(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ターゲットとして患者の体内に配置された金属製のマーカーを使用するマーカートラッキングの場合であっても、ターゲットとして患者の特定部位を利用するマーカーレストラッキングの場合であっても、これらのターゲットトラッキングを実行するには、ターゲットの位置を画像処理により認識する必要がある。そして、ターゲットトラッキングの精度は、ターゲットトラッキングを実行するときのパラメータの設定により左右される。このパラメータは、患者個人によってもその適切値が異なることから、パラメータを適切に設定することは極めて困難であり、豊富な経験が必要となる。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ターゲットトラッキングを実行するときのパラメータを容易に設定することが可能な放射線治療用動体追跡装置および放射線治療装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、治療対象部位の位置や形状を特定するためには、予め取得した基準呼吸位相における治療特定部位の位置や形状の情報を、患者の呼吸による体動に伴って補正する必要がある。この作業をマニュアルで実行した場合には、多大な作業時間が必要となるばかりではなく、誤差が生ずることになる。
【0009】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、患者の体動に伴う治療対象部位の位置や形状を容易に特定することが可能な放射線治療用照射領域決定装置および放射線治療装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、患者に対して治療ビームを照射することにより治療を行う放射線治療に用いられる動体追跡装置において、基準呼吸位相における治療対象部位の位置と、連続する複数の呼吸位相における治療対象部位を含む領域の2次元のX線画像データ群からなる3次元X線画像データとを記憶部から取得するX線画像情報取得部と、前記記憶部から取得した3次元X線画像データに対して画像レジストレーションを実行することにより、異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む2次元のX線画像の変形量を算出するX線画像変形量算出部と、前記記憶部から取得した基準呼吸位相における治療対象部位の位置と、前記X線画像変形量算出部により算出した異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む2次元X線画像の変形量とに基づいて、各呼吸位相における治療対象部位の位置を算出する位置算出部と、治療対象部位を含む領域を連続する複数の呼吸位相にわたってX線画像を取得するとともに、テンプレートマッチングのためのパラメータを設定してトラッキングを実行するときのテンプレートを作成し、連続して取得されたX線画像に対してテンプレートマッチングを実行することにより各呼吸位相における治療対象部位の位置を特定する動作を、前記パラメータを変更して複数回実行するテンプレートマッチング部と、前記位置算出部により算出した各呼吸位相における治療対象部位の位置と、前記テンプレートマッチング部により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置とを比較することにより、各パラメータ毎のそれらの誤差値を特定する比較部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、前記パラメータは、呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数、および/または、テンプレートマッチングに使用する閾値である。
【0012】
第3の発明は、呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数、および/または、テンプレートマッチングに使用する閾値を変化させたときの、それらの呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数、および/または、テンプレートマッチングに使用する閾値と、前記誤差値との関係を、表示部にグラフィック表示させるための画像処理部を備える。
【0013】
第4の発明は、前記画像処理部は、呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数とテンプレートマッチングに使用する閾値とを縦軸と横軸とし、前記誤差値を異なる色で表現した2次元カラーマップを、前記表示部にグラフィック表示させる。
【0014】
第5の発明は、基準呼吸位相における治療対象部位の形状と、連続する複数の呼吸位相における治療対象部位を含む領域の3次元のCT画像データ群からなる4次元CT画像データとを記憶する治療計画記憶部と、前記治療計画記憶部から取得した4次元CT画像データに対して画像レジストレーションを実行することにより、異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む3次元のCT画像の変形量を算出するCT画像変形量算出部と、前記治療計画記憶部に記憶した基準呼吸位相における治療対象部位の形状と、前記CT画像変形量算出部により算出した異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む3次元CT画像の変形量とに基づいて、各呼吸位相における治療対象部位の形状を算出する形状算出部と、前記形状算出部により算出した各呼吸位相における治療対象部位の形状に基づいて、治療ビームの照射領域を決定する照射領域決定部と、前記照射領域決定部で決定した治療ビームの照射領域と、前記テンプレートマッチング部において、前記比較部により特定した誤差値に基づいて補正した後のパラメータを使用してテンプレートマッチングを実行して得た治療対象部位の位置とを利用して、治療ビームを照射する治療ビーム照射部と、をさらに備える。
【0015】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明に係る動体追跡装置を備えた放射線治療装置である。
【0016】
第7の発明は、患者に対して治療ビームを照射することにより治療を行う放射線治療装置に用いられる治療ビームの照射領域決定装置において、基準呼吸位相における治療対象部位の形状と、連続する複数の呼吸位相における治療対象部位を含む領域の3次元のCT画像データ群からなる4次元CT画像データとを記憶部から取得する治療計画取得部と、前記記憶部から取得した4次元CT画像データに対して画像レジストレーションを実行することにより、異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む3次元のCT画像の変形量を算出するCT画像変形量算出部と、前記記憶部から取得した基準呼吸位相における治療対象部位の形状と、前記CT画像変形量算出部により算出した異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む3次元CT画像の変形量とに基づいて、各呼吸位相における治療対象部位の形状を算出する形状算出部と、前記形状算出部により算出した各呼吸位相における治療対象部位の形状に基づいて、治療ビームの照射領域を決定する照射領域決定部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
第8の発明は、第7の発明に係る放射線治療用照射領域決定装置を備えた放射線治療装置である。
【発明の効果】
【0018】
第1、第2、第3、第6の発明によれば、ターゲットトラッキングを実行するときのパラメータを、容易かつ高精度に設定することが可能となる。
【0019】
第4の発明によれば、パラメータとしての呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数およびテンプレートマッチングに使用する閾値と、位置算出部により算出した各呼吸位相における治療対象部位の位置とテンプレートマッチング部により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置との誤差値との関係を、グラフィック表示により容易に認識することが可能となる。
【0020】
第5、第7、第8の発明によれば、画像レジストレーションを利用することにより、患者の体動に伴う治療対象部位の位置や形状を容易に特定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る放射線治療装置の概要図であり、
図2は、その主要な制御系を示すブロック図である。なお、この放射線治療装置を構成する放射線照射部35やX線撮影部36は、それぞれが独立した装置であり、個々に制御部を備えているが、
図2においては、放射線治療装置全体の機能的構成をブロック図で示している。また、
図2における放射線治療装置のうち、記憶部30、放射線照射部35、CT撮影装置37および治療計画装置38等を除外した構成は、この発明に係る放射線治療用動体追跡装置または放射線治療用照射領域決定装置を構成する。
【0023】
この放射線治療装置は、患者57を載置するための治療台27を備える。この治療台27は、6軸方向に移動および回転可能となっている。また、この放射線治療装置は、各々、X線や電子線等の放射線を射出する水平照射ポート21および垂直照射ポート22を備えた放射線照射部35を備える。また、この放射線治療装置は、一対のX線管25、26と、これらのX線管25、26から照射され患者57を通過したX線を測定するための一対のX線検出器23、24とを備えたX線撮影部36を備える。なお、X線検出器23、24としては、例えば、イメージインテンシファイア(I.I.)やフラットパネルディテクタ(FPD)が使用される。
【0024】
さらに、この放射線治療装置は、患者57をCT撮影するCT撮影装置37と、患者57に対する治療計画を作成する治療計画装置38と、院内システム等とネットワークを介して接続され患者57についての各種のデータを記憶する記憶部30と、キーボードやマウスからなる入力部33と、液晶表示パネル等からなる表示部34とを備える。そして、この放射線治療装置全体は、制御部10により制御される。
【0025】
水平照射ポート21および垂直照射ポート22は、検査室内に固定されている。そして、X線検出器24は、X線管26と患者57を介して対向する水平照射ポート21の前面の撮影位置と、水平照射ポート21から離隔した退避位置との間を移動可能となっており、X線検出器23は、X線管25と患者57を介して対向する垂直照射ポート22の前面の撮影位置と、垂直照射ポート22から離隔した退避位置との間を移動可能となっている。
【0026】
CT撮影装置37は、放射線治療を行うに先だって、患者57の3次元CT撮影を行って、患者57の患部を含むCT画像を得るためのものである。CT撮影装置37で撮影されたCT画像は、治療計画装置38に送られ、治療計画装置38においては、記憶部30から読み出した患者データとCT撮影装置37により撮影した3次元のCT画像とに基づいて治療計画が作成される。なお、患者57の3次元CT撮影は、少なくとも患者57の呼吸の1周期間において実行される。そして、連続する複数の呼吸位相における治療対象部位を含む領域の3次元のCT画像データ群からなる4次元CT画像データは、基準呼吸位相における治療対象部位の形状とともに、治療計画の一部として、記憶部30における治療計画記憶部31に記憶される。
【0027】
また、治療計画時には、患者57に対してX線撮影部36によるX線画像の取得(X線撮影又はX線透視が採用され得るが、以下ではX線透視として説明する。)が実行される。この患者57に対するX線透視は、少なくとも患者57の呼吸の1周期間において実行される。そして、連続する複数の呼吸位相における治療対象部位を含む領域の2次元のX線画像データ群からなる3次元X線画像データは、基準呼吸位相における治療対象部位の位置とともに、記憶部30におけるX線画像情報記憶部32に記憶される。
【0028】
上述した制御部10は、異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む3次元のCT画像の変形量を算出するCT画像変形量算出部11と、各呼吸位相における治療対象部位の形状を算出する形状算出部12と、治療ビームの照射領域を決定する照射領域決定部13と、異なる呼吸位相間での治療対象部位を含む2次元のX線画像の変形量を算出するX線画像変形量算出部14と、各呼吸位相における治療対象部位の位置を算出する位置算出部15と、テンプレートマッチングにより各呼吸位相における治療対象部位の位置を特定するテンプレートマッチング部16と、位置算出部15により算出した各呼吸位相における治療対象部位の位置とテンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置とを比較してそれらの誤差値を特定する比較部17と、誤差値に基づいてパラメータを補正する補正部18と、誤差値を異なる色で表現した2次元カラーマップを表示部34にグラフィック表示させる画像処理部19とを備える。
【0029】
また、制御部10は、治療計画記憶部31から4次元CTデータや基準呼吸位相における治療対象部位の形状を取得する治療計画取得部41と、X線画像情報記憶部32から3次元X線画像データや基準呼吸位相における治療対象部位の位置を取得するX線画像情報取得部42と、放射線照射部35を制御することにより治療ビームとしての放射線を照射させる放射線照射制御部43とを備える。
【0030】
次に、上述した放射線治療装置により放射線治療を行う放射線治療工程について説明する。まず、放射線治療の基本的な工程について説明する。
図3は、放射線治療の基本的な工程を示すフローチャートである。
【0031】
放射線治療を行う場合には、患者57が入室した後(ステップS1)、患者57の位置決めを行う(ステップS2)。患者57が治療に適した位置に位置決めされれば、ターゲットトラッキングの準備を行う(ステップS3)。しかる後、放射線照射部35が放射線照射制御部43からの指令を受け、治療ビームとしての放射線を照射する(ステップS4)。そして、必要な治療が終了すれば、患者57が退室する(ステップS5)。
【0032】
次に、上述したターゲットトラッキング準備工程(ステップS3)について説明する。
図4は、ターゲットトラッキング準備工程を示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、治療対象部位が患者57の腫瘍である場合について説明する。
【0033】
ターゲットトラッキングの準備を行う場合には、最初に、治療ビームの照射領域を設定する。このときには、制御部10における治療計画取得部41が、記憶部30における治療計画記憶部31から、治療計画情報を取得する(ステップS31)。この治療計画情報は、RT−DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)に記録されている。そして、この治療計画情報から、治療を行うべき腫瘍の形状と、4次元CT画像データを取得する。ここで、4次元CT画像データは、連続する複数の呼吸位相における腫瘍を含む領域の3次元のCT画像データ群からなるデータである。
【0034】
また、このとき、腫瘍を含む臓器形状のデータをあわせて取得するとともに、基準呼吸位相のCTデータ上に腫瘍形状等を重畳表示し、オペレータがこれを確認するようにしてもよい。
【0035】
次に、CT画像変形量算出部11が、治療計画記憶部31から取得した4次元CT画像データに対して画像レジストレーションを実行することにより、異なる呼吸位相間での腫瘍を含む3次元のCT画像の変形量を算出する(ステップS32)。より具体的には、各呼吸位相におけるCT画像データに対して、非線形レジストレーションを実行することにより、各呼吸位相間のCT画像データの変形量(3D−Vector)を算出する。
【0036】
次に、形状算出部12が、記憶部30における治療計画記憶部31に記憶した基準呼吸位相における腫瘍の形状と、CT画像変形量算出部11により算出した異なる呼吸位相間での腫瘍を含む3次元CT画像の変形量とに基づいて、各呼吸位相における腫瘍の形状を算出する(ステップS33)。
【0037】
そして、各呼吸位相における3次元CT画像上に算出された腫瘍の形状を重畳表示して、オペレータが各呼吸位相毎の形状を確認し、必要に応じその修正を行う(ステップS34)。
【0038】
しかる後、照射領域決定部13が、各呼吸位相における治療対象部位の形状ならびに呼吸性移動に伴うマージンを加えた領域を作成し、放射線照射部35による治療ビームの呼吸に同期した照射領域を決定する(ステップS35)。後述するテンプレートマッチングを利用した治療ビームの照射は、この照射領域内において実行される。
【0039】
図5は、呼吸に同期した照射領域を示す説明図である。
【0040】
各呼吸位相における腫瘍の形状は、先に算出されている。各呼吸位相の腫瘍の位置102のうち、治療ビームを照射すべき領域であるゲーティングウインドウ(Gating Window)100に対して呼吸性移動に伴うマージン領域101を加えた領域を、呼吸に同期した照射領域として決定する。
【0041】
次に、ターゲットトラッキングに利用するテンプレートを作成するためのパラメータの最適化を行って、テンプレートを作成する。このときには、制御部10におけるX線画像情報取得部42が、記憶部30におけるX線画像情報記憶部32から、X線画像情報を取得する(ステップS36)。そして、このX線画像情報から、治療を行うべき腫瘍の位置と、3次元X線画像データを取得する。ここで、3次元X線画像データは、連続する複数の呼吸位相における腫瘍を含む領域の2次元のX線画像データ群からなるデータである。
【0042】
次に、X線画像変形量算出部14が、X線画像情報記憶部32から取得した3次元X線画像データに対して画像レジストレーションを実行することにより、異なる呼吸位相間での腫瘍を含む2次元のX線画像の変形量を算出する(ステップS37)。より具体的には、各呼吸位相におけるX線画像データに対して、非線形レジストレーションを実行することにより、各呼吸位相間のX線画像データの変形量(2D−Vector)を算出する。
【0043】
次に、位置算出部15が、X線画像情報記憶部32に記憶された基準呼吸位相における腫瘍の位置と、X線画像変形量算出部14により算出した異なる呼吸位相間での腫瘍を含む2次元X線画像の変形量とに基づいて、各呼吸位相における腫瘍の位置を算出する(ステップS38)。
【0044】
次に、テンプレートマッチング部16が、テンプレートマッチングのためのパラメータの初期値を設定する(ステップS39)。このパラメータとしては、この実施形態においては、呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数と、テンプレートマッチングに使用する閾値が採用される。
【0045】
すなわち、第1のパラメータとしては、患者57の呼吸の1周期の間に、何枚のテンプレートを作成するかというパラメータが採用される。このテンプレートとしては、マーカートラッキングを行う場合には、金属製のマーカーを含む画像が利用され、マーカーレストラッキングを行う場合には、マーカーの代わりに使用される特定部位(腫瘍)を含む画像が利用される。ターゲットトラッキングは、作成された複数枚のテンプレートを利用してテンプレートマッチングを行うことにより実行される。
【0046】
また、第2のパラメータとしては、テンプレートマッチングに使用する閾値が採用される。この閾値は、テンプレートマッチングを行ったときに、テンプレートとマーカーあるいは特定部位であるターゲットとの一致の程度がどの程度であったときにそれをターゲットとして認識するかという、テンプレートマッチングで使用される信頼度を指す。
【0047】
そして、テンプレートマッチング部16は、設定されたパラメータの下、治療対象部位である腫瘍を含む領域のX線画像を取得(特に限定されないが、本例ではX線透視)することによりトラッキングを実行するときのテンプレートを作成するとともに、腫瘍を含む領域を連続する複数の呼吸位相にわたってX線画像を取得(特に限定されないが、本例ではX線透視)し(ステップS40)、連続して取得されたX線画像に対して作成されたテンプレートを利用してテンプレートマッチングを実行することにより、各呼吸位相における治療対象部位の位置を特定する(ステップS41)。
【0048】
図6は、このテンプレートマッチング動作を示す説明図である。
図6においては、テンプレートマッチングに使用する画像を符号Mで示している。なお、腫瘍等の特定部位を利用したマーカーレストラッキングを行う場合には、画像Mとして腫瘍等の特定部位の画像が使用される。また、マーカーを使用したマーカートラッキングを行う場合には、画像Mとして金属製のマーカーの画像が使用される。
【0049】
画像Mを含むテンプレートを作成する場合においては、患者57の画像を連続して透視することにより、画像Mを含む画像80a、80b、80c・・・80nを取得する。このときには、患者57における1呼吸分以上の期間、例えば、30fps(Frames
Per Second)程度のフレームレートで透視を行うことにより、画像Mを含む画像80a、80b、80c・・・80nを得る。そして、これらの画像Mを含む画像80a、80b、80c・・・80nから、画像M部分を抽出して、テンプレート画像81a、81b、81c・・・81nを得る。このときには、患者57の呼吸に伴って、画像Mの領域が移動中の画像が取得される。このため、取得された画像Mは、
図6に示すように、順次、変形することになる。
【0050】
このときの1呼吸分の期間に作成するテンプレート画像81a、81b、81c・・・81nの数は、上述したパラメータのうちの一つとなる。
【0051】
次に、30fps程度のフレームレートで画像Mを含む領域に対して透視を行う。そして、一定時間毎に取得される画像82における画像Mが含まれる領域83対して、複数のテンプレート画像81a、81b、81c・・・81nを利用してテンプレートマッチングを行う。すなわち、一定時間毎に取得される画像82における画像Mが含まれる領域83対して、複数のテンプレート画像81a、81b、81c・・・81nの全てを順次マッチングさせる。
【0052】
そして、複数のテンプレート画像81a、81b、81c・・・81nのうちのいずれかが、予め設定したマッチングのための閾値を越えた場合に、マッチングが成功したと判断する。なお、複数のテンプレート画像81a、81b、81c・・・81nのうち、いくつかのテンプレート画像が閾値を越えた場合には、それらのうちの最もマッチング度が高いテンプレート画像を、マッチングしたテンプレート画像と認識する。
【0053】
このときのテンプレートマッチングに使用する閾値は、上述したパラメータのうちの一つとなる。
【0054】
再度
図4を参照して、比較部17により、位置算出部15により算出した各呼吸位相における腫瘍の位置と、テンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置とを比較し誤差値を算出する(ステップS42)。予め設定した全てのパラメータの組み合わせ条件が完了するまで(ステップS43)、補正部18が上述した二つのパラメータを変更した後(ステップS44)、ステップS41〜ステップS43を繰り返す。すなわち、パラメータとしての呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数と、テンプレートマッチングに使用する閾値とを変更してテンプレートを作成し、このテンプレートを利用して、先に透視により連続して取得されたX線画像に対してテンプレートマッチングを実行する動作を、パラメータを変更して複数回繰り返すことにより、各パラメータ毎の誤差値を算出する。
【0055】
一方、位置算出部15により算出した各呼吸位相における腫瘍の位置と、テンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置との誤差値算出が全てのパラメータの組み合わせ条件で完了すれば(ステップS43)、画像処理部19が、誤差値を異なる色で表現した2次元カラーマップを表示部34にグラフィック表示させる(ステップS45)。
【0056】
図7および
図8は、表示部34にグラフィック表示された2次元カラーマップの模式図である。なお、
図7および
図8は、互いに直交する方向(
図1におけるX線検出器23による検出方向とX線検出器24による検出方向に相当する方向)の2次元カラーマップを示している。
【0057】
これら図においては、色の違いをハッチングにより模式的に表現している。なお、これらの図において縦軸は、患者57の呼吸の1周期の間に作成するテンプレート数を示し、横軸は、テンプレートマッチングに使用する閾値を示している。また、これらの図におけるカラーバンドBにおいては、上に行くほど誤差が大きな領域を示している。また、これらの図において、2次元カラーマップに示された互いの直交する直線は、その交点部分が最も誤差の小さい領域であることを示している。この2本の直線は、比較部17による演算結果に基づいて表示される。なお、この2本の直線を、オペレータが指定するようにしてもよい。
【0058】
このような2次元カラーマップを表示部34にグラフィック表示することにより、パラメータとしての呼吸の1周期間に取得するテンプレートの数およびテンプレートマッチングに使用する閾値と、位置算出部15により算出した各呼吸位相における治療対象部位の位置とテンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置との誤差値との関係を、容易に認識することが可能となる。
【0059】
以上の工程により、治療ビームの照射領域の設定と、パラメータの最適化およびテンプレートの作成を含むターゲットトラッキング準備工程(ステップS3)が終了する。上述した治療ビームの照射(ステップS4)は、このターゲットトラッキング準備工程で得られた治療ビームの照射領域および最適化されたパラメータに基づくテンプレートを利用して実行される。
【0060】
なお、上記の実施例に限定されず、以下の通り変形することも可能である。すなわち、位置算出部15により算出した各呼吸位相における腫瘍の位置と、テンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置との誤差値が許容範囲となるまで、補正部18が上述した2つのパラメータを変更した後、S41〜S43を繰り返す。位置算出部15により算出した各呼吸位相における腫瘍の位置と、テンプレートマッチング部16により特定した各呼吸位相における治療対象部位の位置との誤差値が許容範囲内になれば、当該パラメータに自動的に決定する。