特許第6351106号(P6351106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351106ストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351106
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20180625BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20180625BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180625BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B60T8/17 B
   B60T13/122 B
   F16J15/10 T
   F16J15/18
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-214699(P2014-214699)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-78763(P2016-78763A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】ヴィオニア日信ブレーキシステムジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田方 和宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 恒司
(72)【発明者】
【氏名】和久 隆之
(72)【発明者】
【氏名】村山 一昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治朗
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−293229(JP,A)
【文献】 特開平11−091528(JP,A)
【文献】 実開昭50−100047(JP,U)
【文献】 特開2013−212743(JP,A)
【文献】 特開2009−227173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 13/122
F16J 15/10
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作子に操作反力を付与するストロークシミュレータであって、
基体に形成された有底のシリンダ穴と、
前記シリンダ穴に挿入された中実な部材であるピストンと、
前記シリンダ穴の開口部を閉塞する蓋部材と、
前記ピストンと前記蓋部材との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記弾性部材の前記ピストン側の端部に筒状の連結部が設けられており、
前記ピストンの両端部には、前記連結部に挿入可能な突出部がそれぞれ形成され、
前記両突出部が同一形状であり、
一方の前記突出部が前記連結部に挿入されることで、前記ピストンに前記連結部が保持されるとともに、
他方の前記突出部前記シリンダ穴の底面に当接した状態で、他方の前記突出部の周囲には、前記基体の液圧路に通じる環状の圧力室が形成されることを特徴とするストロークシミュレータ。
【請求項2】
前記シリンダ穴の内周面には、環状の保持溝が形成されており、
前記保持溝に環状のシール部材が装着されていることを特徴とする請求項1に記載のストロークシミュレータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたストロークシミュレータと、
前記ブレーキ操作子の操作量に応じてブレーキ液圧を発生させる入力装置と、を備えていることを特徴とする車両用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキシステムに用いられるストロークシミュレータは、基体のシリンダ穴に挿入された有底円筒状のピストンと、シリンダ穴の開口部を閉塞する蓋部材と、ピストンと蓋部材との間に配置されたコイルばねと、を備えている。
従来のストロークシミュレータとしては、ピストンの底部の端面に突出部が形成されており、この突出部をコイルばねの端部に挿入することで、ピストンにコイルばねの端部を保持させているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−212743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のストロークシミュレータでは、ピストンの一方の端部のみにコイルばねを保持するための突出部が形成されているため、ピストンをシリンダ穴に組み込むときに、ピストンの方向(向き)を確認する必要があり、製造効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、製造効率を高めることができるストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ブレーキ操作子に操作反力を付与するストロークシミュレータである。前記ストロークシミュレータは、基体に形成された有底のシリンダ穴と、前記シリンダ穴に挿入された中実な部材であるピストンと、前記シリンダ穴の開口部を閉塞する蓋部材と、前記ピストンと前記蓋部材との間に配置された弾性部材と、を備えている。前記弾性部材の前記ピストン側の端部に筒状の連結部が設けられている。前記ピストンの両端部には、前記連結部に挿入可能な突出部がそれぞれ形成され、前記両突出部が同一形状である。一方の前記突出部が前記連結部に挿入されることで、前記ピストンに前記連結部が保持されるとともに、他方の前記突出部前記シリンダ穴の底面に当接した状態で、他方の前記突出部の周囲には、前記基体の液圧路に通じる環状の圧力室が形成される。
【0007】
なお、弾性部材としては、例えば、コイルばねを用いることができる。さらに、弾性部材は、一つの部品によって構成してもよく、または、コイルばねなどの部品の端部に筒状の部品を取り付けた構成でもよい。
【0008】
本発明のストロークシミュレータでは、弾性部材を保持するための突出部がピストンの両端部に形成されており、ピストンをシリンダ穴に組み込むときに、ピストンの方向を確認する必要がなくなるため、製造効率を高めることができる。
【0009】
また、本発明のストロークシミュレータでは、シリンダ穴内でピストンが最も底面側に移動したときに、他方の突出部がシリンダ穴の底面に当接し、突出部の周囲に空間が形成されるため、ピストンの端面と底面との間にブレーキ液が流入する空間を確保することができる。
【0010】
前記したストロークシミュレータでは、前記両突出部が同一形状であり、ピストンの方向性を無くすことができるため、ピストンの方向が誤って組み込まれるのを防ぐことができる。
また、ピストンの方向によって、ストロークシミュレータの加圧特性に変化が生じるのを確実に防ぐことができるとともに、ピストンの加工が容易になる。
【0011】
前記したストロークシミュレータでは、前記ピストンが中実な部材であるため、ピストンが中空な部材である場合に比べて、ピストンの加工が容易になる。
【0012】
前記したストロークシミュレータにおいて、前記シリンダ穴の内周面に環状の保持溝を形成し、前記保持溝に環状のシール部材を装着した場合には、ピストンの外周面に保持溝を加工する必要がなくなるため、ピストンの加工が容易になる。
【0013】
本発明の車両用ブレーキシステムは、前記した本発明のストロークシミュレータと、前記ブレーキ操作子の操作量に応じてブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生装置と、を備えている。この構成では、車両用ブレーキシステムの製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステムでは、ピストンをシリンダ穴に組み込むときに、ピストンの方向を確認する必要がなくなるため、製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るストロークシミュレータを用いた車両用ブレーキシステムを示した模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るストロークシミュレータを示した側断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るピストンを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のストロークシミュレータおよび車両用ブレーキシステムの実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明では、最初に車両用ブレーキシステムの全体構成について説明した後に、ストロークシミュレータについて詳細に説明する。
【0017】
車両用ブレーキシステムAは、図1に示すように、原動機(エンジンや電動モータなど)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものである。
【0018】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0019】
車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルB(特許請求の範囲における「ブレーキ操作子」)のストローク量(作動量)に応じてブレーキ液圧を発生させる入力装置A1を備えている。
また、車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルBのストローク量に応じてモータ(電動アクチュエータ)を駆動させることでブレーキ液圧を発生させるスレーブシリンダA2を備えている。
さらに、車両用ブレーキシステムAは、車両挙動の安定化を支援する液圧制御装置A3を備えている。
入力装置A1、スレーブシリンダA2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0020】
入力装置A1は、基体100と、ブレーキペダルBのストローク量に応じてブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ1と、ブレーキペダルBに擬似的な操作反力を付与するストロークシミュレータ2と、電子制御装置7と、を備えている。
【0021】
基体100は、車両に搭載される金属製のブロックであり、二つのシリンダ穴11,12および複数の液圧路9a〜9cが形成されている。また、基体100には、リザーバ3などの各種部品が取り付けられる。
【0022】
マスタシリンダ1は、タンデムピストン型であり、二つのピストン1a,1bと、二つのコイルばね1c,1dとから構成されている。マスタシリンダ1は、有底円筒状の第一シリンダ穴11内に設けられている。
【0023】
第一シリンダ穴11の底面と、第一ピストン1aとの間には、第一圧力室1eが形成されている。第一圧力室1eには、第一コイルばね1cが収容されている。第一コイルばね1cは、底面側に移動した第一ピストン1aを開口部側に押し戻すものである。
【0024】
第一ピストン1aと、第二ピストン1bとの間には、第二圧力室1fが形成されている。第二圧力室1fには、第二コイルばね1dが収容されている。第二コイルばね1dは、底面側に移動した第二ピストン1bを開口部側に押し戻すものである。
【0025】
ブレーキペダルBのロッドB1は、第一シリンダ穴11内に挿入されている。ロッドB1の先端部は、第二ピストン1bに連結されている。これにより、第二ピストン1bは、ロッドB1を介してブレーキペダルBに連結されている。
第一ピストン1aおよび第二ピストン1bは、ブレーキペダルBの踏力を受けて第一シリンダ穴11内を底面側に摺動し、両圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。
【0026】
リザーバ3は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、基体100の上面に取り付けられている。両圧力室1e,1fには、連通穴3a,3aを通じてリザーバ3からブレーキ液が補給される。
【0027】
ストロークシミュレータ2は、ピストン21と、二つのコイルばね22,23と、蓋部材24とから構成されている。ストロークシミュレータ2は、有底円筒状の第二シリンダ穴12内に設けられている。第二シリンダ穴12の開口部は蓋部材24によって閉塞されている。
【0028】
第二シリンダ穴12の底面12dと、ピストン21との間には圧力室12cが形成されている。また、ピストン21と蓋部材24との間には、収容室12bが形成されている。収容室12bには、二つのコイルばね22,23が収容されている。両コイルばね22,23は、蓋部材24側に移動したピストン21を底面12d側に押し戻すとともに、ブレーキペダルBに操作反力を付与するものである。
【0029】
次に、入力装置A1の基体100内に形成された各液圧路について説明する。
第一メイン液圧路9aは、第一シリンダ穴11の第一圧力室1eを起点とする液圧路である。第一メイン液圧路9aの終点である出力ポートには、液圧制御装置A3に至る配管Haが連結されている。
【0030】
第二メイン液圧路9bは、第一シリンダ穴11の第二圧力室1fを起点とする液圧路である。第二メイン液圧路9bの終点である出力ポートには、液圧制御装置A3に至る配管Hbが連結されている。
【0031】
分岐液圧路9cは、第一メイン液圧路9aから分岐して、ストロークシミュレータ2の圧力室12cに至る液圧路である。
【0032】
第一メイン液圧路9aにおいて、分岐液圧路9cとの連結部位よりも下流側(出力ポート側)には、第一メイン液圧路9aを開閉する常開型の電磁弁4が設けられている。この電磁弁4は、マスタカット弁であり、閉弁した状態に切り換わることで、第一メイン液圧路9aの上流側と下流側とを遮断する。
【0033】
第二メイン液圧路9bには、第二メイン液圧路9bを開閉する常開型の電磁弁5が設けられている。この電磁弁5は、マスタカット弁であり、閉弁した状態に切り換わることで、第二メイン液圧路9bの上流側と下流側とを遮断する。
【0034】
分岐液圧路9cには、常閉型の電磁弁6が設けられている。この電磁弁6は分岐液圧路9cを開閉するものである。
【0035】
二つの圧力センサP1,P2は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものである。両圧力センサP1,P2で取得された情報は電子制御装置7に出力される。
【0036】
第一メイン液圧路9aの圧力センサP1は、電磁弁4よりも下流側(出力ポート側)に配置されており、スレーブシリンダA2で発生したブレーキ液圧を検知する。
第二メイン液圧路9bの圧力センサP2は、電磁弁5よりも上流側(マスタシリンダ1側)に配置されており、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧を検知する。
【0037】
電子制御装置7は、圧力センサP1,P2やストロークセンサなどの各種センサから得られた情報や予め記憶させておいたプログラムなどに基づいて、各電磁弁4〜6の開閉を制御する。
【0038】
スレーブシリンダA2は、図示は省略するが、シリンダ穴内を摺動するスレーブピストンと、モータおよび駆動力伝達部を有するアクチュエータ機構と、電子制御装置と、を備えている。
スレーブシリンダA2では、モータの回転駆動力を駆動力伝達部が進退運動に変換してスレーブピストンに伝達する。これにより、スレーブピストンがシリンダ穴内を摺動して、シリンダ穴内のブレーキ液を加圧する。スレーブシリンダA2で発生したブレーキ液圧は、配管Hc,Hdから配管Ha,Hbを通じて液圧制御装置A3に入力される。
【0039】
液圧制御装置A3は、車輪ブレーキの各ホイールシリンダWに付与するブレーキ液圧を制御するものであり、アンチロックブレーキ制御、車両の挙動を安定化させる横滑り制御、トラクション制御などを実行し得る構成を備えている。
なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプなどが設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータなどを制御するための電子制御装置などを備えている。
液圧制御装置A3は、配管Ha,Hbを介して入力装置A1に接続されるとともに、配管Ha,Hcおよび配管Hb,Hdを介してスレーブシリンダA2に接続されている。さらに、液圧制御装置A3は、配管を介して各ホイールシリンダWに接続されている。
【0040】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAでは、ブレーキペダルBが操作されたことをストロークセンサが検出すると、電子制御装置7は常開型の両電磁弁4,5を閉弁した状態に切り替える。これにより、両メイン液圧路9a,9bの上流側と下流側とが遮断される。
【0041】
また、電子制御装置7は常閉型の電磁弁6を開弁する。これにより、第一メイン液圧路9aから分岐液圧路9cを通じてストロークシミュレータ2にブレーキ液が流入可能となる。
【0042】
マスタシリンダ1の両ピストン1a,1bは、ブレーキペダルBの踏力を受けて第一シリンダ穴11内を底面側に摺動し、両圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。このとき、両メイン液圧路9a,9bの上流側と下流側とが遮断されているため、両圧力室1e,1fで発生したブレーキ液圧はホイールシリンダWに伝達されない。
【0043】
また、第一圧力室1e内のブレーキ液が加圧されると、第一メイン液圧路9aから分岐液圧路9cにブレーキ液が流入する。そして、ストロークシミュレータ2の圧力室12c内のブレーキ液が加圧され、ピストン21がコイルばね22,23の付勢力に抗して蓋部材24側に移動する。
これにより、ブレーキペダルBがストロークするとともに、ピストン21には、コイルばね22,23によって、底面側に向けて付勢力が発生し、ピストン21からブレーキペダルBに対して擬似的な操作反力が付与される。
【0044】
また、ストロークセンサによって、ブレーキペダルBの踏み込みが検出されると、スレーブシリンダA2のモータが駆動する。
電子制御装置7では、スレーブシリンダA2から出力されたブレーキ液圧と、マスタシリンダ1から出力されたブレーキ液圧とを対比し、その対比結果に基づいてモータの回転数などを制御する。
このようにして、スレーブシリンダA2では、ブレーキペダルBのストローク量に応じてブレーキ液圧を発生させる。
【0045】
スレーブシリンダA2で発生したブレーキ液圧は、配管Hc,Hdから配管Ha,Hbを通じて、液圧制御装置A3に入力される。
さらに、液圧制御装置A3から各ホイールシリンダWにブレーキ液圧が伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより、各車輪に制動力が付与される。
【0046】
なお、スレーブシリンダA2が作動しない状態(例えば、電力が得られない場合など)においては、常開型の両電磁弁4,5は開弁した状態であり、両メイン液圧路9a,9bの上流側と下流側とが連通している。また、常閉型の電磁弁6は閉弁している。
この状態では、マスタシリンダ1によって両メイン液圧路9a,9bのブレーキ液圧が昇圧される。そして、両メイン液圧路9a,9bに通じている各ホイールシリンダWが昇圧し、車輪に制動力が付与される。
【0047】
次に、本実施形態のストロークシミュレータ2の具体的な構成について説明する。
ストロークシミュレータ2は、図2に示すように、基体100に形成された有底の第二シリンダ穴12と、第二シリンダ穴12に挿入されたピストン21と、第二シリンダ穴12の開口部を閉塞する蓋部材24と、を備えている。
また、ストロークシミュレータ2は、ピストン21と蓋部材24との間に配置された第一コイルばね22および第二コイルばね23を備えている。
【0048】
第二シリンダ穴12は、段付きの円筒状の穴であり、基体100の一面に開口している。第二シリンダ穴12には、底面12dから軸方向の略中央部に亘って第一収容室12aが形成されるとともに、軸方向の略中央部から開口部に亘って第二収容室12bが形成されている。
このように、第二シリンダ穴12の先端側(底面12d側)には、第一収容室12aが形成されており、第二シリンダ穴12の基端側(開口部側)には、第二収容室12bが形成されている。
また、第二収容室12bは第一収容室12aよりも拡径されている。また、第一収容室12aには、ピストン21が収容されている。
【0049】
第一収容室12aの内周面のうち、軸方向の略中央部には内周面の全周に亘って保持溝12gが形成されている。保持溝12gには環状のシール部材25が嵌め込まれている。
シール部材25は、底面12dから先端側に向かうに従って拡径された環状のリップ部25aを有するカップシールであり、ピストン21に外嵌されている。
また、第一収容室12aの内周面のうち、保持溝12gよりも底面12d側には、分岐液圧路9cが開口している。
【0050】
ピストン21は、図3に示すように、中実な(中空ではない)円柱状の部材である。ピストン21は、図2に示すように、第一収容室12a内に収容されており、第一収容室12a内で軸方向に往復動自在である。
また、シール部材25の内周部がピストン21の外周面に接することで、ピストン21の外周面と第一収容室12aの内周面との間が液密にシールされている。
【0051】
ピストン21の先端面21aの中央部および基端面21bの中央部には、円柱状の突出部21c,21dが突設されている(図3参照)。
本実施形態では、先端面21aの突出部21cと、基端面21b側の突出部21dとが同一形状に形成されている。
したがって、ピストン21は、軸方向の中央部を境界として、軸方向に対称な形状に形成されており、軸方向の方向性が無いように構成されている。
【0052】
ピストン21の先端面21aと、第一収容室12aの底面12dとの間には、圧力室12cが形成されている。
なお、ピストン21が第二シリンダ穴12内で最も底面12d側(先端側)に移動したときには、先端側の突出部21cが底面12dに当接し、突出部21cの周囲に環状の空間が形成される。
したがって、ピストン21が最も底面12d側に移動した状態であっても、ピストン21の先端面21aと底面12dとの間に圧力室12cを確保することができる。
【0053】
また、ピストン21の先端側の突出部21cが底面12dに当接した状態では、圧力室12cに分岐液圧路9cが連通している。
これにより、図1に示すように、マスタシリンダ1の第一圧力室1eは、第一メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9cを通じて、ストロークシミュレータ2の圧力室12cと連通する。
そして、圧力室12c内のブレーキ液圧が大きくなると、ピストン21の先端部がブレーキ液圧に押されて、ピストン21が基端側に向けて移動する。
【0054】
また、図2に示すように、基端側の突出部21dは、ピストン21の先端側の突出部21cが底面12dに当接した状態で第二収容室12b内に突出している。
【0055】
蓋部材24は、第二収容室12bの基端部に内嵌されており、第二シリンダ穴12の開口部を閉塞している。第二収容室12bの内周面の溝に嵌め込まれたクリップ24cによって、蓋部材24の抜け止めが構成されている。また、蓋部材24の先端面の中央部には、円柱状のガイド部24bが突設されている。
【0056】
蓋部材24の外周面には、保持溝24eが全周に亘って形成されている。保持溝24eには環状のシール部材24fが嵌め込まれている。このシール部材24fの外周部が収容室12bの内周面に接することで、蓋部材24の外周面と第二収容室12bの内周面との間が液密にシールされている。
【0057】
第二収容室12b内において、ピストン21と蓋部材24との間には、第一コイルばね22および第二コイルばね23が収容されている。
第一コイルばね22のピストン21側の端部には、第一連結部材26(特許請求の範囲における「連結部」)が設けられている。また、第二コイルばね23のピストン21側の端部には、第二連結部材27が設けられている。
本実施形態では、両コイルばね22,23および両連結部材26,27が特許請求の範囲における「弾性部材」に相当する。
【0058】
第一連結部材26は、ピストン21の基端面21bに取り付けられている。第一連結部材26には、ピストン21側が開口した有底の円筒部26bと、円筒部26bの先端側の開口縁部に形成されたフランジ26aと、が形成されている。
【0059】
第一連結部材26の円筒部26bには、ピストン21の基端側の突出部21dが挿入されている。突出部21cは円筒部26b内に内嵌されている。また、第一連結部材26のフランジ26aは、ピストン21の基端面21bに重ねられている。このように、第一連結部材26の円筒部26bにピストン21の基端側の突出部21dが挿入されることで、第一連結部材26がピストン21に保持されている。
また、第一連結部材26の円筒部26bは、第一コイルばね22に挿入される部位である。円筒部26bの底部は、フランジ部26aよりも蓋部材24側に位置していて、第一コイルばね22に入り込んでいる。円筒部26bの底部には、取付穴26cが貫通している。
【0060】
ピストン21と蓋部材24との間には、第二連結部材27が配置されている。第二連結部材27には、ピストン21側が開口した有底の円筒部27bと、円筒部27bの先端側の開口縁部に形成されたフランジ部27aと、が形成されている。
【0061】
第二連結部材27の円筒部27bは、第一連結部材26の円筒部26bよりも拡径されている。第二連結部材27の円筒部27bには、第一連結部材26の円筒部26bが挿入されている。また、第二連結部材27の円筒部27bは、第二コイルばね23に挿入される部位である。円筒部27bの底部は、フランジ部27aよりも蓋部材24側に位置していて、第二コイルばね23に入り込んでいる。
【0062】
第一連結部材26の円筒部26bの底部と、第二連結部材27の円筒部27bの底部とは、連結ピン28を介して連結されている。連結ピン28には、軸部28aと、軸部28aの先端部に形成された抜け止め部28bと、が形成されている。
【0063】
軸部28aは、第一連結部材26の取付穴26cに挿通されており、第一連結部材26に対して軸方向に移動自在である。
抜け止め部28bは、第一連結部材26の円筒部26b内に配置されており、取付穴26cよりも拡径されている。
【0064】
連結ピン28の軸部28aの基端部は、第二連結部材27の円筒部27bの底部に固定されている。
このように、第二連結部材27は、連結ピン28を介して、第一連結部材26に連結されている。そして、第二連結部材27は、連結ピン28にガイドされながら、第一連結部材26に対して第二シリンダ穴12の軸方向に移動自在である。
【0065】
連結ピン28の軸部28aにおいて、第一連結部材26と第二連結部材27との間となる部位には、円筒状のブッシュ29が外嵌されている。ブッシュ29はゴム製や合成樹脂製の弾性部材である。
【0066】
第一コイルばね22は、第二収容室12b内に収容されており、第一連結部材26と第二連結部材27との間に介設されている。
第一コイルばね22の先端部には、第一連結部材26の円筒部26bが挿入されている。また、第一コイルばね22の先端部は、第一連結部材26のフランジ26aに当接している。
第一コイルばね22の基端部は、第二連結部材27の円筒部27bに挿入されており、第二連結部材27の円筒部27bの底部に当接している。
【0067】
第二コイルばね23は、収容室12b内に収容されており、第二連結部材27と蓋部材24との間に配置されている。第二コイルばね23の内径は、第一コイルばね22の外径よりも大きく形成されており、第二コイルばね23のばね定数は、第一コイルばね22のばね定数よりも大きく設定されている。
【0068】
第二コイルばね23の基端部には、蓋部材24のガイド部24bが挿入されている。
第二コイルばね23の先端部には、第二連結部材27の円筒部27b、第一コイルばね22の基端部および第一連結部材26の円筒部26bが挿入されている。また、第二コイルばね23の先端部は、第二連結部材27のフランジ部27aに当接している。
【0069】
前記したストロークシミュレータ2は、以下のように動作する。
図1に示すように、車両用ブレーキシステムAにおいて、常開型の電磁弁4が閉弁するとともに、常閉型の電磁弁6が開弁した状態では、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧が、第一メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9cを通じて、ストロークシミュレータ2の圧力室12c内に伝達される。
【0070】
そして、圧力室12c内のブレーキ液圧によって、ピストン21が蓋部材24側に押し出されると、両コイルばね22,23が収縮する。これにより、ピストン21に対して両コイルばね22,23の反力が作用し、ブレーキペダルB(図1参照)に対して操作反力が付与される。
【0071】
以上のようなストロークシミュレータ2では、図2に示すように、両コイルばね22,23および両連結部材26,27を保持するための突出部21c,21dが、ピストン21の両端部に形成されている(図3参照)。これにより、ピストン21を第二シリンダ穴12に組み込むときに、ピストン21の方向を確認する必要がなくなるため、製造効率を高めることができる。
【0072】
また、本実施形態のストロークシミュレータ2では、ピストン21の両突出部21c,21dが同一形状であり、ピストン21の方向性を無くすことができるため、ピストン21の方向が誤って組み込まれてしまうのを防ぐことができる。また、ピストン21の方向によって、ストロークシミュレータ2の加圧特性に変化が生じるのを確実に防ぐことができる。
【0073】
また、本実施形態のストロークシミュレータ2では、ピストン21が中実な円柱状の部材であるとともに、ピストン21は軸方向の中央部を境界として、軸方向に対称な形状に形成されている。さらに、第二シリンダ穴12側にシール部材25が装着されており、ピストン21の外周面に保持溝を加工する必要がない。したがって、本実施形態のストロークシミュレータ2では、ピストン21の加工が容易である。
【0074】
そして、図1に示すように、本実施形態のストロークシミュレータ2を車両用ブレーキシステムAに適用することで、車両用ブレーキシステムAの製造効率を高めることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、図2に示すように、第一コイルばね22の端部に第一連結部材26が設けられているが、第一コイルばね22の開口端部を直接ピストン21に当接させてもよい。この場合には、第一コイルばね22のピストン21側の開口端部が、特許請求の範囲の「連結部」に相当するものである。
【0076】
本実施形態では、弾性部材としてコイルばね22,23を用いているが、弾性部材の構成は限定されるものではなく、例えば、ゴム部材を用いてもよい。
【0077】
本実施形態では、第二シリンダ穴12の保持溝12gにシール部材25が装着されているが、ピストン21の外周面に保持溝を形成し、ピストン21側にシール部材25を装着してもよい。この場合には、ピストン21の軸方向の中央部に保持溝を形成することで、ピストン21の方向性を無くすことが望ましい。
【0078】
本実施形態では、図1に示すように、マスタシリンダ1およびストロークシミュレータ2を基体100内に設けているが、マスタシリンダ1とストロークシミュレータ2とを別体に形成してもよい。さらに、マスタシリンダ1、ストロークシミュレータ2およびスレーブシリンダA2を一つの基体に設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 マスタシリンダ
1a 第一ピストン
1b 第二ピストン
1e 第一圧力室
1f 第二圧力室
2 ストロークシミュレータ
3 リザーバ
4 常開型の電磁弁
5 常開型の電磁弁
6 常閉型の電磁弁
7 電子制御装置
9a 第一メイン液圧路
9b 第二メイン液圧路
9c 分岐液圧路
11 第一シリンダ穴
12 第二シリンダ穴
12a 第一収容室
12b 第二収容室
12c 圧力室
12d 底面
12g 保持溝
21 ピストン
21a 先端面
21b 基端面
21c 先端側の突出部
21d 基端側の突出部
24 蓋部材
25 シール部材
26 第一連結部材
26b 円筒部
27 第二連結部材
27b 円筒部
100 基体
A 車両用ブレーキシステム
A1 入力装置
A2 スレーブシリンダ
A3 液圧制御装置
B ブレーキペダル
P1 圧力センサ
P2 圧力センサ
W ホイールシリンダ
図1
図2
図3