(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6351085
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】作業用台船
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
B63B35/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-251037(P2017-251037)
(22)【出願日】2017年12月27日
【審査請求日】2018年1月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391051119
【氏名又は名称】洋伸建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正基
(72)【発明者】
【氏名】中尾 千明
(72)【発明者】
【氏名】高沖 弘志
【審査官】
福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3201907(JP,U)
【文献】
特開昭55−068495(JP,A)
【文献】
特開平05−193555(JP,A)
【文献】
特開2002−205687(JP,A)
【文献】
米国特許第04276849(US,A)
【文献】
特開平06−146217(JP,A)
【文献】
特開平09−279564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63B 35/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船であって、直方体状のフロートを、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠を介して列設し、さらに、左舷のフロートと右舷のフロートとを、連結枠を介して台船を形成し、これら、列設したフロート間に空隙部を設け、該空隙部の上面を上板で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部を構成するとともに、該空隙部に給水・排水用の管を配設する作業用台船において、
前記フロート内に、空気槽とバラスト槽を設け、
該バラスト槽内に、1または複数の玉ブイを設ける
ことを特徴とする作業用台船。
【請求項2】
沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船であって、直方体状のフロートを、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠を介して列設し、さらに、左舷のフロートと右舷のフロートとを、連結枠を介して台船を形成し、これら、列設したフロート間に空隙部を設け、該空隙部の上面を上板で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部を構成するとともに、該空隙部に給水・排水用の管を配設する作業用台船において、
前記複数のフロートを列設した底部を、キールで固定した
ことを特徴とする作業用台船。
【請求項3】
沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船であって、直方体状のフロートを、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠を介して列設し、さらに、左舷のフロートと右舷のフロートとを、連結枠を介して台船を形成し、これら、列設したフロート間に空隙部を設け、該空隙部の上面を上板で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部を構成するとともに、該空隙部に給水・排水用の管を配設する作業用台船において、
前記甲板部の中央部に遮水シート引揚げ用のポールを複数本設け、
これら、各ポールを着・脱可能に設ける
ことを特徴とする作業用台船。
【請求項4】
沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船であって、直方体状のフロートを、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠を介して列設し、さらに、左舷のフロートと右舷のフロートとを、連結枠を介して台船を形成し、これら、列設したフロート間に空隙部を設け、該空隙部の上面を上板で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部を構成するとともに、該空隙部に給水・排水用の管を配設する作業用台船において、
前記台船の舳先に、遮水シートガイド板を設け、
該遮水シートガイド板を倒伏可能に設けた
ことを特徴とする作業用台船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業用台船に関するものであり、特に遮水シートを溶着する作業を行う作業用台船の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遮水シートは、護岸に敷設して降雨や波等による決壊を防止し、或いは廃棄物処分場等の底部に敷設して、廃棄物から流れ出る有害物質が地下に浸透することを防ぐために用いるものである。
【0003】
しかし、上記施設等では、幅及び長さがともに極めて大きいシートが必要なため、ロール状に巻いた遮水シートを拡げ二枚の遮水シートの端面を重ねて並設し順次溶着し、さらに幅広い遮水シートに拡張する必要があり、両シートを溶着する溶着作業は人力で行っている。
【0004】
しかも、このような、作業を行う広い場所はなく、前記護岸や廃棄物処分場等は比較的海岸近くの埋め立て地に存在しており、そのため、付近の海上に台船を浮かべ、その台船上で遮水シートの溶着作業を行っている。
【0005】
しかしながら、溶着作業は、溶着作業時に溶着部分に水が付着することは厳禁であり、波浪による波高で海水が台船甲板に被ることを避けるため、溶着作業をする際には、台船の甲板は海面より上部に位置する必要があり、遮水シートを台船外に移動する際には台船を沈下させるという、昇降可能な半浮沈式作業台船が本願出願人によって開示されている。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3116857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、上記特許文献1をさらに改良し、遮水シートの海面からの引揚げ作業や、溶着後の遮水シートを海面、あるいは設置場所に戻す作業を容易にできる作業用台船を開発・提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この作業用台船は、
沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船において、
直方体状のフロートを、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠を介して列設し、
さらに、左舷のフロートと右舷のフロートとを、連結枠を介して台船を形成し、
これら、列設したフロート間に空隙部を設け、
該空隙部の上面を上板で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部を構成するとともに、
該空隙部内に給水・排水用の管を配設する
ことを特徴とする。
【0009】
また、
前記台船を構成する左舷・右舷のフロートのそれぞれ外面と甲板部との角部をカットする形状に形成する
ことを特徴とする。
【0010】
さらに、
前記連結枠は、開口部を形成する
ことを特徴とする。
【0011】
そして、
前記フロート内に、空気槽とバラスト槽を設け、
該バラスト槽内に、1または複数の玉ブイを設ける
ことを特徴とする。
【0012】
また、
前記複数のフロートを列設した底部を、キールで固定した
ことを特徴とする。
【0013】
さらに、
前記甲板部の中央部に遮水シート引揚げ用のポールを複数本設け、
これら、各ポールを着・脱可能に設ける
ことを特徴とする。
【0014】
そして、
前記台船の舳先に、遮水シートガイド板を設け、
該遮水シート案内板を倒伏可能に設けた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、台船の甲板下部に設けた空隙部に、パイプ等を配設しており、遮水シートの引揚げ作業や、溶着作業の邪魔にならず、遮水シートを破損することがない等の効果を奏するものである。
【0016】
遮水シートを海面より引揚げて溶着作業は海面より高く浮上させた台船上で行うため、台船の甲板上には波が被らず溶着作業が行い易く、また、溶着された遮水シートを海面上に落下させる場合には、台船を沈下させることにより、遮水シートは脱線と摩擦抵抗もなく容易に落下できるとの効果を奏する。
【0017】
また、遮水シートを台船の左舷あるいは右舷から台船上に引き揚げる際には、台船の左舷・右舷の船端と甲板部との角部がカットしており、海面より容易に遮水シートを摩擦抵抗が少なく台船上に引き揚げることが出来る。
【0018】
また、台船の舳先には、ガイド板が設けられており、該ガイド板は、先端部が海面に沈み、末端部が台船の高さと同じ位置におり、遮水シートを台船上に引き揚げる際にも支障なく作業が行える等の効果を奏する。
【0019】
さらに、台船を構成する左舷・右舷の各フロートは、底部をキールで固定されており、堅牢に構成し、台船の揺れを抑制する。
【0020】
さらに、遮水シートの台船上への引揚げ作業は、遮水シートにロープの一端を取り付け、該ロープの他端は、台船上の中央部に設けたポールの滑車を介してウインチに連結し、手動あるいは動力にて行うことが可能であり省力的である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の一実施例を示し、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【
図3】この発明の一実施例を示し、(A)は拡大右側面図であり、(B)は
図1(A)中b−b拡大断面図である。
【
図4】この発明に使用する右舷フロートの一実施例を示し、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は右側面図である。
【
図6】この発明の一実施例を示す作業工程を示す説明図である。
【
図7】この発明の一実施例を示す作業工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の好適な実施の形態について説明するが、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0023】
先ず、本願発明の一実施例を図面に従って説明すると、沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船において、直方体状のフロート(2)を、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠(3)を介して列設し、さらに、左舷前フロート(2a)と右舷前フロート(2b)も、連結枠(3)を介して固定して台船(1)を形成し、これら、列設したフロート(2)(2)間に空隙部(4)を設け、該空隙部(4)の上面を上板(4a)で覆い、該上板(4a)と各フロート(2a)(2b)(2a´)(2b´)の上面とで甲板部(Y)を構成するとともに、該空隙部(4)内に給水・排水用の管(5)を配設することを特徴とする作業用台船から構成したものである。
【0024】
なお、本願発明の一実施例を詳細に説明すると、図面に示すように、作業用台船(1)は、本発明に使用するフロート(2)は、左舷に左舷前フロート(2a)と、左舷後フロート(2a´)の2個、右舷に右舷前フロート(2b)、右舷後フロート(2b´)の2個、合計4個のフロート(2)を、連結枠(3)を介して連結・固定するものである。また、左舷のフロート(2a)(2a´)と、右舷のフロート(2b)(2b´)間も連結枠(3)を介して、各フロートを一体に連結・固定され空隙部(4´)を有するものである。
【0025】
フロート(2)の寸法の一例としては、縦1.2m,横6.0m,高さ1.2mであり現場まで搬送する必要があり、運搬車両に搭載する際の適宜なサイズに形成し、作業用台船(1)は分解・組み立て可能に構成している。そして、前述のように、左舷に2個、右舷にも2個設けたものを示したが、フロートは遮水シート(X)の大きさにより、フロート(2)の数はそれよりも多く設けて列設してもよい。また、連結枠(3)は、縦・横1.2mの枠体であり、対角線状にアームで堅牢に形成されている。
【0026】
前記台船(1)を構成する左舷のフロート(2a)(2a´)、右舷のフロート(2b)(2b´)のそれぞれ外面と甲板部(Y)との角部を、カットする形状に形成、即ち,面取り状に形成して、遮水シート(X)の台船に引揚げる際に該シートが台船の一部に引っ掛かることなく、スムーズな揚げ降ろし作業が楽に行えるよう配慮したものである。
【0027】
また、前記連結枠(3)は、前述のように、板状の閉塞されたものではなく、開口部を形成することにより、連結枠(3)で仕切られた空隙部であっても、空隙部(4)(4´)内を自由に配管設計が可能である。これにより、空隙部(4)に配置した給水ポンプ(P1)から各フロート(2)内のバラスト槽(2c)に向けて給水可能に連通される給水管(5a)を設けており、各フロート(2)内のバラスト槽(2c)内に配設した排水ポンプ(P2)から排水管(5b)が設けられており、台船(1)の艫から海中に向け放出されるよう構成されており、放出状況を目視できる。なお、
図5に示すように、給水ポンプ(P1)及び排水ポンプ(P2)、管(5)は、フロート(2a)だけのものを図示したが、これらは、他の左舷後、右舷前、右舷後の各フロート(2a´)(2b)(2b´)にもそれぞれ設けられている。
【0028】
前記各フロート(2)内には、空気槽(2d)とバラスト槽(2c)を備えており、台船(1)が海面より浮上している場合は、バラスト槽(2c)内は空であり、空気槽(2d)内のエアーの浮力で浮上している。台船(1)を沈下させる場合には、バラスト槽(2c)内に給水ポンプ(P1)で海水を吸引してバラスト槽(2c)内に給水する。この場合、玉ブイ(6)の位置で給水した海水の量や高さ及びバランスを目視により容易に判断できるよう構成している。なお、該バラスト槽(2c)内の玉ブイ(6)は、複数個を設けている。また、他の各フロートのバラスト槽内の海水の量を、作業員が蓋付マンホール(12)から目視することが出来るよう構成している。
【0029】
前記複数のフロート(2)を列設した底部には、キール(7)を用いて、左舷・右舷の各フロート(2a)(2a´)(2b)(2b´)をそれぞれ連結し、堅牢な作業用台船(1)を構成し台船の横揺れを抑制している。
【0030】
前記甲板部(Y)上には、遮水シート(X)を台船(1)上に引き揚げる引揚げ用のポール(8)を複数本設け、これら各ポールには、それぞれ滑車(9)が取り付けられている。また、台船(1)の艫付近には、ウインチ台(10a)を設けて、甲板部(Y)より高い位置に2基のウインチ(10)を設置している。核ウインチは、回転ハンドルまたは、原動機の回転力を歯車装置等で減速してロープ(Z)をドラムで巻き取り、あるいは、巻き戻している。また、台の横には起動盤(13)が設けられている。
【0031】
さらに、各ポール(8)は、遮水シート(X)を台船(1)上に引き揚げる際に、ロープ(Z)の一端を、遮水シート(X)に固定し、多端を、前記滑車(9)を介してウインチ(10)に巻きつけて使用するものである。前記ポール(8)は、フロート(2)上に設けており、不要時には台船(1)より取り外しできるよう着・脱可能に設けている。
【0032】
また、ロープ(Z)は、その素材は問わないし、台船(1)上で遮水シート(X)の溶着作業に使用する器具は、市販のものを使用する。また、(12)は、台船(1)の甲板部(Y)を構成する各フロート(2)に設けた蓋付マンホールであり、フロート内で作業を行う際に出入りに使用するものである。
【0033】
さらに、前記台船(1)の舳先に、遮水シート(X)を台船上に引き揚げる際のガイドとなるガイド板(11)は、ヒンジを用いて台船と枢着すると共に、先端に浮力体を設けており、該ガイド板は沈下時には海面に対し先端起伏し、遮水シートを台船上に引き揚げる際には台船に対して斜めにし、該ガイド板上から台船上に引き揚げるものである。浮上時には、該遮水シートのガイド板にストッパー(14)を設けており倒伏しないものである。
【0034】
なお、
図6は、作業台船(1)の使用状況を示す説明図であり、上の図は、作業台船曳航時の状態を示し、中の図は、遮水シート接合作業時の状態を示し、下の図は、遮水シートを持ち上げ、溶着作業の状態を示す説明図である。また、
図7は、溶着作業時の一例を示す説明図である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明の作業用台船の技術を確立し、実施することにより産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0036】
1 台船
2 フロート
2a 左舷前フロート
2a´左舷後フロート
2b 右舷前フロート
2b´右舷後フロート
2c バラスト槽
2d 空気槽
3 連結枠
4、4´ 空隙部
4a 上板
5 管
5a 給水管
5b 排水管
6 玉ブイ
7 キール
8 ポール
9 滑車
10 ウインチ
10a ウインチ台
11 ガイド板
12 蓋付マンホール
13 起動盤
14 ストッパー
P1 給水ポンプ
P2 排水ポンプ
X 遮水シート
Y 甲板部
Z ロープ
【要約】
【課題】遮水シートの海面からの引揚げ作業や、溶着後の遮水シートを海面、あるいは設置場所に戻す作業を容易にできる作業用台船を開発・提供するものである。
【解決手段】沈下した状態で遮水シートを台船上に引揚げ、浮上した状態で遮水シートを溶着する作業用台船において、直方体状のフロート(2)を、左舷・右舷にそれぞれ複数個を、連結枠(3)を介して列設し、さらに、左舷前フロート(2a)と右舷前フロート(2b)とを、連結枠を介して台船(1)を形成し、これら、列設したフロート間に空隙部(4)(4´)を設け、該空隙槽の上面を上板(4a)で覆い、該上板と各フロートの上面とで甲板部(Y)を構成するとともに、該該空隙部(4)(4´)内に給水・排水用の管(5)を配設することを特徴とする作業用台船から構成される。
【選択図】
図5