(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の毛髪変形処理は、酸化剤が配合された第1剤、所定の変性ペプチドが配合された中間処理剤、還元剤が配合された第2剤を使用する方法である。
【0013】
(第1剤)
本実施形態の第1剤は、還元剤が水に配合されたものである(本実施形態の第1剤として典型的なものは、水の配合量が80質量%以上のものである。)。また、本実施形態の第1剤には、公知の第1剤用原料から適宜選定されたものが任意に配合される。
【0014】
本実施形態の第1剤に配合する還元剤は、チオール基を有する公知の還元剤であり、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩(チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミンなど)、システイン(L−システイン、DL−システインなど)、システイン塩(塩酸L−システイン、塩酸DL−システインなど)、アセチルシステイン(N−アセチル−L−システインなど)、システアミン、システアミン塩(システアミン塩酸塩)、チオグリコール酸グリセリル、チオ乳酸、チオ乳酸塩、ブチロラクトンチオールが挙げられる。還元剤の本実施形態の第1剤における配合量は、適宜設定すると良く、例えば2質量%以上15質量%以下である。
【0015】
本実施形態の第1剤には、上記の通り、公知の第1剤用原料から適宜選択されたものが任意に配合される。この任意に配合される原料は、アルカリ剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、アミノ酸、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料などである。
【0016】
アルカリ剤を本実施形態の第1剤に配合すると、上記還元剤の還元力が高まる。このアルカリ剤は、公知のアルカリ剤から選ばれた一種又は二種以上であると良く、例えば、アンモニア、アミノアルコール(モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなど)、塩基性アミノ酸(アルギニンなど)、モルホリン、炭酸塩(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、リン酸塩(リン酸一水素アンモニウム、リン酸一水素ナトリウムなど)、苛性アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)である。
【0017】
本実施形態の第1剤のpHは、例えば9.5以下のアルカリ性であり、8.0以上9.2以下が良い。これらpH範囲の調整は、上記アルカリ剤の配合により行われると良い。
【0018】
本実施形態の第1剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、フォーム状(泡状)が挙げられる。
【0019】
(中間処理剤)
本実施形態の中間処理剤は、所定の変性ペプチドが水に配合されたものである(水の配合量は、例えば90質量%以上)。また、中間処理剤の原料として公知のものを任意原料として更に配合したものを、本実施形態の中間処理剤としても良い。
【0020】
本実施形態の中間処理剤に配合される上記変性ペプチドは、2以上のアミノ酸のペプチド結合によって形成された主鎖と、この主鎖に結合する側鎖基を備える。
【0021】
変性ペプチドの上記主鎖は、特に限定されない。この主鎖の例としては、システインを構成アミノ酸の一種としているペプチドの主鎖と同じものが挙げられる。また、システインを構成アミノ酸の一種としているペプチドの例としては、ケラチン、カゼインが挙げられる。ケラチンは、天然物由来のペプチドの中でもシステイン比率が高いものとして知られており、当該変性ペプチドが効率よく得られる原料となる。かかる観点から、変性ペプチドの主鎖はケラチンの主鎖と同じものが好適である。
【0022】
所定の変性ペプチドは、下記式(Ia)〜(Ic)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備える。
−S−S−(CH
2)
n−COOH (Ia)
(式(Ia)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH
3)−COOH (Ib)
−S−S−CH(COOH)−CH
2−COOH (Ic)
【0023】
上記(Ia)〜(Ic)で表される構造の塩は、カルボキシラートアニオンとカチオンとのイオン結合体である。そのカチオンとなる単位としては、例えば、NH
4などのアンモニウム;Na、Kなどの金属原子;が挙げられる。
【0024】
上記変性ペプチドは、分子量が小さいほど本実施形態の中間処理剤に分散し易く、この中間処理剤のpHを低下させた際の分散性への影響が小さい。この観点から、上記変性ペプチドの分子量は、70000以下が良く、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。また、変性ペプチドの分子量は、変性ペプチド分子が大きなほど毛髪の外表面への付着に有利なので、2000以上が良く、10000以上が好ましく、20000以上がより好ましく、30000以上が更に好ましく、40000以上が更により好ましい。ここで、変性ペプチドの分子量については、Sodium Dodecyl Sulfate−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE法)による変性ペプチドのバンドと分子量マーカーのバンドとの相対距離から算出した分子量を、変性ペプチドの分子量とみなして採用する。
【0025】
本実施形態に係る中間処理剤における上記変性ペプチド配合量の下限は、特に限定されないが、例えば0.01質量%であり、0.1質量%が良い。一方、変性ペプチド配合量の上限は、多量配合によるコスト上昇抑制の観点から、5質量%が良く、3質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、0.5質量%が更により好ましい。
【0026】
次に、変性ペプチドの製造方法例として、ケラチンを原料とした変性ペプチドの製造方法について説明する。当該変性ペプチドの製造方法は、
図4に示す還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)、固液分離工程(STP3)、及び回収工程L(STP4)を有するものであると良い。
図4に示す全工程を備える方法では、酸化剤混合工程(STP2)にて変性ペプチド(
図4に示す液体部Lに溶解している変性ペプチド、及び固体部Sに含まれる変性ペプチド)が生成するので、固液分離工程(STP3)及び回収工程L(STP4)を設けなくても変性ペプチドが製造されることになる。
【0027】
原料であるケラチンとしては、これを構成タンパク質として含む羊毛(メリノ種羊毛、リンカーン種羊毛等)、人毛、獣毛
、爪等が挙げられる。中でも、変性ペプチドを安価かつ安定的に入手するために、羊毛を原料とすることが好ましい。この羊毛等の原料については、殺菌、脱脂、洗浄、切断、粉砕及び乾燥を適宜に組み合わせて、予め処理するとよい。
【0028】
還元工程(STP1)は、還元剤とケラチンと水とを混合する工程である。かかる還元工程(STP1)において、ケラチンが有するジスルフィド基(−S−S−)をメルカプト基(−SH HS−)に還元する。
【0029】
還元工程(STP1)で用いる還元剤は、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸塩、チオ乳酸、チオ乳酸塩、チオリンゴ酸、及びチオリンゴ酸塩から選択される一種又は二種以上である。塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。上記所定の還元剤の使用量としては、羊毛等の原料1gを基準として、0.005モル以上0.02モル以下であると良い。また、被処理液(ケラチン又はケラチン由来である処理物を含み、各工程での反応系となる液。以下、同じ。)の容量を基準とした場合の還元剤の使用量は、0.1mol/L以上0.4mol/L以下であると良い。
【0030】
水の量は、特に限定されないが、例えば、羊毛等の原料1質量部に対して、20容量部以上200容量部以下であると良い。
【0031】
還元工程(STP1)での被処理液のpHは、9以上13以下が良く、10以上12以下が好ましい。pHを9以上にすることでケラチンの還元を効率良く行うことができ、pHを13以下にすることで、ケラチン主鎖の切断を抑制できる(ケラチン主鎖の切断を促進することを目的とする場合は、被処理液のpHを13を超えるように調整すればよい。)。なお、上記のpHに調整する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等を用いると良い。
【0032】
還元工程(STP1)の温度条件は、特に限定されないが、35℃以上60℃以下が良く、40℃以上50℃以下が好ましい。温度条件が35℃未満であると、ジスルフィド基をメルカプト基に変換するための還元反応速度が低下し、ケラチンを十分に還元できないことがある。一方、60℃を超えると、ケラチン主鎖が切断されやすくなる。また、還元工程(STP1)の時間は、設定温度が低いほど長時間となり、設定温度が高いほど短時間となる。
【0033】
酸化剤混合工程(STP2)は、還元工程(STP1)を経た処理物(ケラチン由来物)と酸化剤とを混合し、変性ペプチドを生成させる工程である。かかる酸化剤の混合は、処理物のメルカプト基を変性する酸化反応を促進するために行われる。
【0034】
酸化剤としては、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化水素等が挙げられる。用いる酸化剤は、一種又は二種以上である。酸化剤の使用量は、特に限定されないが、羊毛等の原料1gを基準として、0.001モル以上0.02モル以下であると良く、酸化剤混合工程(STP2)の被処理液の容量を基準として、0.02mol/L以上1mol/L以下であると良い。還元工程(STP1)を経た処理物を含む被処理液に酸化剤を混合するのが通常であり、この混合の際には、酸化剤が被処理液中で局所的に高濃度化することを避けるため、1mol/L以上5mol/L以下程度の酸化剤溶液を徐々に混合するとよい。
【0035】
酸化剤混合工程(STP2)での被処理液のpHは、本工程の進行に応じて調整される。酸化剤の混合を開始する際のpHは、9以上13以下が良く、10以上12以下が好ましく、10以上11以下がより好ましい。pH9以上であれば、変性ペプチドの生成効率が良く、pH13以下であれば、ケラチン由来の処理物の主鎖の切断を抑制できる。
【0036】
酸化剤混合工程(STP2)の終了時における被処理液のpHは、特に限定されないが、7程度で良い。このpHに調整するには、有機酸及び無機酸から選択された一種又は二種以上を使用するとよい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸が挙げられる。酸を被処理液に混合する際には、被処理液において局所的にpHが低下すると、処理物のメルカプト基同士がジスルフィド基になるおそれがあるため、被処理液に酸を徐々に混合することが好ましい。
【0037】
酸化剤混合工程(STP2)での温度条件は、10℃以上60℃以下が良く、40℃以下が好ましい。温度を上記範囲に制御することで、副生成物であるシスチンモノオキシド等の生成を抑制できる。
【0038】
酸化剤混合工程(STP2)での反応式を、還元工程(STP1)での還元剤としてチオグリコール酸若しくはその塩、メルカプトプロピオン酸若しくはその塩、チオ乳酸若しくはその塩、又は、リオリンゴ酸若しくはその塩を用いた場合、その還元剤の順の通り挙げれば次の通りである。
【化1】
【0039】
固液分離工程(STP3)は、酸化剤混合工程(STP2)後の被処理液を液体部Lと固体部Sとに分離する工程である。固液分離工程(STP3)では、濾過、遠心分離、圧搾分離、沈降分離、浮上分離等の公知の固液分離手段を採用することができ、必要に応じてイオン交換や電気透析等による脱塩等を行うとよい。
【0040】
回収工程L(STP4)は、固液分離工程(STP3)で得た液体部Lに分散溶解する変性ペプチドLを固形状のものとして回収する工程である。この回収工程L(STP4)における固形状変性ペプチドLの回収方法としては、(1)液体部Lを凍結乾燥することによる回収、(2)液体部Lを噴霧乾燥することによる回収、(3)塩酸等の酸を液体部Lに添加して、液体部LのpHを2.5から4.0程度に低下させることにより生じた変性ペプチドL沈殿物の回収などが挙げられる。回収した固形状の変性ペプチドLについては、必要に応じて、水や酸性水溶液による洗浄、乾燥等を行う。
【0041】
上記の通り、酸化剤混合工程(STP2)での処理を終えることで、被処理液に高分散して溶解した変性ペプチドと、同液に溶解していない変性ペプチドが得られる。これら変性ペプチドを低分子化すれば、水への分散性が向上して溶解性が高まる。低分子化する態様としては、(1)固液分離工程(STP3)で得られた固体部Sを加水分解する態様、(2)固液分離工程(STP3)で得られた液体部Lに溶解している変性ペプチドLを加水分解する態様、(3)回収工程Lにより回収した変性ペプチドLを加水分解する態様、(4)変性ペプチドLと固体部Sを一括して加水分解する態様、が挙げられる。また、その他に加水分解による低分子化を図る方法としては、還元工程(STP1)の前、還元工程(STP1)と同時、還元工程(STP1)と酸化剤混合工程(STP2)との間に、低分子化のための加水分解を行うことが挙げられる。変性ペプチドを加水分解する方法としては、ペプチドの加水分解として公知のものがあり、酵素による加水分解、酸による加水分解及びアルカリによる加水分解が挙げられる。
【0042】
加水分解された変性ペプチドを回収するためには、上記回収工程L(STP4)と同様の方法を採用できる。ただし、pHが2.5から4.0程度になるように酸を添加する回収方法では、変性ペプチドが加水分解により低分子化しているので、回収困難であるか回収不能な場合がある。
【0043】
本実施形態の中間処理剤に配合される任意原料は、例えば、界面活性剤(カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤など)、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、紫外線吸収剤などである。
【0044】
上記中間処理剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば液状、クリーム状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。この剤型を液状に調整する場合、B型粘度計を使用して25℃、ローター回転数12rpmで計測した60秒後の粘度が、例えば200mPa・s以下である。
【0045】
本実施形態の中間処理剤のpHは、例えば5.0以上8.0以下である。pHを酸性としたときに変性ペプチドの分散性の低下が問題となる場合には、例えば下記式(II)で表されるトリメチルアンモニウム塩(II)から選ばれた一種又は二種以上の界面活性剤を配合することとし、その分散性が向上するまで配合量を増やすと良い。
【0046】
【化2】
[上記式(II)において、R
1は炭素数12以上22以下のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【0047】
(第2剤)
本実施形態の第2剤は、酸化剤が水に配合されたものである(本実施形態の第2剤として典型的なものは、水の配合量が80質量%以上のものである。)。また、本実施形態の第2剤には、公知の第2剤用原料から適宜選定されたものが任意に配合される。
【0048】
本実施形態の第2剤に配合する酸化剤は、公知のパーマ用第2剤と同様、例えば、臭素酸塩(臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなど)又は過酸化水素である。
【0049】
臭素酸塩を配合する場合、本実施形態の第2剤のpHは、例えば5.0以上7.5以下である。過酸化水素を配合する場合の第2剤のpHは、例えば2.5以上3.5以下である。
【0050】
本実施形態の第2剤には、上記の通り、公知の第2剤用原料から適宜選択されたものが任意に配合される。この任意に配合される原料は、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、アミノ酸、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料である。
【0051】
本実施形態の第2剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、フォーム状(泡状)が挙げられる。
【0052】
(毛髪変形処理方法)
本実施形態の毛髪変形処理方法は、公知のパーマネントウェーブ処理や公知の縮毛矯正と同様、波状や直線状などの毛髪形状を形成するために使用される。当該方法では、上記の第1剤及び第2剤が使用されると共に、これらの使用の間に上記中間処理剤が使用される。
【0053】
本実施形態の第1剤は、公知のパーマネントウェーブ用第1剤又は縮毛矯正用第1剤と同様に毛髪に塗布して使用され、その後、中間処理剤を使用する前に水などで毛髪を洗浄するのが好ましい。ここで、公知のパーマネントウェーブとしては、常温で毛髪にウェーブを付与するコールド式パーマネントウェーブ、加温下で毛髪にウェーブを付与する加温式パーマネントウェーブなどである。また、公知の縮毛矯正としては、常温で縮毛をストレートに伸ばして矯正するコールド式縮毛矯正、加温下で縮毛をストレートに伸ばして矯正する加温式縮毛矯正、高温整髪用アイロンを使用する加温式縮毛矯正などである。
【0054】
本実施形態の中間処理剤は、毛髪に塗布して使用され、この塗布後の毛髪は加熱される。その第1剤使用後の中間処理剤の塗布前に、特開2010−155823号公報に開示されているカチオン性化合物を毛髪に接触させるカチオン接触工程を設ければ、毛髪に変性ペプチドが付着し易くなる。
【0055】
上記毛髪の加熱は、市販のドライヤー、発熱機能を備えたロッド、ヘアアイロンなどの加熱装置により、毛髪が乾燥するまで行われると良い。加熱の際の温度は、毛髪を乾燥できる温度であると良く、例えば、加熱装置の発熱部の設定温度が80℃以上180℃以下である。
【0056】
本実施形態の第2剤は、公知のパーマネントウェーブ用第2剤又は縮毛矯正用第2剤と同様に使用すると良い。ここで、公知のパーマネントウェーブ及び縮毛矯正は、上記と同様、コールド式パーマネントウェーブ、加温式パーマネントウェーブ、コールド式縮毛矯正、加温式縮毛矯正などである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0058】
(中間処理剤)
実施例及び比較例で使用した中間処理剤は、上記式(Ia)で表される側鎖基(n=1)を備える変性ペプチドが分散する透明溶液とした。この溶液は、以下の還元工程、酸化剤混合工程、固液分離工程、回収工程、及び加水分解工程に従い調製した。
【0059】
還元工程:
中性洗剤で洗浄、乾燥させたメリノ種羊毛を、約5mmに切断した。この羊毛5.0質量部、30質量%チオグリコール酸ナトリウム水溶液15.4質量部及び6mol/L水酸化ナトリウム水溶液8.5質量部を混合し、さらに水を混合して全量150質量部、pH11の被処理液を調製した。この被処理液を、45℃、1時間の条件で攪拌した。次いで、さらに水を混合して全量を200質量部とし、45℃、2時間の条件で放置し、その後、液温が常温になるまで自然冷却した。
【0060】
酸化剤混合工程:
還元工程後の被処理液を攪拌しながら、当該液に、35質量%過酸化水素水を15.26質量部配合した水溶液178質量部を、約30分かけて攪拌しながら混合した(過酸化水素水の混合に伴って被処理液のpHは上昇することになるが、その上昇は約20質量%酢酸水溶液を混合することでpH10以上11以下の範囲に調整した。)。その後、約20質量%酢酸水溶液を徐々に混合し、被処理液のpHが漸次11から7になるように調整した。
【0061】
固液分離工程:
酸化剤混合工程で得られた液をろ過することにより、液体部(ろ液)と固体部に分離した。
【0062】
加水分解工程:
固液分離工程で得た固体部を水100質量部に添加してから、一晩放置した。次に、酵素(東洋紡社製「NEP」)を0.05質量部加えてから、60℃、1時間の条件で加熱した。その後、酵素を添加した溶液内温度を80℃とし、その温度を30分間維持した。そして、室温で自然冷却させてからろ過して得た液を、実施例及び比較例で使用した中間処理剤とした。
【0063】
実施例及び比較例で使用した中間処理剤における変性ペプチドの濃度は、0.3質量%であった。また、SDS−PAGE法では、変性ペプチドのバンドが6500以下の分子量範囲で認められた。
【0064】
(実施例1)
毛束をウェーブ状に形成する実施例1として、毛束(重さ0.2g、長さ23cm)を準備し、還元工程、中間処理工程、及び酸化工程による毛髪変形処理を行った。
【0065】
還元工程:
還元工程では、直径12mmのロッドに巻きつけられた毛束に、3ml程度の第1剤(チオグリコール酸5.5質量%及びジチオジグリコール酸1.0質量%が配合され、モノエタノールアミン、炭酸水素アンモニウム、及びアンモニア水を用いてpH9.0に調整した水溶液)を塗布してから、室温にて15分間放置した。その後、毛束を水中に3分間浸漬した。
【0066】
中間処理工程:
還元工程に続く中間処理工程では、ナルコ社製「Merquat550」を用いて調製したジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体の0.1質量%水溶液を毛束に塗布し、タオルドライした。次に、上記の変性ペプチドを配合した3ml程度の中間処理剤を毛束に塗布し、40℃、10分間放置した。その後、市販のヘアドライヤーで毛束を加熱乾燥した。
【0067】
酸化工程:
中間処理工程に続く酸化工程では、毛束に3ml程度の第2剤(臭素酸ナトリウム8.0質量%及びリン酸一水素ナトリウム1.0質量%が配合され、リン酸を用いてpH6.2に調整した液)を塗布してから、室温にて10分間放置した。その後、毛束を水中に5分間浸漬した。
【0068】
(比較例1a〜1d、参考例1)
比較例1a〜1d、参考例1の毛髪変形処理は、実施例1における中間処理工程の一部を変更するものとした。比較例1aでは、実施例1における中間処理剤の塗布から加熱乾燥を省略した。比較例1bでは、実施例1における中間処理剤を水に置き換え、加熱乾燥を省略した。比較例1cでは、実施例1における加熱乾燥を省略した。比較例1dでは、実施例1における中間処理剤を水に置き換えた。参考例1では、実施例1における中間処理剤を0.3質量%加水分解ケラチン溶液(成和化成社製「プロモイスWK−L」と水を混合して調製した溶液)に置き換えた。
【0069】
実施例1と比較例1a〜1d、参考例1の中間処理工程の相違を、参考として下記表1に示す。
【表1】
【0070】
上記実施例1、比較例1a〜1d、参考例1の毛髪変形処理を行った毛束を、ロッドから外して水洗し、一端を固定して自然乾燥したときの形状を観察した。この観察後の毛束に対して、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン水溶液(泰光油脂化学工業社製「タイポールNLET−236」)にて洗浄、水洗、ヘアドライヤーでの乾燥までの処理を5回繰り返してから、上記同様に毛束を観察した。
【0071】
図1は、上記洗浄前の毛束観察の際に撮影した写真であり、
図2は、上記洗浄後の毛束観察の際に撮影した写真である。
図2に示す通り、実施例1の毛髪変形処理を行った毛束のウェーブ形状は、比較例1a〜1dに比べて優れる。
【0072】
(実施例2)
実施例2として、毛束(重さ1.5g、長さ30cm程度)を準備し、還元工程、中間処理工程、及び酸化工程による毛髪変形処理を行うことで、毛束を縮毛矯正した。
【0073】
還元工程:
還元工程では、毛束に、2ml程度の第1剤(チオグリコール酸8.5質量%及びジチオジグリコール酸2.5質量%が配合され、モノエタノールアミン、炭酸水素アンモニウム、及びアンモニア水を用いてpH8.5に調整した水溶液)を塗布してから、室温にて30分間放置した。その後、毛束を水中に3分間浸漬した。
【0074】
中間処理工程:
還元工程に続く中間処理工程では、ナルコ社製「Merquat550」を用いて調製したジメチルジアリルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体の0.1質量%水溶液を毛束に塗布し、タオルドライした。次に、上記の変性ペプチドを配合した3ml程度の中間処理剤を毛束に塗布し、40℃、10分間放置した。その後、市販のヘアドライヤーで毛束を加熱乾燥した。その後、毛束を伸ばす様に、温度設定180℃の縮毛矯正用ヘアアイロンで処理した。
【0075】
酸化工程:
中間処理工程に続く酸化工程では、毛束に3ml程度の第2剤(過酸化水素1.5質量%が配合され、リン酸一水素ナトリウム及びリン酸を用いてpH3.0に調整した水溶液)を塗布してから、室温にて5分間放置した。その後、毛束を水中に5分間浸漬した。
【0076】
(比較例2、参考例2)
比較例2の毛髪変形処理は、実施例2における中間処理剤の塗布を省略するものとした。参考例2の毛髪変形処理は、実施例2における中間処理剤を0.3質量%加水分解ケラチン溶液(成和化成社製「プロモイスWK−L」と水を混合して調製した溶液)に置き換えた。
【0077】
実施例2、比較例2、参考例2の中間処理工程の相違を、参考として下記表2に示す。
【表2】
【0078】
上記実施例2、比較例2、参考例2の毛髪変形処理を行った毛束を、80℃の熱水中に20分間浸漬後、一端を固定して自然乾燥したときの形状を観察した。
【0079】
図3は、上記の熱水中に浸漬後に自然乾燥させた毛束を撮影した写真である。
図3に示す通り、実施例2の毛髪変形処理を行った毛束は、比較例2よりも纏まっていることから、縮毛矯正形状の維持に優れる。