【実施例】
【0030】
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
<試料1: 桜川中央A1−4 0.00〜0.50m>
試料1として、「桜川中央A1−4」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.00〜0.50mである範囲から採取されたものであった。なお、給油所で販売されていた有鉛ガソリンに由来する鉛が試料1に含まれることが、既に知られていた。つまり、試料1に含まれる鉛は人為的汚染に由来することが、既に知られていた。試料1を以下の方法により分析した。
【0032】
試料1中の鉛の質量含有率を、蛍光X線分析法(アルミリング法)により測定した。蛍光X線分析装置としては、株式会社リガク製のZSX PrimusIIを用いた。蛍光X線分析法の標準試料には、アメリカ合衆国の国立標準技術研究所(NIST)のSRM1646を用いた。測定された試料1中の鉛の質量含有率を下記表1に示す。
【0033】
試料1の土壌を水に添加して、分画として水可溶性物を抽出した。
【0034】
水可溶性物から分離された残りの土壌成分を酢酸に添加して、分画として炭酸塩を抽出した。
【0035】
炭酸塩から分離された残りの土壌成分を、酢酸及び塩化ヒドロキシルアンモニウムを含む液に添加して、分画として含水酸化物を抽出した。
【0036】
含水酸化物から分離された残りの土壌成分を、過酸化水素及び希硝酸を含む液に添加して、分画として硫化物及び有機物を抽出した。
【0037】
硫化物及び有機物から分離された残りの土壌成分を、濃硝酸に添加して、分画として酸可溶性物を抽出した。
【0038】
試料1から抽出された各分画における[
207Pb]/[
206Pb]を、誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。誘導結合プラズマ質量分析装置としては、株式会社島津製作所製のICP−8500を用いた。誘導結合プラズマ質量分析法の同位体標準試料には、NISTのSRM981及びSRM982を用いた。試料1の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]を下記表1に示す。
【0039】
[
207Pb]/[
206Pb]と同様の方法で、試料1の各分画における[
208Pb]/[
206Pb]を測定した。試料1の各分画における[
208Pb]/[
206Pb]を下記表2に示す。
【0040】
<試料2: 花崗岩石>
試料2として花崗岩石を試料1と同様の方法で分析した。試料2が人為的に鉛で汚染されていないことが既に知られていた。なお、試料2から抽出した水可溶性物は鉛を含まなかった。
【0041】
<試料3: 信濃川底質 0.92〜0.93m>
試料3として、信濃川の底質を採取した。この底質は、川底からの深さが0.92〜0.93mである範囲から採取されたものであった。試料3が人為的に鉛で汚染されていないことが既に知られていた。試料3を試料1と同様の方法で分析した。
【0042】
<試料4: 石炭灰粉塵>
試料4として石炭灰の粉塵を試料1と同様の方法で分析した。試料4が人為的に鉛で汚染されていないことが既に知られていた。試料4から抽出した水可溶性物は鉛を含まなかった。
【0043】
<試料5: 志貴野 6.20〜6.25m>
試料5として、「志貴野」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが6.20〜6.25mである範囲から採取されたものであった。試料5が人為的に鉛で汚染されていないことが既に知られていた。試料5を試料1と同様の方法で分析した。試料5から抽出した水可溶性物は鉛を含まなかった。
【0044】
<試料6: 自動車排ガス中の粒子>
試料6として自動車の排ガスに含まれる粒子を試料1と同様の方法で分析した。試料6が人為的に鉛で汚染されていることが既に知られていた。試料6を試料1と同様の方法で分析した。
【0045】
<試料7: 大阪城外堀底質 (1972年)>
試料7として、1972年に採取された大阪城の外堀の底質を、試料1と同様の方法で分析した。この底質は、川底からの深さが0.03〜0.06mである範囲から採取されたものであった。試料7が人為的に鉛で汚染されていることが既に知られていた。試料7を試料1と同様の方法で分析した。
【0046】
<試料8: 大阪城外堀底質 (1930年)>
試料8として、1930年に採取された大阪城の外堀の底質を、試料1と同様の方法で分析した。この底質は、川底からの深さが0.60〜0.63mである範囲から採取されたものであった。試料8が人為的に鉛で汚染されていることが既に知られていた。試料8を試料1と同様の方法で分析した。
【0047】
<試料9: のむら 0.90〜0.96m>
試料9として、「のむら」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.90〜0.96mである範囲から採取されたものであった。試料9が人為的に鉛で汚染されていることは既に知られていた。試料9を試料1と同様の方法で分析した。
【0048】
<試料10: 自動車用バッテリー (現在)>
試料10として、現在市販されている自動車用バッテリーの鉛電極を準備した。つまり、試料10は、人為に由来する鉛を含有するものであった。蛍光X線分析法による測定と分画の抽出とを行わなかったこと以外は試料1と同様の方法で、試料10(鉛電極そのもの)を分析した。
【0049】
試料2〜10其々における鉛の質量含有率を下記表1に示す。試料2〜10の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]を下記表1に示す。試料2〜10の各分画における[
208Pb]/[
206Pb]を下記表2に示す。表1及び2に記載された全ての[
207Pb]/[
206Pb]及び[
208Pb]/[
206Pb]を
図2に示す。
図2において、点線で記載されたマーカーは、人為的に鉛で汚染されていない試料2〜5の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]及び[
208Pb]/[
206Pb]を示す。
図2において、実線で記載されたマーカーは、人為的に鉛で汚染されていた試料1及び6〜10の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]及び[
208Pb]/[
206Pb]を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1及び2、並びに
図2に示すように、人為的に鉛で汚染されていた試料の全ての分画の[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600以上であった。人為的に鉛で汚染されていない試料の全ての分画の[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600未満であった。鉛による人為的汚染の有無と、分画における[
208Pb]/[
206Pb]との間には、明確な相関関係が確認されなかった。
【0053】
以上のように、人為的に鉛で汚染された試料と、人為的に鉛で汚染されていない試料とは、0.8600という基準値に基づいて判別可能であることが分かった。
【0054】
以下の試料11〜19を実施例1と同様の方法で分析した。ただし、試料17から抽出された含水酸化物における[
207Pb]/[
206Pb]及び[
208Pb]/[
206Pb]は測定しなかった。試料11〜19其々が人為的に鉛で汚染されているか否かは未知であった。
【0055】
<試料11: 2号太子B1−2 0.00〜0.50m>
試料11として、「2号太子B1−2」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.00〜0.50mである範囲から採取されたものであった。
【0056】
<試料12: 2号太子B1−2 0.15〜0.65m>
試料12として、試料11と同様に、「2号太子B1−2」という給油所の跡地から土壌を採取した。ただし、試料12は、地表からの深さが0.15〜0.65mである範囲から採取されたものであった。
【0057】
<試料13: 2号太子B1−7 0.00〜0.50m>
試料13として、「2号太子B1−7」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.00〜0.50mである範囲から採取されたものであった。
【0058】
<試料14: 2号太子B1−7 0.15〜0.65m>
試料14として、試料13と同様に、「2号太子B1−7」という給油所の跡地から土壌を採取した。ただし、試料14は、地表からの深さが0.15〜0.65mである範囲から採取されたものであった。
【0059】
<試料15: 桜川中央A1−4 2.40〜2.90m>
試料15として、試料1と同様に、「桜川中央A1−4」という給油所の跡地から土壌を採取した。ただし、試料15は、地表からの深さが2.40〜2.90mである範囲から採取されたものであった。
【0060】
<試料16: 乙金1−2 0.00〜0.05m>
試料16として、「乙金1−2」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.00〜0.05mである範囲から採取されたものであった。
【0061】
<試料17: 乙金1−2 0.05〜0.50m>
試料17として、試料16と同様に、「乙金1−2」という給油所の跡地から土壌を採取した。ただし、試料17は、地表からの深さが0.05〜0.50mである範囲から採取されたものであった。
【0062】
<試料18: 乙金1−4 0.00〜0.05m>
試料18として、「乙金1−4」という給油所の跡地から土壌を採取した。この土壌は、地表からの深さが0.00〜0.05mである範囲から採取されたものであった。
【0063】
<試料19 乙金1−4 0.05〜0.50m>
試料19として、試料18と同様に、「乙金1−4」という給油所の跡地から土壌を採取した。ただし、試料19は、地表からの深さが0.05〜0.50mである範囲から採取されたものであった。
【0064】
試料1及び11〜19其々における鉛の質量含有率を下記表3に示す。試料1及び11〜19の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]を下記表3に示す。試料1及び11〜19の各分画における[
208Pb]/[
206Pb]を下記表4に示す。表3に記載された全ての鉛の質量含有率及び[
207Pb]/[
206Pb]を
図3に示す。
図3中のマーカーは、[
207Pb]/[
206Pb]を示す。
図3中の棒グラフは、各試料中の鉛の質量含有率を示す。
図3の鉛の質量含有率に関する縦軸は、対数軸である。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
試料1及び11〜19其々における鉛の質量含有率を、基準値である150質量ppmと比較した。表3及び
図3に示すように、試料1、13、14及び16〜19其々における鉛の質量含有率は150質量ppm以上であった。一方、試料11、12及び15其々における鉛の質量含有率は150質量ppm未満であった。
【0068】
試料1及び11〜19の各分画における[
207Pb]/[
206Pb]を、基準値である0.8600と比較した。表3及び
図3に示すように、試料1及び15〜19其々の分画のうち少なくとも一つの分画における[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600以上であった。したがって、試料1及び15〜19に含まれる各鉛は人為的汚染に由来することが判明した。一方、試料11〜14の全ての分画における[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600未満であった。したがって、試料11〜14に含まれる鉛は自然に由来することが判明した。
【0069】
試料15中の鉛の質量含有率は150質量ppm未満であった。しかし、酸可溶性物以外の試料15の分画における[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600以上であった。つまり、試料15中の鉛の濃度は低いにもかわらず、試料15中の鉛は人為的汚染に由来することが判明した。
【0070】
試料13及び14其々における鉛の質量含有率は150質量ppm以上であった。しかし、試料13及び14其々の全ての分画における[
207Pb]/[
206Pb]は、0.8600未満であった。つまり、試料13及び14其々における鉛の濃度は高いにもかわらず、試料13及び14其々に含まれる鉛は自然に由来することが判明した。試料13及び14が採取された「2号太子B1−7」は、兵庫県揖保郡太子町太田字跡先2154−3に位置する。この「2号太子B1−7」の北方には明延鉱山があり、明延鉱山の土壌は高濃度で鉛を含有する。したがって、明延鉱山又はその近傍に存在する鉛が、かつて河川を通じて「2号太子B1−7」の土壌に流入したことが推測される。