【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法にしたがって評価した。
【0044】
(1)総繊度
JIS L−1095 9.4.1記載の方法で測定する。
(2)フィラメント数
フィラメント糸条の断面写真よりフィラメント数を数える。
(3)織物の密度
JIS L−1096 8.6.1記載の方法で測定する。
(4)引張強度
JIS K6404−3記載の方法で測定する。
(5)樹脂の粘度
JIS K−7117記載の方法を用い、B型粘度計で測定する。
(6)樹脂膜強伸度
樹脂の0.5mmの一様な厚さの膜を作製し、熱風照射方式にて190℃2分間硬化処理した。作製した樹脂膜を、定速緊張型の引張試験機を用いチャック間10mmにて10mm/minの速度で引張試験を行い、破断時の強度及び伸度を測定した。
(7)硬度
ASTM D2240記載の方法を用い、ショアーAの硬さ計を用いて測定した。
(8)塗布量
樹脂を硬化させた後のコーティング布を正確に5cm角で採取し、ベース基布である繊維のみを溶かす溶剤(ポリアミド66の場合は、ヘキサフルオロイソプロパノール)に浸漬して基布を溶解させた。次に、不溶物であるシリコーンコート層のみを回収してアセトン洗浄を行い、真空乾燥後、試料の秤量を行った。なお、塗布量は、1m
2あたりの質量(g/m
2)で表した。
(9)非コート面樹脂含浸
コート布の非コート面の表面写真を任意に選んだ5箇所で撮影し、経糸と緯糸の交点部分4隅すべてで樹脂が確認出来た場合を○、すべてで確認出来なかった場合を×とした。
(10)コート前後引張強伸比
コート後の基布の引張強度測定値の経方向と緯方向を足した値をコート前の基布の引張強度測定値の経方向と緯方向を足した値で割って算出した数値を記載した。小数点3桁目を丸めた。
【0045】
(実施例1)
原糸強度が8.2cN/dtexで総繊度が470dtex、144フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、沸水にて収縮加工した後、110℃で乾燥仕上げをし、経密度46本/2.54cm、緯密度46本/2.54cm、カバーファクターが1,994の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が635N/cm、緯方向が658N/cmであった。
【0046】
次に、下記組成物からなり、25℃における粘度が9Pa・secである無溶剤系シリコーン樹脂組成物を調合した。この時のシリコーン樹脂の膜強度は6.0MPa、膜伸度が97%、硬度が55であった。
【0047】
(無溶剤系シリコーン樹脂組成物の配合)
(A)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量31000):78質量部
(B)メチルハイドロジェンポリシロキサン(重量平均分子量2800、ケイ素原子に結合する水素原子数:10個):5質量部
(C)乾式シリカ粒子:0.5質量%(シリコーン樹脂組成物に対して)
(日本アエロジル社製、AEROSIL(R) NX90;平均一次粒径:20nm、比表面積:90m
2/g、トリメチルシラン処理品)
(D) エポキシ基を有する有機ケイ素化合物:1.1質量部
(3個のメトキシ基と1個のエポキシ基を有する、重量平均分子量:240)
(E) ケイ素原子結合ビニル基を有する有機ケイ素化合物:0.4質量部
(3個のメトキシ基と1個のビニル基を有する、重量平均分子量:150)
(F)架橋性シリコーン:末端トリメチルシラン/ビニルジメチルシラン=86/14モル比:14.5質量部
(G)白金触媒:20ppm(シリコーン樹脂組成物に対して)
(H) ベンガラ顔料:0.5質量部
【0048】
前記の織物の片面に、このシリコーン樹脂組成物を、ナイフオンエアー方式で先端部半径Rが0.3mmのナイフを用い、基布張力500N/m、ナイフ押し込み量を1mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が20g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が9%向上した。
【0049】
(実施例2)
原糸強度が8.0cN/dtexで総繊度が470dtex、72フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、沸水にて収縮加工した後、110℃で乾燥仕上げをし、経密度46本/2.54cm、緯密度46本/2.54cm、カバーファクターが1,994の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が638N/cm、緯方向が619N/cmであった。
【0050】
(A)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量31000):78質量部の代わりに、(A1)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(分子量33000):78質量部を添加した以外は実施例1の組成である、25℃における粘度が8Pa・secである無溶剤系シリコーン樹脂組成物を調合した。この時のシリコーン樹脂の膜強度は5.5MPa、膜伸度が111%、硬度が51であった。
【0051】
前記の織物の片面に、このシリコーン樹脂組成物を、ナイフオンエアー方式で先端部半径Rが1.2mmのナイフを用い、基布張力550N/m、ナイフ押し込み量を2mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が35g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が11%向上した。
【0052】
(実施例3)
実施例1と同様の原糸を用い、同様の工程を経て、経密度51本/2.54cm、緯密度51本/2.54cm、カバーファクターが2,211の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が699N/cm、緯方向が716N/cmであった。
【0053】
(A)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量31000):78質量部の代わりに、(A2)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量35000):78質量部を添加した以外は実施例1の組成である、25℃における粘度が8Pa・secである無溶剤系シリコーン樹脂組成物を調合した。この時のシリコーン樹脂の膜強度は5.2MPa、膜伸度が120%、硬度が47であった。
【0054】
前記の織物の片面に、このシリコーン樹脂組成物を、ナイフオンエアー方式で先端部半径Rが0.3mmのナイフを用い、基布張力650N/m、ナイフ押し込み量を2mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が15g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が5%向上した。
【0055】
(実施例4)
原糸強度が8.5cN/dtexで総繊度が235dtex、72フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、沸水にて収縮加工した後、110℃で乾燥仕上げをし、経密度73本/2.54cm、緯密度73本/2.54cm、カバーファクターが2,238の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が492N/cm、緯方向が493N/cmであった。
【0056】
次に、実施例1と同一の組成である樹脂を前記の織物の片面に、先端部半径Rが0.6mmのナイフを用い、基布張力450N/m、ナイフ押し込み量を5mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が25g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が5%向上した。
【0057】
(実施例5)
原糸強度が8.3cN/dtexで総繊度が350dtex、108フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、沸水にて収縮加工した後、110℃で乾燥仕上げをし、経密度55本/2.54cm、緯密度55本/2.54cm、カバーファクターが2,058の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が570N/cm、緯方向が560N/cmであった。
【0058】
次に、実施例3と同一の組成である樹脂を前記の織物の片面に、先端部半径Rが0.2mmのナイフを用い、基布張力450N/m、ナイフ押し込み量を3mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が35g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が7%向上した。
【0059】
(実施例6)
原糸強度が7.2cN/dtexで 総繊度が570dtex、192フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、沸水にて収縮加工した後、110℃で乾燥仕上げをし、経密度46本/2.54cm、緯密度46本/2.54cm、カバーファクターが2,196の織物を得た。この基布の引張強度は、経方向が626N/cm、緯方向が620N/cmであった。
【0060】
次に、実施例1と同一の組成である樹脂を前記の織物の片面に、先端部半径Rが0.6mmのナイフを用い、基布張力400N/m、ナイフ押し込み量を4mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が25g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しており、コート後に引張強度が5%向上した。
【0061】
(比較例1)
実施例2の織物に、(A)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量31000):78質量部の代わりに、(A3)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量45000):19質量部、(A4)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量23000):59質量部添加し、また(C)の乾式シリカ粒子の添加量を14.6質量%に変更し、(F)成分を添加しない以外は実施例1の組成である、25℃における粘度が22Pa・secである無溶剤系シリコーン樹脂組成物を調合した。この時のシリコーン樹脂の膜強度は3.8MPa、膜伸度が367%、硬度が42であった。
【0062】
前記の織物の片面に、このシリコーン樹脂組成物を、ナイフオンエアー方式で先端部半径Rが0.5mmのナイフを用い、基布張力500N/m、ナイフ押し込み量を3mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が25g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しておらず、コート後に引張強度が向上しなかった。
【0063】
(比較例2)
実施例3の織物に、(A)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量31000):78質量部の代わりに、(A3)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量45000):9質量部、(A4)ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量23000):69質量部添加し、また(C)の乾式シリカ粒子の添加量を5.2質量%に変更した以外は実施例1の組成である、25℃における粘度が15Pa・secである無溶剤系シリコーン樹脂組成物を調合した。この時のシリコーン樹脂の膜強度は2.7MPa、膜伸度が415%、硬度が31であった。
【0064】
前記の織物の片面に、このシリコーン樹脂組成物を、ナイフオンエアー方式で先端部半径Rが0.3mmのナイフを用い、基布張力650N/m、ナイフ押し込み量を7mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が15g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸していたが、コート後に引張強度が向上しなかった。
【0065】
(比較例3)
実施例4と同一の織物、樹脂を用い、織物の片面に、先端部半径Rが0.6mmのナイフを用い、基布張力450N/m、ナイフ押し込み量を0.5mmに調整して塗布した。さらに、190℃で2分間硬化処理し、塗布量が28g/m
2であるコーティング基布を得た。得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られた基布は、非コート面まで樹脂が含浸しておらず、コート後に引張強度が1%しか向上しなかった。
【0066】
【表1】