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特許6351121クランプシステム、クランプシステム用の把持装置、およびクランプシステムを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351121
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】クランプシステム、クランプシステム用の把持装置、およびクランプシステムを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/54 20060101AFI20180625BHJP
   E21B 19/10 20060101ALI20180625BHJP
   B66C 1/44 20060101ALI20180625BHJP
   E21B 19/07 20060101ALI20180625BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B66C1/54
   E21B19/10
   B66C1/44 N
   E21B19/07
   E02D13/00 Z
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-557966(P2015-557966)
(86)(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公表番号】特表2016-515987(P2016-515987A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】NL2014050088
(87)【国際公開番号】WO2014126465
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】2010299
(32)【優先日】2013年2月14日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507009331
【氏名又は名称】アイエイチシー・ホランド・アイイー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ベルダー, コーネリス
(72)【発明者】
【氏名】ムルデライ, クラース−ジャン
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03720435(US,A)
【文献】 実開昭54−089775(JP,U)
【文献】 実開昭49−020260(JP,U)
【文献】 実開昭54−178374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 − 3/20
E02D 7/00 − 13/10
E21B 1/00 − 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭、管その他の細長い物体(16)のためのクランプシステムであって、
長手方向軸線を定める枠(4)であり、前記物体および前記枠(4)が、前記枠(4)の前記長手方向軸線が前記物体(16)の長手方向軸線に概ね平行となるように配置される、枠(4)と、
前記物体(16)を前記枠(4)に固定するためのクランプ手段(2)と
を備えるクランプシステムにおいて、前記クランプ手段が、
前記枠(4)の前記長手方向軸線に対して横方向に向けられた回転軸線に従って、前記枠(4)に回転可能に連結されている少なくとも1つの把持装置(3)であり、前記物体(16)を前記枠(4)に固定する把持状態、および非把持状態を有する、少なくとも1つの把持装置(3)と、
前記把持装置(3)の端部位置を定める少なくとも1つの停止部(25)とを備え、
前記把持状態にあり前記端部位置に配置されている前記把持装置(3)が、前記枠(4)に対して前記物体(16)が、前記枠(4)の前記長手方向軸線に沿って第1の軸線方向に変位することを妨げ、前記把持装置(3)が、前記第1の軸線方向で前記停止部(25)に対して押しつけられた状態で保持され、かつ前記枠に対して前記物体(16)が前記第1の軸線方向とは反対の第2の軸線方向に変位することを可能にすることを特徴とする、クランプシステム。
【請求項2】
把持装置(3)が、それぞれのピボット(22)により前記枠(4)に取り付けられており、前記枠(4)の前記長手方向軸線に対して半径方向に向けられた作動位置と、前記半径方向に向けられた作動位置に対して傾斜した非作動位置との間で変位可能である、請求項1に記載のクランプシステム。
【請求項3】
前記停止部(25)が、前記枠(4)および/またはベース即ち取付台(21)に設けられている、請求項2に記載のクランプシステム。
【請求項4】
把持装置(3)が、前記停止部(25)に向けて付勢されている、請求項3に記載のクランプシステム。
【請求項5】
中空の前記物体(16)の内面を把持するために前記把持装置(3)が組み込まれる、中空体(16)に導入するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項6】
前記枠(4)が、前記物体(16)を収容するための通路(9)を画定し、前記物体の外面(30)を把持するために前記把持装置が組み込まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項7】
前記枠(4)が、ヒンジ(7)を介して互いに連結された枠半体(5、6)を備え、前記ヒンジのヒンジ軸線が、前記枠(4)の前記長手方向軸線に概ね平行であり、前記枠半体(5、6)が、前記物体の周囲で互いに閉じられた作動位置と、前記枠(4)が前記物体(16)に接して配置され得る開位置との間で移動可能である、請求項6に記載のクランプシステム。
【請求項8】
閉鎖手段(8)が、前記枠半体を互いに押しつけた状態で保持し、また前記枠半体を自由にするように、前記枠半体(5、6)に設けられている、請求項7に記載のクランプシステム。
【請求項9】
楔型クランプ(1)を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のクランプシステムであって、前記楔型クランプ(1)が、前記枠に関連付けられた楔組立体(11)を含み、前記楔組立体(11)が、前記長手方向軸線に従う前記物体に対する前記楔型クランプの相対的な変位の結果として、前記物体との摩擦係合を提供する、クランプシステムにおいて、
把持装置(3)が、前記物体と前記楔型クランプ(1)との前記相対的な変位の間に、前記楔組立体(11)と前記物体(16)との間の前記摩擦係合を確立するために、前記物体(16)が前記把持装置により前記枠(4)に保持されている前記把持状態から前記非把持状態に移るように、前記楔組立体に対して配置されていることを特徴とする、クランプシステム。
【請求項10】
前記楔組立体(11)および把持装置(3)が、中空の前記物体(16)の前記内面と係合するために、前記枠(4)に対して外向きに向けられている、請求項5に従属する請求項9に記載のクランプシステム。
【請求項11】
前記楔組立体(11)および把持装置(3)が、前記物体(16)の前記外面(30)と係合するために、前記枠(4)に対して内向きに向けられている、請求項6に従属する請求項9に記載のクランプシステム。
【請求項12】
把持装置(3)が、前記楔組立体(11)から軸線方向に距離をおいて配置されている、請求項9〜11のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項13】
把持装置(3)が、前記枠(4)に対する前記物体の前記相対的な変位の方向に半径方向の位置から旋回可能であり、もって、前記楔組立体と前記枠(4)との間の摩擦係合を生じさせる、請求項9〜12のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項14】
前記枠(4)が、軸線方向の両側の端部を有し、把持装置(3)が、前記楔組立体(11)のクランプ方向を向く前記端部に配置されている、請求項9〜13のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項15】
複数の把持装置(3)が設けられており、前記把持装置が、環状に距離を置いて配置され、前記枠(4)の前記長手方向軸線に対して横方向に向けられている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のクランプシステムのための把持装置(3)であって、
ピストン/シリンダ装置の為のアクチュエータ(17)であり、ピストン(19)がシリンダ(18)に対して伸長する作動位置と、前記ピストン(19)が前記シリンダ(18)に対して後退する非作動位置との間で移動可能な、アクチュエータ(17)と、
前記枠(4)に取り付けるための取付台、即ちベース(21)であり、前記アクチュエータ(17)が、ピボット(22)を介して前記ベースに連結されており、前記ピボット(22)のピボット軸線が、前記アクチュエータ(17)の伸長/後退の方向に対して横方向に向けられている、取付台、即ちベース(21)と
を備える把持装置(3)。
【請求項17】
前記取付台、即ちベース(21)が、前記アクチュエータ(17)の第1の位置、即ち把持位置を定める停止手段(25)を含み、前記アクチュエータが、前記第1の位置から第2の位置、即ち自由位置に旋回可能である、請求項16に記載の把持装置(3)。
【請求項18】
付勢手段(24)が、前記アクチュエータ(17)を前記停止手段(25)に向けて付勢するために設けられている、請求項17に記載の把持装置(3)。
【請求項19】
請求項10、または請求項10に従属する請求項12〜15のいずれか一項に記載の前記クランプシステムにより、中空の細長い物体(16)を持ち上げる方法であって、
前記枠(4)を横たわった前記物体(16)内に導入するステップと、
前記横たわった物体(16)の前記内面に係合するように、前記楔組立体(11)を作動させるステップと、
前記横たわった物体(16)の前記内面を把持するように、1つ以上の把持装置(3)を作動させるステップと、
前記把持装置によって把持された前記物体を持ち上げ、前記物体を直立位置に向けて移動させるステップと、
前記物体を前記直立位置に移動させる過程の間に、前記クランプシステムの前記楔組立体(11)と前記物体(16)との間の摩擦係合を提供するか、または強めるように、前記物体を前記枠(4)に対して変位させるステップと、
前記物体を前記直立位置に移動させる過程の間に、前記把持装置を前記把持状態から前記非把持状態に移行させるステップと
を含む方法。
【請求項20】
請求項11、または請求項11に従属する場合の請求項12〜15のいずれか一項に記載の前記クランプシステムにより、細長い物体(16)を持ち上げる方法であって、
横たわった物体(16)の周囲に前記枠(4)を取り付けるステップと、
前記横たわった物体(16)の前記外面(30)に係合するように、前記楔組立体(11)を作動させるステップと、
前記横たわった物体(16)の前記外面(30)を把持するように、1つ以上の把持装置(3)を作動させるステップと、
前記把持装置によって把持された前記物体を持ち上げ、前記物体を直立位置に向けて移動させるステップと、
前記物体を前記直立位置に移動させる過程の間に、前記クランプシステムの前記楔組立体(11)と前記物体(16)との間の摩擦係合を提供するか、または強めるように、前記物体を前記枠(4)に対して変位させるステップと、
前記物体を前記直立位置に移動させる過程の間に、前記把持装置を前記把持状態から前記非把持状態に移行させるステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記物体(16)を前記直立位置に移動させる過程の間に、1つ以上の把持装置(3)のそれぞれの接線方向に向けられた前記回転軸線を中心に回転させることにより、前記把持装置を前記把持状態から前記非把持状態に移行させるステップを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記物体を前記直立位置に向けて移動させる結果として、重力の影響下で前記クランプシステムに対して前記物体(16)を変位させるステップと、
前記物体を楔型の前記クランプシステムに対して変位させる前記ステップの間に、前記把持装置(3)を前記把持状態から前記非把持状態に旋回させるステップと
を含む、請求項19、20、または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭、または管等の、細長い物体のためのクランプシステムであって、長手方向軸線を定める枠であり、物体、および枠が、枠の長手方向軸線が、物体の長手方向軸線に対して概ね平行であるように、互いの周囲に配置されるべきである枠と、物体を、枠に対して固定するためのクランプ手段とを備えるクランプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなクランプシステムが知られている。クランプシステムは、物体の周囲に配置されてもよく、または物体が中空の場合は、物体の内部に挿入されてもよい。一般に、物体は、長手方向軸線に沿った、反対向きの両方向において、不動に保持されるように、このようなクランプシステムによって固定され得る。
【0003】
米国特許出願公開第2009120649号明細書では、井戸掘削作業中に、管を把持するためのスリップ組立体が開示されている。この組立体は、管の一部を受けるための孔を有するハウジングを含む。ハウジングのポケットが、穴の周囲に、円周方向に、間隔をおいて配置されている。ポケットのそれぞれは、互いに向かって向き合い、かつランプ面を有する背壁により、互いに対して連結されている側壁を有する。スリップセグメントが、各ポケットに配置されており、各スリップセグメントは、ポケットのうち1つの側壁と係合する側縁部を有する。各スリップセグメントは、ポケットの背壁のランプ面と係合する、ランプ面を有する背面を含む。スリップセグメントのそれぞれは、管と把持係合した状態で、上部外側位置から、下部内側位置に、ポケット内で移動可能である。スリップ組立体は、管を垂直位置に保持する。ランプ部は、管を強固に保持する。組立体が、管を強固に保持すると、管の軸線方向の移動は、もはや不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定の場合には、物体を、長手方向軸線に沿った一方向のみに、固定した状態で保持することが望ましい。そして、反対方向に、物体が、クランプシステムを解除することなく、クランプシステムに対して変位することが可能であるべきである。したがって、本発明の目的は、長手方向軸線に沿った一方向のみに作動するクランプシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、クランプ手段が、
枠の長手方向軸線に対して横方向に向けられた回転軸線に従って、枠に回転可能に連結されている、少なくとも1つの把持装置であって、前記物体を、枠に対して固定する把持状態と、非把持状態とを有する把持装置と、
把持装置の端部位置を定める、少なくとも1つの停止部を備え、把持状態にあり、かつ前記端部位置に配置されている前記把持装置が、物体が、枠に対して、第1の軸線方向に、枠の長手方向軸線に沿って、変位することを妨げ、この第1の軸線方向では、把持装置が、停止部に対して押しつけられた状態で保持され、かつ前記把持装置が、物体が、枠に対して、第1の軸線方向とは反対の第2の軸線方向に変位することを可能にすることにおいて、達成される。
【0006】
したがって、細長い物体は、第1の軸線方向に、固定的に保持されるが、それにも関わらず、把持装置が反対方向には安定化されていないという事情の結果として、反対方向に離して動かすことができる。物体がその方向に動かされるとすぐに、把持装置は、把持装置の回転の軸線を中心に傾く。また、把持装置により物体に加えられる把持力は、その後、この傾斜効果の結果として減少し、これにより、物体の所望の移動が、さらに促進される。
【0007】
把持装置は、ピボットのそれぞれにより、枠に取り付けられることが好ましい。したがって、把持装置は、枠の長手方向軸線に対して、半径方向、および/または横方向に向けられた作動位置と、半径方向にそれぞれ横方向に向けられた作動位置に対して傾斜した非作動位置との間で変位可能である。停止部は、枠および/またはベース即ち取付台に設けられてもよい。ベース、即ち取付台は、個別の部品として組み込まれてもよいが、また、枠の一体部分として組み込まれてもよい。適切な把持作用を確保するために、把持装置が、弾性プリテンション等により、停止部に向かって付勢されることが好ましい。停止部から離れる把持装置の移動は、付勢力の方向とは反対の方向に起きる。
【0008】
クランプシステムは、様々な方法で組み込まれ得る。第1の実施形態によれば、クランプシステムは、中空体に導入するように設計され得る。この場合、把持装置は、中空体の内面を把持するために組み込まれる。別の実施形態によれば、クランプシステムは、物体を囲むように設計され得る。この場合、枠は、物体を収容するための通路を画定し、把持装置は、物体の外面を把持するために組み込まれる。
【0009】
後者の実施形態では、枠が、ヒンジを介して、互いに連結された枠半体を備え、ヒンジのヒンジ軸線が、枠の長手方向軸線に対して概ね平行であり、前記枠半体が、物体の周囲で、互いに対して閉じられた作動位置と、枠が物体に接して配置され得る開位置との間で移動可能である。また、閉鎖手段が、前記枠半体を互いに押しつけされた状態で保持し、また前記枠半体を自由にするように、枠半体に設けられ得る。
【0010】
別の実施形態によれば、クランプシステムは、長手方向軸線に従う物体に対する楔型クランプの相対的な変位の結果として、前記物体との摩擦係合を提供するための、枠に関連付けられた楔組立体を含む、楔型クランプを備えてもよい。
【0011】
このようなクランプシステムが一般に知られている。楔型クランプが物体の周囲に配置されると、楔組立体が、物体に対する最初のクランプ作用を得るために、作動することができる。その後、クランプ作用は、互いに対して変位する枠、および物体により、例えば重力、または牽引力の影響下で、相対的な移動が停止し、かつこれらの力と、クランプ作用によって生成される摩擦力との間の平衡が達成されるまで増加し得る。このような楔型クランプの利点は、楔型クランプに固有の冗長性であり、この冗長性により、楔型クランプから滑り落ちるリスクを冒すことなく、確実に物体を持ち上げることができる。
【0012】
通常、最初のクランプ作用は、液圧ピストン/シリンダ装置等の、特定の楔組立体アクチュエータを付勢することによって発生し始める。これによりまた、横たわった位置に水平に向けられた物体が、把持され得る。その後の物体を吊り上げる過程において、クランプ作用は、物体に作用し、かつ楔組立体が、物体にさらに固定されるようにする、重力の影響下で、増加する。
【0013】
横たわった物体に対して実行されるこのような持ち上げ動作の最初の段階が、非常に重要であることが明らかになるであろう。楔組立体によって加えられるクランプ作用は、楔組立体に作用するピストン/シリンダ装置の作動力に、完全に依存する。しかしながら、特定の場合には、この最初のクランプ作用は、楔型クランプの位置を、物体に対して固定するのに十分ではないように考えられる。楔型クランプに加えられる吊上げ力により、持ち上げ動作を不可能にする、楔型クランプと、物体との間のスリップが起きる恐れがある。
【0014】
したがって、横たわった物体を持ち上げるのにより適したさらなる改善が、前述のクランプシステムにおいて達成され得る。この改善は、把持装置が、物体と楔型クランプとの前記相対的な変位の間に、前記把持装置が、楔組立体と、物体との間の前記摩擦係合を確立するために、物体が把持装置により枠に対して保持される把持状態から、非把持状態に移行するように、楔組立体に対して配置されることを伴う。
【0015】
本発明によるクランプシステムでは、楔型クランプが、通常、物体の周囲に配置される。次に、楔組立体が、作動し、その後、楔組立体に加えて枠に取り付けられた把持装置が、物体が枠に対して固定的に保持されるように作動する。これらの条件下で、物体は、楔型クランプからスライドするリスクなしに、安全に持ち上げられ得る。その後、物体は、より直立した位置に移動される場合がある。より直立した位置では、楔組立体が、物体に対して移動することが可能な場合は、摩擦係合を提供することができる。この相対的な移動を可能にするために、把持装置が、徐々に後退することが必要である。楔型組立体に対する把持装置の適切な配置により、把持装置によって加えられる保持力から、楔組立体によって加えられる保持力に、このように段階的に移行することが可能になる。
【0016】
把持装置は、枠に対して、ピボットのそれぞれにより、枠に取り付けられており、各ピボットは、接線方向に、または横方向に向けられた、それぞれのピボット軸線に従って回転可能であり、把持装置は、枠の長手方向軸線に対して、半径方向に、または横方向に向けられた作動位置と、半径方向に、または横方向に向けられた作動位置に対して傾斜した非作動位置との間で変位可能である。
【0017】
このシステムでは、物体に対する把持装置の把持作用の段階的な解除が、物体を吊り上げる過程において、重力の影響下で、物体が楔型クランプに対して変位させられている間に、把持装置が、この物体と共に動くことを可能にすることによって達成される。同時に、この相対的な変位によりまた、楔組立体が、把持装置が後退すると同時に、物体に対する楔組立体の楔作用を増加させ始めるように、作用するようになる。したがって、把持装置により物体を把持することから、楔組立体により把持することへの安全で信頼できる移行が、保証される。
【0018】
把持装置が、楔組立体から、軸線方向に、距離をおいて配置されていることが好ましい。また、把持装置は、枠に対して半径方向に、および/または枠の長手方向軸線に対して横方向に向けられてもよい。したがって、把持装置は、楔組立体が作動する方向に従って、半径方向、即ち横方向に旋回可能であり得る。枠は、把持装置が、楔組立体のクランプ方向を向く端部に配置されるように、軸線方向に、両側の端部を有する。
【0019】
本発明また、前述のクランプ体システムのための把持装置であって、ピストンがシリンダに対して延びる作動位置と、ピストンがシリンダに対して後退する非作動位置との間で移動可能な、ピストン/シリンダ装置と、枠に取り付けるためのベースであって、ベースに、ピストン/シリンダ装置が、ピボットを介して連結されており、ピボットのピボット軸線が、ピストン/シリンダ装置の長手方向に対して、横方向に向けられているベースとを備える把持装置に関する。
【0020】
また、本発明は、上述のクランプシステムにより、細長い物体を持ち上げる方法であって、
横たわった物体の周囲に、クランプを取り付けるステップと、
横たわった物体の外面を把持するために、把持装置を作動させるステップと、
把持装置によって把持された物体を持ち上げ、かつ前記物体を、直立位置に向けて移動するステップと、
物体を直立位置に移動する過程の間に、楔組立体を作動させるか、またはさらに作動させるために、物体を、枠に対して変位させるステップと、
物体を直立位置に移動する過程の間に、把持装置を、把持状態から、非把持状態に移行させるステップとを含む方法に関する。
【0021】
代替的に、本方法は、
枠を、横たわった物体に導入するステップと、
横たわった物体の内面を把持するために、1つ以上の把持装置を作動させるステップと、
把持装置によって把持された物体を持ち上げ、かつ前記物体を、直立位置に向けて移動するステップと、
物体を直立位置に移動する過程の間に、クランプシステムの楔組立体を作動させるか、またはさらに作動させるために、物体を、枠に対して変位させるステップと、
物体を直立位置に移動する過程の間に、把持装置を、把持状態から、非把持状態に移行するステップとを含み得る。
【0022】
特に、本方法は、
物体を直立位置に移動する過程の間に、把持装置のピボット軸線のそれぞれを中心に、把持装置を回転させることにより、把持装置を、把持状態から、非把持状態に移行するステップを含み得る。
【0023】
また、本方法は、
物体を直立位置に向けて移動する結果として、重力の影響下で、クランプに対して、物体を変位させるステップと、
物体を、クランプに対して変位させるステップの間に、把持装置を、把持位置から、非把持位置に旋回させるステップとを含み得る。
【0024】
本発明を、ここで、図面に示されるようなクランプシステムの実施形態を参照して、さらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】クランプシステムの第1の実施形態における、下から見た斜視図である。
図2図1のクランプシステム用の把持装置の斜視図である。
図3】物体を持ち上げ、かつ吊り上げる過程における、いくつかの段階を示す図である。
図4】物体を持ち上げ、かつ吊り上げる過程における、いくつかの段階を示す別の図である。
図5】物体を持ち上げ、かつ吊り上げる過程における、いくつかの段階を示すさらに別の図である。
図6図3の横たわった物体に適用される場合の、図1のクランプシステムの一部を示す図である。
図7図5の吊り上げられた物体に適用される場合の、図1のクランプシステムの一部を示す図である。
図8】クランプシステムの第2の実施形態における、長手方向の断面を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示されるようなクランプシステムの第1の実施形態は、一般に参照数字1によって示された楔型クランプと、把持装置3のセット2とを備える。楔型クランプ1は、ヒンジ7を介して互いに連結されている2つの枠半体5、枠半体6と、一端におけるアクチュエータ手段8とを備える、環状の枠4を含む。アクチュエータ8を付勢することにより、枠半体5、枠半体6は、開位置と、図示された閉位置との間で、ヒンジ7を中心に、スイングすることができる。開位置では、枠半体は、物体の周囲に配置され得る。物体は、その後、枠半体5、枠半体6が閉じると、枠4の内部空間9内に収容される。クランプシステムは、ラグ10によって持ち上げられ得る。ラグ10に対して、クレーン等の吊上げケーブルが、取り付けられるべきである。
【0027】
枠の内部空間9の周囲には、いくつかの楔組立体11が、間隔をおいて配置されている。これらの楔組立体は、図6、および図7に、半径方向の断面図で示され、楔部分12、楔部分13の知られている方法において存在しており、楔部分12、楔部分13は、傾斜面14に従い、互いに沿ってスライド可能である。内側の楔部分13は、図3図7に示されるように、物体16の外面30に係合する摩擦表面15を有する。楔組立体11と、物体との間の最初の摩擦係合は、楔組立体アクチュエータ26によって得ることができる。直立位置では、楔組立体11はまた、物体16を、楔型クランプ1の内部空間9に、重力の影響下で、確実に固定し、クランプシステム自体は、ラグ10(これらのうち1つのみが、図3に示されている)に連結された吊上げケーブル23により、クレーン等から吊されている。
【0028】
図6に示されるような物体16の横たわった位置では、楔組立体のこのクランプ作用は、重力が、物体16、およびクランプシステム1の、互いに対する位置に影響を与えないため、限定される。依然として、物体を、この横たわった位置から、確実な、かつ信頼できる方法で、持ち上げることができるように、把持装置3のセット2は、枠4の軸線方向の一端に取り付けられている。これらの把持装置3はそれぞれ、ピストン/シリンダ装置17、および取付けプレート21を備える。把持装置3のハウジング18は、ピボット22を介して、取付けプレート21に連結されている。ピボット22のピボット軸線は、ピストン/シリンダ装置17の長手方向軸線に対して、横方向に通っている。ピストン19は、ピストン19の自由端に、把持表面20を有する。ハウジング18の周囲に吊されており、かつ両方の端部が取付けプレート21に連結されているばね部材24により、ピストン/シリンダ装置17は、前記取付けプレート21に対して付勢され、ピストン/シリンダ装置17の停止面25に対して、プリテンションがかけられた状態で保持される。
【0029】
枠半体5、枠半体6を開き、その後にこれらを閉じることにより、クランプシステム1が物体16の周囲に配置された後、把持装置3が、把持装置3の把持表面20が物体に押しつけられるように、付勢される。これにより、クランプシステム1に対する物体16の安定位置が得られる。ばね部材24は、ピストン/シリンダ装置17を、枠4の軸線に対して直角に、クランプ位置に、保持している。
【0030】
物体が、この状態でいくらか吊り上げられるとすぐに、物体は、傾き始める。これにより、重力は、物体の長手方向、および枠の軸線に沿って向けられた分力を得る。最初は、枠に対する重力の分力の影響下における、物体がいかなる移動も、ピストン/シリンダ装置を対応する停止面25がぶつかる位置に保持する、ばね部材24によって妨げられる。しかしながら、問題の重力の分力が、特定の閾値を超えるとすぐに、ばね素子24は後退し、ピストン/シリンダ装置が、ピボット22を中心に回転し始める。これにより、楔組立体11は、最終的に、物体16に作用する最大限の重力が、前記楔組立体によって生じるように、物体16に摩擦力を加え始める。その後、把持装置3は、物体の持ち上げに、もはやいかなる効果も持たず、物体16に対して、非把持状態で置かれる。
【0031】
図3図5は、クランプ組立体が特定の有益な方法で使用され得る、特定の持ち上げ動作を示す。図示されるように、物体16は、横たわる位置、即ち水平位置にある。物体16の一端の近くに、クランプシステム27が配置されており、第1の吊上げケーブル23が、クランプシステム27と、クレーン(不図示)から吊された二方向吊上げブロック28との間を延びる。また、第2の吊上げケーブル29は、物体16の他端の近くで、この二方向吊上げブロック28と、物体16との間を延びる。
【0032】
クランプシステム27における、第1の吊上げケーブル23によって加えられる力Fは、クランプシステム27の軸線に従って方向付けられた分力Fと、クランプシステム27の楔組立体が作動する方向への相対する分力とを有する。このような場合には、楔組立体のアクチュエータを付勢した後に得られるような、楔組立体によって物体に加えられるクランプ作用は、物体16に対して、クランプシステム27を安定化させるためには、不十分なように見える。しかしながら、前述のように把持装置3を付勢することにより、クランプシステム27のこのような安定位置を、依然として得ることができる。分力Fにより、ピストン/シリンダ装置17が、対応する停止面25に対して強固に押しつけられるため、物体に対するクランプシステム27の安定性が、さらに確実になる。
【0033】
前述のクランプシステムの実施形態は、クランプシステムの内部空間9内に、物体を収容するのに適している。代替として、クランプシステムは、図8に示されるような、中空体の中空空間に導入されるように、組み込まれ得る。この場合、楔組立体11と、把持装置との両方が、物体16の内面31に係合する。しかしながら、このクランプシステム、および物体を操作する方法は、前述のクランプシステムと同様である。
【符号の説明】
【0034】
1…楔型クランプ、2…把持装置のセット、3…把持装置、4…枠、5…枠半体、6…枠半体、7…ヒンジ、8…アクチュエータ手段、9…枠の内部空間、10…ラグ、11…楔組立体、12…楔部分、13…楔部分、14…傾斜面、15…楔組立体の摩擦表面、16…物体、17…ピストン/シリンダ装置、18…シリンダ、19…ピストン、20…圧力表面、21…取付けプレート、22…ピボット、23…吊上げケーブル、24…ばね素子、25…停止面、26…アクチュエータ楔組立体、27…クランプシステム、28…二方向吊上げブロック、29…吊上げケーブル、30…外面物体、31…内面物体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8