(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の内燃機関の給気温度制御装置の実施形態について説明する。以下、内燃機関の給気温度制御装置を、単に「給気温度制御装置」と称する。
【0011】
図1は、一実施形態における給気温度制御装置100を含む内燃機関として、その代表例であるガス燃料エンジンシステム1の一例を示す概略図である。図中に示す破線の矢印は、有線または無線等の通信線を示している。
【0012】
内燃機関の一例であるガス燃料エンジンシステム1は、例えば、乗用車、バス等の車両や、タンカー船、旅客船、タグボート、オフショア船等の船舶、発電機等に搭載される。ガス燃料エンジンシステム1は、圧縮された空気と燃料ガスとの混合気体を燃焼させることで、車両や船舶、発電機等を駆動させる。
【0013】
ガス燃料エンジンシステム1は、負荷Lと、ガス燃料エンジン部10と、過給部20と、空気冷却部30と、温度測定センサ40と、負荷測定センサ50と、第1の流量調整弁60と、第2の流量調整弁70と、吸排気経路APと、給排水経路WP(WP1〜WP6)と、給気温度制御装置100とを備える。なお、本実施形態におけるガス燃料エンジンシステム1は、例えば、液体燃料とガス燃料とのハイブリット機能を有するデュアルフューエルエンジンに適用されてもよいし、ガス燃料のみによって駆動するガス専用エンジンに適用されてもよい。
【0014】
負荷Lとは、エンジンの回転を妨げる負荷である。負荷Lは、例えば、ガス燃料エンジンシステム1が車両に搭載される場合、クラッチ、ギア、スロットバルブ等を駆動させる際の機械的負荷を含む。また、負荷Lは、例えば、ガス燃料エンジンシステム1が船舶に搭載される場合、プロペラ等を駆動させる際の機械的負荷を含む。また、負荷Lは、例えば、ガス燃料エンジンシステム1が発電機に搭載される場合、発電機等を駆動させる際の電気的および機械的負荷を含む。
【0015】
ガス燃料エンジン部10は、例えば、複数の燃焼室(シリンダー)12を備える。過給部20によって圧縮されて供給される空気は、吸排気経路APを介して空気冷却部30に送られ、その後ガス燃料エンジン部10に送られる。
【0016】
ガス燃料エンジン部10は、過給部20によって圧縮されて供給された空気を、各燃焼室12で燃焼(酸化)させて、内部のピストンを往復運動させる。ガス燃料エンジン部10は、燃焼室(シリンダー)12内部のピストンの往復運動を、図示しないコネクティングロッド(コンロッド)およびクランクシャフトにより回転運動に変える。これによって、ガス燃料エンジン部10は、この回転運動に基づくエネルギーを負荷Lに与え、負荷Lを駆動させる。
【0017】
過給部20は、例えば、外部から空気を取り込み、取り込んだ空気の圧力を大気圧以上に加圧してガス燃料エンジン部10に供給するターボチャージャー等である。また、過給部20は、ガス燃料エンジン部10内にて燃焼した空気を当該過給部20の駆動源として利用した後、外部に排気する。なお、過給部20は、「過給機」の一例である。
【0018】
空気冷却部30は、例えば、過給部20からガス燃料エンジン部10に空気を供給するための吸排気経路APの一部に設けられる。空気冷却部30は、給排水経路WPを介して外部から所定の圧力で供給される工業用水、海水、循環冷却水等の冷却水によって、吸排気経路AP内部を通過する空気を冷却させる。なお、空気冷却部30は、「空気冷却器」の一例であり、給排水経路WPは、「冷却水供給路」の一例である。
【0019】
温度測定センサ40は、空気冷却部30によって冷却された空気の温度(例えば単位[℃])を測定する。以下、温度測定センサ40により測定された空気の温度を、「給気温度」と記載する。
【0020】
負荷測定センサ50は、例えば、軸馬力計等のねじれ検出センサである。負荷測定センサ50は、例えば、負荷Lの大きさを測る指標として、クランクシャフトのねじれ量(例えば変位量[ミクロン])を測定する。なお、負荷測定センサ50により測定される指標は軸馬力(ねじれ量)に限られず、負荷Lの大きさを測ることができる指標であればどのようなものでもよい。例えば、渦電流式の電気動力計等によって負荷Lの大きさを測定してもよい。
【0021】
第1の流量調整弁60および第2の流量調整弁70は、例えば、二方、三方、四方等に開口Pを有する調整弁である。この調整弁は、例えば、電磁式や、油圧式、空気圧式等のアクチュエータによって駆動される。
【0022】
第1の流量調整弁60は、例えば、給排水経路WPを介して空気冷却部30に供給される冷却水の水量を調整する。第1の流量調整弁60は、例えば、給排水経路WP3から供給される冷却水を、調整弁の開度(例えば単位[%])に応じた分量で給排水経路WP1および給排水経路WP2に分流する。以下、調整弁の開度を、単に「弁開度」と記載する。
【0023】
図2は、第1の流量調整弁60が三方調整弁である場合の一例を示す図である。図中に示す矢印は、給排水経路WP内に供給される冷却水の流れる方向を示している。第1の流量調整弁60において、例えば、開口P1、P2、P3に対して給排水経路WP1、WP2、WP3がそれぞれ接続される。第1の流量調整弁60は、例えば、給排水経路WP1のみに冷却水を供給するために、開口P2を閉じるとともに、開口P1、P3を最大限開けるように調整弁62が制御される。すなわち、第1の流量調整弁60において、空気冷却部30側への弁開度が最大となる。
【0024】
また、第1の流量調整弁60は、例えば、給排水経路WP1に冷却水を供給しないために、開口P1を閉じるとともに、開口P2、P3を開けるように調整弁62が制御される。すなわち、第1の流量調整弁60において、空気冷却部30側への弁開度が最小又はゼロとなる。
【0025】
図3は、第1の流量調整弁60が四方調整弁である場合の一例を示す図である。図中に示す矢印は、給排水経路WP内に供給される冷却水の流れる方向を示している。第1の流量調整弁60において、例えば、空気冷却部30側への弁開度を最大とする場合、開口P1とP3とを導通し、開口P2とP4とを導通するように調整弁62が制御される。また、第1の流量調整弁60において、例えば、空気冷却部30側への弁開度を最小又はゼロとする場合、開口P3とP4とを導通するように調整弁62が制御される。
【0026】
図4は、第1の流量調整弁60を2つの流量調整弁60aおよび60bで構成した場合の一例を示す図である。本実施形態において、上述した
図2、3の第1の流量調整弁60の代わりに、給排水経路WP1中に設けられた流量調整弁60aと、給排水経路WP2中に設けられた流量調整弁60bとの双方の流量調整弁を用いてもよい。この場合、流量調整弁60aと流量調整弁60bの最大開口面積が同じ場合、流量調整弁60aの開度をX%とした場合、流量調整弁60bの開度を(100−X)%となるように制御すればよく、また流量調整弁60aと流量調整弁60bの最大開口面積が異なる場合、その面積比がX%と(100−X)%との関係になるように制御すればよい。
【0027】
第2の流量調整弁70は、例えば、第1の流量調整弁60の上流側に設けられ、給排水経路WPを介して空気冷却部30に供給される冷却水の水量を調整する。第2の流量調整弁70は、例えば、給排水経路WP5から供給される冷却水を、弁開度に応じた分量で給排水経路WP3および給排水経路WP4に分流する。なお、第2の流量調整弁70は、
図2〜4に示すような第1の流量調整弁60と同じものであると好適である。
【0028】
以下、第2の流量調整弁70において、給排水経路WP4よりも給排水経路WP3へ供給する水量が多くなるように弁開度が制御された場合を、「空気冷却部30側への弁開度が高い」という表現で説明する。また、給排水経路WP4よりも給排水経路WP3へ供給する水量が少なくなるように弁開度が制御された場合を、「空気冷却部30側への弁開度が低い」という表現で説明する。
【0029】
また、空気冷却部30に供給される冷却水の水量は、例えば、第1の流量調整弁60の弁開度と第2の流量調整弁70の弁開度とを乗算した値に、給排水経路WPの上流側から供給される水量を乗算した値に基づいた量として算出可能である。このため、本実施形態では、給排水経路WPの上流側から下流側に向けて、第2の流量調整弁70、第1の流量調整弁60の順で設けられていると説明したが、これら流量調整弁の配置の順番は逆でもよい。
【0030】
給気温度制御装置100は、例えば、第1の制御部110と、第2の制御部120と、記憶部(不図示)を備える。第1の制御部110および第2の制御部120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。また、記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶媒体(非一時的な記憶媒体)を有する。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有していてもよい。記憶部は、ソフトウェア機能部を動作させるためのプログラムを記憶してもよい。
【0031】
第1の制御部110は、給気温度に基づいて、第1の流量調整弁60の弁開度をフィードバック制御する。第1の制御部110は、例えば、失火やノッキング等の燃焼異常の発生が抑制され、空気と燃料ガスとの混合気体の空燃比を適正な範囲内(理想空燃比と同程度の範囲内)に収めるために、負荷に応じて数段階に定めておいた目標温度(以下、「給気温度目標値Tg」と称する)を記憶部に予め記憶させており、負荷測定センサ50からの負荷情報に基づいて、ガス燃料エンジン部10に供給すべき給気温度目標値Tgをフィードバック制御時の目標値に設定する。第1の制御部110は、例えば、この目標値と、温度測定センサ40によって測定された空気の温度とに基づいて、第1の流量調整弁60の弁開度を制御対象としてPID制御(Proportional-Integral-Derivative Controller;PID)を行う。なお、この際、第1の制御部110は、例えば、ガス燃料エンジン部10に供給すべき給気温度が目標値から大きく逸脱しないように、第1の流量調整弁60の弁開度に対して、上限の所定値CHと下限の所定値CLとを設定し、これら所定値CH、CLの範囲内でPID制御を行う。
【0032】
第2の制御部120は、記憶部に予め記憶させておいた弁開度情報と、負荷測定センサ50により測定された負荷Lの大きさとに基づいて、第2の流量調整弁70の弁開度をオープンループ制御する。弁開度情報とは、予め定められた負荷Lと空気冷却部30に供給すべき冷却水の水量との関係を示した情報である。この情報は、例えば、マップや関数として予め記憶部に記憶させておく。また、空気冷却部30に供給すべき冷却水の水量は、例えば、ガス燃料エンジン部10において、失火やノッキング等の燃焼異常の発生が抑制されるように決定される。すなわち、この水量は、空気と燃料ガスとの混合気体の空燃比を適正な範囲内(理想空燃比と同程度の範囲内)に収めるために必要とされる水量として決定される。
【0033】
図5は、弁開度情報の一例を示す図である。図中に示す縦軸は、例えば、第2の流量調整弁70の弁開度[%]を示し、横軸は、例えば、負荷L[kW]を示している。また、図中では、弁開度が大きい方向を、空気冷却部30側への弁開度が高いものとして表し、弁開度が小さい方向を、空気冷却部30側への弁開度が低いものとして表している。なお、以下の図において、第1の流量調整弁60および第2の流量調整弁70の弁開度[%]の高低は、所定値(例えば50%)を基準に判断される。
【0034】
図示の例における弁開度情報(マップ)は、例えば、以下のように取得される。第1の制御部110は、第1の流量調整弁60の弁開度を30〜70%の範囲でフィードバック制御させる。この際、第2の制御部120は、任意のサンプル点(例えばL1〜L7)の負荷Lごとに、第2の流量調整弁70の弁開度をオープンループ制御させる。弁開度情報(マップ)は、この条件時における第2の流量調整弁70の弁開度を各負荷Lに応じて示した情報である。
【0035】
また、ユーザは、事前の処理として、これら任意のサンプル点(例えばL1〜L7)に基づいて、直線補間や多項式補間等の数値解析を行い、サンプル点が示す特徴に最もフィッティングした近似曲線LN1を予め導出しておいてもよい。ユーザは、例えば、導出した近似曲線がLN1=α×L
2+β×L+Cのような数式の場合、数式と、負荷Lの係数α、βと、外乱等の影響を考慮した定数項Cとを含むパラメータを記憶部に予め記憶させておく。これによって、第2の制御部120は、オープンループ制御時において、負荷測定センサ50から負荷Lの大きさを示す情報を取得するとともに、これらパラメータを記憶部から読み出して、第2の流量調整弁70の弁開度を算出する。なお、弁開度情報の取得時の条件として、第1の流量調整弁60の弁開度を30〜70%の範囲でフィードバック制御させると説明したがこれに限られない。第1の制御部110は、例えば、第1の流量調整弁60の弁開度を40〜60%の範囲、或いは50%程度でフィードバック制御させるとより好適である。
【0036】
また、本実施形態におけるガス燃料エンジンシステム1では、例えば、外気、海水、淡水等の温度による外乱や、空気冷却部30の汚れ等によって、第1の制御部110によりフィードバック制御される第1の流量調整弁60の弁開度が、所望値よりも大きくなったり、または小さくなったりする場合がある。このため、本実施形態における給気温度制御装置100は、以下の処理を行う。
【0037】
第2の制御部120は、第1の制御部110によってフィードバック制御される第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きくなった場合、空気冷却部30に供給される冷却水の水量を多くするように、第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。また、第2の制御部120は、第1の制御部110によってフィードバック制御される第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CLより小さくなった場合、空気冷却部30に供給される冷却水の水量を少なくするように、第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。以下、このような第2の制御部120の制御を、「シフト制御」と称する。また、図を参照して、第1の流量調整弁60の弁開度に基づいた第2の制御部120のシフト制御の処理について説明する。
【0038】
図6は、第2の制御部120のシフト制御の様子の一例を示す図である。図中において左側の縦軸は、例えば、第1の流量調整弁60および第2の流量調整弁70の弁開度[%]を示し、右側の縦軸は、例えば、負荷L[kW]を示し、横軸は、例えば、時間[秒]を示している。
【0039】
曲線LN2は、例えば、第2の制御部120によってシフト制御された第2の流量調整弁70の弁開度の変化の様子を表している。また、曲線LN3は、例えば、第1の制御部110によってフィードバック制御された第1の流量調整弁60の弁開度の変化の様子を表している。また、曲線LN4は、例えば、負荷測定センサ50によって測定された負荷Lの変化の様子を表している。また、曲線LN5は、例えば、第2の制御部120によってオープンループ制御のみが実施された第2の流量調整弁70の弁開度の変化の様子を表している。
【0040】
第2の制御部120は、例えば、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きくなった時刻t1から所定時間TIM経過するまでの間、弁開度情報(例えば
図5)に基づいた制御量より所定量SFT分増加(シフト)させた制御量で第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。所定時間TIMは、例えば、10〜600秒の範囲内で設定される。また、所定時間TIMは、30〜120秒の範囲内で設定されるとより好適である。所定量SFTは、例えば、1〜10%の範囲で設定される。また、所定量SFTは、2〜5%の範囲内で設定されるとより好適である。なお、上述した所定時間TIMおよび所定量SFTに設定される値は一例であり、ユーザの任意の数値に適宜変更されてもよい。
【0041】
第2の制御部120は、所定時間TIM経過した時刻t2において、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きいか否か判定する。第2の制御部120は、依然として第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きい場合、時刻t2から所定時間TIM経過した時刻までの間、上述した処理によって所定量SFT分増加させた制御量に対して、更に所定量SFT分増加(シフト)させて第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。すなわち、第2の制御部120は、弁開度情報に基づいた制御量に対して所定量SFTの2倍分増加(シフト)させ、この増加させた制御量で第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。
【0042】
第2の制御部120は、所定時間TIM経過する度に、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きいか否か判定し、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CHより大きい場合、上述した処理を繰り返す。これによって、給気温度制御装置100は、空気冷却部30側への弁開度を所定量SFT分大きくでき、空気冷却部30の冷却効果を向上させることができる。なお、図示の例において、所定量SFT分増加(シフト)させる処理のみを説明したが、第2の制御部120は、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CLより小さいか否か判定することによって、所定量SFT分減少(シフト)させる処理を行ってもよい。
【0043】
第2の制御部120は、例えば、第1の流量調整弁60の弁開度が所定値CLより小さくなった時刻から所定時間TIM経過するまでの間、弁開度情報に基づいた制御量より所定量SFT分減少(シフト)させた制御量で第2の流量調整弁70の弁開度を制御する。これによって、給気温度制御装置100は、空気冷却部30側への弁開度を所定量SFT分小さくでき、空気冷却部30の冷却効果を低下させることができる。なお、この場合の所定時間TIMおよび所定量SFTの設定値は、上述した設定値と同程度であると好適である。
【0044】
図7は、一実施形態における給気温度制御装置100の制御の結果の一例を示す図である。図中において左側の縦軸は、例えば、第1の流量調整弁60および第2の流量調整弁70の弁開度[%]を示し、右側の縦軸は、例えば、負荷L[kW]を示し、横軸は、例えば、時間[秒]を示している。
【0045】
曲線LN6は、例えば、第2の制御部120によってオープンループ制御された第2の流量調整弁70の弁開度の変化の様子を表している。また、曲線LN7は、例えば、第1の制御部110によってフィードバック制御された第1の流量調整弁60の弁開度の変化の様子を表している。また、曲線LN8は、例えば、負荷測定センサ50によって測定された負荷Lの変化の様子を表している。また、曲線LN9は、例えば、従来技術のフィードバック制御された第1の流量調整弁60(または第2の流量調整弁70)の弁開度の変化の様子を表している。
【0046】
例えば、曲線LN9は、曲線LN8に急激な変化が生じた時刻からおよそΔt秒後に変化し始める。すなわち、従来技術のフィードバック制御では、負荷Lの急激な変化に対して、時間の遅延が生じる場合があった。これに対し、曲線LN6は、曲線LN8に急激な変化が生じた時刻とほぼ同じ時刻に変化し始める。すなわち、本実施形態における給気温度制御装置100は、オープンループ制御を行うことにより、急激に負荷Lが変化した場合であっても、応答性よく第2の流量調整弁70の弁開度を制御可能である。
【0047】
図8は、一実施形態における給気温度制御装置100の制御の結果の他の例を示す図である。図中において左側の縦軸は、例えば、給気温度[℃]を示し、右側の縦軸は、例えば、負荷L[kW]を示し、横軸は、例えば、時間[秒]を示している。
【0048】
曲線LN10は、例えば、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせで、第1の流量調整弁60と第2の流量調整弁70との弁開度を制御した際の給気温度の変化の様子を表している。また、曲線LN11は、例えば、負荷測定センサ50によって測定された負荷Lの変化の様子を表している。また、曲線LN12は、例えば、従来技術のフィードバック制御で第1の流量調整弁60(または第2の流量調整弁70)の弁開度を制御した際の給気温度の変化の様子を表している。
【0049】
例えば、給気温度に対して、給気温度目標値Tgを基準にある程度の許容範囲(例えばTg+〜Tg−)が設定されている場合、曲線LN12は、この給気温度の許容範囲を超える場合があった。すなわち、従来技術のフィードバック制御では、給気温度が給気温度目標値Tgに対してオーバーシュート(またはアンダーシュート)する場合があった。
【0050】
これに対し、曲線LN10は、給気温度の許容範囲内に収まる。すなわち、本実施形態における給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、オーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制することができる。なお、図示の例では、説明の簡略化のため、上述したフィードバック制御時の時間の遅延について考慮していない。
【0051】
図9は、一実施形態における給気温度制御装置100の制御の結果の他の例を示す図である。図中において左側の縦軸は、例えば、例えば、空燃比[%]を示し、右側の縦軸は、例えば、負荷L[kW]を示し、横軸は、例えば、時間[秒]を示している。本実施形態では、理論空燃比よりも高い混合気体の状態を燃料(混合気体)がリッチであると称し、低い状態をリーンであると称する。
【0052】
曲線LN13は、例えば、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせで、第1の流量調整弁60と第2の流量調整弁70との弁開度を制御した際の空燃比の変化の様子を表している。また、曲線LN14は、例えば、負荷測定センサ50によって測定された負荷Lの変化の様子を表している。また、曲線LN15は、例えば、従来技術のフィードバック制御で第1の流量調整弁60(または第2の流量調整弁70)の弁開度を制御した際の空燃比の変化の様子を表している。
【0053】
例えば、空燃比に対して、適正な範囲内(理想空燃比と同程度の範囲内)に収まるように、上限の閾値R1と下限の閾値R2とが設定されている場合、曲線LN15は、この適正な範囲を超える場合があった。すなわち、従来技術のフィードバック制御では、空燃比が閾値R1を越えることにより失火する場合があり、空燃比が閾値R2未満になることによりノッキングが発生する場合があった。特に、図中に示す領域Bのように、空燃比が適正な範囲から大きく逸脱する場合、より顕著に失火する傾向があった。また、図中に示す領域Aのように、空燃比が適正な範囲から大きく逸脱する場合、より顕著にノッキングが発生する傾向があった。この結果、ガス燃料エンジン部10の運転が継続して行えない場合があった。
【0054】
これに対し、曲線LN13は、空燃比が適正な範囲内に収まる。すなわち、本実施形態における給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、失火やノッキング等の燃焼異常の発生を抑制することができる。なお、図示の例では、説明の簡略化のため、上述したフィードバック制御時の時間の遅延について考慮していない。
【0055】
図10は、一実施形態における給気温度制御装置100の制御の結果の他の例を示す図である。図中において縦軸は、例えば、最大の負荷Lと平均の負荷Lとの比率として負荷率[%]を示し、横軸は、例えば、経過時間[秒]を示している。
【0056】
曲線LN16は、例えば、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせで、第1の流量調整弁60と第2の流量調整弁70との弁開度を制御した際の負荷率の変化の様子を表している。また、曲線LN17は、例えば、従来技術のフィードバック制御で第1の流量調整弁60(または第2の流量調整弁70)の弁開度を制御した際の負荷率の変化の様子を表している。
【0057】
例えば、負荷率が15%から100%に上昇した場合、従来技術のフィードバック制御(曲線LN17)では、制御を開始した時刻t0から、負荷率が一定値に収束するまでの時刻t2の期間として、4分以上の時間を要する場合があった。これに対し、本実施形態における給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、制御を開始した時刻t0から、負荷率が一定値に収束するまでの時刻t1の期間を、10数秒程度に縮小することができる。
【0058】
図11は、一実施形態における給気温度制御装置100のシフト制御の処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、給気温度制御装置100の運転に伴い開始され、給気温度制御装置100の停止によって終了される。
【0059】
まず、給気温度制御装置100は、記憶部に記憶された所定のプログラム内の変数Tと変数FLGとを、“0”に設定する(ステップS100)。変数Tは、例えば、第2の制御部120のシフト制御を開始するまでに待機する時間を表す。また、変数FLGは、例えば、第2の制御部120のシフト制御を行うか否かを表す。変数FLGには、例えば、シフト制御を行う場合“1”が設定され、シフト制御を行わない場合“0”が設定される。
【0060】
次に、給気温度制御装置100は、変数FLGが“0”か否か判定する(ステップS102)。給気温度制御装置100は、変数FLGが“0”の場合(ステップS102:Yes)、変数V1が所定値CHを超えるか否か判定する(ステップS104)。ここで、変数V1は、例えば、第1の流量調整弁60の弁開度の値を表す。給気温度制御装置100は、変数V1が所定値CHを超える場合(ステップS104:Yes)、予め変数V2に格納されている値に所定量SFT分加算した値を変数V2として設定し、変数Tと変数FLGとをそれぞれ、“所定時間TIM”、“1”に設定する(ステップS106)。変数V2は、例えば、第2の流量調整弁70の弁開度の値を表す。次に、給気温度制御装置100は、ステップS102の処理に戻る。
【0061】
給気温度制御装置100は、変数V1が所定値CHを超えない場合(ステップS104:No)、変数V1が所定値CL未満か否か判定する(ステップS108)。給気温度制御装置100は、変数V1が所定値CL未満の場合(ステップS104:Yes)、予め変数V2に格納されている値から所定量SFT分減算した値を変数V2として設定し、変数Tと変数FLGとをそれぞれ、“所定時間TIM”、“1”に設定する(ステップS110)。次に、給気温度制御装置100は、ステップS102の処理に戻る。給気温度制御装置100は、変数V1が所定値CL未満でない場合(ステップS104:No)、ステップS102の処理に戻る。
【0062】
給気温度制御装置100は、変数FLGが“0”でない場合(ステップS102:No)、変数Tとして設定されている所定時間TIMから“1”を減算した値を、変数Tとして設定する(ステップS112)。次に、給気温度制御装置100は、変数Tが“0”か否か判定する(ステップS114)。給気温度制御装置100は、変数Tが“0”の場合(ステップS114:Yes)、変数FLGを“0”に設定する(ステップS116)。次に、給気温度制御装置100は、ステップS102の処理に戻る。給気温度制御装置100は、変数Tが“0”でない場合(ステップS114:Yes)、ステップS102の処理に戻る。これによって、給気温度制御装置100は、例えば、運転を停止するまで、本フローチャートのステップS102〜S116の処理を繰り返す。
【0063】
以上説明した一実施形態の給気温度制御装置100によれば、第1の制御部110が給気温度に基づいて、第1の流量調整弁60の弁開度をフィードバック制御し、第2の制御部120が記憶部に予め記憶させておいた弁開度情報と、負荷測定センサ50により測定された負荷Lの大きさとに基づいて、第2の流量調整弁70の弁開度をオープンループ制御することにより、負荷変動時により応答性を良くすることができる。
【0064】
また、一実施形態の給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、制御目標値に対するオーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制することができる。
【0065】
また、一実施形態の給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、失火やノッキング等の燃焼異常の発生を抑制することができる。
【0066】
また、一実施形態の給気温度制御装置100は、オープンループ制御およびフィードバック制御の組み合わせによって弁開度を制御することにより、制御目標値に達するまでに要する時間をより短くすることができる。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態についてガス燃料エンジン係わる実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、他のディーゼルエンジン等の内燃機関に適用でき、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。