特許第6350337号(P6350337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350337
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61F13/494 111
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-33662(P2015-33662)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-154639(P2016-154639A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小島 広士
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−300605(JP,A)
【文献】 特開2014−193210(JP,A)
【文献】 特開2011−194152(JP,A)
【文献】 特開2013−144072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部に接する前身頃(1),着用者の背部に接する後身頃(2),及び前記前身頃(1)と前記後身頃(2)の間に位置する股下部(3)に,長手方向に区分された吸収性本体(10)と,
前記吸収性本体(10)の肌対向面側において,前記吸収性本体(10)の幅方向の左右両側に配設された一対のサイドシート(20)と,を備え,
前記一対のサイドシート(20)は,
前記長手方向に沿って延びる接合線(21)と,
前記接合線(21)よりも前記幅方向の外側において,前記吸収性本体(10)の肌対向面に接合された接合領域(22)と,
前記接合線(21)よりも前記幅方向の内側の起立領域(23)と,を有し,
前記起立領域(23)は,
前記長手方向の前後両端側において,前記吸収性本体(10)の肌対向面に接合された接合部分(23a,23b)と,
前記接合部分(23a,23b)の前記長手方向の間に位置し,前記吸収性本体(10)の肌対向面に接合されていない自由部分(23c)と,を含む
吸収性物品であって,
前記一対のサイドシート(20)のそれぞれに,少なくとも1本ずつ取り付けられた補助伸縮部材(30)と
前記一対のサイドシート(20)の前記自由部分(23c)に,前記長手方向に沿った伸長状態で固定された立体ギャザー伸縮部材(40)を,さらに備え,
前記補助伸縮部材(30)は,基端(31)が前記接合領域(22)に位置し,先端(32)が前記起立領域(23)の前記自由部分(23c)に位置しており,前記接合線(21)を跨ぐ方向に伸縮可能な状態で前記サイドシート(20)に固定されており,
前記補助伸縮部材(30)には,
前記前身頃(1)側に設けられた前側補助伸縮部材(30a)と,
前記後身頃(2)側に設けられた後側補助伸縮部材(30b)と,が含まれ,
前記前側補助伸縮部材(30a)と後側補助伸縮部材(30b)は,それぞれ,前記先端(32)が前記基端(31)よりも前記股下部(3)寄りに位置していることにより,斜めに傾斜するように前記サイドシート(20)に固定されており,
前記前側補助伸縮部材(30a)と前記後側補助伸縮部材(30b)は,前記立体ギャザー伸縮部材(40)と交差していない
吸収性物品。
【請求項2】
前記補助伸縮部材(30)には,
前記長手方向において,前側補助伸縮部材(30a)と後側補助伸縮部材(30b)との間に設けられた中央補助伸縮部材(30c)が含まれる。
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一対のサイドシート(20)の前記接合領域(22)に,前記長手方向に沿った伸長状態で固定されたレッグギャザー伸縮部材(50)を,さらに備え,
前記前側補助伸縮部材(30a)と前記後側補助伸縮部材(30b)は,前記レッグギャザー伸縮部材(50)と交差していない
請求項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着用者の股下に配置され,尿などの液体を吸収し保持するための吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,使い捨ておむつ,尿取りパッド,吸収パッド,又は生理用ナプキンなどのように,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品が知られている。一般的な吸収性物品は,液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に吸収体を配置して構成された吸収性本体を有している。また,一般的な吸収性物品は,吸収性本体の左右両側に,着用者の肌に当接する方向に向かって立ち上がる一対の立体ギャザーが形成されている(特許文献1〜3等)。
【0003】
一対の立体ギャザーは,吸収体の左右両側において起立するものであり,尿漏れを防ぐための防漏壁として機能する。立体ギャザーは,一般的に,トップシート上にサイドシートを重ねて接合し,このサイドシートの内側端部に弾性伸縮部材(糸ゴムなど)を伸長状態で固定することにより形成される。弾性伸縮部材が収縮すると,サイドシートの内側端部が弾性伸縮部材の収縮力によって立ち上がるとともに,弾性伸縮部材が収縮した部位に皺(ギャザー)が形成される。これにより,サイドシートが立体ギャザーとなる。
【0004】
また,従来の吸収性物品は,一般的に,弾性伸縮部材がサイドシートの長手方向のほぼ全域に亘って固定されている。このため,サイドシートのほぼ全域に亘って皺が形成されることとなる。このように,従来の吸収性物品は,サイドシートの広い範囲に皺を形成することによって,立体ギャザーの肌触りを良くしようとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−243960号公報
【特許文献2】特開2007−000339号公報
【特許文献3】特開2013−123447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,吸収性物品に形成された立体ギャザーは,サイドシートに取り付けられた弾性伸縮部材が収縮したときに立ち上がる。また,吸収性物品を装着する際には,このようにして立体ギャザーを立ち上げた状態で,立体ギャザーの先端を着用者の股下の肌に触れさせるようにすることが好ましい。しかしながら,吸収性物品を装着するときには,吸収性物品が長手方向に沿って伸ばされるため,このサイドシートに取り付けられた弾性伸縮部材が長手方向に沿って伸張した状態になる傾向にある。このように,弾性伸縮部材が伸張すると,立体ギャザーが倒れてしまうため,立体ギャザーの先端を着用者の肌に触れさせるようにして,吸収性物品を着用者の股下に装着することが難しいとされていた。また,弾性伸縮部材が伸張し立体ギャザーが倒れた状態で吸収性物品を装着すると,立体ギャザーが押し潰された状態のままとなってしまい,その後も立体ギャザーが起立しにくくなるという問題があった。このため,例えば,吸収性物品を着用者の股下に装着させた後に,この股下部分に手指を挿し込んで,立体ギャザーが起立させるという作業が行われることもあるが,このような作業は手指を汚してしまったり,着用者の肌を傷つけてしまう恐れがある。
【0007】
そこで,本発明は,吸収性物品の装着時において,立体ギャザーを立ち上げ易くするための技術を提供することを解決課題とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は,上記した課題の解決手段について鋭意検討した結果,立体ギャザーを構成するサイドシートに対して,このサイドシートの接合領域と起立領域との境界を跨ぐように伸縮可能な補助伸縮部材を取り付けることとした。このような補助伸縮部材を設けることで,この補助伸縮部材が収縮したときに,立体ギャザーを立ち上げやすくすることができる。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明は,使い捨ておむつなどの吸収性物品に関する。
本発明の吸収性物品は,吸収性本体10と,左右一対のサイドシート20と,を備える。吸収性本体10は,着用者の腹部に接する前身頃1,着用者の背部に接する後身頃2,及びこれらの間に位置する股下部3に,長手方向に区分されている。また,一対のサイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面側において,吸収性本体10の幅方向の左右両側に配設されるシート部材である。
一対のサイドシート20は,接合線21と,接合領域22と,起立領域23と,を有する。接合線21は,吸収性本体10の長手方向に沿って延びる線であり,接合領域22と起立領域23との境界線に相当する。接合領域22は,接合線21よりも幅方向の外側において,吸収性本体10の肌対向面に接合された接合領域22である。起立領域23は,接合線21よりも幅方向の内側の領域である。
起立領域23は,接合部分23a,23bと,自由部分23cと,を有している。接合部分23a,23bは,長手方向の前後両端側において,吸収性本体10の肌対向面に接合された部分である。自由部分23cは,接合部分23a,23bの長手方向の間に位置し,吸収性本体10の肌対向面に接合されていない部分である。この自由部分23cが吸収性本体10から離れて起立することにより,立体ギャザーが形成される。
ここで,本発明の吸収性物品は,さらに,補助伸縮部材30を備える。この補助伸縮部材30は,一対のサイドシート20のそれぞれに対して,少なくとも1本ずつ取り付けられている。
この補助伸縮部材30は,その基端31が接合領域22に位置し,その先端32が起立領域23の自由部分23cに位置している。そして,補助伸縮部材30は,接合線21を跨ぐ方向に伸縮可能な状態で,サイドシート20に固定されている。
【0010】
上記構成のように,サイドシート20の接合線21を跨ぐように,接合領域22から起立領域23の自由部分23cに掛けて補助伸縮部材30を固定することで,このサイドシート20の自由部分23cを起立させやすくすることができる。つまり,このサイドシート20には,補助伸縮部材30が伸長状態で固定されているため,補助伸縮部材30が収縮したときに,サイドシート20の自由部分23cが引っ張られて,着用者の肌が存在する方向に向かって立ち上がる。これにより,吸収性物品の着用時などにおいて,立体ギャザーが立ち上がり易くなり,この立体ギャザーの先端部分を着用者の股下にフィットさせることができる。
【0011】
本発明の吸収性物品において,補助伸縮部材30には,前身頃1側に設けられた前側補助伸縮部材30aと,後身頃2側に設けられた後側補助伸縮部材30bと,が含まれていることが好ましい。この場合,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bは,それぞれ,その先端32が基端31よりも股下部3寄りに位置していることにより,斜めに傾斜するようにサイドシート20に固定されていることが好ましい。
【0012】
一般的な立体ギャザーは,股下部付近では立ち上がり易くなっているものの,前身頃寄り及び後身頃寄りの部位において立ち上がりにくくなっている。このため,この前身頃寄り及び後身頃寄りの部位に,それぞれ前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bとを配置することで,立体ギャザー全体を効果的に立ち上げることができる。また,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bとを,斜めに配置することで,前身頃寄り及び後身頃寄りの部位をさらに効果的に起立させることができる。
【0013】
本発明の吸収性物品において,補助伸縮部材30には,長手方向において,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bとの間に設けられた中央補助伸縮部材30cが含まれることが好ましい。
【0014】
上記のように,吸収性物品の股下部3近傍に中央補助伸縮部材30cを配置することで,立体ギャザーを外側に広げるようにして立ち上がらせることが可能になる。
【0015】
本発明の吸収性物品は,一対のサイドシート20の自由部分23cに,長手方向に沿った伸長状態で固定された立体ギャザー伸縮部材40を備える。この場合に,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bには,立体ギャザー伸縮部材40と交差していないものがあることが好ましい。
【0016】
前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bが立体ギャザー伸縮部材40と交差している場合,その交点において互い阻害しあって,効率的に収縮しなくなるおそれがある。これに対して,上記構成のように,立体ギャザー伸縮部材40と交差しないように,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bを配置することで,各伸縮部材の収縮力を効果的に利用して,立体ギャザーを起立させることができる。
【0017】
本発明の吸収性物品は,一対のサイドシート20の接合領域22に,レッグギャザー伸縮部材50をさらに備える。このレッグギャザー伸縮部材50は,長手方向に沿った伸長状態で,サイドシート20に固定されていることが好ましい。この場合に,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bには,レッグギャザー伸縮部材50と交差していないものがあることが好ましい。
【0018】
上記構成のように,レッグギャザー伸縮部材50と交差しないように,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bを配置することで,各伸縮部材の収縮力が阻害しあうことを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,吸収性物品の装着時において,立体ギャザーを立ち上げ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は,本発明に係る吸収性物品の実施形態を示した斜視図である。
図2図2は,本発明に係る吸収性物品の実施形態を示した平面図である。
図3図3は,図2のX−X線における吸収性物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0022】
本願明細書において,「長手方向」とは,吸収性物品の前身頃と後身頃とを結ぶ方向を意味する。また,「幅方向」とは,長手方向に平面的に直交する方向を意味する。本願の図において,「長手方向」はY軸で示され,「幅方向」はX軸で示されている。
本願明細書において,「肌対向面」とは,吸収性物品の着用時において,着用者の肌に向かい合う面を意味する。また,「肌非対向面」とは,吸収性物品の着用時において,着用者の肌に向かい合わない面,すなわち肌対向面の反対側の面を意味する。
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0023】
図1は,本発明の実施形態に係る吸収性物品を示している。図1に示された例において,吸収性物品は,テープ型の使い捨ておむつである。図1に示されるように,テープ型の使い捨ておむつは,後身頃の両側部に取り付けられたファスニングテープを前身頃に止め付けることにより装着されるタイプの使い捨ておむつである。以下では,テープ型の使い捨ておむつを例に挙げて,本発明の吸収性物品について詳しく説明する。ただし,本発明は,テープ型の使い捨ておむつに限定されるものではない。例えば,本発明は,パンツ型の使い捨ておむつや,尿取りパッド,吸収パッド,又は生理用ナプキンなどのように,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品に広く適用することができる。
【0024】
図1から図3を参照して,本発明の吸収性物品100の実施形態について説明する。図1は,実施形態の係る吸収性物品100を示した斜視図であり,図2は,実施形態に係る吸収性物品100を示した展開図である。また,図3は,図2のX−X線における断面図を示している。
【0025】
図1及び図2に示されるように,吸収性物品100は,長手方向において,着用者の腹部に接する前身頃1と,着用者の背部に接する後身頃2と,前身頃1と後身頃2の間に位置し着用者の股下に接する股下部3とに区分される。また,吸収性物品100は,吸収性本体10と,左右一対のサイドシート20と,を備えている。図3の断面図に示されるように,吸収性本体10は,トップシート11と,バックシート12と,これらのシート11,12の間に介在する吸収体13とを含む。また,一対のサイドシート20により,吸収性本体10の幅方向左右両側に,一対の立体ギャザーが形成される。なお,図3では,吸収性物品の構造を分り易くするために各シート部材に厚みを持たせているが,実際の各シート部材は極めて薄いシート状の部材である。
【0026】
まず,吸収性本体10の基本構成について説明する。吸収性本体10を構成するトップシート11は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体13へ透過させるための部材である。このため,トップシート11は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート11は,吸収体13の肌対向面を被覆するように配置される。トップシート11を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,トップシート11としては,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0027】
バックシート12は,トップシート11を透過して吸収体13に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート12は,液不透過性材料によって構成される。また,バックシート12は,吸収体13の底面からの液漏れを防止するため,吸収体13の肌非対向面を被覆している。また,図3に示されるように,バックシート12は,トップシート11よりも幅広に形成されており,バックシート12の左右両端部は,トップシート11の左右両側縁よりも外側に延出していることが好ましい。バックシート12を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,バックシート12としては,液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0028】
吸収体13は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体13は,液透過性のトップシート11と,液不透過性のバックシート12の間に配置される。吸収体13は,公知の吸収性材料により構成することができる。吸収性材料としては,例えば,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしてもよい。また,吸収性材料には,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成して用いられる。図1図3に示されるように,吸収体13の周囲においては,トップシート11とバックシート12が互いに接合されている。これにより,吸収体13は,トップシート11とバックシート12の接合部によって周囲を囲われたものとなる。
【0029】
続いて,立体ギャザーを形成するための構造について詳しく説明する。図1図3に示されるように,吸収性本体10の肌対向面側の幅方向左右両側には,長手方向の全体に亘って,一対のサイドシート20が重ね合わされている。一対のサイドシート20は,吸収体13の両側縁に沿って起立して,尿の横漏れを防止する立体ギャザーを形成するためのシート部材である。例えば,サイドシート20を構成するシート部材としては,撥水性と通気性を有するシート部材を採用することが好ましい。サイドシート20としては,例えば,カードエンボスやスパンボンド等の製法により得られた不織布シートを使用することができ,特に防水性及び通気性が高いSMSやSMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0030】
図2及び図3に示されるように,一対のサイドシート20は,それぞれ,接合線21と,接合領域22と,起立領域23とからなる。サイドシート20の接合線21は,長手方向に沿って真っ直ぐに延びた直線状に形成されており,接合領域22と起立領域23の間の境界線となっている。また,図3に示されるように,サイドシート20の接合線21は,トップシート11の肌対向面上に形成されていることが好ましい。
【0031】
サイドシート20の接合領域22は,接合線21よりも幅方向の外側に位置する領域である。この接合領域22において,サイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面上に全面的に接合されている。図3に示されるように,接合領域22において,サイドシート20は,トップシート11の肌対向面上に接合されていることが好ましい。また,バックシート12の左右両端部がトップシート11から延出している場合,サイドシート20は,接合領域22において,バックシート12の肌対向面上にも接合されていることが好ましい。このように,サイドシート20を,トップシート11とバックシート12の両方に対して接合することで,サイドシート20が吸収性本体10から剥がれにくくなる。
【0032】
サイドシート20の起立領域23は,接合線21よりも幅方向の内側に位置する領域である。この起立領域23は,長手方向に見て,長手方向の前後両端側に位置する接合部分23a,23bと,これらの接合部分23a,23bの間に位置する自由部分23cとに区分されている。前後両端の接合部分23a,23bにおいて,サイドシート20は,吸収性本体10(トップシート11)の肌対向面上に接合されている。なお,図2においては,接合部分23a,23bを分かりやすく示すために,概念的に,この接合部分23a,23bに網掛けを施して示している。他方,接合部分23a,23bの間に位置する自由部分23cにおいて,サイドシート20は,吸収性本体10の肌対向面上に接合されていない。このため,サイドシート20は,起立領域23の自由部分23cにおいて,吸収性本体10から離れており,自由に立ち上がることができるようになっている。起立領域23の自由部分23cは,立体ギャザーを形成する部分となる。このため,起立領域23の自由部分23cは,長手方向に見て,少なくとも股下部3の全体に亘っており,前身頃1及び後身頃2に到達する長さで形成されていることが好ましい。
【0033】
なお,上述したサイドシート20の接合領域22や,起立領域23の接合部分23a,23bにおけるシートの接合には,例えば,公知のホットメルト接着剤などを利用することができる。
【0034】
また,図3に示されるように,サイドシート20の起立領域23は,幅方向内側の端縁が折り返されて,シート部材が2重に重なった折返部24を有することが好ましい。サイドシート20の折返部24は,サイドシート20の長手方向全体に亘って形成されている。折返部24は,図3に示されるように,サイドシート20の内側端縁を,幅方向の内側に向かって折り返すようにして形成されたものであってもよい。また,図示は省略するが,折返部24は,サイドシート20の内側端縁を,幅方向の外側に向かって折り返すようにして形成されたものであってもよい。図1図3に示されるように,このサイドシート20の折返部24には,一又は複数の立体ギャザー伸縮部材40と,一又は複数の補助伸縮部材30とを挟み込んで固定することができる。
【0035】
図1図3に示されるように,一対のサイドシート20の起立領域23の自由部分23cには,それぞれ,一又は複数の立体ギャザー伸縮部材40が取り付けられている。立体ギャザー伸縮部材40は,長手方向に沿った伸長状態で,サイドシート20の自由部分23cに固定されている。具体的には,立体ギャザー伸縮部材40は,サイドシート20の自由部分23cに形成された折返部24に挟み込んで固定されていることが好ましい。このようにして,各立体ギャザー伸縮部材40が伸長状態で固定されていることで,これらの立体ギャザー伸縮部材40が収縮したときに,サイドシート20の自由部分23cが長手方向に縮まる。これにより,サイドシート20の自由部分23cが,立体ギャザー伸縮部材40の収縮力を利用して,トップシート11の肌対向面から離れるように起立する。また,立体ギャザー伸縮部材40が収縮すると,これを固定しているサイドシート20の自由部分23cに皺(ギャザー)が形成される。従って,サイドシート20の自由部分23cによって,着用者の肌の方向に向かって起立する立体ギャザーが形成されることとなる。立体ギャザー伸縮部材40をサイドシート20に固定するときには,立体ギャザー伸縮部材40に接着剤を直接塗布して,引き伸ばされた状態(伸長状態)のままで,サイドシート20に固定すればよい。また,サイドシート20に接着剤を塗布した後,引き伸ばされた状態の立体ギャザー伸縮部材40をサイドシート20に取り付けることとしてもよい。立体ギャザー伸縮部材40は,各サイドシート20に対して,1本,2本,又は3本以上設けることが可能である。
【0036】
図1図3に示されるように,吸収性物品100は,さらに,レッグギャザー伸縮部材50を備えることが好ましい。レッグギャザー伸縮部材50は,吸収性本体10の幅方向左右両側に,それぞれ一又は複数本設けられる。また,図2に示されるように,レッグギャザー伸縮部材50は,長手方向に沿った伸長状態で,直線状,湾曲線状,又は屈曲線状に配置される。レッグギャザー伸縮部材50は,股下部3を中心として,前身頃1及び後身頃2にかけて配置されていることが好ましい。このように,レッグギャザー伸縮部材50を設けることで,吸収性物品100が装着された際,着用者の脚周りに相当する部分にレッグギャザーが形成される。レッグギャザーを形成することで,着用者の脚周りと吸収性物品100とのフィット性が向上するため,尿などの液体が脚周りの開口部から漏れ出すことを防止できる。
【0037】
図2及び図3に示されるように,左右のレッグギャザー伸縮部材50は,それぞれ,サイドシート20の接合領域22において,このサイドシート20と吸収性本体10の間に挟んで固定されていることが好ましい。例えば,図3に示されるように,本実施形態では,トップシート11よりも外側に延出したバックシート12の一部分とサイドシート20との間に,レッグギャザー伸縮部材50が固定されている。このように,接合領域22において,サイドシート20とバックシート12の間に,一又は複数のレッグギャザー伸縮部材50を固定することとしてもよい。また,図示は省略するがレッグギャザー伸縮部材50は,接合領域22において,サイドシート20とトップシート11の間に固定されていてもよい。
【0038】
ここで,図1から図3に示されるように,本発明の吸収性物品100は,一対のサイドシート20のそれぞれに1又は複数本ずつ取り付けられた補助伸縮部材30を有している。補助伸縮部材30は,立体ギャザーの起立を補助するための伸縮部材である。補助伸縮部材30は,上述した立体ギャザー伸縮部材40と協働して,サイドシート20の起立領域23の自由部分23cを立ち上げる役割を担っている。
【0039】
図2に示されるように,各補助伸縮部材30は,基本的に,直線状に延びるように,伸張した状態で,サイドシート20に取り付けられている。具体的に説明すると,各補助伸縮部材30は,吸収性物品の幅方向外側に位置する基端31と,幅方向の内側に位置する先端32とを有しており,これらの基端31と先端32とを繋ぐように直線状に延びたものとなっている。また,図2に示されるように,補助伸縮部材30の基端31は,サイドシート20の接合領域22に位置している。他方,補助伸縮部材30の先端32は,サイドシート20の起立領域23のうち,自由部分23cに位置している。このように,補助伸縮部材30は,サイドシート20の接合領域22から,接合線21を超えて,起立領域23の自由部分23cに至る長さで形成されている。また,補助伸縮部材30は,サイドシート20の接合線21を跨ぐ方向に伸縮可能な状態で,サイドシート20に固定されたものとなる。
【0040】
上記のように,補助伸縮部材30をサイドシート20に取り付けることで,補助伸縮部材30は,接合領域22を起点として,自由部分23cを引っ張るようになる。これにより,サイドシート20の自由部分23cによって形成される立体ギャザーが立ち上がり易くなる。特に,立体ギャザー伸縮部材40の伸縮方向は,吸収性物品100の長手方向に沿った方向であるのに対して,補助伸縮部材30の伸縮方向は,立体ギャザー伸縮部材40の伸縮方向に対して直交する方向又は斜めに傾斜する方向となる。このため,装着時等において,吸収性物品100がその長手方向に沿って引っ張られて立体ギャザー伸縮部材40が伸長し立体ギャザーが立ち上がりにくくなっている状態であっても,補助伸縮部材30によって立体ギャザーを起立させる方向に引っ張ることができる。従って,立体ギャザーは,補助伸縮部材30と立体ギャザー伸縮部材40との協働により,効果的に起立することができる。
【0041】
また,補助伸縮部材30は,サイドシート20の自由部分23cを立ち上げる目的のために設けられている。このため,補助伸縮部材30の先端32は,基本的に,サイドシート20の自由部分23cの幅方向内側の端縁(先端縁)に達していることが好ましい。少なくとも,補助伸縮部材30の先端32は,サイドシート20の自由部分23cの幅方向の半分よりも,先端縁寄りの位置に位置していることが好ましい。
【0042】
図1及び図2に示された実施形態において,サイドシート20には,それぞれ,補助伸縮部材30が複数本ずつ取り付けられている。本実施形態において,複数の補助伸縮部材30には,前身頃1側に取り付けられた前側補助伸縮部材30aと,後身頃2側に取り付けられた後側補助伸縮部材30bと,これらの間に設けられた中央補助伸縮部材30cとが含まれる。
【0043】
図2に示されるように,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bは,吸収性物品100の長手方向に対して,斜めに傾斜するように配置されている。具体的に説明すると,前側補助伸縮部材30aは,その基端31が,先端32よりも長手方向の前身頃1の端縁寄りに位置しており,その先端32が,基端31よりも長手方向の股下部3の中央寄りに位置している。これにより,前側補助伸縮部材30aは,その基端31から先端32に向かうにつれて,徐々に股下部3の中央に近づくように傾斜していることとなる。他方で,後側補助伸縮部材30bは,その基端31が,先端32よりも長手方向の後身頃2の端縁寄りに位置しており,その先端32が,基端31よりも長手方向の股下部3の中央寄りに位置している。これにより,後側補助伸縮部材30bも,その基端31から先端32に向かうにつれて,徐々に股下部3の中央に近づくように傾斜していることとなる。例えば,図2において,符号θは,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bが,吸収性物品100の長手方向に延びる直線に対して傾いた傾斜角を示している。この傾斜角θは,例えば,15度〜75度,30度〜60度,又は40度〜50度であることが好ましい。また,図2に示されるように,中央補助伸縮部材30cは,吸収性物品100の長手方向に対して,ほぼ直交するように配置されている。例えば,中央補助伸縮部材30cが,吸収性物品100の長手方向に延びる直線に対して傾いた角度は,80度〜100度又は約90度(±2度)であることが好ましい。
【0044】
上記のように,各サイドシート20に複数種類の補助伸縮部材30a,30b,30cを設けて,各補助伸縮部材30a,30b,30cによって,様々な方向にサイドシート20の自由部分23cに引っ張ることが好ましい。これにより,サイドシート20の自由部分23cが起立しやすくなると同時に,様々な方向から外側に向かって引っ張られるため,サイドシート20の自由部分23cが外側に向かって開きやすくなる。このように,サイドシート20の自由部分23cが自動的に開くことで,吸収性物品100を装着する際に手指を使ってサイドシート20を広げるような操作を行わなくても,スムーズに吸収性物品100を着用することが可能となる。
【0045】
また,図2に示されるように,サイドシート20の自由部分23cには,長手方向の中央部分に立体ギャザー伸縮部材40が配置されている。ただし,サイドシート20の自由部分23cには,長手方向の前身頃1及び後身頃2の部分に,立体ギャザー伸縮部材40が配置されていない非伸縮部23dが存在する。このような場合において,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bは,それぞれ,その先端32が,サイドシート20の自由部分23cのうちの非伸縮部23dに位置していることが好ましい。このように,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bの先端32を非伸縮部23dに位置させることで,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bを,立体ギャザー伸縮部材40と交差しないように配置することができる。つまり,前側補助伸縮部材30aや後側補助伸縮部材30bが立体ギャザー伸縮部材40と交差すると,各伸縮部材が収縮したときに,サイドシート20の先端付近に,肌触りの良くない捩れ(よじれ)が生じるおそれがある。そこで,少なくとも,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bは,立体ギャザー伸縮部材40と交差しないように配置することが好ましい。
【0046】
また,図2に示されるように,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bは,レッグギャザー伸縮部材50とも交差しないように配置されている。具体的には,図2に示された例において,レッグギャザー伸縮部材50の長手方向の長さは,立体ギャザー伸縮部材40の長手方向の長さよりも長くなっている。このため,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bを,レッグギャザー伸縮部材50と立体ギャザー伸縮部材40の両方に交差しないように配置すると,図2に示すように斜めに傾斜した配置となる。このように,レッグギャザー伸縮部材50を立体ギャザー伸縮部材40よりも長く形成し,且つ,前側補助伸縮部材30aと後側補助伸縮部材30bを斜めに配置することで,各伸縮部材の配置のバランスを取ることができる。つまり,各伸縮部材の間の隙間が離れ過ぎることもなく,近づき過ぎることもない良好なバランスとなり,吸収性物品100全体を全方向に伸縮させやすくなる。これにより,吸収性物品100全体の装着性やフィット性を向上させることができる。
【0047】
図3は,補助伸縮部材30(中央補助伸縮部材30c)が配置された部位における吸収性物品100の幅方向の断面図である。図3に示されるように,各補助伸縮部材30は,サイドシート20の肌非対向面側に取り付けられていることが好ましい。具体的には,サイドシート20の接合領域22において,補助伸縮部材30は,サイドシート20とトップシート11の間や,サイドシート20とバックシート12の間に挟み込んで固定されている。また,サイドシート20の起立領域23において,補助伸縮部材30は,サイドシート20の折返部24に挟み込んで固定されている。このように,各補助伸縮部材30は,着用者の肌に直接触れることがないように,サイドシート20の肌非対向面側に取り付けられていることが好ましい。
【0048】
上記した補助伸縮部材30や,立体ギャザー伸縮部材40,及びレッグギャザー伸縮部材50には,それぞれ,公知の弾性伸縮部材を用いることができる。例えば,各弾性伸縮部材には,糸状弾性ゴム又は平状弾性ゴムを適用することができる。このようなゴム部材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,又はポリエステル等の素材を用いることができる。また,各伸縮部材には,例えば熱可塑性エラストマー,プラスチックシート,又はゴムシート等の伸縮性を有する公知の部材を用いることもできる。
【0049】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は,使い捨ておむつ,吸収パッド,又は生理用ナプキンのような吸収性物品に関するものである。従って,本発明は,吸収性物品の製造業において好適に利用しうる。
【符号の説明】
【0051】
1…前身頃 2…後身頃
3…股下部 10…吸収性本体
11…トップシート 12…バックシート
13…吸収体 20…サイドシート
21…接合線 22…接合領域
23…起立領域 23a…前端側の接合部分
23b…後端側の接合部分 23c…自由部分
23d…非伸縮部 24…折返部
30…補助伸縮部材 30a…前側補助伸縮部材
30b…後側補助伸縮部材 30c…中央補助伸縮部材
31…基端 32…先端
40…立体ギャザー伸縮部材 50…レッグギャザー伸縮部材
100…吸収性物品
図1
図2
図3