特許第6351072号(P6351072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351072片側バッファを備え非対称に構築されるスタティックランダムアクセスメモリセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351072
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】片側バッファを備え非対称に構築されるスタティックランダムアクセスメモリセル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8244 20060101AFI20180625BHJP
   H01L 27/11 20060101ALI20180625BHJP
   G11C 11/34 20060101ALI20180625BHJP
   G11C 11/412 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L27/11
   G11C11/34
   G11C11/412 120
   G11C11/412 100
   G11C11/412
【請求項の数】25
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-553413(P2014-553413)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-505423(P2015-505423A)
(43)【公表日】2015年2月19日
(86)【国際出願番号】US2013021960
(87)【国際公開番号】WO2013109767
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】13/477,901
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/587,461
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/595,717
(32)【優先日】2012年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】シャオウェイ デン
(72)【発明者】
【氏名】ワー キット ロー
(72)【発明者】
【氏名】アナンド セシャドリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンハイ シー
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−200300(JP,A)
【文献】 特開2007−265609(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108178(WO,A1)
【文献】 特開2007−157183(JP,A)
【文献】 特開2009−272587(JP,A)
【文献】 特開2001−257275(JP,A)
【文献】 特開2005−051264(JP,A)
【文献】 特開2003−086713(JP,A)
【文献】 特開2008−176910(JP,A)
【文献】 特開2011−060362(JP,A)
【文献】 特開2010−146676(JP,A)
【文献】 特開2008−211077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8244
G11C 11/34
G11C 11/412
H01L 27/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の近接するビットセルエリアに形成されるメモリセルであって、
第1のトランジスタで構成され、第1のストレージノードにおける出力と第2のストレージノードに結合される入力とを有する第1のインバータと、
第2のトランジスタで構成され、前記第2のストレージノードにおける出力と前記第1のストレージノードに結合される入力とを有する第2のインバータであって、前記第2のトランジスタが、前記第1のインバータ内の前記第1のトランジスタにより提供される回路機能と同じ回路機能を前記第2のインバータ内で提供する、前記第2のインバータと、
前記第2のインバータよりも前記第1のインバータの近くの前記ビットセルエリア内に配置される2トランジスタバッファ回路と、
を含み、
前記第1のトランジスタが前記第2のトランジスタと異なる物理的構造を有する、メモリセル。
【請求項2】
請求項1に記載のメモリセルであって、
前記第1のトランジスタが、前記メモリセルの前記ビットセルエリア内で、前記2トランジスタバッファ回路と前記第2のトランジスタとの間に配置される、メモリセル。
【請求項3】
請求項1に記載のメモリセルであって、
前記第1のインバータが、第1の負荷と第1の駆動トランジスタとを含み、
前記第1の駆動トランジスタが、前記第1のストレージノードにおいて前記第1の負荷に一方の側で接続されるソース/ドレイン経路と、前記第2のストレージノードに接続されるゲートとを有し、
前記第2のインバータが、第2の負荷と第2の駆動トランジスタとを含み、
前記第2の駆動トランジスタが、前記第2のストレージノードにおいて前記第2の負荷に一方の側で接続されるソース/ドレイン経路と、前記第1のストレージノードに接続されるゲートとを有し、
前記第1のトランジスタが前記第1の駆動トランジスタに対応し、前記第2のトランジスタが前記第2の駆動トランジスタに対応する、メモリセル。
【請求項4】
請求項1に記載のメモリセルであって、
前記第1のインバータが、第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとを含み、
前記第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとが、前記第1のストレージノードにおいて共に接続される直列のソース/ドレイン経路を有し、前記第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとが、前記第2のストレージノードに接続されるゲートを各々有し、
前記第2のインバータが、第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとを含み、
前記第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとが、前記第2のストレージノードにおいて共に接続される直列のソース/ドレイン経路を有し、前記第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとが、前記第1のストレージノードに接続されるゲートを各々有し、
前記第1のトランジスタが前記第1の負荷トランジスタに対応し、前記第2のトランジスタが前記第2の負荷トランジスタに対応する、メモリセル。
【請求項5】
請求項4に記載のメモリセルであって、
前記第1の駆動トランジスタが更に、前記第2の駆動トランジスタとは異なる物理的構造を有する、メモリセル。
【請求項6】
請求項1に記載のメモリセルであって、
各メモリセルが、
前記第1のストレージノードに一方の側で接続されるソース/ドレイン経路と、ワードラインに接続されるゲートとを有する第1のパストランジスタと、
前記第2のストレージノードに一方の側で接続されるソース/ドレイン経路と、前記ワードラインに接続されるゲートとを有する第2のパストランジスタと、
を更に含み、
前記第1のパストランジスタがまた前記第2のパストランジスタと異なる物理的構造を有する、メモリセル。
【請求項7】
請求項1に記載のメモリセルであって、
前記2トランジスタバッファ回路が、
読み出しビットラインに一方の側で接続されるソース/ドレイン経路を有し、更に、読み出しワードラインに接続されるゲートを有する、第1のバッファトランジスタと、
読み出しビットラインと基準電圧の間で前記第1のバッファトランジスタの前記ソース/ドレイン経路に直列のソース/ドレイン経路を有し、更に、前記第1及び第2のストレージノードの一方に接続されるゲートを有する、第2のバッファトランジスタと、
を含み、
前記第1及び第2のバッファトランジスタの少なくとも一方が、前記第1及び第2のトランジスタの対応する特徴サイズより大きな特徴サイズで構築される、メモリセル。
【請求項8】
請求項7に記載のメモリセルであって、
前記第2のバッファトランジスタの前記ゲートが前記第2のストレージノードに接続される、メモリセル。
【請求項9】
請求項1に記載メモリセルであって、
前記第1及び第2のトランジスタが、チャネル幅とチャネル長と正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される1つ又は複数の属性により、構造上互いに異なる、メモリセル。
【請求項10】
請求項9に記載メモリセルであって、
前記2トランジスタバッファ回路が、前記第1のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを減少させ、
前記第1のトランジスタが、前記第2のトランジスタに対して、一層広いチャネル幅と一層短いチャネル長と一層低い正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される前記属性の1つ又は複数を有するように構築される、メモリセル。
【請求項11】
請求項9に記載のメモリセルであって、
前記2トランジスタバッファ回路が、前記第1のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを増加させ、
前記第1のトランジスタが、前記第2のトランジスタに対して、一層狭いチャネル幅と一層長いチャネル長と一層高い正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される前記属性の1つ又は複数を有するように構築される、メモリセル。
【請求項12】
集積回路内のメモリであって、
各々が前記集積回路の近接するビットセルエリアに形成される、メモリセルのアレイを含み、
各メモリセルが、
第1のトランジスタで構成され、第1のストレージノードにおける出力と第2のストレージノードに結合される入力とを有する第1のインバータと、
第2のトランジスタで構成され、前記第2のストレージノードにおける出力と前記第1のストレージノードに結合される入力とを有する第2のインバータであって、前記第2のトランジスタが、前記第1のインバータ内の前記第1のトランジスタにより提供される回路機能と同じ回路機能を前記第2のインバータ内で提供する、前記第2のインバータと、
前記第1のストレージノードと前記メモリセルを含む列に対する第1の書き込みビットラインとの間で接続されるソース/ドレイン経路を有し、更に、前記メモリセルを含む行に対する書き込みワードラインに接続されるゲートを有する、第1のパストランジスタと、
前記第2のストレージノードと前記メモリセルを含む前記列に対する第2の書き込みビットラインとの間で接続されるソース/ドレイン経路を有し、更に、前記書き込みワードラインに接続されるゲートを有する、第2のパストランジスタと、
前記第2のインバータよりも前記第1のインバータの近くの前記ビットセルエリア内に配置されるバッファ回路と、
を含み、
前記バッファ回路が、
ソース/ドレイン経路を有し、更に、前記メモリセルを含む前記行に対する読み出しワードラインに接続されるゲートを有する、第1のバッファトランジスタと、
前記メモリセルを含む前記列に対する読み出しビットセルと基準電圧との間で前記第1のバッファトランジスタの前記ソース/ドレイン経路に直列のソース/ドレイン経路を有し、更に、前記第2のストレージノードに接続されるゲートを有する、第2のバッファトランジスタと、
前記アレイに隣接して配置され、前記アレイ内の1つ又は複数の選択されるメモリセルにアクセスするための周辺回路要素と、
を含み、
各メモリセル内の前記第1及び第2のバッファトランジスタの少なくとも一方が、前記第1及び第2のトランジスタの特徴サイズより実質的に大きな特徴サイズで構築され、
各メモリセルにおいて、前記第1のトランジスタが前記第2のトランジスタと異なる物理的構造を有する、メモリ。
【請求項13】
請求項12に記載のメモリであって、
前記アレイ内の隣接するメモリセルが、互いに隣接するビットセルエリアに配置され、
各メモリセル内の前記第1のトランジスタが、そのメモリセルの前記バッファ回路と前記第2のトランジスタとの間に配置され、
前記第1及び第2の隣接するメモリセルの各々の前記第2のトランジスタが、そのメモリセルの前記第1のトランジスタと、前記第1及び第2の隣接するメモリセルの他方の前記第2のトランジスタとの間に配置される、メモリ。
【請求項14】
請求項12に記載のメモリであって、
各メモリセルの前記第1のインバータが、第1の負荷と第1の駆動トランジスタとを含み、
前記第1の駆動トランジスタが、前記第1のストレージノードにおいて前記第1の負荷に一方の側で接続されるソース/ドレイン経路を有し、更に、前記第2のストレージノードに接続されるゲートを有し、
各メモリセルの前記第2のインバータが、第2の負荷と第2の駆動トランジスタとを含み、
前記第2の駆動トランジスタが、前記第2のストレージノードにおいて前記第2の負荷に一方の側で接続されるソース/ドレイン経路を有し、更に、前記第1のストレージノードに接続されるゲートを有し、
前記第1のトランジスタが前記第1の駆動トランジスタに対応し、前記第2のトランジスタが前記第2の駆動トランジスタに対応に対応する、メモリ。
【請求項15】
請求項12に記載のメモリであって、
各メモリセルの前記第1のインバータが、第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとを含み、
前記第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとが、前記第1のストレージノードにおいて共に接続される直列のソース/ドレイン経路を有し、前記第1の負荷トランジスタと第1の駆動トランジスタとが、前記第2のストレージノードに接続されるゲートを各々有し、
各メモリセルの前記第2のインバータが、第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとを含み、
前記第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとが、前記第2のストレージノードにおいて共に接続される直列のソース/ドレイン経路を有し、前記第2の負荷トランジスタと第2の駆動トランジスタとが、前記第1のストレージノードに接続されるゲートを各々有し、
前記第1のトランジスタが前記第1の負荷トランジスタに対応し、前記第2のトランジスタが前記第2の負荷トランジスタに対応する、メモリ。
【請求項16】
請求項15に記載メモリであって、
前記第1の駆動トランジスタが更に、前記第2の駆動トランジスタとは異なる物理的構造を有する、メモリ。
【請求項17】
請求項12に記載のメモリであって、
前記第1のパストランジスタが更に、前記第2のパストランジスタとは異なる物理的構造を有する、メモリ。
【請求項18】
請求項12に記載のメモリであって、
各メモリセルの前記第1及び第2のトランジスタが、チャネル幅とチャネル長と正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される1つ又は複数の属性により、構造上互いに異なる、メモリ。
【請求項19】
請求項18に記載のメモリであって、
前記バッファ回路が、前記第1のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを減少させ、
各メモリセルに対し、前記第1のトランジスタが、前記第2のトランジスタに対して、一層広いチャネル幅と一層短いチャネル長と一層低い正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される前記属性の1つ又は複数を有するように構築される、メモリ。
【請求項20】
請求項18に記載のメモリであって、
前記バッファ回路が、前記第1のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを増加させ、
各メモリセルに対し、前記第1のトランジスタが、前記第2のトランジスタに対して、一層狭いチャネル幅と一層長いチャネル長と一層高い正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される前記属性の1つ又は複数を有するように構築される、メモリ。
【請求項21】
集積回路内にメモリを製造する方法であって、
半導体基板の表面において複数の隣接するビットセルエリアの各々内に第1及び第2のトランジスタを形成するステップ、
前記ビットセルエリアの各々内に、前記第1及び第2のトランジスタの対応する特徴より大きな特徴を有する1つ又は複数のバッファ回路トランジスタを形成するステップであって、前記第1及び第2のトランジスタ並びにバッファ回路トランジスタが、前記第1のトランジスタがそのビットセルエリアにおけるそのビットセルエリアの前記バッファ回路トランジスタと前記第2のトランジスタとの間に配置されるように、前記ビットセルエリア内で配置される、前記ステップと、
第1及び第2の相互結合インバータを画定するように各ビットセル内に前記第1及び第2のトランジスタとバッファ回路トランジスタとの間の相互接続部を形成するステップであって、前記第1の相互結合インバータが前記第1のトランジスタを含み、前記第2の相互結合インバータが前記第2のトランジスタを含み、前記第1及び第2の相互結合インバータの一方の出力が前記バッファ回路トランジスタに結合される、前記ステップと、
を含み、
第1及び第2の隣接するビットセルエリアにおける前記第2のトランジスタが互いに隣接して配置され、
第1及び第3の隣接するビットセルエリアにおける前記バッファ回路トランジスタが互いに隣接して配置され、
前記形成するステップが、各ビットセルエリアにおける前記第1のトランジスタを、チャネル幅とチャネル長と正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される1つ又は複数の物理的属性においてそのビットセルエリアにおける前記第2のトランジスタとは異なるように形成する、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記第2の相互結合インバータの前記出力が前記バッファ回路トランジスタに結合される、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、
前記バッファ回路トランジスタに対応する特徴の近接により生じる電気特性の差異を前記表面における、これらの特徴から様々な距離におけるトランジスタに基づいて決定するステップと、
前記決定された電気特性の差異から、前記第2のトランジスタに対する、前記第1のトランジスタの、チャネル幅とチャネル長と正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される1つ又は複数の物理的属性における設計差異を選択するステップと、
を更に含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記決定するステップが、前記バッファ回路トランジスタがそれに一層近い距離のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを低減することを決定し、
各ビットセルエリアにおける前記第1のトランジスタが、そのビットセルエリアにおける前記第2のトランジスタに対して、一層広いチャネル幅と一層短いチャネル長と一層低い正味チャネルドーパント濃度とからなる群から選択される前記物理的属性の1つ又は複数を有するように構築される、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、
前記決定するステップが、前記バッファ回路トランジスタがそれに一層近い距離のトランジスタのソース/ドレイン駆動強さを増加させることを決定し、
各ビットセルエリアにおける前記第1のトランジスタが、そのビットセルエリアにおける前記第2のトランジスタに対して、一層狭いチャネル幅、一層長いチャネル長、及び一層高い正味チャネルドーパント濃度からなる群から選択される前記物理的属性の1つ又は複数を有するように構築される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集積回路に関し、例えば固体メモリを含む集積回路に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)セル及びデバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
多くの最近の電子デバイス及びシステムは、広範な機能及び有用な応用例を制御し管理するためのかなりの演算能力を有する。これら最近のデバイスの複雑な機能を実施することにしばしば係わる大量のデジタルデータを考慮して、かなりの固体メモリ容量が今や一般にこれらのシステム用の電子回路要素に実装されている。スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)は、これら最近の低消費電力電子システムにおける固体データストレージ要件の多くを実現するために選択されるメモリ技術になってきている。当技術分野では基本的なことだが、SRAMセルは「静的に」情報を記憶する。「静的に」とは、メモリに電力が供給される限り、記憶されたデータ状態が各セルにラッチされたままになることである。これは、データを保持するためにデータを周期的にリフレッシュしなければならない「動的な」RAM(DRAM)と対照をなす。
【0003】
近年の半導体技術の進歩により、最小デバイス特徴サイズ(例えば、MOSトランジスタのゲート)をサブミクロン範囲に縮小することが可能になってきている。この微細化は、メモリアレイに適用するとき特に有益である。というのは、全チップ面積の大部分がオンチップメモリに充てられることが多いからである。その結果、現在、かなりのメモリリソースが埋め込みメモリとして、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、及び「システムオンチップ」集積回路など、一層大規模な集積回路に集積化される。しかし、デバイスサイズをこのように物理的にスケーリングすることにより、特に、埋め込みSRAMに関連して大きな問題が生じ、「スタンドアロン」メモリ集積回路デバイスとして実現されるSRAMにおいてもそうである。これらの問題の幾つかは、こうした極小特徴サイズで形成されるトランジスタの電気特性のばらつきが大きくなることによるものである。この特性のばらつきにより、セル間の読み出し及び書き込み機能障害の確度が高くなることが観察されている。デバイスのばらつきに対する感受性は、回路設計限界で又はその近くで設計されるメモリメモリにおいて特に高い。デバイスのばらつきの増加が集積回路内のメモリセル数(したがってトランジスタ数)の増加と組み合わさると、1つ又は複数のセルが、予想されるように読み出し及び書き込みをし得なくなったり記憶されるデータ状態を保持できなくなったりする確度が高くなる。
【0004】
図1aは、既知の6トランジスタ(6−T)配置で構築される従来のSRAMセルの例を示す。この例では、セル2は、同様なセルのメモリアレイの第j行第k列にある。SRAMメモリセル2は、電力供給ラインVdda上の電圧と接地基準電圧Vssaとの間でバイアスされる。SRAMメモリセル2は、1対の相互結合CMOSインバータとして従来の方式で構築され、一方のインバータは直列接続されるpチャネル負荷トランジスタ3aとnチャネル駆動トランジスタ4aであり、他方のインバータは直接接続されるpチャネル負荷トランジスタ3bとnチャネルトランジスタ4bである。各インバータのトランジスタのゲートが、共にかつ他方のインバータのトランジスタの共通ドレインノードに、通常の方式で接続される。この例では、トランジスタ3a、4aの共通ドレインノードはストレージノードSNTを構成し、トランジスタ3b、4bの共通ドレインノードはストレージノードSNBを構成する。nチャネルパストランジスタ5aは、そのソース/ドレイン経路がストレージノードSNTと第k列のビットラインBLTとの間に接続され、nチャネルパストランジスタ5bは、そのソース/ドレイン経路がストレージノードSNBとビットラインBLBとの間に接続される。パストランジスタ5a、5bのゲートは、セル2が置かれる第j行のワードラインWLによって駆動される。
【0005】
通常オペレーションでは、ビットラインBLT、BLBは、典型的には、プリチャージ回路要素7によって高電圧Vddp(これは電力供給電圧Vddaであるか又はそれに近い)にプリチャージされ、この電圧と等しくされる。次いで、プリチャージ回路要素7は、アクセスサイクルの残りの期間、ビットラインBLT、BLBを解放して浮遊させる。読み出しオペレーションのためにセル2にアクセスするには、ワードラインWLに電力を供給してパストランジスタ5a、5bをオンにし、ストレージノードSNT、SNBをビットラインBLT、BLBに接続する。次いで、ビットラインBLT、BLBで発生する差動電圧が、センスアンプによって感知され増幅される。書き込みオペレーションでは、典型的な最近のSRAMメモリは、書き込むべきデータ状態に応じて、ビットラインBLT、BLBの一方をローに(すなわち、接地電圧Vssa又はそれに近い電圧まで)プルする書き込み回路要素を含む。次いでワードラインWLに電力が供給されると、ローレベルのビットラインBLT又はBLBが、その関連するストレージノードSNT、SNBをプルダウンし、アドレス指定されたセル2の相互結合インバータを所望の状態にラッチさせる。
【0006】
セル2などのSRAMセルについて観察される障害メカニズムの1つのタイプはセル安定性障害であり、これは「外乱」障害又は不充分な静的ノイズマージンとも呼ばれる。この障害では、例えば同じ行の選択されたメモリセルへの書き込みの間、非選択セルのビットラインに結合する充分な大きさのノイズにより、この同じ行の非選択セルにデータが誤って書き込まれてしまうことがある。実際、このようなノイズは、1つ又は複数の非選択セル(すなわち、選択行の非選択列内の「半選択」セル)のインバータを作動(trip)させるために充分な大きさを有し得る。セル安定性障害は、SRAMセルドライバ又は負荷トランジスタの駆動がセル内の他のトランジスタに対して不整合である場合に生じ得る。例えば、図1aのセル2が「0」データ状態(ストレージノードSNTがローレベル)を記憶する場合、「オン」状態の駆動トランジスタ4a及び負荷トランジスタ3bの一方又は両方が、「オフ」状態の駆動トランジスタ4b及び負荷トランジスタ3aに対して弱いことが、パストランジスタ5a、5bがそのj行へのアクセス中にオンにされるとき、セル2のラッチの状態をより容易に変えてしまう。より具体的には、トランジスタ3b、4aのこの相対的な弱さにより、「0」から「1」への遷移に対するセル2の「作動」電圧が所望されるより大きくなってしまい、ストレージノードSNTにおける、平衡セルに要求されるよりも小さな電圧降下に応答してセル2の状態が「反転(flip)」させてしまう。言い換えれば、例えば「半選択」時に生じるようなノイズに対するセル2の安定性が、このトランジスタ非平衡によって低減してしまう。
【0007】
SRAMセルの別の障害メカニズムは書き込み障害であり、これは、アドレス指定されたSRAMセルが、記憶されたデータ状態とは反対のデータ状態の書き込みに応答してその記憶状態を変更しないときに生じる。書き込み障害は、セル安定性障害の逆である。セル安定性障害は、セルがその状態を過度に容易に変更してしまう場合に生じ、書き込み障害は、セルがその状態を過度に変更しようとしない場合に、特に、書き込み回路要素がその時点で高電圧にラッチされているストレージノードをプルダウンできないことによって、生じる。
【0008】
例えば、図1aのセル2がまず「0」データ状態(負荷トランジスタ3bがオンで駆動トランジスタ4bがオフであり、ストレージノードSNBがハイレベルである状態)を記憶する場合、反対の「1」データ状態が、書き込み回路要素によってビットラインBLBにおいて駆動されるローレベルによって書き込まれ、「オン」状態のパストランジスタ5bを介してストレージノードSNBに結合される。パストランジスタ5bが弱いと、ロー側のビットラインBLBは負荷トランジスタ3bの反対の駆動に打ち勝ち難くなり、そのため、この書き込みサイクルはセル状態を変更し得ない。駆動トランジスタ4bが弱いと、この書き込み操作で(ビットラインBLTにおけるローレベルのために駆動トランジスタ4bがオンになり始めるときに)負荷トランジスタ3aによってハイにプルされるストレージノードSNTからのフィードバック作用が減少し、セル2の書き込み能力が更に減少する。負荷トランジスタ3aが弱いと、やはりストレージノードSNTをハイにプルすることが弱くなり、この書き込みサイクルにおけるフィードバック作用が更に減少する。このように、書き込み障害の確度はこのようなデバイス非平衡によって高くなる。
【0009】
したがって、当技術分野ではよく知られているように、同じSRAMセル内の負荷トランジスタ3a、3bの互いに対する電気特性の平衡、同じセル内の駆動トランジスタ4a、4bの互いに対する電気特性の平衡がセルの安定性及び書き込み性の両方に貢献する。そのため、従来のSRAMセルは、典型的には、負荷トランジスタ3a、3bが構造上互いに可能な限り緊密に整合し、駆動トランジスタ4a、4bが構造上互いに可能な限り緊密に整合し、かつ、パストランジスタ5a、5bが構造上互いに可能な限り緊密に整合するように形成される。これらの対になるトランジスタが構造上このように緊密に整合(すなわち、レイアウトが整合し、ドーパントプロフィール及び膜厚が整合)するように設計されることによって、これらの対になるデバイスの電気特性が緊密に整合する。
【0010】
ディープサブミクロン特徴サイズ(例えば、ゲート幅が90nm以下)で構築されるトランジスタにおいて、近隣のデバイスの近接度及び構造に応じた電気的作用が観察されている。これらの「近接」作用の様々な原因及び結果が特徴付けられている。これらの様々な近接作用により、MOSトランジスタのドレイン−ソース電流にかなりの変動が生じることが観察されている。
【0011】
1つの既知のタイプの近接作用は、ポリシリコンゲート構造の光リソグラフィパターンニングが他の近くのゲート構造によって影響される度合いに係わるものである。ゲートの間隔及び幅が一定になると、これらのリソグラフィ近接作用による変動が減少することが知られている。リソグラフィ近接作用は、コンタクトレベルでも観察されている。また、上に重なる絶縁体膜内の近接するコンタクト開口が、この上に重なる膜内の応力(すなわち、圧縮又は引張り特性)に応じて、MOSトランジスタにおける歪み作用に影響を及ぼすことが観察されている。
【0012】
Drennanらの「Implications of Proximity Effects for Analog Design」、論文8.6、Custom Integrated Circuits Conference(IEEE、2006年)に記載されているように、MOSトランジスタに対する歪み関連近接作用の別の原因は、シャロートレンチアイソレーション応力作用と呼ばれるものである。この作用による歪み変動は、MOSトランジスタの能動領域(例えば、ソース及びドレイン領域)を画定するシャロートレンチアイソレーション構造内の応力によるものである。当技術分野では既知のように、集積回路の選択表面位置における比較的厚いアイソレーション誘電体(例えば二酸化シリコン)構造は、MOSトランジスタ及び他の半導体回路要素が形成される半導体能動領域を画定する。最近の集積回路では、特にサブミクロン方式の集積回路では、このアイソレーション誘電体は、基板(又はシリコンオンインシュレータ環境でのシリコン層)の表面をマスク凹部エッチングによって形成され、その後、二酸化シリコンなどの誘電体膜がこれらの凹部内に堆積される。これらの「シャロートレンチアイソレーション」構造における堆積された二酸化シリコンは、圧縮又は引張り特性を示し得、これにより、MOSトランジスタチャネル領域を含む近隣の能動領域に歪みが生じ得る。この歪みが生じる範囲は、トランジスタのシャロートレンチアイソレーション構造への近接度及びアイソレーション誘電体自体の体積(すなわち、アイソレーション構造の他方の側の近隣の能動領域の近接度及び大きさ)に応じて決まることが観察されている。
【0013】
さらなる背景として、集積回路に適用される半導体技術の最近の進歩には、半導体デバイス構造の製造に「歪み制御技術(strain engineering)」(又は、その代わりに「応力工学(stress engineering)」)の利用が含まれる。この技術は、MOSトランジスタチャネル領域の結晶格子における歪みを「調整」して、これらの領域におけるキャリア移動度を増強し、これが、トランジスタのソース/ドレイン電流(すなわち、駆動強さ)を3極及び飽和領域の両方で増加させる。一般的な意味では、圧縮応力はpチャネルMOSトランジスタのチャネル領域における正孔移動度を増強し、引張り応力はnチャネルMOSトランジスタのチャネル領域における電子移動度を増強する。この調整を達成する既知の手法には、「埋め込みSiGe」(又は「eSiGe」)を用いることが含まれる。この手法では、pチャネルMOSトランジスタ構造のソース及びドレイン領域がシリコン基板又はウェル領域からエッチングされ、選択的エピタキシによって形成されるシリコン−ゲルマニウム合金で置き換えられる。シリコン結晶格子内のゲルマニウム原子により、eSiGe合金の格子定数は大きくなり、そのため、圧縮応力がpチャネルMOSトランジスタのチャネル領域に加えられる。「デュアルストレスライナー」又は「DSL」技術として知られる別の従来の歪み制御技術の手法は、それぞれ、nチャネル及びpチャネルMOSトランジスタの能動領域(すなわち、ソース及びドレイン領域)にわたって引張り又は圧縮特性のシリコン窒化物層を形成することに関与する。しかし、これらの歪み制御技術の作用は近隣のデバイス及び構造に及ぶことが多く、それによって別のタイプの「近接作用」が生じることが観察されている。
【0014】
サブミクロン集積回路において観察される別の近接作用は、注入されるドーパント種の相互拡散である。近隣の又は近接するトランジスタのソース/ドレイン領域が、異なるドーズ量のイオン注入によって形成される場合、得られるドーパント濃度勾配は、一層重くドープされるソース/ドレイン領域から近くの一層軽くドープされるソース/ドレイン領域へドーパントイオンを拡散させるために充分に大きくなり得る。これにより、当然のことながら、影響を受けるトランジスタの一方又は両方について設計からの乖離が生じ得る。
【0015】
当技術分野では既知のように、メモリアレイは、比較的大きな面積の類似構造(すなわち、メモリセル)を含み、そのため、極めて規則正しく構築されることになる。この構造上の規則性は、理論的には、近接作用によるアレイトランジスタ性能の変動を抑制する。この抑制は、すべてのトランジスタが実質的に同じサイズであるメモリアレイ、例えば図1aに関して上述したような6−T SRAMセルのアレイ、において良好に実現され得る。アレイの端部のメモリセルは、メモリアレイの端部の周辺に「ダミー」メモリセルを構築することによって、近接作用及び相互拡散から保護され得る。これらのダミーセルは、メモリセル自体と同様に構築されるが、電気的には接続されない。
【0016】
繰返しデバイス構造のアレイ又は領域として構築される他のタイプの集積回路機能も、同様に、近接作用によるデバイス変動の影響を受ける。例えば、多くの最近の論路回路は、「極めて多数のゲート」又は集積回路構造におけるローレベルでの別のタイプの繰返し構造として構築される。これらの論理回路は、例えば、金属導体をトランジスタ及びゲートに引き回すことにより、上位構造レベルで特定の論理機能が実現されるように容易にカスタマイズされ得る。この場合でも、近接作用により、繰返し構造の端部及び論理アレイの内部におけるトランジスタ間及びゲート間でトランジスタ性能が変動する。
【0017】
さらなる背景として、付加的な読み出しバッファを有する相互結合インバータラッチ型のSRAMセルが当技術分野で知られている。図1bは、このようなSRAMセル2’の例を示す。SRAMセル2’は、図1aに関連して上述した6−T構造に2トランジスタバッファを追加したものである。この例では、「8−T」SRAMセル2’は、nチャネルMOSトランジスタ6、8で構築される片側読み出しバッファを含み、これらのトランジスタのソース/ドレイン経路は、セル2’が存在するk列の読み出しビットラインRD_BLと、接地電圧Vssb(これは、アレイ接地電圧Vssaからの電圧と同じか又は異なる電圧とし得る)との間で直列に接続される。トランジスタ6のゲートはストレージノードSNBに接続され、トランジスタ8のゲートは、セル2’が存在するj列の読み出しサイクルでアサートされるワードラインである読み出しワードラインRD_WLに接続される。逆に、セル2’のパストランジスタ5a、5bのゲートは、書き込みワードラインWR_WLに接続され、パストランジスタ5a、5bのソース/ドレイン経路はそれらのそれぞれのストレージノードSNT、SNBと、それぞれ、書き込みビットラインWR_BLT、WR_BLBとの間に接続される。そのため、セル2’の状態は、セル2’を選択する読み出しサイクルには読み出しビットラインRD_BLに現れ、セル2’を選択する書き込みサイクルには書き込みビットラインWR_BLT、WR_BLBから書き込まれる。
【0018】
典型的には、図1bのセル2’などの8−TSRAMセルは、付加的な読み出し電流が、セルから供給され、それから先はラッチ駆動トランジスタ4a、4bから利用可能であり得る状況で実装される。より具体的には、8−Tセルは、高密度及び容易書き込み可能特性が得られるようにセルトランジスタ3、4が最小特徴サイズデバイスとして製造されるが、これらの小型デバイスからの読み出し電流は感知回路要素に対しては最適とは言えない設計において、魅力のあるものである。そのため、バッファトランジスタ6、8は、概して、ラッチトランジスタ3、4及びパストランジスタ5よりもはるかに大型に(すなわち、比較的広いチャネル幅で)構築される。各セル2’がそれ自体の読み出しバッファを備えて構築されるためには、これらの一層大型のトランジスタが必然的にアレイ内の同じ「ビットセル」レイアウト内に配置されなければならず、そのため、一層大型のバッファデバイスがこのセルの一層小型(例えば、最小特徴サイズ)のラッチ及びパストランジスタの間に挿入される。
【0019】
しかし、上述したように、一層大型のバッファトランジスタを一層小型のトランジスタに隣接して又はその近くに組み込むと、近接作用及び相互拡散作用が生じ得る。その結果、従来の8−T SRAMセル2’は改善された読み出し電流を提供し得るが、その代償として、セル2’のラッチ部分のオペレーションに潜在的な非平衡が生じる。これらの作用は、最近の集積回路では今や一般的なディープサブミクロントランジスタサイズで構築されるメモリで特に顕著である。
【0020】
さらなる背景として、非対称に構築されるパストランジスタを備えた6−Tセルが当技術分野で知られている。これらの従来の非対称セルでは、図1aを参照して、パストランジスタ5a、5bが有するソース領域(すなわち、それぞれ、ビットラインBLT、BLBに接続される側で)の構造は、それらのドレイン領域(すなわち、ストレージノードSNT、SNBに接続される側)とは異なって構築される。この非対称性は、読み出しオペレーションのため(すなわち、プリチャージされるビットラインBLT、BLBの一方を一層低いレベルのストレージノードSNT、SNBにプルするため)よりも、書き込みオペレーションのため(すなわち、ストレージノードSNT、SNBの一方を対応するローレベルビットラインBLT、BLBに放電するため)でソース/ドレイン電流が大きくなるように実装される。このパスゲートの非対称性は、パストランジスタ5a、5bのソース/ドレイン領域の形成において、例えばゲート電極がドレイン側の注入を遮った状態で、標準よりも大きな角度での非対称ソース側「ハロー」注入によって達成され得る。
【0021】
さらなる背景として、6−T SRAMセル内に不整合パストランジスタを構築することが当技術分野で知られている。この従来の手法によれば、一方のビットラインが「読み出しビットライン」として働き、他方のビットラインが「書き込みビットライン」として働く。例えば、チャネル幅を一層広くすることによって、「読み出しビットライン」に結合されるパストランジスタは、「書き込みビットライン」に結合されるパストランジスタより強く駆動されるように構築されて、強い読み出し電流が提供され、そのため、アクセス時間が短くなる。「書き込みビットライン」用の一層弱いパストランジスタは、最小特徴サイズ(すなわち、一層狭いチャネル幅)のトランジスタとし得る。これは、書き込みメカニズムが全サイクルにわたって拡張され得、そのため、読み出しアクセス時間ほどタイミングが厳格でないからである。
【発明の概要】
【0022】
説明する実施形態により、集積回路内のメモリアレイ及びそれを製造する方法が提供される。ここで、アレイ内の各メモリセルは、電気的平衡を維持しつつ、大型の駆動バッファなどの非対称特徴を含む。
【0023】
説明する実施形態により、このようなメモリアレイ及び方法が提供される。ここで、各メモリセルは、最小特徴サイズのトランジスタで構築される相互結合インバータを含む。
【0024】
説明する実施形態により、このようなメモリアレイ及び方法が提供される。ここで、メモリセルは、行及び列に配され、読み出しバッファからなる非対称特徴を各々含み、同じ列内のセルに対する読み出しバッファは、これらのセルの列の一方の側に沿って整列される。
【0025】
或る実施形態が、集積回路内で実現される相互結合インバータラッチを有するメモリセルとして実装され得る。このインバータラッチは、セルのラッチのトランジスタより大きな物理的サイズ及び構造の1つ又は複数のトランジスタを有するセルに関連する非対称特徴に隣接する。セル内の非対称特徴に一層近い1つ又は複数のトランジスタが、このセル内の対応するトランジスタとは異なる物理的特性を有するように構築されて、一層近いインバータ内のトランジスタの電気特性に対する非対称特徴の作用が補償される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】従来のSRAMセルの概略形式での電気図である。
図1b】従来のSRAMセルの概略形式での電気図である。
【0027】
図2】本発明の実施形態に従ったテストに適した1つ又は複数のメモリリソースを含む集積回路のブロック形式での電気図である。
【0028】
図3】本発明の実施形態に従った、図2の集積回路内のメモリのブロック形式での電気図である。
【0029】
図4】本発明の実施形態に従って構築されるメモリセルの概略形式での電気図である。
【0030】
図5a】本発明の実施形態に従った、図4のメモリセルを含む集積回路の一部のレイアウトの平面図である。
図5b】本発明の実施形態に従った、図4のメモリセルを含む集積回路の一部のレイアウトの平面図である。
【0031】
図6】本発明の実施形態に従って固体メモリを構築するプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
相補型金属酸化物半導体(CMOS)タイプのスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)セルとして実装される例示の実施形態を説明する。これは、この文脈で実装されるとき開示される特徴が特に有益と考えられるからである。特に、8トランジスタ(8−T)SRAMセルの例を用いて実施形態を説明する。ただし、本明細書における教示が他の回路及び構造の応用例に利益をもたらし得ることも考えられる。これら他の回路及び構造には、他のタイプの非対称な読み出し及び書み込みバッファを有するメモリセルや、その他の様式で非対称な状況に影響を受けやすいトランジスタを含むメモリセルが含まれるが、これらには限定されない。
【0033】
図2は、今や多くの電子システムにおいて一般的な、所謂「システムオンチップ(SoC)形態の大規模集積回路10の例を示す。集積回路10は、全コンピュータアーキテクチャが実現されるシングルチップ集積回路である。そのため、この例では、集積回路10は、システムバスSBUSに接続されるマイクロプロセッサ12の中央処理装置を含む。ランダムアクセスメモリ(RAM)18及び読み出し専用メモリ(ROM)19を含めて様々なメモリリソースが、システムバスSBUS上にあり、そのため、マイクロプロセッサ12にアクセス可能である。多くの最近の実装形態では、ROM19は、電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)によって実現される。EEPROMの一般的なタイプは「フラッシュ」EEPROMと呼ばれる。下記で更に詳細に説明するように、ROM19の少なくとも一部をフラッシュEEPROMとして実現すると、本発明の実施形態の実装及びオペレーションが容易になり得る。いずれにせよ、ROM19は、典型的には、プログラムメモリとして働き、マイクロプロセッサ12によって実行可能なプログラム命令を記憶し、一方、RAM18は、データメモリとして働く。場合によっては、プログラム命令がRAM18に入れられ得、マイクロプロセッサ12によって呼び出され実行される。キャッシュメモリ16(レベル1、レベル2、及びレベル3キャッシュなどであり、典型的には各々SRAMとして実装される)が、別のメモリリソースを提供し、マイクロプロセッサ12自体の中に置かれ、したがって、バスアクセスを必要としない。集積回路10では、他のシステム機能が、包括的に、システムコントローラ14及び入力/出力インタフェース17によって示される。
【0034】
当業者であれば本明細書を参照すれば、集積回路10は、図2に示す機能に対する付加的又は代替的機能を含み得ること、又は、図2に示すアーキテキチャとは異なるアーキテクチャに従ってその機能を構成し得ることが理解されよう。このように、集積回路10のアーキテクチャ及び機能は単なる例として示されるものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0035】
集積回路10のRAM18の構造に関連してさらなる詳細が図3に示されている。当然のことながら、類似の構造を用いてキャッシュメモリ16などの他のメモリリソースを実現し得る。更に、代替形態では、RAM18は、単独のメモリ集積回路(すなわち、図2に示すような埋め込みメモリではない)に対応し得る。当業者であれば本明細書を参照すれば、図3のRAM18のメモリアーキテクチャは単なる例として示されていることが理解されよう。
【0036】
この例では、RAM18は、メモリアレイ20内に行及び列に配される多数のメモリセルを含む。メモリアレイ20の1つの例が図3に示されているが、RAM18は、RAM18のアドレス空間内のメモリブロックに各々対応する複数のメモリアレイ20を含み得ることを理解されたい。図3に示す例では、メモリアレイ20は、m行及びn列の「8−T」SRAMセルを含み、同じ列内のセルは、読み出しビットラインRD_BL[n−1:0]、1対の書き込みビットラインWR_BLT[n−1:0]、WR_BLB[n−1:0]を共有し、同じ行内のメモリセルは、ワードラインWL[m−1:0]の1つを共有する。読み出し及び書き込みオペレーションに先立ち、所望のプリチャージ電圧がビットラインRD_BL[n−1:0]、WR_BLT[n−1:0]、WR_BLB[n−1:0]に印加されるように、ビットラインプリチャージ回路要素27が設けられる。行デコーダ25が、メモリアレイ20のアクセスすべき行を示す行アドレス値を受け取り、ワードラインWL[m−1:0]のうち、この行アドレス値に対応するワードラインに電圧を供給する。列選択回路22が、列アドレス値を受け取り、それに応答して、読み出し/書き込み回路24と通信可能になるように配置されるべき1つ又は複数の列に関連するビットラインRD_BL[n−1:0]、WR_BLT[n−1:0]、WR_BLB[n−1:0]を選択する。読み出し/書き込み回路24は、例えば、列選択回路22によって選択される列に対する読み出しビットラインRD_BL[n−1:0]に結合される典型的なセンスアンプと、選択された対の書き込みビットラインWR_BLT[n−1:0]、WR_BLB[n−1:0]の一方を接地に向かって選択的にプルするための書き込み回路とを含むように、従来のように構築される。図3に示すRAM18の例は、「インターリーブ」アーキテクチャに構築される。このアーキテクチャでは、所与のメモリアドレスが、読み出し又は書き込みアクセスのため、x列毎に1列(例えば、4列毎に1列)を選択する。そのため、メモリアレイ20に記憶されるデータワードは、列選択回路22によって(部分的に)復号されるメモリアドレスが、列の各グループのうち1つの列を選択するという意味において、選択された行に沿って、互いにインターリーブされる。或いは、メモリアレイ20は、非インターリーブ式に構成されてもよい。この場合、選択された行内の各セルは、各サイクルにおいて、対応する読み出し/書き込み回路に結合される。このアーキテクチャでは、読み出し/書き込み回路24は、ビットラインRD_BL[n−1:0]、WR_BLT[n−1:0]、WR_BLB[n−1:0]と、列選択回路22との間に置かれ得、列選択回路は、どの読み出し/書き込み回路24(及びしたがって列)がデータバスDATA I/Oと通信するかを選択する。
【0037】
例示の実施形態では、メモリアレイ20内の各メモリセルは「8−T」セルとして構築される。このセルでは、4つのトランジスタが相互結合インバータのラッチを構成し、2つのトランジスタがこのラッチの対応するストレージノードと差動ビットライン対の対応するビットラインと間のパストランジスタとして働く従来の「6−T」SRAMセル構造に2トランジスタ読み出しバッファが付加される。この付加的な読み出しバッファトランジスタの一方又は両方は、このラッチの6つのトランジスタ及びパストランジスタより大きな駆動強さ(すなわち、所与のバイアスに対して一層高いソース/ドレイン電流)を有するように構築され、そのため、セルの読み出し電流がこれらのセルトランジスタが提供し得る電流よりも大きくなる。読み出しバッファトランジスタのこの一層強い駆動強さは、典型的には、ラッチ及びパストランジスタのチャネル幅よりも大きなチャネル幅でこれらのデバイスを構築することによって得られる。更に又は代替として、駆動強さを増大させるための他の手法が用いられ得、それには(一層小さな閾値電圧を得るための)一層短いチャネル長及び異なるチャネル注入が含まれる。
【0038】
この8−T構造は、ディープサブミクロン最小特徴サイズトランジスタで構築される最近の集積回路で用いると特に魅力的である。当技術分野では既知のように、これらの極小トランジスタにより、特に図3に関連して上述したようなメモリアレイに対して、高密度回路実装が可能になるが、その代償としてトランジスタ駆動強さが小さくなる。そのため、8−Tセル構造によって提供される一層強い読み出し電流は魅力的である。
【0039】
しかし、8−Tセル構造の一層大きな読み出しバッファトランジスタにより、メモリセルのラッチ及びパストランジスタに対して顕著な近接作用が生じることが観察されている。図1bの8−Tセル2’の例を参照し、トランジスタの物理的な近接度がこの電気回路図に示される配置に対応すると仮定すると、一層大きな読み出しバッファトランジスタ6、8は、負荷トランジスタ3a、駆動トランジスタ4a、及びパストランジスタ5aに対し、相対するトランジスタ3b、4b、5bよりも大きな近接作用を及ぼし得る。これらの近接作用は、相対するトランジスタ(すなわち、トランジスタ3bに対するトランジスタ3a、トランジスタ4bに対するトランジスタ4a、及びトランジスタ5bに対するトランジスタ5a)間の閾値電圧の見かけのオフセットによってもたらされることが本発明に従った実際の測定により観察されている。閾値電圧オフセットは、負荷トランジスタ3bに対する負荷トランジスタ3aについて最も大幅であることが観察されているが、駆動トランジスタ4aと駆動トランジスタ4bの間、及びパストランジスタ5aとパストランジスタ5bの間でも顕著な閾値電圧オフセットが示された。
【0040】
例示の実施形態によれば、メモリアレイ20内のメモリセルは、これらの近接作用を補償するように構築される。図4は、実施形態に従った、メモリアレイ20の第j行及び第k列のメモリセル30の構造を示す。この例では、メモリアレイ20は、そのセルの全てが図4のセル30と同様に構築されるように構築される。或いは、セル30は、レジスタ又は構成回路内のストレージ要素などの、一層小さな集積回路機能において実装されてもよい。
【0041】
例示の実施形態に従ったセル30は、図1bに関連して上述したセル2’と同様に電気的に配置される。そのため、セル30は、電力供給ラインVdda上の電圧と接地基準電圧Vssaとの間でバイアスされる相互結合CMOSインバータの対を含む。一方のインバータは、pチャネル負荷トランジスタ33a及びnチャネル駆動トランジスタ34aで構成され、これらのソース/ドレイン経路は電力供給ラインVddaと接地基準電圧Vssaとの間で直列に接続され、これらの共通ドレインノードはストレージノードSNTで、これらのゲートはストレージノードSNBで、共に接続される。他方のインバータは、pチャネル負荷トランジスタ33b及びnチャネルトランジスタ34bで構成され、これらのソース/ドレイン経路は電力供給ラインVddaと接地基準電圧Vssaとの間で直列に接続され、これらの共通ドレインノードはストレージノードSNBで、これらのゲートはストレージノードSNTで、共に接続される。nチャネルパストランジスタ35aは、ストレージノードSNTと第k列の書き込みビットラインWR_BLTとの間で接続されるソース/ドレイン経路を有し、nチャネルパストランジスタ35bは、ストレージノードSNBとビットラインWR_BLBとの間で接続されるソース/ドレイン経路を有する。パストランジスタ35a、35bのゲートは、セル30が存在するこの第j行の書き込みワードラインWR_WLによって駆動される。
【0042】
メモリセル30は、その「8−T」構造に従って、nチャネルMOSトランジスタ36、38で構築される2トランジスタ片側読み出しバッファ回路を含み、これらのトランジスタのソース/ドレイン経路はk列の読み出しビットラインRD_BLと接地電圧Vssb(これは、アレイ接地電圧Vssaと同じか又は異なる電圧とし得る)との間で直列に接続される。トランジスタ36のゲートはストレージノードSNBに接続され、トランジスタ38のゲートは、j行の読み出しサイクルでアサートされるワードラインである読み出しワードラインRD_WLに接続される。上述したように、トランジスタ36、38は、典型的には、メモリセル30内の典型的に最小の特徴サイズのトランジスタ33、34、35より大きなチャネル幅を有することによって、一層強い駆動強さを有するように構築される。
【0043】
オペレーションにおいて、ビットラインRD_BL、WR_BLT、WR_BLBは、典型的には、プリチャージ回路要素27(図3)によって電圧Vddp(例えば、電力供給電圧Vddaと同じ又はそれに近い電圧)までプリチャージされる。書き込みビットラインWR_BLT、WR_BLBもこの電圧と等しくされ得る。プリチャージの後、プリチャージ回路要素27は、アクセスサイクルの残りの期間、ビットラインRD_BL、WR_BLT、WR_BLBを解放し、浮遊させる。書き込みオペレーションでは、読み出し/書き込み回路要素24は、書き込まれるべきデータ状態に応じて、ビットラインWR_BLT、WR_BLBの一方をロー(すなわち、接地電圧Vssaに又はそれに近い電圧)にプルする。次いで書き込みワードラインWR_WLに電圧が供給されると、ローレベルのビットラインWR_BLT又はWR_BLBがその関連するストレージノードSNT、SNBをプルダウンして、アドレス指定されたセル30の相互結合インバータを対応する状態でラッチさせる。読み出しオペレーションでは、プリチャージ及び解放の後、読み出しワードラインRD_WLに電圧が供給され、バッファトランジスタ38がオンにされ、それにより、バッファトランジスタ36が、読み出しビットラインRD_BLの状態をストレージノードSNBにおけるラッチレベルに基づいて設定する。次いで、読み出しビットラインRD_BLで発生した電圧が、読み出し/書き込み回路要素27によって感知され増幅される。
【0044】
この説明のため、セル30は、それぞれ、負荷トランジスタ33a、駆動トランジスタ34a、及びパストランジスタ35aが、負荷トランジスタ33b、駆動トランジスタ34b、及びパストランジスタ35bの対応するデバイスよりもバッファトランジスタ36、38に近いように物理的に構築される。本発明の実施形態に従って、負荷トランジスタ33a、駆動トランジスタ34a、及びパストランジスタ35a(各々図4の破線円で示される)の1つ又は複数は、それぞれ、これらの相対する負荷トランジスタ33b、駆動トランジスタ34b、及びパストランジスタ35bとは異なる駆動強さを有するように構築される。これらの典型的には整合されるトランジスタ間の構造上のこの差異は、セル30内のトランジスタ36、38によって生じる近接作用が補償されるように、集積回路レイアウトの設計又はその製造プロセスフローの間に選択される。その結果、セル30の6−T部分が非対称に構築される場合でも、バッファトランジスタ36、38によってセル30の一方の側で生じる(ただし他方の側では生じない)近接作用により、セル30が電気的に平衡し、それに対応してセルの安定性が得られる。
【0045】
近接作用により、場合によっては、負荷トランジスタ33a、駆動トランジスタ34a、及びパストランジスタ35aの1つ又は複数が、それぞれの相対する負荷トランジスタ33b、駆動トランジスタ34b、及びパストランジスタ35bより小さな駆動強さを示すことが観察されている。この状況では、トランジスタ33a、34a、35aの1つ又は複数は、それぞれの相対するトランジスタ33b、34b、35bよりも(近接作用がない条件で)大きな駆動強さを有するように構築される。MOSトランジスタの駆動強さはいくつかの方式で大きくすることができ、いずれの方式も当技術分野では既知である。例えば、MOSトランジスタの駆動強さは、このデバイスの「W/L」比を大きくすることによって大きくし得る。これは、トランジスタのチャネル幅を所与のチャネル長に対して大きくするか、又はトランジスタのチャネル長を所与のチャネル幅に対して短くするか、或いはその両方によって成される。
【0046】
MOSトランジスタの駆動強さを大きくする別の手法は、トランジスタゲートの下にあるチャネル領域における正味ドーパント濃度を低くすることである。nチャネル・エンハンスメント・モードMOSトランジスタの例では、ゲート電極及びゲート誘電体の下にあるチャネル領域におけるp型ドーパントの正味濃度を低減すると、トランジスタ閾値電圧が減少し、それによって、所与のバイアス状態(飽和)下でソース/ドレイン電流が増加する。同様に、pチャネル・エンハンスメント・モードMOSトランジスタのチャネル領域におけるn型ドーパントを低減すると、トランジスタ閾値電圧(の絶対値)が減少し、それによってトランジスタの駆動強さが大きくなる。チャネル領域の正味ドーパント濃度のこのような変化は、典型的にはゲート電極の形成前に実施される、トランジスタのチャネル領域への「閾値調節」イオン注入のドーズ量及びおそらくはエネルギーを変化させることによって達成され得る。この説明で用いるように、「正味チャネルドーパント濃度」という用語は、いずれのチャネル導電型のMOSトランジスタのチャネル領域もp型及びn型ドーパントの一方又は両方で注入され得ることを表しており、閾値電圧は、このような注入の前のチャネル領域の初期ドーパント濃度も考慮して、すべてのこのようなイオン注入ステップ後の正味チャネルドーパント濃度によってほぼ決まる。例えば、最終的なnチャネルMOSトランジスタが、p型バルクシリコン内又はバルクシリコン内に形成されるpウェル内に形成され得、最終的なチャネル領域はn型及びp型イオン注入の一方又は両方を受ける。これらすべてのドーパント源(開始バルク材料、ウェル注入、n型及びp型イオン注入)、及び隣接するドープされた半導体領域からの拡散を考慮した正味チャネルドーパント濃度により、最終的なトランジスタが形成される際の閾値電圧が決まる。一般に、nチャネル・エンハンスメント・モードMOSトランジスタのチャネル領域における正味p型チャネルドーパント濃度が一層低いことは閾値電圧が一層低いこと、そのため、所与のバイアス条件に対して駆動強さが大きいことを意味する。同様に、pチャネル・エンハンスメント・モードMOSトランジスタのチャネル領域における正味n型チャネルドーパント濃度が一層低いことは、閾値電圧(の絶対値)が一層低いこと、そのため、所与のバイアス条件に対して駆動強さが大きいことを意味する。
【0047】
バッファトランジスタ36、38の近接作用が、近くの一層小型のMOSトランジスタ、特にサイズ及び駆動強さ(すなわち、最小特徴サイズ)が一層小さいMOSトランジスタを弱くする、この実施形態に従って、負荷トランジスタ33a、駆動トランジスタ34a、及びパストランジスタ35aの1つ又は複数が、そのチャネル領域において、それぞれ、これらの相対する負荷トランジスタ33b、駆動トランジスタ34b、及びパストランジスタ35bより広いチャネル幅、短いチャネル長、又は低い正味チャネルドーパント濃度、或いはこれらの組み合わせを有するように構築される。本発明の実施形態では、パストランジスタ35aのこのような補償は、典型的には、負荷トランジスタ33a又は駆動トランジスタ34aの補償と比較して次善であると考えられる。というのは、パストランジスタ35bに対してパストランジスタ35aの任意の非対称性の、セル安定性に及ぼす影響は、ラッチトランジスタ33、34における非対称性が及ぼす影響よりも小さい傾向があるからである。
【0048】
図5aは、本発明の実施形態に従ったセル30の例のレイアウトを平面図で示す。この実施形態では、負荷トランジスタ33a、駆動トランジスタ34a、及びパストランジスタ35aが、それぞれの相対する負荷トランジスタ33b、駆動トランジスタ34b、及びパストランジスタ35bより広いチャネル幅を有するように構築される。図5aは、セル30用の単一近接ビットセルエリア内に、能動領域41(すなわち、バルク単結晶シリコン内のウェルの表面又はバルク単結晶シリコンのウェルの表面)と、ゲート電極43(すなわち、多結晶シリコンで形成されるゲート電極)と、アイソレーション誘電体45との集積回路レベルを含む。当技術分野では既知のように、アイソレーション誘電体45は、基板又は他のボディの半導体型の表面の選択される場所に形成され、アイソレーション誘電体45がない表面の場所に能動領域41を画定する。当技術分野ではやはり既知のように、トランジスタ(より具体的には、トランジスタのチャネル領域)は、能動領域41のうちゲート電極43により交差される場所に画定され、交差するゲート電極43の両側の能動領域41がトランジスタのソース及びドレイン領域を構成する。図5aでは、図4のセル30のトランジスタの場所は、破線ボックス、及びこれに関連しこれらのセルトランジスタを参照する参照数字で示されている。ゲート電極43は、図5aでは図4の電気回路図におけるそれらの回路ノードを参照して示されている。この例では、トランジスタ36、33a、34aは、ストレージノードSNBに対応する単一ゲート電極43を共有し、トランジスタ33b、34bは、ストレージノードSNTに対応する単一ゲート電極43を共有し、パストランジスタ35a、35bは、書き込みワードラインWR_WLに接続される別個のゲート電極を各々有し、バッファトランジスタ38のゲート電極43は読み出しワードラインRD_WLに対応する。見やすくするために、セル30のトランジスタをバイアス及び相互接続するように働く、上に位置する金属導体、コンタクト開口などは図5aでは示されていない。当業者であれば本明細書を参照すれば、図5aの平面図から、示されるレベルの数が限られてはいるものの、本発明のこの実施形態に従ったセル30のレイアウト及び構築を容易に理解し得ると考えられる。
【0049】
図5aの平面図では、セル30のビットセルエリアは、セル30の一端に沿って(この場合には行方向に)pウェル40pの1つの中に配置されるバッファトランジスタ36、38と共に配置される。nチャネル駆動トランジスタ34a及びパストランジスタ35aもこの同じpウェル40内に形成され、そのため、これらは、バッファトランジスタ36、38に最も近いセル30内のトランジスタである。pチャネル負荷トランジスタ33a、33bは、トランジスタ34a、35aに隣接する或るnウェル40nの1つの中に形成され、負荷トランジスタ33aは駆動トランジスタ34bよりもこれらのバッファトランジスタに近い。pウェル40pの別の1つは、バッファトランジスタ36、38から離れた、セル30のレイアウトの遠い側の端部にあり、nチャネル駆動トランジスタ34b及びパストランジスタ35bを含む。そのため、トランジスタ34b、35bは、ビットセルエリア内のトランジスタの中ではバッファトランジスタ36、38から最も遠いトランジスタである。
【0050】
図5aは、この実施形態に従ったセル30のビットセルエリア内の様々のトランジスタのチャネル幅を示す。図に示すように、バッファトランジスタ36、38は、セル30の他のトランジスタに対して比較的広いチャネル幅W36、W38を有し、そのため、他のトランジスタより大きな駆動強さを有する。これは、セル30内のすべてのトランジスタのチャネル長が互いにほぼ等しいからである。これらの一層大型のバッファトランジスタ36、38によって生じる近接作用が近くのトランジスタを弱める本発明のこの実施形態に従って、バッファトランジスタ36、38に一層近いトランジスタの1つ又は複数のチャネル幅は、セル30内のそれらの相対するトランジスタより広くされる。より具体的には、図5aに示すように、駆動トランジスタ34aのチャネル幅W34aは駆動トランジスタ34bのチャネル幅W34bよりも実質的に広く、パストランジスタ35aのチャネル幅W35aはパストランジスタ35bのチャネル幅W35bよりも実質的に広く、負荷トランジスタ33aのチャネル幅W33aは負荷トランジスタ33bのチャネル幅W33bよりも実質的に広い。上述し図5aに示すように、トランジスタ33a、34a、35aの各々は、それぞれ、その対応する相対するトランジスタ33b、34b、35bより大きなW/L比を有し、そのため、(近接効果がない)一層高い駆動強さを有する。
【0051】
これに対して、図1a及び図1bに関して上述したような従来のメモリセルでは、駆動トランジスタ34aのチャネル幅W34aは駆動トランジスタ34bのチャネル幅W34bに等しく、パストランジスタ35aのチャネル幅W35aはパストランジスタ35bのチャネル幅W35bに等しく、負荷トランジスタ33aのチャネル幅W33aは負荷トランジスタ33bのチャネル幅W33bに等しい。しかし、上述したように、この対称な構造は、近くのトランジスタ33a、34a、35aに対するバッファトランジスタ36、38の非対称近接作用によって生じる非対称な挙動に対して脆弱である(そのため、とりわけセル安定性が低くなる)。
【0052】
上述したように、この実施形態に従って図5aに示すチャネル幅の拡大に加えて又はその代わりに、バッファトランジスタ36、38に一層近いトランジスタ33a、34a、35aは、それらの相対するトランジスタ33b、34b、35bよりもチャネル長が短く、又は、正味チャネルドーパント濃度が低くされ得る。また、近接作用の性質やセル30の電気的挙動が示す結果によっては、近接作用によって弱くなることを補償するためにトランジスタ33a、34a、35aの全てを強めなくてもよい。
【0053】
また、上述したように、大型のバッファトランジスタ36、38の近接作用が近くのトランジスタを弱めるのではなく強める場合、図5aのレイアウトにおけるトランジスタ33a、34a、35aの1つ又は複数は、それらの対応する相対するトランジスタ33b、34b、35bより狭いチャネル幅、長いチャネル長、又は、高い正味チャネルドーパント濃度で構築される。更に、近接作用が、異なるチャネル導電型(すなわち、n型及びp型)のトランジスタを異なる方向に変え得る(すなわち、一方を弱め、他方を強める)か、又は、レイアウトにおける異なるチャネルの向き(すなわち、平面図で垂直対水平)のトランジスタを異なる方向に変え得ることが考えられる。このような場合、セル性能を適切に補償するために、バッファトランジスタ36、38に近い1つのトランジスタを強め、別のトランジスタを弱めてもよい。
【0054】
図5bは、メモリアレイ20の一部における複数のメモリセル30、特に、4つの同様に構築されるセル30j,k、30j,k+1、30j+1,k、30j+1,k+1のグループの配置を平面図で示す。この図では、セル30j、kのビットセルエリアは、図5aに示す方向とされ、バッファトランジスタ36、38がその左端、nチャネルトランジスタ34b、35bがその右端にある。この例では、セル30j、kの右側のセル30j、k+1のビットセルエリアは水平方向端部同士が反転され、そのため、その最小トランジスタ34b、35bがセル30j、kの同じサイズのトランジスタ34b、35bに隣接する。セル30j、kの上に見えるセル30j、k+1のビットセルエリアは垂直に反転され、そのため、そのトランジスタ33a、35bなどがセル30j、k内の同じトランジスタに隣接する。セル30j、kの対角にあるセル30j+1、k+1のビットセルエリアはセル30j、kから垂直に反転され水平に反転され、そのため、その最小トランジスタ34b、35bは、図に示すように、セル30j、k+1、30j+1、kの同じサイズの対応するトランジスタ34b、35bに隣接する。4つのセル30の付加的なグループが、同じ向きで図5bに示すグループの側面に沿って配置される。
【0055】
この実施形態に従って、図5bのビットセルの向きにより、(例えば、最小特徴サイズの)最小トランジスタ33b、34b、35bが、隣接するセルの大型のバッファトランジスタ36、38に隣接しないことが保証される。逆に、各セルの最小トランジスタ33b、34b、35bは、隣接するセル内の同じサイズのトランジスタ33b、34b、35bに可能な限り最も近くなる。従って、これら最小トランジスタ33b、34b、35bは、同じセル30内の近接作用からだけでなく、アレイの隣接セル30内の近接作用からも保護される。
【0056】
上記の説明に基づいて、当業者であれば本明細書を参照すれば、上述した回路設計及びレイアウトの配慮を、広範な集積回路の設計制約及び目標内で、過度の実験をせずに容易に実装及び適合させ得ると考えられる。
【0057】
ここで図6を参照して、実施形態に従って構築されるメモリセル及びメモリアレイを含む集積回路の設計及び製造を説明する。当業者であれば本明細書を参照すれば、このプロセスを、自身の特定の設計に対して容易に適切かつ適正に利用及び適合させ得ると考えられる。
【0058】
図6に示すように、この方法はプロセス42で開始される。プロセス42では、セル30の構造によって補償しようとする近接作用が決定される。プロセス42は、多くの技術の任意の1つ又は複数を個々に又は組み合わせて用いることによって実行され得る。例えば、プロセス42は、近接作用が含まれるトランジスタ挙動のSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)モデルの評価によるなど、シミュレーションによって実施され得る。プロセス42を実行する別の手法は、テストチップ、すなわちサイズ及び距離が互いに異なるトランジスタ構造を備えたテスト集積回路、を製造及び評価することである。これにより、技術者は、所与の製造技術に対して近接作用を特徴付けることができる。プロセス42を実施する他の方法は、文献で入手可能な情報を利用すること、以前に評価された異なる設計の集積回路から近接作用を推定すること、或いは、本明細書で説明するような近接作用によって生じるセル不安定性又は他の性能制限に影響されるメモリを含む集積回路の実験結果に基づくことを含み得る。プロセス42の後、適切な技術者によって、セル30の意図されるサイズのバッファトランジスタ36、38によって生じやすい近接作用の大きさ、更に、当然のことながら近くのトランジスタに対するこれらの作用の極性(すなわち、強められるか又は弱められるか)が示され得ることが考えられる。
【0059】
実施形態に従ってプロセス44において、セル30は、バッファトランジスタ36、38によって生じる近接作用がセル30内で補償されるように、上述したような非対称構造を有するように設計される。設計プロセス44は、例えば、1つ又は複数のトランジスタが同じセル30内のそれらの相対するトランジスタとは異なるチャネル幅又はチャネル長(或いはその両方)を有する場合、回路設計のレイアウト段階でこの非対称構造を実装し得る。これに代えて又はこれに加えて、設計プロセス44は、上述したように、セル30内の相対するトランジスタの閾値電圧が、異なる正味チャネルドーパント濃度を有するように構築されるように、閾値調節イオン注入のドーズ量又はエネルギー或いはその両方の設計においてこの非対称構造を実装し得る。
【0060】
設計プロセス44の後、及び特に、セル30の非対称性がレイアウト(すなわち、トランジスタのチャネル長又はチャネル幅の差異)を介して実施される場合、プロセス46で、本発明の実施形態に従って構築されるセル30を備えたメモリ18を含む集積回路10のレイアウト及び設計に対応するフォトマスクが、従来の方式で得られる。当業者であれば本明細書を参照すれば理解され得るように、これらのフォトマスクは、図5a及び図5bの例で示したようなレイアウトに対応し得、本発明のこの実施形態では、このようなフォトマスクは、特定の構造の物理的レイアウトを画定するのみならず、セル30内のトランジスタの閾値電圧を調節する際に用いられるような、様々なマスクされたイオン注入を受けるこれらの構造の場所も画定する。
【0061】
これらのフォトマスクを用いる集積回路10は、適切なMOS技術(上述したように、プロセス44において設計され得るセル30内のトランジスタに非対称に適用される閾値調節注入を含む)に従ってプロセス48において製造される。そのため、製造プロセス48により、設計プロセス44の結果に従ってセル30内のトランジスタ及びこれらのトランジスタ間の相互接続部(例えば、これらのトランジスタの上に配置される金属導体)が形成されて、(例えば、図4の回路図に従った)セル30、具体的には、概して更に集積回路10の、電気回路が当技術分野で既知の方式で完成する。製造プロセス48及びその結果の集積回路は、プロセス46において得られたフォトマスクに(少なくとも部分的に)対応し、更に、適用可能な製造プロセスフロー及びパラメータに対応する。当業者であれば本明細書を参照すれば、過度の実験をせずに適切なMOS技術に対し、本発明の実施形態に従って、製造プロセス48を実行する方式を理解し得ると考えられる。
【0062】
各集積回路10内の個々のセル30及びRAM18の性能を特徴付けるか又はその他の方法で測定するため、及び、多くの場合、更に、設計プロセス44のその時点での結果によるセル30内の近接作用の補償が最適でないために生じる実際の又は潜在的なテストイールドの問題を特定するために、プロセス50において、プロセス48において製造された集積回路10が電気的に評価される。例えば、設計プロセス44に従ったセル30の特定の構造による補償が多すぎるか又は少なすぎる場合、セル30は、不適当なセル安定性を示し得るか、又は、他の弱点(例えば、読み出し電流、書き込み電流、外乱又は保持性能、電力消費など)を提示し得る。プロセス50からこのようなことが判明した場合、セル30内のトランジスタの1つ又は複数に対するレイアウト又は閾値調節注入を再設計するため任意選択プロセス51が実行され得る。典型的には、新たなフォトマスクが当然必要とされるセルレイアウト全体を変更するのではなく、セル30内のトランジスタに非対称に適用される閾値調節注入のドーズ量又はエネルギー(或いはその両方)を調節することによって本発明の実施形態に提供される補償を微調整することが好ましい。適切なセル安定性及びメモリ性能が得られると、本発明の実施形態に従った図6の方法は完了する。
【0063】
このように、上述した実施形態は、従来の集積回路メモリに比して、特に、大型の駆動バッファなどの非対称特徴を含むメモリセルに関連して、重要な利点及び利益をもたらす。特に、本発明の実施形態により、結果のメモリセルは、このような非対称特徴によって生じ得る近接作用にもかかわらず電気的平衡を維持し得る。これらの近接作用は、特に、最近のディープサブミクロンセルトランジスタにおいて明らかであるが、本発明により提供される補償によって充分に対処され得る。従って、本発明は、本発明を適用しない場合にメモリセル内又はそれらの近くの非対称な状況に対して脆弱となり得る、広範なメモリセル設計の安定性及び性能を改善し得、そのため、強い読み出し電流及び書き込み性能を提供しつつ、このようなメモリを最小特徴サイズトランジスタで実装することが可能となることが企図されている。特に、メモリセルは、ストレージ機能用の最小特徴サイズデバイスで構築され得、一層大型で、そのため、一層強力なバッファ回路を、本発明を適用しない場合にこれらのバッファデバイスにより生じる近接作用を受けることなく、セル内で用いることが可能となる。本発明の実施形態は、ラッチトランジスタ又はパストランジスタよりも実質的に小型のバッファトランジスタを有するメモリセルにも適用可能であることが企図される。
【0064】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示的実装形態に改変をなし得ること及び多くの他の実施形態が可能であることが本発明に関係する当業者には理解されよう。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6