(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機物を含有する脱水汚泥を加圧下で加熱した後に減圧することで破砕し、この破砕処理後の脱水汚泥を、伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥する汚泥乾燥方法であって、
前記破砕処理後で前記伝熱管を通す前の脱水汚泥に対しガス体を注入し、前記伝熱管で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させることを特徴とする汚泥乾燥方法。
脱水汚泥を加熱する加熱器と、この加熱器によって加熱される脱水汚泥の圧力を制御する制御弁と、この制御弁を通して開放される脱水汚泥を受け入れるフラッシュタンクと、このフラッシュタンクからの脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される伝熱管を有する乾燥機とを備え、前記加熱器および前記制御弁によって加圧下で加熱された脱水汚泥を、前記制御弁を通して前記フラッシュタンク内に開放することで減圧して破砕し、この破砕処理後の脱水汚泥を、前記伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥するようにした汚泥乾燥装置であって、
前記フラッシュタンクから送り出されて前記伝熱管に至る前の脱水汚泥に対しガス体を注入するガス体注入器を設け、前記伝熱管で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させるようにしたことを特徴とする汚泥乾燥装置。
前記フラッシュタンクから送り出されて前記伝熱管に至る前の脱水汚泥と、この脱水汚泥に注入された前記ガス体とを混合する混合器を設け、該脱水汚泥中に前記ガス体を分散させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の汚泥乾燥装置。
前記伝熱管内にスタティックミキサーを組み込み、該スタティックミキサーによる脱水汚泥への分割・転換・反転の作用により、前記伝熱管内を流れる脱水汚泥を撹拌するようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載の汚泥乾燥装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、脱水汚泥を効率良く乾燥することができるとともに、脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を低く抑えることができ、これよって化石燃料の使用量を大幅に削減することができる汚泥乾燥方法、汚泥減容化方法、汚泥乾燥装置および汚泥減容化システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、第1発明による汚泥乾燥方法は、
有機物を含有する脱水汚泥を加圧下で加熱した後に減圧することで破砕し、この破砕処理後の脱水汚泥を、伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥する
汚泥乾燥方法であって、
前記破砕処理後で前記伝熱管を通す前の脱水汚泥に対しガス体を注入し、前記伝熱管で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させることを特徴とするものである。
【0016】
また、第
2発明による汚泥乾燥方法は、第
1発明の汚泥乾燥方法において、前記破砕処理後で前記伝熱管を通す前の脱水汚泥と、この脱水汚泥に注入された前記ガス体とを混合して、該脱水汚泥中に前記ガス体を分散させることを特徴とするものである。
【0017】
また、第
3発明による汚泥乾燥方法は、第1発明
または第2発明に係る汚泥乾燥方法において、前記伝熱管内を流れる脱水汚泥を撹拌することを特徴とするものである。
【0018】
次に、第
4発明による汚泥減容化方法は、
第1発明〜第
3発明のいずれかの発明に係る汚泥乾燥方法により得られた乾燥汚泥を燃焼させて燃焼残渣灰分とすることで減容化するようにした汚泥減容化方法であって、
前記乾燥汚泥の燃焼に伴い発生する燃焼排ガスとの熱交換で前記加熱媒体を加熱し、この加熱された加熱媒体により、前記伝熱管を介して脱水汚泥を間接加熱するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
次に、第
5発明による汚泥乾燥装置は、
脱水汚泥を加熱する加熱器と、この加熱器によって加熱される脱水汚泥の圧力を制御する制御弁と、この制御弁を通して開放される脱水汚泥を受け入れるフラッシュタンクと、このフラッシュタンクからの脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される伝熱管を有する乾燥機とを備え、前記加熱器および前記制御弁によって加圧下で加熱された脱水汚泥を、前記制御弁を通して前記フラッシュタンク内に開放することで減圧して破砕し、この破砕処理後の脱水汚泥を、前記伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥するようにした
汚泥乾燥装置であって、
前記フラッシュタンクから送り出されて前記伝熱管に至る前の脱水汚泥に対しガス体を注入するガス体注入器を設け、前記伝熱管で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させるようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
また、第
6発明による汚泥乾燥装置は、第
5発明の汚泥乾燥装置において、前記フラッシュタンクから送り出されて前記伝熱管に至る前の脱水汚泥と、この脱水汚泥に注入された前記ガス体とを混合する混合器を設け、該脱水汚泥中に前記ガス体を分散させるようにしたことを特徴とするものである。
【0022】
また、第
7発明による汚泥乾燥装置は、第
5発明
または第6発明に係る汚泥乾燥装置において、前記伝熱管内にスタティックミキサーを組み込み、該スタティックミキサーによる脱水汚泥への分割・転換・反転の作用により、前記伝熱管内を流れる脱水汚泥を撹拌するようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
次に、第
8発明による汚泥減容化システムは、
第
5発明〜第
7発明のいずれかの発明に係る汚泥乾燥装置により得られた乾燥汚泥を燃焼する燃焼装置を備え、この燃焼装置で前記乾燥汚泥を燃焼させて燃焼残渣灰分とすることで減容化するようにした汚泥減容化システムであって、
前記乾燥汚泥の燃焼に伴い発生する燃焼排ガスとの熱交換で前記加熱媒体を加熱する排ガスボイラーを備え、この排ガスボイラーによって加熱された前記加熱媒体により、前記伝熱管を介して脱水汚泥を間接加熱するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
第1発明の汚泥乾燥方法および第
5発明の汚泥乾燥装置によれば、有機物を含有する脱水汚泥を加圧下で加熱した後に減圧して破砕することで微生物の生体内細胞水を暴露し、この生体内細胞水が暴露された状態の脱水汚泥を乾燥するようにされているので、脱水汚泥を効率良く乾燥することができる。
また、生体内細胞水が暴露された状態の脱水汚泥を、伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥するようにされているので、生体内細胞水が暴露されずに細胞壁・細胞膜内に内包されたままの状態の脱水汚泥を、加熱空間を形成するケーシング内でパドル翼やディスク翼により撹拌しながら脱水汚泥を乾燥するようにした従来技術のものよりも、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数を大きくすることができ、結果的に乾燥機を小さくすることが可能となり、脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を低く抑えることができる。
したがって、パドル翼やディスク翼により撹拌しながら脱水汚泥を乾燥するようにした従来技術では過大な熱量損失を補うために必要とされていた化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
【0025】
さらに、破砕処理後で伝熱管を通す前の脱水汚泥に対しガス体を注入し、伝熱管で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させるようにされているので、伝熱管を流れる脱水汚泥をばらけた状態とすることができ、伝熱管内の脱水汚泥に対する伝熱効果を飛躍的に向上させることができるとともに、乾燥処理が施された脱水汚泥を伝熱管から下流側へとスムーズに送り出すことができる。
【0026】
第
2発明の汚泥乾燥方法および第
6発明の汚泥乾燥装置によれば、破砕処理後で伝熱管を通す前の脱水汚泥と、この脱水汚泥に注入されたガス体とを混合して、脱水汚泥中にガス体を分散させるようにされているので、脱水汚泥中にガス体が均一に含まれることになり、伝熱管での間接加熱によるガス体の膨張で伝熱管を流れる脱水汚泥をより細かく均一にばらけさせることができる。
【0027】
第
3発明の汚泥乾燥方法および第
7発明の汚泥乾燥装置によれば、伝熱管内を流れる脱水汚泥を撹拌するようにされているので、伝熱管内を流れる脱水汚泥をより均一に加熱することができ、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数をより大きくすることができる。
【0028】
第
4発明の汚泥減容化方法および第
8発明の汚泥減容化システムによれば、脱水汚泥の減容化に際して脱水汚泥の燃焼処理の前段にて実施される脱水汚泥の乾燥工程において、有機物を含有する脱水汚泥を加圧下で加熱した後に減圧して破砕することで微生物の生体内細胞水を暴露し、この生体内細胞水が暴露された状態の脱水汚泥を、伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥するようにされているので、脱水汚泥を効率良く乾燥することができるとともに、脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を低く抑えることができ、これによって化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
また、こうして得られた乾燥汚泥を燃焼させるに伴い発生する燃焼排ガスと、脱水汚泥の間接加熱に供される加熱媒体との熱交換によって該加熱媒体を加熱するようにされているので、化石燃料の使用量を更に削減することができる。
なお、脱水汚泥の乾燥に必要な乾燥熱量や脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を含む全工程の消費熱量が、乾燥汚泥を燃焼させて得られる総発生熱量以下の範囲内であるならば、化石燃料を全く使用することなく、熱エネルギーを循環させて、継続的に脱水汚泥の乾燥、燃焼、減容化を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明による汚泥乾燥方法、汚泥減容化方法、汚泥乾燥装置および汚泥減容化システムの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
<汚泥減容化システムの概略説明>
図1に示される汚泥減容化システム1は、有機物を含有する所定含水率以下の脱水汚泥を減容化処理するに際して、この脱水汚泥を効率的に乾燥して汚泥の発熱量を高めた後に、この乾燥汚泥を燃料として燃焼させ、このときの燃焼熱と、例えば蒸気(水蒸気)や熱媒油等の高温熱媒体(以下、「加熱媒体」という。)との間の熱交換によって高温の加熱媒体を発生させ、発生した高温の加熱媒体を脱水汚泥の乾燥に再使用し、乾燥汚泥の燃焼後に残る残渣灰分を脱水汚泥の最終減容化物とするものである。
なお、加熱媒体としては、蒸気であっても熱媒油等の熱媒体であってもよいが、後述する加熱装置9や乾燥機15において、熱交換部の温度差を大きくとることができ、設計圧力を低くすることができるので、熱媒油等の熱媒体の使用が好ましい。
【0032】
ここで、本実施形態の汚泥減容化システム1の処理対象である脱水汚泥は、見かけはぱさぱさで水分が少ないように見受けられるが、75%〜85%程度の水分が含まれている。脱水汚泥の構成内訳は、(a)微生物間の間隙水および表面付着水(以下、「間隙・付着水」という。)が25%〜30%、(b)微生物の細胞壁・細胞膜内に内包された細胞水(以下、「生体内細胞水」という。)が50%〜55%、(c)微生物細胞固形成分(蛋白質成分等々、以下、「細胞固形分」という。)が20%程度である。脱水汚泥を効率良く乾燥するには、汚泥中の微生物細胞壁・細胞膜を効率良く破壊して生体内細胞水を可及的速やかに暴露することが重要である。
そして、脱水汚泥中の含有水分を一定含有量以下にまで乾燥すると、乾燥汚泥は自燃することが可能になり、石炭の50%〜70%の発熱量を有するものとなる。
【0033】
図1に示される汚泥減容化システム1において、脱水汚泥は、該脱水汚泥に圧力をかけて次工程に送出する汚泥送出ポンプ3により、汚泥送出配管5を介して汚泥乾燥装置7へと送られる。
【0034】
ここで、汚泥送出ポンプ3としては、汚泥のような性状の物質を摩耗することなく移送が可能であり、1.0〜2.0MPa程度の送出圧力を確保することができるポンプであればどのような形式のものでもよいが、例えばモーノポンプの使用が好ましい。
また、汚泥送出配管5には、最大2.0MPa程度の圧力がかかるので、汚泥送出配管5として金属管の使用が望ましい。この汚泥送出配管5の構造としては、単管でもよいが、ジャケットを有する二重管方式にして、内管内を通して脱水汚泥を下流側へと送りながら内管と外管との間に加熱媒体を流通させるようにするのが好ましい。こうして、内管内を流れる脱水汚泥を蒸気等の加熱媒体により間接加熱することで脱水汚泥の粘度を下げることができ、その結果、汚泥輸送時の圧力損失が下がり、汚泥送出ポンプ3の運転動力が小さくなり、省電力化を図ることができる。なお、内管と外管との間に流す加熱媒体として、蒸気等に代えて、後述する燃焼装置35から空気予熱器39を経て送られる低温排ガスを用いることによっても同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
<汚泥乾燥装置の説明>
汚泥乾燥装置7は、主に、加熱器9、圧力制御装置11、フラッシュタンク13および乾燥機15により構成されている。
【0036】
<加熱器の説明>
加熱器9は、汚泥送出ポンプ3から汚泥送出配管5を介して送り込まれる脱水汚泥を加熱媒体により間接的に加熱するものである。
加熱器9としては、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数が大きく、装置の外形寸法が小さく、放熱等による熱量損失が最大限小さくなるような構造のものが好ましく、例えば多管式熱交換器を用いて脱水汚泥を間接加熱するものが好適である。
ここで、多管式熱交換器は、加熱媒体を導入する加熱媒体導入口および加熱媒体を導出する加熱媒体導出口をそれぞれ有して加熱空間を形成するケーシング9aを備え、このケーシング9aの内部に、脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される多数の伝熱管よりなる熱交換部9bが組み込まれて構成されるものである。
【0037】
なお、上記の多管式熱交換器を用いる方式のものに代えて、二重管式熱交換器を用いる方式のものを採用してもよい。
図示による詳細な説明は省略するが、二重管式熱交換器は、加熱媒体を導入する加熱媒体導入口および加熱媒体を導出する加熱媒体導出口をそれぞれ有して加熱空間を形成する外管を備え、この外管の内部に、脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される伝熱管としての役目をする内管が組み込まれてなるものである。
【0038】
加熱器9において、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数をより大きくするために、熱交換部9bにおける伝熱管の内部、および二重管式熱交換器における内管の内部に、それぞれスタティックミキサーを組み込むようにするのが好ましい。
ここで、スタティックミキサーは、駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)であって脱水汚泥をエレメントにより撹拌・混合する役目をする。エレメントは、長方形状の板を180°捻じったような形で、捻れの方向により、右捻りエレメントと、左捻りエレメントとがあり、これらのエレメントを管軸方向に交互に数珠繋ぎに連結したものを、伝熱管または内管の内部に組み込むことにより、脱水汚泥に対する分割・転換・反転の作用によって脱水汚泥を効果的に撹拌・混合し、伝熱時の総括伝熱係数を高め、効率的な熱交換に寄与することになる。
【0039】
加熱器9においては、放熱等による熱量損失を最大限に抑えつつ、加熱媒体による脱水汚泥の間接加熱により、脱水汚泥の温度を170℃、好ましくは200℃にまで顕熱昇温させ、脱水汚泥中の微生物の細胞壁・細胞膜の破壊操作を集中的に行うようにされている。
【0040】
<圧力制御装置の説明>
加熱器9とフラッシュタンク13とは、汚泥送出配管17によって接続されており、加熱器9から送り出された脱水汚泥が汚泥送出配管17を介してフラッシュタンク13内に導入されるようになっている。
汚泥送出配管17には、加熱器9から送り出される脱水汚泥の圧力等を制御する圧力制御装置11が付設されている。
この圧力制御装置11は、汚泥送出配管17を流れる脱水汚泥の圧力および温度をそれぞれ計測する圧力計および温度計を含む計測器11aと、汚泥送出配管17の途中に介設される制御弁(背圧弁)11bと、制御弁11bの弁動作を制御する制御器11cとを備えて構成され、計測器11aの計測値に基づいて制御器11cが制御弁11bの弁動作を制御することにより、脱水汚泥の圧力および温度を所定値で一定となるようにするとともに、制御弁11bを通して一定流量の脱水汚泥を大気圧もしくは真空状態に置かれたフラッシュタンク13内に噴出・フラッシュさせることができるようになっている。
【0041】
脱水汚泥が加熱器9によって例えば170℃以上にまで顕熱昇温された場合には、汚泥中の間隙・付着水と同時に微生物の生体内細胞水の温度も170℃以上に達することになり、従って、汚泥圧力だけでなく生体内細胞水の圧力も水の飽和蒸気圧(170℃であれば0.792MPa(abs))となり加圧状態となる。
圧力制御装置11中における制御弁11bを通して高温・高圧の脱水汚泥を瞬間的に大気圧もしくは真空下に放出すれば、微生物の生体内細胞水の圧力と、大気圧もしくは真空との過大な圧力差により、微生物の細胞壁・細胞膜が爆発的に瞬間破砕され、生体内細胞水が効率良く暴露される。
【0042】
<フラッシュタンクの説明>
フラッシュタンク13は、制御弁11bを通して開放・噴出する高温・高圧の脱水汚泥を受け入れる受槽タンクであり、材質的には炭素鋼であっても、ステンレス鋼であってもよいが、腐食等を考慮すればステンレス鋼が好ましい。
フラッシュタンク13においては、制御弁11bを通して該タンク内に噴出された高温・高圧の脱水汚泥を、汚泥固形分(破砕処理後の脱水汚泥)とフラッシュ水蒸気とに分離する処理が行われる。すなわち、制御弁11bを通して高温・高圧の脱水汚泥を大気圧もしくは真空下のフラッシュタンク13内に噴出すれば、微生物の間隙・付着水、並びに微生物の破砕により暴露した生体内細胞水の一部が保有エンタルピー差の分だけ瞬間的にフラッシュしフラッシュ水蒸気として汚泥固形分と分離して系外に留出する。これにより、汚泥の含有水分率が、フラッシュ水蒸気として留出する水分量に相当する分だけ減少することになる。
因みに、含水率80%の脱水汚泥を170℃に加熱した後、大気圧下のフラッシュタンク13内に噴出させた場合には、水分フラッシュ後の脱水汚泥の含水率は約77%になる。
【0043】
フラッシュタンク13において脱水汚泥をフラッシュさせる条件としては、大気圧以下、更には66500Pa(500Torr)〜93100Pa(700Torr)の範囲であるのが好ましい。フラッシュ圧力(真空度)が低すぎると、瞬間的な水の蒸発によって脱水汚泥中の微生物の細胞固形分が大量に飛沫同伴し、フラッシュ水蒸気の留出系のトラブルに繋がるので好ましくない。
【0044】
フラッシュタンク13における上記分離処理により、脱水汚泥中の臭気成分の大半がフラッシュ水蒸気と同伴留去され、フラッシュタンク13内に残存される破砕処理後の脱水汚泥(汚泥固形分)中の臭気が激減するという効果を奏する。なお、フラッシュタンク13中のフラッシュ水蒸気は、吸引ブロワー14(公知のブロワー、ファン等を使用可能)により、フラッシュタンク13内から引き抜かれる。
【0045】
フラッシュタンク13と乾燥機15との間には、上流側から下流側に向けて順に汚泥送出ポンプ19および混合器21がそれぞれ配設され、これらフラッシュタンク13、汚泥送出ポンプ19、混合器21および乾燥機15の各機器の間が汚泥送出配管23,25,27によって接続されている。そして、汚泥送出ポンプ19の作動により、フラッシュタンク13内における破砕処理後の脱水汚泥が、汚泥送出配管23を介して抜き出され、汚泥送出ポンプ19で昇圧された状態で汚泥送出配管25、混合器21および汚泥送出配管27を介して乾燥機15へと送り込まれるようになっている。
【0046】
ここで、汚泥送出ポンプ19としては、汚泥のような性状の物質を摩耗することなく移送が可能であり、1.0〜2.0MPa程度の送出圧力を確保することができるポンプであればどのような形式のものでもよいが、例えばモーノポンプの使用が好ましい。
【0047】
<ガス体注入器の説明>
フラッシュタンク13と汚泥送出ポンプ19とを接続する汚泥送出配管23には、フラッシュタンク13から抜き出される破砕処理後の脱水汚泥に対し、例えば空気、窒素ガス、炭酸ガス等のガス体を注入するガス体注入器29が付設されている。以下、本例では、ガス体として空気を用いた例を説明するが、これに限定されるものではない。
また、破砕処理後の脱水汚泥に対し注入するものとして、上記のガス体に代えて、例えばアルコール等の揮発性液体を注入することも可能である。
【0048】
このガス体注入器29は、例えばエアコンプレッサ等の圧縮空気発生機を用いて発生させた圧縮空気を貯留するガスタンク29aと、このガスタンク29aからの圧縮空気を汚泥送出配管23へと送り出すエア送出配管29bと、エア送出配管29bを流れる圧縮空気の圧力および流量を計測する圧力計および流量計を含む計測器29cと、エア送出配管29bの途中に介設される制御弁29dと、制御弁29dの弁動作を制御する制御器29eとを備えて構成され、計測器29cの計測値に基づいて制御器29eが制御弁29dの弁動作を制御することにより、所定圧力、所定流量の圧縮空気をエア送出配管29bから例えばエア吹込ノズル(図示省略)を介して、汚泥送出配管23中を流れる破砕処理後の脱水汚泥に対して吹き込むことで空気を注入することができるようになっている。
【0049】
脱水汚泥に注入する空気量は、質量%で言えば、汚泥量の1/100〜1/500であるのが好ましく、より好ましくは1/200〜1/300である。なお、破砕処理後の脱水汚泥に対し空気を多量に注入しすぎると、乾燥機15での汚泥乾燥工程の際に空気が膨張し過ぎて汚泥が十分に乾燥されない恐れがある。
また、脱水汚泥に対する空気の注入位置としては、汚泥送出ポンプ19の上流側(吸込側)と、汚泥送出ポンプ19の下流側(吐出側)とが挙げられるが、汚泥送出ポンプ19の上流側(吸込側)の方が低圧であるので、空気を容易に注入することができ、上記で例示したように、汚泥送出ポンプ19の上流側(吸込側)の汚泥送出配管23内に空気を注入するのが好ましい。
【0050】
<混合器の説明>
上記のガス体注入器29によって空気が注入された破砕処理後の脱水汚泥は、汚泥送出ポンプ19の作動により、汚泥送出配管25を介して混合器21へと送り込まれる。
混合器21は、送り込まれた破砕処理後の脱水汚泥と、この脱水汚泥に注入された空気とを混合して、該脱水汚泥中に空気を均一に分散させる役目をする。
混合器21としては、破砕処理後の脱水汚泥と空気とを密閉容器中で撹拌翼等により混ぜ合わせる密閉型の動的ミキサーも用いることができるが、例えば単管もしくは二重管内に前述したスタティックミキサーを組み込んでなるものが好適に用いられる。なお、内蔵されるスタティックミキサーのエレメントの構成数としては、6以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0051】
<乾燥機の説明>
上記の混合器21によって空気が均一に混合・分散された破砕処理後の脱水汚泥は、汚泥送出配管27を介して乾燥機15へと送り込まれ、乾燥機15は、送り込まれた脱水汚泥を加熱媒体により間接的に加熱して乾燥する。
乾燥機15としては、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数が大きく、装置の外形寸法が小さく、放熱等による熱量損失が最大限小さく、蒸発水分を取り去るためのキャリア空気が不要な構造のものが好ましく、例えば多管式熱交換器を用いて脱水汚泥を間接加熱して乾燥するタイプのものが好適である。
多管式熱交換器タイプのものでは、パドル翼型あるいはディスク翼型のものと比べて乾燥エネルギーを10%〜15%程度低減することができる。
ここで、多管式熱交換器は、加熱媒体を導入する加熱媒体導入口および加熱媒体を導出する加熱媒体導出口をそれぞれ有して加熱空間を形成するケーシング15aを備え、このケーシング15aの内部に、脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される多数の伝熱管よりなる熱交換部15bが組み込まれて構成されるものである。
【0052】
なお、上記の多管式熱交換器を用いる方式の乾燥機15に代えて、二重管式熱交換器を用いる方式のものを採用してもよい。
図示による詳細な説明は省略するが、二重管式熱交換器は、加熱媒体を導入する加熱媒体導入口および加熱媒体を導出する加熱媒体導出口をそれぞれ有して加熱空間を形成する外管を備え、この外管の内部に、脱水汚泥が流通可能で加熱媒体と接触される伝熱管としての役目をする内管が組み込まれてなるものである。
【0053】
乾燥機15において、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数をより大きくするために、熱交換部15bにおける伝熱管の内部(二重管式熱交換器における内管の内部)に、前述したスタティックミキサーを組み込むようにするのが好ましい。
【0054】
多管式熱交換器を用いた乾燥機15は、機械強度および構造上、常圧乾燥、加圧乾燥、真空乾燥のいずれでも容易に選択できる利点を有しており、汚泥を10%以下の低含水率にまで効率良く乾燥することが可能である。
後述する汚泥の燃焼装置35を安定的に運転するためには、乾燥汚泥の含水率が40%以下、好ましくは20%以下であることが重要であり、後述する燃焼装置35の燃料となる乾燥汚泥の低位発熱量としては、具体的には、14700KJ/kg(3500Kcal/kg)以上であることが望ましい。
【0055】
乾燥機15の総括伝熱係数については、熱交換部15bにおける伝熱管の内部(二重管式熱交換器における内管の内部)に、スタティックミキサーを組み込むことにより、従来のパドル翼型もしくはディスク翼型のものに比べて2倍を超える値の総括伝熱係数を得ることができ、結果的に乾燥機15を小型化することが可能となった。
乾燥機15の伝熱面積については、従来のパドル翼型もしくはディスク翼型のものでは、構造上、全伝熱面積の約70%程度しか有効に利用されていないが、多管式熱交換器を用いる方式の乾燥機15の場合は、全伝熱面積の100%を有効に利用することができる。
【0056】
なお、多管式熱交換器を用いる方式の乾燥機15の設置方法は、横型設置のものであっても、縦型設置のものであってもよいが、乾燥機15からの汚泥の取り出し易さを考えれば、縦型設置のものが好ましい。
また、縦型設置の場合、汚泥の流れ方向は、上から下へ、下から上へのいずれでもよいが、汚泥の確実な取り出し、汚泥の水分率コントロール等を考えれば、上から下への方が好ましい。
【0057】
上記の乾燥機15の汚泥吐出口からは、脱水汚泥の乾燥によって得られる乾燥汚泥と、乾燥によって蒸発した水分(少量の注入空気を含む。以下、単に「排気水蒸気」という。)とが同時に吐出され、これらは汚泥分離装置31へと導入される。導入された乾燥汚泥と排気水蒸気とは、汚泥分離装置31での分離作用によって分離される。
汚泥分離装置31としては、例えば、濾布による濾過作用を利用したバグフィルタ方式のものや、遠心力を利用したサイクロン方式のものなどが挙げられる。バグフィルタ方式のもの方がサイクロン方式のものよりも高価であるが、破砕、微細化した乾燥汚泥粉を確実に補足して、次工程での微細乾燥汚泥粉の詰まり等によるトラブルを確実に回避するためには、バグフィルタ方式のものを使用するのが好ましい。
なお、汚泥分離装置31における分離作用によって分離された排気水蒸気は、吸引ブロワー33(公知のブロワー、ファン等を使用可能)により、汚泥分離装置31内から引き抜かれる。
【0058】
<燃焼装置の説明>
上記の汚泥分離装置31での分離工程によって得られた乾燥汚泥は、燃焼装置35へと送られる。
燃焼装置35は、汚泥分離装置31からの乾燥汚泥を燃料として炉内に導入し、導入された乾燥汚泥に対して燃焼用空気を供給し、該乾燥汚泥を完全燃焼させて燃焼残渣灰分とするものである。この燃焼残渣灰分が脱水汚泥の最終減容物となる。
なお、燃焼装置35での燃料として乾燥汚泥を100%使用する場合には、乾燥汚泥が完全なバイオマス燃料であることから、燃焼によって発生するCO
2が環境負荷にカウントされないので、地球環境への悪影響を懸念する必要がない。
また、燃焼用空気は、送風機37によって炉内に供給する前に、燃焼装置35での燃焼に伴い発生する燃焼排ガスとの熱交換により空気予熱器39で予め加熱することで燃焼を安定した状態に維持することができる。
【0059】
燃焼装置35としては、乾燥汚泥の含水率が20〜40%の間であれば、例えば公知のバイオマス燃焼炉やバイオマス焼却炉が適当であり、乾燥汚泥中の含水率が20%よりも少なければ公知のバイオマスボイラー等が費用対効果の点から好適であり、木質チップやRDF(廃棄物固形燃料)等のバイオマス燃料と乾燥汚泥とを混焼する場合には、炉内の循環熱量が大きく、熱量変動に強い流動層型燃焼炉が好ましい。
なお、燃焼装置35として、公知の燃焼炉、焼却炉、ボイラーのいずれを使用する場合でも、燃焼時の炉内温度を高くして(好ましくは900℃以上)、NOx成分を外部に排出しないような機種を選定することが重要である。
【0060】
<排ガスボイラーの説明>
燃焼装置35には、排ガスボイラー41が付設されている。
この排ガスボイラー41は、乾燥汚泥(あるいは乾燥汚泥とバイオマス燃料との混合燃料の場合もある。)の燃焼に伴い発生する燃焼排ガスから熱回収を行うものであって、加熱媒体を導入する加熱媒体導入口および加熱媒体を導出する加熱媒体導出口をそれぞれ有し、加熱媒体導入口から導入された加熱媒体を、燃焼排ガスとの熱交換によって加熱し、加熱された加熱媒体を加熱媒体導出口から導出するように構成されている。
【0061】
<加熱媒体供給流路、加熱媒体還流路の説明>
排ガスボイラー41の加熱媒体導出口は、加熱器9のケーシング9aに設けられた加熱媒体導入口および乾燥機15のケーシング15aに設けられた加熱媒体導入口に、それぞれ所要の配管等により形成される加熱媒体供給流路43によって接続されている。
一方、排ガスボイラー41の加熱媒体導入口は、加熱器9のケーシング9aに設けられた加熱媒体導出口および乾燥機15のケーシング15aに設けられた加熱媒体導出口に、それぞれ所要の配管等により形成される加熱媒体還流路45によって接続されている。
そして、燃焼装置35での燃焼に伴い発生される燃焼排ガスとの熱交換によって排ガスボイラー41で加熱された加熱媒体が加熱媒体供給流路43を介して加熱器9および乾燥機15にそれぞれ供給され、これら加熱器9および乾燥機15のそれぞれにおいて脱水汚泥の間接加熱に供された加熱媒体が加熱媒体還流路45を介して排ガスボイラー41に還流されるようになっている。
【0062】
<加熱媒体流量・熱量制御装置の説明>
加熱媒体供給流路43と加熱媒体還流路45との間には、加熱媒体流量・熱量制御装置47が配設されている。この加熱媒体流量・熱量制御装置47は、燃焼装置35での過剰燃焼により排ガスボイラー41で加熱媒体が超過的に発生したとしても、加熱装置9および乾燥機15に送られる加熱媒体の流量と熱量とが常に一定となるように、超過的に発生した加熱媒体の流量と熱量とを同時に制御する。
【0063】
より具体的には、この加熱媒体流量・熱量制御装置47は、加熱媒体供給流路43から該装置内に導入される加熱媒体の圧力(または熱量)を計測する圧力計(または熱量計)を含む計測器47aと、加熱媒体を冷却する冷却器47bと、冷却器47bでの冷却の後に加熱媒体還流路45へと送り出す加熱媒体の流量を制御する制御弁47cと、冷却器47bの冷却能力や制御弁47cの弁動作を制御する制御器47dとを備えて構成され、加熱媒体供給流路43から抜き出された超過分の加熱媒体を冷却器47bで冷却した後に加熱器9や乾燥機15を通すことなく直接的に加熱媒体還流路45へと送り込む際の加熱媒体の流量と熱量とを精度良く制御することにより、加熱媒体供給流路43を流れる加熱媒体の圧力(加熱媒体が蒸気の場合)または熱量(加熱媒体が熱媒油等の場合)が一定となるようにする。
こうして、燃焼装置35での燃料となる乾燥汚泥の発熱量が上昇する側に変動しても、燃焼装置35の燃焼制御系に直接干渉することなく、燃焼装置35を安定的に運転することができる。
【0064】
なお、冷却器47bの形態としては、加熱媒体が蒸気の場合には、空冷式が、加熱媒体が熱媒油等の液体である場合には、水冷式が好ましい。
また、加熱媒体流量・熱量制御装置47からの加熱媒体を加熱媒体還流路45に送り込む際には、公知のポンプ装置からなる返送ポンプ49が使用される。
【0065】
ところで、燃焼装置35で燃焼される乾燥汚泥の発熱量不足が原因で排ガスボイラー41での加熱媒体に対する加熱が不足する場合がある。
そこで、加熱媒体流量・熱量制御装置47からの駆動制御信号により駆動制御され、燃焼装置35に対する乾燥汚泥の供給路にバイオマス燃料を送り込むバイオマス燃料フィーダ51を燃焼装置35に添設する。そして、加熱媒体に対する加熱が不足していることを、加熱媒体の圧力(加熱媒体が蒸気の場合)または熱量(加熱媒体が熱媒油等の場合)の計測値に基づいて加熱媒体流量・熱量制御装置47が検知すると、この加熱媒体流量・熱量制御装置47からバイオマス燃料フィーダ51に対し駆動制御信号を送信するようにする。この駆動制御信号によってバイオマス燃料フィーダ51によるバイオマス燃料の供給量を制御することにより、加熱媒体の圧力(加熱媒体が蒸気の場合)または熱量(加熱媒体が熱媒油等の場合)が一定となるようにする。
こうして、燃焼装置35での燃料となる乾燥汚泥の発熱量が下降する側に変動しても、燃焼制御系に直接干渉することなく、燃焼装置35を安定的に運転することができる。
【0066】
<脱臭装置の説明>
本実施形態において、(a)フラッシュタンク13内から引き抜かれたフラッシュ水蒸気、(b)汚泥分離装置31内から引き抜かれた排気水蒸気、(c)空気予熱器39での燃焼用空気の間接加熱に供された後の低温排ガスおよび(d)汚泥送出配管5での脱水汚泥の間接加熱に供された後の低温排ガスは、それぞれ脱臭装置53に送り込まれる。なお、(a)のフラッシュ水蒸気および(b)の排気水蒸気については、それぞれの蒸気が結露しないように一定量の外気を混入した後に脱臭装置53に送り込むようにするのがよい。
脱臭装置53の形態としては、公知のものを使用することができるが、燃焼式の場合には、低温排ガスを再燃焼させる熱量が追加的に必要になり、好ましくなく、湿式の場合には、脱臭処理に伴う廃水処理の問題が残り、エネルギー的にも、設備費用的にも好ましくない。
したがって、乾式のものが最適であり、例えば活性炭等による吸着式の脱臭装置53が好適に用いられる。
【0067】
<汚泥減容化システムで実施される処理工程の説明>
以上に述べたように構成される汚泥減容化システム1によって実施される処理工程の内容について以下に説明することとする。
【0068】
(脱水汚泥のスラリー化工程)
汚泥減容化システム1においては、汚泥送出ポンプ3により送り出される脱水汚泥を汚泥送出配管5で予熱し、予熱後の脱水汚泥を加熱器9で高温状態に加熱し、汚泥中の微生物細胞壁・細胞膜(蛋白質成分)を熱破壊し、熱破壊された細胞壁・細胞膜から生体内細胞水を外部へと染み出させて粘度の低いスラリー状態とする。
【0069】
(脱水汚泥の破砕工程)
上記スラリー化工程によって高温・高圧のスラリー状態とされた脱水汚泥を、制御弁11bを通して大気圧もしくは真空状態にあるフラッシュタンク13内に瞬時に噴出させることにより、汚泥中の微生物細胞壁・細胞膜を破砕する。
【0070】
(ガス体注入工程、ガス体混合工程)
上記破砕工程によって破砕処理された後の脱水汚泥に対しガス体注入器29を用いてガス体(本例では空気)を注入し、その後、混合器21を用いて脱水汚泥とガス体とを混合し、汚泥中にガス体を均一に分散させる。
【0071】
(脱水汚泥の乾燥工程)
上記ガス体注入・混合工程によって汚泥中にガス体が均一に分散された脱水汚泥を、乾燥機15を用いて乾燥させて含水率が40%以下、好ましくは20%以下の乾燥汚泥を得る。
【0072】
(乾燥汚泥の燃焼工程)
上記乾燥工程によって得られた乾燥汚泥を燃焼装置35での燃料として燃焼させて燃焼残渣灰分とすることで減容化する。
【0073】
<作用効果>
本実施形態の汚泥乾燥装置7によれば、加熱器9、制御弁11bおよびフラッシュタンク13により、脱水汚泥を加圧下で加熱した後に減圧して破砕することで微生物の生体内細胞水を暴露し、この生体内細胞水が暴露された状態の脱水汚泥を乾燥機15で乾燥するようにされているので、脱水汚泥を効率良く乾燥することができる。
また、生体内細胞水が暴露された状態の脱水汚泥を、乾燥機15の熱交換部15bにおける伝熱管を通して下流側へと送る際に加熱媒体によりその伝熱管を介して間接加熱して乾燥するようにされているので、生体内細胞水が暴露されずに細胞壁・細胞膜内に内包されたままの状態の脱水汚泥を、加熱空間を形成するケーシング内でパドル翼やディスク翼により撹拌しながら脱水汚泥を乾燥する従来の乾燥機103よりも、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数を大きくすることができ、結果的に乾燥機15を小さくすることが可能となり、脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を低く抑えることができる。
したがって、パドル翼やディスク翼により撹拌しながら脱水汚泥を乾燥する従来の乾燥機103では過大な熱量損失を補うために必要とされていた化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
【0074】
さらに、本実施形態の汚泥乾燥装置7によれば、以下の(1),(2)のような作用効果を得ることができる。
(1)破砕処理後で乾燥機15の熱交換部15bにおける伝熱管を通す前の脱水汚泥に対しガス体注入器29によってガス体を注入するとともに、混合器21によって脱水汚泥中にガス体を分散させるようにされているので、乾燥機15で脱水汚泥と共にそのガス体を間接加熱して該ガス体を膨張させることにより、伝熱管を流れる脱水汚泥をより細かく均一にばらけた状態とすることができ、伝熱管内の脱水汚泥に対する伝熱効果を飛躍的に向上させることができるとともに、乾燥処理が施された脱水汚泥を伝熱管から下流側へとスムーズに送り出すことができる。
(2)加熱器9および乾燥機15のそれぞれの熱交換部9b,15bにおける伝熱管内にスタティックミキサーを組み込んで伝熱管内を流れる脱水汚泥を撹拌するようにされているので、伝熱管内を流れる脱水汚泥をより均一に加熱することができ、脱水汚泥と加熱媒体との熱交換時の総括伝熱係数をより大きくすることができる。
【0075】
また、本実施形態の汚泥減容化システム1によれば、上記の汚泥乾燥装置7の採用によって化石燃料の使用量を大幅に削減することができるのは勿論のこと、乾燥汚泥を燃焼させるに伴い発生する燃焼排ガスと、脱水汚泥の間接加熱に供される加熱媒体とを排ガスボイラー41による熱交換によって加熱媒体を加熱するようにされているので、化石燃料の使用量を更に削減することができる。
なお、脱水汚泥の乾燥に必要な乾燥熱量や脱水汚泥の乾燥工程での放熱等による熱量損失を含む全工程の消費熱量が、乾燥汚泥を燃焼させて得られる総発生熱量以下の範囲内であるならば、化石燃料を全く使用することなく、熱エネルギーを循環させて、継続的に脱水汚泥の乾燥、燃焼、減容化を行うことができる。
すなわち、有機物を含有する含水率85%以下の脱水汚泥を乾燥して乾燥汚泥となし、この乾燥汚泥のみを燃料として、化石燃料を使うことなく、加熱媒体を加熱して、脱水汚泥の乾燥に再使用し、乾燥汚泥の燃焼後に残る燃焼残渣灰分を脱水汚泥の最終減容化物として、化石燃料の使用を必要としない循環型の脱水汚泥の減容化方法を実現することができる。
【0076】
一般的に、有機物を含有する脱水汚泥中の灰分は35%〜50%と言われている。
言い換えれば、水分80%の脱水汚泥1000kgの残渣灰分量は概略
1000kg×(1−80%)×(35%〜50%)=70kg〜100kg
となり、化石燃料を使用せず、環境負荷を増加させる事なく、7.5%〜10%の重量にまで脱水汚泥が減容化されたことになる。
この汚泥の最終減容化物が廃棄物として埋立処理されるか、もしくは種々の加工を加えて、例えばセメントに混ぜる等々のリサイクル処理をされる。
【0077】
ところで、
図2に示される従来のクローズドループ式の汚泥減容化システム101においては、脱水汚泥の乾燥操作が1台の乾燥機103で同一温度条件下で行われており、乾燥操作の効率が悪く、熱量ロスが大きいという問題があった。
すなわち、脱水汚泥の乾燥には、
(a)まず脱水汚泥の表面に付着している水分を100℃近辺の温度で蒸発除去し、
(b)次いで汚泥を所定の温度にまで顕熱昇温して汚泥の微生物細胞内に存在する水分の圧力を高め、この圧力によって微生物細胞壁・細胞膜の破壊を行い、
(c)次いで破壊によって外部に暴露された水分の蒸発・乾燥を行う、
という3条件の操作が必要となるが、従来のクローズドループ式の汚泥減容化システム101では1台の乾燥機103内で、同一温度条件下で上記の(a)と(b)と(c)の操作を行っているために、これら(a)〜(c)のそれぞれの操作に最適な条件を別個に設定することができず、無駄な熱量ロスが発生している。
【0078】
これに対し本実施形態においては、脱水汚泥の乾燥として、
(A)加熱器9を用いて脱水汚泥の表面に付着している水分を蒸発除去するとともに、微生物細胞壁・細胞膜の破壊を行い(脱水汚泥のスラリー化工程:上記の(a)と(b)の操作)、
(B)次いで高温・高圧のスラリー状態とされた脱水汚泥を、制御弁を通して大気圧もしくは真空状態にあるフラッシュタンク13内に瞬時に噴出させることにより、汚泥中の微生物細胞壁・細胞膜を破砕し(脱水汚泥の破砕工程)、
(C)次いで破砕によって外部に暴露された水分を、乾燥機15を用いて蒸発・乾燥させる(脱水汚泥の乾燥工程)、
という3つの操作を独立に順次に行うようにすることにより、それぞれの操作に最適な運転条件を個別に選択することができ、無駄な熱量ロスを低減することができる。
【0079】
また、従来のクローズドループ式の汚泥減容化システム101において使用されるパドル翼型あるいはディスク翼型の乾燥機103では、蒸発水分を取り去るためのキャリア空気が必要であり、このキャリア空気は加熱された後に放出されるので、放散による熱量ロスが大きいという問題点がある。
そこで、本実施形態においては、乾燥機15として、多管式熱交換器または二重管式熱交換器を用いる方式のものを採用することにより、キャリア空気を不要として、キャリア空気の放散による熱量ロスをなくすようにしている。
【0080】
また、従来のクローズドループ式の汚泥減容化システム101においては、脱水汚泥の発熱量が上下に大きく変動するために、乾燥汚泥だけで燃焼装置35の安定運転を図る事が難しく、燃焼装置35の安定運転化のためには一定量の化石燃料を継続的に補充せざるを得ないという問題点があった。
そこで、本実施形態においては、設定値よりも発熱量の高い乾燥汚泥が燃焼装置35に多く供給される場合には、燃焼排ガスで超過的に加熱される加熱媒体の超過流量と超過熱量を、加熱媒体流量・熱量制御装置47によって制御し、燃焼装置35には乾燥汚泥が持ち込む発熱量に相当する仕事をフルにさせて、燃焼装置35には汚泥発熱量の変動を制御する役目を負わせない。また、消化汚泥等の如くに発熱量の低い乾燥汚泥が多量に、且つ、変動的に燃焼装置35に供給されるような場合には、加熱媒体流量・熱量制御装置47からバイオマス燃料フィーダ51への駆動制御信号により、例えば木質チップやRDF等のバイオマス燃料を燃焼装置35に対する乾燥汚泥の供給路に送り込み、乾燥汚泥と混焼するようにしている。
こうして、脱水汚泥の発熱量の変動を吸収することができ、燃焼装置35の安定運転を図ることができる。
なお、近年は食生活の変化と相まって脱水汚泥の発熱量が以前よりも高くなってきており、脱水汚泥の発熱量が下側に振れることは殆どなくなってきつつある。
【0081】
また、
図2に示される従来のクローズドループ式の汚泥減容化システム101においては、乾燥機103での乾燥工程によって脱水汚泥から蒸発した水蒸気や、空気予熱器108での燃焼用空気の間接加熱に供された後の低温排ガスの脱臭に、燃焼式の脱臭装置109が用いられているため、この燃焼式の脱臭装置109での脱臭処理の際に化石燃料が使用されるという問題点があった。
そこで、本実施形態においては、例えば活性炭等による乾式の脱臭装置53を用いることにより、化石燃料を使用することなく脱臭することができ、脱臭のために使用されていた化石燃料をなくすようにしている。
【0082】
以上、本発明の汚泥乾燥方法、汚泥減容化方法、汚泥乾燥装置および汚泥減容化システムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。