(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS K7128−2に準拠して測定したTD方向の引き裂き強度(TD値)とMD方向の引き裂き強度(MD値)が、(TD値)−(MD値)の値として0.5kgf以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のレトルト食品用の包装材料。
前記ガスバリア層とシーラント層の間に、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物からなる中間樹脂層が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載のレトルト食品用の包装材料。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の包装材料は、少なくとも、基材フィルム層、ガスバリア層、及びシーラント層を、この順に有する積層体からなるレトルト食品用の包装材料であって、
前記シーラント層が、エチレン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種と、エラストマーとを含む樹脂組成物の縦1軸延伸フィルムであることを特徴とする。以下、本発明の積層体について詳述する。
【0018】
積層構造
本発明の包装材料は、少なくとも、基材フィルム層1、ガスバリア層2、及びシーラント層3をこの順に有する積層構造を有し、シーラント層3は、基材フィルム層と反対側の最表面を形成する。
【0019】
本発明の包装材料において、ガスバリア層2とシーラント層3の間には、これらの接着性の向上、包装材料に自立性(起立性)の付与、包装材料の耐衝撃性の向上等を目的として、必要に応じて中間樹脂層4を設けることができる。
【0020】
図1に、本発明の包装材料の積層構造の一態様として、基材フィルム層1/ガスバリア層2/シーラント層3が順に積層された包装材料の断面図を示す。また、
図2に、本発明の包装材料の積層構造の他の一態様として、基材フィルム層1/ガスバリア層2/中間樹脂層4/シーラント層3が順に積層された包装材料の断面図を示す。
【0021】
包装材料を形成する各層の組成及び形成方法
[基材フィルム層1]
本発明の包装材料で使用される基材フィルム層としては、ヒートシール時の熱に耐える耐熱性、及び外部からの物理的衝撃から包装用フィルム及び内容物を保護するために必要な耐衝撃性等を備えるものであればよい。基材フィルム層の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル、更に好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0022】
基材フィルム層は、機械的強度や寸法安定性を有するものである限り、未延伸フィルムであってもよく、また2軸延伸フィルム又は1軸延伸フィルムであってもよいが、好ましくは2軸延伸フィルムが挙げられる。
【0023】
また、基材フィルム層は、優れた耐熱性を備えさせるという観点から、熱収縮が生じ難いものを使用することが望ましい。例えば、基材フィルム層として2軸延伸フィルム又は1軸延伸フィルムを使用する場合であれば、100℃の熱水中に30分間浸漬した際に、MD方向の熱収縮率が5%以下を充足していることが好ましい。
【0024】
また、基材フィルム層には、必要に応じて、表面(ガスバリア層とは反対側の面)及び/又は裏面(ガスバリア層が積層される側の面)に印刷を施してもよい。更に、基材フィルム層は、後述するガスバリア層との接着性を高めるために、必要に応じて、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理、サンドブラスト処理、溶剤処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0025】
基材フィルム層の厚さについては、特に制限されないが、通常3〜50μm、好ましくは9〜30μmが挙げられる。
【0026】
[ガスバリア層]
本発明の包装材料で使用されるガスバリア層とは、酸素透過を抑制できる層であり、具体的には、金属箔層、無機化合物蒸着膜層、ガスバリア性樹脂層が挙げられる。
【0027】
ガスバリア層として使用される金属箔層としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの金属箔の中でも、アルミニウム箔は、製造時にしわやピンホールの発生を抑制する作用に優れており、好適に使用される。
【0028】
ガスバリア層として金属箔層を使用する場合、基材フィルム層と金属箔層の積層は、基材フィルム層と予め加熱した金属箔層とを熱圧着させる方法で行ってもよく、また基材フィルム層又は金属箔層上に接着剤を塗布した後に、基材フィルム層と金属箔層を重ね合わせて接着剤を硬化させる方法で行ってもよい。
【0029】
基材フィルム層と金属箔層の積層に接着剤を使用する場合、当該接着剤は、レトルト殺菌の際の加熱加圧処理に耐え得ることを限度として、特に制限されず、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、その接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、当該接着剤は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、またその性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状等のいずれでもよい。
【0030】
基材フィルム層と金属箔層の積層に使用される接着剤としては、具体的には、ドライラミネート積層法で使用しうるラミネート用接着剤が挙げられる。このような接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤;アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステル等のホモポリマー、若しくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤;シアノアクリレート系接着剤;エチレンと、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤;セルロース系接着剤;ポリエステル系接着剤;ポリアミド系接着剤;ポリイミド系接着剤;尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤;フェノール樹脂系接着剤;エポキシ系接着剤;ポリウレタン系接着剤;反応型(メタ)アクリル酸系接着剤;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなる無機系接着剤;シリコーン系接着剤;アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用することができる。これらの中でも、好ましくは、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、又はヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、又はその他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものが挙げられる。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、基材フィルム層や金属箔層に対し、柔軟性、屈曲性等を有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工等の加工適性を向上させることができる。上記ラミネート用接着剤で形成される層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%程度の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0031】
基材フィルム層又は金属箔層上に接着剤を塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等が挙げられる。
【0032】
また、ガスバリア層として使用される無機化合物蒸着膜層としては、具体的には、金属の酸化物を蒸着させた膜が挙げられる。無機化合物蒸着膜を形成する金属の酸化物としては、具体的には、下記の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
一般式(1)中、Mは金属元素を示す。金属元素としては、具体的には、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムが挙げられる。
【0035】
また、一般式(1)中、xは0を超え、且つM(金属元素)の価数の1/2以下の範囲の数を示す。xの範囲は、M(金属元素)の種類によって異なるが、具体的には、Mがケイ素の場合はxが0を超え2以下、Mがアルミニウムの場合はxが0超え1.5以下、Mがマグネシウムの場合はxが0を超え1以下、Mがカルシウムの場合はxが0を超え1以下、Mがカリウムの場合は0を超え0.5以下、Mがスズの場合は0を超え2以下、Mがナトリウムの場合は0を超え0.5以下、Mがホウ素の場合は0を超え1、5以下、Mがチタンの場合は0を超え2以下、Mが鉛の場合は0を超え1以下、Mがジルコニウムの場合は0を超え2以下、Mがイットリウムの場合は0を超え1.5以下の範囲が挙げられる。
【0036】
これらの金属の酸化物の中でも、好ましくは酸化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。酸化ケイ素の更に好ましい例として、前記一般式(1)において、Mがケイ素であり、xが1以上2以下であるものが挙げられる。また、酸化アルミニウムの更に好ましい例として、前記一般式(1)において、Mがアルミニウムであり、xが0.5以上1.5以下であるものが挙げられる。
【0037】
このような無機化合物を蒸着させた膜は、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性に優れていると共に透明性に優れ、また、使用後においては焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性や環境適性等にも優れている。これらの無機化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
ガスバリア層として無機化合物蒸着膜層を使用する場合、基材フィルム層と無機化合物蒸着膜層との積層は、前記基材フィルム層上に無機化合物を直接蒸着させる方法で行ってもよく、また、予め樹脂フィルム(以下、「無機化合物蒸着膜支持フィルム」と表記することもある)上に無機化合物を蒸着させた無機化合物蒸着フィルムを作製し、前記基材フィルム層又は当該無機化合物蒸着フィルム上に接着剤を塗布した後に、基材フィルム層と無機化合物蒸着フィルムを重ね合わせて接着剤を硬化させる方法で行ってもよい。無機化合物蒸着膜層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法;CVD等の化学蒸着法等によって行うことができる。
【0039】
また、前記無機化合物蒸着膜支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。また、無機化合物蒸着膜支持フィルムは、優れた耐熱性を備えさせるという観点から、熱収縮が生じ難いものを使用することが望ましい。例えば、無機化合物蒸着膜支持フィルムとして2軸延伸フィルム又は1軸延伸フィルムを使用する場合であれば、無機化合物を蒸着させたフィルムが、100℃の熱水中に30分間浸漬した際に、MD方向の熱収縮率が5%以下を充足していることが好ましい。また、無機化合物蒸着膜支持フィルムの厚さについては、特に制限されないが、通常3〜200μm、好ましくは5〜100μmが挙げられる。また、基材フィルム層と無機化合物蒸着フィルムの接着に使用される接着剤の種類については、前記基材フィルム層と金属箔層の接着に使用されるものと同様である。また、前記基材フィルム層又は当該無機化合物蒸着フィルム上に接着剤を塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等が挙げられる。
【0040】
また、ガスバリア層として使用されるガスバリア性樹脂層としては、酸素透過を抑制できる樹脂で形成された層であればよく、例えば、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂等のガスバリア性樹脂で形成された層が挙げられる。また、ガスバリア性樹脂層としては、金属アルコキシドの加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体とを含む組成物からなる層を2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬して、該重合体中の上記官能基を中和したもの(国際公開第2006/129619号);ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液で形成した塗工フィルムを、水系媒体が存在している状態で加熱下で延伸したもの(特開平10−316779号公報)等も報告されており、本発明では、このような公知のガスバリア性樹脂層を使用することができる。これらのガスバリア性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
ガスバリア層としてガスバリア性樹脂を使用する場合、基材フィルム層とガスバリア性樹脂層との積層は、前記基材フィルム層上にガスバリア性樹脂を直接塗布する方法で行ってもよい。基材フィルム層上にガスバリア性樹脂を直接塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等が挙げられる。
【0042】
また、ガスバリア層としてガスバリア性樹脂を使用する場合には、基材フィルム層とガスバリア性樹脂層との積層は、予めガスバリア性樹脂を用いて形成したガスバリア性樹脂フィルム、又は樹脂フィルム(以下、「ガスバリア性樹脂支持フィルム」と表記することもある)上にガスバリア性樹脂を塗布したガスバリア性樹脂コートフィルムを作製し、前記基材フィルム層上或いは当該ガスバリア性樹脂フィルム又はガスバリア性樹脂コートフィルム上に接着剤を塗布した後に、基材フィルム層とガスバリア性樹脂フィルム又はガスバリア性樹脂コートフィルムを重ね合わせて接着剤を硬化させる方法等で行ってもよい。ここで、ガスバリア性樹脂支持フィルムの種類や厚さ、ガスバリア性樹脂コートフィルムの熱収縮率等については、前記無機化合物蒸着膜支持フィルムの場合と同様である。また、基材フィルム層とガスバリア性樹脂フィルム又はガスバリア性樹脂コートフィルムの接着に使用される接着剤の種類については、前記基材フィルム層と金属箔層の接着に使用されるものと同様である。また、基材フィルム層或いはガスバリア性樹脂フィルム又はガスバリア性樹脂コートフィルム上に接着剤を塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等が挙げられる。
【0043】
本発明の包装材料において、これらのガスバリア層は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
これらのガスバリア層の中でも、金属箔層、とりわけアルミニウム箔層は、ガスバリア性が高いことに加え、熱収縮率が低く、後述するシーラント層がヒートシール後に収縮するのを緩和できるので、本発明の包装材料に優れた耐熱性を備えさせる上で好適に使用される。
【0045】
ガスバリア層の厚さについては、特に制限されず、ガスバリア層の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、金属箔層の場合であれば、通常3〜100μm、好ましくは5〜80μm;無機化合物蒸着膜層の場合であれば、通常0.1〜15μm、好ましくは1〜10μm;ガスバリア性樹脂層の場合であれば、通常0.1〜5μm、好ましくは1〜3μmが挙げられる。ここで、無機化合物蒸着膜層又はガスバリア性樹脂層の厚さについては、無機化合物蒸着膜又はガスバリア性樹脂の厚さを意味しており、無機化合物蒸着フィルム又はガスバリア性樹脂コートフィルムを使用する場合には、無機化合物蒸着膜支持フィルム又はガスバリア性樹脂支持フィルムの厚さは除外して算出される。
【0046】
[シーラント層3]
本発明の包装材料で使用されるシーラント層は、エチレン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種と、エラストマーとを含む樹脂組成物の縦1軸延伸フィルムが使用される。このように、シーラント層として特定組成の樹脂組成物で形成された縦1軸延伸フィルムを使用することによって、優れた易引裂き性、シール性、シール強度、及び耐衝撃性を兼ね備えさせることが可能になる。
【0047】
従来、エチレン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体は、レトルト殺菌後にブロッキングが生じるため、シーラント層には使用されていなかった。これに対して、本発明では、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体と、エラストマーとを含む樹脂組成物を縦1軸延伸してフィルム化することにより、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体を使用した場合の前記欠点を克服している。また、通常、1軸延伸されたフィルムではシールカーブの温度上昇(即ち、一定のシール強度を達成すために必要とされるヒートシール温度が1軸延伸によって上昇する現象)が認められるが、本発明の包装材料では、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体を使用することによって、1軸延伸により得るシールカーブの温度上昇を抑制することも可能になっている。
【0048】
シーラント層の形成に使用されるエチレン−プロピレンランダム共重合体において、エチレンとプロピレンとの共重合比率は、特に制限されないが、例えば、エチレン:プロピレンのモル比として、0.7〜15:99.3〜85、好ましくは1.4〜7.3:98.6〜92.7、更に好ましくは2.9〜7.3:97.1〜92.7が挙げられる。
【0049】
シーラント層の形成に使用されるエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体において、エチレンとブテンとプロピレンとの共重合比率は、特に制限されないが、例えば、エチレン:ブテン:プロピレンのモル比として、0.7〜15:0.4〜8:98.9〜77、好ましくは1.5〜10.3:0.7〜5.2:97.8〜84.5が挙げられる。
【0050】
また、エチレン−プロピレンランダム共重合体とエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)については、特に制限されないが、例えば、JIS K 7210に記載の230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRとして、0.1〜30g/10分、好ましくは1〜10g/10分が挙げられる。
【0051】
シーラント層用の縦1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物において、エチレン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体は、いずれか一方を単独で使用してもよく、また双方を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体の含有量については、特に制限されないが、シーラント層用の縦1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物の総量当たり、例えば50〜95質量%、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは50〜70質量%が挙げられる。このような含有量を満たすことにより、易引裂き性、シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性のバランスを向上させることが可能になる。
【0053】
また、シーラント層の形成に使用されるエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーであればよく、その種類については特に制限されないが、例えば、αオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらのエラストマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのエラストマーの中でも、易引裂き性、シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性をより一層効果的に向上させるという観点から、好ましくはαオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0054】
αオレフィン系エラストマーとしては、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−オクテン共重合体エラストマー、プロピレン−ブテン共重合体エラストマー等が挙げられる。これらのαオレフィン系エラストマー1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのαオレフィン系エラストマーの重合条件については、特に制限されないが、メタロセン触媒で重合されたαオレフィン系エラストマーは、易引裂き性、シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性をより一層向上させ得るので、好適に使用される。
【0055】
これらのαオレフィン系エラストマーの中でも、易引裂き性、シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性をより一層向上させるという観点から、好ましくはエチレン−ブテン共重合体エラストマーが挙げられる。エチレン−ブテン共重合体エラストマーにおいて、エチレンとブテンの共重合比率については、特に制限されないが、例えば、エチレン:ブテンのモル比として66〜95:34〜5が挙げられる。
【0056】
また、シーラント層の形成に使用されるエラストマーのメルトフローレート(MFR)については、特に制限されないが、例えば、JIS K 7210に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRとして、0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜4g/10分が挙げられる。
【0057】
エラストマーの含有量については、特に制限されないが、シーラント層用の1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物の総量当たり、例えば2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、更に好ましくは8〜12質量%が挙げられる。
【0058】
また、シーラント層用の1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物には、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、並びにエラストマー以外に、他のポリマーが含まれていてもよい。このような他のポリマーの好適な例としては、エチレン−プロピレンブロック共重合体が挙げられる。当該エチレン−プロピレンブロック共重合体において、エチレンとプロピレンとの共重合比率は、特に制限されないが、例えば、エチレン:プロピレンのモル比として、7〜50:93〜50、好ましくは15〜35:85〜65が挙げられる。
【0059】
また、前記エチレン−プロピレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)については、特に制限されないが、例えば、JIS K 7210に記載の230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRとして、0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜7g/10分が挙げられる。
【0060】
また、シーラント層用の1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物に、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、並びにエラストマー以外に、他のポリマーを含有させる場合、当該他のポリマーの含有量については、特に制限されないが、シーラント層の形成に使用される樹脂組成物の総量当たり、例えば10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは25〜40質量%が挙げられる。
【0061】
また、シーラント層用の1軸延伸フィルムの形成に使用される樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0062】
シーラント層は、前記樹脂組成物を縦1軸延伸することにより得られた縦1軸延伸フィルムを使用する。ここで、縦1軸延伸フィルムとは、延伸機で樹脂フィルムを流れ方向(縦方向)に1軸延伸させたフィルムである。このように縦1軸延伸することにより、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体の延伸方向(縦方向)に配向が生じ、その結果、当該配向方向への直線引裂き性等が良好になり、優れた易引裂き性を備えることが可能になる。
【0063】
また、シーラント層に使用される縦1軸延伸フィルムの延伸倍率については、使用するシーラント層の厚さ等を勘案して適宜設定されるが、易引裂き性、及び耐衝撃性をより一層向上させるという観点からは、好ましくは3〜10倍、更に好ましくは4〜6倍が挙げられる。
【0064】
シーラント層の厚さについては、特に制限されないが、通常5〜200μm、好ましくは5〜120μmが挙げられる。
【0065】
シーラント層は、接着剤を介してガスバリア層上又は必要に応じて設けられる中間樹脂層上に積層させてもよく、またガスバリア層上に後述する中間樹脂層を設ける場合には、接着剤を介さずに当該中間樹脂層上に直接積層させてもよい。接着剤を介してシーラント層を積層させる場合、使用される接着剤の種類、接着剤の塗布方法等については、前記基材フィルム層と金属箔層の接着に使用される接着剤の場合と同様である。また、接着剤を介さずに中間樹脂層上にシーラント層を積層させる方法としては、ガスバリア層上に、中間樹脂層とシーラント層をサンドラミネート法やサーマルラミネート法等によって貼り合せる方法や、シーラント層と中間樹脂層を一体成形する共押出方法等が挙げられる。
【0066】
[中間樹脂層4]
中間樹脂層は、前記ガスバリア層とシーラント層の間に、これらの接着性の向上、包装材料に自立性(起立性)の付与、包装材料の耐衝撃性の向上等を目的として、必要に応じて設けられる層である。
【0067】
中間樹脂層は、レトルト殺菌の条件に耐え得る樹脂層であればよいが、ヒートシール時の加熱によって前記シーラント層と共に溶融し、シール強度の向上に寄与するものであることが好ましい。中間層を形成し得る樹脂として、具体的には、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メチルペンテン樹脂、ポリブテン、酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂の中でも、好ましくは、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体が挙げられる。中間樹脂層の形成に使用されるエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体における共重合比やMFR等については、シーラント層の形成に使用されるエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体の場合と同様である。
【0068】
また、中間樹脂層には、前述する樹脂の他に、エラストマーが含まれていてもよい。中間樹脂層の形成に使用されるエラストマーの具体例、そのMFR、好ましいもの等については、シーラント層の形成に使用されるエラストマーの場合と同様である。
【0069】
中間樹脂層を形成する樹脂組成物の好適な例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体の少なくとも1種を含む樹脂組成物;更に好ましくはエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体の少なくとも1種と、エラストマーを含む樹脂組成物;特に好ましくはエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体の少なくとも1種と、エチレン−ブテン共重合体エラストマーを含む樹脂組成物が挙げられる。
【0070】
これらの好適な樹脂組成物において、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、及び/又はエチレン−プロピレンブロック共重合体の含有量については、特に制限されないが、これらの総量として、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上が挙げられる。また、これらの樹脂成分の含有量の上限値については、特に制限されないが、例えば、エラストマーを含まない場合には100質量%、エラストマーを含む場合には95質量%、好ましくは88質量%が挙げられる。
【0071】
また、これらの好適な樹脂組成物において、また、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体とエチレン−プロピレンブロック共重合体とを組み合わせて使用する場合、これらの比率についても、特に制限されないが、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体及び/またはエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体の総量100質量部当たり、エチレン−プロピレンブロック共重合体が100〜900質量部、好ましくは125〜268質量部が挙げられる。
【0072】
更に、これらの好適な樹脂組成物において、エラストマーの含有量としては、特に制限されないが、例えば、0〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、更に好ましくは8〜12質量%が挙げられる。
【0073】
中間樹脂層の厚さについては、中間樹脂層の組成、前記シーラント層の組成や厚さ等に応じて適宜設定されるが、通常5〜150μm、好ましくは10〜125μmが挙げられる。
【0074】
中間樹脂層の好適な形成法として、中間樹脂層を形成する樹脂組成物と、前記シーラント層を形成する樹脂組成物を共押して積層体を形成した後に、当該積層体を1軸延伸することにより、中間樹脂層とシーラント層の積層体を形成する方法が挙げられる。
【0075】
中間樹脂層は、接着剤を介してガスバリア層上に積層させてもよく、接着剤を介さずにガスバリア層上に直接積層させてもよい。接着剤を介して中間樹脂層を積層させる場合、使用される接着剤の種類や接着剤の塗布方法等については、前記基材フィルム層と金属箔層の接着に使用される接着剤の場合と同様である。また、接着剤を介さずにガスバリア層上に中間樹脂層を積層させる方法としては、押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等が挙げられる。
【0076】
包装材料の物性
本発明の包装材料が備える易裂き性の指標として、JIS K7128−2に準拠して測定したTD方向の引き裂き強度(TD値)とMD方向の引き裂き強度(MD値)が、(TD値)−(MD値)の値として0.5kgf以上、好ましくは0.7〜10kgfを備えていることが望ましい。このような値を充足することにより、優れた耐衝撃性を備えつつ、製袋した際の直線引裂き性がより一層向上し、所謂泣き別れが抑制されて優れた易引裂き性を備えることができる。
【0077】
また、本発明の包装材料は、シーラント層同士を重ねあわせて加熱(ヒートシール)することにより、高いシール強度をもってシーラント層同士を溶着することができる。本発明の包装材料において、シーラント層同士を溶着させるヒートシール条件としては、特に制限されないが、例えば、シール圧0.5〜5kgf/cm
2、シール温度150〜190℃、好ましくは160〜180℃、シール時間0.2〜5秒が挙げられる。ヒートシールの回数は、ヒートシール条件の条件に応じて適宜設定でき、1回であっても複数回であってもよい。このように本発明の包装材料は、通常のレトルト食品の製造工程で採用される製袋加熱温度領域で高いシール強度をもってヒートシールすることができ、実用的特性を十分に備えている。
【0078】
更に、本発明の包装材料が備えるシール強度の指標として、本発明の包装材料のシーラント層同士を溶着させた溶着部のシール強度が、例えば、23N/15mm以上、好ましくは25〜100N/15mmが挙げられる。当該シール強度は、引張試験機を用いて、300mm/分の引張速度に設定して、シーラント層同士を溶着させた溶着部の幅(つかみ間距離)距離50mm、当該溶着部の幅15mmにて測定される値である。
【0079】
包装材料の用途
本発明の包装材料は、前述する特定の層構成を備えることにより、優れた易引裂き性、
シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性を有しているので、レトルト食品用の包装材料として使用される。
【0080】
具体的には、本発明の包装材料1枚をシーラント層同士が対向するように折り重ね、又は本発明の包装材料2枚をシーラント層同士が対向するように重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールしてシール部を設けることにより、本発明の包装材料をレトルト食品用包装袋(レトルトパウチ)に製袋することができる。本発明の包装材料は、ヒートシール層の延伸方向に沿って易引裂き性が付与されているので、包装袋を開封する際の引き裂き方向とヒートシール層の延伸方向(縦方向)が平行になるように設定して製袋する。
【0081】
また、本発明の包装材料を利用したレトルト食品用包装袋の形状については、収容する食品の種類等に応じて任意に設計でき、例えば、平袋型、自立性包装袋(スタンディングパウチ)型、チュ−ブ型等が挙げられる。
【0082】
本発明の包装材料をヒートシールする方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等が挙げられる。
【0083】
また、本発明の包装材料を利用したレトルト食品用包装袋には、必要に応じて、開閉用ジッパーを任意に取り付けてもよく、またノッチやハーフカット線等の易開封性手段を設けてもよい。
【0084】
本発明の包装材料を利用したレトルト食品用包装袋は、例えば、カレー、シチュー、ハヤシ、スープ、パスタソース、料理用ソース、丼類の素、おでん等の広範にわたる食品を密封及び殺菌してレトルト食品を製造するために使用できる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0086】
[包装材料の製造]
実施例1〜4、8〜11及び比較例1〜2
ポリエチレンテレフタレート製の基材フィルム層(二軸延伸フィルム;E5102、東洋紡社製)(12μm)の上に、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、アルミニウム箔からなるガスバリア層(7μm)を積層させて、基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体を得た。
【0087】
別途、表1及び2に示す組成の中間樹脂層用樹脂組成物とシーラント層用樹脂組成物を共押出しすることにより積層シートを調製し、当該積層シートを表1に示す条件で延伸することにより(比較例1は延伸無し)、表1及び2に示す厚さの中間樹脂層/シーラント層からなる積層体を得た。
【0088】
上記で得られた基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体のガスバリア層側と、中間樹脂層/シーラント層からなる積層体の中間樹脂層側をドライラミネート法により接着させることにより、基材フィルム層/ガスバリア層/中間樹脂層/シーラント層からなる積層体(包装材料)を得た。なお、当該ドライラミネート法による接着において、基材フィルム層のMD方向とシーラント層のMD方向が平行になるように配して積層させた。また、ドライラミネート法による接着は、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を使用し、塗布量が3g/m
2となるように塗布することにより行った。
【0089】
実施例5
ポリエチレンテレフタレート製の基材フィルム層(二軸延伸フィルム;E5102、東洋紡社製)(12μm)の上に、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、アルミニウム箔からなるガスバリア層(7μm)を積層させて、基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体を得た。
【0090】
別途、表1に示すシーラント層用樹脂組成物を押出しすることによりシートに成形し、当該シートを表1に示す条件で延伸することにより、表1に示す厚さのシーラント層(単層フィルム)を得た。
【0091】
上記で得られた基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体のガスバリア層側と、シーラント層をドライラミネート法により接着させることにより、基材フィルム層/ガスバリア層/シーラント層からなる積層体(包装材料)を得た。なお、当該ドライラミネート法による接着において、基材フィルム層のMD方向とシーラント層のMD方向が平行になるように配して積層させた。また、ドライラミネート法による接着は、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を使用し、塗布量が3g/m
2となるように塗布することにより行った。
【0092】
実施例6
シリカを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートに蒸着させた無機化合物蒸着フィルム(無機化合物蒸着膜の厚さ1μm、ポリエチレンテレフタレートの厚さ12μm;「IB−PET−RB」、大日本印刷株式会社製)の無機化合物蒸着膜側に、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm;「ONMBC−RT」、ユニチカ株式会社製)からなる基材フィルム層を、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を用いたドライラミネート法により接着させて、基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体を得た。
【0093】
別途、表1に示す組成の中間樹脂層用樹脂組成物とシーラント層用樹脂組成物を共押出しすることにより積層シートを調製し、当該積層シートを表1に示す条件で延伸することにより、表1に示す厚さの中間樹脂層/シーラント層からなる積層体を得た。
【0094】
上記で得られた基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体のガスバリア層側と、シーラント層をドライラミネート法により接着させることにより、基材フィルム層/ガスバリア層/シーラント層からなる積層体(包装材料)を得た。なお、当該ドライラミネート法による接着において、基材フィルム層のMD方向とシーラント層のMD方向が平行になるように配して積層させた。また、ドライラミネート法による接着は、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を使用し、塗布量が3g/m
2となるように塗布することにより行った。基材フィルムとして使用した2軸延伸ナイロンフィルムは、100℃の熱水に5分間浸漬させた後の熱収縮率は、TD方向が1.9%であり、MD方向が3.2%であった。
【0095】
実施例7
シリカを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートに蒸着させた無機化合物蒸着フィルム(無機化合物蒸着膜の厚さ1μm、ポリエチレンテレフタレートの厚さ12μm;「IB−PET−RB」、大日本印刷株式会社製)の無機化合物蒸着膜側に、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm;「エンブレムMS」、ユニチカ株式会社製)からなる基材フィルム層を、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を用いたドライラミネート法により接着させて、基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体を得た。
【0096】
別途、表1に示す組成の中間樹脂層用樹脂組成物とシーラント層用樹脂組成物を共押出しすることにより積層シートを調製し、当該積層シートを表1に示す条件で延伸することにより、表1に示す厚さの中間樹脂層/シーラント層からなる積層体を得た。
【0097】
上記で得られた基材フィルム層/ガスバリア層からなる積層体のガスバリア層側と、シーラント層をドライラミネート法により接着させることにより、基材フィルム層/ガスバリア層/シーラント層からなる積層体(包装材料)を得た。なお、当該ドライラミネート法による接着において、基材フィルム層のMD方向とシーラント層のMD方向が平行になるように配して積層させた。また、ドライラミネート法による接着は、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を使用し、塗布量が3g/m
2となるように塗布することにより行った。なお、ガスバリア層として使用した無機化合物蒸着フィルムは、100℃の熱水に30分間浸漬させた後の熱収縮率は、TD方向が4.2%であり、MD方向が7.5%であった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[レトルト食品用包装袋の製造]
上記で作製した各包装材料を縦17cm×横(シーラント層のMD方向)13cmの大きさに切りだしたものを2枚準備した。2枚の包装材料のシーラント層同士を重なり合わせ、シール幅10mmに設定して、縦一辺と横二辺についてヒートシールを行った。その後、開口部から3cm下部の両端にノッチ部を形成した。
【0101】
なお、ヒートシール条件は、実施例1〜11、比較例1の包装材料の場合は、230℃、2kg/cm
2、1秒間に設定した。比較例2の包装材料の場合は、前記条件では溶着できなかったため、250℃、2kg/cm
2、1秒間に設定した。
【0102】
[レトルト食品用包装袋へのカレーの充填及び殺菌]
上記で作製した各レトルト食品用包装袋に一般的なカレー220gを充填し、シール幅10mmに設定して開口部のヒートシールを行った。なお、ヒートシール条件は、実施例1〜7、比較例1の包装材料の場合は、230℃、2kg/cm
2、1秒間に設定し、比較例2の包装材料の場合は、250℃、2kg/cm
2、1秒間に設定した。
【0103】
次いで、レトルト釜に入れて、熱水式レトルト殺菌(120℃で30分間)の条件で加熱加圧殺菌処理を行った。処理後、レトルト食品を取り出し、包装袋の一方のノッチ部から他方のノッチ部に向けて(シーラント層のMD方向)に引裂いて包装体を開封した。
【0104】
[機能評価]
各レトルト食品用包装袋について、易引裂き性、シール性、シール強度、耐衝撃性、及び耐熱性を以下の方法で評価した。
【0105】
<易引裂き性>
熱水式レトルト殺菌後に包装袋の一方のノッチ部から他方のノッチ部に向けて(シーラント層のMD方向)に引裂いた際の易引裂き性について、官能評価、引裂き性の測定、引裂き蛇行距離の測定を以下の方法で行った。
【0106】
(官能評価)
以下の判定基準に従って、易引裂き性を官能的に評価した。
◎:表面と裏面の引裂き線のズレ(泣き別れ)やシーラント層の伸び等が生じることなく、簡単に引裂くことができた。
△:引裂くことが可能であったが、引裂き線が直線にならなかった。
×:表面と裏面の引裂き線のズレ(泣き別れ)やシーラント層の伸び等が著しく生じ、途中で引裂くことができなくなった。
【0107】
(引裂き性の測定)
JIS K7128−2に準拠して、TD方向の引裂き強度(TD値)及びMD方向の引裂き強度(MD値)を測定し、(TD値)‐(MD値)を算出した。(TD値)‐(MD値)が0.5kgf以上になると直進カット性が認められるが、実用的観点から0.7kgf以上であることが望ましいとされる。
【0108】
(引裂き蛇行距離の測定)
上記で作製した各レトルト食品用包装袋(13cm×17cm)に水200mlを充填し、シール幅10mmに設定して開口部のヒートシールを行った。なお、ヒートシール条件は、実施例1〜11、比較例1の包装材料の場合は、230℃、2kg/cm
2、1秒間に設定し、比較例2の包装材料の場合は、250℃、2kg/cm
2、1秒間に設定した。次いで、120℃で30分間の加熱加圧殺菌を行った。その後、各包装体を一方のノッチから他方のノッチの方向に手で引裂いた。一方のノッチから他方のノッチをつなぐ直線から、引裂き後の引裂き線が最も離れた位置までの距離を、引裂き蛇行距離として測定した。
【0109】
<シール性>
別途、表1及び2に示す組成の中間樹脂層用樹脂組成物とシーラント層用樹脂組成物を共押出することにより積層シートを調整し、当該積層シートを表1に示す条件で延伸することにより(比較例1は延伸無し)、表1及び2に示す厚さの中間樹脂層/シーラント層からなる積層体を得た。得られた積層体を用いて、JIS Z 1713に記載の方法でヒートシール開始温度を求めた。なお、本測定では、ヒートシール条件を0.34MPa、1秒に設定し、引張速度を200mm/minに設定した。
【0110】
<シール強度>
各レトルト食品用包装袋のヒートシール部分の熱水式レトルト殺菌前後での引張強度を測定した。なお、引張強度は、引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、300mm/分の引張速度にて、各レトルト食品用包装袋のヒートシール部分(溶着部分)のつかみ間距離50mm、ヒートシール部分(溶着部分)幅10mmに設定して引張強度を測定した。
【0111】
<耐衝撃性>
上記で作製した各レトルト食品用包装袋(13cm×17cm)に水200mlを充填し、シール幅10mmに設定して開口部のヒートシールを行った。なお、ヒートシール条件は、実施例1〜11、比較例1及び3の包装材料の場合は、230℃、2kg/cm
2、1秒間に設定し、比較例2の包装材料の場合は、250℃、2kg/cm
2、1秒間に設定した。次いで、これを5℃の恒温槽に1週間保存した後、120cmの高さから5回を限度に各10袋落下させた。レトルト食品用包装袋に破損が生じた時点の平均落下回数を計測し、以下の判定基準に従って、耐衝撃性を評価した。
◎:5回落下させても、破損が認められない。
△:破損が生じる平均落下回数が5回未満4回超であった。
×:破損が生じる平均落下回数が4回以下であった。
【0112】
<耐熱性>
上記で作製した各レトルト食品用包装袋(13cm×17cm)を135℃で60分間加熱した後に、外観形状を観察し、以下の判定基準に従って、耐熱性を評価した。
◎:縦及び横方向で、いずれも収縮が生じていない。
△:縦及び横方向の少なくとも一方において、0.1mm以上2mm未満の収縮が生じている。
×:縦及び横方向の少なくとも一方において、2mm以上の収縮が生じている。
【0113】
[評価結果]
得られた結果を表3に示す。この結果から、シーラント層として、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体及び/又はエチレン−プロピレンランダム共重合体とエラストマーを含む樹脂組成物の1軸延伸フィルムを使用した包装材料(実施例1〜11)では、表面と裏面の引裂き線のズレ(泣き別れ)やシーラント層の伸び等が生じることなく、優れた易引裂き性を備えており、実用的なヒートシール温度で高い強度をもってヒートシールすることができた。また、実施例1〜11の包装材料では、優れた耐衝撃性も備えていた。更に、ガスバリア層としてアルミニウム箔又はMD方向の熱収縮率が5%以下の無機化合物蒸着フィルムを使用した包装材料(実施例1〜6及び8〜11)では、格段に優れた耐熱性も備えており、レトルト食品用の包装材料として特に適した特性を備えていた。
【0114】
一方、シーラント層として、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体、及びエラストマーを含む樹脂組成物の無延伸フィルムを使用した包装材料(比較例1)では、開封時に途中で引裂くことができなくなり、易引裂き性が不十分であった。また、エチレン−プロピレンブロック共重合体及びエラストマーを含む樹脂組成物の1軸延伸フィルムを使用した包装材料(比較例2)では、ヒートシール開始温度が200℃であり、250℃、2kg/cm
2、1秒間の条件でヒートシールすると、基材フィルム層が溶解してしまい、実用化できるものではなかった。
【0115】
【表3】