【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、積層体を備えるリチウム−硫黄電気化学電池を提供し、この電池の積層体は、リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層を有するリチウム負極と、活性硫黄材料を有する正極と、前記リチウム負極と前記正極との間に配置した多孔質のセパレータと、及び電解質と、を備え、前記積層体はジグザグ形態となるよう折り畳み、また前記正極は、前記積層体において前記リチウム負極に対してオフセットさせ、このオフセットは、前記正極に対して前記積層体の一方の側辺からアクセスでき、前記リチウム負極に対して前記積層体の反対側の側辺からアクセスできるように行う。
【0008】
本発明の他の態様によれば、リチウム−硫黄電池を製造する方法を提供し、この方法は、i) リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層を有するリチウム負極、ii) 多孔質のセパレータ、iii) 電解質、及びiv) 活性硫黄材料を有する正極の積層体を形成する積層体形成ステップであって、前記セパレータは前記リチウム負極と前記正極との間に配置し、前記正極は、前記積層体において前記リチウム負極に対してオフセットさせ、このオフセットは、前記正極に対して前記積層体の一方の側辺からアクセスでき、前記リチウム負極に対して前記積層体の反対側の側辺からアクセスできるように行う、該積層体形成ステップと、及び前記積層体をジグザグ形態に折り畳むステップと、を備える。
【0009】
本発明の電池は、積層体を形成するよう互いにラミネートできる材料のシート又はウェブとして正極、セパレータ及び負極を準備することによって組み立てることができる。したがって、有利には、積層体はウェブ材料の流れ(連続したフロー)として形成することができる。積層体において正極を負極に対してオフセットすることによって、正極に対して積層体の一方の側辺からアクセスでき、また負極に対しては他方の側辺からアクセスすることができる。したがって、有利には、正極及び負極に対しては、ラミネートする前に何らかの特別な方法で負極又は正極を切断することなく、積層体からアクセスできるようにする。一実施形態において、正極、セパレータ及び負極は、それぞれに対応するウェブ材料のロールから供給する。例えば、正極材料のロール及び負極材料のロールを互いにオフセットさせ、これら要素が結果として生ずる積層体において確実にオフセットできるようにする。したがって、正極及び負極は、積層体の長手方向軸線に対して直交する方向に互いにオフセットすることができる。正極及び負極を積層体の長手方向軸線に直交する方向にオフセットすることにより、積層体の連続製造を容易にすることができ、なぜなら正極材料のロール及び負極材料のロールは、正極及び負極の材料の流れに直交する方向に都合よくオフセットできるからである(以下の説明参照)。本発明による電池の利点は、連続プロセスで製造できる点である。他の利点としては、電池自体は、都合よく自動化できるプロセスを用いて製造できる点である。
【0010】
一実施形態において、活性硫黄材料を有する正極は、材料のウェブとして、好適には、ウェブ材料の連続した流れとして設ける。電解質は、例えば、電解質を活性硫黄材料に接触させることによって、正極に塗布することができる。この接触ステップは、任意な適当な方法で、例えば、電解質を活性硫黄材料上にスプレー、押出し、注入及び/又は拡散することによって実施することができる。この電解質は、若干の実施形態において、正極の移動するウェブに塗布(例えば、スプレーによって)することができ、例えば、連続的又は間欠的なスプレーとして塗布することができる。
【0011】
電解質を正極に塗布する前又は後(好適には、後)に、多孔質のセパレータを、例えば、ウェブ材料の流れ(例えば、連続フロー)として正極に塗布することができる。電解質を正極に塗布した後、望ましいことに電解質はセパレータの細孔内に染み込む。したがって、電解質は正極及びセパレータに浸潤することができる。この後、リチウム負極をウェブ材料の連続フローとしてセパレータ上にラミネートして積層体を形成する。好適には、積層体はウェブ材料の流れ(例えば、連続フロー)として形成し、これによりリチウム負極材料のウェブ及び正極材料のウェブは流れの方向に直交する方向に互いにオフセットされる。したがって、好適な実施形態において、正極は負極に対して積層体の長手方向軸線に直交する方向にオフセットされる。積層体は、積層体材料を所定長さに切断する前又は後に、その長さに沿って(すなわち、積層体の長手方向軸線に沿って)ジグザグ形態となるよう折り畳むことができる。負極を正極に対して積層体の長手方向軸線に直交する方向にオフセットすることによって、正極に対して積層体の一方の側辺からアクセスできるとともに、負極に対して積層体の反対側の側辺からアクセスできるようになる。好適には、積層体は切断する前に折り畳む。
【0012】
好適には、積層体は、さらに、他のリチウム負極及び他の多孔質のセパレータを備える。好適には、正極を前記リチウム負極相互間に配置し、また多孔質セパレータを正極と各リチウム負極との間に配置する。好適な実施形態において、リチウム負極は、双方のリチウム負極が積層体の反対側の側辺からアクセスできるよう配置する。例えば、リチウム負極は互いに整列させることができる。負極相互は積層体の関連する側辺で互いに接触することができる。このことにより、単一の接点リード線を使用して、電池における負極から電流を供給及び引き出すことができる。接点リード線は負極に溶接することができる。
【0013】
積層体が2つのリチウム負極及び2つの多孔質セパレータを有する場合、1つのリチウム負極及び1つの多孔質セパレータを正極の各側面に塗布することができる。一実施形態において、正極は、活性硫黄材料及び導電性材料の混合物であって、電流コレクタの両側の側面上に堆積させた該混合物を有する層を備える。電解質は、好適には、電流コレクタの両側の側面上の層に塗布することができる。電解質を塗布する前又は後に、多孔質セパレータを電流コレクタの両側の側面に塗布することができる。この後、リチウム負極を各セパレータに塗布して積層体を形成することができる。上述したように、正極、セパレータ及び負極は連続したウェブ材料として設けることができる。したがって、有利にも、積層体は連続ウェブとして形成することができる。
【0014】
上述したように、リチウム負極は、リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層を有する。このリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層は、20〜120μm、好適には30〜50μmの厚さを有することができる。リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層は、初期的には支持基板に接触するよう配置することができる。換言すれば、負極は、初期的には基板に支持したリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層を有する負極前駆体として設けることができる。好適な基板としては、ポリプロピレンのようなポリマー材料で形成したものがある。基板は、電池の製造中、及びとくに、ラミネートステップ中にフォイル層を支持するよう作用することができる。好適には、フォイルは、結合することなく単に基板に接触するよう配置する。一実施形態において、基板材料のロール、及びリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルのロールを設ける。材料はこれらロールそれぞれから分配し、ウェブ材料の流れとして負極前駆体を生産することができる。このウェブは、ラミネートプロセスに、例えば、連続的に送給することができる。望ましくは、基板は、例えば、折畳みステップ前に積層体から除去する。このことは、電池の積層体を生じた後に、単に基板材料をロールに回収することによって行うことができる。
【0015】
好適な実施形態において、リチウム負極は、リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの不連続層を有する。例えば、リチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層は、負極の長さに沿う間隔をとって、好適には、規則的な間隔で存在しないようにすることができる。一実施形態において、リチウム負極は負極の長さに沿ってリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルがないほぼ均一幅の一連の領域又は細条部分を有する。これらの「空隙」領域は、有利にも、ほぼ均一な距離だけ互いに離間することができる。好適には、空隙領域は使用のために積層体を切断するポイントに一致させる。有利にも、空隙領域は、組み立てた電池における短絡リスクを減少又は排除し、なぜなら、切断中に負極が正極に接触するよう圧迫されるリスクが減少又は排除するからである。
【0016】
リチウム負極の空隙領域は、任意の適当な方法を用いて準備することができる。例えば、リチウム負極は初期的に基板上に配置したリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層を有し、層の区域を切断又は擦り取ることによって除去する。一実施形態において、層の区域はリチウム負極を1対のローラ間に通過させることによって除去し、ローラ対における一方のローラには、非導電性の負極基板からリチウム金属フォイル又はリチウム合金フォイルの層の区域を切断又は擦り取るよう構成したカッタを設ける。このことにより、リチウム負極材料の連続ウェブをローラ間に送給するとき、区域をリチウム負極から除去することができる。したがって、連続プロセスにおけるラミネートプロセス中に材料を供給するとき、空隙領域を形成することができる。積層体を形成した後、基板を、例えば剥離することによって除去することができる。
【0017】
積層体を形成した後、接点リード線を積層体のアクセス可能な負極及び正極に取り付けることができる。この後、積層体を気密及び水分密の容器内に封入することができる。
【0018】
上述したように、正極は電気活性硫黄材料を有する。好適には、電気活性硫黄材料を導電性材料と混合する。この混合物は、電流コレクタに接触するよう配置することができる電気活性層を形成する。
【0019】
電気活性硫黄材料及び導電性材料の混合物を溶剤(例えば、水又は有機溶剤)におけるスラリーの形式で電流コレクタに塗布することができる。この後溶剤を除去し、この結果得られる構体を圧延し、複合構体を形成する。好適な実施形態において、電気活性硫黄材料、及び随意的に導電性材料は、電流コレクタの全体領域をカバーしないようにする。例えば、電流コレクタの端縁は露出したままにし、これにより正極の電流コレクタに対して積層体の一方の側辺からアクセスできるようにする。有利にも、このことにより、接点リード線を都合のよい方法で正極に溶接又は他の結合を行うことができる。
【0020】
電気活性硫黄材料としては、元素状の硫黄、硫黄ベースの有機化合物、硫黄ベースの無機化合物、及び硫黄含有ポリマーがあり得る。好適には、元素状の硫黄を使用する。
【0021】
固体導電性材料は任意の適当な導電性材料であり得る。好適には、固体導電性材料は炭素で形成することができる。例としては、カーボンブラック、カーボンファイバ、及びカーボンナノチューブがある。他の適当な材料としては、金属(例えば、薄片状、削り屑状、粉末状)、及び導電性ポリマーがある。好適には、カーボンブラックを使用する。
【0022】
電気活性硫黄材料(例えば、元素状硫黄)の導電性材料(例えば、カーボン)に対する重量比は、1〜30:1、好適には2〜8:1、より好適には5〜7:1とすることができる。
【0023】
電気活性硫黄材料及び導電性材料の混合物は粒子状混合物とすることができる。この混合物は、50nm〜20ミクロン、好適には100nm〜5ミクロンの平均粒径を有することができる。
【0024】
電気活性硫黄材料及び導電性材料の混合物(すなわち、電気活性層)は、随意的に結合剤を有することができる。好適な結合剤は、例えば、ポリエチレン・オキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・プロピレン・ジエン系ゴム、メタクリレート(例えば、UV硬化性のメタクリレート)、及びジビニルエステル(例えば、熱硬化性のジビニルエステル)のうち少なくとも1つから形成することができる。
【0025】
適当な電流コレクタとしては、金属又は合金で形成したフォイル、シート又はメッシュのような金属基板がある。好適な実施形態において、電流コレクタはアルミニウムフォイルとする。
【0026】
セパレータは、イオンが電池の電極間で移動できる任意の適当な多孔質基板とすることができる。この基板の多孔率は、少なくとも30%、好適には少なくとも50%、例えば、60%超とすべきである。適当なセパレータとしてはポリマー材料で形成したメッシュがある。適当なポリマーとしては、ポリプロピレン、ナイロン、及びポリエチレンがある。不織性のポリプロピレンがとくに好適である。多層化セパレータを用いることができる。
【0027】
セパレータは電極相互間に配置して、電極相互間の直接接触を防止すべきである。セパレータの側辺は負極又は正極に整列させる必要はない。例えば、セパレータは正極及び/又は負極に対してオフセットすることができる。電池が第1及び第2の負極を正極の各側面に有する一実施形態において、セパレータは、正極と各負極との間に配置することができ、これにより、負極にアクセス可能な積層体の領域において、セパレータが正極及び負極の中間位置まで正極から突出する。このことにより、負極及び正極が直接接触することなく、積層体の関連する側面に沿って負極を互いに圧着させることができる。有利にも、このことによって、電池の短絡リスクを減少又は排除することができる。
【0028】
上述したように、電池は電解質を有する。電解質は電極相互間に存在又は配置し、このことにより、負極と正極との間に電荷が転移できる。好適には、電解質は、正極の空孔並びにセパレータの空孔を湿潤する。好適には、電解質は、少なくとも1つのリチウム塩及び少なくとも1つの有機溶媒を有する。好適なリチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、三フッ化メタンスルホンイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、ホウ酸フッ化リチウム、及び三フッ化メタンスルホン酸リチウム(CF
3SO
3Li)のうち少なくとも1つがある。好適には、リチウム塩は三フッ化メタンスルホン酸リチウムとする。
【0029】
好適な有機溶媒として、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチル炭酸塩、ジエチル炭酸塩、エチルメチル炭酸塩、メチルプロピル炭酸塩、メチルプロピルプロピオン酸塩、エチルプロピルプロピオン酸塩、酢酸メチル、ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、ジグリム(2−メソキシエチルエーテル)、テトラグリム、エチレン・カーボネート、プロピレン・カーボネート、□−ブチロラクトン、ジオキソラン、ヘキサメチル・ホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、N,N,N,N−テトラエチルスルファミド、及びスルホン、並びにそれらの混合物がある。好適には、有機溶媒はスルホン又はスルホンの混合物とする。スルホンの例としては、ジメチルスルホン、及びスルホランがある。スルホランは、単独溶剤として、又は組み合せの溶剤、例えば、他のスルホンとの組み合せとして用いることができる。
【0030】
電解質に使用する有機溶剤は、例えば、化学式S
n2−(ただし、n=2〜12)のポリサルファイド系の種を溶解することができ、これら種は、電気活性硫黄材料が電池の放電中に減少するとき形成される。
【0031】
電解質におけるリチウム塩の濃度は、好適には0.1〜5M、より好適には0.5〜3M、例えば1Mとする。リチウム塩は、好適には、飽和状態の少なくとも70%、好適には少なくとも80%、より好適には90%、例えば、95〜99%の濃度で存在するものとする。
【0032】
本発明の実施形態を以下に、例として添付図面につき説明する。