特許第6351177号(P6351177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351177学習単元間の親子関係を特定する学習教材分析プログラム、装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351177
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】学習単元間の親子関係を特定する学習教材分析プログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/30 20060101AFI20180625BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20180625BHJP
   G09B 19/00 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   G06F17/30 350C
   G06F17/30 170A
   G06Q50/20
   !G09B19/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-69157(P2015-69157)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189137(P2016-189137A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭志
【審査官】 樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−004785(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/034282(WO,A1)
【文献】 特開2005−122295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/30
G06Q 50/20
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に搭載されたコンピュータに実行させる学習教材分析プログラムであって、
学習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶部を有し、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する第1のステップと、
学習単元のペア毎に、前記類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップについて真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、前記学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する第3のステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする学習教材分析プログラム。
【請求項2】
第1のステップについて、ペアとなる学習単元毎に、前記学習テキストから形態素解析によって出現する単語集合Wi及びWjを抽出し、単語集合同士の類似距離を算出する
ようにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の学習教材分析プログラム。
【請求項3】
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも前の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipreと、単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpreとを抽出し、
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合の高い一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項2に記載の学習教材分析プログラム。
【請求項4】
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも後の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wafterを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipostと、単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpostとを抽出し、
共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項2に記載の学習教材分析プログラム。
【請求項5】
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも前の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipreと、単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpreとを抽出し、
当該学習時期よりも後の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wafterを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipostと、単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpostとを抽出し、
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合が高く、且つ、共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い、一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項2に記載の学習教材分析プログラム。
【請求項6】
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合が高く、且つ、共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い、一方の学習単元を検出するために、以下の式によってスコアSi又はSjが大きい方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
Si=(Wipre/Wi)×(1−Wipost/Wi)
Sj=(Wjpre/Wj)×(1−Wjpost/Wj)
Si:単語集合Wiに基づく学習単元のスコア
Sj:単語集合Wjに基づく学習単元のスコア
Wipre/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipreの共通割合
Wipost/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipostの共通割合
Wjpre/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpreの共通割合
Wjpost/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpostの共通割合
ようにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項5に記載の学習教材分析プログラム。
【請求項7】
学習教材分析装置であって、
学習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶手段と、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する類似距離算出手段と、
学習単元のペア毎に、前記類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する類似距離判定手段と、
前記類似距離判定手段について真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、前記学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する親子関係特定手段と
を有することを特徴とする学習教材分析装置。
【請求項8】
習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶部を有する装置が実行する学習教材分析方法であって、
前記装置は、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する第1のステップと、
学習単元のペア毎に、前記類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップについて真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、前記学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する第3のステップと
実行することを特徴とする学習教材分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習教材を分析する技術に関する。特に、e-Learningや適応型テストに適用可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
学習者及び教師は、各学習単元のスケジュールを把握するために、一覧表を用いている。
図1は、学習時期に応じて学習単元を並べた一覧表である。
このような学習単元の一覧表は、通常、教材作成者や教師が、学習指導方針に基づいて、単元間の関連性を考えながら作成しており、基本的に人手作業となる。このような一覧表は、学習単元の学習開始時期のスケジュールが明確となっており、生徒が理解を少しずつ積み重ねることができるように作成されている。
【0003】
従来、このような学習単元の一覧表を自動作成する技術もある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、学習者の各単元のテスト結果(テストログ)を用いて、ベイジアンネットの構造学習によって分析する。例えば同一教科内の各学習単元の係り受けが明確であれば、比較的容易に決定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】植野真臣、河竹千春、大西仁、「ネットワーク型テスト理論における構造最適化法」、信学技報, ET93-ET137, 1994年3月26日、電子情報通信学会、Vol100、P50-P60、[online]、[平成27年3月8日検索]、インターネット<URL:http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902114032577390>
【非特許文献2】「標準技術集(サーチエンジン)データベース: B データ解析(前処理)手法4」、[online]、[平成27年3月8日検索]、インターネット<http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/search_engine/b/b51.htm>
【非特許文献3】Quoc Le, Tomas Mikolov,"Distributed Reperesentation of Sentence and Documents," Proc. of 31st International conference on Machine Learning、[online]、[平成27年3月8日検索]、インターネット<http://cs.stanford.edu/~quocle/paragraph_vector.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の異なる教科の学習単元同士の関連性を明確にするには、それら学習単元に精通したエキスパートによる作業を必要とする。また、学校教育に限らず、専門性が高い資格教育や企業教育の中でも、未知の学習単元同士の関連性を明確にするには、高コスト且つ専門的な作業を必要とする。
【0006】
非特許文献1に記載の技術によれば、テストログによる構造学習を適用するために、大量のテストログが必要となる。精度の高い構造学習には、大規模な学習者に対する欠損の少ないデータが必要となる。即ち、全ての学習単元のテストを網羅的に受験したテストログが必要となる。一般に、このようなテストログのデータの入手は難しい。また、新しく導入された学習単元については、テストログ自体が存在しないため、構造学習を適用することができない。
【0007】
これに対し、本願の発明者は、学習単元間の親子関係を特定した系統図を作成することができないか?と考えた。即ち、学習単元間の系統(ネットワーク)を特定することができれば、生徒の理解が十分でない学習単元に対して、教師は、その学習単元の親となる学習単元を生徒に復習することができるのではないか?と考えた。同一教科内の学習単元間で親子関係を特定することは比較的簡易なのかもしれないが、異なる教科や未知の学習単元間の親子関係を特定することは難しい。例えば、教師は、理科の学習単元の理解が十分でない生徒に対して、その学習単元の親となる数学の学習単元を復習させることができる。
【0008】
そこで、本発明は、学習単元に含まれる学習テキストを分析することによって、学習単元間の親子関係を特定することができる学習教材分析プログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、装置に搭載されたコンピュータに実行させる学習教材分析プログラムであって、
学習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶部を有し、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する第1のステップと、
学習単元のペア毎に、類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップについて真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する第3のステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
第1のステップについて、ペアとなる学習単元毎に、学習テキストから形態素解析によって出現する単語集合Wi及びWjを抽出し、単語集合同士の類似距離を算出する
ようにコンピュータに実行させることも好ましい。
【0011】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも前の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipreと、単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpreとを抽出し、
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合の高い一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることも好ましい。
【0012】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも後の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wafterを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipostと、単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpostとを抽出し、
共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることも好ましい。
【0013】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
第3のステップについて学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、
当該学習時期よりも前の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipreと、単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpreとを抽出し、
当該学習時期よりも後の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wafterを検出し、
単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipostと、単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpostとを抽出し、
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合が高く、且つ、共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い、一方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
ようにコンピュータに実行させることも好ましい。
【0014】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合が高く、且つ、共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い、一方の学習単元を検出するために、以下の式によってスコアSi又はSjが大きい方の学習単元を親単元とし、他方の学習単元を子単元とする
Si=(Wipre/Wi)×(1−Wipost/Wi)
Sj=(Wjpre/Wj)×(1−Wjpost/Wj)
Si:単語集合Wiに基づく学習単元のスコア
Sj:単語集合Wjに基づく学習単元のスコア
Wipre/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipreの共通割合
Wipost/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipostの共通割合
Wjpre/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpreの共通割合
Wjpost/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpostの共通割合
ようにコンピュータに実行させることも好ましい。
【0015】
本発明によれば、学習教材分析装置であって、
学習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶手段と、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する類似距離算出手段と、
学習単元のペア毎に、類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する類似距離判定手段と、
類似距離判定手段について真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する親子関係特定手段と
を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、習単元毎に、学習時期及び学習テキストを対応付けて記憶した学習教材記憶部を有する装置が実行する学習教材分析方法であって、
装置は、
学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する第1のステップと、
学習単元のペア毎に、類似距離が所定閾値以下であるか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップについて真と判定された学習単元のペアについて学習時期を比較し、学習時期が早い方の学習単元を親単元として、他方の学習単元を子単元として、親子関係を特定する第3のステップと
実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の学習教材分析プログラム、装置及び方法によれば、学習単元に含まれる学習テキストを分析することによって、学習単元間の親子関係を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】学習時期に応じて学習単元を並べた一覧表である。
図2】本発明における学習教材分析装置の機能構成図である。
図3】本発明の基本フローチャートである。
図4】本発明によって導出された学習単元を並べた一覧表である。
図5】本発明の応用フローチャートである。
図6図5に対する第1の実施形態のフローチャートである。
図7図5に対する第2の実施形態のフローチャートである。
図8図5に対する第3の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明における学習教材分析装置の機能構成図である。
図3は、本発明の基本フローチャートである。
【0021】
図2によれば、学習教材分析装置1は、学習教材記憶部10と、類似距離算出部11と、類似距離判定部12と、親子関係特定部13とを有する。これらの機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させることよって実現できる。また、これら機能構成部の処理の流れは、学習教材分析方法としても理解できる。
【0022】
[学習教材記憶部10]
学習教材記憶部10は、学習単元毎に、「学習時期」及び「学習テキスト」を対応付けて記憶する。
「学習時期」は、例えば「中学1年生4月」のように、学習スケジュールに応じて大まかに前後関係が特定できればよい。
「学習テキスト」は、その学習単元で学習されるテキスト群である。テキストとは、例えば教科書などの解説文、問題文及び解答例を含む。このテキストは、デジタル教材であれば直接的に入手可能であるが、紙媒体教材はスキャンによって文字認識によってテキスト化される必要がある。
【0023】
図3によれば、最初に、全ての学習単元のペアi及びj(i=1〜N、j=1〜N(≠i))(N:全単元の数)を選択し、その学習テキストUi及びUjを学習教材記憶部10から取得する。図3によれば、フローチャートの中で、学習単元のペアi及びj毎に、S1〜S3の処理を繰り返すようにループさせる。
【0024】
学習教材記憶部10から取得された学習テキストUi及びUjはそれぞれ、形態素解析によって出現する単語集合Wi及びWjを抽出する。形態素解析とは、文法及び単語辞書を情報源として用いて、自然言語で書かれた文を言語として意味を持つ最小単位である形態素(Morpheme)に分割し、それぞれの品詞を判別する処理をいう。ここでは、全ての単語を用いてもよいし、品詞が名詞の形態素のみを抽出するものであってもよい。また、名詞の中でも一般名詞を除去してもよい。更に、品詞の情報を用いるのではなく、除去すべき単語をリストに予め登録しておき、そのリスト内の単語と一致する形態素を除去するものであってもよい。
【0025】
[類似距離算出部11]
(S1)類似距離算出部11は、学習単元のペアi及びj毎に、学習テキストUi及びUj同士の類似距離を算出する。具体的には、形態素解析で得られた単語集合Wi及びWj同士の類似距離を算出する。
【0026】
テキスト(単語集合)間の距離計算として、一般的に例えば、以下のような方法がある。
(1)TF−IDF(Term Frequency - Inverse Document Frequency:単語の出現頻度−逆出現頻度)法:各学習テキストについて、特徴的な出現単語に重みを付けたベクトル表現で表す。
(2)分散表現(Distributed representation)法(例えば非特許文献2及び3参照)。
【0027】
ここでは、TF−IDF法について説明する。
(単語への重み付けステップ)
(S11)単語wiが、学習単元jの学習テキストに出現する回数をni,jとし、その頻度をTFi,jとして、以下のように計算する。
TFi,j=ni,j/Σnk,j
(S12)全ての学習単元j=1〜Nの内、単語wiが出現する学習単元の数miとし、IDFiを以下のように算出する。
IDFi=log N/mi
(S13)TFi,j×IDFiの値を、学習単元jのテキストに含まれる単語wiに対する重みとする。
【0028】
(学習テキスト間の距離の算出ステップ)
(S14)距離を算出する2つの学習単元の学習テキストをそれぞれ、Bag-of-Wordsで表現し、各ベクトルの成分を、該当するTF×IDFiの値で重み付けする。Bag-of-Wordsは、学習テキストを1つの単語の頻度により定義される特徴ベクトルで表現し、文章集合に基づいて予め導出されたIDFを単語の重みとして文章間の類似度を導出するものである。
この特徴ベクトルは、学習教材全体(全ての学習テキスト)に含まれる単語数を次数としたベクトルである。各次の要素について、当該学習テキストに含まれる単語の有無を0/1で表現したものである。
(S15)2つのベクトル間でコサイン距離を算出し、これを学習テキスト間の距離とする。また、ユークリッド距離を用いたものであってもよい。
【0029】
[類似距離判定部12]
(S2)類似距離判定部12は、学習単元のペアUi,Uj毎に、類似距離dist(Ui,Uj)が所定閾値以下であるか否かを判定する。類似距離が所定閾値以下となる(真と判定された)場合、学習単元間の関連性が高いとみなす。一方で、類似距離dist(Ui,Uj)が所定閾値よりも大きい(偽と判定された)場合、何ら処理することなく、j=j+1として処理を繰り返し、次の学習単元のペアを判定する。
【0030】
[親子関係特定部13]
(S3)親子関係特定部13は、類似距離判定部12について真と判定された学習単元のペアUi,Ujについて学習時期TIMEi,TIMEjを比較する。学習時期が早い方の学習単元を「親単元」として、他方の学習単元を「子単元」として、親子関係を特定する。学習時期が同一の場合、両方に対して親子関係を設定するものであってもよいし、後述する図6図8の処理を実行するものであってもよい。
【0031】
図4は、本発明によって導出された学習単元を並べた一覧表である。
【0032】
図4によれば、例えば図1のような学習単元の一覧表に対して、親子関係の系統(ネットワーク)を特定することができる。例えば、教師は、「一次関数」の理解が十分でない生徒に対して、その学習単元の親となる「文字を用いた式」「空間図形」の学習単元を復習させることができる。生徒は、先の学習単元に戻って復習することによって、理解を少しずつ積み重ねることができるようになる。
尚、図4によれば、単一教科「数学」について適用しているが、複数教科に跨るものであってもよいし、専門性が高い資格教育や企業教育に基づくものであってもよい。
【0033】
図5は、本発明の応用フローチャートである。
【0034】
図5によれば、単語集合Wi及びWjは、それぞれ学習単元i及びjの学習テキストに含まれる単語集合である。また、図5によれば、類似距離判定部12について真と判定された際に、親子関係特定部13の処理へ移行する。ここで、親子関係特定部13について、学習単元のペアの学習時期が異なる場合、図3の処理と全く同じである。一方で、学習単元のペアの学習時期が同一である場合、図6図7及び図8に異なる実施形態として表されている。
【0035】
図6は、図5に対する第1の実施形態のフローチャートである。
【0036】
図6によれば、学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、以下のように処理する。
(S361)当該学習時期TIMEよりも前の学習時期となる学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出する。ここで、前の学習時期となる全ての学習単元であってもよいし、所定数(一部)の学習単元であってもよい。
(S362)次に、以下の共通集合を抽出する。共通集合は、両方の単語集合に含まれる単語の集合をいう。
単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipre
単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpre
(S363)共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合の高い一方の学習単元を「親単元」とし、他方の学習単元を「子単元」とする。共通割合が高いということは、前の学習時期に学習すべき単語が多いということを意味する。即ち、その学習単元は、先に学ぶべき学習単元であるといえる。
【0037】
図7は、図5に対する第2の実施形態のフローチャートである。
【0038】
図7によれば、学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、以下のように処理する。
(S371)当該学習時期TIMEよりも後の学習時期となる学習単元に出現する単語集合Wafterを検出する。ここで、後の学習時期となる全ての学習単元であってもよいし、所定数(一部)の学習単元であってもよい。
(S372)次に、以下の共通集合を抽出する。
単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipost
単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpost
(S373)共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い一方の学習単元を「親単元」とし、他方の学習単元を「子単元」とする。共通割合が低いということは、後の学習時期に学習すべき単語が少ないということを意味する。即ち、その学習単元は、先に学ぶべき学習単元であるといえる。
【0039】
図8は、図5に対する第3の実施形態のフローチャートである。
【0040】
図8によれば、学習単元のペアについて学習時期が同一である場合、以下のように処理する。図8は、図6及び図7の処理を合わせたものである。
(S381)当該学習時期TIMEよりも前の学習時期となる所定数(全部又は一部)の学習単元に出現する単語集合Wbeforeを検出する。
(S382)単語集合Wiと単語集合Wbeforeとの共通集合Wipreと、単語集合Wjと単語集合Wbeforeとの共通集合Wjpreとを抽出する。
(S383)当該学習時期TIMEよりも後の学習時期となる所定数の学習単元に出現する単語集合Wafterを検出する。
(S384)単語集合Wiと単語集合Wafterとの共通集合Wipostと、単語集合Wjと単語集合Wafterとの共通集合Wjpostとを抽出する。
【0041】
(S385)共通集合Wipre又はWjpreについて共通割合が高く、且つ、共通集合Wipost又はWjpostについて共通割合の低い、一方の学習単元を「親単元」とし、他方の学習単元を「子単元」とする。
【0042】
この処理は、具体的に図8によれば、以下の式によってスコアSi又はSjを算出する。
Si=(Wipre/Wi)×(1−Wipost/Wi)
Sj=(Wjpre/Wj)×(1−Wjpost/Wj)
Si:単語集合Wiに基づく学習単元のスコア
Sj:単語集合Wjに基づく学習単元のスコア
Wipre/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipreの共通割合
Wipost/Wi:単語集合Wiに対する共通集合Wipostの共通割合
Wjpre/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpreの共通割合
Wjpost/Wj:単語集合Wjに対する共通集合Wjpostの共通割合
これらスコアSi又はSjは、先の学習単元に出現する単語の割合が高いほど、高い値となり、逆に、後の学習単元に出現する単語の割合が高いほど、低い値となる。
そして、スコアSi及びSjを比較し、スコアSi又はSjが大きい方の学習単元を「親単元」とし、他方の学習単元を「子単元」とする。
【0043】
以上、詳細に説明したように、本発明の学習教材分析プログラム、装置及び方法によれば、学習単元に含まれる学習テキストを分析することによって、学習単元間の親子関係を特定することができる。
また、本発明によれば、エキスパートの人手に基づく学習一覧表を自動的に作成することができる。非特許文献1のように、学習者のテストログの収集も不要となる。
【0044】
更に、本発明は、e-Learningシステムに適用し、学習単元のレコメンドに用いることができる。学習者は、選択した学習単元の学習コンテンツを視聴し、テストによって習熟度を確認する。
テスト結果が合格(十分に習熟できた)である場合、その学習単元から見て子単元となる学習単元が、学習者に次に勧められる。これによって、学習者は、系統立てて、理解を少しずつ積み重ねることができる。
一方で、テスト結果が不合格(十分に習熟できていない)である場合、その学習単元から見て親単元となる学習単元が、学習者に次に勧められる。不合格となった学習単元を理解するべく、その学習単元から見て親単元となる学習単元を学習し直すことができる。これによって、学習者は、系統立てて、理解を少しずつ積み重ねることができる。尚、親単元の中でも特に、その学習者が以前に学習したコンテンツを提供することも好ましい。
【0045】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0046】
1 学習教材分析装置
10 学習教材記憶部
11 類似距離算出部
12 類似距離判定部
13 親子関係特定部
図1
図2
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図5
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図7
図8