(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の模式的な斜視図である。
図2は、ステアリング装置1の概略構成を示す模式的な側面図である。
【0027】
図2において、紙面左側が、ステアリング装置1が取り付けられる車体2の前側であり、紙面右側が車体2の後側であり、紙面上側が車体2の上側であり、紙面下側が車体2の下側である。
【0028】
図2を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、ブラケットとしてのアッパーブラケット6と、ロック機構7とを主に含んでいる。
【0029】
ステアリングシャフト3では、後側の一端3Aに操舵部材8が取り付けられ、前側の他端3Bが、自在継手9、インターミディエイトシャフト10、自在継手11およびピニオン軸12を順に介してステアリング機構13に連結されている。ステアリング機構13は、ラックアンドピニオン機構等で構成されている。ステアリング機構13は、ステアリングシャフト3の回転が伝達されたことに応じて、図示しないタイヤ等の転舵輪を転舵させる。
【0030】
ステアリングシャフト3は、全体として、車体2の前後方向に延びる略円筒状または略円柱状である。
【0031】
以下では、ステアリングシャフト3が延びる方向を軸方向Xとする。この実施形態の軸方向Xは、他端3Bが一端3Aよりも低くなるように水平方向に対して傾斜している。軸方向Xにおいて操舵部材8側である後側には、符号「X1」を付し、軸方向Xにおいて操舵部材8とは反対側である前側には、符号「X2」を付す。後側X1は、車体2の後側と一致し、前側X2は、車体2の前側と一致している。
【0032】
軸方向Xに直交する方向のうち、
図2において紙面と垂直な方向を左右方向Yといい、
図2において略上下に延びる方向を上下方向Zという。左右方向Yにおいて、
図2の紙面の奥側は、右側Y1であり、紙面の手前側は、左側Y2である。上下方向Zにおける上側には、符号「Z1」を付し、上下方向Zにおける下側には、符号「Z2」を付す。
【0033】
なお、
図2以外の各図において
図2のX〜Zの各方向に対応する方向には、
図2と同じ符号を付している。
【0034】
ステアリングシャフト3は、円筒状または円柱状のアッパーシャフト14およびロアーシャフト15を含んでいる。アッパーシャフト14は、ロアーシャフト15よりも後側X1に配置されている。アッパーシャフト14とロアーシャフト15とは、同軸状に並んでいる。
【0035】
アッパーシャフト14における後側X1の端部が、ステアリングシャフト3の一端3Aであり、当該端部に操舵部材8が連結されている。アッパーシャフト14では、少なくとも前側X2の端部が円筒状になっている。アッパーシャフト14の前側X2の端部には、ロアーシャフト15の後側X1の端部が前側X2から挿入されている。
【0036】
アッパーシャフト14とロアーシャフト15とは、スプライン嵌合やセレーション嵌合によって嵌合している。そのため、アッパーシャフト14とロアーシャフト15とは、一体回転可能であるとともに、軸方向Xに沿って相対移動可能である。よって、ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
【0037】
コラムジャケット4は、全体として、軸方向Xへ延びる中空体である。コラムジャケット4には、ステアリングシャフト3が収容されている。コラムジャケット4は、軸方向Xに延びる略筒状をなすアッパージャケット16およびロアージャケット17を有している。
【0038】
アッパージャケット16は、ロアージャケット17よりも後側X1に位置している。言い換えると、ロアージャケット17は、アッパージャケット16よりも前側X2に位置している。ロアージャケット17は、アッパージャケット16よりも太く、アッパージャケット16に対して外嵌されている。詳しくは、アッパージャケット16の前側X2の端部16Aが、ロアージャケット17の後側X1の端部17Aに対して後側X1から挿入されている。言い換えると、ロアージャケット17は、アッパージャケット16の一部を収容している。この状態で、アッパージャケット16は、ロアージャケット17に対する軸方向Xへの相対移動が可能である。この相対移動によって、コラムジャケット4は、軸方向Xに沿って伸縮可能である。
【0039】
また、ステアリングシャフト3は、図示しない軸受によってコラムジャケット4に対して連結されていることから、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を回転自在に支持している。
【0040】
詳しくは、アッパーシャフト14とアッパージャケット16とは、図示しない軸受を介して連結されている。また、ロアーシャフト15とロアージャケット17とは、図示しない軸受を介して連結されている。そのため、アッパーシャフト14およびアッパージャケット16の連結体が、ロアーシャフト15およびロアージャケット17に対して、軸方向Xに相対移動可能である。これにより、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに伸縮可能である。
【0041】
ここでのステアリングシャフト3およびコラムジャケット4の伸縮を「テレスコ」と呼び、この伸縮調整、つまり、テレスコによる操舵部材8の軸方向Xでの位置調整をテレスコ調整と呼ぶ。
【0042】
ロアーブラケット5は、コラムジャケット4の前側X2の部分を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結している。詳しくは、ロアーブラケット5は、ロアージャケット17の前側X2の部分を支持している。
【0043】
ロアーブラケット5は、ロアージャケット17に固定された可動ブラケット18と、車体2に固定された固定ブラケット19と、左右方向Yに延びる中心軸20とを含んでいる。
【0044】
可動ブラケット18は、たとえばロアージャケット17の前側X2の端部17Bの上側外周面に左右一対で設けられている(
図1参照)。可動ブラケット18は、固定ブラケット19によって、中心軸20を介して回動可能に支持されている。そのため、コラムジャケット4全体は、ステアリングシャフト3を伴って、中心軸20を中心に上下に回動することができる。ここでの回動を「チルト」と呼び、チルトによる操舵部材8の向き調整をチルト調整と呼ぶ。ロアージャケット17は、中心軸20を介して車体2側の固定ブラケット19に連結されているので、チルトできるものの、軸方向Xに移動することはできない。
【0045】
アッパーブラケット6は、コラムジャケット4において可動ブラケット18よりも後側X1の部分を支持する。詳しくは、アッパーブラケット6は、ロアージャケット17の後側X1の部分を支持している。
【0046】
図3は、
図2のIII−III線に沿うステアリング装置1の概略断面図である。
【0047】
図3を参照して、アッパーブラケット6は、下向きに開放する溝形であり、軸方向Xから見て上下が逆になった略U字状をなすように、コラムジャケット4を挟んで左右対称に形成されている。詳述すると、アッパーブラケット6は、左右方向Yに薄くコラムジャケット4を挟んで対向する一対の側板21と、一対の側板21のそれぞれの上側端部に連結された上下方向Zに薄い連結板22とを一体的に備えている。
【0048】
一対の側板21において、左右方向Yから見て同じ位置には、チルト用長孔23が形成されている。チルト用長孔23は、上下方向Z、厳密には、中心軸20(
図2参照)を中心とした周方向であるチルト方向に延びている。連結板22は、たとえば一対の側板21よりも左右方向Yにおいて両外側へ延びた部分を有しており、当該部分に挿通される図示しないボルト等によって、アッパーブラケット6全体が車体2に固定されている。
【0049】
ここで、ロアージャケット17において後側X1の端部17Aにおける下側Z2の部分には、軸方向Xに延びて端部17Aを切り欠くスリット24が形成されている(
図1も参照)。スリット24は、端部17Aからロアージャケット17の外部へ向けて後側X1および下側Z2の両方へ露出されている(
図1も参照)。そのため、ロアージャケット17の端部17Aは、上下が逆になった略U字状の断面を有している。
【0050】
また、ロアージャケット17の端部17Aには、左右方向Yからスリット24を区画しつつ下側Z2へ延びる一対の支持部25が一体的に設けられている。支持部25は、軸方向Xおよび上下方向Zに広がる略直方体である。
【0051】
一対の支持部25のそれぞれには、左右方向Yから見て同じ位置に、左右方向Yに支持部25を貫通する貫通孔26が形成されている。
【0052】
ステアリング装置1は、左右方向Yから見て貫通孔26とチルト用長孔23とが重なる部分に挿通される締付軸27を含む。締付軸27は、左右方向Yに細長く延びる略円柱状である。締付軸27の左右方向Yにおける両端は、アッパーブラケット6の一対の側板21から左右方向Yの外側にはみ出ている。締付軸27の左側Y2の端部には、締付軸27よりも大径な頭部29が形成されている。
【0053】
ステアリング装置1では、頭部29と左側Y2の側板21との間に、テレスコ調整やチルト調整のために操作される把持可能なレバータイプの操作部材30と、環状のカム31およびカムフォロワ32とが、左側Y2からこの順に並んで配置されている。
【0054】
締付軸27は、操作部材30の長手方向一端側の基端部30A、カム31およびカムフォロワ32のそれぞれに対して挿通されている。締付軸27がアッパーブラケット6の各チルト用長孔23に挿通されていることから、操作部材30、カム31およびカムフォロワ32は、締付軸27を介してアッパーブラケット6によって支持されている。アッパーブラケット6は、ロアージャケット17を支持しているため、操作部材30は、ロアージャケット17によっても支持されている。
【0055】
操作部材30およびカム31が締付軸27に対して一体回転可能であるのに対して、カムフォロワ32は、締付軸27に対して相対回転可能かつ左右方向Yに移動可能である。ただし、カムフォロワ32において左側Y2の側板21のチルト用長孔23に挿通される部分には、二面幅が形成されているので、カムフォロワ32の空転がチルト用長孔23によって防止されている。
【0056】
締付軸27の右側Y1の端部には、ナット33が取り付けられている。ナット33と右側の側板21との間には、介在部材34、針状ころ軸受35およびスラストワッシャ36が、左側Y2からこの順に並んでいる。締付軸27は、介在部材34、針状ころ軸受35およびスラストワッシャ36のそれぞれに対して挿通されている。
【0057】
締付軸27は、アッパーブラケット6の各チルト用長孔23内で、前述したチルト方向に移動可能である。運転者がチルト調整のために操舵部材8を上下方向Zに移動させると、アッパーブラケット6に対し相対的に、コラムジャケット4全体が前述したようにチルトする。操舵部材8のチルト調整は、締付軸27がチルト用長孔23内で移動可能な範囲で行われる。
【0058】
運転者等の使用者がテレスコ調整やチルト調整をした後に、操作部材30の長手方向一端側の先端部30Bを掴んで操作部材30を締付軸27回りに回動させると、カム31が回転し、カム31およびカムフォロワ32に形成されたカム突起37が互いに乗り上げる。これにより、カムフォロワ32は、締付軸27の軸方向に沿って右側Y1に移動し、左側Y2の側板21に押し付けられる。当該押し付けによって、一対の側板21は、カムフォロワ32と介在部材34との間で左右方向Yの両側から締め付けられる。
【0059】
これにより、一対の側板21が左右方向Yの両側からロアージャケット17の支持部25を挟持することで各側板21と支持部25との間に摩擦力が生じる。当該摩擦力によって、コラムジャケット4の位置がロックされ、操舵部材8がチルト調整後の位置でロックされ、チルト方向に移動できなくなる。
【0060】
また、ロアージャケット17の一対の支持部25が側板21によって挟持されることによって、一対の支持部25の間隔が狭まるので、ロアージャケット17の内周部が狭くなって、ロアージャケット17は、ロアージャケット17内のアッパージャケット16に圧接する。
【0061】
これにより、アッパージャケット16とロアージャケット17との間に摩擦力が生じることによって、アッパージャケット16の位置がロックされ、操舵部材8がテレスコ調整後の位置でロックされ、軸方向Xに移動できなくなる。
【0062】
このように、チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材8の位置が固定されているときのステアリング装置1の状態を「ロック状態」と呼ぶ。
【0063】
ロック状態のステアリング装置1において、先程とは逆方向に操作部材30を回動させると、カム31がカムフォロワ32に対して回転し、カムフォロワ32は、締付軸27の軸方向に沿って左側Y2に移動する。すると、カムフォロワ32と介在部材34との間における一対の側板21に対する締め付けが解除される。そのため、各側板21と支持部25との間の摩擦力や、ロアージャケット17とアッパージャケット16との間の摩擦力が無くなるので、操舵部材8が軸方向Xおよびチルト方向に移動できるようになる。これにより、操舵部材8のテレスコ調整やチルト調整が再び可能となる。
【0064】
このように、チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材8の位置の固定が解除されているときのステアリング装置1の状態を「ロック解除状態」と呼ぶ。
【0065】
次に、ロック機構7について詳しく説明する。ロック機構7は、ロック状態のステアリング装置1においてアッパージャケット16を軸方向Xに動かないように強固にロックするためのものであって、締付軸27の左右方向Yにおける中央部の周辺に設けられている。
【0066】
図4は、ステアリング装置1の要部の分解斜視図である。
図4では、説明の便宜上、アッパージャケット16を2点鎖線で表している。
図5は、
図2のV−V線に沿うステアリング装置1の概略断面図である。
図6は、
図5のVI−VI線に沿うステアリング装置1の概略断面図である。
図6では、説明の便宜上、ステアリングシャフト3の図示を省略している(後述する
図7〜
図11においても同様)。
【0067】
図4を参照して、ロック機構7は、伝達部材としてのカム38と、支持軸39と、ロック部材40と、付勢部材41と、ロックプレート42とを含んでいる。
【0068】
カム38は、左右方向Yに延びる円筒状のボス部38Aと、ボス部38Aの周上1箇所からボス部38Aの径方向外側へ突出したカム部38Bとを一体的に含む。カム部38Bは、左右方向Yから見て、ボス部38Aの径方向外側へ細くなる略三角形状である。
【0069】
カム部38Bにおいて当該径方向外側の先端部には、符号「38C」を付すことにする。カム部38Bは、先端部38Cとボス部38Aの外周面との間を結び、ボス部38Aの外周面に滑らかにつながる一対の円弧面38Dを有している。
【0070】
カム38は、ロアージャケット17のスリット24内に配置されていて、ボス部38Aには、締付軸27において一対の支持部25の間でスリット24内に露出された部分が挿通されている(
図3も参照)。ボス部38Aと締付軸27とは、スプライン嵌合等によって嵌合している。そのため、カム38は、操作部材30の操作に応じて締付軸27と一体回転可能である。
【0071】
支持軸39は、左右方向Yに延びる1本の略円柱状である。支持軸39に関連して、
図5を参照して、ロアージャケット17の各支持部25において貫通孔26よりも前側X2の位置には、支持部25を左右方向Yに貫通する貫通孔43が1つずつ形成されている。各支持部25において、貫通孔43は、左右方向Yにおける外側において拡径された拡径部44を有している。支持軸39は、各支持部25の貫通孔43に挿通されていて、支持軸39の周方向C(
図4参照)に回転可能である。
【0072】
支持軸39の左右方向Yにおける両端部は、拡径部44まで到達している。支持軸39の左右方向Yにおけるいずれかの端部には、プッシュナット45が取り付けられている。本実施形態では、プッシュナット45は、支持軸39の左側Y2の端部に取り付けられている。支持軸39は、プッシュナット45によってロアージャケット17に対して左右方向Yに位置決めされている。このように、支持軸39は、貫通孔43に挿通されることでロアージャケット17によって支持されている。
【0073】
図4に戻り、ロック部材40は、左右方向Yから見て、後側X1へ略90°傾いた略V字状である。ロック部材40は、基端部46と、基端部46から後側X1へ延びるロック部47および当接部48と、を含んでいる。
【0074】
基端部46は、ロック部47と当接部48との連結部分である。基端部46には、基端部46を左右方向Yに貫通する挿通孔49が形成されている。基端部46の左右方向Yにおける両側面には、挿通孔49を取り囲みながら左右方向Yにおける外側へ突出する円筒部50が1つずつ形成されている。円筒部50は、基端部46の一部とみなされる。
【0075】
ロック部47は、基端部46から後側X1かつ上側Z1へ細長く延びる形状を有する。ロック部47の後側X1の端部は、ツース51であり、上側Z1に向けて折り曲げられている。また、ロック部47の下面47Aにおいて、ツース51に前側X2から隣接する位置には、左右方向Yに延びる切り欠き52が形成されている。
【0076】
切り欠き52は、左右方向Yに延びる1本の溝である。ロック部47において切り欠き52が形成された部分を脆弱部53という。ロック部47は、脆弱部53において局所的に薄くなっていることによって、脆弱部53において局所的に強度が低くなっている。
【0077】
当接部48は、基端部46から後側X1へ細長く延びる形状を有する。当接部48は、ロック部47よりも下側Z2に位置している。
【0078】
このようなロック部材40は、ロアージャケット17のスリット24内において、カム38よりも前側X2に配置されている(
図6も参照)。前述した支持軸39においてスリット24内に位置する部分が、ロック部材40の基端部46の挿通孔49に挿通されている。支持軸39と基端部46とは、スプライン嵌合等によって嵌合している。そのため、ロック部材40は、支持軸39と共に、支持軸39の軸中心まわりの周方向Cに回転可能である。
【0079】
支持軸39がロアージャケット17の各支持部25の貫通孔43に挿通されているため(
図5参照)、ロック部材40は、支持軸39を介してロアージャケット17によって支持されている。また、前述したように、操作部材30は、締付軸27を介してロアージャケット17によって支持されている。つまり、操作部材30は、ロック部材40とは機械的に分離した状態でロアージャケット17に支持されている。
【0080】
また、前述したカム38は、ロック部材40のロック部47と当接部48との間に配置され、カム38のカム部38Bが当接部48の上面48Aに対して上側Z1から接触している(
図6参照)。
【0081】
付勢部材41は、針金等を曲げて形成されたばねである。付勢部材41は、基端部46における左側Y2の円筒部50の外周面に外から巻き付けられるコイル状部54と、コイル状部54から後側X1へ延びる保持部55および変形部56を一体的に含んでいる。変形部56は、保持部55よりも下側Z2に配置されている。変形部56の後側X1の端部56Aは、右側Y1に折れ曲がっている。
【0082】
付勢部材41では、保持部55が、カム38のボス部38Aにおいてカム部38Bよりも左側Y2の部分の外周面に対して上側Z1から係止され、変形部56の端部56Aが、ロック部材40の当接部48に対して下側Z2から係止されている(
図6参照)。付勢部材41では、変形部56が保持部55へ向けて上側Z1に移動しようとする力が常に発生しており、この力が、ロック部材40全体を周方向Cに沿って上側Z1へ向けて付勢する付勢力となる。
【0083】
ロックプレート42は、軸方向Xに長手で上下方向Zに厚みを有する板状であって、アッパージャケット16の外周面16Bに沿って湾曲している。ロックプレート42の軸方向Xにおける後側X1の端部42Aは、第1ストッパ64である。第1ストッパ64は、下側Z2へ向けて折り曲げられている。
【0084】
ロックプレート42は、アッパージャケット16の外周面16Bの下側部分において、ロアージャケット17のスリット24に露出される部分に配置されている(
図3および
図5参照)。ロックプレート42は、アッパージャケット16に溶接等で固定されている。そのため、ロックプレート42は、アッパージャケット16と共にロアージャケット17に対して軸方向Xに相対移動可能である。
【0085】
ロックプレート42は、ロック部材40の上側Z1、厳密には、真上に位置している。そのため、付勢部材41によって上側Z1へ向けて付勢されたロック部材40のツース51は、ロックプレート42側に付勢されている。
【0086】
ロックプレート42には、アッパージャケット16の外周面16Bの周方向に沿って延びる複数の穴57が軸方向Xに並んで形成されている。本実施形態において穴57の数は、9つであるが、これに限らない。各穴57は、ロックプレート42の厚み方向である上下方向Zにロックプレート42を貫通している。ロックプレート42において複数の穴57のそれぞれに対して後側X1から隣接する位置には、仕切部58が1つずつ設けられている。そのため、仕切部58は、複数の穴57と同数になるように複数設けられていて、複数の仕切部58は、軸方向Xに並んでいる。操舵部材8に最も近い最後尾の仕切部58以外の各仕切部58は、軸方向Xに隣り合う2つの穴57の境界部分をなしている。
【0087】
図6に示す前述したロック状態において、カム38のカム部38Bは、前側X2を向いていて、カム部38Bにおける下側Z2の円弧面38Dがロック部材40の当接部48の上面48Aに上側Z1から面接触している。
【0088】
ロック状態において、ロック部材40におけるロック部47のツース51は、正常であれば、下側Z2からロックプレート42に進出した状態で、ロックプレート42におけるいずれかの穴57に下側Z2から嵌まって係合している。このようにロックプレート42に進出したときのロック部材40およびツース51の位置を「進出位置」という。
【0089】
付勢部材41は、前述したようにロック部材40全体を上側Z1へ向けて常に付勢している。これにより、ツース51は、ロックプレート42の穴57に係合した状態で維持される。つまり、ロック状態において、ツース51は、常に進出位置に位置するように付勢される。また、付勢部材41によって上側Z1へ向けて付勢されているロック部材40では、当接部48が、カム38のカム部38Bに下側Z2から押圧するように付勢されている。そのため、付勢部材41は、ロック部材40を進出位置へ向けて常に付勢するとともに、ロック部材40とカム38とを互いに接近するように常に付勢している。
【0090】
そのため、ロック部材40とカム38との間のがたつきを小さく抑えることができるので、カム38は、操作部材30の操作に応じて、この操作に遅れることなく、ロック部材40を後述する退避位置まで移動させることができる。
【0091】
また、付勢部材41の保持部55と変形部56とがロック部材40とカム38とを挟み込んでいるため、カム38の上下方向Zにおける位置が決まりやすく、カム38と締付軸27とのがたつきを抑えることができる。
【0092】
このようにロック状態においてツース51が進出位置にあって、ロックプレート42におけるいずれかの穴57に係合している状態では、穴57に係合しているツース51が、軸方向Xにおける両側の仕切部58に挟まれている。そのため、ロックプレート42は、軸方向Xにおける移動がロック部材40によって規制されている。ちなみに、ツース51が最も前側X2の穴57に係合する場合は、ツース51は、最も前側X2の仕切部58と、この穴57を前側X2から区画するロックプレート42の前端部42Bとに挟まれる。
【0093】
また、前述したように、ロックプレート42は、アッパージャケット16に固定されており、ロック部材40は、支持軸39を介してロアージャケット17に固定されている。そのため、ロック状態においてツース51が進出位置にあれば、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の軸方向Xにおける相対移動が規制される。
【0094】
これにより、ロアージャケット17とアッパージャケット16との間の摩擦力に加えて、ロアージャケット17側のツース51がアッパージャケット16側のロックプレート42の穴57に係合することで、軸方向Xにおけるアッパージャケット16の位置を強固にロックできる。そのため、ステアリングシャフト3およびコラムジャケット4の伸縮が停止して、軸方向Xにおける操舵部材8の位置がロックされるので、テレスコ調整が規制された状態になる。
【0095】
図6に示すようにステアリング装置1がロック状態にあってツース51が進出位置にある場合に、ステアリング装置1および車体2を有する車両が通常走行することができる。
【0096】
車両衝突時には、ステアリングシャフト3およびコラムジャケット4には、いわゆる2次衝突による後側X1からの衝突荷重が作用する。車両の通常走行時に車両衝突が起こったとき、ツース51は、係合しているロックプレート42の穴57に後側X1から隣接する仕切部58によって後側X1から当接される。そのため、ツース51には、仕切部58を介して2次衝突時の衝突荷重が伝達される。これにより、ロック部材40のロック部47は、ロック部47において最も強度が弱い脆弱部53で破断する。これにより、2次衝突時のエネルギーの一部が吸収される。
【0097】
また、ロック部47が破断することによって、ロック部47においてロックプレート42の穴57に係合していたツース51と、ロック部47においてツース51以外の部分とが脆弱部53を境界として分離される。そのため、ロックプレート42側のアッパージャケット16が、固定されているロアージャケット17に対し、収縮するように移動する。ここでの相対移動によって、車両衝突時の2次衝突時のエネルギーをほぼ完全に吸収することができる。
【0098】
このように、コラムジャケット4およびステアリングシャフト3の収縮とロック部材40の破断とによって、車両衝突時のエネルギーを吸収することができる。また、既存のロック部材40に脆弱部53を設けることによって、脆弱部53を有する新たな部品を追加せずに済むので、部品点数の増加を抑えてコストの低減を図ることができる。
【0099】
ロック部47が脆弱部53で破断した状態では、ロック部47の後側X1の端部は、ロックプレート42の第1ストッパ64よりも下側Z2に位置している。そのため、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の前側X2への相対移動の際、ロック部47が第1ストッパ64に干渉することがない。
【0100】
図7は、
図6においてツース51が穴57から退避した状態を示す図である。
【0101】
図6の状態において、ステアリング装置1がロック状態からロック解除状態になるように操作部材30を操作して締付軸27を回動させる。すると、カム38は、今まで前側X2を向いていたカム部38Bが下側Z2を向くように、左側Y2から見て反時計回りに締付軸27と一体的に回動する。カム38の回動に伴い、カム部38Bがロック部材40の当接部48を下側Z2へ押し下げる。
【0102】
これにより、ロック部材40全体は、付勢部材41の付勢力に抗して、下側Z2へ向けて、支持軸39を中心に回動する。これにより、ロック部材40のツース51は、ロックプレート42から下側Z2へ退避し始め、今まで係合していたロックプレート42の穴57から下側Z2へ外れようとする。
【0103】
図7に示すようにステアリング装置1がロック解除状態に達すると、カム38のカム部38Bが下側Z2を向き、ロック部材40は、下側Z2へ向けて目一杯回動した状態にある。このとき、ロック部材40のツース51は、ロックプレート42から下側Z2へ完全に退避し、今まで係合していたロックプレート42の穴57から下側Z2へ完全に外れた状態にある。ロックプレート42から退避した状態のロック部材40およびツース51の位置を「退避位置」という。このように、ロック部材40およびツース51は、カム部38Bに押し下げられることで、付勢部材41の付勢力に抗して退避位置まで移動させられる。
【0104】
なお、退避位置において、ツース51の上側Z1の端部は、ロックプレート42の第1ストッパ64の下側Z2の端部よりも上側Z1に位置している。
【0105】
ロック状態と同様に、ロック解除状態においても、付勢部材41が、ロック部材40全体を上側Z1に付勢している。また、カム38のカム部38Bがロック部材40の当接部48に対して上側Z1から接触している。そのため、ロック部材40のツース51は、付勢部材41によって進出位置(ロックプレート42側)へ常に付勢されているものの、ロック解除状態では、退避位置に位置している。このように、ツース51を含むロック部材40全体は、ロックプレート42に対して進退可能である。
【0106】
ツース51をロックプレート42に対して進退させるためには、締付軸27の周方向における操作部材30の位置である操作位置を、ロック状態とロック解除状態との間で変化させる必要がある。操作部材30の操作位置に関わらず、付勢部材41は、ロック部材40を進出位置へ向けて常に付勢している。
【0107】
また、前述したように、操作部材30は、ロック部材40とは機械的に分離されている。また、ロック部材40は、退避位置まで移動するときだけ、カム38を介して操作部材30の操作に連動する。
【0108】
そのため、ステアリング装置1の組み立ての一環としてロック部材40と操作部材30とを組み合わせる際、ロック部材40が退避位置まで移動するときに操作部材30の操作に連動することだけを注意すればよい。そのため、ロック部材40が進出位置および退避位置のそれぞれに正確に移動できるようにロック部材40と操作部材30との相対位置を調節するといった手間を省略できる。そのため、ステアリング装置1の組み立ての困難性を低減することができる。
【0109】
ツース51が退避位置にある状態では、軸方向Xにおけるロックプレート42の移動についてのロック部材40による規制が解除されている。そのため、アッパージャケット16は、ロックプレート42を伴って、ロアージャケット17に対して軸方向Xへ自在に移動できるので、ステアリングシャフト3およびコラムジャケット4を伸縮させて、操舵部材8のテレスコ調整が可能になる。テレスコ調整の際、退避位置のツース51の上側Z1を、ロックプレート42の各穴57が軸方向Xに沿って順に通過する。また、この状態では、チルト調整も可能である。
【0110】
ここで、ロアージャケット17では、上下方向Zにおいてアッパージャケット16を挟んで支持部25の反対側に位置する上側壁59に、長さL(
図1参照)で軸方向Xに延びる長孔60が形成されている。
【0111】
長孔60は、ロアージャケット17の上側壁を上下方向Zに貫通している。長孔60において軸方向Xにおける両端部は、いずれも塞がれており、ロアージャケット17の外部へ開放されていない。
【0112】
長孔60には、係合部61が遊びを持って軸方向Xへ移動可能に挿通されている。係合部61は、略直方体形状のピンである。係合部61では、下側Z2の面に設けられた係合凸部62が、アッパージャケット16の外周面16Bに設けられた係合凹部63にたとえば圧入によって嵌め込まれている。これにより、係合部61は、アッパージャケット16に対して固定されている。係合部61は、溶接やねじ締結等によってアッパージャケット16に固定されていてもよい。
【0113】
図7を参照して、テレスコ調整の際、操舵部材8を軸方向Xに移動させると、アッパージャケット16がロアージャケット17に対して軸方向Xに相対移動する。操舵部材8のテレスコ調整でのアッパージャケット16の最大移動量に相当する距離には、符号「D」を付すことにする。距離Dは、ロックプレート42の最も後側X1の穴57と最も前側X2の穴57とのそれぞれに後側X1から隣接する仕切部58の前側X2の端面同士の間の距離に相当する。
【0114】
テレスコ調整の際、操舵部材8を前側X2へ向けて移動させると、アッパージャケット16は、ロアージャケット17に対して前側X2へ相対移動する。アッパージャケット16の当該相対移動に伴い、ロックプレート42の第1ストッパ64は、前側X2へ移動する。
【0115】
ここで、前述したように、退避位置において、ツース51の上側Z1の端部は、ロックプレート42の第1ストッパ64の下側Z2の端部よりも上側Z1に位置している。そのため、第1ストッパ64は、ツース51と第1ストッパ64との間の軸方向Xにおける距離D1を移動すると、後側X1からロック部材40のツース51に当接する。なお、このときの当接ではロック部材40が破断しないように、脆弱部53の強度が設定されている。
【0116】
よって、アッパージャケット16は、ロアージャケット17に対する前側X2への相対移動を第1ストッパ64によって規制される。また、既存のロックプレート42に第1ストッパ64を設けることによって、第1ストッパ64を有する新たな部品を追加せずに済むので、部品点数の増加を抑えてコストの低減を図ることができる。
【0117】
なお、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の前側X2へ向けた相対移動に伴い、係合部61は、長孔60内で前側X2へ移動する。ここで、長孔60の距離Lが距離Dよりも長い。そのため、係合部61は、ロックプレート42の第1ストッパ64とロック部材40とのツース51とが当接するよりも先に、ロアージャケット17の上側壁59における長孔60の前側X2の端部の周縁部65と当接することはない。
【0118】
テレスコ調整の際、逆に、操舵部材8を後側X1へ向けて移動させると、アッパージャケット16は、ロアージャケット17に対して後側X1へ相対移動する。アッパージャケット16の当該相対移動に伴い、係合部61は、長孔60内で後側X1へ移動する。係合部61は、係合部61と長孔60の軸方向Xの後側X1の端部60Aの周縁部66との間の距離D2を移動して周縁部66に当接する。
【0119】
このように、係合部61と長孔60とは、アッパージャケット16のロアージャケット17に対する後側X1への相対移動を規制する第2ストッパ67を構成している。
【0120】
そのため、テレスコ調整の際、係合部61が長孔60の周縁部66に当接することで、第2ストッパ67は、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の後側X1への必要以上の相対移動を規制することができる。また、長孔60では、軸方向Xにおける両端部60Aおよび60Bが塞がれていることから、長孔60内の係合部61が長孔60から軸方向Xにおける両側へ外れないので、アッパージャケット16がロアージャケット17に対して不意に抜けることを防止することができる。
【0121】
テレスコ調整において、アッパージャケット16がロアージャケット17に対して軸方向Xに相対移動する最大移動量に相当する距離Dは、距離D1と、距離D2との合計よりも小さく設定されている。
【0122】
そして、操舵部材8のテレスコ調整やチルト調整を終えてから、操作部材30を再び操作して、
図6に示すように、ステアリング装置1をロック状態にすると共に、ツース51をロック位置に移動させる。すると、軸方向Xおよびチルト方向におけるアッパージャケット16の位置がロックされる。このように、ツース51は、操作部材30の操作に応じてロックプレート42に対して進退可能であり、進出位置でロックプレート42に進出した状態でロックプレート42におけるいずれかの穴57に係合する。
【0123】
また、前述したように、2次衝突時において、アッパージャケット16は、ロアージャケット17に対して前側X2に相対移動する。このとき、アッパージャケット16の当該相対移動に伴い、係合部61は、長孔60の軸方向Xにおける長さL(
図1参照)から距離D2を差し引いた分の距離だけ長孔60内で前側X2へ移動する。その後、係合部61は、長孔60の軸方向Xにおける前側X2の端部60Bまで移動し、周縁部65と当接する(
図1参照)。
【0124】
なお、2次衝突後も係合部61は、長孔60内で軸方向Xに移動することができる。そのため、2次衝突後にアッパージャケット16をロアージャケット17に対して後側X1に相対移動させた場合、係合部61は、周縁部66に当接するので、係合部61および周縁部66は、2次衝突後も第2ストッパ67として機能する。
【0125】
このように、長孔60の軸方向Xにおける長さLは、操舵部材8のテレスコ調整でのアッパージャケット16の最大移動量に相当する距離Dと、車両衝突時のエネルギー吸収のためのアッパージャケット16の最大移動量との合計に相当する。
【0126】
次に、ツース51が穴57に係合することなくいずれかの仕切部58に下側Z2から圧接したハーフロック状態について説明する。
【0127】
図8は、
図6においてツース51がハーフロックした状態を示す図である。
【0128】
テレスコ調整やチルト調整の後に、操作部材30を操作することによって、退避位置のツース51を進出位置まで移動させようとすると、大抵の場合、ツース51は、ロックプレート42の各仕切部58にぶつかることなく、いずれかの穴57に嵌まる。
【0129】
しかし、
図8に示すように、操作部材30を操作するときの軸方向Xにおけるツース51の位置によっては、ツース51が、進出位置に達するまでに、仕切部58に下側Z2からぶつかって、そのまま仕切部58に圧接する事態が想定される。
【0130】
ハーフロック状態でロックされ、この場合に車両衝突が起きると、ロック部材40のロック部47が脆弱部53において破断する前、すなわち離脱前に、ロックプレート42が、アッパージャケット16に伴われて前側X2へ移動する。
【0131】
ロックプレート42の移動により、ツース51が今まで圧接していた仕切部58に後側X1から隣接する穴57(「次の穴57」という)とツース51の位置が合う。前述したように、ツース51は、付勢部材41の付勢力により上側Z1に常に付勢されている。そのため、ツース51は、仕切部58の下側Z2の面を後側X1に滑った直後に当該次の穴57に嵌まる。その後、ロック部47が脆弱部53において破断することで離脱が生じる。
【0132】
このように、ハーフロック状態が生じた場合でも、車両衝突が起きた直後にツース51が当該次の穴57に嵌ることによって、2次衝突時のエネルギーを確実に吸収することができる。
【0133】
次に本発明の第1変形例について説明する。
【0134】
図9は、
図6に本発明の第1変形例を適用した図である。
図9において、上記に説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する(後述する
図10および
図11においても同様)。
【0135】
図9を参照して、第1変形例では、カム38の代わりにカム68が用いられている。カム68は、左右方向Yに延びる円筒状のボス部68Aと、ボス部68Aの径方向外側へ突出した一対のカム部68Bを一体的に含んでいる。各カム部68Bは、左右方向Yから見て、ボス部68Aの径方向外側へ膨出する略円弧状の外周面68Cと、外周面68Cの両端に位置する一対の凹面68Dとを有している。各凹面68Dは、外周面68Cとボス部68Aの外周面との境界として凹湾曲した略円弧状である。
【0136】
一対のカム部68Bは、ボス部68Aの周方向に並んでいる。
図9に示すようにロック部材40が進出位置にあるときを基準として、一対のカム部68Bのうちの一方は、ボス部68Aから下側Z2に突出して、一対のカム部68Bの内の他方は、ボス部68Aから前側X2に突出している。ボス部68Aの周方向において互いに近い側の凹面68D同士は、滑らかに繋がっている。そのため、左右方向Yから見て、当該凹面68D同士は、全体として略円弧状の凹面69を構成している。ここで、一対のカム部68Bの間に区画された谷状の空間に、符号「70」を付す。空間70は、凹面69と、カム部68Bの外周面68Cにおいて凹面69に隣接する部分とによって区画されている。空間70は、ボス部68Aの径方向外側へ露出されている。
【0137】
カム68は、前述したカム31と同様に、ロアージャケット17のスリット24内に配置されていて、ボス部68Aには、締付軸27において一対の支持部25の間でスリット24内に露出された部分が挿通されている。ボス部68Aと締付軸27とは、スプライン嵌合等によって嵌合している。そのため、カム68は、操作部材30の操作に応じて締付軸27と一体回転可能である。
【0138】
第1変形例のロック部材40の当接部48の後側X1の端部48Bは、左右方向Yから見て、後側X1に突出した略円弧状である。左右方向Yから見て、端部48Bを縁取る略円弧状の表面には、符号「48C」を付す。また、表面48Cの前側X2に隣接する当接部48の表面48Dは、下側Z2に窪んでいる。表面48Dは、表面48Cと滑らかに繋がっている。
【0139】
ロック部材40のツース51が進出位置にある状態で、当接部48の端部48Bは、空間70に配置されており、一対のカム部68Bによって挟まれている。この状態で、このとき、当接部48の端部48Bの表面48Cは、凹面69とそれぞれのカム部68Bの外周面68Cと接触している。この状態で、付勢部材41からの付勢力は、主に前側X2のボス部68Aに伝達されている。このようにして、当接部48の端部48Bは、一対のカム部68Bと噛み合っている。第1変形例では、ステアリング装置1の組み立ての際、ロック部材40とカム68とを容易に位置決めをすることができる。つまり、一対のカム部68Bは、ロック部材40を位置決めする位置決め部71として機能している
ロック部材40のツース51が進出位置にある状態から操作部材30を操作し、カム68を締付軸27の周方向に沿って反時計回りに回動させると、当接部48は、徐々に下側Z2に押し下げられる。これに伴い、ツース51も下側Z2に押し下げられて退避位置まで移動する。ここでは図示しないが、ツース51が退避位置に位置している状態で、凹面69と当接部48の表面48Cとは、接触しておらず、前側X2のカム部68Bの外周面68Cと当接部48の表面48Dと接触している。この状態で操舵部材8のテレスコ調整が可能である。
【0140】
ツース51が退避位置にある状態から再び操作部材30を操作し、カム68を締付軸27の周方向にそって時計回りに回動させると、当接部48は、付勢部材41の付勢力によって徐々に上側Z1に押し上げられる。これに伴いツース51も上側Z1に押し上げられて、最終的に進出位置へ戻る。
【0141】
なお、ロック機構7が上下方向Zにおいてアッパージャケット16を挟んで反対側(つまり、上側壁59側)に配置されている構成のステアリング装置の場合でも、第1変形例のステアリング装置1と共通のカム68を用いることができる。
【0142】
カム68の一対のカム部68Bは、第1変形例で示した形状に限られず、径方向外側へ突出した略三角形状であってもよい。この場合でも、一対のカム部68Bの間にロック部材40が挟まれることにより、ロック部材40とカム68とを容易に位置決めをすることができる。
【0143】
また、カム68のカム部68Bは、1つであってもよい。この場合、ロック部材40の当接部48の端部48Bが締付軸27の周方向の両側からカム部68Bを挟み込めるように、当接部48が端部48Bにおいて二股に分かれている。
【0144】
また、カム68のカム部68Bが1つであって当接部48の端部48Bも二股に分かれていない場合もあり得る。この場合、当接部48の表面48Cがカム部68Bの凹面68Dに接触し、カム部68Bと端部48Bとが噛み合うことで、カム部68Bが位置決め部として機能する。よって、ロック部材40とカム68との位置決めを達成することができる。
【0145】
次に、本発明の第2変形例について説明する。
【0146】
図10は、
図6に本発明の第2変形例を適用した図である。
【0147】
図10を参照して、第2変形例のロック部材40は、前述した実施形態のロック部材40と脆弱部53以外の構成がほぼ同じであり、時計回りに90°傾いた略U字状である。基端部46は、前側X2へ膨出するように湾曲した略C字状である。基端部46の内側面には、符号「89」を付すことにする。内側面89は、支持軸39の外周面に沿っている。第2変形例の基端部46は、本実施形態の挿通孔49および円筒部50を有していない。
【0148】
ロック部材40のロック部47は、基端部46の上側Z1の端部から後側X1へ延びる板状である。ロック部47には、切り欠き52が形成されていないため、脆弱部53も存在しない。ロック部材40の当接部48は、基端部46の下側の端部から後側X1へ延びる板状である。
【0149】
基端部46の内側面89と、ロック部47の下面47Aと、当接部48の上面48Aとは、軸方向Xに長手の溝部90を区画している。溝部90は、ロック部材40の後側X1へ向けてロック部材40の外部へ露出されている。溝部90は、軸方向Xに支持軸39が通過できる程度の幅を上下方向Zに有している。
【0150】
ロック部47および当接部48のそれぞれには、上下方向Zに貫通する第1挿通孔91および第2挿通孔92が形成されている。第1挿通孔91は、上下方向Zにおいてロック部47および当接部48を貫通している。第2挿通孔92は、ロック部47および当接部48のそれぞれにおいて、第1挿通孔91よりも後側X1に位置している。
【0151】
ロック部47および当接部48のそれぞれの第1挿通孔91には、上下方向Zに延びる1本の第1ピン93が挿通されている。ロック部47および当接部48のそれぞれの第2挿通孔92には、上下方向Zに延びる第2ピン94が挿通されている。第1ピン93および第2ピン94のそれぞれは、ロック部47と当接部48との間に架設され、第1挿通孔91および第2挿通孔92内でロック部材40に固定されている。
【0152】
第2変形例の支持軸39は、ロアージャケット17に対して、回転不能に支持されている。支持軸39は、第1ピン93よりもX2側に位置するように、溝部90の前側X2の端部に配置されている。支持軸39の外周面は、ロック部材40の基端部46の内側面89と、ロック部47の下面47Aと、当接部48の上面48Aと、第1ピン93の外周面とに接触している。ロック部材40は、溝部90に挿通された支持軸39回りに回動することで、前述した進出位置と退避位置との間で進退する。
【0153】
第2変形例の付勢部材41のコイル状部54は、支持軸39に巻き付けられている。
【0154】
前述したように、ロック部材40のツース51が進出位置にある状態で、車両衝突時の衝突荷重は、ロックプレート42からツース51に伝達される。これにより、ロック部材40全体は、ロックプレート42の移動に伴い、前側X2へ移動しようとする。そのため、ロック部材40に固定された第1ピン93が、その前側X2にある支持軸39によって破断される。これにより、車両衝突時のエネルギーが吸収される。
【0155】
第1ピン93が破断すると、ロック部材40全体がさらに前側X2へ移動する。これに伴い、支持軸39が、破断した第1ピン93よりも後側X1に位置して、第2ピン94に当接する。これにより、第2ピン94が破断するので、車両衝突時のエネルギーがさらに吸収される。第2ピン94が破断した後、支持軸39が溝部90から後側X1へ外れるので、ロック部材40は、支持軸39によって支持されなくなる。そのため、ロック部材40は、下側Z2へ落下する。これに伴い、ツース51がロックプレート42の穴57から外れるので、アッパージャケット16が前側X2に移動する。
【0156】
以上のように、第2変形例では、第1ピン93および第2ピン94が本実施形態における脆弱部53に相当し、2次衝突時のエネルギーを吸収する。第2変形例では、ロック部材40本体に脆弱部53を設ける必要がないため、ロック部材40の強度の向上を図ることができる。
【0157】
次に本発明の第3変形例について説明する。
【0158】
図11は、
図6に本発明の第3変形例を適用した図である。
【0159】
図11を参照して、第3変形例のロック部材40の形状は第2変形例のロック部材40とほぼ同じである。しかし、第3変形例のロック部材40のロック部47および当接部48には、第1挿通孔91および第2挿通孔92が形成されていない。そのため、第1ピン93および第2ピン94は、第3変形例のロック部材40には、設けられていない。
【0160】
第3変形例のロック部材40のロック部47の下面47Aには、第1突起95が形成されている。第1突起95は、下側Z2へ突出しており、左右方向Yから見て略円弧状である。第1突起95は、後側X1から支持軸39に隣接している。また、ロック部材40の当接部48の上面48Aには、第2突起96が形成されている。第2突起96は、上側Z1へ突出しており、左右方向Yから見て略円弧状である。第2突起96は、軸方向Xにおいて第1突起95と同じ位置に形成されている。
【0161】
支持軸39は、ロアージャケット17に対して、回転不能に支持されている。支持軸39は、溝部90の前側X2の端部に配置されている。支持軸39の外周面は、ロック部材40の基端部46の内側面89と、ロック部47の下面47Aと、当接部48の上面48Aと、第1突起95と、第2突起96とに接触している。ロック部材40は、溝部90に挿通された支持軸39を中心に支持軸39の周方向Cに回転する。
【0162】
付勢部材41のコイル状部54は、支持軸39に巻き付けられている。
【0163】
前述したように、ロック部材40のツース51が進出位置にある状態で、車両衝突時の衝突荷重は、ロックプレート42からツース51に伝達される。これにより、ロック部材40全体は、ロックプレート42の移動に伴い、前側X2へ移動しようとする。そのため、支持軸39が溝部90を上下方向Zの両側に広げるように第1突起95および第2突起96を乗り越える。これにより、2次衝突時のエネルギーが吸収される。そして、支持軸39がロック部材40の溝部90から後側X1へ外れると、ロック部材40は、支持軸39に支持されなくなる。そのため、ロック部材40は、下側Z2へ落下する。このように、第3変形例では、ロック部材40本体に脆弱部53を設ける必要がないため、ロック部材40の強度の向上を図ることができる。さらに、第3変形例では、車両衝突時のエネルギーを吸収するために新たな部材を設ける必要がないため、コストの低減を図ることもできる。
【0164】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0165】
たとえば、本実施形態とは異なり、長孔60がアッパージャケット16に設けられており、係合部61がロアージャケット17に設けられていてもよい。この場合、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の後側X1への相対移動に伴って、長孔60が係合部61に対して後側X1へ移動する。係合部61が長孔60の前側X2の端部と係合部61とが当接することで、第2ストッパ67は、ロアージャケット17に対するアッパージャケット16の後側X1への必要以上の相対移動を規制することができる。これにより、ロアージャケット17に対してアッパージャケット16が不意に抜けることを防止することができる。
【0166】
要は、長孔60がロアージャケット17およびアッパージャケット16の一方に設けられ、係合部61がロアージャケット17およびアッパージャケット16の他方に設けられていればよい。
【0167】
また、軸方向Xにおける支持軸39と締付軸27との位置関係は、本実施形態と逆であってもよい。つまり、支持軸39が締付軸27よりも後側X1に配置されていてもよい。この場合、ロック部材40は、ロック部47および当接部48が基端部46よりも前側X2に配置されるように支持軸39に組み付けられている。