(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351071
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02C 7/232 20060101AFI20180625BHJP
F23R 3/16 20060101ALI20180625BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
F02C7/232 C
F23R3/16
F23R3/28 D
F23R3/28 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-166126(P2014-166126)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-41920(P2016-41920A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 正佳
(72)【発明者】
【氏名】松山 竜佐
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁志
【審査官】
西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−255944(JP,A)
【文献】
特開2013−253737(JP,A)
【文献】
特開2004−012039(JP,A)
【文献】
特開2004−233041(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0028619(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/115671(WO,A1)
【文献】
特開2004−325068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃焼器に用いられる燃料噴射装置であって、
当該燃料噴射装置の軸心上に配置されたパイロット燃料噴射弁と、
前記パイロット燃料噴射弁と同心状に配置されて、このパイロット燃料噴射弁の外周を取り囲む環状のメイン燃料噴射弁と、
前記メイン燃料噴射弁から噴射された燃料と混合するための空気を径方向に導入するメイン空気通路を形成する通路壁であって、前記メイン燃料噴射弁からの燃料を前記メイン空気通路へ導入する開口を有する通路壁と、
前記メイン燃料噴射弁に、周方向に離間して配置されて軸心方向後方に燃料を噴射する複数のメイン燃料噴射孔と、
前記メイン燃料噴射孔の周囲から軸心方向後方に、前記開口に臨むように突設されて、燃料を前記メイン空気通路に案内するメイン燃料噴射ノズルと、
少なくとも一部が前記通路壁から軸心方向に離間して配置され、前記メイン燃料噴射弁を覆い、前記メイン燃料噴射ノズルを貫通させる貫通孔を有する遮熱ケーシングと、
前記通路壁と前記遮熱ケーシングとの間の軸心方向隙間に介装されたリング体であって、前記メイン燃料噴射ノズルと前記貫通孔の内周面との間の貫通孔隙間を覆い、かつ前記開口に連通して前記軸心方向隙間内の空気を燃料パージ用の空気として前記メイン空気通路内へ導入するパージ通路を有するリング体と、
を備える燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、前記リング体は、前記メイン燃料噴射ノズルに遊嵌されている燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料噴射装置において、前記リング体は、前記貫通孔隙間を覆う基部と、この基部の後面に形成された放射状の複数のスロットを有するスロット部とからなり、前記スロットが前記パージ通路を形成している燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置において、前記リング体の高さ寸法が、前記軸心方向隙間の寸法に一致している燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの燃焼器に用いられる、燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮からガスタービンから排出されるNOx(窒素酸化物)などの有害物質を低減することが求められている。従来の航空機用ガスタービン燃焼器の燃料噴射弁の方式として、拡散燃焼方式が知られている。この拡散燃焼方式では、燃焼反応が量論比で行われるため、火炎温度が高くなる。NOxの排出量は火炎温度に対して指数的に増加する性質をもつため、火炎温度を下げることがNOxの排出量を抑えるための効果的な対策となる。しかし、ガスタービンの高温高圧化が進む現状では、従来の拡散燃焼方式によってNOxの排出量を抑えることには限界がある。
【0003】
火炎温度を抑えるためには、希薄燃焼方式の燃料噴射弁が有効であるとされている。希薄燃焼とは、空気に対する燃料の割合を少なくして燃焼させる方法である。この希薄燃焼方式を用いることで、従来の拡散燃焼方式よりも大きく火炎温度を下げることができる。一方で、希薄燃焼方式では火炎温度が低いため、不安定で不完全な燃焼になる傾向がある。そこで、内側にパイロット燃料噴射弁を、外側にメイン燃料噴射弁を同心状に配置したコンセントリック型の燃料噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このコンセントリック型の燃料噴射装置は、低出力時にはパイロット燃料噴射弁による拡散燃焼方式を用いることにより安定な燃焼を保ちつつ、高出力ではパイロット燃料噴射弁での拡散燃焼に加えてメイン燃料噴射弁で希薄燃焼を行い、低NOxを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−251741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コンセントリック型燃料噴射装置は、高出力時にはメイン燃料噴射弁とパイロット燃料噴射弁の両方を動作させるが、低出力時にはパイロット燃料噴射弁のみを動作させ、メイン燃料噴射弁は動作させない。このため、メイン燃料噴射弁を動作させない低出力時には、メイン燃料噴射弁の燃料管内の燃料は流通しない。そのため、低出力時には、メイン燃料噴射弁の周囲を流れる高温空気の熱によってメイン燃料噴射弁の燃料管内に残留した燃料のコーキングが発生する場合がある。
【0006】
メイン燃料噴射弁の燃料管内に残留した燃料のコーキングを防止するために、メイン燃料噴射弁を遮熱用のケーシングで覆うことが考えられる。ただし、その場合にも、メイン燃料噴射弁が停止した時に、メイン燃料噴射弁の噴射孔から漏出した燃料が、遮熱ケーシング内でコーキングを起こす可能性がある。その場合、炭化した燃料によって固着された状態となった比較的低温の噴射弁と高温にさらされる遮熱ケーシングとの間に、熱伸び差に起因する応力が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、メイン燃料噴射弁内のコーキングを効果的に防止できる燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料噴射装置は、ガスタービンの燃焼器に用いられる燃料噴射装置であって、当該燃料噴射装置の軸心上に配置されたパイロット燃料噴射弁と、前記パイロット燃料噴射弁と同心状に配置されて、このパイロット燃料噴射弁の外周を取り囲む環状のメイン燃料噴射弁と、前記メイン燃料噴射弁から噴射された燃料と混合するための空気を径方向に導入するメイン空気通路を形成する通路壁であって、前記メイン燃料噴射弁からの燃料を前記メイン空気通路へ導入する開口を有する通路壁と、前記メイン燃料噴射弁に、周方向に離間して配置されて軸心方向後方に燃料を噴射する複数のメイン燃料噴射孔と、前記メイン燃料噴射孔の周囲から軸心方向後方に、前記開口に臨むように突設されて、燃料を前記メイン空気通路に案内するメイン燃料噴射ノズルと、少なくとも一部が前記通路壁から軸心方向に離間して配置され、前記メイン燃料噴射弁を覆い、前記メイン燃料噴射ノズルを貫通させる貫通孔を有する遮熱ケーシングと、前記通路壁と前記遮熱ケーシングとの間の軸心方向隙間に介装されたリング体であって、前記メイン燃料噴射ノズルと前記貫通孔の内周面との間の貫通孔隙間を覆い、かつ前記開口に連通して前記軸心方向隙間内の空気を燃料パージ用の空気として前記メイン空気通路内へ導入するパージ通路を有するリング体とを備えている。
【0009】
この構成によれば、メイン燃料噴射孔から円筒状のノズルを突設することにより、メイン燃料噴射弁の停止時に燃料噴射孔からの燃料が遮熱ケーシング内でコーキングすることが防止される。また、リング体がメイン燃料噴射ノズルの外周面を覆うことにより、メイン燃料噴射ノズルが高温の空気から遮熱される。さらに、高温の空気が遮熱ケーシング内に流入することが防止されるとともに、燃料パージ用の空気としてメイン空気通路内に導入されるので、遮熱ケーシング内への燃料の侵入が防止される結果、遮熱ケーシング内でのコーキングも効果的に防止できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記リング体は前記メイン燃料噴射ノズルに遊嵌されていることが好ましい。この構成によれば、燃料噴射ノズルの熱伸びの影響を受けることなく、より確実にコーキングの発生が防止される。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記リング体は、前記貫通孔隙間を覆う基部と、この基部の後面に形成された放射状の複数のスロットを有するスロット部とからなり、前記スロットが前記パージ通路を形成していることが好ましい。この構成によれば、スロットの寸法や数を調整することにより、燃料パージ用として空気通路内に導入される空気量を簡単に規制することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記リング体の高さ寸法が、前記軸心方向隙間の寸法に一致していることが好ましい。この構成によれば、一層確実にメイン燃料噴射ノズルを遮熱し、かつ、高温の空気をメイン空気通路内に導入することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料噴射装置によれば、メイン燃料噴射弁におけるコーキングの発生が効果的に防止されるので、燃料噴射装置の信頼性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置を示す断面図である。
【
図2】
図1の燃料噴射装置の要部を示す断面図である。
【
図3】
図1の燃料噴射装置に使用されるリング体27を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置1を示している。この燃料噴射装置1は、ガスタービンエンジンの燃焼器に用いられて、ガスタービンエンジンの圧縮機から供給される圧縮空気に燃料を混合して燃焼器の燃焼室Eにおいて燃焼させ、その燃焼により発生する高温・高圧の燃焼ガスをタービンに送ってタービンを駆動するためのものである。本実施形態に係る燃料噴射装置1は、図示しないエンジン回転軸心と同心状に、等間隔に複数配設されている。なお、以下の説明において、燃料噴射装置1の軸心C方向における燃焼室E側を後側と呼び、その反対側を前側と呼ぶ。また、燃料噴射装置1の軸心Cに平行な方向を、単に「軸心方向」と呼ぶ。
【0016】
燃料噴射装置1は、燃料噴射装置1の回転軸心C上に配置されたパイロット燃料噴射弁3と、パイロット燃料噴射弁3の外周を取り囲むようにパイロット燃料噴射弁3の軸心Cと同心状に設けられたメイン燃料噴射弁5とを備えている。パイロット燃料噴射弁3から噴射された燃料は、主としてパイロット部スワーラSW1を通過してきた空気と混合されて燃焼器の燃焼室Eへ供給される。一方、メイン燃料噴射弁5から噴射された希薄燃焼用の燃料は、メインアウタスワーラSW2から第1メイン空気通路7へ径方向に導入された空気と混合された後、さらに、メインインナスワーラSW3から第2メイン空気通路9へ軸心方向に導入された空気と混合されて、希薄混合気として燃焼室Eへ供給される。
【0017】
なお、本実施形態の燃料噴射装置1において、空気を径方向に導入するスワーラを軸心方向に導入するスワーラよりも径方向外側に配置して、第1メイン空気通路7を空気が径方向外側から内側へ流れるように設定しているが、空気を径方向に導入するスワーラを軸心方向に導入するスワーラよりも径方向内側に配置して、第1メイン空気通路7を空気が径方向内側から外側へ流れるように設定してもよい。
【0018】
各燃料噴射装置1は、燃料配管ユニットを形成するステム部11により燃焼器のハウジング(図示せず)に支持されている。燃料配管ユニットは、パイロット燃料噴射弁3に供給される燃料を導入する第1燃料導入系統F1と、メイン燃料噴射弁5に供給される希薄燃焼のための燃料を導入する第2燃料導入系統F2とを備えている。
【0019】
図2に、燃料噴射装置1のメイン燃料噴射弁5の構造を詳細に示す。メイン燃料噴射弁5は、環状のメイン燃料流路形成体13を備えており、メイン燃料流路形成体13の内方空間が、メイン燃料の燃料通路15を形成している。メイン燃料流路形成体13の後端面には、軸心方向の貫通孔が周方向に離間して複数形成されている。これら貫通孔が、燃料を軸心方向後方に噴射するメイン燃料噴射孔17として機能する。各メイン燃料噴射孔17の周囲には、円筒状のメイン燃料噴射ノズル19が軸心方向に突設されている。
【0020】
図2に示すように、燃料噴射装置1には、さらに、メイン燃料噴射弁5を覆う遮熱ケーシング21が設けられている。遮熱ケーシング21は、メイン燃料噴射弁5に対する外部の高温空気の熱の伝達を遮るとともに、メイン燃料噴射弁5をステム部11(
図1)に対して支持する。
【0021】
遮熱ケーシング21は、中空の環状体として形成されており、その内壁面がメイン燃料噴射弁5から離間するように配置されている。遮熱ケーシング21の後壁部21aの前記メイン燃料噴射ノズル19に対応する各部分には、メイン燃料噴射ノズル19を貫通させる複数の軸心方向の貫通孔23が周方向に等間隔に設けられている。貫通孔23の孔径は、メイン燃料噴射ノズル19の外径よりも大きく設定されており、メイン燃料噴射ノズル19と貫通孔23の内周面との間には、環状の貫通孔隙間G1が形成されている。この環状の貫通孔隙間G1は、燃料通路15を流れる燃料によって冷却されるメイン燃料流路形成体13と外部の高温部品によって熱せられる遮熱ケーシング21との間の熱膨張差を吸収できる大きさに設定されている。また、遮熱ケーシング21は、その一部または全部が、第1メイン空気通路7を形成する前方の通路壁25から軸心方向に離間して配置されている。すなわち、遮熱ケーシング21と第1メイン空気通路7を形成する通路壁25との間には、軸心方向の隙間G2が形成されている。
【0022】
第1メイン空気通路7を形成する通路壁25と遮熱ケーシング21の後壁部21aとの間の軸心方向隙間G2には、リング体27が介装されている。リング体27は、メイン燃料噴射ノズル19の外周面に遊嵌された環状部材であり、メイン燃料噴射ノズル19と遮熱ケーシング21の貫通孔23の内周面との間の貫通孔隙間G1を覆っている。また、第1メイン空気通路7を形成する通路壁25には、メイン燃料噴射弁5からの燃料を第1メイン空気通路7へ導入する開口29が形成されており、メイン燃料噴射ノズル19は、開口29に臨むように突設されている。リング体27は、通路壁25の開口29に連通して、軸心方向隙間G2内の空気を第1メイン空気通路7内へ導入するパージ通路31を有している。
【0023】
図3にリング体27の構造を示す。リング体27は、径方向中心部に、軸心方向の貫通孔である中心孔33を有する円盤状の基部27aと、この基部27aの後面に形成された放射状に延びる複数のスロット37を有するスロット部27bとからなる。より詳細には、本実施形態に係るリング体27のスロット部27bは、リング体27の内周縁部(つまり中心孔33の外縁部)に形成された環状溝35と、この環状溝35からリング体27の外周縁まで径方向に放射状に延びる複数(図示の例では4つ)の溝、すなわちスロット37を有している。これら複数のスロット37は、リング体27の周方向に等間隔に配設されている。リング体27の中心孔33の孔径は、リング体27がメイン燃料噴射ノズル19に対して摺動可能な程度に、メイン燃料噴射ノズル19の外径よりもわずかに大きく設定されている。
【0024】
このような構造のリング体27を、
図2に示すように、基部27aが前方を向き、スロット部27bが後方を向くようにメイン燃料噴射ノズル19に遊嵌させることにより、メイン燃料噴射ノズル19と遮熱ケーシング21の貫通孔23の内周面との間の貫通孔隙間G1が、後方(つまり軸心方向隙間G2側)からリング体27によって覆われる。換言すれば、環状の貫通孔隙間G1の後方の開口が、リング体27によって塞がれる。また、メイン燃料噴射ノズル19の外周面がリング体27によって覆われる。高温の空気に曝される遮熱ケーシング21と、燃料で冷却される燃料流路形成体13とで、半径方向の熱膨張差が発生するが、リング体27がメイン燃料噴射ノズル19と共に隙間G2内をスライドすることにより追従するので、常に貫通孔隙間G1の後方の開口がリング体27によって覆われる。さらに、軸心方向隙間G2から流入して開口29を通って第1メイン空気通路7へ流入する空気は、リング体27のスロット37を通過した空気のみとなる。
【0025】
リング体27の高さ寸法(リング体27のスロット37が形成されていない部分における軸心方向寸法)は、軸心方向隙間G2の寸法に一致していることが好ましい。これにより、確実にメイン燃料噴射ノズル19を遮熱し、かつ、高温の空気をメイン空気通路7内に導入することができる。
【0026】
一方、リング体27のスロット部27bの環状溝35およびスロット37は、前記パージ通路31を形成している。このように、パージ通路31としてリング体27にスロット37を形成することにより、スロット37の寸法や数を調整することで、簡単に燃料パージ用として空気通路7内に導入される空気量を、必要に応じた適切な量に規制することができる。すなわち、リング体27に形成するスロット37の数は、図示の例に限らず、例えば5,6,8,12等、適宜設定してよい。また、各スロット37の寸法は、例えば幅0.5mm×長さ1mm×深さ0.5mmとすることができるが、これに限らず適宜設定してよい。さらに、スロット37の断面形状は、図示した矩形に凹む形状に限らず、例えば、V字形状や半円形状等であってもよい。スロット37の延設方向は、リング体27の径方向に限らず、径方向に対して傾斜していていもよい。
【0027】
なお、リング体27のスロット部27bにおいて、環状溝35を省略して各スロット37をリング体27の外周縁から内周縁まで延びるように形成してもよいが、環状溝35を設けることにより、燃料パージ用の空気が、メイン燃料噴射ノズルの周方向に均一な空気流として空気通路7に導入される。また、リング体27をメイン燃料噴射ノズル19の外周面に固定的に嵌合させてもよいが、本実施形態のようにリング体27をメイン燃料噴射ノズル19に遊嵌させることにより、メイン燃料噴射ノズル19の熱伸びによる変形の影響を受けることなく、空気が遮熱ケーシング21内へ流入することを確実に防止できる。また、本実施形態では、メイン燃料噴射ノズル19が円筒状であり、メイン燃料噴射ノズル19と遮熱ケーシング21の貫通孔23の内周面との間の貫通孔隙間G1が環状である例を示したが、貫通孔隙間G1はリング体27によって覆われる形状および大きさであればよく、メイン燃料噴射ノズル19および貫通孔隙間G1の形状は本実施形態の例に限定されない。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料噴射装置1によれば、メイン燃料噴射孔17から円筒状のメイン燃料噴射ノズル19を突設することにより、メイン燃料噴射弁5の停止時にメイン燃料噴射孔17からの燃料が遮熱ケーシング21内でコーキングすることが防止される。さらに、リング体27によって、高温の空気が遮熱ケーシング21内に流入することが防止されるとともに、燃料パージ用の空気として第1メイン空気通路7内に導入されるので、メイン燃料噴射ノズル19内でのコーキングも効果的に防止できる。
【0029】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 燃料噴射装置
3 パイロット燃料噴射弁
5 メイン燃料噴射弁
7 第1メイン空気通路(メイン空気通路)
17 メイン燃料噴射孔
19 メイン燃料噴射ノズル
21 遮熱ケーシング
25 通路壁
27 リング体
31 パージ通路
37 スロット
G1 貫通孔隙間
G2 軸心方向隙間