【実施例1】
【0016】
図1は、電流センサの構成を示す図面である。
図1(a)は電流バーの貫通方向から見た平面図であり、
図1(b)は
図1(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、電流センサは、上下に2分割された環状の磁性体コア20(下部磁性体コア20a及び上部磁性体コア20b)を備えている。磁性体コア20のうち下部の磁性体コア20aは更に2つの磁性体コアに分割され、その分割された空間には、磁界検出用のホール素子40が磁性体コア20と離間して設けられている。以下の説明では、ホール素子40が設けられた磁性体コア20の切欠部をギャップ22と称する。また、磁性体コア20を上下に分割する2箇所の切欠部を、それぞれ第1分離部24及び第2分離部26と称する。
【0017】
磁性体コア20により形成される環状構造の中央部分には、被測定電流の流れる導体の一例である電流バー10が、当該環状構造を貫通するように設けられている。電流バー10を流れる電流Iにより、磁性体コア20内に環状の磁界Hが形成される。電流センサでは、当該磁界Hをホール素子40が検出することにより、電流の測定を行うことができる。
【0018】
磁性体コア20の材料としては、例えばパーマロイ、フェライト、高透磁率ナノ結晶材等の材料を用いることができる。このうち、高透磁率ナノ結晶材のような比較的柔らかい材料を用いる場合、第1分離部24及び第2分離部26における磁性体コア20同士の接触性が向上し、電流センサの特性が向上するという利点がある。なお、第1分離部24及び第2分離部26の周辺にのみ、高透磁率ナノ結晶材等の柔らかい材料を用い、他の部分にはより低コストな材料を用いる構成としてもよい。
【0019】
図2は、電流センサの分解図である。電流センサは、磁性体コア20を収容・固定するための、3つの筐体(下部筐体50、中部筐体52、上部筐体54)を備えている。また、ホール素子40は、基板42の表面から突出するように実装されており、当該基板42が下部筐体50において磁性体コア20の下側に実装される構成となっている。下部筐体50は、中部筐体52と係合し、下側の磁性体コア20a及び基板42を収容する。上部筐体54は、中部筐体52と係合し、上側の磁性体コア20bを収容する。下部筐体50及び中部筐体52は、例えば対応する凸部及び凹部を互いに係合させることにより固定することができる。また、上部筐体54及び中部筐体52は、例えば中心軸の共通する軸受部に軸58を挿入することにより、一つの辺を中心として互いに回動可能に固定することができる。筐体同士の固定方法は、磁性体コア20及びホール素子40を所定の位置に固定可能なものであれば、上記の例に限定されるものではない。
【0020】
図3(a)及び(b)は、電流センサの外観斜視図である。下部筐体50及び中部筐体52は、不図示の凸部及び凹部により互いに開閉自在に固定されている。上部筐体54及び中部筐体52は、不図示の軸及び軸受部、並びにスナップフィット構造の係合部56により、互いに開閉自在に固定されている。下部筐体50には、開口部51が形成されている。基板42の一部は、下部筐体50から外部に露出しており、当該露出部分に外部接続用の接続端子44が形成されている。接続端子44は、基板42に形成された不図示の配線を介し、ホール素子40と電気的に接続されている。
【0021】
ここで、磁性体コア20の材料として用いられる前掲のパーマロイ、フェライト、高透磁率ナノ結晶材等は、比較的高価な材料であることから、その使用量はできるだけ少なくすることが好ましい。一方、磁性体コア20の厚みを薄くした場合、外部ノイズの影響が増大し、電流センサの特性が悪化してしまう場合がある。以下の説明では、上記課題を解決するための磁性体コア20の形状について説明する。
【0022】
図4は、磁性体コア部分の構成を示す図である。
図4(a)は電流バー10の貫通方向から見た側面図、
図4(b)は
図4(a)のA方向から見た側面図、
図4(c)は外観斜視図である。いずれの図においても、磁性体コア20の構成のみを示し、他の構成要素(電流バー10、ホール素子40等)は省略している。また、
図4(b)のハッチ部分は、磁性体コア20のギャップ22における端面の形状を示している(以降の図においても同様)。
【0023】
図4(a)〜(c)に示すように、実施例1に係る電流センサでは、ギャップ22付近において磁性体コア20の厚みが薄くなるように、磁性体コア20が形成されている。これにより、ギャップ22における磁性体コア20の端面の断面積が、磁性体コア20のうちギャップ22以外の領域(例えば、第1分離部24及び第2分離部26)の断面積より小さくなっている。なお、
図4(c)に示すように、実施例1では、電流Iに沿った方向における磁性体コア20の厚み(
図4(c)図示左右方向の寸法)は、磁性体コア全体を通して均一である。また、第1分離部24及び第2分離部26における磁性体コア20の端面同士の距離(例えば、50μm)は、ギャップ22における端面同士の距離(例えば、1.7mm)に比べ、大幅に小さくなっている。
【0024】
本構成によれば、磁性体コア20の断面積を小さくした分だけ、磁性体コア20を構成する材料の使用量を削減することができるため、磁性体コア20の製造コストを低減することができる。また、ギャップ22付近のみ磁性体コア20の断面積を小さくする構成は、外部ノイズの影響を低減する点においても優れているが、この点については以下で詳細に説明する。なお、「断面積」という場合、磁性体コア20の断面のうち、電流バー10を流れる電流Iにより形成される磁界Hに垂直な断面の断面積を指すものとする。
【0025】
図5は、磁性体コア部分の形状の比較を示す図である。
図5(a)は
図4(a)と同一であり、本実施例に係る磁性体コアを示す。
図5(b)は、ギャップ22付近の磁性体コア20の断面積を小さくせずに均一とした第1比較例を示す図であり、磁性体コア80の断面積は、
図5(a)の第1分離部24及び第2分離部26の磁性体コア20の断面積と同一である。
図5(c)は、磁性体コアの断面積を一様に小さくした第2比較例を示す図であり、磁性体コア80の断面積は、
図5(a)のギャップ22部分の断面積と同一である。第1比較例及び第2比較例では、実施例1の磁性体コア20、ギャップ22、第1分離部24、第2分離部26に対応する構成として、磁性体コア80、ギャップ82、第1分離部84、第2分離部86が備えられている。
【0026】
一般的に、電流センサにおいては、磁性体コア20の厚みが大きいほど外部ノイズの影響を低減することができる。
図5(b)の第1比較例では、磁性体コア80の断面積が均一であり、且つ実施例1(
図5(a))の第1分離部24及び第2分離部26における断面積と同一となっている。このため、外部ノイズの影響を低減することはできるが、磁性体コア80を構成する材料の使用量及び磁性体コア80の製造コストの低減を図ることは難しい。
【0027】
一方、
図5(c)の第2比較例では、ギャップ82を含む磁性体コア80の断面積が均一であり、且つ実施例1(
図5(a))のギャップ22における断面積と同一となっている。このため、磁性体コア80の材料使用量及び製造コストの低減を図ることはできるが、外部ノイズの影響が増大してしまい、電流センサとしての特性が悪化してしまう。
【0028】
これに対し、
図5(a)の実施例1では、ギャップ22付近のみ磁性体コア20の断面積が小さくなるようにし、その他の領域においては磁性体コア20の断面積が第1比較例と同等になるようにしている。これにより、外部ノイズの影響を低減しつつ、磁性体コア20の材料使用量及び製造コストの低減を図ることができる。なお、ギャップ22付近における磁性体コア20の断面積を小さくする方法としては、実施例1で述べた以外に様々な構成が考えられる。以下、
図6〜
図12において、実施例1の変形例に係る電流センサについて説明し、
図13において実施例1及び変形例に係る電流センサを用いたシミュレーション結果を示す。
【0029】
図6は、第1変形例に係る磁性体コアの斜視図である。本変形例では、ギャップ22の端面における磁性体コア20の厚みが、それ以外の部分と比較して、電流Iの貫通方向に垂直な方向だけでなく、電流Iに沿った方向においても小さくなっている。より詳細に、磁性体コア20の電流I方向の厚み(幅)は、ギャップ22の端面に向かうに従って次第に小さくなる構成となっている。これにより、実施例1(
図4(c))の構成と比較して、磁性体コア20の使用量を更に削減することができるため、製造コストの更なる低減を図ることができる。
【0030】
図7は、第2変形例及び第3変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図7(a)は電流Iの貫通方向から見た第2変形例および第3変形例による磁性体コアの側面図、
図7(b)は
図7(a)の矢印A方向から見た第2変形例による磁性体コアの側面図である。
図7(c)は第2変形例による磁性体コアの斜視図であり、
図7(d)は第3変形例による磁性体コアの斜視図である。
【0031】
図7(a)に示すように、本変形例では、磁性体コア20が、ギャップ22の端面から反対側に向かって広がるテーパ形状となっている。このように、ギャップ22付近をテーパ形状に加工することによっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の材料使用量を削減することができる。なお、第2変形例(
図7(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第3変形例(
図7(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面においてその他の領域より小さくなっている。また、第3変形例では、磁性体コア20の電流I方向の厚み(幅)が、ギャップ22の端面に向かうに従って次第に小さくなる構成となっている。このため、第3変形例は、第2変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。
【0032】
図8は、第4変形例及び第5変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図8(a)は電流Iの貫通方向から見た第4変形例による磁性体コアの側面図、
図8(b)は
図8(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図8(c)は第4変形例による磁性体コアの斜視図であり、
図8(d)は第5変形例による磁性体コアの斜視図である。
【0033】
図8(a)に示す磁性体コア20では、ギャップ22の端面が面取りされた構成となっている。換言すれば、ギャップ22の端面は、磁界に対し垂直な面と、磁界に対し傾斜する面の両方を含む構成となっている。このように、ギャップ22の端面を面取り加工することによっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の材料使用量を削減することができる。
【0034】
また、第4変形例(
図8(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第5変形例(
図8(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面においてその他の領域より小さくなっている(符号29参照)。このため、第5変形例は、第4変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。
【0035】
図9は、第6変形例及び第7変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図9(a)は電流Iの貫通方向から見た第6変形例による磁性体コアの側面図、
図9(b)は
図9(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図9(c)は第6変形例による磁性体コアの斜視図であり、
図9(d)は第7変形例による磁性体コアの斜視図である。
【0036】
図9(a)に示すように、本変形例では、磁性体コア20におけるギャップ22の端面の角部が湾曲した構成となっている。このように、ギャップ22の端面を湾曲させる加工をすることによっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の材料使用量を削減することができる。そして、第6変形例(
図9(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第7変形例(
図9(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面においてその他の領域より小さくなっている。このため、第7変形例は、第6変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。
【0037】
図10は、第8変形例及び第9変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図10(a)は電流Iの貫通方向から見た第8変形例による磁性体コアの側面図、
図10(b)は
図10(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図10(c)は第8変形例による磁性体コアの斜視図であり、
図10(d)は第9変形例による磁性体コアの斜視図である。
【0038】
図10(a)に示すように、本変形例では、磁性体コア20におけるギャップ22付近に、ギャップ22に向かう段差部28が形成されている。段差部28は、磁性体コア20の端面であるギャップ22に向かって、磁性体コア20のうち電流I方向に直交する方向の厚みが次第に減少するように形成されている。このように、ギャップ22付近に段差部28を形成する構成によっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の材料使用量を削減することができる。そして、第8変形例(
図10(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第9変形例(
図10(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面においてその他の領域より小さくなっている。このため、第9変形例は、第8変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。なお、段差部28は、
図10のように磁性体コア20の上下両面に形成する構成としてもよいし、上面あるいは下面の片側のみに形成する構成としてもよい。
【0039】
図11は、第10変形例及び第11変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図11(a)は電流Iの貫通方向から見た側面図、
図11(b)は
図11(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図11(c)は第10変形例の斜視図であり、
図11(d)は第11変形例の斜視図である。
【0040】
図11(a)に示すように、本変形例では、磁性体コア20のうち電流Iに直交する方向の厚みが、ギャップ22の端面から反対側に向かって厚くなるテーパ形状となっている。更に、ギャップ22における磁性体コア20の端部は、鋭角な形状となっている。このように、磁性体コア20の端部を鋭角な形状とすることによっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の材料使用量を削減することができる。そして、第10変形例(
図11(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第11変形例(
図11(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面に向かって次第に小さくなる構成となっている。このため、第11変形例は、第10変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。
【0041】
図12は、第12変形例及び第13変形例に係る磁性体コアの構成を示す図である。
図12(a)は電流Iの貫通方向から見た側面図、
図12(b)は
図12(a)の矢印A方向から見た側面図である。
図12(c)は第12変形例の斜視図であり、
図12(d)は第13変形例の斜視図である。
【0042】
図12(a)に示すように、本変形例では、磁性体コア20におけるギャップ22付近に、ギャップ22に向かう段差部28が形成されている。段差部28は、磁性体コア20の端面であるギャップ22に向かって、磁性体コア20のうち電流I方向に直交する方向の厚みが次第に減少するように形成されている。更に、段差部28の上面(磁性体コア20の内側、符号27参照)の一部では、段差部分の角部が面取りされた構成となっており、段差部28の下面(磁性体コア20の外側、符号29参照)の一部では、段差部分の角部が湾曲した構成となっている。
【0043】
このように、段差部28(
図10参照)、面取り構造(
図8参照)、湾曲構造(
図9参照)を組み合わせた構成によっても、実施例1と同じく、外部ノイズの影響を低減しつつ磁性体コア20の使用量を削減することができる。そして、第12変形例(
図12(c))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは全ての領域で均一であるが、第13変形例(
図12(d))では、電流Iに沿った方向の磁性体コア20の厚みは、ギャップ22に向かって次第に小さくなることにより、ギャップ22の端面においてその他の領域より小さくなっている。このため、第13変形例は、第12変形例に比べ、磁性体コア20の材料使用量を更に削減することができる。
【0044】
図13は、ノイズに関するシミュレーション結果を示す表である。ここでは、第1比較例(
図5(b))、第4変形例(
図8(a)〜(c))、第8変形例(
図10(a)〜(c))、第10変形例(
図11(a)〜(c))のそれぞれについて、A:電流バー10に100Aの電流を流した場合の磁束密度(表上段)、B:1mTの外部ノイズを印加した場合の磁束密度(表中段)、C:BをAで除して算出したノイズの割合、についてのシミュレーションを行った。
【0045】
シミュレーションに用いた磁性体コア20は、
図5(b)、
図8(a)、
図10(a)、及び
図11(a)に示す略正方形の矩形形状とした。比較例〜変形例に共通する寸法として、中抜き部分の縦横の長さ(L1、L2)は、それぞれ12mmとした。また、磁性体コア20における電流Iに沿った方向の厚み(L3)は4mmとし、電流Iに垂直な方向の厚みのうち、ギャップ22部以外の領域における磁性体コア20の厚み(L4)は3mmとした。また、ギャップ22部分における端面同士の距離(L5)は1.7mmとした。
【0046】
第4変形例(
図8(a))では、面取り部分の斜辺の長さ(L6)を1mmとした。第8変形例(
図10(a))では、ギャップ22部分の端面における磁性体コア20の厚み(L7)を1mmとした。また、段差部28における段差が形成されている部分の長さ(L8)は、上下とも3.7mmとした。第10変形例(
図11(a))では、傾斜面の長さ(L9)を1.5mmとした。
【0047】
図13に示すように、第1比較例、第4変形例、第8変形例では、電流印加時の磁束密度と、外部ノイズ印加時の磁束密度にほとんど差はなかった。このため、ノイズの割合についても、ほとんど差は見られない結果となった。これに対し、ギャップ部の端面を鋭角とした第10変形例では、電流印加時の磁束密度に低下が見られたが、ノイズ印加時の磁束密度も同様に低下したため、ノイズの割合は第1比較例、第4変形例、第8変形例とほとんど変わらない結果となった。
【0048】
以上のように、本シミュレーションによれば、ギャップ22付近のみにおいて、磁性体コア20の断面積を小さくする構成を採用したとしても、比較例と比べノイズの割合にはほとんど変化がないことが実証された。従って、実施例1及びその変形例に係る電流センサによれば、外部ノイズの影響を低減しつつ、磁性体コア20の使用量及び製造コストの低減を図ることができる。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、磁性体コアの分割位置を変更した例である。
【0054】
図15(a)〜(b)は、実施例3に係る電流センサの磁性体コア部分の構成を示す図であり、
図15(c)〜(f)は比較例に係る構成を示す図である。
図15(a)、(c)、(e)は、それぞれ電流Iの貫通方向から見た側面図であり、
図15(b)、(d)、(f)は、それぞれ
図15(a)、(c)、(e)の矢印A方向から見た側面図である。
図15(a)〜(f)に示すように、磁性体コア20の厚みは、ギャップ22の端面を含む領域において、均一となっている。
【0055】
図15(a)に示すように、実施例3に係る電流センサでは、磁性体コア20を上下に分離する第1分離部24及び第2分離部26が、ギャップ22に近い側に形成されている。換言すれば、ギャップ22と第1分離部24との間に位置する磁性体コア20aの中心線と、ギャップ22と第2分離部26との間に位置する磁性体コア20bの中心線(共に点線Cで図示)とは、変曲点のない直線で且つ共通する構成となっている。ここで、「共通する」とは、磁性体コア20aの中心線と磁性体コア20bの中心線とが完全に重複していることを意味する。
【0056】
これに対し、第1変形例(
図15(c)〜(d))では、第1分離部24及び第2分離部26は、磁性体コア20の中央付近に形成されている。また、第2変形例(
図15(e)〜(f))では、第1分離部24及び第2分離部26は、磁性体コア20におけるギャップ22から遠い側に形成されている。いずれにおいても、ギャップ22と第1分離部24との間に位置する磁性体コア20aの中心線(C1)と、ギャップ22と第2分離部26との間に位置する磁性体コア20bの中心線(C2)とは、変曲点を有し、且つ共通でない(2つの中心線が、変曲点以降では重複していない)構成となっている。
【0057】
図16は、ノイズに関するシミュレーション結果を示す表である。ここでは、実施例3(
図15(a)〜(b))、第1比較例(
図15(c)〜(d))、第2比較例(
図15(e)〜(f))のそれぞれについて、A:電流バー10に100Aの電流を流した場合の磁束密度(表上段)、B:1mTの外部ノイズを印加した場合の磁束密度(表中段)、C:BをAで除して算出したノイズの割合、について、実施例1と同様のシミュレーションを行った。
【0058】
シミュレーションに用いた磁性体コア20は、
図15(a)〜(f)に示すように、断面が中抜された略正方形の矩形形状とした。中抜き部分の縦横の長さ(L1、L2)は、それぞれ12mmとした。また、磁性体コア20における電流Iに沿った方向の厚み(L3)は4mmとし、電流Iに垂直な方向の厚み(L4)は3mmとした。また、ギャップ22部分における端面同士の距離(L5)は1.4mmとした。更に、第1分離部24及び第2分離部26における磁性体コア20の端面同士の距離は50μmとした。
【0059】
図16に示すように、電流印加時の磁束密度については、実施例3及び比較例のいずれもほとんど差は見られなかった。しかし、外部ノイズ印加時における磁束密度は、表中段に示すように、実施例3が最も小さく、第1比較例、第2比較例の順に大きくなる結果となった。その結果、ノイズの割合についても、実施例3が最も小さく、第1比較例、第2比較例の順に大きくなる結果となった。特に、実施例3と第2比較例とでは、ノイズの割合において2倍近くの有意な差が見られた。
【0060】
以上のことから、実施例3のように、ギャップ22と第1分離部24との間に位置する磁性体コア20aの中心線と、ギャップ22と第2分離部26との間に位置する磁性体コア20bの中心線とを、変曲点のない直線で且つ共通する構成とすることで、ノイズの影響を低減することができる。実施例3の構成は、実施例1〜2で説明したギャップ22部分における磁性体コア20の断面積を小さくする構成と併用することが可能であり、これによりノイズの低減及び製造コストの削減をより効果的に図ることができる。
【実施例4】
【0061】
実施例4は、差動信号型の電流センサを用いた例である。
【0062】
図17は、差動信号型電流センサの構成を示す図である。
図17(a)は電流バーの貫通方向から見た平面図であり、
図17(b)は
図17(a)の矢印A方向から見た側面図である。ここでは実施例1(
図1)との相違点を中心に説明し、共通部分についての説明は省略する。
【0063】
図17に示す電流センサでは、下部の磁性体コア20aだけでなく、上部の磁性体コア20bにおいてもギャップ30が形成され、当該ギャップ30にホール素子40が配置されている。以下の説明では、下部の磁性体コア20aに形成されたギャップを第1ギャップ22、上部の磁性体コア20bに形成されたギャップを第2ギャップ30と称する。
【0064】
第1ギャップ22に配置されたホール素子40aと、第2ギャップ30に配置されたホール素子40とは、それぞれ電流Iにより形成される磁界Hを検出する。検出された磁界は、電気信号に変換された後、それぞれのホール素子が実装される配線基板を介して、差動信号として電流センサから出力される。このように、
図17の電流センサでは、差動信号を用いることにより、電流測定の精度を向上させることができる。そして、
図17のような差動信号を用いる電流センサにおいても、実施例1〜3で説明した構成により、ノイズ及び製造コストの低減を図ることができる。以下、この点について説明する。
【0065】
図18(a)は、実施例4に係る電流センサにおける磁性体コア部分の構成を示す図であり、
図18(b)〜(e)はその変形例に係る構成を示す図である。
図18(a)に示すように、実施例4では、磁性体コア20のうち第1ギャップ22及び第2ギャップ30における端面の断面積が、他の領域の断面積に比べて小さくなっている。これにより、実施例1で説明したのと同様の理由から、外部ノイズの影響を低減しつつ、磁性体コア20の使用量及び製造コストの低減を図ることができる。
【0066】
図18(b)の第1変形例では、第1ギャップ22及び第2ギャップ30付近における磁性体コア20の断面が、端面から反対側に向かって広がるテーパ形状となっている。
図18(c)の第2変形例では、第1ギャップ22及び第2ギャップ30における磁性体コア20の端面の角部が面取りされた構成となっている。
図18(d)の第3変形例では、第1ギャップ22及び第2ギャップ30における磁性体コア20の端面の角部が湾曲した構成となっている。
図18((e)の第4変形例では、第1ギャップ22及び第2ギャップ30における磁性体コア20の端面が鋭角となっている。本変形例においても、実施例4と同様に、磁性体コア20の使用量及び製造コストの低減を図ることができる。
【0067】
図19は、実施例4の他の変形例を示す図である。
図19(a)の第5変形例では、第1ギャップ22及び第2ギャップ30付近のそれぞれに、段差部28が形成されている。
図19(b)の第6変形例では、実施例1における第12〜第13変形例(
図12)と同様に、段差部28における角部が面取りないし湾曲された構成となっている。本構成においても、実施例4と同様に、磁性体コア20の使用量及び製造コストの低減を図ることができる。また、
図19(c)の第7変形例では、実施例2(
図14)と同様に、それぞれの段差部28に、ホール素子40が実装される基板42が配置された構成となっている。本構成によれば、実施例2で説明したのと同様の理由から、実施例4に比べ、電流センサの更なる小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0068】
図20は、実施例4の他の変形例を示す図である。
図20の第8変形例では、第1分離部24及び第2分離部26の他に、ギャップ部分以外にて磁性体コア20を分離する第3分離部32及び第4分離部34が形成されている。実施例3(
図15(a))と同様に、第1ギャップ22と第1分離部24との間に位置する磁性体コア20aの中心線と、第1ギャップ22と第2分離部26との間に位置する磁性体コア20bの中心線(共に点線C1で図示)とは、変曲点のない直線で且つ共通する構成となっている。また、第2ギャップ30と第3分離部32との間に位置する磁性体コア20cの中心線と、第2ギャップ30と第4分離部34との間に位置する磁性体コア20dの中心線(共に点線C2で図示)とは、変曲点のない直線で且つ共通する構成となっている。本構成によれば、実施例3の場合と同様に、外部ノイズの影響を低減する効果が期待できる。
【0069】
実施例1〜4では、磁性体コア20の形状を矩形とした例について説明したが、磁性体コア20の形状を矩形以外とすることも可能である。例えば、磁性体コア20の形状が、電流Iの貫通方向から見て略円形状である場合にも、ギャップ22部分の端面の断面積を、他の領域の断面積より小さくすることで、外部ノイズを低減しつつ磁性体コアの使用量の削減を図ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。