【文献】
赤外検出器性能表,日本分光学会 測定法シリーズ22 光の検出器とその用い方,日本,学会出版センター,1991年 9月 1日,初版,第140−147頁,3章赤外検出器
【文献】
日本分光学会,レンズの選び方・使い方,光学実験の基礎と改良のヒント,講談社サイエンティフィク,2009年 4月10日,初版,第72頁−94頁,分光測定入門シリーズ第2巻
【文献】
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 IR/Raman営業部,アプリケーションに合わせたFT-IR/Raman検出器の最適な選択について,Signal-to-News IR/Raman Customer News Letter,サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社,2007年,M02003,URL,http://www.hitachi-hitech.com/file/hhs/pdf/products/apli/ana/m02003.pdf
【文献】
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 IR/Raman営業部,近赤外/可視光FT−IRにおける光源・ビームスプリッタ・検出器の選択,Signal-to-News IR/Raman Customer News Letter,サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社,2007年,M97005,URL,http://www.hitachi-hitech.com/file/hhs/pdf/products/apli/ana/m97005.pdf
【文献】
NanoDrop 1000 Spectrophotometer V3.7 User's Manual,Thermo Fisher Scientific,2008年 7月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサは、前記1対の窓の上側の窓を備えるように構成された前記可動アームが下側に位置付けられた時に、前記1対の窓への損傷を防止するために前記試料台を自動的に下降させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記プロセッサは、前記1対の窓の間隔の減少に応じて試料吸光量の予想される減少をチェックし、前記試料吸光量が予想通りに減少する場合は前記間隔を更に減少させる、請求項1に記載の装置。
前記プロセッサを、異なる光路長を外挿する数学的モデルを使って、別にデータを収集せずに仮想ゼロ光路長の背景スペクトルを生成することを可能にするようにさらに構成することによって、背景スペクトルを収集するステップを排除するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
前記1対の窓の他方及び内蔵光検出器が前記光エネルギー源に対して保持される位置に向けて移動され、前記1対の窓の一方が前記1対の窓の間隔を調整するために移動される、請求項12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
分子分光計とは、固体、液体または気体試料に、多くの場合、スペクトルの赤外領域内の光のような非可視光を照射する器具である。試料を透過した光をその後、捕捉し、分析して、試料の特性に関する情報を明らかにする。例えば、試料にはある波長範囲にわたる既知の強度の赤外光が照射されてもよく、その後、試料を透過した光を捕捉して光源と比較することができる。すると、捕捉されたスペクトルによって、照明光が試料により吸収された波長がわかる。スペクトルと、特にその中のピークの位置と振幅を過去に取得した参照スペクトルのライブラリと比較して、試料に関する情報、例えばその組成と特性を取得することができる。基本的に、スペクトルは試料とその中の物質の「指紋」の役割を果たし、指紋を1つまたは複数の既知の指紋とマッチさせることによって、試料の識別と量を判定しうる。
【0003】
しかしながら、上記のような方法を使って収集されたデータが無用となるケースが多くあり、これは透過した光が長すぎる光路によって実質的に吸収されるか、または光が短すぎる光路によってほとんど完全に透過するからである。このような状況は、いずれの1つをとっても問題となりうる。大きな吸光(例えば、長い光路長による)に関しては、ノイズ(すなわち、信号対ノイズ)に基づく不確実性が問題となり、これは、光が弱くなりすぎて、より大きな信号の中で正確に検出できなくなるため、試料の分光信号が失われるからである。しかしながら、吸光信号が小さすぎても(例えば、短い光路長による)、依然として正確な検出は問題であり、これも同様に、たとえ全体的な光のレベルが高くても吸光信号の強度が失われるからである。試料を通る光路の長さを変えることによって、これらの問題の両方を極小化することができる。両方の状況のその他の不確実性としては、光ビーム内のごみや塵に起因する光強度の自然の変動、測定手段に影響を与える温度、振動の変動、および/または最後に、光源と検出システムの統計的変動もありうる。
【0004】
液体小滴の最適化された吸光特性を測定するための装置と方法に関する背景情報は、2008年4月29日にSchleiferに対して発行された、“Methods and Systems for Selecting Pathlength in Absorbance Measurements”と題する米国特許第7,365,852号明細書に記載されており、その中には次のような記述がある。「光学機器における吸光測定を実質的に最適化する方法とサブシステムが提供される。方法は、液体試料を対向面間に延びる小滴に形成するステップと、光ビームを試料に通すステップと、2つの対向面間の距離を、最適吸光に実質的に対応する距離が得られるまで変化させるステップと、を含む。」
【0005】
液体と固体の透過特性を測定するための装置と方法に関する背景情報は、2009年9月1日にStingらに対して発行された、“System and Method for Optical Analysis”と題する米国特許第7,582,869号明細書に記載されており、その中には次のような記述がある。「液体および固体を分析するために透過型分光法を利用する光分析システムは、光エネルギー源と、試料と、可動光エネルギー透過窓と、固定光エネルギー透過窓と、検出システムと、を含む。固定透過窓は光エネルギー源に関して固定されたままである。試料が可動および固定光エネルギー透過窓間に選択的に位置付けられて、試料の分析が行われる。光エネルギーは一方の窓、試料、他方の窓を透過し、光エネルギーが試料を通過したことによる符号化された光エネルギーが取得される。検出システムが符号化された光エネルギーを受け取って分析する。可動光エネルギー透過窓を固定光エネルギー透過窓に関して選択的に移動させることができ、それによって両方の窓と試料を個利返し、正確に位置合わせし、これらに容易にアクセスすることができる。」
【0006】
圧縮された試料の透過特性を測定するための装置と方法に関する背景情報は、2006年6月6日にJuhlに対して発行された、“Apparatus and method for spectrophotometric analysis”と題する欧州特許第1,792,653号明細書に記載されており、その中には次のような記述がある。「分光光度分析のための装置は、分析対象の試料を受けるように構成された試料受容面と、試料接触面であって、試料受容面に関して移動可能であり、それを面が十分に離れて試料を試料受容面に設置できる第一の位置と、試料接触面が試料と接触して試料を両側から圧迫する第二の位置に移動しうる試料接触面と、を含む。装置は、試料厚さコントローラをさらに含み、これは、試料受容面と、試料接触面の第二の位置にある試料接触面との間の距離を制御して、面間の試料の厚さが、試料を通る異なる光路長での試料の少なくとも2つの測定値を得るために変更できるように構成される。」
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における本発明の説明において、黙示的または明示的に別段の理解または記述がなされないかぎり、単数形の単語はその複数形を含み、複数形の単語はその単数形を含むと理解する。さらに、本明細書に記載されたいずれの構成要素または実施形態に関しても、その構成要素について挙げられた考えうる候補または代替案のいずれも、黙示的または明示的に別段の理解または記述がなされないかぎり、一般に個々に、または相互に組み合わせて使用してもよいと理解する。さらに、本明細書で示される図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれているとは限らず、要素の中には単に本発明を明確にするために描かれているものがあると理解するべきである。また、参照番号を各種の図面間で繰り返し使用して、対応する、または同様の要素を示す場合がある。これに加えて、このような候補または代替案のいずれの羅列も、黙示的または明示的に別段の理解または記述がなされないかぎり、単に例示的にすぎず、限定的ではないことが理解されるであろう。これに加えて、特に別段のことわりがないかぎり、本明細書と特許請求の範囲の中で使用されている原料、成分、反応条件その他の量を表現する数は、「約」という用語によって修飾されていると理解するべきである。
【0012】
したがって、そうでないとの記載がないかぎり、明細書と付属の特許請求の範囲に記載された数字によるパラメータは概算であり、本明細書に記載の主題により取得しようとされる所望の特性に応じて異なる場合がある。最低限でも、ただし特許請求の範囲の均等の原則の適用を限定しようとするものではないが、数字によるパラメータの各々は、少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、通常の四捨五入方式を適用することにより理解するべきである。本明細書に記載の主題の広い範囲を示している数字による範囲とパラメータが概算であるにも関わらず、具体的な例に示されている数値はできるだけ正確に報告されている。しかしながら、数値は本質的にそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。
【0013】
一般的説明
本明細書で説明する実施形態は、例えば、これらに限定されないが、油性試料を含む固体、軟性固体、および液体試料の光学的分析を提供するように企図されている。ある試料を通る光の透過経路の長さは、その試料と必要な測定の種類に応じて広い範囲で変化する。本明細書で説明する本実施形態はそれゆえ、使用者がリアルタイムで自動的に1つまたは複数の光路長に対して精密に制御できるように設計される。このような新規の態様の有利な結果は、異なる光路長の多くのデータセットを自動的に収集し、保存することによって、収集された保存データの後の分析を多くの異なる光路長で行うことができる、というものである。
【0014】
本明細書で説明する実施形態の他の有利な態様は、その構成がまた、使用者が小さい試料(一般に試料の液滴)を分析のためにサンプリング窓上の光ビーム内に設置できるようにするための簡単な手段も提供し、これによって当然、試料を試料セル窓から容易に除去し、クリーニングして、多くの試料を短時間で迅速に分析することができる。
【0015】
具体的な説明
ここで、図面を参照すると、
図1に示され、参照番号100で概して示される装置は、「開」位置にあるように構成された回転アームを示しており、この位置では、構成された窓5’からなる下面に固体の試料(軟性の曲がりやすい試料)(図示せず)または参照固体試料を塗布できるか、または検体または参照試料(図示せず)の液滴(例えば、約2μl未満の試料、油性試料、液体試料)を分注または吸引できる。以下により詳しく説明するように、このような「開」位置では、面の端、例えば光学窓5および5’の所望の表面構成に容易にアクセスして、その試料のいずれでも塗布でき、使用者は窓5および5’に設けられたこのような面を容易にクリーニングし、希望に応じて新しい試料を装置の中に取り付けることができる。
【0016】
その後、試料を塗布すると、装置100のアーム4は、
図1に示されるように、使用者によって「動作」すなわち閉位置(しばしば位置センサ(図示せず)によって検出される)となるように角移動され、その結果、窓5の所望の面が窓5および5’によって提供される面間に含まれる所望の試料と接触する。このような構成によって、例えば、ただしこれらに限定されないが、表面張力モード(すなわち、試料を柱状に引っ張る)または、窓5および5’の構成された面を介して試料を「両側から圧迫する」ことのできるモードが得られる。これらの例示的モードのいずれにおいても、
図1に示される装置100はその後、後述のように、異なる光路長の多くのデータセットを自動的に収集し、保存し、それゆえ、多くの、必要であれば異なる光路長の保存されたデータを後で分析できるようにすることが可能である。
【0017】
図1に戻ると、閉じた「動作」位置は、スイングアーム4とヒンジスペーサブロック6’の両方の穴を通じて構成されたヒンジロッド6の機械的結合によって支援され、ヒンジスペーサブロック6’はベースプレート2に関してしっかりと固定される。これに加えて、スイングアーム4に連結された、光検出器9と窓5を含んでいてもよいがこれに厳密に限定されない検出器ケーシング7もまた、必然的にヒンジロッド6の周りで回転して、窓5の面が窓5’の上面に設置された試料と接触しなければならない。しかしながら、注意しなければならない点として、試料は多く場合、下側の窓5’の上面に設置できるが、いくつかの例においては、ある試料を上側の窓5の下面に塗布することもできる。これが所望の動作モードである場合、試料はすると、アーム4を介して角回転されて、下側の窓5’の所望の面と接触するが、これも本明細書で説明する有効な実施形態から逸脱しない。
【0018】
本実施形態ではそれゆえ、広い範囲の波長を透過させる1対の移動可能な窓(5および5’)を有することによって、使用者は容易に1つの試料を別の試料に変えることができる。このような窓5、5’により、広い範囲の液体(例えば油)といくつかの固体を分光分析するために光ビームの中に設置できる。これらの窓5、5’は対向するように配置される。さらに、下側の窓5’はしばしば、大きい平坦な面(例えば試料台3)に結合されて、使用者に、大きさと種類が異なる可能性のある試料を支持できるような十分な面積を提供する。上側の窓5は上記の可動アーム4に結合でき、これを上昇させて(例えば、回転させて開き)、試料を設置し、または取り外すことができ、その後、試料の位置まで下げて、スペクトルデータを収集できる。試料は例えば、薄く、柔軟な曲がりやすい固体とすることができるが、一般には液体であり、これは、そのような媒質によって光路長を変えることができるからであり、したがってこれが望ましい試料の種類であるが、
図1に示し、本明細書で説明する装置はもちろん、液体以外の試料にも適応できる。
【0019】
例示のみを目的とした設計の一例として、検出器9の視野が
図2に示されるように垂直線の両側約45度である場合、下側の窓5’の直径はしばしば、下側の窓5’の底部から上側の窓5の上方に取り付けられた検出器9までの距離全体の2倍である。その結果として得られる所望の設計において、この距離は、検出器から上側の窓までの空間の1000マイクロメートルに各窓の厚さ200マイクロメートルと2つの窓間の通常最大距離500マイクロメートルを加算したものである。その結果、1900マイクロメートルの2倍、すなわち下側の窓の最小の大きさは約4000マイクロメートルとなる。
【0020】
このようなパラメータを使用すると、結果として得られる構成で提供される2つの窓は少なくとも4000マイクロメートル(4ミリメートル(mm))であるが、窓をその縁辺において結合するための十分な面積を与え、これに加えて、製造の容易さとコスト削減が可能な寸法とするためには、好ましくは5000マイクロメートル(5mm)である。より小さい窓もまた使用できるが、より小さい窓を使用することによって、検出器9に届く光のレベルが低下することがありうる。
【0021】
検出器9はしばしば、ただし常にとはかぎらないが、上側の窓5に連結され(例えば、一体化され、組み込まれ)、これは、それが好ましいことに小型、軽量であり、アームを容易に持ち上げられ、使用者が窓を素早くクリーニングし、検査できるからである。本願で実施可能な例としての赤外線(IR)検出器は、重水素化硫酸トリグリシン(dTGS)検出器、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)検出器、硫酸トリグリシン(TGS)検出器、ひ化インジウムガリウム(InGaAs)検出器、ゲルマニウム(Ge)検出器、硫化鉛(PbS)検出器、アンチモン化インジウム(InSb)検出器、テルル化カドミウム水銀(MCT)検出器、テルル化亜鉛水銀(MZT)検出器を含むがこれらに限定されない。
【0022】
上側のアーム4は、
図1に示されるように、容易に持ち上げて、搖動(回転)によって、使用者が容易に上側の窓5の底面を見ることができる位置に戻せるように設計される。アーム4と窓/検出器アセンブリは、上側の位置(例えば、
図1に示される「開」位置)を有し、ここでは、それが弾性機構(図示せず)(例えばバネ)または磁気手段(例えば電磁石または永久磁石)によって所定の位置に保持され、それによって使用者は両手を使って上側の窓をクリーニングし、検査できる。それと同時に、下側の窓5’は動作的に覆いが取られ、下側の窓5’もまた、容易にクリーニングし、検査できる。
【0023】
光源12は多数の周知の設計、例えば、ただしこれらに限定されないが、白熱灯、イオン化ガスランプ、レーザ、発光ダイオード等から所望の電磁放射を提供するように構成できる。好ましくは、光源12は、自由空間を経て本明細書で説明する所望の光学的窓(例えば下側の窓5’)へと光エネルギーを提供するように構成される。光源12により提供される光学バンド幅は、どのような所望の広い波長範囲または狭い波長バンドとすることもできるが、光源は約1マイクロメートル〜約25マイクロメートルの赤外光を提供するように設計されることが多い。しばしば望まれるように、このようなIR光は、フーリエ変換型赤外線分光法(FTIR)による分析用に変調できる。これに加えて、このようなIR光源は多くの場合、より大きく、特に所望の光学集束手段(図示せず)に連結されている場合はそれゆえ、下側の窓5’の下および/または横に位置付けられるように設計される。しかしながら、このような構成要素は移動するように設計できるが、多くの場合、便宜上、固定されるように設計される。
【0024】
試料アーム4は、例えばピン(図示せず)またはヒンジ11の形態の再現可能な機械的ストッパを有し、これは、アームが回転した時にアーム4の下面が当接する所望の位置を提供し、試料との接触及び測定を提供する。このような構成は、光源光学系に関して、上に向かって進む光(参照番号8参照)を再現可能な次元位置(例えば、焦点)へと方向付ける再現可能な下側(動作)位置を提供する。これは、
図1に示されるようにサンプリングアーム4が下側の位置にある時に検出器9が有するものと同じ再現可能な位置である。前述のように、例えばバネ等の弾性機構または電磁石や永久磁石等の磁気手段を使用して、データ収集時にサンプリングアーム4を再現可能な位置に保持するための余分な力を提供することができる。
【0025】
図2は、光学装置の透過セル部のより詳細な図であり、ここでこれを参照して、本明細書において実施形態を明瞭にする。それゆえ、
図2は、概して参照番号200で示される、開示の構成を示しており、これは試料台3と、それぞれの上側と下側の窓5および5’と、検出器ケース7と、検出器9と、を含む。また、概して光源12も示され、これは多くの場合、IR光源であり、さらに多くの場合、上で簡単に述べたが、当業者に知られているようにFTIRのための変調IRを提供するIR源である。しかしながら、FTIRは近赤外線および中間赤外線領域で動作するのに望ましい実施形態であるが、これらの構成はまた、他の近赤外線乃至中間赤外線分光測定システムでも構成でき、FTIRシステムのみ限定されると解釈するべきではないと理解するものとする。
【0026】
図2に戻ると、結果として得られる透過セルは、多くの場合、薄いダイヤモンドの窓の、特別な面(後述する)を有する複数(しばしば2個)の窓5および5’と、試料台3に連結され(
図1に示される)、2つの窓5および5’の間の空間を調整する(すなわち、光路長を調整する)調整可能機構14(これについても後で詳しく説明する)と、を有するように示されている。このような構成から、
図1に示されるシステムによって、約10マイクロメートル〜1000マイクロメートルの範囲にわたって調整可能な長さが提供される。
【0027】
再び
図2を参照すると、例示的な動作モードとして、光ビームは一般に、窓5および5’を通って垂直方向に上下に移動するが、使用者が希望する場合は、ソフトウェアまたはマニュアル制御により他の角度でも移動できる。光検出手段(例えば検出器9)が一般に光源手段(例えば、光源12)より小さいため、光は通常、上に向かって検出手段(例えば検出器9)へと方向付けられ(参照番号8とそれに付随する方向矢印参照)、小型で軽量の検出器9が、試料アーム4の中の上側の窓5と共に移動する設計が可能となり、上側の窓5が下側の窓5’から上方に、すなわち離れるように移動または搖動し、下側の窓5’で収容された試料に光が入る。取付アーム4を介したこの移動可能な検出器によって、新しい試料を装填し、上側または下側の試料窓5、5’のいずれかに付着しているかもしれない古い試料を除去するために、上側と下側の窓5、5’の両方にアクセスできることになる。
【0028】
組み込まれた光検出器9はしばしば、寸法的に実質的に小さく設計され、試料温度で動作するだけでなく、有利な点として、検出器9を可動アーム4の中の上側の窓5に非常に近い位置に設置して、検出器の集束光学系を不要にするモードとして近接場集光を利用する。別の構成として、検出器9が分析対象の試料と異なる温度で動作する場合、本明細書で提供される例示的実施形態では、検出器の伝達光学系(図示せず)を組み込んで、検出器9を既知の方法で試料からさらに遠ざけることができる。例えば、単純な楕円鏡を使って、検出器9を試料から遠くに設置して、試料を、検出器9がそうでなければ耐えられないような温度まで加熱または冷却できる。
【0029】
透過型サンプリングシステムを通る光路は光源手段12(例えば、IR光源、例えば変調IR源)から始まり、これは1つまたは複数の光源と、固定または可変フィルタ手段(図示せず)と、を含み、光強度と光波長の両方の情報を含む光源12を作ることができる。光源12からの光は、集光手段へと向けられ、これは回折、反射構成要素のどのような既知の構成も含むこともでき、光を、試料を支持する第一の窓(例えば下側の窓5’)を通り、次に第二の窓(例えば上側の窓5’)を通るように動作的に方向付けて、光検出手段(例えば検出器9)によって収集されるようにすることができる。場合によっては、波長フィルタ手段(図示せず)の一部または全部を光路の中の試料と窓5、5’の後に設置できるようにすることが可能であると理解するべきである。しかしながら、上記の構成は有利ではあるが、より望ましい光学系の構成は、光源12、可変フィルタ/干渉計、集光手段(図示せず)を有する構成であり、これらは一般に、サンプリング窓5の付近またはその下に設置された光検出手段より大きい。それゆえ、生成される光は窓5、5’と試料を通って上に向かい、光源12に関して既知の標準的位置にある光検出手段9と、当業者にとって周知の集光手段(図示せず)に集束される。さらに、
図1で示す装置は台3の下の光源12が窓5’に連結され、光検出手段9(例えば、光度測定または分光光度測定放射検出器)がアーム4に連結されているが、他の例示的実施形態では、光源12(例えば、光度測定または分光光度測定光源)を備えるように構成されたアーム4と、光検出手段9(例えば、光度測定または分光光度測定放射検出器)と共に配置された台3を含めることができると強調されることも理解するものとする。
【0030】
しかしながら、上述のように、光検出器9は多くの場合、所望の方法で光源12より小さいため、持ち上げて下側試料窓から遠ざけ、使用者が試料位置にアクセスしやすくすることのできる図示の可動アーム4の中の上側の試料窓5の付近に光検出器9を設置することがそれゆえ有利であると理解するものとする。これによって使用者は両方の窓を検査でき、その結果、使用者は窓が清浄で試料を受け入れられる状態であるかがわかる。
【0031】
この構成の利点として、使用者は希望に応じて、検査され清浄な/クリーニングされた上側の窓5と光検出器9を、
図1に示されるように、装置100の標準的な既知の位置まで下げて、試料が設置されていない状態の標準的な「背景」スペクトルを収集し、分光計システム全体を検証し、後で使用するために参照背景スペクトルを保存できる。しかしながら、多くの試料について、背景データ収集ステップを排除し、ベールの法則と数学的モデルを使って多くの異なる光路長を外挿し、仮想ゼロ光路長の背景スペクトルを構築することも可能であり、これについては後述する。いずれの場合も、使用者は次に、上側の窓5を上昇させて、試料を下側窓5’上に容易に設置できる。
【0032】
他の例示的な有利で新規の実施形態として、窓5’はコンピュータ(プロセッサ)制御型モータ(例えば、
図1に示されているように、モータの参照記号14参照)によって、概して例えば最大1ミリメートルまで下降させて、試料の光路長を長くしてから、上側の窓5がその標準的サンプリング位置まで下降されるようにすることができる。これによって、データ収集を進める間に光路長を短縮(すなわち、両側から圧迫)することができる。このような「試料を両側から圧迫する」例示的な工程により、高粘性の試料の分析を実行でき、窓5、5’が離れているために空気が光ビーム内に導入される心配をしなくてよい。
【0033】
光検出器9と窓5を光源12に関して既知の位置に保持することは、上側の窓5と下側の窓5’の間の、ある光路長を、取得されたデータに関して自信を持って決定でき、スペクトルデータと共に保存できるようにするために重要である。基本的に、検出器9と窓の位置の設定によって、試料の種類と厚さの変化を測定することが可能となり、方向付けられた光(例えば光ビームの焦点)が、検出器9の光源光学系(例えば集光手段(図示せず))に関する位置の変化によって変化したか否かは考慮しなくてよい。これは、光源光学系(図示せず)と例示的な光検出器9の間の相対移動によって、検出器9が収集する光の量が変化する可能性があり、これをチェックせずにおくと、異なる試料と背景参照データの収集スキャン間で検出器の位置が変化した時に見掛け上の試料の吸光量に誤りの変化が生じるため、重要である。
【0034】
したがって、本実施形態では、上側の試料窓5と検出器9は多くの場合、ただし必ずではないが、2つの再現可能な位置にのみ移動される。上の位置では、使用者は試料窓の試料を取り外し、クリーニングし、検査し、設置することができ、下の位置は、背景(試料なしの参照)および試料スキャンの収集中に一定の焦点と既知の光路長を提供する。
【0035】
図1に戻ると、下側の試料窓5’は平坦なサンプリング台3に連結される(例えば結合形成を介する)。窓5、5’のいずれかおよび/または、あるいは試料台3は当業者によって知られている材料(例えば疎水性、親水性コーティング)で処理することにより、塗布された液滴検体(例えば油)または参照試料が広がりすぎるのを防止する(例えば、塗布された試料の広がりを試料台3の境界で停止させる)ことができると理解するものとする。しかしながら、台3の設計自体はまた、あらゆる液体試料が試料窓5、5’の位置から流れて、試料台3の縁から、試料窓5、5’と台3の下にある支持機構や光学系へと滴り落ちるのを防止するように構成される。さらに、このような大きい台3によって、多くの異なる試料を窓5、5’間に設置できる。試料(図示せず)の漏れをさらに防止するために、試料台3はしばしば、中実の構成であり、所望の試料を試料台3の下へと流し、漏出させるような穿孔(例えば穴、スリット等)を持たない。追加の構成として、サンプリング台3の表面は、必ずではないが、リップまたは壁によって取り囲まれ、大量の試料が偶発的にサンプリング領域に載せられた時に、液体試料をせき止めるようにすることができる。
【0036】
他の特徴として、サンプリング台3は、ヒンジが窓から長い距離(例えば少なくとも60ミリメートル)だけ離れて、窓が上下に移動される時に傾斜角を制限すれば、ヒンジにも取り付けることもできる。この事実によって、ステンレススチールの単独の部品が試料台3として機能して、下側の窓5’を保持することができる。この単独の部品は、窓からの距離が60ミリメートルより大きければ、ベースに固定して取り付けることもできる。他の構成は、薄い可撓性の面の台3の使用を含む。具体的には、金属、例えば、ただしこれに限定されないが、ステンレススチール等の薄片の自然の曲げがヒンジとして機能でき、これは、液体試料がヒンジ領域を通って、同じ試料台3の下に取り付けられた光源手段およびその他の機構の中に漏れるようなギャップがない点で有利である。
【0037】
また、試料台3は、2つの試料窓間の試料の光路長を変化させることを目的として、調整可能機構14(例えばコンピュータ制御式上昇手段、例えばモータ式(ステップモータ))の上に取り付ける(例えば連結する)ことができる。このような調整可能機構14(例えばモータ)は、マニュアルスイッチまたはコンピュータプログラムによって制御できる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態はソフトエア制御式モータ14であり、これは試料窓間の距離を自動的に変化させて、試料を通る光路長をプログラムされた方法で制御し、多くの異なる試料の吸収スペクトルの測定を容易にすることができる。
【0038】
図1に示されるように、調整可能機構14は、1つの有利な構成として、リニアアクチュエータ16を含むことができ、これは例えば、固定手段、例えばねじ、ポスト、ピン、リボット等によってベースプレート2に固定された調整可能機構14として構成されたモータを備える。それゆえ、モータ14をこのような構成で使用することによって、リニアアクチュエータ16の回転運動が提供され、試料台3が上下に移動可能となる。好ましくは、リニアアクチュエータ16または組み込まれたあらゆる上昇手段/下降手段の移動距離および/または位置は、
図1に示されるような装置100の動作中にモニタされる。追加の構成として、モータ14および/または台3の移動は、モータ制御式システムが起動時、または例えば光インタラプタ装置(図示せず)による中断時に初期化される時の「ホーム」または基準位置を確立する基準位置センサ図示せず)を含むことができる。
【0039】
このようなモータ/ソフトウェア制御構成を通じて、試料台3全体がそれゆえ、例えば約500マイクロメートル〜約1000マイクロメートルだけ上下に移動させ、必要に応じて試料の光路長を変化させることができる。望ましい実施形態において、下側の試料窓5’は試料台3への連結を介して、使用者がクリーニングし、検査し、背景データを収集できるように下側位置に留まるようにプロクラムすることができる。試料が載せられ、データ収集が開始されてからのみ、プログラムが進行し、必要に応じて例えば試料窓5’/台3を上昇させて、光路長を短縮する。
【0040】
試料台3はそれゆえ、試料アーム4が下げられるまで常に下側の位置に留まるようにプログラムすることができ、これによって、例えば、構成されたダイヤモンドの窓5、5’が、試料アーム4が意図せず急速に押し下げられることによって損傷しないように保護される。具体的には、このような急速な、意図しない移動は、防止しなければ、ストッパに十分な速度と力で当たり、アーム4と支持システムを大きく曲げ/ゆがめて、それによって例示的な構成されたダイヤモンドの窓5、5’の両方にそれが損傷するほどの力がかかることがありうる。それゆえ、本願の望ましい方法は、試料アーム4がサンプリング位置まで下げられた後でのみ、モータの駆動が作動されて、試料台3を上方に方向付け、短い光路長を生成できるようにすることである。しかしながら、アーム4が持ち上げられるとすぐに、モータ14の駆動が試料台3を十分に低く下げる(例えば、最大1000マイクロメートル下げる)ように指示され、損傷を起こりにくくする。
【0041】
ほとんどの試料では、試料台3をまず上昇させ、その後、複数回下降させることができ、それにもかかわらず、表面張力によって液体試料が所定の位置に保持されることに留意するものとする。高粘性の半固体試料だけは、気泡の混入を防止するためだけの両側からの圧迫に限定される。また、本明細書で説明する本実施形態は、表面張力変調コーティングを試料台3に追加して、試料を試料台3の上に広がらずに、窓上に保持されるのを助けるように設計されることにも留意するものとする。これらのコーティングにより、同じ試料を多数の反復的データ収集サイクルを通じて異なる光路長で分析し、低粘性の試料の使用を支援することができる。それゆえ、種類の異なる試料には異なるコーティングを使って、使用者が素早く、正確に、試料を下側の窓5’に載せることができるようにする。
【0042】
図2に戻ると、窓5および5’は、希望の表面にコーティング(例えば、反射防止(AR)コーティング)で被覆して、光のスループットを増大させることができ、相互に上下関係となるように取り付けることかできる。光8は光源から、下側の窓5’の下にある構成された光学系(図示せず)を介して、上側の窓5に合理的に可能なかぎり近く取り付けられた検出器9へと進む。検出器を上側の窓に非常に近く(例えば、数マイクロメート以内)設置することによって。検出器と上側窓の間の光学系はすべて不要となる。望ましい構成では、上側の窓5は厚さ約200マイクロメートルのダイヤモンドの窓であるが、窓5はこのような厚さだけに限定されない。検出器9は、上側の窓5から約1000マイクメートル〜500マイクロメートルまでの高さに取り付けられる。下側の窓5’もまた、多くの場合、厚さ約200マイクロメートル(ただし常にとはかぎらないが)のダイヤモンド(ただし常にとはかぎらないが)の窓である。この窓は、ダイヤモンドが材料である場合、コストを下げ、ダイヤモンドのフォノン吸収を減らし、検出器から下側の窓の底面までの距離を短くすることが重要であるが、再び、本明細書で説明する本実施形態は薄い窓だけに限定されない。
【0043】
好ましい窓は、平坦な側と、
図2にいくらか示されているように円錐状の(例えば円錐の)形状の面を持つ側を有し、窓(例えば5)の中央は窓の縁(約180マイクロメートル)より厚い(約200マイクロメートル)。この特徴は、窓が製造中に若干位置ずれ(傾斜)していたとしても、窓の中央の光路長が最も小さくなるようにするために望ましい。このような円錐の形状はまた、光がサンプリング窓の1つの平坦面から第二の平坦な窓面へと反射する光によって生じるスペクトル「チャネリング」を減少させる。これらの反射は、これらが窓の中(1つの窓の前面と後面の間)、で発生した場合、またはこれらが平坦で相互に隣り合っている2つの異なる窓面間で発生した場合、問題の原因となりうる。したがって、各窓は、一方が平坦で一方が円錐形状の窓である。これらの窓は、円錐が上向きでも下向きでも使用できる。好ましい窓の設定は、検出器側窓の平坦面が検出器に向くように上向きで、円錐が試料に向くように下向きである。下側の窓は、平坦面が試料に向くように上向きで、下側の窓の下側が光源に向くように下向きの円錐形の面を有する。したがって、上側の窓5の上側円錐形面は、上側の窓の面の内部の反射からの、および試料が設置される上側と下側の窓間の空間からの不良な「チャネルスペクトル特徴」を防止する。これに加えて、下側の窓5’の下向きの円錐は、下側の窓そのものの内部の反射からの不良なチャネルスペクトル特徴を防止する。
【0044】
好ましい実施形態として、本明細書における好ましい応用は、下側の窓だけをデータ収集中に移動させて、光路長を変化させることである。それゆえ、上側の窓、検出器および光源光学系は好ましくは、ただし常にとはかぎらないが、データ収集中に移動せずに、吸光度測定をできるだけ安定させる。それゆえ、下側の窓だけを移動させる(例えば、約10〜1000マイクロメートルの範囲で移動させる)ことによって、光路長を変化させることで、電動下側窓駆動システムの設計をより小型、より剛性に、より再現可能に、より低コストにすることができる。電動駆動システム(すなわち、調整可能機構14)は、長期間にわたってわずか数マイクロメートルの精度での再現可能な方法で、下側の窓5’を上下に移動させる必要がある。駆動システムの中で、制御ステップあたり1マイクロメートル未満で移動させることができるような分解能をもたせることは、当業者に知られている現在のシステムを使えばさほど難しくない。しかしながら、このような現在のシステムにかかわらず、窓が接触し、光路長さが最小となるゼロ地点を現場で校正して、使用者が測定を信頼できるようにする必要がある。このような校正ステップにより、使用者は、
図1の閉じた「動作」位置においで示されるように、窓5および5’が接触している(最小光路長)ことについて確信でき、検出器アーム4の機械的ストッパとヒンジアセンブリの通常の摩耗、腐食、温度変化を考慮できる。
【0045】
このゼロ校正は、いくつかの方法で行うことができる。1つは、液体(例えば、水またはアルコール)試料を透過セルの中に設置して、窓を最小光路長に向かって駆動させながら吸光量を測定することである。吸光量が移動ステップ毎に測定されると、吸光量は窓が接触するまで毎回変化し(減少し)、その後、急に変化するが、これは急激な大幅低下としてモニタされた。各ステップの吸光量の変化のこの急変はそれゆえ、最小光路長に到達した点を示す。
【0046】
光路長を校正する他の方法は、窓、例えば本明細書で説明する窓で検出可能な少量の光チャネルスペクトルを測定することであり、これは最終的に、試料とのチャネルスペクトルは除去するが、空気とのそれは完全には除去しないように設計される。この光チャネル信号は、設計上は弱いが、信号を十分な時間、例えば約60秒またはそれ以上にわたって平均すると、2つの窓間の光路長を非常に正確に表すものとなる。このような方法は、その手順が非ゼロ光路長を約50マイクロメートルまたはそれ以上まで、非常に高い精度で測定でき、ゼロ地点の測定だけでなく、より短い光路長もすべて測定できる点で有利である。
【0047】
他の有利な代替案として、上記の工程より高速となるように設計される良好なゼロ校正点方式は、機械的ストッパの1つを絶縁し、試料アームストッパの接触抵抗を電子的に測定することである(すなわち、現在の測定システム)。光路長がゼロまで短縮されると、窓同士が接触し、アームがストッパから持ち上がり、ストッパの接触抵抗が急増する。これは、毎回の試料分析時に、ほとんど、またはまったく追加時間をかけずに測定できる。
【0048】
データ制御システム
動作方法またはその各種の選択されたステップは、コンピュータまたはその他の電子プロセッサを含むシステムと、コンピュータ可読媒体、例えばディスクドライブ、磁気テープ、光ディスクドライブ、メモリカード等に有形的に具体化されたコンピュータプログラム命令によって自動的に実行できる。コンピュータ可読媒体は、入力および出力デバイスの両方として機能することができる。任意選択により、コンピュータ/プロセッサはさらに、1つまたは複数の他の出力デバイス、例えば表示スクリーン、プリンタ等および/または1つまたは複数の他の入力デバイス、例えばはキーボート、インターネットコネクタ等に電子的に接続されてもよい。
【0049】
システム100において、例示的な構成のコンピュータ/プロセッサ(図示せず)は、窓5、5’間の試料の光路長を特定の数値に設定する命令を提供する。例えば、コンピュータ/プロセッサは自動的に、光路長を設定または変更して、各種の光路長を提供するように操作された分析対象の試料からの光情報を収集する命令を送信してもよい。
図1のシステムが位置センサも含んでいる場合、このような位置情報は、コンピュータプロセッサに戻されて、光路長の情報を提供してもよい。コンピュータプロセッサ(図示せず)はまた、光検出器9から、前述のように
図1の透過セル部からのこのような光が伝送された後に、光検出器9により検出された光の強度(例えばパワー)に関する情報を受信する。コンピュータ/プロセッサはまた、自動的に計算を実行し、例えばソフトウェア、グラフィカルユーザインプット(GUI)等により提供された決定を評価して、使用者を誘導するように構成されたステップを指示してもよい。コンピュータプロセッサ(図示せず)はまた、可変数の数値を設定することもできる。コンピュータ/プロセッサにより実行されるイベントのシーケンスは、コンピュータ可読媒体に保存され、そこからコンピュータ/プロセッサに送信されるプログラム命令に従って制御されてもよい。測定結果はまた、コンピュータ/プロセッサからコンピュータ可読媒体に転送されて、そこに保存されてもよい。出力はまた、出力デバイスを介して使用者に提供されてもよい。使用者は、プログラムの実行を当業者に知られている入力デバイスを介して制御してもよい。
【0050】
好ましいデータ収集制御プログラム方法は、以下のように動作するように構成できる。まず、使用者はプログラムに対し、新たなデータ収集を行うつもりであることを伝える。するとプログラムは使用者に対して、窓を検査し、必要に応じてクリーニングするように促す。次に、使用者は上側の窓と検出器アームを標準のサンプリング位置まで下げることができ、アーム機構がコンピュータプログラムに対して、アームがデータ収集開始のために適正な位置にあることを信号で知らせる。次に、プログラムは使用者に対し、それが自動的に背景スペクトルを収集していることを信号で知らせる。すると、このスペクトルが自動的に分析されて、収集された光が予想された特性を有し、窓5、5’が清浄で、問題がないことを示すか否かを確認できる。
【0051】
次に使用者に、試料窓検出器アーム4を上昇させて、試料を下側の試料窓5’に設置するように促すことができる(さらに、任意選択により、次に実行する試料の名前を入力してもよい)。例えば、位置センサ(図示せず)によって、アーム4が、試料が所定の場所にあることを示すパターンで上昇または下降されたことが確認されると、制御プロクラムは自動的にデータ収集サイクルを開始できる。
【0052】
データはまず、試料窓間の空間を大きくして(すなわち、長い光路長)で収集できる。次にモータは(例えば使用者によるグラフィカルユーザインプット(GUI)を含むソフトウェアを通じて)下側の窓5’を上昇させ、窓の間隔と光路長を縮小して、データをさらに収集するように指示される。このプロセスは、プログラムされた回数だけ繰り返すことができる。各データセットが収集されるたびに、前のデータセットについてのデータ分析を開始できる。
【0053】
最初の分析は、透過光の試料吸光量の予想される減少をチェックすることとすることができる。吸光がベールの法則の通りに進まなかった場合、プログラムは使用者に対し、光ビーム内に気泡がある可能性があると信号で知らせ、試料窓5、5’間の位置ずれがないか、または試料の量が少なすぎないかをチェックするように信号を送ることができる。プログラムされたデータの収集が行われると、プログラムは次にデータを使用者に提示でき、使用者はデータをどのようにでも解釈できる。使用者は次に、手作業で最善の光路長を選択し、または自動的にデータを分析するプログラムを実行できる。
【0054】
前述のように、多くの試料について、背景データの収集を不要にして、ベールの法則と数学的モデルを使って、多くの異なる光路長について外装し、多くのデータ分析において有益な仮想ゼロ光路長の背景スペクトルを構築することも可能である。この技術は、多くの試料を短時間で分析する時に時間を節約することができる。このような異なる光路長での測定技術は、米国特許第6,809,826号明細書および同第6,628,382号明細書に記載さている技術と同様である。
【0055】
本実施形態の高速動作接触抵抗位置検出システムにより、追加の特徴として、試料の粘性測定が可能となる。試料窓を一定の速度で上昇させ、試料の厚さが一定の速度で減少するようにする。ある地点で減少する量から広がる試料の粘性によって、構成された機械的ストッパからアームが上昇するのに十分な力が発生する。これは多くの場合、接触抵抗の増大によって示される。試料アームにかかる力がわかり、窓の移動速度と試料の厚さもわかる。これらの3つの項目がわかることによって、それゆえ、粘性を有益な範囲で判定できる。この情報は、有利な点として、光路長が増大される後の測定中に、光路長が過度に高速に増大された時に、気泡がサンプリング光ビームの中に吸引されるのを防止するために利用できる。
【0056】
制御ソフトウェア戦略
使用者はボタンを押して、データ収集サイクルを開始する。するとソフトウェアは使用者に対し、試料の名前を示し、窓を上昇させて、清浄であるかを確認するように促すことができる。窓をクリーニングし、検査した後、使用者は次に、その試料に背景とラベル付けし、その後、試料アームを下降させて、背景の収集を開始する。
【0057】
プログラムは背景スペクトルを使って、窓の清浄さを確認することができる。この背景分析に問題がなければ、使用者および/またはプログラムは背景を後で使用するために保存できる。使用者はまた、資料にラベルを付け、その後、この試料を所定の位置に載せることができる。ほとんどの場合、試料はピペットで下側の窓の上に設置される液体とすることができる。窓の上に設置される例示的試料は、表面張力と粘性により、厚さ少なくとも500マイクロメートルのものを含む。したがって、ほとんどの場合、使用者が試料を下側の窓に載せ、その後アームを試料の上まで下げると、試料は上側と下側の窓間の空間を満たす。
【0058】
使用者は、横から見て、試料が実際に窓間の空間を満たしていることを確認できるが、所定の位置にある試料を見ることは、簡単に見える角度のほとんどについてアームが邪魔になるため、困難である。したがってプログラムは、アームが標準の下側サンプリング位置まで下がった後に、自動的にデータの収集を開始して、位置ずれのある試料からの気泡がないか確認するようにセットアップできる。
【0059】
ソフトウェアは、アームが下げられたことを検出することかでき、以下の例示的であるが、非限定的な例としてのステップを進める。ステップ1)プログラムされた時間だけ遅らせる(光レベルが変化した後、検出器が落ち着くまで約2〜15秒間)。ステップ2)約5〜15秒間のデータ収集を開始する。ステップ3)窓間の空間(光路長)を50%だけ縮小して、さらにデータを収集する。ステップ4)データを分析して、吸光量が約50%の予想量だけ減少したか確認する。吸光量が予想通りでない場合、プログラムは使用者に対し、試料内に空気があるか、窓位置内の試料が少なすぎるようであると信号で知らせることができる。ステップ5)吸光量の減少が適正であるようであれば、プログラムは空間(光路長)をプログラムされた量だけ減少させて、第二のデータセットを収集し、保存することができる。ステップ6)データを再び分析して気泡の有無を確認し、プログラムされた数の異なる光路長について繰り返して、収集し、ステップ7)その後、使用者に対し、データ収集が完了したことを信号で知らせる。
【0060】
本願に含められた記述は、基本的な説明とすることが意図されている。本発明を図と文章で示された各種の実施形態に従って説明したが、当業者であれば、これらの実施形態には変形版がありえ、これら変形版は本発明の主旨と範囲の中に含まれることが容易にわかるであろう。読者は、具体的な記述がすべての考えうる実施形態を明示的に示しているわけではないことに気付くはずであり、多くの代替案が黙示されている。このような改変その他は、当業者の能力および本発明の範囲と主旨の中に十分に含まれる単純な改変であると考えられる。したがって、多くのこのような改変が当業者により、本発明の主旨、範囲、本質から逸脱せずなされるかもしれない。説明、図面または用語のいずれも、本発明の範囲を限定するとは意図されず、本発明は特許請求の範囲によって定義される。