(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から4の何れか一項において、前記ギヤロック機構は、前記第1側板と前記第2歯列形成体との間に介在し、ロック解除時に、前記第1歯列に対する前記第2歯列の噛合を解除させる付勢部材を含むステアリング装置。
請求項1から6の何れか一項において、前記ギヤロック機構は、前記第1側板に設けられ、前記第1歯列形成体を前記第1歯列の歯並び方向に所定量移動可能に保持する保持部と、前記保持部と前記第1歯列形成体との間に介在し、前記第1歯列形成体を前記第1歯列の歯並び方向に弾性支持する第2弾性部材を含むステアリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固定側ツースと可動側ツースとの歯頂部どうし当接した状態でロックされる、いわゆるハーフロックが発生するおそれがある。
本発明の目的は、ハーフロックの発生を防止することができるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、操舵部材(2)に連結されたステアリングシャフト(3)と、前記ステアリングシャフトを回転可能に支持し、チルト中心(CC)回りに揺動可能なステアリングコラム(8)と、第1挿通溝としてのチルト用長溝(23)が形成された第1側板(22;22Q)を含み、車体(23)に固定される第1ブラケット(17)と、第2挿通溝(25)が形成された第2側板(24)を含み、前記ステアリングコラムに固定された第2ブラケット(18)と、前記チルト用長溝および前記第2挿通溝を挿通する締付軸(21)と、前記締付軸と一体回転する操作レバー(20)と、前記締付軸に支持された締付部材(26;26P)を含み前記操作レバーのロック方向(Z1)への回転運動を前記締付軸の軸方向(J)への前記締付部材の直線運動に変換し前記締付部材によって第1側板を第2側板に締め付ける締付機構(27)と、前記締付機構による締付時にギヤロックを達成するギヤロック機構(28;28P;28Q)とを含むロック機構(19)と、備え、前記締付部材は、前記第1側板に対向する本体(45)と、前記本体から前記チルト用長溝内へ延び前記チルト用長溝によって所定の遊びを有して回転規制されるとともにチルト調節時に前記チルト用長溝によって案内される被案内凸部(46;46P)と、を含み、前記ギヤロック機構は、前記第1側板に設けられチルト方向(Y)に並ぶ平行歯からなる第1歯列(71)を形成した第1歯列形成体(29;29Q)と、ロック時に前記第1歯列に噛み合う平行歯からなる第2歯列(72)を形成し、前記締付部材の前記本体と前記第1側板との間に介在して前記締付軸によって回転可能に支持された第2歯列形成体(30;30P)と、を含み、前記締付部材は、前記締付軸の中心軸線(C1)回りの前記第2歯列形成体の回転を所定範囲内に規制する規制部(47a,48b,49b,50b;48bP,49bP)を含
み、前記ロック機構によるロック解除時に、前記第2歯列形成体の自重によって前記第2歯列が前記第1歯列に対して前記ロック方向の反対方向へ位置ずれされて不整合な状態にあり、前記操作レバーのロック動作時に、前記操作レバーによって前記所定の遊びの範囲内で前記ロック方向に回転される前記締付部材が、前記第2歯列形成体を前記第1側板側に押しながら前記規制部によって前記第2歯列形成体を前記第2歯列形成体の自重に抗して前記ロック方向に回転させて、前記第2歯列を前記第1歯列に整合させるように構成されているステアリング装置(1)を提供する。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記第2歯列形成体は、前記締付軸が遊びを有して挿通された締付軸挿通孔(54)を含んでいてもよい。
【0007】
また、請求項3のように、前記第1歯列の歯が並ぶ方向は、前記チルト用長溝の長手方向であり、前記第2歯列形成体の前記締付軸挿通孔は、前記第1歯列の歯並び方向とは平行に延びる長孔であってもよい。
また、請求項4のように、前記操作レバーのロック方向は、前記締付軸の前記中心軸線回りに前記操作レバーを押し上げる方向であってもよい。
【0008】
また、請求項5のように、前記ギヤロック機構は、前記第1側板と前記第2歯列形成体との間に介在し、ロック解除時に、前記第1歯列に対する前記第2歯列の噛合を解除させる付勢部材(41)を含んでいてもよい。
また、請求項6のように、前記ギヤロック機構は、前記規制部と前記第
2歯列形成体との間に介在し、前記第2歯列形成体を前記締付軸の前記中心軸線回りに弾性支持する第1弾性部材(62)を含んでいてもよい。
【0009】
また、請求項7のように、前記ギヤロック機構は、前記第1側板に設けられ、前記第1歯列形成体を前記第1歯列の歯並び方向に所定量移動可能に保持する保持部(63)と、前記保持部と前記第1歯列形成体との間に介在し、前記第1歯列形成体を前記第1歯列の歯並び方向に弾性支持する第2弾性部材(64)を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、操作レバーをロック方向へ回転させるロック動作時に、締付部材が、第2歯列形成体を第1側板側へ押しながら遊び範囲内でロック方向に微小量回転する。締付部材の微小回転に伴って規制部を介して第2歯列形成体も微小量回転する途中で、第2歯列が第1歯列と整合して噛み合う。したがって、ハーフロックの発生を未然に防止することができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、第2歯列形成体と締付軸との間に遊びが有るので、締付軸に対して第2歯列形成体を変位させることで、第2歯列を第1歯列に噛み合わせ易くなる。したがって、ハーフロックの発生を確実に防止することができる。
また、請求項3の発明によれば、第2歯列形成体が、締付軸に対して、第1歯列の歯並び方向とは平行に変位できるので、ハーフロックの発生をより確実に防止することができる。
【0012】
また、請求項4の発明によれば、ロック解除時に、第2歯列形成体が締付軸の中心軸線回りの自重によるすわりの位置に変位していて、第1歯列に対して第2歯列が不整合な状態にあったとしても、操作レバーの押し上げロック動作時に、第2歯列形成体を自重に抗して持ち上げつつ第2歯列を第1歯列に整合させることができる。
また、請求項5の発明によれば、ロック解除時に、第1歯列に対する第2歯列の噛合を確実に解除することができる。
【0013】
また、請求項6の発明によれば、第2歯列形成体が締付部材に対してガタ付いて打音を発生することを防止することができる。
また、請求項7の発明によれば、第1側板の保持部に対して第1歯列形成体がガタついて打音を発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施形態のステアリング装置の概略構成を示す一部破断模式的側面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、操舵部材2が軸方向Xの一端に連結されたステアリングシャフト3と、インターミディエイトシャフト4等を介してステアリングシャフト3と連結されたステアリング機構5と備える。
【0016】
ステアリング機構5は、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪(図示せず)を転舵する例エバラックアンドピニオン機構である。操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3およびインターミディエイトシャフト4等を介してステアリング機構5に伝達される。また、ステアリング機構5に伝達された回転は、図示しないラック軸の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪が転舵される。
【0017】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパーシャフト6とロアーシャフト7とを有している。操舵部材2は、アッパーシャフト6の一端に連結されている。また、ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持する中空のステアリングコラム8を備える。ステアリングシャフト3は、ステアリングコラム8内に挿通されており、複数の軸受9,10を介してステアリングコラム8によって回転可能に支持されている。
【0018】
ステアリングコラム8は、相対摺動可能に嵌合された例えばアウタージャケットであるアッパージャケット11と例えばインナージャケットであるロアージャケット12とを有している。ステアリングコラム8は、軸方向Xに伸縮可能である。アッパージャケット11は、軸受9を介してアッパーシャフト6を回転可能に支持している。また、アッパージャケット11は、軸受9を介して、ステアリングシャフト3の軸方向Xに同行移動可能にアッパーシャフト6に連結されている。
【0019】
ステアリング装置1は、車体13に固定される固定ブラケット14と、固定ブラケット14によって支持されたチルト中心軸15と、ロアージャケット12の外周に固定され、チルト中心軸15によって回転可能に支持されたコラムブラケット16とを備える。ステアリングコラム8およびステアリングシャフト
3は、チルト中心軸15の中心軸線であるチルト中心CCを支点にしてチルト方向Y(チルト方向上方Y1ないしチルト方向下方Y2)に回動可能(チルト可能)となっている。
【0020】
チルト中心CC回りにステアリングシャフト
3およびステアリングコラム8を回動(チルト)させることで、操舵部材2の位置を調整できるようになっている(いわゆるチルト調整)。また、ステアリングシャフト
3およびステアリングコラム8を軸方向Xに伸縮させることで、操舵部材2の位置を調整できるようになっている(いわゆるテレスコ調整)。
【0021】
ステアリング装置1は、車体13に固定される第1ブラケット17と、ステアリングコラム8のアッパージャケット11に固定された第2ブラケット18(ディスタンスブラケットに相当)と、ロック機構19とを備える。ロック機構19によって、両ブラケット17,18がロックされることにより、ステアリングコラム8の位置が車体13に対して固定されて、操舵部材2の位置が固定される。
【0022】
ロック機構19は、運転者が回転操作する操作レバー20と、操作レバー20と一体回転可能であって両ブラケット17,18を挿通する締付軸21とを備える。締付軸21の中心軸線C1が、操作レバー20の回転中心に相当する。
締付軸21は、第1ブラケット17の一対の第1側板22(
図1では一方の第1側板22のみを示してある)にそれぞれ設けられチルト方向Yに延びる第1挿通溝としてのチルト用長溝23と、第2ブラケット18の一対の第2側板24(
図1では一方の第1側板22のみを示してある)にそれぞれ設けられテレスコ方向(軸方向Xに相当)に延びる第2挿通溝としてのテレスコ用長溝25とを挿通している。
【0023】
ロック機構19のロック方向Z1は、操作レバー20を締付軸21の中心軸線C1回りに押し上げる方向である。ロック解除方向Z2は、ロック方向Z1の反対方向である。
ロック機構19は、締付軸21に支持された締付部材26を含み、操作レバー20のロック方向Z1への回転操作に伴って、締付部材26によって第1側板22を第2側板24に締め付ける締付機構27と、締付機構27による締付時にギヤロックを達成するギヤロック機構28とを備える。
【0024】
締付機構27は、操作レバー20と一体回転する回転カム36と締付部材26との対向面に形成された運動変換機構(図示せず)を含む。運動変換機構は、回転カム36と締付部材26との対向面の少なくとも一方に設けられ、他方にカム係合するカム突起を含む。締付機構27の運動変換機構は、回転カム36の回転運動を締付軸21の軸方向(紙面とは直交する方向)への締付部材26の直線運動に変換し、締付部材26によって第1側板22を第2側板24に締め付ける。
【0025】
ギヤロック機構28は、一方の第1側板22の外側面に設けられ、チルト方向Yに並ぶ平行歯からなる第1歯列71を形成した第1歯列形成体29と、
図2に示すように、締付軸21によって支持され、締付部材26によって締付軸21の中心軸線C1回りの所定範囲内に回転規制され、ギヤロック時に第1歯列71に噛み合う第2歯列72(
図3参照)を形成した第2歯列形成体30とを含む。
【0026】
図2に示すように、第1ブラケット17は、図示しないカプセル機構を介して車体13に離脱可能に支持された取付板31と、取付板31に沿って固定された天板32と、天板32の両端からチルト方向Yの下方に延びる一対の第1側板22とを備えている。
第2ブラケット18は、第1ブラケット17の一対の第1側板22にそれぞれ対向する一対の第2側板24と、一対の第2側板24のチルト方向Yの下端間を連結する連結板33とを備えた溝形をなしている。
【0027】
締付軸21は、第1ブラケット17の両第1側板22のチルト用長溝23およびコラムブラケット17の両第2側板24のテレスコ用長溝25を貫通するボルトからなる。締付軸21の一端の頭部34は、操作レバー20と一体回転可能に固定されている。締付軸21の他端には、ナット35がねじ係合されている。
締付機構27は、操作レバー20と一体回転する回転カム36と、回転カム36に対してカム係合する非回転カムを構成し一方の第1側板22を締め付ける一方の締付部材26と、他方の第1側板22を締め付ける他方の締付部材37と、ナット35と、他方の締付部材37とナット35との間に介在した介在部材38とを含む。
【0028】
締付軸21の頭部34と一方の第1側板22との間に、操作レバー20と、回転カム36と、非回転カムである一方の締付部材26と、ギヤロック機構28の第2歯列形成体30とが介在している。ナット35と第1ブラケット17の他方の第1側板22との間に、他方の締付部材37と、介在部材38とが介在している。回転カム36、一方の締付部材26(非回転カム)、第2歯列形成体30、他方の締付部材37および介在部材38は、締付軸21の外周によって支持されている。各締付部材26,37および第2歯列形成体30は、締付軸21の軸方向Jに移動可能に支持されている。
【0029】
回転カム36は、操作レバー20と一体回転可能に連結され、締付軸21に対する軸方向Jの移動が規制されている。すなわち、操作レバー20は締付軸21の頭部34に対する回転が規制されている。回転カム36は、環状板39と、環状板39の中心孔の周囲に設けられて操作レバー20の挿通孔に一体回転可能に挿通されたボス40とを備える。
ギヤロック機構28は、第1歯列71を形成した第1歯列形成体29と、第2歯列72を形成した第2歯列形成体30(
図3参照)と、
図2に示すように第2歯列形成体30と一方の第2側板24との間に介在し第2歯列形成体30をギヤロック解除方向(
図2において、締付軸21の頭部34側)に付勢する付勢部材41とを含む。
【0030】
第1歯列形成体29は、第1側板22の外側面に固定されたブロック状の部材である。図示していないが、第1歯列形成体29は、第1側板22と単一の部材で一体に形成されていてもよい。
図1に示すように、第1歯列形成体29は、チルト用長溝23の片側に配置されている。チルト用長溝23は、チルト方向Yに延びる一対の縁部23a,23bを含む。第1歯列形成体29は、一方の縁部23bに近接して配置されている。
【0031】
図3に示すように、非回転カムである一方の締付部材26は、一方の第1側板22に対向する第1面42と、第1面42とは反対側の第2面43と、第1面42および第2面43を貫通する締付軸挿通孔44とを含む本体45を備える。また、締付部材26は、本体45の第1面42から突出し一方の第1側板22のチルト用長溝23に挿入される被案内凸部46と、本体45の第1面42から突出し一方の第1側板22に対向する凸部47とを備える。
【0032】
図5に示すように、被案内凸部46は、一方の第1側板22のチルト用長溝23内へ延び、チルト用長溝23によって所定の遊びを有して回転規制されるとともに、チルト調節時にチルト用長溝23によって案内される。
図3および
図4に示すように、被案内凸部46の断面は、溝形形状(コの字形形状)である。被案内凸部46は、チルト方向Yに対向する第1部分48および第2部分49と、第1部分48の一端と第2部分49の一端とを連結する連結部50とを含む。
【0033】
図6(a)に示すように、チルト用長溝23は、チルト方向Yに延びる一対の縁部23a,23bを含む。チルト調節時には、第1部分48の他端に設けられた被案内部48aと第2部分49の他端に設けられた被案内部49aとが、チルト用長溝23の一方の縁部23aによって案内され、連結部50に設けられた被案内部50aが、チルト用長溝23の他方の縁部23bによって案内される。
【0034】
図3に示すように、第2歯列形成体30は、一方の第1側板22に対向する第1面52と、第1面52とは反対側に設けられ、締付部材26の本体45の第1面42によって受けられた第2面53とを含む。また、第2歯列形成体30は、第1面52および第2面53を貫通し締付軸21が遊びを有して挿入される締付軸挿通孔54と、第1面52に突出形成された第2歯列72とを含む。
【0035】
第1歯列71の歯が並ぶ方向は、チルト用長溝23の長手方向(チルト方向Yに相当)である。第2歯列形成体30の締付軸挿通孔54は、第1歯列71の歯並び方向(チルト方向Yに相当)とは平行に延びる長孔である。
図3および
図4に示すように、被案内凸部46と凸部47とによって、第2歯列形成体30を遊びを有して保持する保持空間51が区画されている。すなわち、保持空間51は、被案内凸部46の第1部分48の内面である規制部48b、第2部分49の内面である規制部49bおよび連結部50の内面である規制部50bと、凸部47の内面である規制部47aとによって形成されている。
【0036】
図4に示すように、規制部48b、規制部49b、規制部50bと、規制部47aは、略矩形をなす第2歯列形成体30の四辺部に相当する4つの縁部301,302,303,304にそれぞれ近接対向している。規制部47a,48b,49b,50bが、締付軸21の中心軸線C1回りの第2歯列形成体30の回転を所定範囲内に規制する機能を果たす。
【0037】
図3〜
図5に示すように、締付軸挿通孔54の内周には、例えば環状段部からなるばね座55が設けられている。
図4に示すように、付勢部材41の一端41aは、ばね座55によって受けられ、付勢部材41の他端41bは、一方の第1側板22によって受けられる。付勢部材41は、図示のような圧縮コイルばねであってもよいし、皿ばね等の板ばねであってもよい。
【0038】
図2に示すように、他方の締付部材37は、第1ブラケット17の他方の第1側板22に対向する板状の本体56と、本体56から突出し他方の第1側板22のチルト用長溝23内に挿入された被案内凸部57とを備える。
被案内凸部57は、他方の第1側板22のチルト用長溝23内へ延び、チルト用長溝23によって所定の遊びを有して回転規制されるとともに、チルト調節時にチルト用長溝23によって案内される。
【0039】
介在部材38は、ナット35と他方の締付部材37の本体56との間に介在するワッシャ58と、ワッシャ58と他方の締付部材37の本体56との間に介在する針状ころ軸受59とを含む。
締付軸21の軸部の外周には、例えばセレーション嵌合により締付軸21と一体回転するスリーブ60が嵌合している。スリーブ60の外周には、押上カム61が一体回転可能に設けられている。
【0040】
操作レバー20の回転に伴って、回転カム36が一方の締付部材26(非回転カム)に対して回転することにより、一方の締付部材26が締付軸21の軸方向Jに移動されて、一方の締付部材26の本体45および他方の締付部材37の本体56間で、第1ブラケット17の両第1側板22が挟持されて締め付けられる。
これにより、第1ブラケット17の各第1側板22が、第2ブラケット18の対応する第2側板24に圧接されて、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。両締付部材26,37の締付と同時に、一方の締付部材26の第2歯列72が対応する第1歯列71と噛み合うギヤロックが達成されるので、強固なチルトロックが達成される。また、押上カム61がロアージャケット12を押し上げることにより、両ジャケット11,12間のロックが達成される。
【0041】
本実施形態によれば、
図6(a)に示すロック解除状態から
図6(b)に示すロック状態へと移行するために、操作レバー20をロック方向Z1へ回転させるロック動作時に、締付部材26が、第2歯列形成体30を第1側板22側へ押しながら遊び範囲内で、ロック方向Z1に微小量回転する。締付部材26の微小回転に伴って規制部49bを介して第2歯列形成体30もロック方向Z1に微小量回転する。その第2歯列形成体30の微小回転の途中で、第2歯列形成体30の第2歯列72が第1歯列71と整合して噛み合う。したがって、ハーフロックの発生を未然に防止することができる。
【0042】
また、第2歯列形成体30の締付軸挿通孔54と締付軸21との間に遊びがあるので、第2歯列形成体30を締付軸21に対して変位させることで、第2歯列72を第1歯列71に噛み合わせ易くなる。したがって、ハーフロックの発生を確実に防止することができる。
また、第1歯列71の歯並び方向は、チルト用長溝23の長手方向(チルト方向Y)であり、第2歯列形成体30の締付軸挿通孔54は、第1歯列71の歯並び方向(チルト方向Y)とは平行に延びる長孔である。したがって、第2歯列形成体30が、締付軸21に対して、第1歯列71の歯並び方向とは平行に変位できるので、ハーフロックの発生をより確実に防止することができる。
【0043】
また、操作レバー20のロック方向Z1は、締付軸21の中心軸線C1回りに操作レバー20を押し上げる方向である。したがって、ロック解除時に、
図6(a)に示すように、第2歯列形成体30が締付軸21の中心軸線C1回りの自重によるすわりの位置に変位していて、第1歯列71に対して第2歯列72が不整合な状態にあったとしても、操作レバー20の押し上げロック動作時に、
図6(b)に示すように、第2歯列形成体30を自重に抗して持ち上げつつ第2歯列72を第1歯列71に整合させることができる。
【0044】
また、ギヤロック機構28が、第1側板22と第2歯列形成体30との間に介在する付勢部材41を含む。したがって、ロック解除時に、付勢部材41の働きで、第1歯列71に対する第2歯列72の噛合を確実に解除することができる。
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態における、組合せ状態の締付部材26Pと第2歯列形成体30Pの概略正面図である。
【0045】
本第2実施形態が、
図4の第1実施形態と主に異なるのは、ギヤロック機構28Pが、締付部材26Pの被案内凸部46Pの規制部48bP,49bPと、第2歯列形成体30Pの間に介在し、第2歯列形成体30Pを締付軸21の中心軸線C1回りに(すなわちチルト方向Yに)弾性支持する第1弾性部材62を含む点である。
第1弾性部材62は、第2歯列形成体30をチルト方向Yに挟んだ両側に一対が設けられている。一対の第1弾性部材62は、互いに逆向きに第2歯列形成体30を弾性付勢する。一方の第1弾性部材62は、被案内凸部46Pの第1部分48Pの規制部48bPと第2歯列形成体30の対応する縁部302との間に介在している。他方の第1弾性部材62は、被案内凸部46Pの第2部分49Pの規制部49bPと第2歯列形成体30の対応する縁部303との間に介在している。
【0046】
図7の第2実施形態の構成要素において、
図4の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図4の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
本実施形態によれば、車両振動等によって、第2歯列形成体30Pが締付部材26Pに対してガタ付いて打音を発生することを防止することができる。また、ロック動作時に、両歯列71,72の負荷される軸方向の荷重が、急激に上昇して異音が発生する荷重に達してしまうことを未然に防止することができる。
(第3実施形態)
図8は本発明の第3実施形態において、第1歯列形成体29Qが取り付けられた第1側板22Qの概略図である。
【0047】
図8の第3実施形態が、
図1の第1実施形態と主に異なるのは、ギヤロック機構28Qが、第1側板22Qによって弾性支持された第1歯列形成体29Qを備える点である。すなわち、ギヤロック機構28Qは、第1側板22Qに設けられ、第1歯列形成体29Qを第1歯列71の歯並び方向に所定量移動可能に保持する保持部63を備える。また、ギヤロック機構28Qは、保持部63と第1歯列形成体29Qとの間に介在し、第1歯列形成体29Qを第1歯列71の歯並び方向(チルト方向Y)に弾性支持する第2弾性部材64を備える。
【0048】
第2弾性部材64は、第1歯列形成体29Qをチルト方向Yに挟んだ両側に一対が設けられている。一対の第2弾性部材64は、互いに逆向きに第1歯列形成体29Qを弾性付勢する。保持部63は、第1歯列形成体29Qをチルト方向Yに挟んだ両側に一対が配置され、第1歯列形
成体29Qの一対の端部をそれぞれ保持する溝形部材であってもよい。 一方の第2弾性部材64は、第1歯列形成体29Qの一方の端部と一方の保持部63との間に介在し、他方の第2弾性部材64は、第1歯列形成体29Qの他方の端部と他方の保持部63との間に介在している。第2弾性部材64は図示のような圧縮コイルばねであってもよいし、板ばね(図示せず)であってもよい。
【0049】
図8の第3実施形態の構成要素において、
図1の第1実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図1の第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
本実施形態によれば、第1側板22Qの保持部63に対して第1歯列形成体29Qがガタついて打音を発生することを防止することができる。また、ロック動作時に、両歯列71,72の負荷される軸方向の荷重が、急激に上昇して異音が発生する荷重に達してしまうことを未然に防止することができる。
【0050】
本発明は各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ギヤロック機構を、他方の側板と締付部材との間にも設けるようにしてもよい。また、第1歯列形成体29;29Qは、チルト用長溝23の一対の縁部23a,23bの少なくとも一方に近接して配置されていればよい。その他、本発明は特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。