(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整冷却設備の前記各ヘッダーは、鋼帯の幅方向センター部において前記鋼帯に対してミストを噴射する前記ノズルの数が通板方向上流から下流に向かって増加するように構成されている、請求項7に記載の冷却設備。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<1.溶融亜鉛めっき設備の概要>
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る冷却設備が設けられる溶融亜鉛めっき設備の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る冷却設備が設けられる溶融亜鉛めっき設備の概略構成を示す概略説明図である。
【0025】
本実施形態に係る溶融亜鉛めっき設備により処理される鋼種としては、例えば極低炭素鋼や高張力鋼板等がある。一般に、厚さ0.4〜3.2mm、幅600〜1900mmの鋼材が処理される。
【0026】
溶融亜鉛めっき設備は、
図1に示すように、鋼帯Sの表面をめっきするための溶融亜鉛5が入った亜鉛ポット10と、鋼帯Sに付着しためっきの量を調整するための一対のガスノズル30と、加熱帯40、保熱帯50および冷却帯60からなる合金化炉とを備える。なお、本実施形態に係る溶融亜鉛めっき設備は保熱帯50を備えているが、本発明はかかる例に限定されず、保熱帯50を備えていない溶融亜鉛めっき設備についても適用可能である。溶融亜鉛めっき設備では、溶融亜鉛5が入った亜鉛ポット10に鋼帯Sを侵入させて、溶融亜鉛5に浸漬されたシンクロール20によって垂直に引き上げられる。引き上げられた鋼帯Sは、ガスノズル30から噴射されるワイピングガスにより、鋼帯Sの表面に付着しためっきの量が所定量に調整される。
【0027】
その後、鋼帯Sはさらに垂直に引き上げられながら、合金化炉で合金化処理される。合金化炉では、まず、加熱帯40によって鋼帯Sの板温が略均一となるように加熱した後、保熱帯50にて合金化時間を確保し合金層を生成させる。その後、鋼帯Sは冷却帯60にて冷却され、トップロール70によって次の工程へ搬送される。
【0028】
本実施形態に係る合金化炉の冷却帯60は、鋼帯Sの通板方向上流側(すなわち、鉛直下方側(亜鉛ポット10側))に設けられた冷却帯前段部61と、冷却帯前段部61に対して鋼帯Sの通板方向下流側(すなわち、鉛直上方側)に設けられた冷却帯後段部62とからなる。冷却帯前段部61および冷却帯後段部62は、それぞれ多段に気水ヘッダー(
図8、
図9の符号63)が配置されている。各気水ヘッダーには、冷却水をミスト状で噴射する気水噴射ノズル(図
8の符号64)が複数設けられている。気水噴射ノズルから噴射されたミストは鋼帯Sの表面に吹き付けられる。各気水ヘッダーに供給される冷却水量は、制御装置65によって制御される。
【0029】
また、冷却帯60には、鋼帯Sの幅方向のエッジ部に対向するように配置される一対のミスト吸引設備(
図6の符号67)が少なくとも1つ設けられている。ミスト吸引設備は、少なくとも冷却帯60の通板方向下流側に設けられ、鋼帯Sに対して噴射されたミストの少なくとも一部を吸引する。
【0030】
<2.ミスト冷却のメカニズム>
従来、生産能力向上のために、冷却能力の高いミスト冷却が使用されているが、ミスト冷却は鋼帯Sを強冷却するために高水量を噴霧すると、鋼帯Sの幅方向に温度ムラを生じさせ、品質不良を引き起こす要因となっていた。
図2に、冷却帯60を通過している鋼帯Sの幅方向および長手方向における板温分布を示す。
図2の長手方向における温度分布では、本願対策前のセンター部の温度Cb及びエッジ部の温度Ebと、本願対策後のセンター部の温度Ca及びエッジ部の温度Eaとを示している。また、
図2の幅方向における温度分布では、長手方向の位置A、B、Cおける本願対策前の温度分布と本願対策後の温度分布とを示している。位置Aは冷却帯60による鋼帯Sの冷却開始位置、位置Bは冷却帯前段部61と冷却帯後段部62との間の位置、位置Cは冷却帯60による鋼帯Sの冷却終了位置である。
【0031】
ここで、鋼帯Sの幅方向における中央部分をセンター部、幅方向両端側をエッジ部とする。エッジ部とは、鋼帯Sの幅方向端部から100mm離れた境界位置までの範囲をエッジ部とする。
【0032】
本願対策前は、長手方向における鋼帯Sの温度は、
図2に示すように、エッジ部の温度Ebがセンター部の温度Cbよりも低くなる。冷却帯前段部61から冷却帯後段部62へ移動するにつれて、鋼帯Sの温度はセンター部およびエッジ部ともに徐々に温度は低下し、これらの温度差は徐々に大きくなる。すなわち、幅方向における温度分布をみると、鋼帯Sが搬送されるにつれてエッジ部の温度がセンター部の温度と比較して低くなり、冷却帯60出側である位置Cにおいて温度分布は上に凸の形状となる。
【0033】
幅方向に温度分布が生じる要因の1つに、冷却帯内部での板端部方向に向かうガス流れがあげられる。板幅方向中央付近に配したノズルからのガスが排気口へ向かう際、冷却帯60の幅方向端部を経由する流れが生じ、そのガス流れにより鋼帯Sの表面上に付着したミストが鋼帯Sの両端に向かって流されるため、鋼帯Sのエッジ部の板温が低下する。鋼帯Sの温度が高い部分はトップロール70に鋼帯表面のめっきが付着し品質不良の原因となる一方、鋼帯Sの温度が低い部分は水の膜沸騰領域と遷移沸騰領域との境界温度であるクエンチ温度を下回って局部的な過冷却となりしわ疵を発生させることになる。このため、鋼帯Sの幅方向の温度分布を最終的に均一にする必要がある。
【0034】
本実施形態においても、生産能力向上のため冷却帯60における冷却手段としてミスト冷却を採用する。ミスト冷却の採用によって生産能力を高めるとともに、品質不良を発生させないために、本願発明者らは、鋭意検討の結果、鋼帯Sのエッジ部の過冷却を抑制し、鋼帯Sの幅方向温度分布を最終的に均一にするとともに冷却不安定を回避する冷却設備の構成に至った。
【0035】
すなわち、本実施形態に係る合金化炉の冷却帯60では、鋼帯Sを安定して冷却するために、冷却帯60においては鋼帯Sに付着したミストが膜沸騰となる板温を維持する。液体は沸騰状態において高温になるにつれて核沸騰、遷移沸騰、膜沸騰とその形態が変化する。通常、鋼帯Sの温度は、合金化炉の冷却帯60の入側において水が膜沸騰となる温度域にある。その後、鋼帯Sの温度の低下に伴い、鋼帯Sの表面において水が膜沸騰から遷移沸騰する領域が部分的に発生するようになると、不安定な冷却となり、鋼帯Sに温度ムラが生じる。そこで、本実施形態では、冷却帯60においては鋼帯Sに付着したミストが膜沸騰となる板温を維持するように冷却する。
【0036】
さらに、鋼帯Sのエッジ部の過冷却を抑制するため、通板方向上流側において、鋼帯Sに対して噴射するミスト噴射量が、鋼帯Sの幅方向のエッジ部のミスト噴射量がセンター部より少なくなるように調整される。鋼帯Sの幅方向全体にわたって同一のミスト噴射量で鋼帯Sを冷却すると、上述のように鋼帯Sのエッジ部の温度が大きく低下し、センター部との温度偏差が大きくなってしまう。
【0037】
そこで、通板方向上流側においては、鋼帯Sに噴射されるミストを調整して鋼帯Sのエッジ部の冷却を抑制するとともに、鋼帯Sのエッジ部の過剰なミストを排除し、通板中の鋼帯Sのエッジ部の板温の低下を防止する。これにより、エッジ部の過冷却を防ぎ、
図2に示すように冷却帯60により冷却が開始されてから終了するまでの間は、鋼帯Sの温度が膜沸騰温度範囲であり、かつ、鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上となるようにする。
【0038】
鋼帯Sの幅方向の温度分布をみると、例えば位置Bでの状態のように、鋼帯Sの幅方向センター部に対してエッジ部の温度高くなった温度カーブとなる。そして、鋼帯Sが搬送されるにつれて、
図2の鋼帯Sの長手方向の分布に示すように、エッジ部の温度Eaとセンター部の温度Caとの温度偏差が小さくなり、最終的に冷却帯60の出側における鋼帯Sの幅方向の温度分布を略均一にすることができる。すなわち、鋼帯Sの温度を、冷却帯60により冷却が開始されてから終了するまでの間は、鋼帯Sの温度が膜沸騰温度範囲であり、かつ、鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上となるようにすることで、鋼帯Sのエッジ部の不安定な遷移沸騰状態を回避し、鋼帯Sの品質不良を防止する。
【0039】
なお、必ずしも冷却帯60により冷却が開始されてから終了するまでのすべての範囲において、鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上である必要はない。少なくとも冷却帯60の通板方向における総冷却長に対して、通板方向上流側から2/3以上の範囲で鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上であればよい。この範囲において鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上であれば、鋼帯Sの品質を許容範囲に収めることができる。
【0040】
図2のように最終温度差ゼロが理想的ではあるが、現実には、しわ疵が発生する温度上限と合金巻きが発生する温度下限との間には余裕が存在し、その温度余裕は、一般的に40℃程度である。したがって、通板方向上流側から総冷却長の2/3以上の範囲で鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上であれば、最終温度偏差をしわ疵と合金巻きとを回避できる温度範囲内に収めることが可能である。なお、本知見は、鋼帯Sの温度偏差の生成量を実ラインで調査した結果に基づき考察した結果である。
【0041】
このとき、総冷却長の冷却中間位置において、鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度より20℃以上高いのが望ましい。すなわち、総冷却長の冷却中間位置において、
図2の位置Bのように、鋼帯Sの幅方向センター部に対してエッジ部の温度高くなった温度カーブとなるようにすることで、最終的に冷却帯60の出側における鋼帯Sの幅方向の温度分布を略均一にすることができる。
【0042】
<3.冷却帯の冷却設備による鋼帯冷却>
(3−1.鋼帯の冷却方法)
図3に、本実施形態に係る合金化炉の冷却帯60による板温制御の概略を示す。
図3に示すように、鋼帯Sは冷却帯60を通過することで目標終点温度まで冷却される。一般に、溶融亜鉛めっき処理において鋼帯Sの合金化炉の冷却帯60の入側温度は約450〜600℃であり、終点温度は300〜400℃程度である。また、
図3に示すクエンチ温度Tqは、水の膜沸騰領域と遷移沸騰領域との境界温度である。クエンチ温度Tqより大きい温度範囲が鋼帯Sの表面において水が膜沸騰する膜沸騰温度範囲となる。クエンチ温度Tqは、冷却条件によって変化し、鋼帯Sを高水量によって強冷却すると上昇する傾向にある。
【0043】
図3に示すように、終点温度とクエンチ温度Tqとの温度差は、冷却帯60の入側における板温とクエンチ温度Tqとの温度差よりも小さい。したがって、冷却帯後段部62で鋼帯Sを強冷却するとクエンチ温度Tqが上昇してしまい、終点温度とクエンチ温度Tqとの温度差がより小さくなってしまう。そうすると、冷却帯後段部62でミストが遷移沸騰する可能性が高くなり、鋼帯Sに温度ムラが発生する可能性がある。本実施形態に係る冷却帯60では、冷却帯60の通板方向上流側にて高水量で積極的に鋼帯Sを冷却しつつ、板温が常にクエンチ温度Tq以下とならないようにしている。
【0044】
具体的には、冷却帯前段部61の通板方向上流側に、冷却帯60を通過する鋼帯Sに対して噴射されるミストの噴射量が鋼帯Sの幅方向に調整された調整冷却設備61aを備える。調整冷却設備61aは、鋼帯Sの幅方向のセンター部を積極的に冷却し、エッジ部の冷却を抑制するように調整された冷却設備である。調整冷却設備61aの設置によって、鋼帯Sの温度を水が膜沸騰から遷移沸騰となるクエンチ温度以下とならないようにしつつ、鋼帯Sの幅方向の温度分布が大きくならないようにする。
【0045】
調整冷却設備61aを冷却帯前段部61の通板方向上流側に設ける理由としては、上述したように、冷却帯60の通板方向下流側よりも鋼帯Sの温度制御幅に余裕があるためである。鋼帯Sの目標終点温度は水のクエンチ温度近傍にあるため、鋼帯Sの温度がクエンチ温度以下とならないようにするためには制御装置65に高い制御精度が要求される。このため、冷却帯前段部61の通板方向上流側に調整冷却設備61aを設け、高水量によって鋼帯Sを積極的に冷却することが望ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る冷却帯60には、クエンチ点の位置変化の影響を最小化するために、鋼帯Sに対して噴射されたミストの少なくとも一部を、冷却帯60内に存在する空気とともに吸引するミスト吸引設備67が設けられている。これにより、垂れ水の要因となる余剰のミストを吸引し、余剰のミストが垂れ水として鋼帯Sに掛かることを防止できる。
【0047】
このミスト吸引設備67は、少なくとも冷却帯60における鋼帯Sのエッジ部に対向する部分の近傍に設けられることが好ましい。かかる位置にミスト吸引設備67を設けることで、エッジ部において垂れ水の要因となりうる余剰のミストを、より効果的に吸引することが可能となる。
【0048】
また、このミスト吸引設備67は、少なくとも冷却帯60の通板方向下流側に設けることが好ましい。鋼帯Sの温度がより低い状態にある通板方向の下流側では、垂れ水によってクエンチ点位置の変化が生じ、沸騰状態が膜沸騰状態から遷移沸騰状態に移行する可能性が高い。したがって、冷却帯60の通板方向下流側に重点的にミスト吸引設備67を設けることで、垂れ水に起因する温度ばらつきをより効果的に抑制することが可能となる。なお、冷却帯60に設けられるミスト吸引設備67の個数については、特に限定されるものではなく、冷却帯60の大きさや、冷却帯60から吸引すべきミストの量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0049】
ミスト吸引設備67による余剰ミストの吸引量は、制御装置65によって制御される。制御装置65が、調整冷却設備61a及びミスト吸引設備67の双方を制御することで、より効率良く鋼帯Sの冷却状態の管理を実施することが可能となる。
【0050】
ここで、ミスト吸引設備67によって吸引されるミストの量が少なすぎると、残存する余剰ミストに起因する垂れ水が発生することとなり、吸引されるミストの量が多すぎると、鋼帯Sの冷却が十分に行われなくなってしまう。そのため、制御装置65の制御下においてミスト吸引設備67が吸引するミストの量は、垂れ水の発生を防止しつつ十分な鋼帯Sの冷却を行うことが可能な、所定の範囲とすることが好ましい。
【0051】
ミスト吸引設備67により吸引する排気エア及びミストの量の制御は、公知の方法により行うことが可能であるが、例えば、ミスト吸引設備67によるミスト吸込口近傍に設けた圧力計(
図6の符号69)の値により制御することが可能である。すなわち、ミスト吸引口近傍に設けた圧力計によって、ミスト吸引口の近傍の鋼帯Sのセンター部における圧力値を計測し、計測される圧力値が負圧となるように、ミスト吸引設備67に設けられた排気ブロワのダンパー開度を調整すればよい。
【0052】
また、調整冷却設備61aは、通板方向における限られた調整冷却設備61aの設備長で幅方向温度分布を調整するためには高水量で使用する必要がある。一方、調整冷却設備61aを膜沸騰域で使用するには、クエンチ温度Tqの上昇を回避するために少水量で使用するのが望ましい。このように、調整冷却設備61aを設置するのみでは、幅方向温度分布の調整と膜沸騰域での安定冷却を実現する条件は相反する要件となってしまい両立は容易ではない。調整冷却設備61aの設備長を不必要に長くすることは、設備が複雑になり設置コストが大きくなるという課題や、幅方向温度分布を調整する必要がない対象材においては逆にエッジ部の温度が高くなってしまうという課題がある。
【0053】
そこで、本願発明者らは、幅方向温度分布の抑制と膜沸騰条件の維持を実現するための設備を検討した結果、調整冷却設備61aの設備長L[m]が以下の式(1)を満たせばよいことを見出した。
【0054】
L≧(α×V×th)/((T
in−β)^m)×(T
in−γ)) ・・・(1)
ここで、冷却帯60の入口における鋼帯Sのセンター部の温度をT
in[℃]、鋼帯Sの速度をV[m/s]、鋼帯の厚みをth[m]とする。また、α、β、γ、mは定数であり、溶融亜鉛めっき設備に応じて設定される。
【0055】
本願発明者らは、種々の操業条件において、調整冷却設備61aの水量に対する幅方向温度分布調整能力と冷却安定性を調査した。その結果、膜沸騰域を維持できる条件の中で、最も幅方向温度分布が小さくなる水量が存在することを見出した。また、その水量は、冷却帯60の入口における鋼帯Sの温度、鋼帯Sの速度、鋼帯Sの厚み、および調整冷却設備61aの設備長Lと関係があることが分かった。そこで、この関係を利用して、幅方向温度分布調整効果を得るために必要な調整冷却設備61aの設備長Lを規定する上記式(1)を導出した。
【0056】
式(1)は以下のように導出される。まず、クエンチ温度Tqについて、上述したように鋼帯Sを高水量によって強冷却すると上昇する傾向にある。この関係は、実機設備を模擬した試験設備を用いて鋼帯の冷却特性を評価することにより得ることができる。例えば
図4に示すように、クエンチ温度Tqは、下記式(1−1)のような冷却水量Qの一次関数で表される。式(1−1)においてa、bは定数である。
【0058】
また、
図4に示すように、調整冷却設備61aのセンター部(幅方向の中心)における鋼帯Sの入側の温度T
in、鋼帯Sの厚みth、鋼帯Sの速度Vおよび調整冷却設備61aの設備長Lを一定としたとき、冷却水量Qと鋼帯Sのセンター部の温度Tとは、
図4に示すように、冷却水量Qが大きくなるほど鋼帯Sのセンター部の温度Tは低下するような関係にある。ここで、調整冷却設備61aによる鋼帯Sのセンター部とエッジ部との温度差の改善効果ΔTは、鋼帯Sのセンター部入側の温度T
inと調整冷却設備61a内での任意の通板方向位置の温度T
1との差と比例関係にある。すなわち、幅方向における温度分布の改善効果ΔTは下記式(1−2)で表される。式(1−2)においてαは定数である。
【0059】
ΔT=α(T
in−T
1) ・・・(1−2)
【0060】
一方、鋼帯Sの温度をクエンチ温度Tq未満に冷却しないようにするため、調整冷却設備61aにより調整可能な幅方向における温度分布には上限がある。すなわち、
図5に示すように、点P
Aからクエンチ温度Tqとなる位置を示す点P
Bの間においては、冷却水量Qが増加するほど、幅方向における温度分布の改善効果ΔTは高くなる。しかし、鋼帯Sの温度Tがクエンチ温度Tqを下回ると、鋼帯Sが局所的に過冷却される状態となり、
図5に示すように、点P
B〜P
Cに向かっては幅方向における温度分布の改善効果ΔTが急激に低下する。
【0061】
したがって、調整冷却設備61aにより調整可能な幅方向における温度分布は、鋼帯Sの温度がクエンチ温度Tq以上となる膜沸騰温度範囲(点P
A〜P
Bの範囲)となる。そこで、クエンチ温度Tqにおける幅方向における温度分布の改善効果をΔT
maxとすると、式(1−2)より下記式(1−3)で表すことができる。
【0062】
ΔT
max=α(T
in−Tq) ・・・(1−3)
【0063】
さらに、調整冷却設備61aの設備長Lは、調整が必要な温度分布偏差に対して決定される。ここで、上述した調整可能な温度分布の改善効果の上限ΔT
maxは、下記式(1−4)のように、鋼帯Sの入側のセンター部の温度T
in、鋼帯Sの厚みthとその速度V、および調整冷却設備61aの設備長Lによっても表される。
【0064】
ΔT
max=(α・2・h・L・(T
ave−T
w))/(ρ・Cp・V・th)
・・・(1−4)
ここで、T
aveは平均板温であり、例えば鋼帯Sの入側のセンター部の温度T
inとクエンチ温度Tqとの平均値で表される。また、T
wは冷却水温、ρは鋼材密度、Cpは鋼材比熱である。
【0065】
この式(1−4)の関係と、上記式(1−1)、(1−3)および冷却水量Q[l/m
2・min]と熱伝達係数h[W/m
2・℃]との関係を表す式(1−5)を整理すると、上記式(1)を得ることができる。式(1−5)において、kは定数である。
【0067】
なお、このとき上記式(1)の定数α、β、γは以下のようになる。
【0068】
α=20280×a
m/k ・・・(1−7)
β=33+b ・・・(1−8)
γ=45 ・・・(1−9)
【0069】
定数α、β、γは実機設備を模擬した試験設備を用いて鋼帯の冷却特性を評価した結果を用いて設定され、例えばα=1700000、β=330、γ=45、m=0.6とすることができる。
【0070】
なお、冷却帯60の入口における鋼帯Sの温度Tや、鋼帯Sの速度V、鋼帯Sの厚みthは、鋼種や生産量、注文サイズによって決まる値であることから、式(1)により算出されるLの値は固定の値とはならない。したがって、調整冷却設備61aの設備長Lは、例えば代表的な操業条件を前提にして決定される。
【0071】
また、調整冷却設備61aの設備長Lが一定であるときには、上記式(1)の関係に基づき、下記式(2)から算出される鋼帯Sの上限速度V
max以下で鋼帯Sを生産してもよい。α’、β’、γ’、mは定数であり、溶融亜鉛めっき設備に応じて設定される。例えば、α’=1700000、β’=330、γ’=45、m=0.6とすることができる。鋼帯Sの速度Vは通板対象により変化するため、これらの定数は過渡状態を考慮して設定している。
【0072】
V
max=(L×(T
in−β’)^m×(T
in−γ’))/(α’×th) ・・・(2)
【0073】
このように、調整冷却設備61aの設備長Lを変更できない場合にも、鋼種や生産量、注文サイズによって鋼帯Sの上限速度V
maxを変更し、上限速度V
max以下の速度Vで鋼帯Sを生産することで、冷却ムラに起因する品質不良を回避しつつ、高い生産性を得ることができる。鋼帯Sの速度Vは、例えばガイダンスシステムを用いてオペレータに通知され、変更される。
【0074】
また、鋼帯Sの幅方向の温度分布に関しては、温度分布がないようにすることが望ましいが、所定の温度範囲内に収まっていれば、品質に大きな影響はない。例えば、所定の温度範囲は30℃程度である。なお、冷却帯60の出側における終点温度について、上述したように終点温度は300〜400℃程度であるが、これより高くなると鋼帯Sの表面のめっきがトップロール70に巻きつく可能性がある。したがって、冷却帯60の出側における鋼帯Sの幅方向の温度のうち最高温度は300〜400℃より高くならないように制御される。
【0075】
[3−2.調整冷却設備の構成例]
調整冷却設備61aの一構成について、
図6〜
図9に基づき説明する。
図6は、本実施形態に係る冷却帯60の一構成例を示す説明図である。
図7は、本実施形態に係る調整冷却設備61aを備える冷却帯前段部61の一構成例を示す説明図である。
図8は、気水ヘッダー63の一構成例を示す説明図である。
図9は、調整冷却設備61aが1段の気水ヘッダー63から構成されるときの調整冷却設備61aの設備長を説明する説明図である。
【0076】
本実施形態に係る冷却帯60は、
図8に示すような、鋼帯Sの幅方向に沿って複数の気水噴射ノズル64が配列された気水ヘッダー63を長手方向に複数配置して構成される。冷却帯前段部61および冷却帯後段部62には気水ヘッダー63がそれぞれ複数段(例えば約30段)ずつ設けられている。
図7に示すような冷却帯60は鋼帯Sの通板方向を挟んで対称に配置されている。これにより、鋼帯Sを表面および裏面から冷却している。気水噴射ノズル64からのミスト噴射量(すなわち、気水ヘッダー63の水量)は、
図8に示すバルブ66a、66bの開閉によって調節できる。バルブ66a、66bの開閉は制御装置65によって段毎に調整可能である。
【0077】
調整冷却設備61aは、例えば各気水ヘッダー63に配列された気水噴射ノズル64のうち鋼帯Sの幅方向のエッジ部側の気水噴射ノズル64をキャップにより塞ぎ、気水噴射ノズル64からミスト噴射されないようにすることで構成することができる。
図7の例では、冷却帯前段部61の通板方向上流側に位置する1〜n段目の気水ヘッダー63のエッジ部がキャップにより塞がれ、未噴射領域63bを形成している。したがって、調整冷却設備61aを通過する間、鋼帯Sは、噴射領域63aに対応するセンター部が積極的に冷却され、両エッジ部の冷却は抑制される。
【0078】
なお、調整冷却設備61aを構成する気水ヘッダー63の数nは、上記式(1)で設定される調整冷却設備61aの設備長L、あるいは予め設定された一定の調整冷却設備61aの設備長Lに基づき設定される。具体的には、調整冷却設備61aの設備長Lは、下記式(3)で表される。ここで、調整冷却設備61aが1段の気水ヘッダー63から構成されるとき(すなわち、n=1のとき)には、
図9に示すように、気水噴射ノズル64から鋼帯Sの表面に向かって垂直な方向に対して上下45°の角度θをもってミストが噴射される範囲を調整冷却設備61aの設備長Lとする。
【0080】
ここで、pは通板方向に隣接する気水ヘッダー63のピッチ、dは鋼帯Sと気水ヘッダー63との距離を表す。上記式(3)に基づき、調整冷却設備61aを構成する気水ヘッダー63の数nや設置位置を決定することができる。
【0081】
調整冷却設備61aは、例えば
図7に示すように、通板方向上流側において鋼帯Sの両エッジ部にあたる部分の気水噴射ノズル64をキャップで多く塞いで未噴射領域63bを多くし、下流側に向かうにつれてセンター部側からキャップで塞ぐ気水噴射ノズル64の数を減少させ未噴射領域63bを少なくするようにしてもよい。すなわち、気水ヘッダー63の気水噴射ノズル64によってミストを鋼帯Sの表面に噴射する噴射領域63aを、通板方向上流から下流に向かって大きくするようにする。
【0082】
例えば、鋼帯Sの厚み0.6mm、冷却帯60の入口の鋼帯温度500℃において必要な調整冷却設備61aの設備長Lは、以下の表1のように設定される。鋼帯Sの速度Vが大きいほど、長い調整冷却設備61aが必要になる。
【0084】
これにより、冷却開始時に鋼帯Sのエッジ部の過冷却を効果的に抑制しつつ、その後徐々に鋼帯Sの冷却範囲を広げて全面的に冷却されようにする。特に、冷却開始段階では鋼帯Sのセンター部を集中的に冷却し、エッジ部の冷却を停止することで、
図2に示すように、冷却帯60を通過中、鋼帯Sのエッジ部の温度がセンター部の温度以上となるようにすることができる。したがって、冷却帯60における冷却終了時において、鋼帯Sの幅方向の温度分布が大きくならず、略均一に冷却することができる。
【0085】
冷却帯60のうち、調整冷却設備61aより通板方向下流側の気水ヘッダー63、すなわち、冷却帯前段部61のn+1段目以降および冷却帯後段部62のすべての気水ヘッダー63は、すべての気水噴射ノズル64からミストが噴射される。
【0086】
なお、
図6に示すように、調整冷却設備61aは、冷却帯60の通板方向最上流1本目の気水ヘッダー63から設置することが必須ではないが、本発明の効果を享受するためにはなるべく上流側、可能であれば1本目から設置するのが望ましい。
【0087】
また、ミスト吸引設備67は、
図6および
図7に示すように、冷却帯前段部61の下流側及び冷却帯後段部62の下流側に、鋼帯Sのエッジ部と対向するように設けられる。このミスト吸引設備67により、気水ヘッダー63から噴射されたミストを、圧力計69により計測される圧力値に応じて、センター部の圧力値が負圧となるように所定量吸引する。これにより、冷却帯前段部61の内部には、垂れ水の発生を防止しつつ十分な鋼帯の冷却を行うことが可能なだけのミストが存在することとなり、垂れ水による冷却ムラの発生を防止できる。
【0088】
図6および
図7に示す調整冷却設備61aの構成は一例であって、本実施形態に係る冷却帯60の調整冷却設備61aの構成はかかる例に限定されない。例えば、
図6および
図7においてキャッ
プで塞がれる気水噴射ノズル64をそもそも設けないようにして、エッジ部の冷却を停止させてもよい。あるいは、エッジ部の冷却を完全に停止させず、センター部よりも低水量を噴霧するようにしてもよい。また、
図6および
図7の調整冷却設備61aは、通板方向上流から下流に向かって鋼帯Sのセンター部の冷却範囲を大きくするように構成されているが、調整冷却設備61aによるセンター部の冷却範囲は一定であってもよい。
【0089】
以上、本実施形態に係る溶融亜鉛めっき処理設備における合金化炉の冷却帯60について説明した。本実施形態に係る合金化炉の冷却帯60は、冷却帯前段部61の通板方向上流側に、冷却帯60を通過する鋼帯Sに対して噴射されるミストの噴射量を鋼帯Sの幅方向に調整した調整冷却設備61aを備える。調整冷却設備61aでは、鋼帯Sのセンター部を積極的に冷却する一方、エッジ部の冷却を停止あるいは低水量の噴射とする。また、少なくとも冷却帯60における鋼帯Sのエッジ部に対向する部分の近傍には、一対のミスト吸引設備67が設けられる。
【0090】
このとき、調整冷却設備61aの設備長Lを、鋼帯Sの幅方向の温度偏差が大きくなり、温度ムラが発生するのを防止すると同時に、鋼帯Sの板温がクエンチ温度Tq以下とならないように冷却できる長さとすることで、安定して鋼帯Sを冷却することができる。本実施形態に係る合金化炉の冷却帯60は、ミスト冷却により安定して鋼帯を冷却することができるので、高速に鋼帯を通過させて処理することが可能となり、生産性を高めることが可能となる。また、上記位置にミスト吸引設備67を設けることで、エッジ部において垂れ水の要因となりうる余剰のミストを、より効果的に吸引することが可能となる。
【実施例】
【0091】
実施例として、溶融亜鉛めっき処理設備における合金化炉の冷却帯において調整冷却設備の使用ヘッダー数を変化させて調整冷却設備の設備長Lを変え、溶融亜鉛めっき鋼帯を冷却したときの冷却後の鋼帯の幅方向温度分布および製品の外観品位を調べた。冷却帯の構成は
図6と同様であり、36段の気水ヘッダーを備えているとする。このうち、1〜9段目の気水ヘッダーは調整冷却設備を構成している。本例では、調整冷却設備のエッジ部の水量はゼロであり、センター部のみミスト噴射を行った。結果を表2に示す。
【0092】
なお、表2において、冷却帯中間位置での温度差は、冷却帯前段部61と冷却帯後段部62との間の位置とし、エッジ部の温度からセンター部の温度を引いた値を示している。冷却帯出側での温度差も、エッジ部の温度からセンター部の温度を引いた値を示している。エッジ部の温度は、鋼帯の幅方向端部から100mmの位置における表面温度、センター部の温度は、鋼帯の幅方向中心位置での表面温度とする。
【0093】
【表2】
◎:無(良好)、△:僅かに有(不可)、×:有(不可)
【0094】
比較例0は、調整冷却設備である1〜9段目の気水ヘッダーを使用しない場合、すなわち、鋼帯の幅方向全体をミスト冷却した場合である。比較例0では、ミスト吸引設備も使用しない。このとき、鋼帯の幅方向のセンター部に比べてエッジ部の板温が大きく低下した。トップロールに鋼帯表面の亜鉛めっきが付着し、しわ疵も発生していた。比較例1は、比較例0の状態にミスト吸引設備を設置した場合である。この場合、しわ疵は発生しないものの、トップロールへの鋼帯表面の亜鉛めっきの付着が見受けられた。
【0095】
実施例1〜3は、調整冷却設備である1〜9段目の気水ヘッダーを使用した場合である。実施例1〜3の調整冷却設備の長さは上記式(1)を満たすようにその下限値よりも長く設定されている。これらの場合、調整冷却設備よって鋼帯の幅方向のセンター部を積極的に冷却した後、調整冷却設備より下流側の気水ヘッダーによって鋼帯の幅方向全体をミスト冷却することで、比較例0及び比較例1と比較してエッジ部温度低下が軽減されていた。トップロールへの鋼帯表面の亜鉛めっきの付着もなく、しわ疵の発生もなかった。
【0096】
比較例2は、調整冷却設備である1〜9段目の気水ヘッダーを使用した場合であり、調整冷却設備の長さは上記式(1)を満たしているが、ミスト吸引設備が設けられていない場合である。この場合、比較例0と同様、鋼帯の幅方向のセンター部に比べてエッジ部の板温が大きく低下し、トップロールに鋼帯表面の亜鉛めっきが付着するとともに、しわ疵も発生していた。
【0097】
比較例3〜5は、調整冷却設備である1〜9段目の気水ヘッダーの使用本数を減らした場合である。いずれも調整冷却設備の長さは上記式(1)を満たさず、その下限値よりも短く設定されている。なお、比較例3については、上記式(1)の関係を満たしていないため僅かにトップロールの鋼帯表面に亜鉛めっきが付着した。冷却中に鋼帯の温度がクエンチ温度を下回ることはなかったが、冷却帯中間位置での鋼帯の幅方向のセンター部の温度がエッジ部の温度よりも僅かに高い程度であったため、冷却帯出側での温度差が大きくなったことが要因と考えられる。
【0098】
比較例4および5については、調整冷却設備の気水ヘッダーの使用本数を減らした結果、センター部とエッジ部の温度差解消代が少なくなる影響を抑制するために、調整冷却設備の各気水ヘッダーへ供給される水量を多くして冷却帯出側のセンター部とエッジ部との温度差を小さくしようとした場合である。比較例4では冷却帯出側のセンター部とエッジ部との温度差は小さくなったものの、冷却中に鋼帯の温度がクエンチ温度を下回ったためにしわ疵が発生した。比較例5では調整冷却設備の各気水ヘッダーへ供給される水量を多くしても、十分にセンター部とエッジ部の温度差を小さくすることができなかった。その結果、冷却帯出口での、鋼帯の幅方向のセンター部は温度が高くなってしまった。一方、鋼帯の幅方向のエッジ部の温度は低下してしまい、クエンチ温度を下回っていた。その結果、比較例5では、トップロールに鋼帯表面の亜鉛めっきが付着し、しわ疵も発生していた。
【0099】
比較例6は、調整冷却設備を冷却帯の最終段側に設置した場合である。比較例6では、調整冷却設備の長さは上記式(1)を満たしており、ミスト吸引設備も設置されている。すなわち、
図10に示すように、冷却帯には、鋼帯Sの幅方向のエッジ部に対向するように配置される一対のミスト吸引設備67が、冷却帯60の通板方向中間位置及び出側に設けられ、鋼帯Sに対して噴射されたミストの少なくとも一部が吸引される。また、冷却帯出側から通板方向上流側に向かって調整冷却設備が構成されている。調整冷却設備は、鋼帯Sの幅方向のエッジ部側の気水噴射ノズルをキャップにより塞ぎ、気水噴射ノズルからミスト噴射されないようにすることで構成されている。このとき、冷却帯出側から通板方向上流側に向かうにつれて、未噴射領域63cが小さくなるようにされている。
【0100】
比較例6では、冷却帯前段部61において鋼帯Sの幅方向が万遍なく冷却されるため、冷却帯の中間位置において鋼帯の幅方向のエッジ部の温度がセンター部の温度よりも低くなる。その結果、冷却帯後段部62においてエッジ部の冷却を抑制してもエッジ部の不安定な遷移沸騰を回避することができず、トップロールに鋼帯表面の亜鉛めっきが付着し、しわ疵も発生した。
【0101】
本実施例より、冷却設備の通板方向上流側に調整冷却設備を設けた際に、上記式(1)を満たすようにすることで、鋼帯の幅方向のエッジ部の温度低下が軽減されて温度ムラの発生が抑制され、しわ疵のない良好な製品を製造できることが分かった。また、トップロールへの鋼帯表面の亜鉛めっきの付着もなくすことができることが示された。
【0102】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0103】
例えば、上記実施形態では、鋼帯を冷却する冷却設備には、ミストを噴射する気水ノズル(二液ノズル)を用いたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、水を噴射する一液ノズルを用いて冷却設備を構成してもよい。なお、水質管理の観点より、水質管理の難しい一液ノズルより二液ノズルを用いる方が好ましい。