特許第6351104号(P6351104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351104
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ドアロック制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20180625BHJP
   E05B 77/12 20140101ALI20180625BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20180625BHJP
   B60R 25/32 20130101ALI20180625BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   E05B77/12
   B60R25/24
   B60R25/32
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-174957(P2014-174957)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50393(P2016-50393A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 純
(72)【発明者】
【氏名】古新居 勝司
(72)【発明者】
【氏名】井ヶ田 誠
【審査官】 波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320747(JP,A)
【文献】 特開平09−165954(JP,A)
【文献】 特開2014−117973(JP,A)
【文献】 特開2010−205080(JP,A)
【文献】 特開2002−67692(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2331328(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00 − 49/04
E05B 77/12
B60R 25/24
B60R 25/30 − 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への衝撃を検出する衝撃検出部と、
車両の外壁部に配置される解錠用操作部と、
リクエスト信号に応答した電子キーから送信される認証用IDに対する認証動作を行う認証部と、
前記認証部における認証成立を条件にドアを解錠状態に移行させるドア制御部とを有し、
前記ドア制御部は、車内の電子キーを認証部における認証対象から除外した認証動作によりドアの解錠状態への移行を判定する通常運用モードと、
前記衝撃検出部における所定値を超える衝撃の検出を条件に移行し、移行後、前記解錠用操作部への操作、および車内外いずれかの認証可能な電子キーの存在を条件にドアを解錠状態に移行させる非常解錠モードとを有する車両のドア制御装置。
【請求項2】
前記ドア制御部は、非常解錠モードへの移行後、車内を通信領域とするリクエスト信号を送信して取得した認証用IDに対する認証部での認証成立を室内での認証可能な電子キーの存在条件充足とする請求項1記載の車両のドア制御装置。
【請求項3】
車両への衝撃を検出する衝撃検出部と、
車両の外壁部に配置される解錠用操作部と、
電子キーへのリクエスト信号に応答して該電子キーから送信される認証用IDに対する認証動作を行う認証部と、
前記認証部における認証成立を条件にドアを解錠状態に移行させるドア制御部とを有し、
前記ドア制御部は、電子キーに対する認証動作によりドアの解錠状態への移行を判定する通常運用モードと、
前記衝撃検出部における所定値を超える衝撃の検出を条件に移行し、移行後、車内乗員の存在、および前記解錠用操作部への操作を条件にドアを解錠状態に移行させる非常解錠モードとを有する車両のドア制御装置。
【請求項4】
非常解錠モードを解消して通常運用モードへの復帰操作可能な請求項1、2または3記載の車両のドア制御装置。
【請求項5】
前記非常解錠モードの解消操作が電子キーへの操作により実行可能な請求項4記載の車両のドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
事故等の際にドアロックを解錠状態に移行させて乗員の救出を可能にするドアロック制御装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、ドアロック制御装置は、ロック解除機構と停止検知手段とを有し、検知手段により車両の停止が障害物との衝突、あるいは衝突回避のための強制制動によるものと判定された場合には、ロック解除機構を作動させてアンロック状態に移行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-241151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、停止検知手段が作動する程度の衝撃を車両に故意に与えることにより解錠操作が可能になってしまうために、防盗性が低下するという欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、防盗性を低下させることなく事故時の乗員救出を可能にした車両のドア制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
車両への衝撃を検出する衝撃検出部1と、
車両の外壁部に配置される解錠用操作部2と、
リクエスト信号に応答した電子キー3から送信される認証用IDに対する認証動作を行う認証部4と、
前記認証部4における認証成立を条件にドアを解錠状態に移行させるドア制御部5とを有し、
前記ドア制御部5は、車内の電子キー3を認証部4における認証対象から除外した認証動作によりドアの解錠状態への移行を判定する通常運用モードと、
前記衝撃検出部1における所定値を超える衝撃の検出を条件に移行し、移行後、前記解錠用操作部2への操作、および車内外いずれかの認証可能な電子キー3の存在を条件にドアを解錠状態に移行させる非常解錠モードとを有する車両のドア制御装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、ドア制御部5は通常運用モードと非常解錠モードとの2種類のモードを有しており、通常運用モードにおいては、車外の電子キー3のみを対象としてリクエスト信号が送信され、これに応答して電子キー3から送信された認証用IDに対する認証部4での認証成立を条件に解錠状態への移行が行われる。
【0009】
通常運用モードにおいて車内の電子キー3を認証対象としない本発明において、乗員の意思に反する外部から操作による解錠を確実に防止することが可能になる。
【0010】
上記リクエスト信号の送信は、車外に配置された解錠操作部への操作をトリガとして実行するように構成することができる。
【0011】
これに対し、所定の大きさを超える衝撃が車両に加えられると、ドア制御部5は非常解錠モードに移行し、車内外のいずれかに認証可能な電子キー3があり、かつ、解錠用操作部2が操作されることを条件にドアを解錠状態に移行させる。
【0012】
事故等が発生して車内に救助すべき運転者等がいる場合、電子キー3も車内にあると考えられるために、車外の第三者が解錠用操作部2を操作するだけでドアの施錠状態を解除してドアを開放し、運転者を救出することが可能になる。
【0013】
さらに、本発明において、衝撃負荷時の解錠用操作部2への操作による解錠動作は、車内外いずれかの電子キー3の存在を条件とするために、無人の車両に衝撃を与えてドアを解錠状態に移行させる手口による盗難を確実に防ぐことができる。
【0014】
なお、本発明において、ドアの解錠状態への移行とは、ドアの閉扉状態を保持するためにドアに設けられるラッチ部へのハンドル装置等によるラッチ解除操作を規制するためのロック状態の解除に加え、電動式ラッチ装置におけるラッチ部の解除動作をも含むものである。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記ドア制御部5は、非常解錠モードへの移行後、車内を通信領域とするリクエスト信号を送信して取得した認証用IDに対する認証部4での認証成立を室内での認証可能な電子キー3の存在条件充足とする車両のドア制御装置を構成することができる。
【0016】
車内に認証可能な電子キー3があるか否かの判定は、例えば、乗車時の車内交信エリア内での認証成立によりセットされ、車内へのキー閉じ込め防止機能をクリアした降車検出によりリセットするフラグを設定する等の適宜の手段を利用して行うことができる。
【0017】
これに対し、非常解錠モードへの移行後に改めて車内を通信エリアとするリクエスト信号を送信し、車内の電子キー3の存在を判定する本態様において、判定精度を高めることが可能になる。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
車両への衝撃を検出する衝撃検出部1と、
車両の外壁部に配置される解錠用操作部2と、
電子キー3へのリクエスト信号に応答して該電子キー3から送信される認証用IDに対する認証動作を行う認証部4と、
前記認証部4における認証成立を条件にドアを解錠状態に移行させるドア制御部5とを有し、
前記ドア制御部5は、電子キー3に対する認証動作によりドアの解錠状態への移行を判定する通常運用モードと、
前記衝撃検出部1における所定値を超える衝撃の検出を条件に移行し、移行後、車内乗員の存在、および前記解錠用操作部2への操作を条件にドアを解錠状態に移行させる非常解錠モードとを有する車両のドア制御装置を構成することができる。
【0019】
本態様において、非常時には車内乗員の検出を条件として解錠状態への移行が可能になるために、外部からの乗員の救出が可能になり、かつ、車両に衝撃力を与えてドアを不正に解錠することも防止できる。
【0020】
車内乗員の検出は、ヒトセンサ等の他に、座席ベルト非装着時警報装置の重量センサ等、種々の周知の手段を利用することができる。
【0021】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
非常解錠モードを解消して通常運用モードへの復帰操作可能な車両のドア制御装置を構成した場合、暴行等を目的とする車内への侵入を確実に防止することが可能になる。
【0022】
乗員による解消操作は、車内に配置されたロックボタン等の操作により行うことが可能であるが、前記非常解錠モードの解消操作が電子キー3への操作により実行可能に構成することも可能であり、この場合、解消操作用の操作ボタンを新たに電子キー3に設定したり、あるいは通常のロックボタンを兼用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、防盗性を低下させることなく事故時の乗員救出を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を示す機能ブロック図である。
図2】制御部の動作フローを示す図である。
図3図1の変形例を示す機能ブロック図である。
図4図3に示す変形例の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、ドア制御装置は、ドア制御部5と、衝撃検出部1と、ドア制御部5により制御されて動作する交信部6、認証部4、および駆動制御部7を有する。
【0026】
衝撃検出部1は、車両に予め設定された値を超える衝撃力が作用すると、衝撃作用信号をドア制御部5に出力する。衝撃作用信号出力のしきい値は車両の衝突、あるいは衝突回避の急停止時の衝撃値が設定される。
【0027】
認証部4は、利用者が所持する電子キー3から出力される認証用IDを受信し、受信した認証用IDが予め登録されたIDに一致する場合には、認証成立信号をドア制御部5に出力する。
【0028】
認証部4における認証動作は、交信部6からリクエスト信号を出力することにより開始され、リクエスト信号の出力は、車両外壁部に固定された解錠用操作部2への操作をトリガとして行われる。解錠用操作部2は静電容量センサにより形成されており、解錠用操作部2への接触が検出されると、ドア制御部5は交信部6にリクエスト信号をセットし、電子キー3との一連の交信が開始される。
【0029】
電子キー3は、固有の認証用IDを有しており、リクエスト信号を受信すると、スリープ状態からウエイクアップして交信部6との交信を開始し、一連の交信過程で認証用IDを送信する。また、電子キー3には、アクティブ操作ボタン3aが配置されており、該アクティブ操作ボタン3aへの操作によりリクエスト信号の受信を待つことなく交信部6との交信を行うことができる。
【0030】
交信部6は、車内のみを通信領域に設定した車内交信部6aと、車外のみを通信領域とする車外交信部6bとを有しており、後述する通常運用モードにおいて、上記解錠用操作部2に接触すると、リクエスト信号は車外交信部6bを経由して送信される。この結果、車内の電子キー3との交信は行われることはなく、車内にのみ電子キー3がある場合には認証部4における認証が成立することはない。
【0031】
駆動制御部7は、駆動制御信号によりアクチュエータ8の動作を制御する。本例におけるアクチュエータ8は、ラッチ部9を直接操作してストライカとの係脱を直接操作するいわゆる電動ラッチ装置の駆動部として構成される。
【0032】
ラッチ部9への操作は、アクチュエータ8による直接操作以外に、ドアの外壁部に配置した操作ハンドルへの操作により行うように構成することも可能であり、この場合、アクチュエータ8は、ロック状態において操作ハンドルからのラッチ解除操作を禁止するロック部の駆動手段として使用される。
【0033】
ドア制御部5は、通常運用モードと、非常解錠モードとを有する。
【0034】
通常運用モードにおいて、ドア制御部5は、解錠用操作部2への接触操作を検出すると、車外交信部6bからリクエスト信号を送信し、電子キー3からのレスポンスに含まれる認証用IDに対する認証を行い、車外に認証可能な電子キー3が存在しない限り、上述したように、車内に電子キー3があっても認証成立状態となって解錠状態に移行することはない。
【0035】
これに対し、衝撃検出部1が所定以上の衝撃を検出すると、非常解錠モードに移行する。非常解錠モードは、車内からのキャンセル操作が可能であり、本例において、電子キー3のアクティブ操作ボタン3aを操作して行われる。
【0036】
非常解錠モードがキャンセルされなかった場合、ドア制御部5は車内用交信部6a、および車外交信部6bの双方を使用してリクエスト信号を送信し、車両内外のいずれかの電子キー3からのレスポンスがあった場合、電子キー3が存在すると判定し、これらの条件が成立した状態で解錠用操作部2への接触操作が検出されると、駆動制御部7にラッチ解除信号をセットしてラッチ部を解除する。
【0037】
図2にドア制御部5のフローチャートを示す。ドア制御部5は、起動されるとまず通常運用モードで運用され(ステップS1)、解錠用操作部2への接触が検出されると車外用交信部6bを使用してリクエスト信号を送信して車外電子キー3とのスマート通信により取得した認証用IDの認証動作を行い、認証成立時にラッチ装置を解錠状態に移行させる。
【0038】
また、通常運用モードにおいて、認証部4は電子キー3のアクティブ操作ボタン3aを操作した際に電子キー3から送信される認証用IDに対するアクティブ認証動作にも対応し、当該アクティブ認証動作による認証成立時にもラッチ装置を解錠状態に移行させる。
【0039】
以上のように通常運用モードでの運用時に衝撃検出部1において所定値以上の衝撃が検出されると(ステップS2)、非常解錠モードに移行し、まず、電子キー3のアクティブ操作ボタン3aの操作によるモードキャンセル操作が行われていないかどうかを判定する(ステップS3)。
【0040】
ステップS3でキャンセル操作が検出されたときには、通常運用モードに復帰し、検出されなかった場合には、キャンセル操作の検出があるまで解錠用操作部2の出力を監視する(ステップS4)。
【0041】
ステップS4で解錠用操作部2への操作が検出されると、電子キー3とのスマート通信を確立するために、まず、車内交信部6aを使用して車内電子キー3を探索し(ステップS5、6)、車内に電子キー3がなかった場合、車外交信部6bを使用して車両近くの車外電子キー3を探索する(ステップS7)。
【0042】
ステップS6、S7において車内外の電子キー3からの応答がなかった場合、非常解錠モードが解消されて通常運用モードに復帰し、電子キー3からの応答があった場合、電子キー3からの認証用IDに対する認証の可否を判定する(ステップS8)。
【0043】
ステップS8で認証が成立すると、ラッチ装置のラッチ部9を解除した後(ステップS9)、非常解錠モードを解消して通常運用モードに復帰し、認証が成立しなかった場合には、ラッチ装置への状態遷移操作をすることなく直接通常運用モードに復帰する。
【0044】
なお、以上においては、非常解錠モード後、電子キー3に対する認証を解錠条件とする場合を示したが、車内に非常解錠モード移行後、車内に乗員がいることを解錠条件とすることができる。
【0045】
この場合、ドア制御装置には、図3に示すように、車内の乗員を検出するための乗員検出部10が設けられる。この乗員検出部10は、座席ベルト非装着時警報装置の重量センサを使用して形成され、図4に示すように、解錠用操作部2への操作が検出された後(ステップS4)、乗員検出部10からの出力を判定し(ステップS41)、乗員が検出された場合に解錠状態への移行動作を行う。
【0046】
なお、図3、4において上述した実施の形態と実質的に同一の構成要素、動作ステップは図中に同一符号、ステップ番号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0047】
1 衝撃検出部
2 解錠用操作部
3 電子キー
4 認証部
5 ドア制御部
図1
図2
図3
図4