特許第6351192号(P6351192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6351192
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】調剤支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61J3/00 311G
   A61J3/00 310K
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-46143(P2017-46143)
(22)【出願日】2017年3月10日
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】516386546
【氏名又は名称】株式会社未在ADシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】平山 義広
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−024012(JP,A)
【文献】 特開2004−162560(JP,A)
【文献】 特表2013−505433(JP,A)
【文献】 特開2015−080473(JP,A)
【文献】 特開2003−070909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を測定可能な距離測定部であって、筒先を含み、かつ、該筒先とは反対側に内部と外部を連通する開口部が形成されており、かつ、外側表面に内部の容積を示す目盛が表示された筒体と、該筒体の内部にスライド可能に挿入可能であり、かつ、同筒体の内部への挿入時に前記筒先へ向けられる端部である先端部を含むスライド体とを有する注入吸引器が測定用の位置に配置されたときの同注入吸引器の、同先端部とは反対側であり同開口部から突出した同スライド体の端部である押圧端部と前記距離測定部との間の距離を測定可能であり、かつ、前記測定用の位置から一定の距離離れた位置に配置可能な前記距離測定部と、
製剤の調剤のために必要な液体の容積である指示液体容積を、同製剤の調剤のために使用される薬品に関する情報である薬品情報に関連付けて記録可能な指示液体容積記録部と、
前記注入吸引器が前記測定用の位置に配置されたときであり、かつ、前記スライド体の先端部が最小の目盛に対応する位置に配置されたときの同スライド体の押圧端部と前記距離測定部との間の距離である最大距離と、前記注入吸引器が前記測定用の位置に配置されたときであり、かつ、前記スライド体の先端部が最大の目盛に対応する位置に配置されたときの同スライド体の押圧端部と前記距離測定部との間の距離である最小距離とを、前記注入吸引器に関する情報である注入吸引器情報に関連付けて記録可能な最大最小距離記録部と、
前記薬品情報を読取可能な薬品情報読取部と、
該薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する液体で、前記最大最小距離記録部が記録した前記注入吸引器情報に対応する注入吸引器の筒体の内部を満たした状態における前記押圧端部と前記距離測定部との間の距離であると共に同距離測定部が測定した距離である測定距離と、同注入吸引器に対応する注入吸引器情報と関連付けて前記最大最小距離記録部が記録した前記最大距離および前記最小距離とに基づいて、同液体の容積である実測液体容積を算出可能な算出部と、
該算出部が算出した前記実測液体容積と、前記薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する薬品情報と関連付けて前記指示液体容積記録部が記録した前記指示液体容積との間の差分が所定の範囲内であるか否かを判定可能な判定部とを備える
調剤支援システム。
【請求項2】
前記測定用の位置に配置された前記注入吸引器の長さを測定可能な測長部と、
該測長部が測定した長さを有する注入吸引器に対応する注入吸引器情報を、前記最大最小距離記録部が記録した注入吸引器情報から選定可能な注入吸引器選定部とを備え、
前記算出部は、前記注入吸引器選定部が選定した注入吸引器情報と関連付けて前記最大最小距離記録部が記録した前記最大距離および前記最小距離に基づいて、実測液体容積を算出可能である
請求項1に記載の調剤支援システム。
【請求項3】
前記注入吸引器は、前記開口部の縁から同開口部とは反対方向へ突出したフランジ部を有し、
前記注入吸引器を載置可能に前記フランジ部の一部を収容可能な溝部が形成された前記測定用の位置を有し、かつ、前記注入吸引器を支持可能であり、かつ、平面形状を有する支持台を備える
請求項1または請求項2に記載の調剤支援システム。
【請求項4】
前記指示液体容積と、前記実測液体容積と、前記判定部の判定結果を表示可能な表示部を備える
請求項1、請求項2または請求項3に記載の調剤支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調剤支援システムに関する。詳しくは、例えば注射剤の調剤を支援する調剤支援システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
注射剤は、腕や肩など体に注射針を刺して、皮ふの下や血管内に注入する液状の製剤である。
注射剤は、体内に直接注入できるので、内用剤と比べて効き目が早く、量も少なくて済むというメリットがある。
【0003】
調剤作業においては、液状の薬品、これと混合される希釈液、または固形の薬品を溶解するための溶解液などが入れられた容器から、これら液剤を抜き取ったり、抜き取った液剤を、他の液剤や固形の薬品と混合するために他の容器に注入したりする際に注射器が多用されている。
【0004】
このような調剤作業において、液剤の抜き取りや液剤の注入は基本的に調剤者の手で行われており、液剤の抜き取り量や注入量の確認は、調剤者が注射器の目盛を読み取ることで行われている。
【0005】
しかし、注射剤は効き目が強いため、注射剤を調剤する場合には処方箋で指示された量を厳格に守る必要があり、注射器の目盛を調剤者が読み取るだけでは、指示された量を厳格に守る上で限界があった。
【0006】
そこで、調剤作業を支援する様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1には、図 に示すような調剤支援システムが記載されている。特許文献1に記載の調剤支援システム100は、調剤台104と、調剤台104の作業面に置かれる、リーダ111および電子秤112を備える。
【0007】
また、調剤支援システム100は、情報処理装置113と、調剤台104のうち調剤者の視認し易い部位に設置された通知装置114と、調剤台104のうち調剤者の操作し易い部位に設置された操作入力装置115とを備える。
【0008】
また、固形薬剤や濃厚液剤が入っている供給容器106に、溶解剤収容器107の溶解剤を注入することで注射剤を調製した後に、供給容器106から必要量の注射剤を手動式吸入器具108で抜き取る調剤作業を、調剤者が調剤台104の上で行う。
【0009】
また、情報処理装置113は、供給容器106の初期重量の測定を催促して電子秤112の測定値を溶解前重量値としてから溶解を催促する。
また、情報処理装置113は、供給容器106の溶解剤注入後の重量測定を催促して電子秤112の測定値を溶解後重量値とし、その差から溶解剤量計測値を算出する。
【0010】
また、情報処理装置113は、調剤指示データと溶解剤量計測値と薬品マスタの薬剤収容量データとに基づいて抜取目標値を算出する。
通知装置114は、抜取目標値を調剤者に提示して注射剤の抜取を催促する。
【0011】
また、情報処理装置113は、注射剤抜取後の供給容器106の重量測定を催促して、電子秤112の測定値を抜取後重量値とし、溶解後重量値と抜取後重量値との差から抜取量計測値を算出し、抜取量計測値と抜取目標値とを比較して注射剤抜取量の適否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5743332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、注射剤の調剤指示内容は、液体の容積すなわちミリリットル単位で表されているため、特許文献1に記載の調剤支援システムのように、ミリリットルとは単位が異なる重量値を測定値とする場合、溶解前重量値と溶解後重量値を測定するために測定作業が少なくとも2回必要であったり、比重が必要であったりするので、調剤された注射剤の量が、許容される範囲を外れて、指示された量と相違してしまうことが多く、調剤精度の向上が要求されていた。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、調剤精度を向上できる調剤支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の調剤支援システムは、距離を測定可能な距離測定部であって、筒先を含み、かつ、該筒先とは反対側に内部と外部を連通する開口部が形成されており、かつ、外側表面に内部の容積を示す目盛が表示された筒体と、該筒体の内部にスライド可能に挿入可能であり、かつ、同筒体の内部への挿入時に前記筒先へ向けられる端部である先端部を含むスライド体とを有する注入吸引器が測定用の位置に配置されたときの同注入吸引器の、同先端部とは反対側であり同開口部から突出した同スライド体の端部である押圧端部と前記距離測定部との間の距離を測定可能であり、かつ、前記測定用の位置から一定の距離離れた位置に配置可能な前記距離測定部と、製剤の調剤のために必要な液体の容積である指示液体容積を、同製剤の調剤のために使用される薬品に関する情報である薬品情報に関連付けて記録可能な指示液体容積記録部と、前記注入吸引器が前記測定用の位置に配置されたときであり、かつ、前記スライド体の先端部が最小の目盛に対応する位置に配置されたときの同スライド体の押圧端部と前記距離測定部との間の距離である最大距離と、前記注入吸引器が前記測定用の位置に配置されたときであり、かつ、前記スライド体の先端部が最大の目盛に対応する位置に配置されたときの同スライド体の押圧端部と前記距離測定部との間の距離である最小距離とを、前記注入吸引器に関する情報である注入吸引器情報に関連付けて記録可能な最大最小距離記録部と、前記薬品情報を読取可能な薬品情報読取部と、該薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する液体で、前記最大最小距離記録部が記録した前記注入吸引器情報に対応する注入吸引器の筒体の内部を満たした状態における前記押圧端部と前記距離測定部との間の距離であると共に同距離測定部が測定した距離である測定距離と、同注入吸引器に対応する注入吸引器情報と関連付けて前記最大最小距離記録部が記録した前記最大距離および前記最小距離とに基づいて、同液体の容積である実測液体容積を算出可能な算出部と、該算出部が算出した前記実測液体容積と、前記薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する薬品情報と関連付けて前記指示液体容積記録部が記録した前記指示液体容積との間の差分が所定の範囲内であるか否かを判定可能な判定部とを備える。
【0016】
ここで、製剤の調剤のために必要な液体の容積である指示液体容積を、この製剤の調剤のために使用される薬品に関する情報である薬品情報に関連付けて記録可能な指示液体容積記録部によって、製剤の調剤のために必要な液体例えば薬液や溶解液の、調剤のために必要な容積を把握することができる。
【0017】
また、薬品情報を読取可能な薬品情報読取部によって、薬品情報の入力ミスを防止することができる。
【0018】
薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する液体で、最大最小距離記録部が記録した注入吸引器情報に対応する注入吸引器の筒体の内部を満たした状態における押圧端部と距離測定部との間の距離であると共にこの距離測定部が測定した距離である測定距離と、注入吸引器に対応する注入吸引器情報と関連付けて最大最小距離記録部が記録した最大距離および最小距離とに基づいて、この液体の容積である実測液体容積を算出可能な算出部によって、注入吸引器が吸引した、製剤の調剤のために必要な液体の容積を、測定用の位置に配置するだけで算出することができる。
すなわち、製剤を調剤する上で直接的に要求される液体の容積を算出することができ、薬品の比重や重量を利用する必要がない。
【0019】
また、算出部が算出した実測液体容積と、薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する薬品情報と関連付けて指示液体容積記録部が記録した指示液体容積との間の差分が所定の範囲内であるか否かを判定可能な判定部によって、調剤者が実際に注入吸引器で吸引した液体の容積が、同じ製剤を調剤する上で予め定められた液体の容積から大きく外れていないかを簡単に調べることができる。
【0020】
また、本発明の調剤支援システムは、測定用の位置に配置された注入吸引器の長さを測定可能な測長部と、測長部が測定した長さを有する注入吸引器に対応する注入吸引器情報を、最大最小距離記録部が記録した注入吸引器情報から選定可能な注入吸引器選定部とを備え、算出部は、注入吸引器選定部が選定した注入吸引器情報と関連付けて最大最小距離記録部が記録した最大距離および最小距離に基づいて、実測液体容積を算出可能である構成とすることができる。
【0021】
この場合、測定用の位置に注入吸引器を置くだけで、複数の種類がある注入吸引器を自動的に判別できる。
【0022】
さらに、本発明の調剤支援システムにおいて、注入吸引器は、開口部の縁からこの開口部とは反対方向へ突出したフランジ部を有し、本発明の調剤支援システムは、さらに、略平行に前記注入吸引器を載置可能に前記フランジ部の一部を収容可能な溝部が形成された前記測定用の位置を有し、かつ、前記注入吸引器を支持可能であり、かつ、平面形状を有する支持台を備える構成とすることができる。
【0023】
この場合、液体の容積の算出を行うときに、毎回同じ溝部に注入吸引器のフランジ部の一部を入れて注入吸引器を載置するようになるので、液体の容積の算出を行うごとに略同じ位置に注入吸引器を配置し易い。
【0024】
また、本発明の調剤支援システムは、指示液体容積と、実測液体容積と、判定部の判定結果を表示可能な表示部を備える構成とすることができる。
【0025】
この場合、液体の容積の算出を行うときに、毎回同じ溝部に注入吸引器のフランジ部の一部を入れて注入吸引器を載置するようになるので、液体の容積の算出を行うごとに略同じ位置に注入吸引器を配置し易い。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る調剤支援システムは、調剤精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明を適用した調剤支援システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明を適用した調剤支援システムの算出部が実測液体容積を算出するときの原理を説明するための概略図である。
図3】従来の調剤支援システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した調剤支援システムの全体構成の一例を示す概略図である。ここでは、製剤の一例として注射剤を調剤する場合を説明する。
【0029】
図1に示す本発明の調剤支援システム1は、調剤監査コンピュータ1Aを備える。
また、本発明の調剤支援システム1は、調剤監査コンピュータ1Aと通信可能な距離センサー2を備える。ここで、距離センサー2は、距離測定部の一例である。
【0030】
また、距離センサー2は、例えば光を照射して距離を測定できるものであるが、距離を測定できるものであればどのような原理に基づくものでもよいことは勿論である。
また、距離センサー2は、一般的な注射器の端部と距離センサー2との間の距離を測定可能である。
【0031】
本発明の調剤支援システム1において使用される注射器21は、一般的な注射器である。
すなわち、注射器21は、筒体22と、筒体22の内部にスライド可能に挿入可能なプランジャー25とを有する。
【0032】
ここで、注射器は注入吸引器の一例であり、また、プランジャーはスライド体の一例であり押子とも呼ばれる。
【0033】
また、筒体22は、注射針29を取付け可能な筒先23を有する。また、筒体22の、筒先23とは反対側に内部と外部を連通する開口部が形成されている。また、筒体22の外側表面に内部の容積を示す目盛24が表示されている。
【0034】
また、プランジャー25は先端部27を有する。先端部27は、プランジャー25が筒体22の内部へ挿入されたときに筒先23へ向けられる端部である。また、先端部27は弾性材料で構成されている。
【0035】
また、プランジャー25は押圧端部26を有する。押圧端部26は、先端部27とは反対側であり、かつ、筒体22に形成された開口部から突出した端部である。
また、注射器21は、筒体22に形成された開口部の縁から、この開口部とは反対方向へ突出したフランジ部28を有する。
【0036】
また、距離センサー2は、測定用の位置に配置された注射器21の押圧端部26と距離センサー2との間の距離Lを測定可能である。
また、距離センサー2は、測定用の位置から一定の距離離れた位置に配置されている。
【0037】
すなわち、本発明の調剤支援システム1は、調剤台30の平坦な面に載置された支持台10を備えており、また、支持台10は測定用の位置を有しており、この測定用の位置には溝部11が形成されている。
【0038】
また、支持台10は、注射器21を支持可能であり、かつ、平面形状を有する。また、支持台10の測定用の位置に形成された溝部11は、略平行に注射器21を支持台10の上に載置できるよう、注射器21のフランジ部28を収容可能である。
【0039】
また、距離センサー2と測定用の位置との間は決められた距離であり、測定のたびに変動する距離ではない。
また、距離センサー2と測定用の位置との間は、注射器21のプランジャー25の先端部27が最大の目盛24に対応する位置に配置されたときのプランジャー25の押圧端部26が、注射器21を測定用の位置に配置したときに接触しない程度に離れている。
【0040】
また、本発明の調剤支援システム1は、指示液体容積データベース3を備える。
具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが指示液体容積データベース3を有する。
【0041】
ここで、指示液体容積データベース3は、製剤の調剤のために必要な液体の容積である指示液体容積(ミリリットル=mL)を、同じ製剤の調剤のために使用される薬品に関する情報である薬品情報に関連付けて記録可能である。
また、指示液体容積データベースは指示液体容積記録部の一例である。
【0042】
また、「製剤の調剤のために必要な液体」とは、具体的には例えば、製剤の調剤のために使用される液状の薬品すなわち薬液、固形薬品を溶解するための溶解液、あるいは生理食塩水である。
【0043】
すなわち、指示液体容積が、注射器によって容器から薬液、溶解液あるいは生理食塩水を抜き取るときの抜取目標値に相当する。
【0044】
また、本発明の調剤支援システム1は、指示液体容積演算部3Aと調剤情報データベース3Bを備える。具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが、指示液体容積演算部3Aと調剤情報データベース3Bを有する。
【0045】
ここで、指示液体容積演算部3Aは、医師が処方した処方箋に基づく調剤方法などを含んだ調剤情報に基づいて、指示液体容積(mL)を演算可能である。
また、調剤情報データベース3Bは、調剤情報を記録可能である。
【0046】
指示液体容積演算部3Aが演算して得られた指示液体容積は、指示液体容積データベース3が記録可能である。
【0047】
また、本発明の調剤支援システム1は、最大最小距離データベース4を備える。
具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが最大最小距離データベース4を有する。
【0048】
ここで、最大最小距離データベース4は、最大距離と最小距離とを、注射器に関する情報である注射器情報に関連付けて記録可能である。
【0049】
また、「最大距離」は、注射器21が測定用の位置に配置されたときであり、かつ、プランジャー25の先端部27が最小の目盛に対応する位置に配置されたときの、同じプランジャー25の押圧端部26と距離センサー2との間を距離センサー2が測定した距離である。
【0050】
また、「最小距離」は、注射器21が測定用の位置に配置されたときであり、かつ、プランジャー25の先端部27が最大の目盛に対応する位置に配置されたときの、同じプランジャー25の押圧端部26と距離センサー2との間を距離センサー2が測定した距離である。
【0051】
具体的には例えば、最大最小距離データベース4は、最大収容量が15mLであるS型の注射器の最大距離と最小距離を記録したり、最大収容量が35mLであるL型の注射器の最大距離と最小距離を記録したりする。
【0052】
また、本発明の調剤支援システム1は、薬品が入れられた容器の表面などに貼付された、薬品情報がバーコード化されたバーコードを読取可能なバーコードリーダ5を備える。
また、バーコードリーダ5は調剤監査コンピュータ1Aと通信可能であり、バーコードリーダ5が読取った薬品情報は、調剤監査コンピュータ1Aへ送信される。
【0053】
ここで、バーコードリーダは薬品情報読取部の一例である。また、薬品情報が二次元コード化された二次元コードも、薬品情報読取部が読取可能であることは勿論である。
【0054】
また、本発明の調剤支援システム1は、算出部6を備える。具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが算出部6を有する。
【0055】
ここで、算出部6は、距離センサー2が測定した距離である測定距離と、最大最小距離データベース4が記録した最大距離および最小距離とに基づいて、注射器21の筒体22の内部を満たした液体の容積である実測液体容積を算出可能である。
【0056】
すなわち、測定距離は、バーコードリーダ5が読取った薬品情報に対応する液体、例えば液状のA薬品であるA薬液で、最大最小距離データベース4が記録した注射情報に対応する注射器21、例えば最大収容量が35mLであるL型の注射器の筒体22の内部を満たした状態における押圧端部26と距離センサー2との間の距離であると共に距離センサー2が測定した距離である。
【0057】
また、最大距離は、A薬液で筒体22の内部が満たされた注射器21と同じ注射器、例えば最大収容量が35mLであるL型の注射器の最大距離である。
また、最小距離は、A薬液で筒体22の内部が満たされた注射器21と同じ注射器、例えば最大収容量が35mLであるL型の注射器の最小距離である。
【0058】
図2は、本発明を適用した調剤支援システムの算出部が実測液体容積を算出するときの原理を説明するための概略図である。
【0059】
図2(a)は、注射器が液体を収容していない場合におけるプランジャーの押圧端部と距離センサーとの間の距離を説明するための概略図である。
【0060】
すなわち、図2(a)は、例えば、最大収容量が35mLであるL型の注射器が測定用の位置に配置されたときであり、かつ、プランジャー25の先端部が最小の目盛に対応する位置に配置されたときの、同じプランジャー25の押圧端部26と距離センサー2との間の距離が「L1」(cm)であることを示している。
【0061】
図2(b)は、注射器が最大収容量の液体を収容した場合におけるプランジャーの押圧端部と距離センサーとの間の距離を説明するための概略図である。なお、液体は図示されていない。
【0062】
すなわち、図2(b)は、例えば、最大収容量が35mLであるL型の注射器が測定用の位置に配置されたときであり、かつ、プランジャー25の先端部が最大の目盛に対応する位置に配置されたときの、同じプランジャー25の押圧端部26と距離センサー2との間の距離が「L2」(cm)であることを示している。
【0063】
図2(c)は、実測液体容積を算出したい液体を注射器が収容した場合におけるプランジャーの押圧端部と距離センサーとの間の距離を説明するための概略図である。なお、液体は図示されていない。
【0064】
すなわち、図2(c)は、例えば、最大収容量が35mLであるL型の注射器が測定用の位置に配置されたときであり、かつ、A薬液で筒体の内部が満たされた状態におけるプランジャー25の押圧端部26と距離センサー2との間の距離が「L3」(cm)であることを示している。
【0065】
また、算出部6は、この場合、具体的には例えば次のような比例式に基づいて、A薬液の実測液体容積(mL)を算出する。ここで、求めたいA薬液の実測液体容積をXとする。
35:L1−L2=X:L1−L3
【0066】
また、本発明の調剤支援システム1は、判定部7を備える。具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが判定部7を有する。
【0067】
ここで、判定部7は、算出部6が算出した実測液体容積と、バーコードリーダ5が読取った薬品情報すなわちA薬品の情報に対応する薬品情報すなわちA薬品の情報と関連付けて、指示液体容積データベース3が記録した指示液体容積との間の差分が所定の範囲内、例えば±5%以内であるか否かを判定可能である。
【0068】
この所定の範囲は、適宜変更可能であることは勿論である。
【0069】
また、例えばバーコードリーダ5が読取った薬品情報が固形のB薬品に関する情報である場合、注射剤を調剤するためにはB薬品を溶解しなければならない。
従って、この場合、バーコードリーダ5が読取った薬品情報に対応する液体は、固形のB薬品を溶解するためのB溶解液であり、また、溶解して得られたB薬液である。
【0070】
あとは、A薬液と同様に、算出部6がB溶解液やB薬液の実測液体容積を算出する。
そして、判定部7が、B薬品の情報と関連付けて指示液体容積データベース3が記録した指示液体容積との間の差分が所定の範囲内、例えば±5%以内であるか否かを判定する。
【0071】
また、本発明の調剤支援システム1は、支持台10に取付けられた複数の近接センサー8を備える。
また、図1に示すように、近接センサー8は、支持台10の長手方向に一定の間隔で配置されている。
【0072】
ここで、近接センサー8は、測定用の位置に配置された注射器21の長さを測定可能である。また、近接センサー8は測長部の一例である。
【0073】
また、本発明の調剤支援システム1は、注射器選定部9を備える。具体的には、調剤監査コンピュータ1Aが注射器選定部9を有する。
【0074】
ここで、注射器選定部9は、近接センサー8が測定した長さを有する注射器に対応する注射器情報を、最大最小距離データベース4が記録した注射器情報から選定可能である。
【0075】
また、算出部は、注射器選定部9が選定した注射器情報と関連付けて最大最小距離データベース4が記録した最大距離および最小距離に基づいて、実測液体容積を算出可能である。
【0076】
このように注射器選定部9は、近接センサー8が測定した長さを有する注射器に対応する注射器情報を、最大最小距離データベース4が記録した注射器情報から選定できるので、測定用の位置すなわち溝部11に、注射器21のフランジ部28の一部を収容させて注射器21を支持台10の上に載置しただけで、複数の種類がある注射器を自動的に判別でき、調剤者が注射器を選択する操作を省くことができる。
【0077】
また、本発明の調剤支援システム1は、表示装置12を備える。
ここで、表示装置12は、指示液体容積と、実測液体容積と、判定部7の判定結果を表示可能である。具体的には、表示装置12が有する液晶表示パネル13に、指示液体容積と、実測液体容積と、判定結果が表示される。
また、表示装置は表示部の一例である。
【0078】
図1に示す例では、A薬液の実測液体容積の判定結果が「○」すなわち指示液体容積データベース3が記録した指示液体容積との間の差分が±5%以内であることを示しており、また、B溶解液の実測液体容積の判定結果が「×」すなわち指示液体容積データベース3が記録した指示液体容積との間の差分が±5%以内ではないことを示している。
【0079】
また、本発明の調剤支援システムにおいて、必ずしも近接センサーすなわち測長部を備えていなくてもよい。
例えば、調剤者が、スマートフォンと調剤監査コンピュータとの間で無線LAN通信例えばWi‐Fi通信を行い、注射器選定部が、スマートフォンから受信した注射器に関する情報を、最大最小距離データベースが記録した注射器情報から選定するようにすることもできる。
【0080】
しかし、本発明の調剤支援システムが測長部を備え、注射器選定部すなわち注入吸引器選定部が、測長部が測定した長さを有する注入吸引器に対応する注入吸引器情報を、最大最小距離記録部が記録した注入吸引器情報から選定できるようにすれば、測定用の位置に注入吸引器を置くだけで、複数の種類がある注入吸引器を自動的に判別できるので好ましい。
【0081】
また、必ずしも支持台に溝部を形成していなくてもよいが、溝部が形成されていれば、液体の容積の算出を行うときに、毎回同じ溝部に注入吸引器のフランジ部の一部を入れて注入吸引器を載置するようになるので、液体の容積の算出を行うごとに略同じ位置に注入吸引器を配置しくなり、好ましい。
【0082】
また、調剤するために液体を必要とする製剤であれば、どのような製剤の調剤についても、本発明の調剤支援システムを適用することができる。
注射剤の他には例えば、懸濁剤、点眼剤、ローション剤の調剤を支援するために、本発明の調剤支援システムを使用することができる。
【0083】
また、必ずしも指示液体容積データベースと、指示液体容積演算部と、調剤情報データベースと、最大最小距離データベースと、算出部と、判定部と、注射器選定部は、一つの同じ調剤監査コンピュータに内蔵されていなくてもよく、それぞれ別々の装置に内蔵されて、互いに通信可能な状態としておくこともできる。
【0084】
以上のように、本発明の調剤支援システムは、薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する液体で、最大最小距離記録部が記録した注入吸引器情報に対応する注入吸引器の筒体の内部を満たした状態における押圧端部と距離測定部との間の距離であると共にこの距離測定部が測定した距離である測定距離と、注入吸引器に対応する注入吸引器情報と関連付けて最大最小距離記録部が記録した最大距離および最小距離とに基づいて、この液体の容積である実測液体容積を算出可能な算出部を備えているので、注入吸引器が吸引した、製剤の調剤のために必要な液体の容積を、測定用の位置に配置するだけで算出することができる。
【0085】
また、本発明の調剤支援システムは、算出部が算出した実測液体容積と、薬品情報読取部が読取った薬品情報に対応する薬品情報と関連付けて指示液体容積記録部が記録した指示液体容積との間の差分が所定の範囲内であるか否かを判定可能な判定部を備えているので、調剤者が実際に注入吸引器で吸引した液体の容積が、同じ製剤を調剤する上で予め定められた液体の容積から大きく外れていないかを簡単に調べることができる。
【0086】
従って、製剤を調剤する上で直接的に要求される液体の容積を算出することができ、薬品の比重や重量を利用する必要がないので、本発明の調剤支援システムは、調剤精度を向上できる。
【0087】
また、抜取目標値を指示する既存のコンピュータシステムに、本発明の調剤支援システムが備える、距離測定部と、最大最小距離記録部と、算出部と、判定部とを組み込むだけで、既存のシステムを調剤精度が向上したシステムとすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 調剤支援システム
1A 調剤監査コンピュータ
2 距離センサー
3 指示液体容積データベース
3A 指示液体容積演算部
3B 調剤情報データベース
4 最大最小距離データベース
5 バーコードリーダ
6 算出部
7 判定部
8 近接センサー
9 注射器選定部
10 支持台
11 溝部
12 表示装置
13 液晶表示パネル
21 注射器
22 筒体
23 筒先
24 目盛
25 プランジャー
26 押圧端部
27 先端部
28 フランジ部
29 注射針
30 調剤台
L 押圧端部と距離センサーとの間の距離
【要約】
【課題】調剤精度を向上できる調剤支援システムを提供する。
【解決手段】調剤支援システム1は、調剤監査コンピュータ1Aと、調剤監査コンピュータ1Aと通信可能な距離センサー2と、バーコードリーダ5と、調剤台30の平坦な面に載置された支持台10と、表示装置12を備える。調剤監査コンピュータ1Aは、指示液体容積データベース3と、最大最小距離データベース4と、算出部6と、判定部7と、注射器選定部9とを有する。算出部6は、距離センサー2が測定した測定距離と、最大最小距離データベース4が記録した最大距離および最小距離とに基づいて、注射器21の筒体22の内部を満たした液体の実測液体容積を算出する。判定部7は、算出部6が算出した実測液体容積と、バーコードリーダ5が読取った薬品情報に対応する薬品情報と関連付けて、指示液体容積データベース3が記録した指示液体容積との間の差分が±5%以内であるか否かを判定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3