(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のリングオシレータのそれぞれは、対応する前記クロック信号の一周期に対して所定の係数に対応する所定の数のエッジを含む前記第1の発振信号を生成する、請求項2記載のタイムデジタルコンバータ。
前記第1のオシレータ部から出力される前記一対の第1の発振信号に基づいて、該第1の発振信号間の位相差に応じた差動イネーブル信号を出力する位相検出器をさらに備え、
前記第2のオシレータ部は、前記位相検出器から出力される前記差動イネーブル信号に従って、前記第2の発振信号を生成し出力する、
請求項1乃至3のいずれか記載のタイムデジタルコンバータ。
前記ゲーティッドリングオシレータは、前記差動イネーブル信号に従って発振動作を行うための複数段の差動インバータによって構成される、請求項5記載のタイムデジタルコンバータ。
前記ゲーティッドリングオシレータは、前記差動イネーブル信号に従って発振動作を行うための複数段のシングルエンドインバータによって構成される、請求項5記載のタイムデジタルコンバータ。
前記量子化部は、算出された前記量子化値を前記所定の係数で除算して得られるコード値を出力する除算器を含む、請求項3乃至7のいずれか記載のタイムデジタルコンバータ。
前記第1のオシレータ部は、前記一対のリングオシレータからそれぞれ出力される前記一対の第1の発振信号を所定の分周比で分周する第1の分周器を含む、請求項2記載のタイムデジタルコンバータ。
前記第1のオシレータ部は、前記第1の発振信号のエッジ数をカウントし、該カウント値が前記所定の係数に等しい回数になった場合に、対応する前記リングオシレータによる出力を停止させるカウンタ部を含む、請求項3記載のタイムデジタルコンバータ。
【背景技術】
【0002】
近年のLSI製造プロセスの微細化及びそれに伴うLSIチップの低電圧化が進むにつれて、デジタル回路の分野では、チップ面積の縮小化、高速化、及び低消費電力化が大幅に改善される一方で、アナログ回路の分野では、トランジスタの利得の減少や特性ばらつきの増加、リーク電流の増大といった問題により、このような改善は依然として進んでいない。
【0003】
従って、デジタル回路及びアナログ回路の両方を混載した「ミックスドシグナルIC(LSI)」を設計する上では、アナログ回路の使用を極力減らし、また、「アナログ回路のデジタル回路への置き換え」といった考え方が主流となっている。
【0004】
例えば、PLL回路は、クロック生成回路や周波数シンセサイザといった、非常に幅広い用途があるが、ピュアなアナログ回路として構成されるチャージポンプやループフィルタがチップの小面積化を阻む大きな要因となっている。従って、ミックスドシグナルICの小面積化を目指す上で、従来のPLL回路をデジタル回路に置き換えて実現するADPLL(All Digital Phase Locked Loop)回路は、欠かせない技術の一つであると言える。
【0005】
このようなADPLL回路では、デジタルループフィルタ(DLF:Digital Loop Filter)の使用に伴って、典型的には、従来のPLL回路で用いられてきた位相周波数検出器及びチャージポンプはタイムデジタルコンバータ(TDC:Time to Digital Converter)に、また、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)はデジタル制御発振器(DCO:Digitally Controlled Oscillator)にそれぞれ置換される。
【0006】
例えば、フリーランニングオシレータ(FROSC:Free-Running Oscillator)を用いたTDCは、リング構造となったインバータを含んでおり、シングルディレイライン(SDL:Single Delay Line)を用いたTDCに比較して線形性を確保しやすいという利点がある(非特許文献1)。
【0007】
また、高分解能化を実現するため、マルチパスゲーティッドリングオシレータ(MPGRO:Multipath Gated-Ring Oscillator)を用いたTDCが提案されている(非特許文献2)。MPGROは、各遅延セルの入力に、直前の遅延セルの出力及びそれよりもさらに前の出力を用いるためのマルチパスを含んで構成される。また、MPGROを用いることにより、ノイズシェーピングによる実効的分解能を改善することができる。ここでいうノイズシェーピングとは、量子化ノイズを高周波領域に追いやることをいう。従って、ADPLL回路中、ローパスフィルタの特性と組み合わせることで、ループ帯域幅内の位相雑音を除去することができる。
【0008】
また、TDCの高分解能化を実現するため、時間増幅回路(TA:Time Amplifier)をTDCに利用した技術も知られている(非特許文献3)。TAは、入力信号の時間差を増幅して出力する回路である。例えば、TDAがゲインAを有するとして、その出力を、ゲート遅延Tgを有するTDCに入力することで、実効分解能をTg/Aにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ADPLL回路は、現状、TDCの消費電流、分解能、及び線形性といった性能がボトルネックとなって、従来のPLL回路に取って代わるだけの十分な性能を達成していない。
【0011】
具体的には、フリーランニングリングオシレータ−TDC(FROSC−TDC)は、線形性を確保しやすいという利点を有するものの、ゲート遅延が制限となり、高分解能化を期待することができない。
【0012】
マルチパスゲーティッドリングオシレータ−TDC(MPGRO−TDC)は、分解能、線形性及び広帯域という要素で優れた特性を示す一方、消費電流の増大やレイアウトの難しさなどの課題がある。即ち、先端プロセスの使用は、低消費電力化を達成する一助になるものの、マルチパス化によって、GRO内の様々なノードが中間電位の状態を維持することになり、また、配線が複雑に入り組むこととなるため、ノード間カップリングの影響で中間電位にある入力が影響を受け、カウント値を誤動作させてしまう可能性がある。また、マルチパス化により電源―グラウンド間を流れる電流量が増加するため、消費電流の増大につながるという問題がある。
【0013】
また、時間増幅回路(TA)は、TDCの実効的分解能の向上に寄与し得るものの、入力時間差のレンジが狭すぎて、そのままでは実用に耐えないという問題がある。即ち、非特許文献3のTAの構成では、SRラッチが用いられているため、入力時間差が非常に小さいとき(例えば、数十ps程度のレンジ)のみしか増幅することができない。
【0014】
そこで、本発明は、従来のTDCが有する各種の問題に対処しつつ、高分解能、線形性の確保及び広帯域幅の確保を実現した、新たなTDCを提供することを目的とする。
【0015】
より具体的には、本発明は、マルチパス化を回避してレイアウト設計の容易化を図る一方、これに伴うゲート遅延の増大を入力時間差の増幅作用により抑制しつつ、高分解能化を図り、さらに線形性を確保したTDCを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、以下に示すような発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0017】
ある観点に従う本発明は、相互に所定の位相差(時間差)を有する一対のクロック信号に基づいて、該時間差をパルス幅とした第1の発振信号を繰り返し生成し、該繰り返し生成される第1の発振信号に基づいて第2の発振信号を生成し、該第2の発振信号のエッジを検出することで量子化値を算出し、出力するように構成されたタイムデジタルコンバータである。
【0018】
また、ある観点に従う本発明は、相互に所定の位相差を有する一対の所定のクロック信号に基づいて、一対の第1の発振信号を生成し出力する第1のオシレータ部と、前記第1のオシレータ部から出力される前記一対の第1の発振信号に基づいて、所定の周波数を有する第2の発振信号を生成し出力する第2のオシレータ部と、前記第2のオシレータ部から出力される前記第2の発振信号のエッジ数に基づいて量子化値を算出する量子化部と、を備える、タイムデジタルコンバータである。
【0019】
これにより、高分解能、高速、及び線形性に優れ、デジタル設計に適したタイムデジタルコンバータが得られる。
【0020】
また、前記第1のオシレータ部は、一対のリングオシレータを含み、前記一対のリングオシレータは、前記一対の所定のクロック信号に基づいて、前記一対の第1の発振信号を生成し出力するように構成されても良い。
【0021】
さらに、前記一対のリングオシレータのそれぞれは、対応する前記クロック信号の一周期に対して所定の係数に対応する所定の数のエッジを含む前記第1の発振信号を生成するように構成されても良い。
【0022】
また、前記タイムデジタルコンバータは、前記第1のオシレータ部から出力される前記一対の第1の発振信号に基づいて、該第1の発振信号間の位相差に応じた差動イネーブル信号を出力する位相検出器をさらに備えても良い。そして、前記第2のオシレータ部は、前記位相検出器から出力される前記イネーブル信号に従って、前記第2の発振信号を生成し出力するように構成されても良い。
【0023】
また、前記第2のオシレータ部は、前記差動イネーブル信号に従って発振動作を行うゲーティッドリングオシレータであり得る。
【0024】
ここで、前記ゲーティッドリングオシレータは、前記差動イネーブル信号に従って発振動作を行うための複数段の差動インバータによって構成されても良い。
【0025】
或いは、前記ゲーティッドリングオシレータは、前記差動イネーブル信号に従って発振動作を行うための複数段のシングルエンドインバータによって構成されても良い。
【0026】
また、前記量子化部は、算出された前記量子化値を前記所定の係数で除算して得られるコード値を出力する除算器を含むように構成されても良い。
【0027】
また、前記第1のオシレータ部は、前記第1の発振信号のパルス数をカウントし、該カウント値が前記所定の係数に等しい回数になった場合に、対応する前記リングオシレータによる出力を停止させるカウンタ部を含むように構成されても良い。
【0028】
ここで、前記カウンタ部は、前記所定の回数を変更可能に構成されても良い。
【0029】
また、別のある観点に従う本発明は、上記のタイムデジタルコンバータにより構成される複数のタイムデジタルコンバータモジュールと、前記複数のタイムデジタルコンバータモジュールのいずれかによる出力を選択的に切り替えるマルチプレクサと、を備えたタイムデジタルコンバータ構成体であって、前記マルチプレクサは、所定の条件に従って、動作開始から所定の時間経過後又は出力されたコード値のいずれかに基づいて、切り替え制御される、タイムデジタルコンバータ構成体である。
【0030】
さらに、別のある観点に従う本発明は、上記のタイムデジタルコンバータにより構成される第1のタイムデジタルコンバータモジュールと、前記第1のタイムデジタルコンバータモジュールの入力位相差のレンジよりも広い入力位相差のレンジを持つ第2のタイムデジタルコンバータモジュールと、を備え、前記第2のタイムデジタルコンバータモジュールは、入力される一対の所定のクロック信号に基づいて第1の量子化を行い、前記第1のタイムデジタルコンバータモジュールは、前記第1の量子化による量子化誤差に基づいて第2の量子化を行う、タイムデジタルコンバータ構成体である。
【0031】
さらにまた、別のある観点に従う本発明は、上記のタイムデジタルコンバータと、前記タイムデジタルコンバータから出力される信号から高周波雑音成分を除去するデジタルループフィルタと、前記デジタルループフィルタから出力される信号に基づいて制御されるデジタル制御発振器と、を備え、前記デジタル制御発振器から出力される信号を所定の分周比で分周し、該分周した信号をフィードバック信号として前記タイムデジタルコンバータに出力する分周器と、を備える、PLL回路である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、分解能、線形性及び帯域幅の点で優れた新たなタイムデジタルコンバータ(TDC)が提供されるようになる。
【0033】
即ち、本発明によれば、TDCにゲーティッドリングオシレータ(GRO)を用いているので、ノイズシェーピングによる実効的分解能を向上させることができる。また、かかるGROは、マルチパス化されたものを用いなくても良く、従って、レイアウト設計の容易化を図ることができるとともに、線形性を向上させることができるようになる。
【0034】
一方で、マルチパス化されていないGROを用いることにより、ゲート遅延値の増大が避けられないが、本発明によれば、時間差を持つ2つのクロック信号を所定回数だけ繰り返し再生しているので、入力時間差が増幅され、実効的ゲート遅延値を低下させることができるようになる。
【0035】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイムデジタルコンバータ(TDC)の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、タイムデジタルコンバータ(TDC)100は、第1のオシレータ部110、位相検出器120、第2のオシレータ部130、カウンタ140、加算器150、レジスタ160、及び除算器170を含んで構成される。
【0039】
第1のオシレータ部110は、相互に所定の時間差を有する一対の入力信号に基づいて、該時間差を有する一対の発振信号を繰り返し生成し、出力する時間増幅回路(TA)である。本実施形態では、第1のオシレータ部110は、2つのオシレータブロック110A及び110Bからなる。即ち、オシレータブロック110A及び110Bは、それぞれの出力の時間差(位相差)を繰り返し生成するために用いられる。オシレータブロック110A及び110Bの構成は同じであって良く、略同一の周波数を有する信号をそれぞれ出力する。ここで、「略同一の」とは、公称誤差を含む意味で用いている。これらの信号同士は理想的には周波数差がないことを前提としているが、本実施形態によれば、例えば製造ばらつきによる僅かな周波数差があっても実用上問題にはなることはない。
【0040】
オシレータブロック110A及び110Bは、図示のように、例えば、フリップフロップ回路111、リングオシレータ112、分周器113及びカウンタ114を含んで構成される。
【0041】
オシレータブロック110Aのフリップフロップ回路111のデータ入力端子Dには、一定値(例えば“H”)の信号が入力される。従って、フリップフロップ回路111は、第1のクロック信号STARTを受けると、例えばその立ち上がりエッジのタイミングで、その値を保持しながら、データ出力端子Qから出力する。また、オシレータブロック110Bのフリップフロップ回路111も同様に、第2のクロック信号STOPを受けると、その立ち上がりエッジのタイミングで、データ入力端子Dの値を保持しながら、データ出力端子Qから出力する。さらに、フリップフロップ回路111は、後述するカウンタ114からのリセット信号Rを受けると、リセット状態に遷移し、これにより、オシレータブロック110の発振動作が停止することになる。なお、第1のクロック信号START及び第2のクロック信号STOPはそれぞれ、TDC100がADPLL回路の一部に用いられる場合、分周フィードバック信号DIV_CLK及び基準クロック信号REF_CLKに対応付けられる。
【0042】
リングオシレータ112は、典型的には、奇数個の遅延素子(インバータ)をリング状に接続することによって構成された発振回路である。リングオシレータ112は、フリップフロップ回路111からクロック信号(即ち、DIV_CLK又はREF_CLK)が入力されると所定の周波数で発振し、パルス状の発振信号を出力する。発振信号は、分周器113に入力される。
【0043】
分周器113は、TDC100が使用する信号の周波数に適合するように、入力される発振信号の周波数を所定の分周比で分周する回路である。分周された発振信号(即ち、OSC_CLK
A及びOSC_CLK
B)は、位相検出器120に入力される。本実施形態では、例えば、入力される発振信号を8分周することで、周波数を1/8に低下させている。分周器113を設けることにより、リングオシレータ112の段数を減らし、消費電流の増大を防止することができる。なお、分周器113を省略し、リングオシレータ112の発振信号の周波数そのものを下げるようにしても良い。
【0044】
カウンタ114は、分周された発振信号(即ち、OSC_CLK
A及びOSC_CLK
B)のエッジ数をカウントし、カウント値が所定の繰り返し回数に達した場合に、リセット信号Rをフリップフロップ回路111に出力する。本実施形態では、カウンタ114は、カウント値が4に達した時点でリセット信号Rを出力するように構成されている。これによって、オシレータブロック110A及び110Bは、クロック信号としてのDIV_CLK信号及びREF_CLK信号による1回の駆動で、4個のパルスを生成することになる。
【0045】
位相検出器120は、オシレータブロック110A及び110Bからそれぞれ入力される発振信号(即ち、分周された発振信号OSC_CLK
A及びOSC_CLK
B)の位相差を検出し、該位相差に応じたパルス状の差動イネーブル信号ENA_GRO(即ち、ENA及びENA_B)を出力する。位相検出器120は、典型的には、入力される信号の立ち上がりエッジ同士の時間差を比較するが、これに限られるものではない。位相検出器120は、入力される信号の位相差が極僅かしかない場合であっても、一定のイネーブル信号を出力するよう、所定のオフセットが設定されている。位相検出器120から出力される差動イネーブル信号ENA_GROは、第2のオシレータ部130に入力される。
【0046】
第2のオシレータ部130は、ゲーティッドリングオシレータ(GRO)として構成される発振回路である。第2のオシレータ部130は、例えば、差動インバータがリング状に接続され、位相検出器120から入力されるイネーブル信号に従って動作するように構成される。本実施形態では、第2のオシレータ部130は、例えば、7段の差動インバータによって構成され、差動インバータの各ゲート回路は、例えば、MOSトランジスタを用いて構成される(便宜上、図では3個(A乃至C)のみが表示されている)。1個の差動インバータ(即ち、図中、IIで囲まれた部分)は、例えば、
図2Aに示すように構成される。また、
図3Aは、このような差動インバータを用いた第2のオシレータ部の動作を説明するためのタイミングチャートである(図を簡略にするため、3個の差動インバータA乃至Cに対するタイミングチャートを示している。)。各差動インバータの出力信号に対するエッジのカウントは、片エッジカウンタで行われる。
図3Aでは、ENA及びENA_Bのイネーブル期間Tdiffの間にゲーティッドリングオシレータが発振し、例として、信号のLからHへの遷移がカウントされる結果、カウント値出力10が得られる様子が例示されている。本例では、第2のオシレータ部130は、差動インバータを用いて構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、
図2Bに示すようなシングルエンドインバータを用いて構成されても良い。なお、
図3Bは、このようなシングルエンドインバータを3個用いた第2のオシレータ部の動作を説明するためのタイミングチャートである(図を簡略にするため、3個のシングルエンドインバータに対するタイミングチャートを示している。)。シングルエンドインバータの出力信号に対するエッジのカウントは、両エッジカウンタで行われる。
図3Bでは、ENAおよびENA_Bのイネーブル期間T
diffの間にゲーティッドリングオシレータが発振し、LからHへの遷移と、HからLへの遷移の両エッジがカウントされる結果、カウント値出力10が得られる様子が例示されている。
【0047】
ここで、第2のオシレータ部130が
図2Aに示される差動インバータにより構成されるゲーティッドリングオシレータである場合を例に、
図3Aに示される対応するタイミングチャートを参照して、その動作を説明する。
【0048】
第2のオシレータ部130は、差動イネーブル信号ENA及びENA_Bがイネーブル状態の間だけ発振し、これに応じて、カウンタ140は、イネーブルである時間に応じたカウント値を出力する。第2のオシレータ部130は、差動イネーブル信号ENA及びENA_Bのイネーブル状態が終了すると、該終了時点の状態(中間状態)を保持する。次に、差動イネーブル信号ENA及びENA_Bが再びイネーブル状態になると、第2のオシレータ部130は、該中間状態から動作を再開する。この場合、カウンタ140による量子化処理は、いわゆる切り捨て型の量子化を行うため、量子化誤差は、該中間状態として、次回のイネーブル状態に持ち越される。従って、量子化誤差は、常に、前回から持ち越された量子化誤差と、その次の発振動作でもたらされる量子化誤差との差分として現れることになる。量子化誤差の差分は、つまり、量子化誤差の微分であり、これがハイパスフィルタ特性を示す結果、ノイズシェーピング特性が実現される。
【0049】
また、第2のオシレータ部130は、差動イネーブル信号ENA及びENA_Bがイネーブル状態に遷移する毎に、任意の中間状態から発振を開始するため、カウンタ140によるカウントに作用する差動インバータは、任意のものが対象となり、特定の差動インバータに偏ることがない。そのため、各々の差動インバータの遅延に含まれる、製造誤差などに基づく特性の差が統計的に平均される結果、オシレータ特性の線形性が得られる。また、少数の差動インバータがリング構成になることで、積分非直線性誤差(INL誤差)を小さくできることも、高い線形性の確保に寄与する。
【0050】
なお、上記の作用、利点は、第2のオシレータ部130を構成するゲーティッドリングオシレータが、
図2Bで示されるシングルエンドインバータである場合においても、同様に説明される。
【0051】
図1に戻り、即ち、カウンタ140は、各段の差動インバータにより出力される信号に基づいて量子化値を求める量子化回路である。具体的には、カウンタ140は、上述のように、各段の差動インバータが出力する信号の例えば立ち上がりエッジを検出し、カウントする片エッジカウンタである。本実施形態では、カウンタ140は、例えば14個(7×2個)のカウンタ回路より構成されている。カウンタ140から出力される各段のカウント値は、加算器150によって加算され、レジスタ160に保持される。レジスタ160に保持されたカウント値は、図示しないフリップフロップ回路を介して、除算器170に出力される。なお、ここでは、カウンタ140、加算器150、及びレジスタ160をそれぞれの別体として説明したが、例えば、これらの一つの機能ブロック(例えば量子化部)として構成しても良い。なお、第2のオシレータ部130を構成するインバータがシングルエンドタイプのものである場合、カウンタ140は、上述のように、両エッジカウンタとして実現される。
【0052】
除算器170は、レジスタ160から出力されるカウント値を上述した繰り返し回数で除して、その結果をデジタルコード値TDC_OUTとして出力する。即ち、本実施形態では、上述の繰り返し回数は4であるので、除算器は、カウント値を4で除算する。
【0053】
次に、以上のように構成されたTDC100の動作について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るTDCにおける各種信号のタイミングチャートを示す図である。
【0054】
TDC100において、まず、2つのオシレータブロック110A及び110Bは、位相差T
diffを持ったクロック信号DIV_CLK及びREF_CLKを用いて、パルス状の発振信号OSC_CLK
A及びOSC_CLK
Bとして、それぞれ上記繰り返し回数(即ち、本例では4回)に亘って繰り返し生成し、位相検出器120に出力する。
【0055】
位相検出器120は、発振信号OSC_CLK
A及びOSC_CLK
Bの位相差に従って差動イネーブル信号ENA及びENA_Bを生成し、第2のオシレータ部130に出力する。第2のオシレータ部130は、差動イネーブル信号ENA及びENA_Bにより発振し、第2のオシレータ部130が差動インバータで構成される場合は
図3Aに、又は第2のオシレータ部130がシングルエンドインバータで構成される場合は
図3Bに示される動作に従い、カウンタ部140によってカウントされる。カウンタ部140によってカウントされたカウント値は、該繰り返し回数にわたって、レジスタ150に蓄積されていく。そして、図示しないラッチ回路が、4個のイネーブル信号が生成された後、所定のタイミングで動作することにより、レジスタ160に保持されたカウント値が除算器170に出力され、該繰り返し回数、即ち、4で除算された結果が、デジタルコード値TDC_OUTとして出力される。
【0056】
このようなTDC100によれば、2つのオシレータブロック110A及び110Bの発振周波数は同一であるので、その伝達関数は、下記のように示される。
TDC_OUT[z]=T
diff+q
n/4・(1−z
−1) …(式1)
ただし、T
diffは、入力時間差、q
nは、第2のリングオシレータ130内で発生する量子化ノイズである。
【0057】
上記の式から明らかなように、量子化ノイズq
nは、繰り返し回数で除算され1/4となるため、例えば、第2のリングオシレータ130内のゲート遅延値が50[ps]であったとしても、実効的ゲート遅延値は12.5[ps]にまで縮減されることになる。また、式中、係数(1−z
−1)は、上述した微分特性、即ち、ハイパスフィルタ特性を示すものであり、従って、ノイズシェーピング効果が得られることになる。
【0058】
本発明者は、ノイズシェーピングを考慮した場合の実効的分解能に関して、数値計算シミュレーションにより検証した。1つは、本実施形態のTDC100であり、第2のオシレータ部130におけるゲート遅延が50[ps]である。もう1つは、分解能が2[ps]でノイズシェーピング機能のない従来のTDCである。これら2つのTDCの回路特性を、MathWorks社の「MATLAB/SIMULINK」を用いて数値計算シミュレーションを行い、その結果をフーリエ変換することで、特性を検証した。TDCへの入力波形は、
図5に示すような、周波数が200[kHZ]、最大振幅値が200[ps]のsin波形に従った振幅値に対応する位相差T
diffをもつ2つのクロック信号である。また、サンプリング周波数(即ち、REF_CLKの周波数)は、30[MHz]である。
【0059】
図6は、上述した数値計算シミュレーションの結果を示す図である。図中、薄グレーで示されたグラフ線が本実施形態のTDC100による数値シミュレーション結果であり、黒で示されたグラフ線が従来のTDCによる数値シミュレーション結果である。即ち、同図に示すように、本実施形態のTDC100については、量子化ノイズに約20dB/decのノイズシェーピング効果が加わっている。これら2つのTDCを比較すると、約500[kHz]を境に、それ以下の周波数では、本発明の一実施形態に係るTDCの量子化ノイズが、従来のTDCを下回っていることがわかる。従って、例えば、本実施形態のTDC100を用いたADPLL回路のループ帯域幅が500[kHz]以下であれば、本数値計算シミュレーションに用いた従来型TDCの分解能である2[ps]以下の実効的分解能が得られることになる。
【0060】
また、現実問題としては、TDC100が実装されるべきチップにおける「ばらつき」に起因する下記2種類の非理想条件が考慮されるべきである。
(1)位相検出器120におけるオフセット設定及び2個のオシレータブロック110A及び110B間の周期差
(2)第2のオシレータ部130におけるゲート遅延値のばらつき
【0061】
上記(1)に関して、該非理想条件は、
図7に示すタイミングチャート及び下記の伝達関数に示されるように、TDC100の出力結果に影響を及ぼすものと考えられる。
TDC_OUT[z]=T
diff+T
pfd_offset+2.5T
period_offset+q
n/4・(1−z
−1) …(式2)
ただし、T
pfd_offsetは、位相検出器120内で生じるオフセット値、T
period_offsetは2つのオシレータブロック110A及び110B間の周期差である。位相検出器120内で生じるオフセット値T
pfd_offsetは、出力TDC_OUTにそのまま加味されるのに対し、オシレータブロック110A及び110B間の周期差T
period_offsetは、リングオシレータ112の出力毎に現れる。
図7に示されるように、4回の繰り返しの度に、T
period_offset、2T
period_offset、3T
period_offset、4T
period_offsetが重畳され、その全てが量子化に際して積算されるため、積算値には、総じて10T
period_offsetが内包される。積算値は、除算器170において繰り返し回数で除算され1/4になるため、結果として、TDC_OUTには、2.5T
period_offsetが内包される。つまり、デジタルコード値TDC_OUTには、位相検出器120のオフセット値及び10T
period_offset/4の周期差が最終的に加味される。
【0062】
しかしながら、非理想条件(1)がデジタルコード値TDC_OUTに及ぼす効果は、結果として、入力時間差によらず一定値となるため、非理想条件(1)は、TDC100を用いたADPLL回路のロックには影響は与えない。従って、本実施形態のTDC100によれば、オシレータブロック110A及び110Bについての多少のばらつきは考慮する必要がなく、スタンダードセルを使った手動配線が(さらにはP&Rツールによるレイアウト設計も)可能となり、レイアウト設計を容易にすることができるようになる。
【0063】
また、上記(2)に関して、「MATLAB/SIMULINK」を用いて検証した。ここでは、比較対象として従来のシングルディレイラインを用いたTDC(SDL−TDC)を用いるものとする。まず、本実施形態のTDC100及び従来のSDL−TDCにおけるゲート遅延値及びその標準偏差値を示す。
・本実施形態のTDC100
GRO130のゲート遅延値:50[ps]
該ゲート遅延値の標準偏差:10[ps]
再生回数:4回
・SDL−TDC
ゲート遅延値:12.5[ps]
ゲート遅延値標準偏差:2.5[ps]
【0064】
図8は、本発明の一実施形態に係るTDCについての数値計算シミュレーションの結果を示す図である。なお、本実施形態のTDC100及びSDL−TDCへの入力位相差は、
図5で説明したものと同じものを用いている。同図(a)は、2つのTDCのそれぞれの出力に対してフーリエ変換した結果を重ねて表示したものであり、同図(b)は、本発明の一実施形態に係るTDCの出力に対してフーリエ変換した結果のみを表示したものである。同図(a)中、黒で示されたグラフ線は従来のSDL−TDCによる数値シミュレーション結果である。これから明らかなように、SDL−TDCでは、非線形性に因るスプリアスが立っているのに対し、薄グレーで示される本実施形態のTDC100ではスプリアスが見られない。従って、仮に、第2のオシレータ部130にゲート遅延によるばらつきがあったとしても、線形性を保つことができ、性能を大幅に劣化させることはないと言える。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、ゲーティッドリングオシレータ(GRO)としての第2のオシレータ部により、ノイズシェーピングによる実効的分解能が向上することになる。また、かかるGROは、マルチパス化されたものを用いなくても良く、従って、レイアウト設計の容易化を図ることができるとともに、線形性を向上させることができるようになる。
【0066】
一方で、マルチパス化されていないGROを用いることにより、ゲート遅延値の増大が避けられないが、本実施形態によれば、僅かな時間差を持つ2つのクロック信号を所定回数だけ繰り返し再生しているので、入力時間差が増幅され、実効的ゲート遅延値を低下させることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
上記実施形態では、2つのオシレータブロックによる時間差を持った発振信号の繰り返し再生回数を固定(例えば4回)にする例が開示されたが、本実施形態では、該繰り返し再生回数を可変にした例が開示される。即ち、一般に、ADPLL回路は、発振回路の発振によりPLLループがアクティブになる前は、2つのクロック信号DIV_CLK及びREF_CLK間の位相関係を制御することができない。ADPLL回路は、例えば、0.5クロック幅程度ずれた状態でフィードバックによる追従がスタートする可能性がある。かかる状態で、繰り返し再生回数を固定したまま、ADPLL回路を動作させてしまうと、1クロック内で規定の繰り返し回数を終了できず、正しく動作しない場合があり得る。その結果、追従がいつまでも収束しない可能性がある。そこで、本実施形態のTDCは、ADPLL回路の動作を保証するよう、時間差を持った発振信号の繰り返し再生回数を変更できるように構成される。
【0068】
(1)第1の構成例
図9は、本発明の一実施形態に係るTDCの構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図に示すように、本例のTDC900は、少なくとも1つの上述したTDC100と、従来の位相検出器120及びゲーティッドリングオシレータ(GRO)130と、カウンタ140と、マルチプレクサ910とを含んで構成される構成される。つまり、TDC100は、TDC900全体のうちのモジュールである。GRO130は、例えば、既述したような差動インバータにより構成されるが、これに限られるものでない。
【0069】
より具体的には、TDC900は、図示しない制御部から出力される制御信号CTRLによりマルチプレクサ910を制御して、カウンタ140又はTDC100のいずれかの出力を選択的に切り替えることができるように構成されている。例えば、TDC900は、制御部の制御の下、動作が開始してから所定の時間が経過するまでは、GRO130の出力を選択し、該所定の時間経過後は、TDC100の出力を選択するように動作する。或いは、TDC900は、最終的に出力されるデジタルコード値MUX_OUTの値に従って、マルチプレクサ910を切り替えるように制御しても良い。一例として、制御部は、動作開始後、基準クロック信号REF_CLKの周期に従って出力される一連のデジタルコード値MUX_OUTのうち、最大値と最小値との差が所定の範囲内に収まるか否かを判定し、該所定の範囲内に収まったと判定する場合、TDC100の出力を選択するようにマルチプレクサ910を制御する。
【0070】
なお、本例では、TDC900は、それぞれ1つのTDC100及び位相検出器120/GRO130で構成されているが、これに限られるものではない。例えば、TDC900は、位相検出器120/GRO130に加え、又はこれに代え、それぞれ異なる繰り返し再生回数で動作する複数のTDC100を用いて構成されても良い。即ち、図示はしていないが、繰り返し再生回数が1回、2回及び4回に設定されたTDC100A〜100Cを設け、TDC900は、これらからの出力を順次に切り替えるように構成されても良い。
【0071】
(2)第2の構成例
図10は、本発明の一実施形態に係るTDCの構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図に示すTDC1000は、
図1に示すTDC100と比較して、カウンタ回路114が可変制御カウンタ115に置き換わっている点で、異なっている。可変制御カウンタ115は、図示しない制御部からの制御信号N_CTRLに従って、リセット信号Rを出力するタイミングを動的に変更する。TDC1000は、例えば、動作開始時は、N_CTRL=1とし、可変制御カウンタ115が1回の再生回数でリセット信号Rを出力するよう制御し、さらに、所定の時間経過後或いはデジタルコード値TDC_OUTの値のいずれか又はその両方に従って、N_CTRLの値を順次に変更していく。また、制御信号N_CTRLの値に併せて、レジスタ160からの出力タイミング及び除算器170に与えられる値(除数)も変更される。
【0072】
[第3の実施形態]
本実施形態は、コース(coarse)/ファイン(fine)のいわゆる2ステップ構成の概念を応用したTDC構成体を開示する。
図11は、本発明の一実施形態に係るTDCの構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図に示すように、本実施形態のTDC1100は、上述したTDC100の前段に設けられたコースTDC1110を含んで構成される。
【0073】
コースTDC1110は、その入力レンジがTDC100の入力レンジ以上となるように設計されるものであって、比較的低い分解能のもので良い。これは、消費電流の増大を防止することができることを意味する。このようなコースTDC1110は、既知のものを用いることができ、従って、ここでは説明を省略する。即ち、本実施形態によれば、コースTDC1110の入力レンジの広さにより、DIV_CLKとREF_CLKの大きな位相差にも対応しうる一方、その分解能の低さは、量子化残差start_fineとstop_fineをTDC100に入力し、量子化することで改善され、誤差の小さい、高い分解能を得ることができるようになる。
【0074】
なお、本実施形態のTDC1100では、TDC100に代え、例えば、第2の実施形態で示されたTDC900やTDC1000を用いても良い。
【0075】
このような2ステップ構成のTDC1100により、ADPLL回路の動作を保証するとともに、TDC全体としての入力時間差のレンジの拡大を図ることができる。
【0076】
[応用例]
上述した各実施形態のTDCのいずれかを用いて、例えば、ADPLL回路を構成することができる。
図12は、本発明の一実施形態に係るTDCを用いたADPLL回路の概略構成を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図に示すように、ADPLL回路1200は、例えば、発振器1210、TDC100、デジタルループフィルタ(DLF)1220、デジタル制御発振器(DCO)1230及び分周器1240を含んで構成される。発振器1210、デジタルループフィルタ(DLF)1220、デジタル制御発振器(DCO)1230及び分周器1240は、既知のものを用いることができるため、ここでは、説明を省略する。また、本例では、タイムデジタルコンバータは、第1の実施形態のTDC100を用いているが、これに限られるものでなく、上記他の実施形態のものを用いることができる。
【0077】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0078】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0079】
また、例えば、上記実施形態では、除算器170が用いられているが、これに限られるものでなく、乗算器が用いられても構わない。
【0080】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【0081】
(付記事項)
本明細書に記載した発明はまた、以下のように把握されうる。即ち、ある観点に従う本発明は、相互に所定の位相差を有する一対の所定のクロック信号に基づいて、第1の発振信号をそれぞれ生成し出力する一対のリングオシレータを含む第1のオシレータ部と、前記一対のリングオシレータからそれぞれ出力される前記第1の発振信号に基づいて、該発振信号間の位相差に応じたイネーブル信号を出力する位相検出器と、前記位相検出器から出力されるイネーブル信号に従って、所定の周波数を有する第2の発振信号を生成し出力する第2のオシレータ部と、前記第2のオシレータ部から出力される前記第2の発振信号のエッジ数をカウントし、該カウントした値を保持する第1のカウンタ部と、前記第1のカウンタ部に保持された前記カウント値に対して所定の係数を除算した量子化値を出力する除算器と、を備え、前記一対のリングオシレータのそれぞれは、対応する前記クロック信号の一周期に対して前記所定の係数に等しい所定の回数だけ繰り返されるパルスからなる前記第1の発振信号を生成する、タイムデジタルコンバータである。
【0082】
前記第1のオシレータ部は、前記一対のリングオシレータからそれぞれ出力される前記第1の信号を所定の分周比で分周する分周器を含んで構成される。
【0083】
また、前記第1のオシレータ部は、前記第1の発振信号のパルス数をカウントし、該カウント値が前記所定の係数に等しい回数になった場合に、対応する前記リングオシレータによる出力を停止させる第2のカウンタ部を含んで構成される。前記第2のカウンタ部は、前記所定の回数を変更可能に構成される。
【0084】
さらに、前記第2のオシレータ部は、前記イネーブル信号に従って発振動作を行うゲーティッドリングオシレータである。また、前記ゲーティッドリングオシレータは複数段の差動インバータや、シングルエンドインバータによって構成され得る。
【0085】
また、他の観点に従う本発明は、それぞれが上記のタイムデジタルコンバータにより構成される複数のタイムデジタルコンバータモジュールと、
前記複数のタイムデジタルコンバータモジュールのいずれかによる出力を選択的に切り替えるマルチプレクサと、を備えたタイムデジタルコンバータであって、
前記マルチプレクサは、所定の条件に従って、動作開始から所定の時間経過後又は出力されたコード値のいずれかに基づいて、切り替え制御される、
タイムデジタルコンバータ構成体である。
【0086】
さらに、他の観点に従う本発明は、上記のタイムデジタルコンバータにより構成される第1のタイムデジタルコンバータモジュールと、
前記第1のタイムデジタルコンバータモジュールの入力位相差のレンジよりも広い入力位相差のレンジを持つ第2のタイムデジタルコンバータモジュールと、を備え、
前記第2のタイムデジタルコンバータモジュールは、入力される一対の所定のクロック信号に基づいて第1の量子化を行い、
前記第1のタイムデジタルコンバータモジュールは、該第1の量子化による量子化誤差に基づいて第2の量子化を行う、
タイムデジタルコンバータ構成体である。
【0087】
さらにまた、他の観点に従う本発明は、上記のタイムデジタルコンバータと、
前記タイムデジタルコンバータから出力される信号から高周波雑音成分を除去するデジタルループフィルタと、
前記デジタルループフィルタから出力される信号に基づいて制御されるデジタル制御発振器と、を備え、
前記デジタル制御発振器から出力される信号を所定の分周比で分周し、該分周した信号をフィードバック信号として前記タイムデジタルコンバータに出力する分周器と、
を備える、PLL回路である。