(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水分供給手段は、前記炭酸カルシウム供給手段が炭酸カルシウムを供給する端部の周囲に配置され、前記炭酸カルシウム供給手段の端部と二重管となり、前記端部の外周から前記水分を供給することを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
前記水分供給手段は、前記炭酸カルシウム供給手段が炭酸カルシウムを供給する位置よりも排ガスの流れ方向上流側の前記煙道に水分を供給することを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0015】
図1は、本実施形態に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
図1に例示される排ガス処理システム10は、例えば石炭や残渣固体物質等を燃料として使用する石炭焚きボイラや、重油や残渣油等を燃料として使用する油焚きボイラ等のボイラ11からのボイラ排ガス(以下「排ガス」という。)18から、窒素酸化物(NO
x)、硫黄酸化物(SO
x)等の有害物質を除去する装置である。なお、本実施形態は、燃料を燃焼させる燃焼機構をボイラとしたが、これに限定されない。ボイラ11に換えて、燃料を燃焼し、排ガスを排出する種々の燃焼機関を用いることができる。
【0016】
本実施形態に係る排ガス処理システム10は、燃料Fを燃焼させるボイラ11と、ボイラ11からの排ガス18中の窒素酸化物を除去、低減する脱硝装置12と、脱硝後の排ガス18の熱を回収し、排ガス18の温度を低下させるエアヒータ13と、熱回収後の排ガス18中の煤塵を集塵灰16として除去する集塵機14と、集塵機14を通過した排ガス18の温度を低下させる熱回収器15と、熱回収後の排ガス18中に含まれる硫黄酸化物を吸収液である石灰スラリー20で除去、低減する脱硫装置16と、脱硫装置16で脱硫された排ガスを再加熱する再加熱器26と、再加熱器26で加熱された排ガスを排出する煙突27と、各部の動作を制御する制御装置28と、脱硫装置16から排出される脱硫排水である吸収液30から石膏31を回収する脱水機32と、熱回収器15の上流側の煙道に石灰を供給する石灰供給装置100と、を有する。また、排ガス処理システム10は、ボイラ11と脱硝装置12とエアヒータ13と集塵機14とがガス供給ラインL
1で接続され、集塵機14と熱回収器15とがガス供給ラインL
2で接続され、熱回収器15と脱硫装置16とがガス供給ラインL
3で接続されている。ガス供給ラインL
1、L
2、L
3等の排ガスが流れる流路が煙道となる。排ガスは、ボイラ11から排出され、ガス供給ラインL
1、L
2、L
3の順で通過する。脱硫装置16を追加した排ガスは、再加熱器26を通過した後、煙突27排出される。石灰供給装置100は、ガス供給ラインL
2に接続され、ガス供給ラインL
2に石灰を供給する。
【0017】
脱硝装置12は、ガス供給ラインL
1を介してボイラ11と接続されており、ボイラ11から排出された排ガスがガス供給ラインL
1を介して供給される。脱硝装置12は、排ガス18に含まれる窒素酸化物を除去する装置であり、その内部に脱硝触媒層を有している。脱硝触媒層の前流には還元剤注入器が配置され、この還元剤注入器から排ガス18に還元剤が注入される。ここで、還元剤としては、例えばアンモニア、尿素、塩化アンモニウムなどが用いられる。脱硝装置12に導入された排ガス18中の窒素酸化物は、脱硝触媒層と接触することにより、排ガス18中の窒素酸化物が窒素ガス(N
2)と水(H
2O)に分解・除去される。これにより、脱硝装置12を通過した排ガス18は、窒素酸化物が低減、除去された状態となる。
【0018】
なお、排ガス処理システム10は、脱硝装置12を備えていなくてもよい。排ガス処理システム10は、ボイラ11からの排ガス18中の窒素酸化物濃度が微量、あるいは、排ガス18中にこれらの物質が含まれない場合には、脱硝装置12を省略することも可能である。
【0019】
エアヒータ13は、ガス供給ラインL
1を介して脱硝装置12と接続されており、脱硝装置12を通過した排ガス18がガス供給ラインL
1を介して供給される。エアヒータ13は、排ガス18中の熱を回収する熱交換器である。エアヒータ13は、脱硝装置12で窒素酸化物が除去された後、ガス供給ラインL
1を介して供給される排ガス18中の熱を回収し、排ガス18の温度を低下させる。脱硝装置12を通過した排ガス18の温度は例えば300℃〜400℃程度と高温であるため、エアヒータ13により高温の排ガス18と常温の燃焼用空気との間で熱交換を行う。熱交換により高温となった燃焼用空気は、ボイラ11に供給される。一方、常温の燃焼用空気との熱交換を行った排ガス18は例えば150℃程度まで冷却される。
【0020】
集塵機14は、ガス供給ラインL
1を介してエアヒータ13と接続されており、エアヒータ13を通過した排ガス18がガス供給ラインL
1を介して供給される。集塵機14は、エアヒータ13で熱回収された後、ガス供給ラインL
2を介して供給される排ガス18中の煤塵を除去する。集塵機14としては慣性力集塵機、遠心力集塵機、濾過式集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0021】
熱回収器15は、ガス供給ラインL
2を介して集塵機14と接続されており、集塵機14を通過して排ガス18がガス供給ラインL
2を介して供給される。熱回収器15は、排ガス18中の熱を回収する熱交換器である。熱回収器15は、集塵機14で煤塵が除去された後、ガス供給ラインL
2を介して供給される排ガス18中の熱を回収し、排ガス18の温度を低下させる。熱回収器15は、排ガス18を例えば、85〜110℃程度まで冷却する。
【0022】
また、ガス供給ラインL
2には、石灰供給装置100が接続されている。石灰供給装置100は、ガス供給ラインL
2に粉体の石灰を供給する。これにより、熱回収器15に供給される排ガスには、石灰が混入している。なお、石灰供給装置100については後述する。
【0023】
脱硫装置16は、ガス供給ラインL
3を介して熱回収器15と接続されており、熱回収器15を通過した排ガスがガス供給ラインL
3を介して供給される。脱硫装置16は、ガス供給ラインL
3を介して供給される排ガス18中の硫黄酸化物を湿式で除去する装置である。脱硫装置16は、アルカリ吸収液として例えば石灰スラリー(水に石灰石粉末を溶解させた水溶液)20が用いられ、装置内の温度は例えば30〜80℃程度に調節されている。石灰スラリー20は、石灰スラリー供給装置21から脱硫装置16の塔底部22内の液溜に供給される。また、脱硫装置16は、石灰供給装置100から供給される石灰も排ガスとともに供給されることで石灰スラリーに溶けて、アルカリ吸収液の一部となる。脱硫装置16の塔底部22に供給された石灰スラリー20は、図示しない吸収液送給ラインを介して脱硫装置16内の複数のノズル23に送られ、ノズル23から塔頂部24側に向かって噴出される。脱硫装置16の塔底部22側から上昇してくる排ガス18がノズル23から噴出する石灰スラリー20と気液接触することにより、排ガス18中の硫黄酸化物及び塩化水銀が石灰スラリー20により吸収され、排ガス18から分離、除去される。石灰スラリー20により浄化された排ガス18は、浄化ガスとして脱硫装置16の塔頂部24側より排出される。
【0024】
脱硫装置16の内部において、排ガス18中の硫黄酸化物SO
xは石灰スラリー20と下記式(1)で表される反応を生じる。
CaCO
3+SO
2+0.5H
2O → CaSO
3・0.5H
2O +CO
2・・・(1)
【0025】
さらに、排ガス18中のSO
xを吸収した石灰スラリー20は、脱硫装置16の塔底部22に供給される空気(図示せず)により酸化処理され、空気と下記式(2)で表される反応を生じる。
CaSO
3・0.5H
2O+0.5O
2+1.5H
2O → CaSO
4・2H
2O・・・(2)
このようにして、排ガス18中のSO
xは、脱硫装置16において石膏CaSO
4・2H
2Oの形で捕獲される。
【0026】
また、上記のように、石灰スラリー20は、脱硫装置16の塔底部22に貯留した液を揚水したものが用いられるが、この揚水される石灰スラリー20には、脱硫装置16の稼働に伴い、反応式(1)、(2)により石膏CaSO
4・2H
2Oが混合される。以下では、この揚水される石灰石膏スラリー(石膏が混合された石灰スラリー)を吸収液とよぶ。
【0027】
脱硫に用いた吸収液(石灰石膏スラリー)30は、脱硫装置16の塔底部22から外部に排出され、吸収液ラインL
20を介して脱水機32に送られ、ここで脱水処理される。この脱水濾液33が脱硫排水となるが、水銀等の重金属やCl
-、Br
-、I
-、F
-等のハロゲンイオンが含まれている。
【0028】
脱水機32は、吸収液30中の石膏31を含む固体分と液体分の脱水濾液とを分離するものである。脱水機32としては、例えばベルトフィルタ、遠心分離機、デカンタ型遠心沈降機等が用いられる。脱硫装置16から排出された吸収液30は、脱水機32により石膏31が分離される。
【0029】
再加熱器26は、排ガス18の流れ方向において、脱硫装置16の下流側に配置されている。再加熱器26は、排ガス18を加熱する熱交換器である。再加熱器26は、脱硫装置16で硫黄酸化物が除去されて供給される排ガス18を加熱し、排ガス18の温度を上昇させる。例えば、排ガス18を90度以上に加熱する。煙突27は、排ガス18の流れ方向において、再加熱器26の下流側に配置されている。煙突27は、再加熱器26で加熱された排ガス18を系外に排出する。排ガス処理システム10は、再加熱器26で排ガスを加熱した後、煙突27から排出することで、煙突27から排出される排ガスが白煙等になることを抑制することができる。
【0030】
次に、
図2から
図4を用いて、石灰供給装置100について説明する。
図2は、排ガス処理システムの石灰供給装置の一例を示す概略構成図である。
図3Aは、石灰供給装置の石灰を供給するノズル近傍を拡大して示す模式図である。
図3Bは、石灰供給装置の石灰を供給するノズル近傍を拡大して示す正面図である。
図4は、蒸気と処理能力との関係の一例を示すグラフである。
【0031】
石灰供給装置100は、上述したようにガス供給ラインL
2に接続され、ガス供給ラインL
2に粉体の石灰を供給する。石灰供給装置100は、
図2に示すように、石灰貯留手段102と、石灰投入手段104と、石灰搬送手段106と、石灰供給手段107と、水分供給手段110と、を有する。
【0032】
石灰貯留手段102は、サイロ112と、バグフィルタ114と、エアレーション機構116と、石灰フィーダ118と、を有する。サイロ112は、石灰(炭酸カルシウム)を貯留する塔である。バグフィルタ114は、サイロ112の一部、具体的には、鉛直方向の上側の一部に設置されている。バグフィルタ114は、空気を通過させ、石灰を通過させないフィルタであり、サイロ112の内と外との間を石灰が通過しない状態としつつ、空気を流通させる。
【0033】
エアレーション機構116は、空気供給ライン116aと、2つのブロワ116bと、2つのフィルタ116cと、を有する。空気供給ライン116aは、一方の端部がサイロ112と接続され、他方の端部が2本に分岐して、それぞれがブロワ116bと接続されている。また、空気供給ライン116aは、他方の端部にフィルタ116cが配置されている。フィルタ116cは、空気供給ライン116aの他方の端部から固形分が流入することを防ぐ。空気供給ライン116aから外部に向かう方向に空気が流れることが抑制されている。2つのブロワ116bは、それぞれ空気供給ライン116aに接続されている。ブロワ116bは、空気供給ライン116aに空気を供給し、空気供給ライン116aからサイロ112内に空気を流入させる。エアレーション機構116は、ブロワ116bで空気供給ライン116aからサイロ112に空気を供給することで、サイロ112の石灰が貯留されている領域に空気を供給し、石灰を流動化させる。また、エアレーション機構116は、空気供給ライン116aを2つに分岐し、それぞれにブロワ116bを設けることで、サイロ112内に連続して空気を供給することができる。
【0034】
石灰フィーダ118は、フィーダライン120a、120bと、バルブ122a、122bと、を有する。フィーダライン120a、120bは、一方の端部がサイロ112の底部に接続され、他方の端部が石灰搬送手段106に接続されている。なお、フィーダライン120a、120bは、サイロ112の底部の別々の位置に接続されている。バルブ122aは、フィーダライン120aに設置されている。バルブ122bは、フィーダライン120bに設置されている。石灰フィーダ118は、バルブ122a、122bの開閉を制御し、バルブ122a、122bを開くことで、サイロ112から石灰搬送手段106に石灰を供給し、バルブ122a、122bを閉じることで、サイロ112から石灰搬送手段106への石灰の供給を停止する。
【0035】
次に、石灰投入手段104は、投入ライン130と、投入ライン130の端部に接続された投入口132と、を有する。投入ライン130は、一方の端部がサイロ112に接続され、他方の端部が投入口132に接続されている。投入口132は、石灰を搭載した運搬車101と接続される。石灰投入手段104は、運搬車101に搭載された石灰が投入口132から投入ライン130に流入し、サイロ112に投入される。
【0036】
次に、石灰搬送手段106は、石灰供給ライン140と、分岐ライン142a、142bと、混合部144a、144bと、ブロワ146a、146bと、フィルタ148a、148bと、を有する。石灰供給ライン140は、石灰貯留手段102から供給される石灰を石灰供給手段107に供給する。石灰供給ライン140は、一方の端部が分岐ライン142a、142bに接続され、他方の端部が石灰供給手段107に接続されている。なお、石灰供給ライン140は、他方の端部が煙道であるガス供給ラインL
2の内部に配置された石灰供給手段107と接続されているため、他方の端部側がガス供給ラインL
2に挿入されている。分岐ライン142aは、フィーダライン120aと接続されており、経路内に混合部144aと、ブロワ146aと、フィルタ148aとが配置されている。分岐ライン142aは、一方の端部が石灰供給ライン140に接続され、他方の端部にフィルタ148aが配置されている。分岐ライン142aには、フィルタ148aから石灰供給ライン140に向けて、ブロワ146a、混合部144a、フィーダライン120aとの接続部の順で配置されている。
【0037】
混合部144aは、供給される石灰と空気とを混合し、石灰を空気搬送させる。混合部144aで混合された石灰と空気とは、石灰供給ライン140に供給される。ブロワ146aは、空気を送る送風機であり、フィルタ148aから石灰供給ライン140に向けて空気を送る。フィルタ148aは、分岐ライン142aの他方の端部から固形分が流入することを防ぐ。
【0038】
分岐ライン142bは、フィーダライン120bと接続されており、経路内に混合部144bと、ブロワ146bと、フィルタ148bとが配置されている。なお、各部の配置構成は、分岐ライン142aの各部と同様であるので説明を省略する。
【0039】
石灰搬送手段106は、フィーダライン120a、120bから供給された石灰とブロワ146a、146bから供給する空気と混合部144a、144bで混合し、石灰を空気搬送させた状態で、分岐ライン142a、142bから石灰供給ライン140に供給する。石灰供給ライン140に供給された石灰172は、石灰供給手段107に供給される。
【0040】
次に、石灰供給手段107は、ノズル141を有する。ノズル141は、ガス供給ラインL
2の内部に配置され、石灰供給ライン140の端部に接続されている。ノズル141は、石灰供給ライン140から供給された石灰をガス供給ラインL
2内に噴射する。なお、石灰供給手段107は、石灰搬送手段106で石灰を搬送する力を利用して、つまりブロワ146a、146bで送られる空気の力を利用して、石灰172をガス供給ラインL
2内に噴射する。
【0041】
次に、水分供給手段110は、蒸気供給ライン150と、蒸気ノズル151と、蒸気供給部152と、を有する。蒸気供給ライン150は、蒸気174を案内する配管であり、石灰供給ライン140の外周を覆う配管である。蒸気供給ライン150は、ガス供給ラインL
2の外側から内側に延在している。蒸気供給ライン150と石灰供給ライン140とは、
図3A及び
図3Bに示すように、石灰供給ライン140が内側の管路、蒸気供給ライン150が外側の管路の二重管構造となる。蒸気ノズル151は、蒸気供給ライン150のガス供給ラインL
2の内側の端部に配置されている。蒸気供給部152は、蒸気供給ライン150のガス供給ラインL
2の外側の端部に接続されている。蒸気供給部152としては、種々の蒸気供給源を用いることができる。例えば、蒸気供給部152は、ボイラ11で過熱されて生成される蒸気を貯留する蒸気ヘッダから蒸気が供給される機構を用いることができる。
【0042】
水分供給手段110は、蒸気供給部152から蒸気供給ライン150に蒸気を供給し、蒸気ノズル151からガス供給ラインL
2の内部に蒸気174を噴射する。ここで、水分供給手段110は、
図3A及び
図3Bに示すように、蒸気ノズル151がノズル141の外周に配置されている。これにより、蒸気ノズル151は、ノズル141から噴射された石灰が存在する範囲を含む範囲に蒸気174を噴射する。
【0043】
排ガス処理システム10は、石灰供給装置100により熱回収器15の上流で排ガスの流路に石灰を供給することで、排ガスに含まれる硫黄化合物(特にSO
3)を石灰に吸着させることができる。これにより、熱回収器15で排ガスの温度が低下し、SO
3が酸露点以下の温度になった場合でも、石灰と共に排ガス中を搬送され、熱回収器15やガス供給ラインL
2、L
3にSO
3が付着することを抑制することができる。これにより、排ガス処理システム10の経路内の腐食の発生を抑制することができる。また、腐食を抑制しつつ、熱回収器15で排ガスからより多くの熱を回収することができる。
【0044】
また、供給した石灰は、脱硫装置16で石灰スラリー20となるため、供給した石灰を効率よく利用することができ、かつ、経路外に排出されることを抑制することができる。ここで、制御装置28は、排ガス中の硫黄酸化物濃度に基づいて、石灰供給装置100から供給する石灰と、石灰スラリー供給装置21から供給する石灰スラリーの量を調整することが好ましい。これにより、脱硫装置16で必要な石灰を脱硫装置16に供給しつつ、必要な石灰をガス供給ラインL
2内に供給することができる。
【0045】
石灰供給装置100は、水分供給手段110を設け、ノズル141からガス供給ラインL
2の内部に噴射された石灰が存在する領域に蒸気を噴射することで、石灰が存在する範囲の水分量を多くすることができる。これにより、ガス供給ラインL
2の内部に噴射された石灰の周囲の水分濃度を高くすることができ、石灰が排ガス中の硫黄化合物(特にSO
3)と吸着しやすい状態とすることができる。石灰にSO
3が吸着しやすい状態とすることで、石灰によるSO
3の除去性能を高くすることができる。また、石灰の除去性能を高くできることで、排ガスの硫黄酸化物濃度に対して供給する石灰の量を少なくすることができる。これにより、石灰を効率よく使用することができる。
【0046】
また、燃料が粗悪油等で硫黄濃度が高く、排ガスのSO
3が高い場合、脱硫装置16で必要な石灰の量以上に,石灰供給装置100で供給する石灰の量が増える可能性がある。これにより、吸収液30が石灰過多となり、石膏31の石膏純度が低くなる恐れがある。これに対して、石灰供給装置100は、石灰を効率よく使用することができるため,石灰供給装置100で供給する石灰の量を必要最低限に抑えることができる。
【0047】
ここで、石灰供給装置100は、水分供給手段110で蒸気を供給し、ノズル141周辺の石灰の噴射量に対する水分量をできるだけ多くすることで
図4に示すように除去性能を向上させることができる。
図4は、SO
3除去性能を縦軸とし、横軸を水分投入量/CaCO
3供給量としている。
図4に示すように、一定の水分投入量を超えるとSO
3除去性能は上がりにくくなる。また、水分量を多くすることはSO
3ガスを凝縮させやすくすることに繋がり、熱交換器(熱回収器15等)における硫酸腐食が起こる可能性が高くなるため、制限なしに水分量を増せる訳ではない。以上より、石灰供給装置100は、水分投入量に対し効果的なSO
3除去性能向上が期待できる範囲で使用する、つまり、SO
3除去性能を高く維持でき、かつ、SO
3ガスを凝縮させやすくすることを抑制できる水分投入量/CaCO
3供給量を満たす割合で水分を供給することが好ましい。
【0048】
また、本実施形態のように、水分供給手段110が水分を供給する位置をノズル141の近傍とすることで、ガス供給ラインL
2に噴射された石灰の周囲の水分濃度を効率よく高くすることができる。これにより、より少ない蒸気の量で、石灰によるSO
3除去性能をより高くすることができる。
【0049】
また、水分供給手段110は、蒸気として、スーパーヒートした蒸気、つまり過熱された蒸気(例えば大気圧で100度より高い温度の蒸気)を用いることが好ましい。これにより、水分供給手段110で供給された蒸気が、石灰搬送手段106、石灰供給手段107で噴射される石灰の詰まりの原因となることを抑制することができる。
【0050】
また、石灰供給装置の構成は上記構成に限定されない。例えば、石灰の供給経路の一部を2系統に分離したが1系統でもよいし3系統以上でもよい。また、水分供給手段は、上記実施形態のように、石灰を噴射するノズル近傍から水分を供給することが好ましいが、これに限定されず、例えば液滴噴霧ノズルによる水分供給手段でもよい。
【0051】
図5は、石灰供給装置の他の例を示す概略構成図である。なお、
図5に示す石灰供給装置100aは、水分供給手段以外は、石灰供給装置100と同様の構成である。石灰供給装置100と同様の構成には、同様の符号を付して説明を省略し、石灰供給装置100aに特有の点を重点的に説明する。石灰供給装置100aは、
図5に示すように、石灰貯留手段102と、石灰投入手段104と、石灰搬送手段106と、石灰供給手段107と、水分供給手段210と、を有する。
【0052】
水分供給手段210は、蒸気供給ライン250と、蒸気ノズル251と、蒸気供給部252と、を有する。蒸気供給ライン250は、蒸気を案内する配管であり、排ガス170の流れ方向に置いて、ノズル141よりも上流側に配置されている。蒸気供給ライン250は、ガス供給ラインL
2の外側から内側に延在している。蒸気ノズル251は、蒸気供給ライン250のガス供給ラインL
2の内側の端部に配置されている。水分供給手段210は、蒸気供給ライン250のガス供給ラインL
2の内側の端部に複数の蒸気ノズル251が配置されている。蒸気ノズル251は、蒸気供給ライン250から供給された蒸気をガス供給ラインL
2に噴射する。蒸気ノズル251は、排ガス170の流れ方向に置いて、ノズル141よりも上流側に配置され、ノズル141よりも上流側で蒸気を噴射する。蒸気供給部252は、蒸気供給ライン250のガス供給ラインL
2の外側の端部に接続されている。
【0053】
石灰供給装置100a及び水分供給手段210は、以上のような構成であり、ノズル141よりも上流側で蒸気を噴射することで、ノズル141を通過する排ガスの水分量を高くすることができる。このように、石灰が噴射されるノズル141の近傍以外から水分を供給する場合も、ノズル141を通過する排ガスの水分量を高くすることで、石灰によるSO
3の除去性能を高くすることができる。
図4に示すように、一定の水分投入量を超えるとSO
3除去性能は上がりにくくなる。また、水分量を多くすることはSO
3ガスを凝縮させやすくすることに繋がり、熱交換器(熱回収器15等)における硫酸腐食が起こる可能性が高くなるため、制限なしに水分量を増せる訳ではない。以上より、石灰供給装置100は、水分投入量に対し効果的なSO
3除去性能向上が期待できる範囲で使用する、つまり、SO
3除去性能を高く維持でき、かつ、SO
3ガスを凝縮させやすくすることを抑制できる水分投入量/CaCO
3供給量を満たす割合で水分を供給することが好ましい。さらに、蒸気噴射により局所的にガス中水分量が高くなる箇所と,噴射された石灰が充満する箇所が一致するように蒸気噴射と石灰噴射を調整することにより、更に効果的なSO
3除去性能向上が期待できる。
【0054】
また、上記実施形態では、水分として、蒸気を供給したが、液体の水を供給してもよい。なお液体の水を供給する場合、ノズル141の通過時に排ガスの熱で蒸発した状態となる位置で水を噴霧することが好ましい。
【0055】
図6は、石灰供給装置の他の例を示す概略構成図である。なお、
図6に示す石灰供給装置100bは、水分供給手段以外は、石灰供給装置100と同様の構成である。石灰供給装置100と同様の構成には、同様の符号を付して説明を省略し、石灰供給装置100bに特有の点を重点的に説明する。石灰供給装置100bは、
図6に示すように、石灰貯留手段102と、石灰投入手段104と、石灰搬送手段106と、石灰供給手段107と、水分供給手段310と、を有する。
【0056】
水分供給手段310は、蒸気供給ライン350と、蒸気供給部352と、を有する。蒸気供給ライン350は、蒸気を案内する配管であり、石灰供給ライン140に接続されている。蒸気供給部252は、蒸気供給ライン250に接続されている。
【0057】
石灰供給装置100b及び水分供給主手段310は、以上のような構成であり、水分供給手段310が、石灰が流通している石灰供給ライン140内に蒸気を供給している。これにより、石灰供給装置100b、ノズル141から石灰と共に蒸気が噴射される。このように、ノズル141から石灰と共に蒸気を噴射することでも、ノズル141から噴射された石灰が存在する範囲の水分量を高くすることができ、石灰によるSO
3の除去性能を高くすることができる。
【0058】
なお、石灰供給装置100b及び水分供給主手段310は、水分として蒸気、より好ましくは過熱された蒸気を用いることで、石灰供給ライン140内で石灰が詰まることを抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態の排ガス処理システム10は、石灰供給装置100が集塵機14と熱回収器15との間に石灰を供給したが、石灰供給装置100が石灰を供給する位置がこれに限定されない。石灰供給装置100は、排ガス18の流れ方向において、脱硫装置16よりも上流側でかつ熱交換器のいずれか1つよりも上流側の煙道に接続し、石灰を供給すればよい。本実施形態の排ガス処理システム10は、ガス供給ラインL
1の脱硫装置12とエアヒータ13との間に石灰供給装置100を接続し、石灰供給装置100によってエアヒータ13の上流側から石灰を供給するようにしてもよい。石灰供給装置100は、脱硫装置16よりも上流側でかつ熱交換器のいずれか1つよりも上流側の煙道に接続し、石灰を供給することで、熱交換器の上流側から石灰を供給することができ、熱交換器の伝熱管の腐食を好適に抑制することができる。
【0060】
また、排ガス処理システム10は、ガス供給ラインL
2の石灰供給装置100との接続部よりも上流側であるガス供給ラインL
1に集塵機14を設けたが必ずしも設けなくてもよい。また、排ガス処理システム10は、脱硝装置12とエアヒータ13との間に石灰供給装置100が石灰を供給する場合、集塵機14を設けないことで、石灰供給装置100から供給した石灰が集塵機14で捕集され、脱硫装置16に供給される石灰が低減することを抑制でき、脱硫装置16に供給する石灰の量を好適に調整することができる。