特許第6351265号(P6351265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351265蛍光体含有多層膜シート、並びに発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351265
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】蛍光体含有多層膜シート、並びに発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20180625BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180625BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G02B5/20
   H01L33/50
   B32B27/18 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-2158(P2014-2158)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-130459(P2015-130459A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅見 健志
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 光明
(72)【発明者】
【氏名】門田 健次
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−258586(JP,A)
【文献】 特開2009−070892(JP,A)
【文献】 特開2011−116904(JP,A)
【文献】 特開2013−125850(JP,A)
【文献】 特開2015−038978(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/068460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂Aを主成分とする樹脂組成物2層以上で構成されていて、赤色蛍光体と緑色蛍光体を含む2種類以上の蛍光体を含有する蛍光体含有多層膜シートにおいて、
前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に積層するように設けられてなり、前記蛍光体含有多層膜シートの内、前記蛍光体を含有する蛍光体層が少なくとも2層以上あり、各々の蛍光体層に含有される蛍光体は一種類であり、発光波長が長い蛍光体を含有する蛍光体層から、発光波長が短い蛍光体を含有する蛍光体層へと順に前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に配置されており、各々の蛍光体層に含有される蛍光体の体積頻度が0.4%以上40%以下であり、各々の蛍光体層の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であり、光が入射する面と入射された該光を外部に出射する面に高さ0.4μm以下、パタンピッチ距離が0.05μm〜0.4μmの微細凹凸構造を形成させたことを特徴とする蛍光体含有多層膜シート。
【請求項2】
樹脂Aを主成分とする樹脂組成物2層以上で構成されていて、赤色蛍光体と緑色蛍光体を含む2種類以上の蛍光体を含有する蛍光体含有多層膜シートにおいて、
前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に積層するように設けられてなり、前記蛍光体含有多層膜シートの内、前記蛍光体を含有する蛍光体層が少なくとも2層以上あり、各々の蛍光体層に含有される蛍光体は一種類であり、発光波長が長い蛍光体を含有する蛍光体層から、発光波長が短い蛍光体を含有する蛍光体層へと順に前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に配置されており、各々の蛍光体層に含有される蛍光体の体積頻度が0.4%以上40%以下であり、各々の蛍光体層の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であり、光が入射する面と入射された該光を外部に出射する面に高さ0.05μm〜0.4μm、パタンピッチ距離が0.4μm以下の微細凹凸構造を形成させたことを特徴とする蛍光体含有多層膜シート。
【請求項3】
微細凹凸構造のパタンピッチ距離が、0.05μm〜0.4μmであり、微細凹凸構造の凸部の高さが、0.05μm〜0.4μmである請求項1または請求項2に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項4】
微細凹凸構造が各層の界面に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項5】
樹脂Aが、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂から選択したいずれか一種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項6】
樹脂Aがシリコーン系樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項7】
赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、α―SiAlONまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体から選ばれる1種類の蛍光体を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項8】
緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはβ−SiAlONからなる結晶を母体とする緑色蛍光体又はCe3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体である請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シート。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の蛍光体含有多層膜シートを用いた発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色発光ダイオード(青色LED)又は紫外発光ダイオード(紫外LED)を用いた白色発光ダイオード(白色LED)等を初めとするいろいろな発光装置に利用可能な蛍光体含有多層膜シートと、それを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源に用いて構成された発光装置は、電球に比べて寿命が長く、小型化が容易であり、定電圧駆動が可能であることから、家庭用照明をはじめとする各種照明や、車両用灯具、液晶表示素子のバックライトなど、次世代の光源として注目され、近年盛んに研究と開発が進められている。
【0003】
従来のLED光源は、青色、あるいは紫外光の光を発するLEDチップを励起光源として使用し、複数の蛍光体を励起することで、光の3原色である赤色光、緑色光、青色光を得て白色光を得る方式が広く使われている。図1に、LED光源の蛍光体が分散されている部位の拡大図を示す。
【0004】
しかしながら、図1に示すように、同一の蛍光体層に複数の蛍光体を含有させると、蛍光体の分散状態によって、発光の「色むら」を引き起こしてしまう問題がある。
また、複数の蛍光体を使用すると、一方の蛍光体の励起スペクトルが他方の蛍光体の発光スペクトルと重なっている場合、後者の蛍光体からの発光が前者の蛍光体に吸収される現象が起こる。一般に蛍光体の励起スペクトルは発光スペクトルより短波長側に位置するため、このような現象は短波長の発光スペクトルを持つ蛍光体からの発光が、前記発光スペクトルと同じ波長域に励起スペクトルを持つ蛍光体に吸収されることで起こる。これにより、発光効率が下がり高い輝度が得られない問題がある。
【0005】
このような課題を解決する目的で、複数の蛍光体層を発光素子からの光の進行方向に積層して設置することが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2、および非特許文献1)。積層状態を作る方法として、LEDチップ上面と、パッケージの底が同じ平面になるよう、チップをマウントする位置を凹ませ、これにより得られた実質的に平坦な面に蛍光体を一層ずつ塗布する方法がある。このようにして蛍光体による色むらを無くすことが提案されている(特許文献3)。
【0006】
しかしながら、前記特許文献に記載の方式では、蛍光体を一層塗布後、一旦塗布した層を硬化させて、その後に次の層を塗布するため、製造工程が多く、時間がかかる問題がある。また、蛍光体の積層順について、演色性や発光効率の比較はされているが、発光装置の発光色が同じ色度における実施例が何れの場合も示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−228344号公報
【特許文献2】特開2005−311136号公報
【特許文献3】特許04653662
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Kitabatake,“Emission color tuning of laminated and mixed SiAlON phosphor films by electrophoretic deposition”,Journal of the Ceramic Society of Japan,118[1],1−4,(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、青色乃至紫外光を光源とする白色LED等の発光装置の製造工程において光源の色度調節を簡素化し、発光装置の全光束を高めることができる蛍光体含有多層膜シートを提供することものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、エポキシ系樹脂、あるいはシリコーン系樹脂を樹脂Aとしたとき、樹脂Aを主成分とする樹脂組成物2層以上で構成されていて、赤色蛍光体と緑色蛍光体を含む2種類以上の蛍光体を含有する蛍光体含有多層膜シートにおいて、前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に積層するように設けられてなり、前記蛍光体含有多層膜シートの内、前記蛍光体を含有する蛍光体層が少なくとも2層以上あり、各々の蛍光体層に含有される蛍光体は一種類であり、他の蛍光体は異なる蛍光体層に含有されてなるとともに、発光波長が長い蛍光体を含有する蛍光体層から発光波長が短い蛍光体を含有する蛍光体層へと順に前記蛍光体含有多層膜シートを通り抜ける光の進行方向に配置されており、各々の蛍光体層に含有される蛍光体の体積頻度が0.4%以上40%以下であり、各々の蛍光体層の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であり、少なくとも光が入射する面と前記入射された光を外部に出射する面に微細凹凸構造を設けさせたことを特徴とする蛍光体含有多層膜シートである。
【0011】
また、微細凹凸構造のパタンピッチ距離が、0.05μm〜0.4μmである蛍光体含有多層膜シートである。
【0012】
また、微細凹凸構造の凸部の高さが0.05μm〜0.4μmである蛍光体含有多層膜シートである。
【0013】
この蛍光体含有多層膜シートは、微細凹凸構造を各層の界面に形成されてもよい。
【0014】
樹脂Aの主成分が、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂から選択したいずれかである蛍光体含有多層膜シートである。
【0015】
更に、樹脂Aの主成分がシリコーン系樹脂である蛍光体含有多層膜シートである。
【0016】
赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、α―SiAlONまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体から選ばれる1種類の蛍光体を含む、蛍光体含有多層膜シートでもある。
【0017】
緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはβ−SiAlONからなる結晶を母体とする緑色蛍光体又はCe3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体である蛍光体含有多層膜シートでもある。
【0018】
前記2種類以上の蛍光体は、それぞれの種類毎に層状に形成されて積層されていることを特徴とする蛍光体含有多層膜シートである。
【0019】
微細凹凸構造は、切削法、ナノインプリント法、レーザー微細加工、エッチング法などにより形成される蛍光体含有多層膜シートである。
【0020】
また、更に上記の蛍光体含有多層膜シートからなる発光装置でもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の蛍光体含有多層膜シートを用いることによって、光源の色が昼光色、電球色に色度調節を行ったシートを作製した際に、従来の複数の蛍光体が同一層に混合されたものに比べて高い輝度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は従来の蛍光体含有膜シートの概略断面図で、蛍光体が分散されている部位の拡大図である。
図2図2は本発明の蛍光体含有多層膜シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図3図3は本発明の蛍光体含有多層膜シートに係る他の実施形態を示す概略断面図である。
図4図4はシートの色度調節に用いる緑色蛍光体の(a)CIEx、(b)CIEyのデータ例である。
図5図5はシートの色度調整に用いる赤色蛍光体の(a)CIEx、(b)CIEyのデータ例である。
図6図6はLEDチップの周囲を屈折率1.41の樹脂で覆った際の発光スペクトルと、LEDチップの周囲を屈折率1.00の空気で覆った際の発光スペクトルである。
図7図7は実施例1、比較例1、および比較例2の発光スペクトルである。
図8図8は実施例2、比較例3、および比較例4の発光スペクトルである。
図9図9は昼光色に調節した際の実施形態および比較形態の発光スペクトルである。
図10図10は電球色に調節した際の実施形態および比較形態の発光スペクトルである。
図11図11は微細凹凸構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者等は、公知の青色乃至紫外線を励起光源とする白色LEDの製造工程の簡素化させ、かつ光源の高輝度化を検討した。その結果、屈折率1.3〜1.8の樹脂Aを主成分とする樹脂組成物で構成されていて、赤色蛍光体と緑色蛍光体を含む2種類以上の蛍光体を含有する蛍光体含有多層膜シートの、前記蛍光体含有多層膜シートの内、前記蛍光体含有する層を少なくとも2層以上形成させ、個々の蛍光体が含有する層に含まれる蛍光体は1種類とした。また、励起光源に近い層に発光波長が長い方の蛍光体を含有させ、励起光源に遠い蛍光体層に発光波長が短い蛍光体を含有させた。更に、少なくとも光が入射する面と前記入射された光を外部に出射する面に、パタンピッチ距離と凸部の高さが可視光の波長よりも小さい微細凹凸構造を形成させたことによって、従来の白色LEDよりも高輝度な光が得られることを見出した。
【0024】
樹脂Aの具体的材料として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂のような耐候性に優れた透明樹脂が好ましい。特にシリコーン樹脂を用いると信頼性に優れ且つ蛍光体物質の分散性を向上させることができ好ましい。
また、樹脂Aの屈折率は、光の取り出し効率から1.3〜1.8のものが好ましい。更に、1.4〜1.5のものがより好ましい。
【0025】
蛍光体は、420nm〜500nm(青色領域)、500nm〜555nm(緑色領域)、555nm〜580nm(黄色領域)、580nm〜600nm(橙色領域)、600nm〜630nm(赤橙色領域)、630〜800nm(赤色領域)に発光波長を有する。蛍光体粒子には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、アルカリ土類元素、硫化物、希土類元素、窒化物の少なくとも1種類が含まれている。
【0026】
赤橙色領域あるいは赤色領域の光を発する蛍光体が赤色蛍光体になる。具体的には、以下の蛍光体が該当する。
S:Eu、YS:Eu+pigment、Y:Eu、Zn(PO:Mn、(Zn,Cd)S:Ag+In、(Y,Gd,Eu)BO、(Y,Gd,Eu)、YVO:Eu、LaS:Eu,Sm、LaSi:Eu2+、α−SiAlON:Eu2+、CaAlSiN:Eu2+、CaSiN:Eu2+、CaSiN:Ce2+、MSi:Eu2+、CaAlSiN:Eu2+、(SrCa)AlSiN:EuX+、Sr(SiAl(ON):EuX+
【0027】
緑色領域の光を発する蛍光体が緑色蛍光体である。具体的には、以下の蛍光体が該当する。
ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Al+pigment、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al,+pigment、YAl12:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、YSiO:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、YSiO:Tb、ZnSiO:Mn、(Zn,Cd)S:Cu、ZnS:Cu、ZnSiO:Mn、ZnS:Cu+ZnSiO:Mn、GdS:Tb、(Zn,Cd)S:Ag、ZnS:Cu,Al、YS:Tb、ZnS:Cu,Al+In、(Zn,Cd)S:Ag+In、(Zn,Mn)SiO、BaAl1219:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・aAl:Mn、LaPO:Ce,Tb、ZnSiO:Mn、ZnS:Cu、La・0.2SiO・0.9P:Ce,Tb、CeMgAl1119:Tb、CaSc:Ce、(BrSr)SiO:Eu、α−SiAlON:Yb2+、β−SiAlON:Eu2+、(SrBa)YSi:Eu2+、(CaSr)Si:Eu2+、Sr(SiAl)(ON):Ce。
【0028】
蛍光体含有多層膜シートでは、赤色蛍光体は、CaAlSiN:Eu2+あるいは、(SrCa)AlSiN:EuX+を使用するのが好ましい。緑色蛍光体は、β−SiAlON:Eu2+を使用するのが好ましい。
【0029】
本発明において、赤色領域、緑色領域以外の領域の光を発する蛍光体を使用してもよい。具体的には以下の蛍光体が該当する。
ZnS:Ag、ZnS:Ag+pigment、ZnS:Ag,Al、ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、ZnS:Ag+In、ZnS:Zn+In、(Ba,Eu)MgAl1017、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、Sr10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、10(Sr,Ca,Ba,Mg)・6PO・Cl、BaMgAl1625:Eu。
【0030】
本発明のシートの前記蛍光体層の蛍光体の体積頻度(%)と、前記蛍光体層の厚み(mm)の調節方法について説明する。これらは、励起光源の波長λ(nm)または色度に応じて適宜調節される。
【0031】
図4図5に示すような、本発明は励起光源の色度CIEx、CIEyと、励起光源の波長λまたは色度、蛍光体層の蛍光体の体積頻度(%)、蛍光体層の厚み(mm)との対応を示すデータをとる。
【0032】
励起光源の波長λまたは色度、蛍光体の体積頻度、蛍光体層の厚みを、それぞれ個別に変化させた発光装置を用意し、各データ間の対応付けを行う。蛍光体の体積頻度(%)は、下記数式(1)により置き換えられる。すなわち、シートの厚みと発光装置の色度から、蛍光体層の蛍光体含有量が決定される。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、
phos:蛍光体層中の蛍光体質量[g]
ρphos:蛍光体の密度[g/cm
matrix:蛍光体層の樹脂Aの質量[g]
ρmatrix:樹脂Aの密度[g/cm
【0035】
励起光源の波長λまたは色度、蛍光体層の蛍光体含有量、蛍光体層の厚みをパラメータとして、発光装置の分光波形を計測する。これにより、分光波形と、励起光源の波長λまたは色度、蛍光体層の蛍光体含有量、蛍光体層の厚み、との対応付けがなされる。
【0036】
例えば、励起光源の波長が450nm、蛍光体層は2層、各層の厚みが0.2mm〜0.5mm、各蛍光体層に赤色蛍光体と緑色蛍光体がそれぞれ含有させて色度を(CIEx,CIEy)=(0.289,0.294)(=昼光色)にする場合は、緑色蛍光体の体積頻度を2.00%〜50.0%、赤色蛍光体の体積頻度を0.400%〜5.00%が好ましい。同様な構成で色度を(CIEx,CIEy)=(0.437,0.404)(=電球色)にする場合、緑色蛍光体の体積頻度を4.00%〜40.0%、赤色蛍光体の体積頻度を0.500%〜6.00%が好ましい。
【0037】
本発明の蛍光体含有多層膜シートの各層の厚さは、0.2mm〜0.5mmが好ましい。シートの厚さが0.2mmより小さいと、蛍光体の体積頻度を大きくしても所望の色度が得られなくなり、かつ、シート作製が困難になる。シートの厚さが0.5mmを超えると、層内で蛍光体から発した光を同じ層内にある他の蛍光体が吸収する自己吸収が要因である濃度消光がおき、全光束を低下させてしまう。
【0038】
本発明の蛍光体含有多層膜シートを製造する方法について述べる。封止樹脂と蛍光体を前記の割合で混練と真空脱泡を施したスラリーから、真空成型、圧空成形、プレス成形等、公知のシート成形方法を利用し、切削法、ナノインプリント法、レーザー微細加工、エッチング法等を用いて表面に微細凹凸構造を設けることによって、蛍光体含有多層膜シートを得ることができる。本発明の蛍光体含有多層膜シートを用いることによって、白色LEDの発光輝度を高めることができ、白色LEDを製造する上で、蛍光体を塗布する工程が必要なくなり、簡略化させることができる。
【0039】
<光の取り出し効率評価>
発光ピーク波長が450nm、半値幅20nmのLEDチップを、光放出面積4.5mm、深さ0.85mmのパッケージに実装した。その後、屈折率n=1.41であるシリコーン樹脂(KER−2500、信越化学工業製)をポッティングし樹脂を硬化させた。その後、電圧3V、電流20mAでチップを光らせ、全光束測定システム(全光束測定(φ1000mm)システム、大塚電子社製)を用いて、全光束を測定した。同様に、シリコーン樹脂をポッティングせず、チップ(屈折率=2.5)が空気(屈折率=1.0)にさらされたものも前記全光束システムを用いて全光束を測定した。
【0040】
図6に前記ポッティングした場合のパッケージの発光スペクトルと、樹脂をポッティングしなかった場合の発光スペクトルを示す。樹脂をポッティングした場合の全光束値がポッティングしなかった場合より1.36倍大きい結果が得られた。
【0041】
前記樹脂をポッティングした場合は、チップと樹脂の界面、樹脂と空気層の界面で不連続的な屈折率ギャップが生じている。光はこの屈折率のギャップにより反射する。そこで、本発明者等は各層の界面・表面に可視光(400〜800nm)よりも小さい微細凹凸構造を設けた。これにより、光はまるで界面がないかのうように反射することなく透過する。これによって、更に全光束を高められることを本発明者等は見出した。
【実施例】
【0042】
本発明を、実施例を用いてより具体的に例示するが、本発明はこの実施例に記載された内容によって限定されるものではない。
【0043】
<シートの作製方法>
樹脂Aとして、二液型シリコーン樹脂(KER−2500、信越化学工業製)に蛍光体を、真空脱泡装置(ARV−310、THINKY社製)を用いて溶融混練し、蛍光体ペーストを作製する。次に、30mm×30mm、深さは調節した開口部を有するスペーサ枠を用いて、開口部に前記ペーストを流し込む。その後、150℃で1時間加熱して硬化させ、蛍光体含有シートを作製した。
【0044】
<シートの各層の厚み評価>
[実施例1]
色度が(0.289,0.294)になるように、赤色蛍光体CASNが、体積頻度が0.9%になるように前記シリコーン樹脂と混合し、シートの厚みが0.5mmになるように蛍光体含有シートを作製した。同様に、緑色蛍光体β−SiAlONが、体積頻度が5.5%になるように前記シリコーン樹脂と混合し、シートの厚みが0.5mmになるように前記作製方法で蛍光体含有シートを作製した。更に、赤色蛍光体含有シートが励起光源に近い位置に配置され、励起光源に遠い位置に緑色蛍光体含有シートを重ねた。最後に、励起光の光が入射する面と、前記入射した光が外部に出射する面に、微細凹凸構造を形成させた。図11に示す微細凹凸構造のパタンピッチ距離が0.2μmであり、微細凹凸構造の凸部の高さが0.4μmであるようにし、これを蛍光体含有多層膜シートとした。
【0045】
[比較例1]
シートの厚みを0.7mmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0046】
[比較例2]
シートの厚みを1.0mmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0047】
[実施例2]
赤色蛍光体CASNの体積頻度が2.3%、シートの厚みが0.2mmになるように、緑色蛍光体β−SiAlONの体積頻度が16.4%、シートの厚みが0.2mm、微細凹凸構造のパタンピッチ距離が0.05μmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0048】
[比較例3]
シートの厚みを0.1mmに変更したこと以外、実施例2と同様である。
【0049】
[比較例4]
シートの厚みを0.05mmに変更したこと以外、実施例2と同様である。
【0050】
<シートの評価>
各実施例および比較例で製膜したシートを、ピーク波長450nm、半値幅20nm、発光強度0.0123Wの青色LED治具に乗せて、LEDを点灯させ、全光束測定システム(全光束測定(φ1000mm)システム、大塚電子社製)を用いて、全光束を測定した。
【0051】
図7に実施例1、比較例1、および比較例2の発光スペクトルを示す。表1に実施例1、比較例1、及び、比較例2の全光束を示す。
図7、表1より、シートの厚さが0.5mmを超える比較例1、比較例2が、本実施形態である実施例1のシートより全光束が小さくなり、目的の色度にならないことがわかる。
【0052】
図8に実施例2、比較例3、および比較例4の蛍光体からの発光スペクトルを示す。表1にそれぞれの全光束を示す。シートの厚さが0.2mm未満である比較例3、比較例4は、目的の色度にならず、全光束も小さかった。
【0053】
<蛍光体層の積層順検討>
同じ色度の下、励起光源に近い方に発光波長が長い蛍光体を含有する蛍光体層から順に積層したものと、発光波長が短い蛍光体を含有する蛍光体層から順に積層したものとの比較を行った。
【0054】
図4図5を基に、シートの厚みをそれぞれ0.5mm、蛍光体の体積頻度を調節し、光源の色度が(0.345,0.352)(=昼白色)、あるいは(0.437,0.404)(=電球色)に色度調整した際の発光スペクトルおよび全光束を測定した。
【0055】
[実施例3]
励起光源に近い位置に赤色蛍光体であるCASNを体積頻度1.3%含有し、厚さが0.5mmであるシート配置させ、緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度7.1%含有し、厚さ0.5mmであるシートを積層させ、色度が(0.345,0.352)になるようにしたこと以外、実施例1と同じである。
【0056】
[比較例5]
緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度5.0%含有したシートを励起光源に近い位置に配置させ、赤色蛍光体であるCASNを体積頻度2.4%含有したシートを積層するよう変更した以外は、実施例3と同様である。
【0057】
[実施例4]
色度が(0.437,0.404)になるように赤色蛍光体であるCASNを体積頻度2.0%、緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度10.1%に変更したこと以外、実施例3と同様である。
【0058】
[比較例6]
色度が(0.437,0.404)になるように緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度5.9%、赤色蛍光体であるCASNを体積頻度4.3%に変更したこと以外、比較例5と同様である。
【0059】
実施例3および比較例5の発光スペクトルを図9に示す。実施例4および比較例6を図10に示す。表1に実施例3、実施例4、比較例5、および比較例6の全光束値を示す。ここから、本実施形態の方が全光束は大きい。
【0060】
[比較例7]
表面の凹凸のパタンピッチ距離が0.5μmであり、凸部の高さが0.5μmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0061】
[比較例8]
表面の凹凸のパタンピッチ距離が0.4μmであり、凸部の高さが0.5μmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0062】
[比較例9]
表面の凹凸のパタンピッチ距離が0.5μmであり、凸部の高さが0.4μmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0063】
[比較例10]
表面の凹凸のパタンピッチ距離が0.04μmであり、凸部の高さが0.04μmに変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0064】
表1に実施例1、比較例7〜10の全光束を示す。実施例1が全光束は大きくなった。
【0065】
[比較例11]
色度が(0.289,0.294)になるように、赤色蛍光体であるCASNを体積頻度1.6%、緑色蛍光体であるβ−SiAlONを体積頻度4.3%になるようにシリコーン樹脂と混合し、厚み0.5mmの同一層に赤色蛍光体と緑色蛍光体が共存し、単層構造に変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0066】
表1に実施例1と比較例11の全光束を示す。実施例1の方が全光束は大きくなった。
【0067】
[実施例5]
色度が(0.437,0.404)になるように赤色蛍光体であるCASNを体積頻度2.0%、厚さが0.5mmであるシート、緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度36.9%、厚さが0.2mmに変更したこと以外、実施例4と同様である。
【0068】
[比較例12]
緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度99.9%、厚さが0.1mmに変更したこと以外、実施例5と同様である。
【0069】
[比較例13]
緑色蛍光体であるβ―SiAlONを体積頻度4.6%、厚さが1.0mmに変更したこと以外、実施例5と同様である。
【0070】
表1に実施例5、比較例12および比較例13の全光束を示す。実施例5の方が全光束は大きくなった。
【0071】
[実施例6]
樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名エピコート806、ジャパンエポキシレジン株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様である。
【0072】
表1より、実施例6は実施例1と同程度の全光束であった。
【0073】
【表1】

【符号の説明】
【0074】
1 蛍光体含有多層膜シート
101a 赤色蛍光体含有樹脂層
101b 緑色蛍光体含有樹脂層
102 樹脂層
103、201 赤色蛍光体
104、202 緑色蛍光体
203 青色蛍光体
301 封止樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11