(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段が、前記エンジンの前記回転速度の増加を前記待機時間において禁止する形態で、前記回転速度増加制限処理を実行する請求項1に記載のエンジンシステム。
前記制御手段が、前記回転速度増加制限処理の前記待機時間において、前記エンジン負荷が前記ストイキ燃焼モードに対応する所定のストイキ領域に入った場合には、前記回転速度増加制限処理を停止する請求項1又は2に記載のエンジンシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエンジンシステムのように、燃焼モードの判定閾値にヒステリシスを設ける場合には、その判定閾値のヒステリシスの範囲において、エンジン負荷が比較的大きいにも関わらずにリーン燃焼モードでの運転が継続されたり、逆にエンジン負荷が比較的小さいにも関わらずストイキ燃焼モードでの運転が継続されたりすることになる。このことにより、リーン燃焼モードによる高効率化の効果、又は、ストイキ燃焼モードによる高出力化の効果を、十分に享受することができない場合があった。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、エンジン負荷に応じてストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとにエンジンの燃焼モードを切替自在に構成されたエンジンシステムにおいて、燃焼モードの頻繁な切り替えによるハンチングを防止してエンジンの運転状態を安定したものに維持しながら、リーン燃焼モード及びストイキ燃焼モードによる効果を合理的な状態で享受することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明に係るエンジンシステムは、
混合気を燃焼室で圧縮して燃焼させて軸動力を出力するエンジンと、
前記エンジンの軸動力を駆動源とする圧縮機を有する圧縮式のヒートポンプ回路と、
前記ヒートポンプ回路の熱負荷に基づいて前記エンジンの回転速度を制御すると共に、エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空燃比をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと、前記燃焼室で燃焼する混合気の空燃比を前記ストイキ範囲よりも燃料が希薄なリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとの間で、前記エンジンの燃焼モードを切り替える制御手段とを備えたエンジンシステムであって、
その特徴構成は、
前記制御手段が、
前記ヒートポンプ回路の熱負荷に応じて前記エンジン負荷を要求すると共に、前記ヒートポンプ回路の熱負荷に応じて前記エンジンの目標回転速度を求め、前記目標回転速度を前記ヒートポンプ回路の熱負荷が大きいほど大きくなるように設定し、前記エンジンの前記回転速度が設定した前記目標回転速度となるようにスロットルバルブの開度を制御し、且つ
前記エンジン負荷の増加に伴って前記エンジンの燃焼モードを前記リーン燃焼モードから前記ストイキ燃焼モードに切り替える直前の時点であって、前記エンジン負荷がその時点ではリーン領域であるがそのまま増加すれば直ぐにストイキ領域に入ると予測される時点に
おいては、前記エンジンの前記回転速度の増加を所定の待機時間において制限する回転速度増加制限処理を実行する点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、ヒートポンプ回路の熱負荷の増加に追従してエンジンの回転速度を増加させ、それに伴ってエンジン負荷が増加することで、通常の燃焼モードの切り替えではエンジンの燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる場合、その切り替わる直前の時点、言い換えればエンジン負荷がその時点ではリーン領域であるがそのまま増加すれば直ぐにストイキ領域に入ると予測される時点において、回転速度増加制限処理が実行されて、エンジンの回転速度の増加が所定の待機時間において禁止又は緩慢なものとする形態で制限される。
すると、その待機時間においては、エンジン負荷の増加が抑制され、それと同時に燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わることが抑制されることになる。
よって、ヒートポンプ回路の熱負荷の変動が頻繁に行われるような不安定な環境下でも、その熱負荷の頻繁な変動に合わせて燃焼モードが頻繁に切り替わる所謂ハンチングの発生が防止されるので、エンジンの運転状態を安定したものに維持することができる。
また、このような回転速度増加制限処理を実行する場合には、燃焼モードの判定閾値にヒステリシスを設けることでエンジン負荷の増加に対して燃焼モードの切り替えを遅らせるのではなく、エンジン負荷自身の増加を抑制し、エンジン負荷が実際に変化したと認められる段階で燃焼モードを切り替えることになる。よって、エンジン負荷が低い場合には、燃焼モードをリーン燃焼モードに維持し高効率化の効果を享受することができ、一方、エンジン負荷が高い場合には、燃焼モードをストイキ燃焼モードに切り替えて高出力化の効果を享受することができる。また、エンジン負荷の減少時にエンジンの回転速度の減少を制限するのではなく、エンジン負荷の増加時にエンジンの回転速度の増加を制限するので、エンジン負荷がヒートポンプ回路の熱負荷に対して無駄に大きくなることを防止することができる。
従って、本発明により、エンジン負荷に応じてストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとにエンジンの燃焼モードを切替自在に構成されたエンジンシステムにおいて、燃焼モードの頻繁な切り替えによるハンチングを防止しながら、リーン燃焼モード及びストイキ燃焼モードの夫々による効果を合理的な状態で享受することができる技術を提供することができる。
【0010】
本発明に係るエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記制御手段が、
前記エンジンの
前記回転速度の増加を前記待機時間において禁止する形態で、前記回転速度増加制限処理を実行する点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、エンジン負荷がリーン領域からストイキ領域へ増加し、それに伴ってエンジンの燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる場合に、その切り替える直前の時点において回転速度増加制限処理が実行され、エンジンの回転速度の増加が所定の待機時間において禁止される。
すると、エンジン負荷の増加が一層抑制され、それと同時に燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わることが一層抑制されることになる。
即ち、ヒートポンプ回路の熱負荷の変動が頻繁に行われるような不安定な環境下でも、エンジンの回転速度の独立性が保たれて、その熱負荷の急激な増加に合わせてエンジンの回転速度が急激に増加することが抑制され、その熱負荷の頻繁な変動に合わせて燃焼モードが頻繁に切り替わる所謂ハンチングの発生が防止されるので、エンジンの運転状態を一層安定したものに維持することができる。
【0012】
本発明に係るエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記制御手段が、前記回転速度増加制限処理の前記待機時間において、
前記エンジン負荷が前記ストイキ燃焼モードに対応する所定のストイキ領域に入った場合には、前記回転速度増加制限処理を停止する点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、回転速度増加制限処理が実行されてエンジンの回転速度の増加が制限されている待機時間において、ヒートポンプ回路の熱負荷が比較的高い場合には、圧縮機を回転駆動すべくエンジンの出力軸に付加される回転トルクが増加し、結果、エンジン負荷がストイキ燃焼モードに対応するストイキ領域に入る場合がある。この場合には、その時点で回転速度増加制限処理が停止されて、エンジンの回転速度に対する増加の制限が解除される。
そして、回転速度増加制限処理を停止した直後に、エンジン負荷が継続してストイキ領域にある場合には、そのエンジン負荷に対応して、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替わることになる。
一方、ヒートポンプ回路の熱負荷の頻繁な変動により、当該エンジン負荷がストイキ領域にある時間が短く、回転速度増加制限処理を停止した直後に、再度エンジン負荷がリーン領域に戻った場合には、燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り替わることなく、リーン燃焼モードに維持されることになるので、燃焼モードの頻繁な切り替えによるハンチングが抑制されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、混合気Mを燃焼室2で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジン1、要求負荷に応じてエンジン1の出力を制御する制御手段としての制御装置20等を備える。
更に、本実施形態のエンジンシステムは、エンジン1にて駆動される圧縮機31を有する圧縮式のヒートポンプ回路30が設けられて、エンジン駆動式のヒートポンプシステムとして構成されており、制御装置20が、ヒートポンプ回路30の熱負荷を要求負荷として受け付け、その熱負荷に基づいてエンジン1の回転速度(出力軸7の回転速度)を制御する。
【0016】
エンジン1の燃焼室2には、混合気Mを吸引する吸気路3、及び、エンジン1から排出される排ガスEが通流する排気路4が接続されている。
吸気路3には、混合器5を介して、天然ガス系都市ガス等の燃料ガスGを供給する燃料供給路6が接続されている。
そして、吸気路3の端部から吸気される空気Aと燃料供給路6から供給される燃料ガスGとが混合器5で混合されて、その混合気Mが吸気路3を通して燃焼室2に吸気され、燃焼室2において、その混合気Mが圧縮されると共に圧縮状態で点火プラグ(図示省略)にて点火されて燃焼・膨張することにより、出力軸7が回転されて駆動力が出力され、燃焼により発生した排ガスEが排気路4を通して排気される。つまり、このエンジン1は、通常の4サイクル式に構成されている。
更に、このエンジン1には、出力軸7にギア連結されて、エンジン1の起動時にバッテリ(図示省略)駆動により出力軸7を強制的に回転させるセルモータ8、及び、エンジン1の回転速度、即ち、エンジン1の回転速度を検出する回転速度センサ9が設けられている。
セルモータ8は、制御装置20により制御され、回転速度センサ9の検出情報は、制御装置20に入力されるように構成されている。
【0017】
燃料供給路6には、燃料ガスGの供給量を調整することにより混合気Mの空燃比を調整可能な燃料供給弁10が設けられ、吸気路3には、燃焼室2に吸気される混合気Mの吸気量を調整可能なスロットルバルブ11が設けられている。
排気路4には、排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサ12、排ガスEが通過自在な三元触媒13、及び、その三元触媒13を出た直後の排ガスEの温度を三元触媒13の温度として検出する触媒温度検出手段としての触媒温度センサ14が夫々設けられている。
燃料供給弁10及びスロットルバルブ11は、制御装置20により制御され、酸素濃度センサ12の検出情報、及び、触媒温度センサ14の検出情報は、夫々、制御装置20に入力されるように構成されている。
尚、酸素濃度センサ12は、排気路4において三元触媒13の上流側の箇所に設けられ、触媒温度センサ14は、排気路4において三元触媒13の下流側の箇所に設けられている。
排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサとして、排気路4における三元触媒13の上流側に設けた酸素濃度センサ12に加えて、排気路4における三元触媒13の下流側の箇所に設けて、その酸素濃度センサの検出情報も制御装置20に入力されるように構成しても良い。又、触媒温度センサ14は、三元触媒13の内部に設けても良い。
【0018】
圧縮式のヒートポンプ回路30には、圧縮機31に加えて、室外熱交換器32、室内熱交換器33及び膨張弁34、並びに、圧縮機31にて圧縮された冷媒の送出先を室外熱交換器32側と室内熱交換器33側とに切り替える四方弁35等が設けられている。尚、室内熱交換器33及び膨張弁34は、空調対象空間である室内に設置される室内ユニットUiに装備され、室内熱交換器33及び膨張弁34以外の部材、即ち、エンジン1、圧縮機31、室外熱交換器32及び四方弁35等は、空調対象空間外に設置される室外ユニットUeに装備される。
【0019】
圧縮機31は、動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結され、エンジン1の軸動力により圧縮機31を駆動して冷媒を圧縮することにより、後述するように、冷房運転や暖房運転等の空調運転を行うように構成されている。
動力伝達機構40は、エンジン1の出力軸7に固定されたエンジン側プーリ41と、圧縮機31の駆動軸にクラッチ手段としての電磁クラッチ42を介して連結された圧縮機側プーリ43と、それらエンジン側プーリ41と圧縮機側プーリ43とにわたって巻回されたベルト44等を備えて構成されている。
電磁クラッチ42は、制御装置20により作動制御される。つまり、制御装置20により電磁クラッチ42のオンオフが切り替えられ、これによりエンジン1と圧縮機31との伝動連結が断続されて、エンジン1の軸動力が圧縮機31に伝達される状態と、同軸動力が圧縮機31に伝達されない状態とに切り替えられる。
【0020】
圧縮式のヒートポンプ回路30を冷房運転するときには、
図1の四方弁35の状態として実線で示すように、圧縮機31の吐出側が室外熱交換器32に接続され且つ圧縮機31の流入側が室内熱交換器33に接続されるように、四方弁35が切り替えられる。このように四方弁35が切り替えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室外熱交換器32に流入し、その室外熱交換器32が凝縮器として機能して、当該室外熱交換器32において高温高圧の冷媒蒸気が外気との熱交換により放熱して凝縮する。また、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室内熱交換器33に流入し、その室内熱交換器33が蒸発器として機能して、当該室内熱交換器33において低温低圧の冷媒液が室内空気との熱交換により吸熱して蒸発する。そして、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻されるといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
即ち、室内熱交換器33において冷媒液が吸熱して蒸発する際に発生する冷熱を利用して、空調対象空間の冷房等を行うように構成される。
【0021】
一方、圧縮式のヒートポンプ回路30を暖房運転するときには、
図1の四方弁35の状態として破線で示すように、圧縮機31の吐出側が室内熱交換器33に接続され且つ圧縮機31の流入側が室外熱交換器32に接続されるように、四方弁35が切り替えられる。このように四方弁35が切り替えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室内熱交換器33に流入し、その室内熱交換器33が凝縮器として機能して、当該室外熱交換器32において高温高圧の冷媒蒸気が室内空気との熱交換により放熱して凝縮する。また、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室外熱交換器32に流入し、その室外熱交換器32が蒸発器として機能して、当該室外熱交換器32において低温低圧の冷媒液が室内空気との熱交換により吸熱して蒸発する。そして、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻されるといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
即ち、室内熱交換器33において冷媒蒸気が放熱して凝縮する際に発生する温熱を利用して、空調対象空間の暖房等を行うように構成される。
【0022】
エンジン1により圧縮機31を駆動するための軸動力は、例えば冷房運転において、室外熱交換器32における冷媒蒸気の放熱先である外気等の温度や、室内熱交換器33における冷媒液の吸熱元である室内空気の温度や、冷媒の圧力状態や流量状態等から求められる熱負荷に応じたものとなる。言い換えれば、圧縮機31が動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結されることで、エンジン1には、圧縮式のヒートポンプ回路30における空調負荷(熱負荷)に応じたエンジン負荷が要求されることになる。
これに対し、制御装置20は、空調負荷に応じて目標回転速度を求めて、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、スロットルバルブ11の開度を調整して燃焼室2への混合気Mの吸気量を調整する。このことにより、エンジン1の出力を制御する所謂スロットルバルブ出力制御を行うように構成されている。
【0023】
ヒートポンプ回路30には、圧縮機31の圧縮仕事を維持したまま当該圧縮機31を回転駆動するための回転トルクを調整可能な2種の回転トルク調整手段T1,T2が設けられており、以下にその詳細について説明する。
先ず、第1回転トルク調整手段T1として、圧縮機31が、ヒートポンプ回路30に対して並列接続された2つの圧縮機31a,31bからなると共に、それら圧縮機31a,31bの夫々に電磁クラッチ42a,42bを配置することによって、この電磁クラッチ42a,42bが、その2つの圧縮機31a,31bの一部に対する軸動力の伝達を遮断可能なものとされている。
詳しくは、全て(2つ)の電磁クラッチ42a,42bを連結状態とし、全て(2つ)の圧縮機31a,31bをエンジン1の出力軸7に連結することで、エンジン1の軸動力を全て(2つ)の圧縮機31a,31bに伝達させる状態を全連結状態とする。一方、一方の電磁クラッチ42aのみを連結状態とし、一方の圧縮機31aのみをエンジン1の出力軸7に連結することで、他方の圧縮機31bに対する軸動力の伝達を遮断する状態を部分連結状態とする。
【0024】
これら全連結状態と部分連結状態とは共に、同じ熱負荷に対応するべく圧縮機31全体の圧縮仕事が同程度に維持されて、圧縮機31全体で冷媒が同程度の圧力及び流量に圧縮されることになる。
言い換えれば、部分連結状態で回転駆動される1つの圧縮機31aは、全連結状態で回転駆動する2つの圧縮機31a,31bの夫々と比較して、冷媒を同程度の圧力に圧縮するために同程度の回転トルクで回転駆動し、同程度の流量を確保するために2倍の回転速度で回転することになる。
よって、部分連結状態では、エンジン1の出力軸7に対して1つの圧縮機31aの回転トルクが付加されるだけであるのに対して、全連結状態では、エンジン1の出力軸に対して2つの圧縮機31a,31bの回転トルクが付加されることになる。そのため、部分連結状態でエンジン1の出力軸7に付与される回転トルクは、全連結状態でエンジン1の出力軸7に付与される回転トルクの1/2となる。
一方、部分連結状態でのエンジン1の回転速度は、全連結状態でのエンジン1の回転速度の2倍となる。
以上のように、この第1回転トルク調整手段T1では、電磁クラッチ42a,42bの状態を全連結状態から部分連結状態に切り換える形態で、圧縮機31の圧縮仕事を維持したまま当該圧縮機31を回転駆動するための回転トルクを1/2に減少させることができる。
【0025】
一方、第2回転トルク調整手段T2として、ヒートポンプ回路30における高圧側(圧縮機31の吐出側)の冷媒の一部を低圧側(圧縮機31の吸込側)にバイパス可能なバイパス弁36(バイパス手段の一例)が設けられている。
即ち、バイパス弁36の開度を拡大して、当該バイパス弁36を介して高圧側から低圧側へバイパスする冷媒の流量であるバイパス量を増加させると、ヒートポンプ回路30において室外熱交換器32、膨張弁34、及び室内熱交換器33に要求される熱負荷に対応する所定の循環流量の冷媒を循環させるために必要な圧縮機31の回転速度が増加し、一方、圧縮機31の圧縮仕事が維持されることから当該圧縮機31を回転駆動するための回転トルクが減少することになる。
以上のように、この第2回転トルク調整手段T2では、バイパス弁36の開度を増加させる形態で、圧縮機31の圧縮仕事を維持したまま当該圧縮機31を回転駆動するための回転トルクを減少させることができる。
【0026】
制御装置20は、酸素濃度センサ12にて検出される酸素濃度を監視しながら、燃料供給弁10の開度を調整することにより、燃焼室2で燃焼する混合気Mの空燃比をストイキ範囲(例えば、空気過剰率換算で1.0程度)内に設定するストイキ燃焼モードと燃焼室2で燃焼する混合気Mの空燃比をストイキ範囲超のリーン範囲内(例えば、空気過剰率換算で1.4〜1.6)に設定するリーン燃焼モードとにエンジン1の燃焼モードを切り替え自在に構成されている。
【0027】
説明を加えると、図示を省略するが、このエンジン駆動式のヒートポンプシステムのリモートコントローラには、空調目標温度を設定する温度設定部が備えられ、又、空調対象空間の温度を検出する室温センサが設けられている。これら温度設定部の設定情報及び室温センサの検出情報が制御装置20に入力されるように構成され、制御装置20は、温度設定部にて設定される空調目標温度と室温センサにて検出される空調対象空間の温度との偏差をヒートポンプ回路30の熱負荷として求めるように構成されている。
そして、エンジン1の目標回転速度をヒートポンプ回路30の熱負荷が大きいほど大きくなるように設定し、エンジン1の回転速度がその設定した目標回転速度になるように、スロットルバルブ出力制御を実行して、スロットルバルブ11の開度を調整する。
【0028】
更に、
図2も参照して、このスロットルバルブ出力制御によるエンジン1の回転速度の制御に伴って、エンジン負荷が変化するが、そのエンジン負荷が所定の燃焼モード切替負荷値L0以上となるストイキ領域SA(
図2の右下がり斜線部)では、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードに設定され、エンジン負荷が同燃焼モード切替負荷値L0未満となるリーン領域LA(
図2のドット部)では、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに設定される。
即ち、このストイキ領域SAとリーン領域LAとの間の閾値が、ストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で切り替えるときのエンジン負荷の閾値である燃焼モード切替負荷値L0に対応する。
【0029】
例えば、
図2に示すように、制御装置20は、エンジン回転数とエンジン1の出力軸7に付加される回転トルクとの積に相当するエンジン負荷の領域において、エンジン負荷が比較的小さい側の領域として設定されたリーン領域LAと、そのリーン領域よりもエンジン負荷が大きい側の領域として設定されたストイキ領域SAとを規定したエンジン負荷マップを有する。
そして、
図2の点P1,P2のように、エンジン負荷がリーン領域LAにあるときは、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン範囲内の空燃比に応じて設定されたリーン側目標濃度になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整して、エンジン1の燃焼モードをリーン燃焼モードに設定する。
一方、
図2の点P3,P4,P5のように、エンジン負荷がストイキ領域SAにあるときは、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がストイキ範囲内の空燃比に応じて設定されたストイキ側目標濃度(例えば、略ゼロ)になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整して、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードに設定する。
【0030】
つまり、エンジン1の回転速度や回転トルクの増加に伴って、エンジン負荷がリーン領域LAから境界線BL1,BL2を跨いでストイキ領域SAに入ったタイミングで、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替えられる。一方、エンジン1の回転速度又は回転トルクの減少に伴って、エンジン負荷がストイキ領域SAから境界線BL1,BL2を跨いでリーン領域LAに入ったタイミングで、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り替えられる。
例えば、
図2の実線矢印(点P1→点P2→点P3)に示すように、エンジン負荷が増加した場合には、そのエンジン負荷の増加の軌跡(点P2→点P3)と境界線BL2との交点に対応するエンジン負荷を、ストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で燃焼モードを切り替えるときのエンジン負荷の閾値である燃焼モード切替負荷値L0(ストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で切り替えるときのエンジン負荷の閾値)に設定し、エンジン1の回転速度がその燃焼モード切替負荷値L0以上となったタイミングで、燃焼モードをリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替えることになる。
【0031】
図1を参照して、三元触媒13は、例えば、アルミナ等の無機担体に白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分を担持して構成され、酸化性成分と還元性成分とが釣りあった状態の理論当量比の排ガスEが通過することで、その排ガスE中のNOx、CO及びHCの排出物を同時に除去するように構成されている。
つまり、エンジン1がストイキ燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、その排ガスE中のNOxが還元されると共に、CO及びHCが酸化されることになり、NOx、CO及びHCが同時に除去される。
一方、エンジン1がリーン燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、主に、CO及びHCが酸化されて除去されることになり、又、排ガスEには元々NOxが殆ど含まれていないので、NOxは排出量が規定値以下に抑えられることになる。
【0032】
制御装置20は、総積算運転時間に対するストイキ燃焼モードでの積算運転時間であるストイキ燃焼モード積算運転時間の割合であるストイキ燃焼運転割合を計測する計測手段21、ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制すべきストイキ燃焼抑制期間を設定する設定手段22として機能し、更には、過去におけるヒートポンプ回路30の熱負荷の実績データを記録する不揮発性メモリー等からなる記録手段23を有する。
【0033】
具体的に、計測手段21は、ストイキ燃焼モード及びリーン燃焼モードの夫々における積算運転時間として、リーン燃焼モードでの積算運転時間であるリーン燃焼モード積算運転時間とストイキ燃焼モードでの積算運転時間であるストイキ燃焼モード積算運転時間とを夫々計測し、その計測したリーン燃焼モード積算運転時間とストイキ燃焼モード積算運転時間との合計である総積算運転時間に対するストイキ燃焼モード積算運転時間の割合をストイキ燃焼運転割合として求める。
【0034】
また、上記設定手段22は、記録手段23に記録された熱負荷の実績データに基づいて、過去においてはストイキ燃焼モードでの運転があまり行われていない期間などのように、ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制してもヒートポンプ回路30の熱負荷に対する追従性があまり問題にならない期間を認識する。例えば、このような期間としては、春秋の中間期、土曜日、日曜日、祝日、18時から翌朝9時の時間帯などが、ヒートポンプ回路30の熱負荷が比較的低いために、ストイキ燃焼モードでの運転があまり行われることがない期間として認識することができる。
そして、設定手段22は、このように認識した期間を、ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制すべきストイキ燃焼抑制期間として設定する。
【0035】
制御装置20は、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で切り替えるにあたり、後述する回転速度増加制限処理、燃焼モード強制切替処理、ストイキ燃焼抑制処理、切替負荷値補正処理を適宜実行するように構成されている。以下に、これら夫々の処理フローの詳細について説明する。
【0036】
〔回転速度増加制限処理〕
回転速度増加制限処理は、燃焼モードの頻繁な切り替えによるハンチングを防止しながら、リーン燃焼モード及びストイキ燃焼モードの夫々による効果を合理的な状態で享受するための処理であって、エンジン負荷の増加に伴ってエンジン1の燃焼モードをリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替える直前の時点に、エンジン1の回転速度の増加を所定の待機時間において制限する処理として構成されている。
【0037】
具体的に、
図2の実線矢印(点P1→点P2→点P3)に示すように、エンジン負荷が増加した場合には、エンジン1の燃焼モードをリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替える直前の点P2に到達した時点、言い換えればエンジン負荷がその時点ではリーン領域LAであるがそのまま増加すれば直ぐに燃焼モード切替負荷値L0を超えてストイキ領域SAに入ると予測される時点で、所定の待機時間(例えば5分)においてエンジン1の回転速度の増加が禁止される。すると、エンジン負荷の増加が抑制され、それと同時に燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わることが抑制されることになる。
即ち、ヒートポンプ回路30の熱負荷の変動が頻繁に行われるような不安定な環境下であっても、その熱負荷の頻繁な変動に合わせて燃焼モードが頻繁に切り替わる所謂ハンチングの発生が防止されることになり、エンジン1の運転状態が安定したものに維持される。
また、このような回転速度増加制限処理では、エンジン負荷自身の増加を抑制しているが、エンジン負荷が実際に変化したと認められる段階で燃焼モードを切り替えることになるので、リーン燃焼モード及びストイキ燃焼モードの夫々による効果は合理的な状態で享受されることになる。
【0038】
回転速度増加制限処理が実行されてエンジン1の回転速度の増加が禁止されている待機時間において、ヒートポンプ回路30の熱負荷が比較的高い場合には、
図2の破線矢印(点P2→点P5)に示すように、圧縮機31を回転駆動すべくエンジン1の出力軸7に付加される回転トルクが増加して、エンジン負荷がストイキ燃焼モードに対応するストイキ領域SAに入る場合がある。
この場合には、その時点で上記回転速度増加制限処理が停止されて、エンジン1の回転速度に対する増加の禁止が解除される。
そして、回転速度増加制限処理が停止された直後に、エンジン負荷が継続してストイキ領域SAにある場合には、そのエンジン負荷に対応して、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替わることになる。
一方、ヒートポンプ回路30の熱負荷の頻繁な変動により、当該エンジン負荷がストイキ領域にある時間が短く、回転速度増加制限処理を停止した直後に、再度エンジン負荷がリーン領域LAに戻った場合には、燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り替わることなく、リーン燃焼モードに維持されることになり、燃焼モードの頻繁な切り替えによるハンチングが抑制される。
【0039】
〔燃焼モード強制切替処理〕
燃焼モード強制切替処理は、三元触媒13の性能を良好なものに維持してエミッションの悪化を防止するための処理であって、ストイキ燃焼モードにおいて触媒温度センサ14で検出される三元触媒13の温度が当該三元触媒13の活性が維持できる活性温度(例えば、500℃)を下回ると判断した場合に、回転トルク調整手段T1,T2により圧縮機31を回転駆動するための回転トルクを減少させて、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに強制的に切り替える処理として構成されている。
【0040】
具体的に、エンジン負荷が増加するほど、燃焼室2における燃焼量の増加に伴って、排気路4に排出される排ガスEの温度が上昇し、結果、三元触媒13の温度が上昇する。
即ち、
図2に示すように、エンジン1の回転速度及び回転トルクが共に大きい高負荷領域HA(
図2の右上がり斜線部)では、三元触媒13の温度が上記活性温度以上に保たれることになる。
従って、
図2の点P4のように、エンジン負荷がストイキ燃焼モードで運転する必要があるストイキ領域SAであったとしても、上記高負荷領域HAではないために三元触媒13の温度が活性温度以上に保たれない場合には、三元触媒13によりストイキ燃焼により排出される排ガスE中のNOxを十分に除去できない。
そこで、このような場合には、
図2の一点鎖線矢印(点P4→点P1)に示すように、回転トルク調整手段T1,T2により圧縮機31を回転駆動するための回転トルクが減少されて、エンジン負荷がリーン領域LAに移行され、結果、エンジン1の燃焼モードが三元触媒13の温度を活性温度以上に保つことができないストイキ燃焼モードからNOxの排出が少ないリーン燃焼モードに強制的に切り替えられることになる。
尚、ここで、燃焼モード強制切替処理において、圧縮機31を回転駆動するための回転トルクを減少させるべく、第1回転トルク調整手段T1及び第2回転トルク調整手段T2の一方又は両方を作動させることができる。
具体的に、ストイキ燃焼モードにおいて三元触媒13の温度が活性温度を下回るときに、第1回転トルク調整手段T1を作動させる場合には、電磁クラッチ42a,42bの状態が全連結状態から部分連結状態に切り換えられて、圧縮機31bに対するエンジン1の軸動力の伝達が遮断され、一方、第2回転トルク調整手段T2を作動させる場合には、バイパス弁36の開度を増加されて、ヒートポンプ回路30においてバイパス弁36を介して高圧側から低圧側への冷媒のバイパス量が増加される。
【0041】
〔ストイキ燃焼抑制処理〕
ストイキ燃焼抑制処理は、効率やエミッションなどの性能面や寿命面において適切な状態で燃焼モードの切り替えを行うための処理であって、ヒートポンプ回路30の熱負荷に対応するエンジン負荷がストイキ領域SAにあったとしても、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制する処理として構成されている。
また、制御装置20は、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制する抑制操作を複数種有する。以下に、これら複数種の抑制操作について、
図3を参照して説明する。
図3の破線に示すように、ヒートポンプ回路30の熱負荷がストイキ領域SAとリーン領域LAとの間で変動したと想定する。ここで、このヒートポンプ回路30の熱負荷の変動は、例えば1日における一般的な熱負荷の変動例を示しており、熱負荷が起動時直後において一時的にストイキ領域SAに突入し、その後の正午までの期間においてリーン領域LAで推移し、正午から夕刻までの期間においてストイキ領域SAで推移し、その後の停止時までの期間においてリーン領域LAで推移する、というものとなっている。
そして、このように変動するヒートポンプ回路30の熱負荷に対して、複数種の抑制操作でストイキ燃焼抑制処理を実行した場合のエンジン負荷の変動パターンを、
図3の実線で示す。
【0042】
先ず、第1の抑制操作としては、
図3の矢印Xで示す部分のように、エンジン負荷の増加傾向を緩和させることで、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制するものとされている。
具体的に、この第1の抑制操作では、起動時などにおいて、ヒートポンプ回路30の熱負荷が急激に増加し、その増加が一時的なものであった場合には、エンジン負荷の上昇傾向が緩慢なものに抑えられることで、エンジン負荷がストイキ領域SAに一時的に入ることが防止され、結果、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに維持されて、ストイキ燃焼運転割合の過度の増加が良好に防止される。
【0043】
次に、第2の抑制操作としては、
図3の矢印Yで示す部分のように、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを間欠的に禁止することで、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制するものとされている。
具体的に、この第2の抑制操作では、ヒートポンプ回路30の熱負荷がストイキ領域SAで推移した場合において、数十分〜1時間程度の一定時間間隔で、エンジン負荷を、その熱負荷とは関係なく強制的に、リーン領域LAの上限付近に変移させて、エンジン1の燃焼モードを強制的にリーン燃焼モードに変更する。
この第2の抑制操作では、ストイキ燃焼モードへの切り替えを完全に禁止するのではないので、ヒートポンプ回路30の熱負荷に対するエンジン負荷の追従性を適度に確保しながら、ストイキ燃焼モードでの積算運転量の増加が抑制され、ストイキ燃焼運転割合の過度の増加が良好に防止される。
【0044】
次に、第3の抑制操作としては、図示は省略するが、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを連続的に禁止することで、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制するものとされている。
具体的に、この第3の抑制操作では、ストイキ燃焼モードへの切り替えを完全に禁止することで、ストイキ燃焼モードでの積算運転量の増加が一層抑制され、ストイキ燃焼運転割合の過度の増加が一層良好に防止される。
【0045】
更に、制御装置20は、ストイキ燃焼抑制処理を実行するにあたり、記録手段23に記録されているヒートポンプ回路30の熱負荷の実績データに基づいて、上記複数の抑制操作から実行対象の抑制操作を選択するように構成されている。
即ち、そのヒートポンプ回路30の熱負荷の実績データから、現在のエンジン負荷が今後どのように推移するかを予測し、その予測したエンジン負荷の推移に対して、熱負荷に対するエンジン負荷の追従性やストイキ燃焼運転割合などのバランスが適切なものとなる抑制操作を、上記複数種の抑制操作から選択し採用する。
例えば、エンジン負荷が一時的にストイキ領域に突入し直ぐにリーン燃焼領域に戻ると予測できる場合には、上記第1の抑制操作が採用されて実行され、エンジン負荷の増加傾向が緩和される。
また、エンジン負荷が継続的にストイキ領域に推移すると予測した場合には、上記第2乃至第3の抑制操作が採用されて実行され、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えが連続的又は間欠的に禁止される。
更に、制御装置20は、ストイキ燃焼抑制処理として、第1のストイキ燃焼抑制処理と第2のストイキ燃焼抑制処理とを実行するように構成されており、夫々のストイキ燃焼抑制処理の詳細について以下に説明する。
【0046】
(第1のストイキ燃焼抑制処理)
第1のストイキ燃焼抑制処理は、予め設定されたストイキ燃焼抑制期間において、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制する処理として構成されている。
更に、制御装置20は、春秋の中間期、土曜日、日曜日、祝日、18時から翌朝9時の時間帯などのように、ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制してもヒートポンプ回路30の熱負荷に対する追従性があまり問題にならない期間を、ストイキ燃焼抑制期間として予め設定する。
以下、この第1のストイキ燃焼抑制処理を、
図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
第1ストイキ燃焼抑制処理では、現時点が予め設定されたストイキ燃焼抑制期間であると判定した場合においては(ステップ#11)、ヒートポンプ回路30の熱負荷に対応するエンジン負荷が例えストイキ領域SAにあったとしても、上述したように何れかの抑制操作を選択し実行する(ステップ#12)。このことにより、エンジン1の燃焼モードのストイキ燃焼モードへの切り替えが抑制され、ストイキ燃焼運転割合が適正値を過度に上回ることが防止される。
【0047】
また、上記ステップ#11において、ストイキ燃焼抑制期間については、利用者が直接入力することで予め設定しても構わないが、制御装置20は、記録手段23に記録されたヒートポンプ回路30の熱負荷の実績データに基づいて、ストイキ燃焼抑制期間を設定するように構成されている。
具体的に、制御装置20は、過去の実績データを参照して、過去においてはストイキ燃焼モードでの運転があまり行われていない期間などのように、ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制してもヒートポンプ回路30の熱負荷に対する追従性があまり問題にならない期間を認識し、この認識した期間を上記ストイキ燃焼抑制期間として設定する。このようにストイキ燃焼抑制期間を設定すれば、過去の熱負荷の実績に合わせて、ストイキ燃焼運転割合が適正値を過度に上回ることが効率よく防止される。
【0048】
更に、制御装置20は、この第1のストイキ燃焼抑制処理において。計測手段21で計測したストイキ燃焼運転割合が大きいほど、上記のように予め設定したストイキ燃焼抑制期間を拡大させる形態で、ストイキ燃焼抑制期間をストイキ燃焼運転割合に応じて補正するように構成されている。
即ち、ストイキ燃焼運転割合が比較的大きくそれ以上増加することが性能面や寿命面などにおいて好ましくないと判断できる場合には、例えば春秋の中間期、土曜日、日曜日、祝日、18時から翌朝9時の時間帯として設定されたストイキ燃焼抑制期間がその前後において拡大される。
例えば、18時から翌朝9時までの時間帯をストイキ燃焼抑制期間として設定している場合には、その期間の前後を3時間ずつ拡大して、15時から正午12時までの時間帯をストイキ燃焼抑制期間とすることができる。
【0049】
(第2のストイキ燃焼抑制処理)
次に、第2のストイキ燃焼抑制処理は、計測手段21で計測したストイキ燃焼運転割合が所定の設定割合以上の場合には、エンジンの燃焼モードの前記ストイキ燃焼モードへの切り替えを抑制する処理として構成されている。
以下、この第2のストイキ燃焼抑制処理を、
図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
具体的に、第2のストイキ燃焼抑制処理では、計測手段21により計測されたストイキ燃焼運転割合が、例えばエンジン1の寿命設計時において想定していたストイキ燃焼運転割合に相当する設定割合(例えば25%程度)以上の場合には(ステップ#21)、ヒートポンプ回路30の熱負荷に対応するエンジン負荷が例えストイキ領域SAにあったとしても、上述したように何れかの抑制操作を選択し実行する(ステップ#22)。すると、ストイキ燃焼運転割合が設定割合未満の場合と比較して、ストイキ燃焼モードでの積算運転量の増加が抑制され、結果、ストイキ燃焼運転割合が適正値を過度に上回ることが防止されことになる。
【0050】
〔切替負荷値補正処理〕
切替負荷値補正処理は、効率やエミッションなどの性能面や寿命面において適切な状態で燃焼モードの切り替えを行うための処理であって、予め設定されたストイキ燃焼抑制期間における燃焼モード切替負荷値を、ストイキ燃焼抑制期間以外の期間における燃焼モード切替負荷値よりも大きくする形態で、当該燃焼モード切替負荷値を補正する処理として構成されている。
以下、この切替負荷値補正処理を、
図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0051】
この切替負荷値補正処理では、現時点が予め設定されたストイキ燃焼抑制期間であるか否かが判定される(ステップ#31)。
そして、上記ステップ#31にて現時点がストイキ燃焼抑制期間であると判定された場合には、現在の燃焼モード切替負荷値L0に所定の設定調整幅aを加えて新たな燃焼モード切替負荷値L0とする形態で、燃焼モード切替負荷値L0が増加される(ステップ#33)。このことで、リーン燃焼モードでの運転が積極的に行われることになってストイキ燃焼運転割合Rsの更なる増加が抑制されることになり、寿命や効率の向上が重視された状態となる。
【0052】
一方、上記ステップ#31にて現時点がストイキ燃焼抑制期間でないと判定された場合には、現在の燃焼モード切替負荷値L0から所定の設定調整幅bを差し引いて新たな燃焼モード切替負荷値L0とする形態で、燃焼モード切替負荷値L0が減少される。このことで、ストイキ燃焼モードでの運転が積極的に行われることになって、ストイキ燃焼運転割合Rsの更なる減少が抑制されることになり、三元触媒13等によるエミッションの改善を重視した状態となる。
【0053】
上記ステップ#33において燃焼モード切替負荷値L0の設定範囲を所定の上限値L0max以下に制限するために、その前に、燃焼モード切替負荷値L0に所定の設定調整幅aを加えた値が上限値L0max以下に維持されるかが判定され(ステップ#32)、維持されると判定した場合のみステップ#33で燃焼モード切替負荷値L0の増加が行われる。
尚、この上限値L0maxは、リーン燃焼モードで運転可能なエンジン負荷の最大値として設定されており、例えば、リーン燃焼モードにおいて、スロットルバルブ11を全開状態としたときのエンジン負荷として決定することができる。
【0054】
上記ステップ#35において燃焼モード切替負荷値L0の設定範囲を所定の下限値L0min以上に制限するために、その前に、燃焼モード切替負荷値L0から所定の設定調整幅bを差し引いた値が下限値L0min以上に維持されるかが判定され(ステップ#34)、維持されると判定した場合のみステップ#35で燃焼モード切替負荷値L0の減少が行われる。
尚、この下限値L0minは、ストイキ燃焼モードで運転可能なエンジン負荷の最小値として設定されており、例えば、ストイキ燃焼モードにおいて、スロットルバルブ11の開度を最小にしたときのエンジン負荷として決定することができる。
【0055】
〔別実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0056】
(1)上記実施形態では、制御装置20により、回転速度増加制限処理とは別に、燃焼モード強制切替処理、ストイキ燃焼抑制処理、及び、切替負荷値補正処理を実行するように構成したが、回転速度増加制限処理以外の処理については、適宜省略しても構わない。
【0057】
(2)上記実施形態では、回転速度増加制限処理において、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替わる前の待機時間において、エンジン1の回転速度の増加を完全に禁止するものとしたが、例えば、その増加率を減少させるなどのように、エンジン1の回転速度の増加を緩慢なものとすることで、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わることを抑制しても構わない。