(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物及び上記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[タイヤトレッド用ゴム組成物]
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、ジエン系ゴムと、シリカと、シランカップリング剤と、軟化点が60〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂とを含有し、上記シリカの含有量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して50〜150質量部であり、上記シランカップリング剤の含有量は上記シリカの含有量に対して2〜20質量%である。
ここで、上記ジエン系ゴムは、変性共役ジエン系重合体と、特定共役ジエン系ゴムとを含み、上記ジエン系ゴム中の上記変性共役ジエン系重合体の含有量は10〜50質量%であり、上記ジエン系ゴム中の上記特定共役ジエン系ゴムの含有量は50〜90質量%である。
さらに、上記変性共役ジエン系重合体は、シス−1,4−結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体である。
また、上記特定共役ジエン系ゴムは、共役ジエン系重合体鎖の活性末端とポリオルガノシロキサンとが結合してなる共役ジエン系ゴムであり、
上記共役ジエン系重合体鎖は重合体ブロックAと、上記重合体ブロックAと一続きに形成された重合体ブロックBとを有し、
上記重合体ブロックAは、イソプレン単位および芳香族ビニル単位を含み、イソプレン単位含有量が80〜95質量%であり、芳香族ビニル単位含有量が5〜20質量%であり、重量平均分子量が500〜15,000であり、
上記重合体ブロックBは、1,3−ブタジエン単位および芳香族ビニル単位を含む。
【0013】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0014】
上述のとおり、本発明の組成物は、ジエン系ゴムとシリカとを含有し、上記ジエン系ゴムには変性共役ジエン系重合体及び特定共役ジエン系ゴムが含まれる。ここで、変性共役ジエン系重合体はシス−1,4−結合の含有量が多いため、組成物のガラス転移温度を下げ、耐摩耗性能の向上に寄与する。また、変性共役ジエン系重合体の末端はヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性されており、また、特定共役ジエン系ゴムの末端はポリオルガノシロキサンにより変性されている。そのため、いずれも末端がシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。また、特定共役ジエン系ゴムが有する主にイソプレン単位からなる重合体ブロックAもシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。このようにして、本発明の組成物におけるシリカの分散性は極めて高いものとなり、加工性、ウェットグリップ特性、及び、転がり特性(以下、「低転がり抵抗性」又は「低発熱性」とも言う)の向上に繋がるものと考えられる。
結果として、本発明の組成物は、優れた加工性を示し、且つ、タイヤにしたときに優れたウェットグリップ性能、転がり特性及び耐摩耗性能を示すものと推測される。
【0015】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0016】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、変性共役ジエン系重合体と、特定共役ジエン系ゴムとを含む。
ここで、上記ジエン系ゴム中の上記変性共役ジエン系重合体の含有量は10〜50質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、15〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
また、上記ジエン系ゴム中の上記特定共役ジエン系ゴムの含有量は50〜90質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、60〜85質量%であることが好ましく、70〜80質量%であることがより好ましい。
また、特定共役ジエン系ゴムの含有量に対する変性共役ジエン系重合体の含有量の割合は、本発明の効果がより優れる理由から、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることがさらに好ましく、40〜60質量%であることが特に好ましい。
【0017】
<変性共役ジエン系重合体>
上記ジエン系ゴムに含まれる変性共役ジエン系重合体は、シス−1,4−結合の含有量(シス−1,4−結合含有量)が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体である。本発明の効果がより優れる理由から、上記シス−1,4−結合含有量は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。シス−1,4−結合含有量の上限は特に制限されず、100モル%である。
なお、本明細書において、共役ジエン系重合体のシス−1,4−結合含有量とは、共役ジエン系重合体が有する全共役ジエン単位に対する、シス−1,4−結合の共役ジエン単位の割合(モル%)を指す。
【0018】
また、上記共役ジエン系重合体におけるトランス−1,4−結合の含有量(トランス−1,4−結合の含有量)は、本発明の効果がより優れる理由から、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。トランス−1,4−結合含有量の下限は特に制限されず、0%である。
なお、本明細書において、共役ジエン系重合体のトランス−1,4−結合含有量とは、共役ジエン系重合体が有する全共役ジエン単位に対する、トランス−1,4−結合の共役ジエン単位の割合(モル%)を指す。
【0019】
また、上記共役ジエン系重合体におけるビニル結合の含有量(ビニル結合含有量)は、本発明の効果がより優れる理由から、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。ビニル結合含有量の下限は特に制限されず、0%である。
なお、本明細書において、共役ジエン系重合体のビニル結合含有量とは、共役ジエン系重合体が有する全共役ジエン単位に対する、ビニル結合の共役ジエン単位の割合(モル%)を指す。
【0020】
変性共役ジエン系重合体の中間体(中間重合体)として用いられるシス−1,4−結合の含有量が75モル%以上の活性末端を有する共役ジエン系重合体については、特許第5965657号公報の段落[0010]〜[0019]に記載のとおりであり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0021】
本発明で使用する変性共役ジエン系重合体は、上記シス−1,4−結合の含有量が75モル%以上の活性末端を有する共役ジエン系重合体(中間重合体)の該活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなるものであるが、以下に示す5種の態様がある。
【0022】
まず第1の態様は、上記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下にヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してなる変性共役ジエン系重合体である。
第2の態様は、上記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第3の態様は、上記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基と未反応ヒドロカルビルオキシシラン化合物とを縮合反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第4の態様は、上記第1の態様において、第2次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第5の態様は、上記第3の態様において、縮合反応後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
上記の各態様における、第1次変性の反応において、使用する中間重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
各態様及びヒドロカルビルオキシシラン化合物については、特許第5965657号公報の段落[0022]〜[0061]に記載のとおりであり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0023】
このようにして製造された変性共役ジエン系重合体としては、シス−1,4−結合量が75モル%以上の変性ポリブタジエンが、タイヤトレッド用ゴム組成物の性能の点から好適である。
変性共役ジエン系重合体は、補強用充填剤、特にシリカに対する分散改良効果が大きく、全体的にE’(動的貯蔵弾性率)を全温度域で低下させるが、特に低温側のE’の低下を大きくすることが可能となる。したがって、タイヤのウェットグリップ性能をより高めることができる。
また、損失係数(tanδ)においても低減効果が大きく、通常のポリブタジエンゴムを使用した場合と比較すると、0℃での低下を小さくしながら、高温(60℃)の低下をより大きくすることが可能なため、高充填シリカ配合においても、ウェットグリップ性能と転がり特性のバランス向上にも同時に作用する。さらに、補強用充填剤の分散改良効果により、耐摩耗性を向上させることができる。
【0024】
<特定共役ジエン系ゴム>
上記ジエン系ゴムに含まれる特定共役ジエン系ゴムは、共役ジエン系重合体鎖の活性末端とポリオルガノシロキサンとが結合してなる共役ジエン系ゴムである。
ここで、上記共役ジエン系重合体鎖は、重合体ブロックAと、上記重合体ブロックAと一続きに形成された重合体ブロックBとを有し、
上記重合体ブロックAは、イソプレン単位および芳香族ビニル単位を含み、イソプレン単位含有量が80〜95質量%であり、芳香族ビニル単位含有量が5〜20質量%であり、重量平均分子量が500〜15,000であり、
上記重合体ブロックBは、1,3−ブタジエン単位および芳香族ビニル単位を含む。
【0025】
特定共役ジエン系ゴムにおける、共役ジエン系重合体鎖、共役ジエン系重合体鎖が有する重合体ブロックA及び重合体ブロックB、並びに、ポリオルガノシロキサンについては後述のとおりである。
【0026】
特定共役ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、下記工程AとBとCとをこの順に備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであることが好ましい。
・工程A:イソプレンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を重合することにより、イソプレン単位含有量が80〜95質量%であり、芳香族ビニル単位含有量が5〜20質量%であり、重量平均分子量が500〜15,000である、活性末端を有する重合体ブロックAを形成する工程
・工程B:上記重合体ブロックAと、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物とを混合して重合反応を継続し、活性末端を有する重合体ブロックBを、上記重合体ブロックAと一続きにして形成することにより、上記重合体ブロックAおよび上記重合体ブロックBを有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程
・工程C:上記共役ジエン系重合体鎖の上記活性末端に、ポリオルガノシロキサンを反応させる工程
各工程の具体例については特開2016−47883号公報の段落[0017]〜[0054]に記載のとおりであり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0027】
特定共役ジエン系ゴムは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、上述したポリオルガノシロキサンとを反応させることにより生じる、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体(以下、「活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、上述したポリオルガノシロキサンとを反応させることにより生じる、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」を単に「3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」とも言う)を、5〜40質量%含有していることが好ましく、5〜30質量%含有していることがより好ましく、10〜20質量%含有していることが特に好ましい。3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体の割合が上記範囲内にあると、製造時における凝固性、および乾燥性が良好となり、さらには、シリカを配合したときに、より加工性に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物、およびより低発熱性に優れたタイヤを与えることができる。なお、最終的に得られた特定共役ジエン系ゴムの全量に対する、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体の割合(質量分率)を、共役ジエン系重合体鎖の3分岐以上のカップリング率として表す。これは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(ポリスチレン換算)により測定することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定により得られたチャートより、全溶出面積に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の2.8倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積比を、共役ジエン系重合体鎖の3分岐以上のカップリング率とする。
【0028】
上記特定共役ジエン系ゴムの芳香族ビニル単位含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、38〜48質量%であることが好ましく、40〜45質量%であることがより好ましい。
上記特定共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、20〜35質量%であることが好ましく、25〜30質量%であることがより好ましい。なお、ビニル結合含有量とは、特定共役ジエン系ゴムに含まれる共役ジエン単位のうち、ビニル結合が占める割合(質量%)を指す。
上記特定共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値として、500,000〜800,000であることが好ましく、600,000〜700,000であることがより好ましい。
上記特定共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましく、1.2〜2.2であることが特に好ましい。なお、MwおよびMnはいずれもGPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
上記特定共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、20〜100であることが好ましく、30〜90であることがより好ましく、35〜80であることが特に好ましい。なお、特定共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0029】
<その他のゴム成分>
上記ジエン系ゴムは上述した変性共役ジエン系重合体及び上述した特定共役ジエン系ゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を含んでいてもよい。そのようなゴム成分としては特に制限されないが、上述した変性共役ジエン系重合体及び上述した特定共役ジエン系ゴム以外の、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、BRが好ましい。上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、特定共役ジエン系ゴム以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。
上記ジエン系ゴム中のその他のゴム成分の含有量は特に制限されないが、0〜30質量%であることが好ましい。
【0030】
〔シリカ〕
本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0031】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100〜400m
2/gであることが好ましく、160〜350m
2/gであることがより好ましく、180〜350m
2/gであることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0032】
本発明の組成物において、シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して50〜150質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、70〜130質量部であることが好ましい。
【0033】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物に含有されるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0034】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられ、なかでも、メルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記シランカップリング剤は硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0036】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、下記一般式(S)で表されるのが好ましい。
(C
nH
2n+1O)
3−Si−C
mH
2m−S−CO−C
kH
2k+1 一般式(S)
一般式(S)中、nは1〜3の整数を表し、mは1〜5の整数(好ましくは、2〜4の整数)を表し、kは1〜15の整数(好ましくは、5〜10の整数)を表す。
【0038】
また、上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリエーテル鎖を有するシランカップリング剤が好ましい。
ここで、ポリエーテル鎖とは、エーテル結合を2以上有する側鎖であり、例えば、構造単位−R
a−O−R
b−を合計して2個以上有する側鎖が挙げられる。ここで、上記構造単位中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基、または、置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。なかでも、直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
【0039】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカの含有量に対して2〜20質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5〜15質量%であることが好ましく、8〜12質量%であることがより好ましい。
【0040】
〔芳香族変性テルペン樹脂〕
本発明の組成物の含有される芳香族変性テルペン樹脂は、軟化点が60〜150℃である芳香族変性テルペン樹脂(以下、「特定芳香族変性テルペン樹脂」とも言う)であれば特に制限されない。上記軟化点は、本発明の効果がより優れる理由から、100〜140℃であることがより好ましい。
ここで、軟化点は、JIS K7206:1999に準拠して測定されたビカット軟化点である。
本発明の組成物において、上記芳香族変性テルペン樹脂の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましく、5〜15質量部であることがさらに好ましく、8〜12質量部であることが特に好ましい。
【0041】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、カーボンブラック、充填剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0042】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50〜200m
2/gであることが好ましく、70〜150m
2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N
2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0043】
上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、3〜100質量部であることがより好ましい。
【0044】
〔タイヤトレッド用ゴム組成物の調製方法〕
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100〜155℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0045】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「本発明のタイヤ」とも言う)は、上述した本発明の組成物を用いた空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0046】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0047】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【0048】
〔第1の好適な態様〕
本発明のタイヤの第1の好適な態様としては、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであって、平均主溝深さが5.0〜7.0mmである空気入りタイヤ(以下、「本発明の空気入りタイヤ1」又は「本発明のタイヤ1」とも言う)が挙げられる。
本発明のタイヤ1は、より優れた、耐摩耗性能、転がり性能、騒音性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示す。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0049】
上述のとおり、本発明のタイヤ1のタイヤトレッドに使用されるタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴムとシリカとを含有し、上記ジエン系ゴムには変性共役ジエン系重合体及び特定共役ジエン系ゴムが含まれる。ここで、変性共役ジエン系重合体はシス−1,4−結合の含有量が多いため、組成物のガラス転移温度を下げ、耐摩耗性能の向上に寄与する。また、変性共役ジエン系重合体の末端はヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性されており、また、特定共役ジエン系ゴムの末端はポリオルガノシロキサンにより変性されている。そのため、いずれも末端がシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。また、特定共役ジエン系ゴムが有する主にイソプレン単位からなる重合体ブロックAもシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。このようにして、上記タイヤトレッド用ゴム組成物におけるシリカの分散性は極めて高いものとなり、転がり性能及びウェット操縦安定性能の向上に繋がるものと考えられる。さらには、上述した変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとシリカとによって強固なネットワークが形成されることでドライ操縦安定性能及び耐久性能の向上に繋がるものと考えられる。また、本発明のタイヤ1の平均主溝深さは、上述した強固なネットワークに適した範囲であるため、上述した耐久性能が十分に発揮されるものと考えられる。
結果として、本発明のタイヤ1は上述した効果を示すものと推測される。
【0050】
以下に、本発明のタイヤ1について図面を参照して説明する。ただし、本発明のタイヤ1はこれに限られるものではない。
【0051】
図2は、本発明の空気入りタイヤ1の一実施態様の断面形状を示す断面図である。
図2に示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも言う)10は、トレッド部12と、ショルダー部14と、サイドウォール部16と、ビード部18とを主な構成部分として有する。
なお、以下の説明において、
図2中に矢印で示すように、タイヤ幅方向とは、タイヤの回転軸(図示せず)と平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、回転軸と直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。
更に、タイヤ内側とは、タイヤ径方向において
図2中タイヤの下側、すなわちタイヤに所定の内圧を与える空洞領域Rに面するタイヤ内面側をいい、タイヤ外側とは、
図2中タイヤの上側、すなわち、タイヤ内周面と反対側の、ユーザが視認できるタイヤ外面側をいう。
図2の符号CLは、タイヤ赤道面のことであり、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ10の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ10のタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0052】
タイヤ10は、カーカス層20と、ベルト層22と、ベルト補助補強層24と、ビードコア28と、ビードフィラー30と、トレッド部12を構成するトレッドゴム層32と、サイドウォール部16を構成するサイドウォールゴム層34と、リムクッションゴム層36と、タイヤ内周面に設けられるインナーライナゴム層38とを主に有する。
トレッドゴム層32は上述した本発明の組成物を用いて形成されている。すなわち、タイヤ10は、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いたタイヤ(空気入りタイヤ)である。
上記トレッドゴム層32の厚みは特に制限されないが、耐摩耗性能、転がり性能、騒音性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能がより優れる理由から、6〜10mmであることが好ましい。以下、「耐摩耗性能、転がり性能、騒音性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能がより優れる」ことを「本発明の効果1がより優れる」とも言う。
【0053】
トレッド部12には、タイヤ外側のトレッド面12aを構成する陸部12bと、タイヤ周方向に連続して形成される主溝12cと、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝(図示せず)とが設けられ、陸部12bは、主溝12c及びラグ溝によって区画される。トレッド面12aには、主溝12c及びラグ溝と陸部12bとによりトレッドパターンが形成される。ここで、主溝12cの平均主溝深さは5.0〜7.0mmである。平均主溝深さの詳細については後述する。タイヤ10は主溝及びラグ溝以外の溝(副溝、サイプ等)を有していてもよい。
【0054】
ビード部18には、カーカス層20を折り返し、タイヤ10をホイールに固定するために機能する左右一対のビードコア28と、ビードコア28に接するようにビードフィラー30が設けられている。そのため、ビードコア28及びビードフィラー30は、カーカス層20の本体部20aと折り返し部20bとで挟み込まれている。
【0055】
カーカス層20は、タイヤ幅方向に、トレッド部12に対応する部分から、ショルダー部14及びサイドウォール部16に対応する部分を経てビード部18まで延在してタイヤ10の骨格をなすものである。
カーカス層20は、補強コードが配列され、コードコーティングゴムで被覆された構成である。カーカス層20は、左右一対のビードコア28にタイヤ内側からタイヤ外側に折り返され、サイドウォール部16の領域で端部20eを成しており、ビードコア28を境とする本体部20aと折り返し部20bとから構成されている。すなわち、本実施態様においては、カーカス層20が1層、左右一対のビード部18間に装架されている。カーカス層20の数は1層に限定されるものではなく、構造及び用途に応じて複数層あってもよい。カーカス層20は、軽量化の観点から1層構造(1プライ)であることが好ましい。
また、カーカス層20は、1つのシート材で構成されても、複数のシート材で構成されてもよい。複数のシート材で構成する場合、カーカス層20は継部(スプライス部)を有することになる。
【0056】
カーカス層20の有機繊維コードは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、レーヨン又はナイロン等で形成されるものである。
カーカス層20のコードコーティングゴムとしては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)から選ばれた1種類又は複数種類のゴムが好ましく用いられる。また、これらのゴムを窒素、酸素、フッ素、塩素、ケイ素、リン、又は硫黄等の元素を含む官能基、例えば、アミン、アミド、ヒドロキシル、エステル、ケトン、シロキシ、若しくはアルキルシリル等により末端変性したもの、又はエポキシにより末端変性したものを用いることができる。
これらゴムに配合するカーボンブラックとしては、例えば、ヨウ素吸着量が20〜100(g/kg)、好ましくは20〜50(g/kg)であり、DBP(フタル酸ジブチル)吸収量が50〜135(cm
3/100g)、好ましくは50〜100(cm
3/100g)であり、かつCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積が30〜90(m
2/g)、好ましくは30〜45(m
2/g)であるものが用いられる。なお、本明細書において、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K6217−1:2008に従って測定したものである。また、DBP吸収量は、JIS K6217−4:2008に従って測定したものである。また、CTAB吸着比表面積は、JIS K6217−3:2001に従って測定したものである。
また、使用する硫黄の量は、例えば、ゴム100質量部に対して1.5〜4.0質量部であり、好ましくは2.0〜3.0質量部である。
【0057】
<平均主溝深さ>
上述のとおり、本発明のタイヤ1において、平均主溝深さは5.0〜7.0mmである。
ここで、平均主溝深さとは、主溝深さの算術平均である。例えば、
図2に示されるタイヤ10の場合、平均主溝深さは4つの主溝12cの主溝深さの算術平均である。なお、主溝の数が1つの場合には、平均主溝深さとはその主溝の主溝深さを指す。
【0058】
上記主溝深さとは、トレッド面から主溝の溝底までの最大値を指す。なお、主溝深さは、溝底に形成された部分的な凹凸部を除外して測定される。
主溝深さについて、図面を用いて具体的に説明する。
図3は、
図2に示されるタイヤ10の断面図の主溝12cの部分を拡大した断面図である。
図3に示されるように、主溝12cの主溝深さDは、トレッド面12aからの主溝12cの溝速の最大値である。
【0059】
なお、本明細書において、主溝とは、周方向の溝であって、溝幅が5mm以上のものを指す。主溝の溝幅の上限は特に制限されないが、本発明の効果1がより優れる理由から、30mm以下であることが好ましい。
【0060】
〔第2の好適な態様〕
本発明のタイヤの第2の好適な態様としては、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであって、主溝面積比が、20.0〜25.0%である空気入りタイヤ(以下、「本発明の空気入りタイヤ2」又は「本発明のタイヤ2」とも言う)である。
本発明のタイヤ2は、より優れた、耐摩耗性能、転がり性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示す。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0061】
上述のとおり、本発明のタイヤ2のタイヤトレッドに使用されるタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴムとシリカとを含有し、上記ジエン系ゴムには変性共役ジエン系重合体及び特定共役ジエン系ゴムが含まれる。ここで、変性共役ジエン系重合体はシス−1,4−結合の含有量が多いため、組成物のガラス転移温度を下げ、耐摩耗性能の向上に寄与する。また、変性共役ジエン系重合体の末端はヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性されており、また、特定共役ジエン系ゴムの末端はポリオルガノシロキサンにより変性されている。そのため、いずれも末端がシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。また、特定共役ジエン系ゴムが有する主にイソプレン単位からなる重合体ブロックAもシリカと相互作用し、シリカの分散性を向上させる。このようにして、上記タイヤトレッド用ゴム組成物におけるシリカの分散性は極めて高いものとなり、転がり性能及びウェット操縦安定性能の向上に繋がるものと考えられる。さらには、上述した変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとシリカとによって強固なネットワークが形成されることでドライ操縦安定性能及び耐久性能の向上に繋がるものと考えられる。また、本発明のタイヤ2の主溝面積比は、上述した強固なネットワークに適した範囲であるため、上述した耐久性能が十分に発揮されるものと考えられる。
結果として、本発明のタイヤ2は上述した効果を示すものと推測される。
【0062】
以下に、本発明のタイヤ2について図面を参照して説明する。ただし、本発明のタイヤ2はこれに限られるものではない。
【0063】
図4は、本発明の空気入りタイヤ2の一実施態様の断面形状を示す断面図である。
図4に示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも言う)10は、トレッド部12と、ショルダー部14と、サイドウォール部16と、ビード部18とを主な構成部分として有する。
なお、以下の説明において、
図4中に矢印で示すように、タイヤ幅方向とは、タイヤの回転軸(図示せず)と平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、回転軸と直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。
更に、タイヤ内側とは、タイヤ径方向において
図4中タイヤの下側、すなわちタイヤに所定の内圧を与える空洞領域Rに面するタイヤ内面側をいい、タイヤ外側とは、
図4中タイヤの上側、すなわち、タイヤ内周面と反対側の、ユーザが視認できるタイヤ外面側をいう。
図4の符号CLは、タイヤ赤道面のことであり、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ10の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ10のタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0064】
タイヤ10は、カーカス層20と、ベルト層22と、ベルト補助補強層24と、ビードコア28と、ビードフィラー30と、トレッド部12を構成するトレッドゴム層32と、サイドウォール部16を構成するサイドウォールゴム層34と、リムクッションゴム層36と、タイヤ内周面に設けられるインナーライナゴム層38とを主に有する。
トレッドゴム層32は上述した本発明の組成物を用いて形成されている。すなわち、タイヤ10は、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いたタイヤ(空気入りタイヤ)である。
上記トレッドゴム層32の厚みは特に制限されないが、耐摩耗性能、転がり性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能がより優れる理由から、6〜10mmであることが好ましい。以下、「耐摩耗性能、転がり性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能がより優れる」ことを「本発明の効果2がより優れる」とも言う。
【0065】
トレッド部12には、タイヤ外側のトレッド面12aを構成する陸部12bと、タイヤ周方向に連続して形成される主溝12cと、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝(図示せず)とが設けられ、陸部12bは、主溝12c及びラグ溝によって区画される。トレッド面12aには、主溝12c及びラグ溝と陸部12bとによりトレッドパターンが形成される。ここで、主溝12cの主溝面積比は20.0〜25.0%である。主溝面積比の詳細については後述する。タイヤ10は主溝及びラグ溝以外の溝(副溝、サイプ等)を有していてもよい。
【0066】
ビード部18には、カーカス層20を折り返し、タイヤ10をホイールに固定するために機能する左右一対のビードコア28と、ビードコア28に接するようにビードフィラー30が設けられている。そのため、ビードコア28及びビードフィラー30は、カーカス層20の本体部20aと折り返し部20bとで挟み込まれている。
【0067】
カーカス層20は、タイヤ幅方向に、トレッド部12に対応する部分から、ショルダー部14及びサイドウォール部16に対応する部分を経てビード部18まで延在してタイヤ10の骨格をなすものである。
カーカス層20は、補強コードが配列され、コードコーティングゴムで被覆された構成である。カーカス層20は、左右一対のビードコア28にタイヤ内側からタイヤ外側に折り返され、サイドウォール部16の領域で端部20eを成しており、ビードコア28を境とする本体部20aと折り返し部20bとから構成されている。すなわち、本実施態様においては、カーカス層20が1層、左右一対のビード部18間に装架されている。カーカス層20の数は1層に限定されるものではなく、構造及び用途に応じて複数層あってもよい。カーカス層20は、軽量化の観点から1層構造(1プライ)であることが好ましい。
また、カーカス層20は、1つのシート材で構成されても、複数のシート材で構成されてもよい。複数のシート材で構成する場合、カーカス層20は継部(スプライス部)を有することになる。
【0068】
カーカス層20の有機繊維コードは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、レーヨン又はナイロン等で形成されるものである。
カーカス層20のコードコーティングゴムとしては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)から選ばれた1種類又は複数種類のゴムが好ましく用いられる。また、これらのゴムを窒素、酸素、フッ素、塩素、ケイ素、リン、又は硫黄等の元素を含む官能基、例えば、アミン、アミド、ヒドロキシル、エステル、ケトン、シロキシ、若しくはアルキルシリル等により末端変性したもの、又はエポキシにより末端変性したものを用いることができる。
これらゴムに配合するカーボンブラックとしては、例えば、ヨウ素吸着量が20〜100(g/kg)、好ましくは20〜50(g/kg)であり、DBP(フタル酸ジブチル)吸収量が50〜135(cm
3/100g)、好ましくは50〜100(cm
3/100g)であり、かつCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積が30〜90(m
2/g)、好ましくは30〜45(m
2/g)であるものが用いられる。なお、本明細書において、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K6217−1:2008に従って測定したものである。また、DBP吸収量は、JIS K6217−4:2008に従って測定したものである。また、CTAB吸着比表面積は、JIS K6217−3:2001に従って測定したものである。
また、使用する硫黄の量は、例えば、ゴム100質量部に対して1.5〜4.0質量部であり、好ましくは2.0〜3.0質量部である。
【0069】
<主溝面積比>
上述のとおり、本発明のタイヤ2において、主溝面積比は、20.0〜25.0%である。
【0070】
上記主溝面積比は、主溝面積/(全溝面積+接地面積)により定義される。
ここで、上記主溝面積とは、接地面における主溝の開口面積を指す。例えば、
図4に示されるタイヤ10の場合、接地面における4つの主溝12cの開口面積の合計である。なお、本明細書において、主溝とは、周方向の溝であって、溝幅が5mm以上のものを指す。主溝の溝幅の上限は特に制限されないが、本発明の効果2がより優れる理由から、30mm以下であることが好ましい。
また、上記全溝面積とは、接地面における主溝を含む全ての溝の開口面積を指す。
また、上記接地面積とは、陸部と接地面との接触面積を指す。
【0071】
なお、主溝面積、全溝面積および接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又は、ETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又は、ETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又は、ETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180kPaであり、規定荷重が最大負荷能力の88%である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
〔合成例〕
以下のとおり、変性共役ジエン系重合体、特定共役ジエン系ゴム、及び、比較共役ジエン系ゴムを合成した。
【0074】
<変性共役ジエン系重合体の合成>
(1)触媒の調製
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約100mlのガラス瓶に、以下の順番に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56M)0.59ml、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ製PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23M)10.32ml、水素化ジイソブチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.90M)7.77mlを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.95M)1.45mlを加えて、室温で時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011M(モル/リットル)であった。
【0075】
(2)中間重合体の製造
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約900mlのガラス瓶に、乾燥精製された1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンを各々装入し、1,3−ブタジエン12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、上記(1)において調製した触媒溶液2.28ml(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間重合を行い、中間重合体を製造した。得られた重合体のミクロ構造は、シス−1,4−結合含有量95.5モル%、トランス−1,4−結合含有量3.9モル%、ビニル結合含有量0.6モル%であつた。これらのミクロ構造(シス−1,4−結合含有量、トランス−1,4−結合含有量、ビニル結合含有量)は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によって求めた。
【0076】
(3)第1次変性処理
第1次変性剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPMOS)のヘキサン溶液(1.0M)として、GPMOSがネオジムに対して23.5モル当量になるよう上記(2)で得た重合液に投入し、50℃で60分間処理することにより、第1次の変性を行った。
【0077】
(4)第2次変性以降の処理
続いて、縮合促進剤として、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ(BEHAS)のシクロヘキサン溶液(1.01M)を1.76ml(70.5eq/Nd相当)と、イオン交換水32μl(70.5eq/Nd相当)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間処理した。その後、重合系に老化防止剤2,2−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5%溶液2mlを加えて反応の停止を行い、更に微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿を行い、ドラム乾燥することにより変性共役ジエン系重合体を得た。得られた変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度ML
1+4(100℃)を、(有)東洋精機製作所製のRLM−01型テスターを用いて100℃で測定したところ、93であった。変性後のミクロ構造も中間重合体のミクロ構造と同様であった。
【0078】
<特定共役ジエン系ゴムの合成>
窒素置換された100mLアンプル瓶に、シクロヘキサン(35g)、およびテトラメチルエチレンジアミン(1.4mmol)を添加し、さらに、n−ブチルリチウム(4.3mmol)を添加した。次いで、イソプレン(21.6g)、およびスチレン(3.1g)をゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロックAを得た。この重合体ブロックAについて、重量平均分子量、分子量分布、芳香族ビニル単位含有量、イソプレン単位含有量、および1,4−結合含有量を測定した。これらの測定結果を第1表に示す。
次に、撹拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン(4000g)、1,3−ブタジエン(474.0g)、およびスチレン(126.0g)を仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロックAを全量加え、50℃で重合を開始した。重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、次いで、下記式(4)で表されるポリオルガノシロキサンAを、エポキシ基の含有量が1.42mmol(使用したn−ブチルリチウムの0.33倍モルに相当)となるように、20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、特定共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を特定共役ジエン系ゴム100質量部に対して25質量部添加した後、スチームストリッピング法により固形状のゴムを回収した。得られた固形状のゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、固形状の特定共役ジエン系ゴムを得た。
【0079】
【化1】
【0080】
上記式(4)中、X
1、X
4、R
1〜R
3およびR
5〜R
8はメチル基である。上記式(4)中、mは80、kは120である。上記式(4)中、X
2は下記式(5)で表される基である(ここで、*は結合位置を表す)。
【0081】
【化2】
【0082】
なお、得られた特定共役ジエン系ゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、3分岐以上のカップリング率、芳香族ビニル単位含有量、ビニル結合含有量、および、ムーニー粘度を測定した。測定結果を第2表に示す。測定方法は以下のとおりである。
【0083】
(重量平均分子量、分子量分布および3分岐以上のカップリング率)
重量平均分子量、分子量分布および3分岐以上のカップリング率(特定共役ジエン系ゴムに対する「3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」の割合(質量%))については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりである。
【0084】
・測定器:HLC−8020(東ソー社製)
・カラム:GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
・検出器:示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
・溶離夜:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
【0085】
ここで、3分岐以上のカップリング率は、全溶出面積(s1)に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の2.8倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積(s2)の比(s2/s1)である。
【0086】
(芳香族ビニル単位含有量およびビニル結合含有量)
芳香族ビニル単位含有量およびビニル結合含有量については、
1H−NMRにより測定した。
【0087】
(ムーニー粘度)
ムーニー粘度(ML
1+4、100℃))については、JIS K6300−1:2013に準じて測定した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
<比較共役ジエン系ゴムの合成>
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4533g、スチレン338.9g(3.254mol)、ブタジエン468.0g(8.652mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン0.189mL(1.271mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.061mL(7.945mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.281g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上記式(4)で表されるポリオルガノシロキサンAを、エポキシ基の含有量が1.00mmol(使用したn−ブチルリチウムの0.13倍モルに相当)となるように、20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌し、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。得られた溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を共役ジエン系ゴム100質量部に対して25質量部添加した後、スチームストリッピング法により固形状のゴムを回収した。得られた固形状のゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴムとする。
【0091】
〔タイヤトレッド用ゴム組成物の調製〕
下記第3表に示す成分を同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第3表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を得た。
なお、第3表中、比較共役ジエン系ゴムおよび特定共役ジエン系ゴムの値は、ゴムの正味の量(油展オイルを除いた量)である。
【0092】
<評価>
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物について、以下のとおり評価を行った。
【0093】
(加工性)
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物(未加硫)について、JIS K6300−1:2013に準拠し、L形ロータを用いて、試験温度125℃の条件でスコーチタイムを測定した。
結果(スコーチタイム)を第3表に示す。結果は基準例1のスコーチタイムを100とする指数で表した。指数が大きいほどスコーチタイムが長く、加工性に優れる。実用上、105以上であることが好ましい。
【0094】
(tanδ(0℃))
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
作製した加硫ゴムシートについて、JISK6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。
結果(tanδ(0℃))を第3表に示す(第3表中の「tanδ 0℃(ウェットグリップ性能)」の欄)。結果は基準例1のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにウェットグリップ性能に優れる。実用上、100以上であることが好ましい。
【0095】
(tanδ(60℃))
温度0℃の条件で測定する代わりに、温度60℃の条件で測定した以外は上述したtanδ(0℃)と同様の手順にしたがって、tanδ(60℃)を測定した。
結果(tanδ(60℃)の逆数)を第3表に示す(第3表中の「tanδ 60℃(転がり特性)」の欄)。結果は基準例1のtanδ(60℃)の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく、タイヤにしたときに転がり特性に優れる。実用上、104以上であることが好ましい。
【0096】
(耐摩耗性能(低シビアリティ))
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物(未加硫)を用いて上述のとおり加硫ゴムシートを作製した。
作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6264−1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率25%の条件で摩耗量を測定した。
結果を第3表に示す(第3表中の「耐摩耗性能(低シビアリティ)」の欄)。結果は、下記式から算出された指数で表した。指数が大きいほど摩耗量が小さく、タイヤにしたときに耐摩耗性能(低シビアリティ)に優れる。実用上、98以上であることが好ましい。
指数=(基準例1の摩耗量/各例の摩耗量)×100
【0097】
(耐摩耗性能(高シビアリティ))
スリップ率25%の条件で測定する代わりに、スリップ率50%の条件で測定した以外は上述した耐摩耗性能(低シビアリティ)と同様の手順にしたがって、摩耗量を測定した。
結果を第3表に示す(第3表中の「耐摩耗性能(高シビアリティ)」の欄)。結果は、下記式から算出された指数で表した。指数が大きいほど摩耗量が小さく、タイヤにしたときに耐摩耗性能(高シビアリティ)に優れる。実用上、100以上であることが好ましい。
指数=(基準例1の摩耗量/各例の摩耗量)×100
【0098】
(耐酸化劣化性)
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物(未加硫)を用いて上述のとおり加硫ゴムシートを作製した。
作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で切断時強度及び切断時伸びを評価した。そして、下記式から、強靭性パラメータ(加熱前)を求めた。
強靭性パラメータ=切断時強度×切断時伸び
次いで、上述のとおり作製した加硫ゴムシートを、空気中で加熱(80℃、100時間)した。その後、上述のとおり切断時強度及び切断時伸びを評価して、強靭性パラメータ(加熱後)を求めた。そして、下記式から、維持率を求めた。
維持率=加熱後の強靭性パラメータ/加熱前の強靭性パラメータ×100(%)
結果を第3表に示す。結果は基準例1の100とする指数で表した。指数が大きいほど耐酸化劣化性に優れることを意味する。
【0099】
【表3】
【0100】
第3表中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、特定共役ジエン系ゴムは上述した特定共役ジエン系ゴムに該当し、比較共役ジエン系ゴムは上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない。また、変性共役ジエン系重合体は上述した変性共役ジエン系重合体に該当し、比較変性共役ジエン系重合体は上述した変性共役ジエン系重合体に該当しない。
・特定共役ジエン系ゴム:上述のとおり合成された特定共役ジエン系ゴム(ゴム100質量部に対して油展オイル25質量を含む)
・比較共役ジエン系ゴム:上述のとおり合成された比較共役ジエン系ゴム(ゴム100質量部に対して油展オイル25質量を含む)(芳香族ビニル単位含有量:42質量%、ビニル結合含有量:32質量%、Tg:−25℃、Mw:750,000)
・変性共役ジエン系重合体:上述のとおり合成された変性共役ジエン系重合体
・比較共役ジエン系重合体:NIPOL BR1220(未変性BR、日本ゼオン社製)
・シリカ1(大粒径):Zeosil 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m
2/g、Solvay社製)
・シリカ2(小粒径):Ultrasil 9000GR(CTAB吸着比表面積:197m
2/g、Evonik社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・シランカップリング剤1:Si69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・シランカップリング剤2:上述した一般式(S)で表されるシランカップリング剤(ここで、上述した一般式(S)中、n=2、m=3、k=7である。)
・アロマオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%、鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤:SANTOCURE CBS(FLEXSYS社製)
・芳香族変性テルペン樹脂:YSレジン TO−125(軟化点:125±5℃、ヤスハラケミカル社製)
【0101】
第3表から分かるように、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用する実施例1〜6は、優れた加工性、ウェットグリップ性能、転がり特性、耐摩耗性能及び耐酸化劣化性を示した。
実施例1〜3の対比から、特定共役ジエン系ゴムの含有量に対する変性共役ジエン系重合体の含有量の割合が30質量%以上である実施例2は、より優れた加工性、転がり抵抗性及び耐摩耗性能を示した。
実施例1と4との対比から、シランカップリング剤が上述した一般式(S)で表される実施例4は、より優れた加工性、ウェットグリップ性能、転がり特性、耐摩耗性能及び耐酸化劣化性を示した。同様に、実施例5と6との対比から、シランカップリング剤が上述した一般式(S)で表される実施例5は、より優れた加工性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能及び耐酸化劣化性を示した。
実施例4と5との対比から、シリカのCTAB吸着比表面積が160〜300m
2/gである実施例5は、より優れたウェットグリップ性能、耐摩耗性能及び耐酸化劣化性を示した。
【0102】
一方で、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用しない基準例1、比較例1及び2、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して50質量部に満たない比較例3、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して150質量部を超える比較例4、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するが特定芳香族変性テルペン樹脂を含有しない比較例5は、加工性、ウェットグリップ性能、転がり特性、耐摩耗性能及び耐酸化劣化性の少なくともいずれかが不十分であった。
【0103】
〔空気入りタイヤの製造(その1)〕
下記第4表に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第4表に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を得た。基準例1Aのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の基準例1のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものであり、比較例1A〜5Aのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の比較例1〜5のタイヤトレッド用ゴム組成物とそれぞれ同じものであり、実施例1A〜5Aのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の実施例1〜5のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものであり、実施例6A及び7Aのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の実施例1のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものである。
なお、第4表中、比較共役ジエン系ゴムおよび特定共役ジエン系ゴムの値は、ゴムの正味の量(油展オイルを除いた量)である。また、各実施例及び比較例のアロマオイルの質量部が異なっているが、これは硬度を合せるためである。
そして、得られたタイヤトレッド用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いて、
図2に示される空気入りタイヤを製造した。その際、上述した平均主溝深さが第4表に示される値になるようにトレッドパターンを形成した。
なお、実施例1A〜5Aは、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであるため、上述した本発明のタイヤに該当し、また、平均主溝深さが5.0〜7.0mmの範囲内であるため、上述した本発明のタイヤ1にも該当する。一方、実施例6A及び7Aは、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであるため、上述した本発明のタイヤには該当するが、平均主溝深さが5.0〜7.0mmの範囲から外れるため、上述した本発明のタイヤ1には該当しない。
【0104】
<評価>
得られた空気入りタイヤについて以下のとおり評価を行った。
【0105】
(耐摩耗性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.5リットルの試験車両に装着し、公道にて20,000km走行したときの摩耗量を測定した。
結果(摩耗量の逆数)を第4表に示す。結果は基準例1Aの摩耗量の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど耐摩耗性能に優れることを意味する。実用上、97以上であることが好ましい。
【0106】
(転がり性能)
得られた空気入りタイヤについて、ドラム試験機を用いて、速度40km/時間〜150km/時間の間の転動抵抗値を測定した。そして、その総和を求めた。
結果(転動抵抗値の総和の逆数)を第4表に示す。結果は基準例1Aの転動抵抗値の総和の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、転がり性能に優れることを意味する。実用上、100以上であることが好ましい。
【0107】
(騒音性能)
得られた空気入りタイヤについて、ドラム試験機を用いて、社団法人日本自動車技術協会(JASO)の規格(JASO C606)に基づくタイヤ騒音試験方法に定める条件でタイヤ側方音の騒音レベルを測定した。
結果(騒音レベルの逆数)を第4表に示す。結果は基準例1Aの騒音レベルの逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど騒音が小さく、騒音性能に優れることを意味する。実用上、100以上であることが好ましい。
【0108】
(ドライ操縦安定性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.0Lの試験車両に装着し、ドライ路面での操縦安定性能(ドライ操縦安定性能)についてテストドライバーによる官能評価を行った。
結果を第4表に示す。結果は基準例1Aを2.0とする指数で表した。指数が大きいほどドライ操縦安定性能に優れることを意味する。実用上、3.0以上であることが好ましい。
【0109】
(ウェット操縦安定性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.0Lの試験車両に装着し、ウェット路面での操縦安定性能(ウェット操縦安定性能)についてテストドライバーによる官能評価を行った。
結果を第4表に示す。結果は基準例1Aを2.0とする指数で表した。指数が大きい程ウェット操縦安定性能に優れることを意味する。実用上、2.5以上であることが好ましい。
【0110】
(耐久性能)
得られた空気入りタイヤを、ドラム試験機を用いて高速回転させ、壊れるまでの走行距離を測定した。
結果を第4表に示す。結果は基準例1Aを100とする指数で表した。指数が大きいほど耐久性能に優れることを意味する。実用上、108以上であることが好ましい。
【0111】
【表4】
【0112】
第4表中の各成分の詳細は上記第3表と同じである。
【0113】
第4表から分かるように、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するとともに平均主溝深さが特定の範囲にある実施例1A〜5Aは、優れた、耐摩耗性能、転がり性能、騒音性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
実施例1A〜3Aの対比から、ジエン系ゴム中の変性共役ジエン系重合体の含有量が30質量%以上であり、ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量が70質量%以下である実施例2Aは、より優れた、耐摩耗性能、及び、転がり性能を示した。
また、実施例1Aと4Aと5Aとの対比から、シランカップリング剤が上述した一般式(S)で表される実施例4A及び5Aは、より優れた、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。なかでも、シリカのCTAB吸着比表面積が160〜300m
2/gである実施例5Aは、より優れた、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
【0114】
一方、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムの少なくとも一方を含有しない基準例1A及び比較例1A〜2A、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して50質量部に満たない比較例3A、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して150質量部を超える比較例4A、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するが特定芳香族変性テルペン樹脂を含有しない比較例5A、平均主溝深さが7.0mmを超える実施例6A、並びに、平均主溝深さが5.0mmに満たない実施例7Aは、騒音性能、ドライ操縦安定性能、及び、耐久性能の少なくともいずれかが不十分であった。
【0115】
実施例1Aと6Aとの対比から、平均主溝深さが7.0mm以下である実施例1Aは、より優れた、転がり性能、騒音性能、ドライ操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
また、実施例1Aと7Aとの対比から、平均主溝深さが5.0mm以上である実施例1Aは、より優れた、耐摩耗性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
【0116】
〔空気入りタイヤの製造(その2)〕
下記第5表に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第5表に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を得た。基準例1Bのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の基準例1のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものであり、比較例1B〜5Bのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の比較例1〜5のタイヤトレッド用ゴム組成物とそれぞれ同じものであり、実施例1B〜5Bのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の実施例1〜5のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものであり、実施例6B及び7Bのタイヤトレッド用ゴム組成物は上記第3表の実施例1のタイヤトレッド用ゴム組成物と同じものである。
なお、第5表中、比較共役ジエン系ゴムおよび特定共役ジエン系ゴムの値は、ゴムの正味の量(油展オイルを除いた量)である。また、各実施例及び比較例のアロマオイルの質量部が異なっているが、これは硬度を合せるためである。
そして、得られたタイヤトレッド用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いて、
図4に示される空気入りタイヤを製造した。その際、上述した主溝面積比が第5表に示される値になるようにトレッドパターンを形成した。
なお、実施例1B〜5Bは、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであるため、上述した本発明のタイヤに該当し、また、主溝面積比が20.0〜25.0%の範囲内であるため、上述した本発明のタイヤ2にも該当する。一方、実施例6B及び7Bは、上述した本発明の組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤであるため、上述した本発明のタイヤには該当するが、主溝面積比が20.0〜25.0%の範囲から外れるため、上述した本発明のタイヤ2には該当しない。
【0117】
<評価>
得られた空気入りタイヤについて以下のとおり評価を行った。
【0118】
(耐摩耗性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.5リットルの試験車両に装着し、公道にて20,000km走行したときの摩耗量を測定した。
結果(摩耗量の逆数)を第5表に示す。結果は基準例1Bの摩耗量の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど耐摩耗性能に優れることを意味する。実用上、97以上であることが好ましい。
【0119】
(転がり性能)
得られた空気入りタイヤについて、ドラム試験機を用いて、速度40km/時間〜150km/時間の間の転動抵抗値を測定した。そして、その総和を求めた。
結果(転動抵抗値の総和の逆数)を第5表に示す。結果は基準例1Bの転動抵抗値の総和の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、転がり性能に優れることを意味する。実用上、100以上であることが好ましい。
【0120】
(ドライ操縦安定性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.0Lの試験車両に装着し、ドライ路面での操縦安定性能(ドライ操縦安定性能)についてテストドライバーによる官能評価を行った。
結果を第5表に示す。結果は基準例1Bを2.0とする指数で表した。指数が大きいほどドライ操縦安定性能に優れることを意味する。実用上、3.0以上であることが好ましい。
【0121】
(ウェット操縦安定性能)
得られた空気入りタイヤを排気量2.0Lの試験車両に装着し、ウェット路面での操縦安定性能(ウェット操縦安定性能)についてテストドライバーによる官能評価を行った。
結果を第5表に示す。結果は基準例1Bを2.0とする指数で表した。指数が大きい程ウェット操縦安定性能に優れることを意味する。実用上、2.5以上であることが好ましい。
【0122】
(耐久性能)
得られた空気入りタイヤを、ドラム試験機を用いて高速回転させ、壊れるまでの走行距離を測定した。
結果を第5表に示す。結果は基準例1Bを100とする指数で表した。指数が大きいほど耐久性能に優れることを意味する。実用上、108以上であることが好ましい。
【0123】
【表5】
【0124】
第5表中の各成分の詳細は上記第3表と同じである。
【0125】
第5表から分かるように、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するとともに主溝面積比が特定の範囲にある実施例1B〜5Bは、優れた、耐摩耗性能、転がり性能、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
実施例1B〜3Bの対比から、ジエン系ゴム中の変性共役ジエン系重合体の含有量が30質量%以上であり、ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量が70質量%以下である実施例2Bは、より優れた、耐摩耗性能、及び、転がり性能を示した。
また、実施例1Bと4Bと5Bとの対比から、シランカップリング剤が上述した一般式(S)で表される実施例4B及び5Bは、より優れた、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。なかでも、シリカのCTAB吸着比表面積が160〜300m
2/gである実施例5Bは、より優れた、ドライ操縦安定性能、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
【0126】
一方、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムの少なくとも一方を含有しない基準例1B及び比較例1B〜2B、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して50質量部に満たない比較例3B、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するがシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して150質量部を超える比較例4B、変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを併用するが特定芳香族変性テルペン樹脂を含有しない比較例5B、主溝面積比が25.0%を超える実施例6B、並びに、主溝面積比が20.0%に満たない実施例7Bは、ドライ操縦安定性能、及び、耐久性能の少なくともいずれかが不十分であった。
【0127】
実施例1Bと6Bとの対比から、主溝面積比が25.0%以下である実施例1Bは、より優れた、耐摩耗性、ドライ操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
また、実施例1Bと7Bとの対比から、主溝面積比が20.0%以上である実施例1Bは、より優れた、ウェット操縦安定性能、及び、耐久性能を示した。
本発明は、加工性に優れ、且つ、タイヤにしたときにウェットグリップ性能、転がり特性及び耐摩耗性能に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物、並びに、上記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴムとシリカとシランカップリング剤と軟化点が60〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂とを含有し、シリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して50〜150質量部であり、シランカップリング剤の含有量がシリカの含有量に対して2〜20質量%であり、ジエン系ゴムが特定の変性共役ジエン系重合体と特定共役ジエン系ゴムとを含み、ジエン系ゴム中の上記変性共役ジエン系重合体の含有量が10〜50質量%であり、ジエン系ゴム中の上記特定共役ジエン系ゴムの含有量が50〜90質量%である、タイヤトレッド用ゴム組成物である。