(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜
図7はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示しており、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤の塗布部分を示している。
【0020】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素50が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFとを有するものである。
【0021】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SF,SFを有しており、背側におけるサイドフラップ部SF,SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられている。
【0022】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに各サイドフラップ部SF,SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0023】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SF,SFの内面までの範囲に固着されている。
【0024】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0025】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m
2、特に15〜30g/m
2のものが望ましい。
【0026】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0027】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0028】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0029】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面の肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0030】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0031】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0032】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0033】
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、
図1及び
図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0034】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0035】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材63の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0036】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0037】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SF,SFには、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64が前後方向に沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SF,SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性伸縮部材64はサイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装シート12との間に配置することもできる。脚周り弾性伸縮部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0038】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部EFであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部EFである。
【0039】
背側エンドフラップ部EFの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0040】
腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0041】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0042】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、
2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0043】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0044】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0045】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0046】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0048】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
【0049】
この包装シート58は、
図3に示すように、吸収体56の全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包装するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0050】
(ファスニングテープ)
図1、
図2及び
図7に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向中間部に設けられた、腹側外面に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部における内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,12に接着されている。
【0051】
乳幼児用おむつにおいては、テープ取付部13Cの寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、テープ本体部13Bの寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。
【0052】
テープ取付部からテープ本体部までを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0〜3.5dtex、目付け20〜100g/m
2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0053】
おむつの装着に際しては、背側のサイドフラップ部SFを腹側のサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープ13の係止部13Aを腹側F外面の適所に係止する。
【0054】
ファスニングテープ13は、背側のエンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13のテープ取付部13Cが重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13のテープ取付部13C間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側のエンドフラップ部EFの前後方向長さは、ファスニングテープ13のテープ取付部13Cの前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0055】
特徴的には、ファスニングテープ13の係止部13Aが粘着ゲル20からなるものとされている。粘着性を有する粘着ゲル20は、柔軟でありながら、粘着剤と比較して繰り返し係止性に優れるものであり、更にその防振性によりファスニングテープ13の係止部13Aに加わる力を吸収するため、より耐久性に優れる係止が可能となるという利点もある。
【0056】
粘着ゲル20はファスニングテープ13のシート基材上で固化・付着させる(シート基材が不織布の場合には表層の繊維構造に食い込んで固定化される)他、所定形状の固体として形成したものを、接着剤を介してファスニングテープ13のシート基材に接着することも可能である。
【0057】
粘着ゲル20(弾性又は粘弾性を有するもの)は公知のもの、例えばポリウレタン系、ポリオレフィン系、エラストマー系(スチレン系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系、塩ビ系、非塩ビ系)、シリコーン系等から特に限定無く使用でき、特にポリウレタン系のものや、ポリスチレン系樹脂とブチルゴムを主成分とする熱可塑性工ラストマーを好適に使用することができる。粘着ゲル20には、主成分樹脂に加えて、軟化剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤等が添加されていても良い。
【0058】
公知の粘着ゲル20としては、例えば、特開2001−316447号公報記載のものを好適に用いることができる。また、市販品の粘着ゲル20としては、例えばリンテック社製の商品名「リンクゲルエコ」、KOKUYO社製の商品名「EAS−TS10」、北川工業株式会社製の商品名「タックフィット」等を好適に使用することができる。
【0059】
粘着ゲル20のせん断強度及び剥離強度は特に限定されないが、粘着ゲル20はせん断強度を非常に強力にしつつ剥離強度を弱くすることができるものであるため、腹側外面に対するせん断強度は
0.029〜
0.078k
N/750mm2、特に
0.029〜
0.054k
N/750mm2とし、腹側外面に対する剥離強度は
0.78〜
14.22N/750mm2、特に
1.08〜
4.12N/750mm2として、繰り返し係止を行い易く、装着後は剥がれ難いファスニングテープとすることが望ましい。
【0060】
なお、せん断強度は、温度23±1℃、相対湿度50±2%RHの条件下で、
図10に示す(1)〜(4)の手順で次のように計測されるものである。
(1) ファスニングテープ80の係止対象部材70(外装シート12の係止領域やターゲットテープ)をおむつから取り外し、又は切り取り、ステンレス板ST上に両面テープで固定する。
(2) ファスニングテープ80をおむつから取り外し、これを係止対象部材70に貼り付ける。この際、ファスニングテープ80の係止部81(粘着ゲル、フック材又は粘着剤)の全体が係止対象部材70に係止するように配置する。
(3) 重量2kgのローラーRをファスニングテープ80の長手方向に一往復させファスニングテープ80の係止部81を係止対象部材70に係止させる。
(4) 引張試験機AUTOGRAPH AG−X(島津製作所製 ソフト:TRAPEZIUMX)を用い、一方のチャックにステンレス板STの端部挟み、他方のチャックにファスニングテープ80の端部を挟み、チャック間距離50mm、引張速度500mm/minで剪断方向の引張試験を行い、測定される荷重変化曲線における剥離開始時から完全剥離までの間の最大値を求め、この最大値を、係止面の面積750mm
2あたりに換算した値(最大値を係止部81の面積で除して得られる1mm
2あたりのせん断強度を750倍した値)をせん断強度とする。
【0061】
また、剥離強度は、温度23±1℃、相対湿度50±2%RHの条件下で、
図11に示す(1)〜(5)の手順で次のように計測されるものである。
(1) ファスニングテープ80の係止対象部材70(外装シート12の係止領域やターゲットテープ)をおむつから取り外し、又は切り取り、ステンレス板STの端部近傍に両面テープで固定する。
(2) ファスニングテープ80をおむつから取り外し、これを係止対象部材70に貼り付ける。この際、ファスニングテープ80の先端をステンレス板STの端部と反対側に向けて、ファスニングテープ80の係止部81を係止対象部材70と同様にステンレス板STの端部近傍に合わせ、且つ係止部81の全体が係止対象部材70に係止するように配置する。
(3) 重量2kgのローラーRをファスニングテープ80の長手方向に一往復させファスニングテープ80の係止部81を係止対象部材70に係止させる。
(4) ファスニングテープ80の摘み部(係止部81より先端側の端部)に500gの錘を載せる。その後、ファスニングテープ80の基端部に1kgの錘を連結し、錘WTをステンレス板の端部から下方に垂らし、ファスニングテープ80に10秒間剪断荷重を与える。
(5) 引張試験機AUTOGRAPH AG−X(島津製作所製 ソフト:TRAPEZIUMX)を用い、引張方向に対して直交するようにステンレ板STを固定し、これに対して直交する方向にファスニングテープ80が引張られるように準備する。この際、係止部81の最後の部位が剥離するときの係止部81と係止対象部材70との角度(最終剥離角度)が90度となるように調整する。引張速度810mm/minで引張試験を行い、測定される荷重変化曲線における剥離開始時から完全剥離までの間の最大値を求め、この最大値を、係止面の面積750mm
2あたりに換算した値(最大値を係止部81の面積で除して得られる1mm
2あたりの剥離強度を750倍した値)を剥離強度とする。
【0062】
粘着ゲル20の形状は特に限定されず、例えば、
図8(a)に示すように表面に切れ込み等の無い平坦な形状の粘着ゲル20とする他、
図8(b)に示すように表面に多数の切れ込み20cを入れた平坦な形状の粘着ゲル20とするのも好ましい。粘着ゲル20の厚み20tは適宜定めることができるが、薄すぎると防振性が低下し、厚すぎると柔軟性が低下し、装着感の悪化や動き等で剥離し易くなるため、0.5〜4mm程度とするのが好ましい。粘着ゲル20の厚みは一定でなくても良く、例えば、粘着ゲル20の表面が身体表面に沿う湾曲形状となるように、あるいは表面が裏面に対して傾斜した形状となるように、厚みを変化させることもできる。
【0063】
また、粘着ゲル20(つまり係止部13A)の面積(係止面)は適宜定めれば良いが、通常の場合500〜850mm
2程度とすることが好ましい。
【0064】
(ファスニングテープの係止部位)
腹側外面におけるファスニングテープ13の係止領域の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止領域は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0065】
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止領域には、係止を容易にするために、表面が平滑な平滑部15を設けるのが好ましい。平滑部15は、従来の粘着剤を用いる形態と同様に、平滑な表面のターゲットテープを腹側外面に貼り付けることにより形成しても良く、その表面に剥離処理を施しても良い。しかし、粘着ゲル20は剥離処理がなくても繰り返し係止性に優れるため、剥離処理は省略することができる。またそのため、図示形態の外装シート12として熱可塑性樹脂の不織布を用いる場合のように、ファスニングテープ13の係止領域が熱可塑性樹脂の不織布からなる場合、
図2及び
図6に示すように、この外装シート12の不織布を加熱・加圧処理によりフィルム化して粘着ゲルを係止するための平滑部15とするのは一つの好ましい形態である。
【0066】
また、このように、外装シート12の不織布のフィルム化により平滑部15を形成する場合、その形状は特に限定されず、適宜定めることができる。ただし、
図9に示すように、広範囲にわたり連続的にフィルム化平滑部15を形成するとおむつの外面が硬くなる。よって、フィルム化平滑部15は間欠的であることが望ましい。また、このような間欠的なフィルム化平滑部15を設ける場合、例えば前後方向に線状に延びるフィルム化平滑部15を幅方向に間欠的に設けることもができるが、せん断強度の確保が困難となる。よって、
図2及び
図6に示すように、幅方向に沿って線状に連続するフィルム化平滑部15が、前後方向に間隔を空けて複数本形成されていると、せん断強度を確保しつつフィルム化による硬質化を抑制できるため好ましい。この場合における線状の平滑部15の縦(前後方向)寸法15y、横(幅方向)寸法15x、間隔(縦方向)15dは適宜定めれば良いが、間隔が広過ぎると粘着ゲル20の係止力が低下するため、通常の場合、縦寸法15yは2〜5mm程度、横寸法15xは150〜250mm程度、とすることが好ましく、間隔15dは1〜8mm程度とすることが好ましい。また、平滑部15の形状を、係止部13Aの係止位置を表す文字や形状、模様、又はこれらの組み合わせ等のデザインにすることも可能である。
【0067】
もちろん、不織布からなる外装シート12がおむつ外面を形成する形態であっても、平滑部15を形成することなく、粘着ゲル20からなる係止部13Aを外装シート12に係止することができる。また、外装シート12が無く、液不透過性シート11がおむつ外面に露出する形態において、粘着ゲル20からなる係止部13Aを液不透過性シート11に係止することができる。
【0068】
さらに、上述の平滑部15を形成するか否かに関係なく、ファスニングテープ13の係止位置を表示する印刷や、印刷シートをおむつの外面や、内部に付加することができる。
【0069】
<効果確認試験>
図1〜
図7に示すのと同様の構造のテープタイプ使い捨ておむつ(実施例1及び実施例2)、
図9に示すのと同様の構造のテープタイプ使い捨ておむつ(実施例3)、及び平滑部に代えて同サイズの表面が平滑なターゲットフィルムを貼り付け、かつ係止部13Aを粘着剤とした以外は実施例3と同様のテープタイプ使い捨ておむつ(比較例)、市販品1,2を容易し、せん断強度及び剥離強度を計測した。計測手法については前述のとおりである。
【0070】
実施例1〜3の外装シートは繊度1.8dtex、目付15g/m
2のポリプロピレンスパンボンド不織布とした。また、粘着ゲル20は北川工業株式会社製の商品名「タックフィット」を接着剤によりファスニングテープに貼り付けて使用した。その他は表1のとおりとした。
【0071】
試験の結果、表1に示すように、本発明に係る実施例1〜3は実用に足るせん断強度を有することが判明した。
【0073】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
【0074】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0076】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0077】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:
0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
【0078】
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0079】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。