特許第6351037号(P6351037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西ペイント株式会社の特許一覧

特許6351037透明性基材用水性遮熱塗料、透明性基材の遮熱処理方法及び遮熱処理された透明性基材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351037
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】透明性基材用水性遮熱塗料、透明性基材の遮熱処理方法及び遮熱処理された透明性基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/02 20060101AFI20180625BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20180625BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20180625BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20180625BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C09D133/02
   C09D183/10
   C09D5/02
   C09D7/61
   C09D7/20
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 301C
   B05D7/24 303B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-217568(P2014-217568)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-84411(P2016-84411A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真
(72)【発明者】
【氏名】増田 豊
(72)【発明者】
【氏名】杉島 正見
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057539(JP,A)
【文献】 特開2011−001423(JP,A)
【文献】 特開平07−070445(JP,A)
【文献】 特開2010−018767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
C03C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂(A)、平均粒子径が5〜400nmの微粒子状金属酸化物(B)、アルコール化合物(C)及び水を含む水系の組成物であって、
水性樹脂(A)が酸基を有し、固形分あたりの酸価が3〜100mgKOH/gの範囲内であって、固形分濃度が40%、温度が23℃の時のpHが6.0
〜10.0の範囲内にあるものであり、
水性樹脂(A)固形分100質量部を基準として、微粒子状金属酸化物(B)の含有量が10〜300質量部の範囲内、アルコール化合物(C)の量が、0.5〜250質量部の範囲内にあることを特徴とする透明性基材用水性遮熱塗料。
【請求項2】
水性樹脂(A)が、(メタ)アクリロイル基含有化合物を構成単位とするアクリル系樹脂であって、加水分解性シリル基及びポリシロキサン骨格を有している請求項1に記載の水性遮熱塗料。
【請求項3】
微粒子状金属酸化物(B)が、アンチモン系化合物である請求項1または2記載の水性遮熱塗料。
【請求項4】
架橋剤成分(II)として、水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有する化合物(D)をさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性遮熱塗料。
【請求項5】
化合物(D)が、エポキシ基とアルコキシシリル基を共に有する化合物である請求項4に記載の水性遮熱塗料。
【請求項6】
透明性基材表面に請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性遮熱塗料を塗布することを特徴とする遮熱処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の処理方法により得られる遮熱処理された透明性基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスなどの透明性基材に塗装するのに適する水性遮熱塗料、透明性基材の遮熱処理方法、及び遮熱処理された透明性基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や熱を反射・吸収して建物内部や路面の温度上昇を抑え、冷房などの設備に要するエネルギーを低減させ、そして地球温暖化を抑制する方策として遮熱塗料が注目されている。
【0003】
従来、遮熱塗料は赤外線反射・散乱の性能が高い白色系顔料が使用され、淡彩色とすることが多い建築物外壁等に適用されてきた。(例えば、特許文献1参照。)
一方、屋根などに対しては黒色などの濃い色のニーズがあるが、一般に黒色系顔料は赤外線反射・散乱の性能が低いとされている。これに関しても複数の着色顔料を組み合わせたり、特定の黒色系金属酸化物を用いることによって顧客のニーズに合う濃い色の塗膜を形成する遮熱塗料も開発されている。(例えば特許文献2参照。)
このように従来の遮熱塗料は、淡彩色或いは濃色のいずれにおいても隠蔽性の高い着色顔料を用いて設計されてきた。
【0004】
しかしながら建築物の内部温度上昇を抑制するには壁や屋根だけでなく、窓ガラスにも対策が必要であり、また、近年、壁全体がガラスでできたガラス壁の建築物も建立されてきていることから、ガラスなどの透明性を有する基材に遮熱性能を付与することが求められている。
【0005】
ガラスに塗装可能な遮熱塗料として特許文献3には、赤外線遮蔽剤、バインダ成分及び多価アルコールを含む組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3記載の組成物をノズル口径が特定範囲の塗装機を用いて塗液の塗出圧を特定範囲に調整することによって、どのような作業環境下でも1回塗りで均質で透明な赤外線遮蔽性塗膜を簡便に形成できるものである。
【0007】
しかしながら特許文献3記載の組成物は有機溶剤系であり、臭気及び塗装段階で有機溶剤が大気中に放散されるという問題がある。
【0008】
こうした問題に対し、特許文献4にはポリカーボネートポリウレタン樹脂エマルジョン樹脂を主成分とする紫外線・近赤外線遮断水性塗料が開示されている。
【0009】
特許文献4記載の組成物は作業環境や安全衛生に配慮がされ、窓ガラスに塗布するだけで迅速且つ簡便に、優れた紫外線・近赤外線遮断効果のある塗膜を形成することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献4記載の組成物は水系の組成物であるゆえに塗膜の耐水性不良に起因する耐候性や耐久性が不十分である。
【0011】
このように、遮熱性を有し、溶剤系塗料並みの仕上がり外観、特に透明性に優れ、且つ、耐候性、耐久性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することができる水系の塗料組成物及びそれを用いた遮熱処理方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−147571号公報
【特許文献2】特開2009−286862号公報
【特許文献3】特開2006−334530号公報
【特許文献4】特開2013−87228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、遮熱性を有し、透明感があって耐候性にも優れた塗膜を形成するのに適する透明性基材用水性遮熱塗料、透明性基材の遮熱処理方法及び遮熱処理された透明性基材を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記した課題について鋭意検討した結果、平均粒子径が特定範囲の微粒子状金属酸化物、pHが特定範囲である水性樹脂及び特定量のアルコール化合物の組み合わせによって、遮熱性、透明感、耐候性の全てを両立する塗膜が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
即ち本発明は、
水性樹脂(A)、平均粒子径が5〜400nmの微粒子状金属酸化物(B)、アルコール化合物(C)及び水を含む水系の組成物であって、
水性樹脂(A)が酸基を有し、固形分あたりの酸価が3〜100mgKOH/gの範囲内であって、固形分濃度が40%、温度が23℃の時のpHが6.0〜10.0の範囲内にあるものであり、
水性樹脂(A)固形分100質量部を基準として、微粒子状金属酸化物(B)の含有量が10〜300質量部の範囲内、アルコール化合物(C)の量が、0.5〜250質量部の範囲内にあることを特徴とする透明性基材用水性遮熱塗料、透明性基材表面に該水性遮熱塗料を塗布することを特徴とする遮熱処理方法、該処理方法により得られる遮熱処理された透明性基材、に関する。

【発明の効果】
【0016】
本発明の透明性基材用水性遮熱塗料によれば遮熱顔料が均質に分散されると共に緻密な塗膜が得られるので、透明感のある遮熱性塗膜を形成することができ、水性の組成物でありながら耐水性や耐候性などの塗膜物性に優れている。
【0017】
また、本発明の遮熱塗料による膜は基材に対する密着性と耐候性が極めて優れているので、窓ガラス外面に対しても適用可能であり、窓やガラス壁の室内側及び屋外側の両方面から施工することができ、建物の内部温度上昇をより一層抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の水性遮熱塗料は、主剤成分(I)と架橋剤成分(II)からなる多成分系の組成物であり、主剤成分(I)は水性樹脂(A)、遮熱顔料(B)及びアルコール化合物(C)及び水を含む。
【0019】
<水性樹脂(A)>
本発明における水性樹脂(A)は、水中に溶解又は分散可能な樹脂であり、その樹脂種としては、塗膜形成能を有するものであれば特に制限なく従来公知のものを使用でき、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッソ系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、又はグラフト重合されたものであってもよく、或いは分散粒子の形態であってもよい。
【0020】
水性樹脂(A)は、分散粒子の形態である場合には、単層構造(均質な粒状)又はコア・シェル構造等の多層構造を有することができ、コア・シェル構造の場合、コア及び/又はシェルは架橋されていてもよい。
【0021】
本発明において上記水性樹脂(A)は酸基を有していることが必須であり、固形分当たりの酸価としては3〜100mgKOH/gの範囲内、好ましくは4.5〜60mgKOH/gの範囲内にあるのがよい。
【0022】
水性樹脂(A)の固形分当たりの酸価がこの範囲外では塗膜の耐水性が劣ることがある。
【0023】
水性樹脂(A)に酸価を与える酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、中でもカルボキシル基が好適である。
【0024】
また、これら酸基は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類;アンモニア等の塩基で部分的に又は実質的に完全に中和されたものであってもよい。
【0025】
また、本発明において、水性樹脂(A)のpHは6.0〜10.0の範囲内にあることを特徴とするものであり、7.0〜9.0の範囲内にあることが適している。
【0026】
水性樹脂(A)のpHが6.0未満では水性樹脂(A)の水への溶解性が低くなり、均一な混合状態を保てない状態となり、一方10.0を超えると遮熱顔料が塗料系中にて凝集、場合によっては沈降するなど、塗料貯蔵安定性が低下するから好ましくない。
【0027】
本明細書において水性樹脂(A)のpHは、試料の固形分濃度が40%となるように水で希釈し、温度が23℃の条件で、pHメーターで測定した値とする。
【0028】
水性樹脂(A)としては、(メタ)アクリロイル基含有化合物を構成単位とするアクリル系樹脂であって、加水分解性シリル基及びポリシロキサン骨格を有していることが塗膜の基材に対する密着性と耐候性、耐久性の観点から適している。
【0029】
水性樹脂(A)は、例えば、加水分解性シリル基含有オルガノシランを加水分解縮合して得られる、ケイ素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサンと、加水分解性シリル基および酸基を併有する(メタ)アクリロイル基含有化合物共重合体とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で部分中和ないし完全に中和して得られる樹脂を水に分散または溶解して得ることができる。
【0030】
ここにおいて、加水分解性シリル基とは、たとえば、アルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、イソプロペニルオキシ基、アシロキシ基またはイミノオキシなどが結合した珪素原子を含む原子団であって、容易に加水分解されて、シラノール基を生成するものを指称するが、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルコキシシリル基、フェノキシシリル基、ハロシリル基、イソプロペニルオキシシリル基、アシロキシシリル基またはイミノオキシシリル基などである。
【0031】
加水分解性シリル基含有オルガノシラン化合物としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等のジアルコキシジオルガノシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシモノオルガノシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
(メタ)アクリロイル基含有化合物として、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状のアルキル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリロイルモノマー;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノ基含有(メタ)アクリロイルモノマー;(メタ)アクリルアミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリロイルモノマー;(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリロイルモノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリロイルモノマー;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;ポリシロキサン基含有重合性不飽和モノマー;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有(メタ)アクリロイルモノマー等が挙げられる。
【0033】
1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えばアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
これら(メタ)アクリロイル基含有化合物はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、(メタ)アクリロイル基含有化合物に共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを用いてもよい。かかるモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;アリルアルコール;マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等)、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル等のフルオロビニルエーテル;上記エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、公知の手法にて行うことができる。
【0037】
水性樹脂(A)は、通常10〜1000nm、好ましくは30〜600nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0038】
本明細書において、水性樹脂(A)の平均粒子径は、コールターカウンターN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて常温(20℃程度)で測定される値である。
【0039】
<微粒子状金属酸化物(B)>
本発明の遮熱性水性塗料は、平均粒子径が5〜400nm、好ましくは10〜150nmの微粒子状金属酸化物を含有する。
【0040】
成分(B)の平均粒子径が上記範囲内にあることによって上記水性樹脂(A)と共に透明感のある遮熱塗膜が得られる。
【0041】
成分(B)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察で測定した20個の粒子径の平均値をいう。
【0042】
成分(B)の好ましい例示としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物を主成分とする粒子を挙げることができ、具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、酸化セリウム等の粒子を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、遮熱性と透明性の観点からアンチモン系化合物、スズ系化合物、インジウム系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、特にアンチモン系化合物が好ましい。
【0043】
上記微粒子状金属酸化物(B)は水や有機溶剤に分散されたものであってもよく、その分散液にはアミンや界面活性剤を含むものであってもよい。
【0044】
微粒子状金属酸化物(B)の市販品の例としては例えば、「IPA−ST」、「MEK−ST」、「NBA−ST」、「XBA−ST」、「DMAC−ST」、「ST−UP」、「ST−OUP」、「ST−20」、「ST−40」、「ST−C」、「ST−N」、「ST−O」、「ST−50」、「ST−OL」、「アルミナゾル−100」、「アルミナゾル−200」、「アルミナゾル−520」「セルナックス」(以上全て商品名、日産化学工業社製);「アエロジル130」、「アエロジル300」、「アエロジル380」、「アエロジルTT600」、「アエロジルOX50」(以上全て商品名、日本アエロジル社製)、「シールデックスH31」、「シールデックスH32」、「シールデックスH51」、「シールデックスH52」、「シールデックスH121」、「シールデックスH122」(以上全て商品名、旭硝子(株)製)、「E220A」、「E220」、(以上全て商品名、日本シリカ工業製)、「SYLYSIA470」(商品名、富士シリシア社製)、「SGフレ−ク」(商品名、日本板硝子社製)等、「AS−150I」、「AS−150T」、「HXU−110JC」(以上全て商品名、住友大阪セメント社製)、「ナノテック」(商品名、シーアイ化成社製)、「SN−100D」(石原産業社製)、「ATOシリーズ」、「ITOシリーズ」(以上全て商品名、三菱マテリアル社製)、「ニードラール」(商品名、多木化学社製)等を挙げることができる。
【0045】
<アルコール化合物(C)>
本発明の水性遮熱塗料はアルコール化合物(C)を含むことにより、微粒子状金属酸化物(B)粒子の水中での安定性が向上し、また、水性遮熱塗料の塗装時に塗布物がヌレ広がりやすくなる効果がある。
【0046】
かかるアルコール化合物(C)としては、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれでもよく、具体的にはメチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、べンジルアルコール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物と、少なくとも1個の水酸基、カルボキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、又はチオール基を有する化合物との反応により得られる、2級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0047】
本発明の水性遮熱塗料は上記水性樹脂(A)、微粒子状金属酸化物(B)、アルコール化合物(C)及び水を含んでなり、水性樹脂(A)固形分100質量部を基準として、微粒子状金属酸化物(B)固形分が10〜300質量部、好ましくは20〜200質量部の範囲内にあり、水性樹脂(A)固形分100質量部を基準として、アルコール化合物(C)が0.5〜250質量部、好ましくは1〜150質量部の範囲内にあることが適している。
【0048】
ここで微粒子状金属酸化物(B)の含有量が10質量部より少ないと遮熱性が不十分であり、一方、300質量部を越えると、塗膜の透明性が悪く、また、耐水白化性が悪くなり、好ましくない。アルコール化合物(C)の含有量が0.5部よりも少ないと、水性遮熱塗料が透明性基材にヌレにくくなり、一方250部を超えると水性遮熱塗料を貯蔵した際に、微粒子状金属酸化物(B)が凝集し、透明な膜が得られなくなるので好ましくない。
【0049】
また、水性遮熱塗料の造膜性、遮熱性の観点からは水性遮熱塗料全質量に対して水性樹脂(A)固形分が1〜60質量%、好ましくは3〜40質量%の範囲内にあることが適している。
【0050】
<架橋剤成分(II)>
本発明水性遮熱塗料は、水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有する化合物(D)を架橋剤成分(II)として含むことができる。
【0051】
かかる化合物(D)としては例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシシリル基などの基と反応し、架橋構造を形成する化合物であることができる。
【0052】
具体的には一分子中にイソシアナト基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種の基を複数有する化合物が挙げられる。
【0053】
本発明において、水性樹脂(A)は酸基を有するので、該化合物としては酸基と反応可能な官能基を含む化合物であることが好ましく、さらに、水性樹脂(A)が加水分解性シリル基を有する場合は化合物(D)がエポキシ基とアルコキシシリル基を共に有する化合物であることが、水性樹脂(A)との相溶性、透明性基材に対する密着性並びに塗膜耐水性の点から望ましい。
【0054】
該エポキシ基とアルコキシシリル基を共に有する化合物としては、例えば、これらの両種の反応性基を併有するビニル系重合体や、エポキシ基を有するシランカップリング剤、あるいは該両種の反応性基を併有するシリコーン樹脂などが、特に代表的なものである。
【0055】
また、前記したエポキシ基含有シランカップリング剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロぺニルオキシシランもしくはγ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシランの如き、各種のエポキシシラン化合物;γ−イソシアネ−トプロピルトリイソプロぺニルオキシシランもしくはγ−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシランの如き、各種のイソシアネートシラン化合物と、グリシド−ルとの付加物;またはγ−アミノプロピルトリメトキシシランの如き、各種のアミノシラン化合物と、ジエポキシ化合物との付加物;あるいは前掲したような各種のエポキシシラン化合物を部分加水分解縮合せしめて得られる、一分子中に2個以上のエポキシ基と加水分解性シリル基とを併有する化合物などが挙げられる。
【0056】
かかる化合物(D)の使用量としては、水性樹脂(A)に含まれる官能基1当量に対し、該官能基と反応可能な化合物(D)中に含まれる官能基が0.3〜2当量となるような割合とすることがよい。
【0057】
本発明において、上記架橋剤成分(II)は1種類の架橋剤であってもよいし、2種類以上の架橋剤の組み合わせであってもよく、その添加方法は特に限定されない。
【0058】
本発明の水性遮熱塗料は水性樹脂(A)を含む主剤成分(I)と架橋剤成分(II)の2液型とする塗料形態とし、使用直前に両者を混合するものであることができる。
【0059】
上記水性遮熱塗料は、消泡剤、表面調整剤、造膜助剤、硬化触媒、分散剤、防腐剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、有機溶剤、水性樹脂(A)以外の改質用樹脂等を目的に応じて主剤成分(I)及び/又は架橋剤成分(II)に含ませることができる。
【0060】
これらのうち消泡剤としては、例えば「サーフィノール104」、「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール104A」、「サーフィノール104BC」、「サーフィノール104DPM」、「サーフィノール104PA」、「サーフィノール104PG−50」、「サーフィノール104S」、「サーフィノール420」、「サーフィノールDF−110D」、「サーフィノール82」(以上全て商品名、エアプロダクツケミカル社製)、「BYK−011」、「BYK−012」、「BYK015」、「BYK−017」、「BYK−018」、「BYK−019」、「BYK−020」、「BYK−021」、「BYK−022」、「BYK−023」、「BYK−024」、「BYK−025」、「BYK−028」、「BYK−038」、「BYK−044」、「BYK−080A」、「BYK−094」、「BYK−1610」、「BYK−1615」、「BYK−1650」、「BYK−1710」、「BYK−1730」、「BYK−1770」(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、「TEGO FOAMEX800」、「TEGO FOAMEX825」、「TEGO FOAMEX855」、「TEGO FOAMEX1495」、「TEGO FOAMEX8030」(以上全て商品名、エボニック・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0061】
表面調整剤としては、例えば、「ポリフローKL−100」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」等(以上全て商品名、共栄社製)、「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−320」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−349」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−3441」「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、「TEGO Flow−425」、「TEGO Glide−100」、「TEGO Glide−110」、「TEGO Glide−410」、「TEGO Glide−440」、「TEGO Glide−450」、「TEGO Glide−ZG400」、「TEGO Wet−240」、「TEGO Wet−KL245」、「TEGO Wet−250」、「TEGO Wet−260」、「TEGO Wet−270」、「TEGO Wet−280」(以上全て商品名、エボニック・ジャパン社製)が挙げられる。
【0062】
<水性遮熱塗料を用いた透明性基材の遮熱処理方法>
本発明においては上記水性遮熱塗料を透明性基材表面に塗装することにより、透明性基材に遮熱性を付与することができる。
【0063】
本発明の水性遮熱塗料の性能を最大限に発揮できる基材としては透明性を有するものであればあればよく、或いは透明性を有する範囲で着色されたものであってもよい。このような透明性基材の具体例としては、例えば、ガラス板、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなるプラスチック板やプラスチックシート等が挙げられ、剛性や大きさの程度、形状は特に限定されず、また、すでに遮熱加工がされたものであっても差し支えない。
【0064】
本発明の水性遮熱塗料は、それ自体既知の塗装手段を用いて塗装を行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーター等と塗装法から基材の種類、用途等に応じて適宜選択して使用することができる。また、本発明の水性塗料組成物は、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねることもできる。
【0065】
形成塗膜の乾燥は、常温乾燥で行うことができるが、使用した塗料組成物の組成や塗装環境等に応じて、加熱乾燥又は強制乾燥してもよい。
【0066】
乾燥膜厚は適用基材や塗装環境によって適宜調整できるが一般に0.2〜80μm、好ましくは0.5〜50μmがよい。
【0067】
本発明の水性遮熱塗料は、基材に対する密着性と耐候性に極めて優れているので、このものを例えば建築物や車両などにあるような窓や壁面の室内側は勿論、室外側面に対して塗装することも可能である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、実施例記載の水性樹脂のpHは明細書記載の方法で測定したものである。
【0069】
<水性遮熱塗料の製造>
実施例1
下記材料を攪拌機を用いて15分間混合することにより主剤および硬化剤を得た。そして、塗装直前に主剤と硬化剤とを、主剤/硬化剤質量比=30/1でよく混合し、水性遮熱塗料(A−1)を得た。
【0070】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0071】
(注1)「セラネートWSA−1050」:商品名、DIC株式会社製、加水分解性シリル基含有ポリシロキサンアクリル複合水性樹脂、固形分40%、pH7.5、固形分酸価18mgKOH/g、
(注2)「ATO水分散液T−1」:商品名、三菱マテリアル株式会社製、アンチモンドープ酸化スズの水分散液、固形分30%、平均粒子径30nm、
(注3)「KBM−403」:商品名、信越化学株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
【0072】
実施例2
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料((A−2)を得た。
【0073】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ITO水分散液IR5−DE」(注4) 180部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0074】
(注4)「ITO水分散液IR5−DE」:商品名、エボニックジャパン株式会社製、スズドープ酸化インジウムの水分散液、固形分30%、平均粒子径40nm。
【0075】
実施例3
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料((A−3)を得た。
【0076】
<主剤配合>
「ポリデュレックスH−7100」(注5) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
なし。
【0077】
(注5)「ポリデュレックスH−7100」:商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、加水分解性シリル基含有ポリシロキサンアクリル複合水性樹脂、pH=8.4、固形分42%、固形分酸価16.0mgKOH/g。
【0078】
実施例4
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料((A−4)を得た。
【0079】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液SNS−100S」(注6) 240部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0080】
(注6)「ATO水分散液SNS−100S」:商品名、石原産業株式会社製、アンチモンドープ酸化スズの水分散液、固形分18%、平均粒子径45nm。
【0081】
実施例5
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料((A−5)を得た。
【0082】
<主剤配合>
「WD−551」(注7) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」 180部
イソプロピルアルコール 120部
<硬化剤配合>
「バーノックDNW−6000」(注8) 5部。
【0083】
(注7)「WD−551」:商品名、DIC株式会社製、水性アクリルポリール樹脂、固形分42%、pH7.5、固形分酸価12mgKOH/g、
(注8)「バーノックDNW−6000」:商品名、DIC株式会社製、水分散性ポリイソシアネート。
【0084】
比較例1
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料(A−6)を得た。
【0085】
<主剤配合>
「ボンコートCE−6400」(注9) 70部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
なし。
【0086】
(注9)「ボンコートCE−6400」:商品名、DIC株式会社製水性樹脂、固形分60%、pH=3.5、固形分酸価5mgKOH/g。
【0087】
比較例2
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料((A−7)を得た。
【0088】
<主剤配合>
「ボンコート520S−EF」(注10) 210部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
なし。
【0089】
(注10)「ボンコート520S−EF」:商品名、DIC株式会社製水性樹脂、固形分18%、pH11.0、固形分酸価16mgKOH/g。
【0090】
比較例3
実施例1において、「ATO水分散液T−1」(注2)180部に替えて、固形分が30%、平均粒子径が430nmのアンチモンドープ酸化スズの分散液を180部使用する以外は実施例1と同様にして水性遮熱塗料(A−8)を得た。
【0091】
比較例4
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料(A−9)を得た。
【0092】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 10部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0093】
比較例5
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料(A−10)を得た。
【0094】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 450部
イソプロピルアルコール 15部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0095】
比較例6
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料(A−11)を得た。
【0096】
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 0部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 0部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 0.1部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0097】
比較例7
実施例1において、配合組成を下記とする以外は実施例1と同様にして、水性遮熱塗料(A−12)を得た。
<主剤配合>
「セラネートWSA−1050」(注1) 100部
テキサノール 5部
「ATO水分散液T−1」(注2) 180部
イソプロピルアルコール 120部
<硬化剤配合>
イソプロピルアルコール 5部
「KBM−403」(注3) 5部。
【0098】
【表1】
【0099】
<性能評価>
上記実施例及び比較例で得られた水性遮熱塗料の塗料性状および塗膜性能の評価項目、評価手法、評価基準は下記のとおりである。また、参考例として下記溶剤希釈型窓用遮熱塗料(B−1)〜(B−2)についても同様の評価を行った。
【0100】
溶剤希釈型窓用遮熱塗料(B−1):石原産業株式会社製商品名「ST−IR21」
溶剤希釈型窓用遮熱塗料(B−2):フミン工業社製商品名「フミンコート」。
【0101】
1.塗料状態
主剤硬化剤混合後直後の各塗料が均一で粗大なゲル化物等がなく、塗装に適した粘度にあることを目視およびスパチラで攪拌し、確認した。
○/異常なし、△/やや粘度高い、×/塗液の一部が分離し不均一な状態。
【0102】
2.貯蔵安定性
各塗料の主剤を70ccガラス瓶に封入し40℃1ヶ月貯蔵した後の塗料状態を目視およびスパチラで攪拌し、確認した。
○/異常なし、△/やや粘度高い、×/塗液の一部が分離し不均一な状態または著しく凝固。
【0103】
3.造膜性
各塗料を短毛ローラーブラシを用いてガラスに塗布した時の造膜性を下記基準にて評価した。
○/ガラス板基材に均一に塗ることができ、塗膜表層の平滑性も保たれる状態であり、異常なし、△/はじき気味の凹みなどが観察できる状態、×/ガラスへの濡れが悪く、完全にはじいている状態。
【0104】
4.透明性
各塗料をガラス板にローラーブラシを用いて塗装し、23℃14日間養生したものを試験板とする。各試験体を分光光度計(島津製作所製SolidSpec−3700)を用いて測定し、JIS−A−5602に示される方法で算出した可視光透過率および塗膜の白濁の有無を評価基準とした。
○/可視光透過率が80%以上かつ白濁なし、△/可視光透過率が75%以上且つ80%未満、またはわずかに白濁、×/明らかに白濁、且つ可視光透過率が75%未満。
【0105】
5.耐水白化性
各塗料をガラス板にローラーブラシを用いて塗装し、23℃14日間養生した試料を試験体とした。80℃の熱水に各試験体を没し3時間経過後に引き上げ、すぐに表面の水分を除去し、表面を観察し、塗膜の状態を確認した。
○/塗膜異常なし、△/白化が若干認められるが、フクレ等はなし、×/白化が顕著であり、剥離も認められる。
【0106】
6.基材密着性
各塗料をガラス板にローラーブラシを用いて塗装し、23℃14日間養生した試料を試験体とした。80℃の熱水に各試験体を没し3時間経過後に引き上げ、すぐに表面の水分を除去し、ついで2mm幅のクロスカットをカッターナイフを用いていれ(10マス×10マス)、粘着テープによるはく離試験を実施した。表中には剥離したマス数を記載した。数値が小さいほど良好である。
【0107】
7.遮熱性
各塗料をガラス板にローラーブラシを用いて塗装し、23℃14日間養生した試料を試験体とした。分光光度計(島津製作所製SolidSpec−3700)を用いて測定し、JIS−A−5602に示される方法で算出した赤外光透過率の値を遮熱性の評価結果とした。ガラス板ブランクの赤外線透過率は92%、既存製品であるフミンコート(フミン工業)の赤外線透過率は69%である。
【0108】
8.耐候性
各塗料をガラス板にローラーブラシを用いて塗装し、23℃14日間養生した試料を試験体とした。各試験体を促進耐候性試験機キセノンウェザーメーター(スガ試験機製)により促進劣化させ、2000時間の時点での、塗膜状態を目視評価した。
○/ほとんど変化なし、△/光沢劣化が認められる、×/光沢劣化・ひび割れ・白化が著しい。