繋がれた逆U字状のフック部322と、フレーム部321の上端に固定され水平方向へ延設された第2レール部323と、フレーム部321の下端に固定され第1レール部313に沿って摺動可能に形成された一対の摺動部324とを有する。また、各把持部33は、車両用部品(シート部品)Wの隙間に挿入される爪部331と、車両用部品(シート部品)Wの一部と当接される当接部333と、爪部331と当接部333とを連結する連結部332とを、それぞれ有する。各把持部33の内、一方がフレーム部321に固定され、他方が第2レール部323に沿って摺動可能に形成されている。なお、図1図2に示す車両用部品(シート部品)Wは、複数人が着席できるシート部品W1であるので、把持部材3における一方の把持部33と他方の把持部33との距離が広く調節されている。
【0026】
バランスシリンダ4には、筒状のシリンダケース42と、シリンダケース42のロッド側端部から突出するピストンロッド41とを備えている。バランスシリンダ4には、強度部材となるアーム部材2の荷重が作用せず、従来より小型のバランスシリンダ4を使用することができる。シリンダケース42のロッド側端部には、第1ポート43が形成され、シリンダケース42のエンド側端部には、第2ポート44が形成されている。第1ポート43に接続される配管から供給されるエア圧は、車両用部品(シート部品)W及び把持部材3の荷重が略無重力状態となるように、第2ポート44に接続される配管から供給されるエア圧より大きく設定されている。また、シリンダケース42と摺動するピストン及びピストンロッドとの摺動部は、摺動抵抗を極力低減させる構造(例えば、エア軸受構造)に形成されている。
【0027】
可撓ケーブル5には、アウターケーブル511とインナーケーブル512とから構成されるリモートコントロールケーブル51と、帯状のスリングベルト52とを備えている。また、リモートコントロールケーブル51は、アーム部材2に沿って配策されている。また、リモートコントロールケーブル51の一部は、アーム部材2の中間部23及び先端部21の内部に配策されている。
【0028】
また、インナーケーブル512の一端は、ピストンロッド41の先端部に連結され、インナーケーブル512の他端は、スリングベルト52の一端と連結具53を介して連結されている。アウターケーブル511の一端は、装置本体1の基台部13に固定された止め部54に当接され、アウターケーブル511の他端は、アーム部材2の先端部21に固定された止め部54に当接されている。スリングベルト52は、屈曲強度の高い合成繊維(例えば、ポリアミド系の合成繊維)で形成されている。スリングベルト52は、把持部材3の固定部31に突設されたケーブル案内部312を経由して、把持部材3の可動部32に締結された逆U字状のフック部322に連結されている。
【0029】
<第1実施形態に係る部品搭載補助装置の操作方法>
次に、本実施形態に係る部品搭載補助装置10の操作方法を、図1図4を用いて説明する。
【0030】
図1図2に示すように、作業者は、部品供給装置7のテーブル台71に載置された車両用部品(シート部品)Wを、部品搭載補助装置10の把持部材3に係止させる。このとき、把持部材3における一方の把持部33と他方の把持部33との距離を、適切な間隔に調節する。車両用部品(シート部品)W及び把持部材3の荷重は、可撓ケーブル5を経由してバランスシリンダ4に伝達されている。バランスシリンダ4のエア圧は、車両用部品(シート部品)W及び把持部材3の荷重を、無重力状態にバランスさせるように設定されている。そのため、作業者は、車両用部品(シート部品)Wを、部品搭載補助装置10の把持部材3に係止させた状態で僅かな力で簡単に持上げ、180度水平回転させた後、車両S内の所定位置に移動させることができる。
【0031】
具体的には、図3図4に示すように、作業者が、僅かな力で車両用部品(シート部品)W、又は把持部材3を上方へ持ち上げると、エアバランスされたバランスシリンダ4のピストンロッド41は、シリンダケース42側に戻り、作業者が、僅かな力で、車両用部品(シート部品)W、又は把持部材3を下方へ押し下げると、エアバランスされたバランスシリンダ4のピストンロッド41は、シリンダケース42から進出する。また、作業者が、車両用部品(シート部品)W、又は把持部材3から手を放すと、車両用部品(シート部品)W及び把持部材3は、手を放した位置でバランス状態を保持したまま静止する。
【0032】
また、図1図2に示すように、可撓ケーブル5は、アーム部材2に沿って配策されているので、移動途中における可撓ケーブル5の損傷を防止することができる。また、作業者が部品搭載補助装置10を操作する時、可撓ケーブル5が邪魔にならず、可撓ケーブル5の垂れ下がり等を気遣う必要もない。そのため、狭い作業域でも、部品搭載補助装置10を効率的に操作することができる。したがって、作業者は、簡素な構造の部品搭載補助装置10を簡単かつ迅速に操作することができる。その結果、部品搭載補助装置10は、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる。
【0033】
<第2実施形態に係る部品搭載補助装置>
次に、第2実施形態に係る部品搭載補助装置の特徴について、図5を用いて説明する。図5に、本発明の第2実施形態に係る部品搭載補助装置の側面図を示す。
【0034】
図5に示すように、第2実施形態の部品搭載補助装置10Bは、床面に沿って移動可能に形成された装置本体1Bと、当該装置本体1Bに連結されたアーム部材2Bと、当該アーム部材2Bの先端部21Bに上下方向へ移動可能に支持された把持部材3Bとを備え、当該把持部材3Bに係止された車両用部品(シート部品)Wを車両S内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置である。また、部品搭載補助装置10Bの装置本体1Bには、エア式のバランスシリンダ4Bを装着し、当該バランスシリンダ4Bのピストンロッド41Bと把持部材3Bとを可撓ケーブル5Bを介して連結した構造となっている。なお、車両用部品(シート部品)Wは、1人席用のシート部品W2であるので、把持部材3における一方の把持部33と他方の把持部33との距離が狭く調節されている。
【0035】
本部品搭載補助装置10Bと前述した第1実施形態の部品搭載補助装置10との相違点は、装置本体1Bとアーム部材2Bの構造であって、他の把持部材3B、バランスシリンダ4B、及び可撓ケーブル5Bは、互いに共通の構造を有している。そこで、相違点である装置本体1Bとアーム部材2Bの構造について詳細に説明し、共通する他の構造には同一の符号に区分符号Bを付して、その説明は省略する。
【0036】
装置本体1Bには、床面に沿って走行する走行部11Bと、走行部11から垂直に支持された基台部13Bとを備えている。走行部11Bには、左右端に走行車輪が配置され、基台部13Bは、一方の走行車輪の直上部に配置されている。基台部13Bは、垂直棒状に形成され、その高さ方向の中間部にアーム部材2Bが連結されている。基台部13部には、バランスシリンダ4Bがピストンロッド41Bを上方にし、かつ軸方向を略垂直にして装着されている。バランスシリンダ4Bは、走行車輪とアーム部材2Bとの間で基台部13部の側面に固定されている。
【0037】
アーム部材2Bには、把持部材3Bを上下方向へ移動可能に支持する先端部21Bと、装置本体1Bにおける基台部13Bの中間部と連結された基端部22Bとを備えている。先端部21Bは、水平状に形成され、基端部22Bは、傾斜状に形成されている。装置本体1Bとアーム部材2Bとが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されている。したがって、車両用部品(シート部品)Wが係止された把持部材3Bを装置本体1Bにおける走行部11Bの上方に配置でき、装置本体1Bの走行部材11Bに対する車両用部品W及び把持部材3Bに基づく偏心荷重を低減させている。
【0038】
なお、車両用部品(シート部品)W及び把持部材3Bの荷重は、可撓ケーブル5Bを経由してバランスシリンダ4Bに伝達されている。バランスシリンダ4Bのエア圧は、車両用部品(シート部品)W及び把持部材3Bの荷重を、無重力状態にバランスさせるように設定されている。そのため、作業者は、車両用部品(シート部品)Wを、部品搭載補助装置10Bの把持部材3Bに係止させた状態で僅かな力で簡単に持上げ、180度水平回転させた後、車両S内の所定位置に移動させることができる。
【0039】
また、可撓ケーブル5Bは、アーム部材2Bに沿って配策されているので、移動途中における可撓ケーブル5Bの損傷を防止することができる。また、作業者が部品搭載補助装置10Bを操作する時、可撓ケーブル5Bが邪魔にならず、可撓ケーブル5Bの垂れ下がり等を気遣う必要もない。そのため、狭い作業域でも、部品搭載補助装置10Bを効率的に操作することができる。したがって、作業者は、簡素な構造の部品搭載補助装置10Bを簡単かつ迅速に操作することができる。その結果、部品搭載補助装置10Bは、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる。
【0040】
<第3実施形態の部品搭載補助装置>
次に、第3実施形態の部品搭載補助装置の特徴について、図6図9を用いて説明する。図6に、本発明の第3実施形態に係る部品搭載補助装置の斜視図を示す。図7に、図6に示す把持部材の側面図を示す。図8に、図6に示す把持部材の正面図を示す。図9に、図6に示す把持部材における爪部の動作説明図を示す。(a)は、車両用部品の非係止状態を示し、(b)は、車両用部品の係止状態を示す。
【0041】
図6に示すように、第3実施形態の部品搭載補助装置10Cは、床面に沿って移動可能に形成された装置本体1Cと、当該装置本体1Cに連結されたアーム部材2Cと、当該アーム部材2Cの先端部21Cに上下方向へ移動可能に支持された把持部材3Cとを備え、当該把持部材3Cに係止された車両用部品(シート部品)Wを車両S内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置である(図1を参照)。また、部品搭載補助装置10Cの装置本体1Cには、エア式のバランスシリンダ4Cを装着し、当該バランスシリンダ4Cのピストンロッド41Cと把持部材3Cとを可撓ケーブル5Cを介して連結した構造となっている。なお、把持部材3Cにおける一方の把持部33Cと他方の把持部33Cとの距離が狭く調節されている。
【0042】
本部品搭載補助装置10Cと前述した第2実施形態の部品搭載補助装置10Bとの相違点は、把持部材3Cの構造であって、他の装置本体1C、アーム部材2C、バランスシリンダ4C、及び可撓ケーブル5Cは、互いに共通の構造を有している。そこで、相違点である把持部材3Cの構造について詳細に説明し、共通する他の構造には同一の符号に区分符号Cを付して、その説明は省略する。なお、バランスシリンダ4Cは、装置本体1Cの走行部11Cに軸方向を略水平にして装着されている。バランスシリンダ4Cの位置は、把持部材3Cの下方に相当する。バランスシリンダ4Cの重量によって、装置本体1Cの走行安定性が向上する。
【0043】
把持部材3Cには、アーム部材2Cの先端部21Cに固定された固定部31Cと、固定部31Cに対して上下動する可動部32Cと、可動部32Cに連結され車両用部品(シート部品)Wを把持する一対の把持部33Cと、把持部33Cに備える爪部331Cを作動させるカム機構34Cとを備えている。固定部31Cは、略矩形状の基盤311Cと、基盤311Cに上下方向へ延設された一対の第1レール部313Cと、基盤311Cの上端に突設されたケーブル案内部312Cとを有する。また、可動部32Cは、異形状に形成されたフレーム部321Cと、フレーム部321Cに締結されスリングベルト52C(可撓ケーブル5C)の端部が繋がれた逆U字状のフック部322Cと、フレーム部321Cの上端に固定され水平方向へ延設された第2レール部323Cと、フレーム部321Cの下端に固定され第1レール部313Cに沿って摺動可能に形成された一対の摺動部324Cとを有する。
【0044】
また、各把持部33は、車両用部品(シート部品)Wの隙間に挿入される爪部331Cと、車両用部品(シート部品)Wの一部と当接される当接部333Cと、爪部331Cと当接部333Cとを連結する連結部332Cとを、それぞれ有する。各把持部33Cの内、一方がフレーム部321Cに固定され、他方が第2レール部323Cに沿って摺動可能に形成されている。第2レール部323Cの上方には、アーム部材2Cの先端部21Cに沿って棒状の取手部24Cが水平状に形成されている。取手部24Cは、フレーム部321Cと第2レール部323Cとにその両端部が締結されている。作業者は、取手部24Cを持って把持部33Cの位置を操作することができる。
【0045】
また、各爪部331Cは、その先端部が互いに対向するように略L字状に形成されている。爪部331Cの先端部は、車両用部品(シート部品)Wを係止していない状態では、略水平状に倒伏して配置されている。また、爪部331Cは、先端部が基端部に対して下方へ位置するように傾斜して配置されている。そのため、爪部331Cを、例えば、シートバックとシートクッションの隙間に挿入することができる。そのとき、当接部333Cは、例えば、シートバックの表面に当接する。この状態で、把持部材3Cに係止された車両用部品(シート部品)Wの姿勢が安定する。
【0046】
また、カム機構34Cは、基端保持板341Cとカム駒342Cとカム案内部343Cと戻しバネ344Cとを備えている。基端保持板341Cは、爪部43の基端部を面直状に保持し、連結部332Cに上下方向へ移動可能に支持されている。カム駒342Cは、回動中心が爪部331Cの基端部に係合され、外周に偏心凸部が形成されている。カム案内部343Cは、カム駒342Cの偏心凸部と当接しカム駒342Cを傾斜位置へ回動させるように形成されている。戻しバネ344Cは、爪部331Cから車両用部品(シート部品)Wを取り除いたときに基端保持板341Cを上方へ移動させるように付勢されている。基端保持板341Cが上方へ移動すると、カム駒342Cが逆方向へ回動し、爪部331Cの先端部は、略水平状に倒伏した位置に戻る。
【0047】
爪部331Cを車両用部品(シート部品)Wに係止したとき、車両用部品(シート部品)Wの自重により基端保持板341Cが下方(矢印uuの方向)へ移動するので、カム駒342Cがカム案内部343Cに案内されて、爪部331Cの先端部が矢印rrの方向へ回動して自動的に起立する。そのため、爪部331Cの先端部が、例えば、シートバックの背面に当接して、車両用部品(シート部品)Wの落下を規制することができる。したがって、爪部331Cを車両用部品(シート部品)Wに係止し、把持部33Cを上方へ移動させるだけで、特別の操作を要することなく、搬送中に爪部331Cから車両用部品(シート部品)Wが脱落するのを防止することができる。また、把持部33Cを下降させて車両用部品(シート部品)Wを車両Sの所定位置に搭載させるときには、カム機構34Cが逆方向に作動するので、爪部331Cの先端部を起立状態から倒伏状態に自動的に回動させることができる。そのため、特別の操作を要することなく、車両用部品(シート部品)Wから爪部331Cを抜き出すことができる。
【0048】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る部品搭載補助装置10、10B、10Cによれば、装置本体1、1B、1Cには、バランスシリンダ4、4B、4Cを装着し、当該バランスシリンダのピストンロッド41、41B、41Cと把持部材3、3B、3Cとを可撓ケーブル5、5B、5Cを介して連結したので、装置本体及びアーム部材に対して車両用部品Wが係止された把持部材3、3B、3Cだけをその重量バランスを取りながら上下方向へ移動させることができる。そのため、リンク機構等を用いた大型のバランス機構を廃止することができる。その結果、部品搭載補助装置全体の大型化、複雑化を回避することができる。よって、本実施形態によれば、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る部品搭載補助装置10、10B、10Cによれば、可撓ケーブル5、5B、5Cには、アウターケーブルとインナーケーブルとから構成されるリモートコントロールケーブル51、51B、51Cを備えたので、把持部材3、3B、3Cに係止された車両用部品Wの荷重を、リモートコントロールケーブル51、51B、51Cを介して直接的にバランスシリンダ4、4B、4Cに伝達することができる。そのため、バランスシリンダ4、4B、4Cには、強度部材となるアーム部材2、2B、2Cの荷重が作用せず、バランスシリンダに作用する荷重を大幅に低減できる。その結果、バランスシリンダ自体の小型化に寄与することができ、部品搭載補助装置10、10B、10Cの更なる簡素化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る部品搭載補助装置10、10B、10Cによれば、可撓ケーブル5、5B、5Cは、アーム部材2、2B、2Cに沿って配策されたので、可撓ケーブル5、5B、5Cの損傷を防止することができる。また、作業者が部品搭載補助装置を操作する時、可撓ケーブル5、5B、5Cが邪魔にならず、可撓ケーブルの垂れ下がり等を気遣う必要もない。そのため、狭い作業域でも、部品搭載補助装置10、10B、10Cを効率的に操作することができる。その結果、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対してより一層容易に対応できる。
【0051】
また、本実施形態に係る部品搭載補助装置10、10B、10Cによれば、装置本体1、1B、1Cとアーム部材2、2B、2Cとが、側面視で略コ字状断面をなすように形成されたので、車両用部品Wが係止された把持部材3、3B、3Cを装置本体1、1B、1Cにおける走行車輪等を有する走行部11、11B、11Cの上方又は下方に配置させることができる。そのため、装置本体1、1B、1Cの走行部11、11B、11Cに対する車両用部品及び把持部材に基づく偏心荷重を低減させることができる。その結果、装置本体1、1B、1Cの構造を簡素化でき、より簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【0052】
また、第3実施形態に係る部品搭載補助装置10Cによれば、把持部材3Cには、車両用部品Wを係止する爪部331Cを備え、当該爪部331Cが車両用部品Wの自重によって係止状態に作動するように形成されているので、把持部材3Cの爪部331Cを作動させる駆動源や駆動用の配線又は配管を廃止することができる。そのため、把持部材3Cの構造をより一層簡素化させることができるとともに、駆動用の配線や配管を考慮することなく部品搭載補助装置を工程内で移動させることができる。その結果、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに対して容易に対応できる、より一層簡素な構造の部品搭載補助装置を提供することができる。
【0053】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更することができる。例えば、本実施形態に係る部品搭載補助装置10、10B、10Cでは、車両用部品Wとしてシート部品の例で説明したが、これに限る必要はない。例えば、インストルメントパネル等の内装部品やエンジン等の駆動部品にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、車両組立てラインにおいて、車両用部品を保持して車両内の所定位置に搭載する作業を補助する部品搭載補助装置として利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1、1B、1C 装置本体
2、2B、2C アーム部材
3、3B、3C 把持部材
4、4B、4C バランスシリンダ
5、5B、5C 可撓ケーブル
6 レール部材
10、10B、10C 部品搭載補助装置
11、11B、11C 走行部
21、21B、21C 先端部
41、41B、41C ピストンロッド
51、51B、51C リモートコントロールケーブル
52、52B、52C スリングベルト
331、331C 爪部
511 アウターケーブル
512 インナーケーブル
W、W1、W2 車両用部品(シート部品)
S 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11