特許第6351292号(P6351292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351292
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】マーキングガイドおよび骨補填材セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20180625BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20180625BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61B17/15
   A61B17/56
   A61F2/28
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-29022(P2014-29022)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-150344(P2015-150344A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 好昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 寧
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−154865(JP,A)
【文献】 特表2011−514189(JP,A)
【文献】 特開昭64−008965(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/165558(WO,A1)
【文献】 特開2003−038510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/56−17/92
A61F 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に骨補填材を補填する骨欠損部を形成するために、前記骨の前記骨欠損部を形成すべき位置に宛てがわれて用いられるマーキングガイドであって、
当該マーキングガイドの全体形状が円環状をなす枠体で構成され、
予め取得された前記骨の三次元データに基づいて作製された、前記骨の外表面の形状に合致した、該外表面に宛てがわれる内表面を有し、
該内表面の外周または内周は、前記骨の前記骨欠損部を形成すべき位置に、当該マーキングガイドを宛てがうことで、マーキングを付す際のガイドとして用いられることを特徴とするマーキングガイド。
【請求項2】
前記外表面に、当該マーキングガイドを前記骨に宛がう方向を決定するマーカーが設けられている請求項に記載のマーキングガイド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマーキングガイドと、前記骨補填材とを備えていることを特徴とする骨補填材セット。
【請求項4】
前記骨補填材は、その側面が、前記骨補填材の内表面側から外表面側に突出するテーパ面で構成される請求項に記載の骨補填材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキングガイドおよび骨補填材、特に、骨補填材を補填する位置を決定するマーキングガイド、ならびに、かかるマーキングガイドおよびマーキングガイドにより決定された位置に補填される骨補填材を備える骨補填材セットに関する。
【背景技術】
【0002】
悪性骨腫瘍、悪性脳腫瘍等の手術により、頭蓋骨、頬骨等を欠損させる必要がある場合、医療現場では、骨補填材を用いて骨欠損部を補填する治療(手術)が行なわれる(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特に、悪性骨腫瘍の手術では、骨を欠損させる際に生じた自家骨自体が腫瘍細胞を含むため、自家骨を骨欠損部に戻すことができない。そのため、かかる骨補填材を用いた治療が必須となる。
【0004】
また、近年、患者への負担軽減を目的に、個々の患者に応じた医療を行うカスタムメード医療が着目されており、上記のような骨補填材を用いた治療においても、治療時に形成される骨欠損部の形状に応じた骨補填材、すなわち悪性骨腫瘍の位置における健常骨の形状に合わせた骨補填材を予め用意しておき、この骨補填材を手術時に補填する同時再建手術が行われている。
【0005】
このような同時再建手術での骨補填材の骨欠損部への補填は、例えば、以下のようにして行われる。なお、以下では、頭蓋骨の骨欠損部に骨補填材を補填する場合を一例に説明する。
【0006】
すなわち、まず、患者の頭蓋骨の三次元データをCTスキャナ、MRIスキャナのような画像診断装置を用いて取得し、この三次元データに基づいて、図3に示すように、石膏模型100を作製する。そして、悪性腫瘍の腫瘍位置(図3の点線で囲まれた領域)102を特定した後、頭蓋骨から切除すべき切断位置101(図3の実線で囲まれた領域)をマーキングにより決定する。
【0007】
次に、この石膏模型100に形成されたマーキング、すなわち切断位置101の形状に基づいて骨補填材を作製する。
【0008】
なお、この骨欠損部への骨補填材の補填では、補填された骨補填材の脳側への脱落を防止することを目的に、頭蓋骨の骨が切断された切断面(側面)が、頭皮側から脳側に突出するテーパ面で構成されるように骨欠損部が形成され、さらに、骨補填材の側面が、内表面の径が外表面の径よりも小さくなるように、内表面(脳)側から外表面(頭皮)側に突出するテーパ面で構成されるように骨補填材が形成される。
【0009】
次に、施術者は、患者の頭部を開頭し、石膏模型100にマーキングした位置に対応する頭蓋骨の箇所を切断して、悪性骨腫瘍を取り除くことで切断位置101の形状に対応した骨欠損部を形成し、その後、予め用意した骨補填材をこの骨欠損部に補填する。そして、開頭した部分を閉じる。
【0010】
以上のような工程を経ることで、頭蓋骨に形成された骨欠損部に骨補填材を補填する同時再建手術が実施されるが、施術者による、頭蓋骨の切断する箇所の位置決めは、補填すべき骨補填材を頭蓋骨に宛てがい、かかる骨補填材の内表面の外周をマーキングガイド(定規)として用いて、頭蓋骨の表面にマーキングを付すことで行うことが考えられる。
【0011】
しかしながら、かかる方法では、頭蓋骨に骨補填材を宛てがった後、骨補填材を骨欠損部に補填するまでの間、すなわち、骨を切断して骨欠損部を形成するまでの間、一度、頭蓋骨に宛てがわれた骨補填材を患者の頭蓋骨から離脱させる必要がある。そのため、骨補填材を骨欠損部に補填する際には、汚染されたおそれがある骨補填材を、再度、滅菌する必要性が生じるため、時間と手間を要するという問題があった。
【0012】
また、上記の通り、骨補填材では、その側面は、内表面(脳)側から外表面(頭皮)側に突出するテーパ面で構成されるため、内表面の径が外表面の径よりも小さくなっている。したがって、骨補填材の内表面の外周をマーキングガイドとして用いると、頭蓋骨の表面に形成されるマーキングは、骨補填材の外表面の外周の形状に対応すべきであるところ、骨補填材の内表面の外周の形状に対応して形成されることから、実際に形成すべき骨欠損部よりも小さくなる。したがって、骨補填材を補填し得る骨欠損部を形成するには、マーキングに基づいて骨を切断した後に切断部位をさらに大きくする微調整を行う必要がある。そのため、患者の負担が増大するという問題があった。
【0013】
さらに、骨補填材の内表面は、石膏模型100から骨補填材を作製する際に、頭蓋骨の内表面の形状に対応するように形成される。そのため、頭蓋骨に骨補填材を宛てがった際には、骨補填材が宛てがわれる頭蓋骨の外表面と、骨補填材の内表面との形状(曲率)が合致しないことから、骨補填材の縁部において、頭蓋骨の外表面と骨補填材の内表面との間に、図9に示すような間隙が生じる。特に頭蓋骨の外表面が骨腫瘍によって膨隆している場合は、頭蓋骨の外表面と骨補填材の内表面の形状が著しく異なるので、前述の間隙がより大きく生じる。したがって、骨補填材の内表面の外周をマーキングガイドとして用いようとしても、骨補填材がガタつき、正確に頭部の表面に正確にマーキングすることができない。したがって、かかる観点からも、マーキングに基づいて骨を切断した後に切断部位をさらに微調整を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−38510号公報
【特許文献2】特開2003−153925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、骨補填材が補填される骨欠損部の形状を骨の表面にマーキングすることができるマーキングガイド、かかるマーキングガイドを用いて、骨に形成された骨欠損部に時間と手間を要することなく低侵襲で、骨補填材を補填することができる骨補填材セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) 骨に骨補填材を補填する骨欠損部を形成するために、前記骨の前記骨欠損部を形成すべき位置に宛てがわれて用いられるマーキングガイドであって、
当該マーキングガイドの全体形状が円環状をなす枠体で構成され、
予め取得された前記骨の三次元データに基づいて作製された、前記骨の外表面の形状に合致した、該外表面に宛てがわれる内表面を有し、
該内表面の外周または内周は、前記骨の前記骨欠損部を形成すべき位置に、当該マーキングガイドを宛てがうことで、マーキングを付す際のガイドとして用いられることを特徴とするマーキングガイド。
【0017】
これにより、骨補填材が補填される骨欠損部の形状を骨の表面にマーキングすることができる。
【0028】
前記外表面に、当該マーキングガイドを前記骨に宛がう方向を決定するマーカーが設けられている上記(1)に記載のマーキングガイド。
これにより、マーキングガイドを骨に宛てがう操作をより容易に行うことができる。
【0029】
) 上記(1)または(2)に記載のマーキングガイドと、前記骨補填材とを備えていることを特徴とする骨補填材セット。
【0030】
これにより、骨に形成された骨欠損部に時間と手間を要することなく低侵襲で、骨補填材を補填することができる、骨補填材とマーキングガイドとを備える骨補填材セットとすることができる。
【0031】
) 前記骨補填材は、その側面が、前記骨補填材の内表面側から外表面側に突出するテーパ面で構成される上記()に記載の骨補填材セット。
【0032】
これにより、骨補填材が、補填された骨欠損部から脱落するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、マーキングガイドを用いて、骨欠損部を形成すべき骨の位置に骨補填材の形状に対応して確実にマーキングすることができる。したがって、このマーキングに対応して骨を切断することで、骨補填材の形状に対応した骨欠損部を形成することができるため、骨欠損部への骨補填材の補填を時間と手間を要することなく、低侵襲で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の骨補填材セットの第1実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の骨補填材セットの第1実施形態を示す平面図である。
図3図1、2に示す骨補填材セットを製造する製造方法を説明するための斜視図である。
図4図1、2に示す骨補填材セットを製造する製造方法を説明するための斜視図である。
図5図1、2に示す骨補填材セットを用いて、骨に形成された骨欠損部に、骨補填材を補填する補填方法を説明するための図である。
図6】本発明の骨補填材セットの第2実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
図7】本発明の骨補填材セットの第3実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
図8】本発明の骨補填材セットの第4実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
図9】骨補填材をマーキングガイドとして用いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のマーキングガイドおよび骨補填材セットを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0036】
なお、以下では、頭蓋骨に形成された骨欠損部に骨補填材を補填する場合を一例に説明する。
【0037】
<骨補填材セット>
図1、2は、本発明の骨補填材セットの第1実施形態を示す図(図1は骨補填材とマーキングガイドとを個別に示す斜視図、図2は平面図)である。なお、以下の説明では、図1、2中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0038】
骨補填材セット1は、骨の一部の切除による骨欠損部の形成と、この骨欠損部に対する骨補填材2の補填とを1度の手術時に同時に行う同時再建手術に用いられるものであり、骨に形成された骨欠損部に補填される骨補填材2と、骨の骨欠損部を形成すべき位置にマーキングを付す際に用いられるマーキングガイド3とを有する。
【0039】
<<骨補填材>>
骨補填材(スペーサ)2は、頭蓋骨(骨)に形成された骨欠損部に補填されるものであり、本実施形態では、同時再建手術の実施前に、予め取得された骨の三次元データに基づいて、個々の患者の頭蓋骨において、骨欠損部を形成すべき位置の骨に対応(合致)した形状をなしている。
【0040】
すなわち、骨補填材2を骨欠損部に補填した際に脳側に位置する内表面21は、骨欠損部を形成すべき位置の頭蓋骨における内表面の形状に対応した湾曲凹面を構成しており、頭皮側に位置する外表面22は、骨欠損部を形成すべき位置(頭蓋骨の切断すべき位置)の頭蓋骨における外表面の形状に対応した湾曲凸面を構成している。
【0041】
なお、これら内表面21および外表面22は、それぞれ、前記骨の三次元データに基づいて形成される。また、骨補填材2の補填を悪性骨腫瘍の患者に適用したときには、患者によっては頭蓋骨に膨隆が生じ、健常時の骨の形状とは異なった形状をなしていることがある。そのため、このような場合には、この膨隆の部分の大きさを考慮して、健常時の骨の形状となるように、骨補填材2の内表面21および外表面22を形成するのが好ましい。
【0042】
また、骨補填材2の側面23は、内表面21の径が外表面22の径よりも小さくなるように、内表面21側から外表面22側に突出するテーパ面で構成される。これは、骨補填材2の骨欠損部への補填では、骨補填材2の脳側への脱落を防止することを目的に、頭蓋骨が切断された切断面(側面)が、頭皮側から脳側に突出するテーパ面で構成されるように骨欠損部が形成されることによる。
【0043】
このような骨補填材2は、セラミックス材料を主材料として構成されたものが好ましい。セラミックス材料は加工性に優れているため、骨補填材2の製造工程において、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整することが容易である。
【0044】
セラミックス材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、骨補填材2の構成材料として特に好ましい。
【0045】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0046】
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、骨補填材2自体と切断面との癒合を期待することもできる。
【0047】
また、骨補填材2は、緻密体であっても、多孔質体であってもよいが、多孔質体であるのが好ましい。骨補填材2を多孔質体で構成することにより、骨補填材2内への骨芽細胞の侵入を可能とし、骨補填材2内において骨新生を行うことができ、特に、骨補填材2を、ハイドロキシアパタイトを主材料として構成する場合、骨補填材2自体と切断面との確実な癒合を期待することができる。
【0048】
なお、骨補填材2の構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0049】
<<マーキングガイド>>
(第1実施形態)
マーキングガイド3は、頭蓋骨に骨補填材2を補填する骨欠損部を形成するために、頭蓋骨に宛てがわれて用いられるものであり、骨欠損部を形成すべき位置にマーキングを付すためのガイド(定規)として使用される。
【0050】
このマーキングガイド3は、本実施形態では、同時再建手術の実施前に、予め取得された骨の三次元データに基づいて作製され、全体形状が円盤状をなす板体で構成され、脳側に位置する内表面31がマーキングガイド3を患者の頭蓋骨の骨欠損部を形成すべき位置に宛てがった際に、頭蓋骨における外表面の形状に対応(合致)した湾曲凹面を構成している。また、頭皮側に位置する外表面32が湾曲凸面を構成している。このように、本実施形態では、内表面31が頭蓋骨の外表面の形状に対応した形状を有しているため、内表面31の外周が外表面22にマーキングを付すためのガイドとして機能する。
【0051】
また、マーキングガイド3の側面33は、内表面31の径が外表面32の径よりも小さくなるように、内表面31側から外表面32側に突出するテーパ面で構成されている。
【0052】
このようなマーキングガイド3の板厚は、特に限定されないが、0.5〜5mm程度であることが好ましく、1〜3mm程度であることがより好ましい。これにより、十分に強度を保持しつつ、マーキングガイド3を頭蓋骨に宛てがう操作を容易に行うことができる。
【0053】
マーキングガイド3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス材料、金属材料および樹脂材料が挙げられ、マーキングガイド3は、これらのうちの1種を主材料として構成されるものであっても良いし、これらのうち2種以上を含有する複合材料を主材料として構成されるものであっても良い。
【0054】
セラミックス材料としては、例えば、骨補填材2の構成材料として挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0055】
また、金属材料としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、SUS201、SUS301、SUS304、SUS316、SUS420、SUS403のようなステンレス鋼、チタンまたはチタン合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
さらに、樹脂材料としては、ポリカーボネイト(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなメタクリル樹脂、ABS,PLA,ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、塩ビ、エポキシ樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリサルフォン(PSF)(Polysulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(Polyether ether ketone)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
なお、骨補填材2およびマーキングガイド3は、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌、オートクレーブ滅菌(湿熱滅菌)、γ線滅菌等の滅菌処理が可能な材料で構成されていることが好ましい。これにより、マーキングガイド3に対して滅菌処理を施した場合に、マーキングガイド3(マーキングガイド3の構成材料)が変質、劣化することが防止される。
【0058】
また、本実施形態では、マーキングガイド3の側面33を、内表面31側から外表面32側に突出するテーパ面で構成したが、内表面31の外周が外表面22にマーキングを付すためのガイドとして機能すればよく、側面33は、テーパ面で構成されていなくてもよいし、外表面32側から内表面31側に突出するテーパ面で構成されていてもよい。
【0059】
<骨補填材セットの製造方法>
かかる構成の骨補填材セット1、すなわち骨補填材2およびマーキングガイド3は、同時再建手術に用い得るように、例えば、以下のようにして製造される。
【0060】
図3、4は、図1、2に示す骨補填材セットを製造する製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図3、4中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0061】
[1A]まず、患者の頭蓋骨の三次元データを取得する。
この三次元データは、例えば、CTスキャナ、MRIスキャナのような画像診断装置を用いることで正確かつ容易に取得することができる。
【0062】
[2A]次に、得られた三次元データに基づいて、図3に示すような石膏模型100を作製する。
【0063】
そして、施術者は、三次元データ等を用いて、悪性腫瘍が存在する腫瘍位置(図3の点線で囲まれた領域)102を特定し、さらに、頭蓋骨から切除すべき切断位置(図3の実線で囲まれた領域)101をマーキングにより決定する。
【0064】
なお、この切断位置101は、通常、腫瘍位置102よりも15mm程度大きく設定される。
【0065】
[3A]次に、切断位置101に沿って、すなわち図3の実線に沿って、石膏模型100を切断して、石膏模型100に欠損部位105を形成する。
【0066】
これにより、石膏模型100が切り取られた部位で構成される、図3の実線の形状に対応した、切除部位103を得ることができる(図4参照。)。
【0067】
この際、石膏模型100の切断された切断面(側面)104が、石膏模型100の外表面側から内表面側に突出するテーパ面で構成されるようにする。そのため、切除部位103の側面106は、内表面側から外表面側に突出するテーパ面で構成される。
【0068】
なお、このようにして石膏模型100から得られる切除部位103は、患者の頭蓋骨の三次元データに基づいて得られているため、同時再建手術の際に形成される骨欠損部に補填し得る形状をなしている。
【0069】
[4A]次に、石膏模型100から得られた切除部位103に基づいて、骨補填材2およびマーキングガイド3を作製する。
【0070】
この際、切除部位103は、同時再建手術の際に形成される骨欠損部に補填し得る形状をなしており、作製すべき骨補填材2の形状と同様の形状をなしている。
【0071】
そのため、骨補填材2は、この切除部位103の形状に合致するように形成される。これにより、骨補填材2を骨欠損部に補填した際に脳側に位置する内表面21を、骨欠損部を形成すべき位置の頭蓋骨における内表面の形状に対応した湾曲凹面で構成することができ、頭皮側に位置する外表面22を、骨欠損部を形成すべき位置の頭蓋骨における外表面の形状に対応した湾曲凸面で構成することができる。また、骨補填材2の側面23を、内表面21側から外表面22側に突出するテーパ面で構成することができる。
【0072】
なお、前述のとおり、骨補填材2の補填を悪性骨腫瘍の患者に適用したときには、患者によっては頭蓋骨に膨隆が生じ、健常時の骨の形状とは異なった形状をなしていることがある。そのため、このような場合には、骨補填材2を、切除部位103の形状に一致させることなく、この膨隆の部分の大きさを考慮して、健常時の骨の形状となるように、形成するのが好ましい。
【0073】
また、マーキングガイド3は、内表面31が切除部位103の外表面の形状に合致するように形成される。これにより、マーキングガイド3を患者の頭蓋骨に宛てがった際に、内表面31を頭蓋骨における外表面の形状に対応した湾曲凹面で構成することができる。よって、患者の頭蓋骨に宛てがう位置に、悪性骨腫瘍に起因する膨隆が生じていたとしても、患者の頭蓋骨とマーキングガイド3との間に間隙が生じることなく、マーキングガイド3を宛てがうことができる。
【0074】
そして、骨補填材2およびマーキングガイド3に、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌、オートクレーブ滅菌(湿熱滅菌)、γ線滅菌等の滅菌処理を施す。これにより、同時再建手術における滅菌性が確保される。
【0075】
以上のようにして、個々の患者の頭蓋骨において、骨欠損部を形成すべき位置の骨の形状に対応した形状をなしている骨補填材2と、マーキングガイド3とを備える骨補填材セット1が同時再建手術を施す前に製造される。
【0076】
<骨補填材の補填方法>
上述した骨補填材セット1、すなわち骨補填材2およびマーキングガイド3を用いて、例えば、以下のようにして、患者の頭蓋骨に形成した骨欠損部に、骨補填材2が補填される。すなわち、患者の頭蓋骨に対して、以下のようにして、骨補填材セット1を用いた同時再建手術が施される。
【0077】
図5は、図1、2に示す骨補填材セットを用いて、骨に形成された骨欠損部に、骨補填材を補填する補填方法を説明するための図(図中、左側は平面図、右側は断面図を示す)である。なお、以下の説明では、図5中、左側における紙面手前を「上」、紙面奥側を「下」といい、右側における上側を「上」、下側を「下」という。
【0078】
[1B]まず、施術者は、患者の頭皮を切開し、頭蓋骨10の切断すべき切断位置11およびその近傍を露出させ、その後、石膏模型100にマーキングした切断位置101に対応する頭蓋骨の箇所、すなわち、頭蓋骨10の切断位置11にマーキング12を付す。
【0079】
この頭蓋骨10のマーキング12の形成にマーキングガイド3が用いられ、具体的には、石膏模型100にマーキングした切断位置101を参考に、マーキングガイド3を、図5(a)に示すように、頭蓋骨10の切断位置11に宛てがい、このマーキングガイド3の内表面31の外周をガイド(定規)として用いて、頭蓋骨10の切断位置11にマーキング12を付すことにより行われる(図5(b)参照。)。
【0080】
ここで、頭蓋骨10に付されたマーキング12は、マーキングガイド3を用いて形成され、そして、マーキングガイド3の内表面31は、マーキングガイド3を切断位置11に宛てがった際に、頭蓋骨における外表面の形状に対応(合致)した湾曲凹面を構成している。そのため、マーキングガイド3の内表面31と頭蓋骨10の切断位置11における外表面13との形状(曲率)が合致することから、マーキングガイド3の内表面31を、頭蓋骨10の切断位置11における外表面13に、ズレなく重ね合わせることができる。よって、マーキングガイド3の縁部において、頭蓋骨10の外表面13とマーキングガイド3の内表面31との間に、間隙が生じるのを確実に防止することができる(図5(a)参照。)。したがって、マーキングガイド3と頭蓋骨10との間で、ガタつきが生じることなく、マーキングガイド3の内表面31の外周をガイドとして用いることができ、その結果、マーキングガイド3を用いて、頭蓋骨の切断位置11に優れた精度でマーキング12を付すことができる。すなわち、骨補填材2を補填する位置を優れた精度で決定することができる。
【0081】
[2B]次に、マーキング12に基づいて、頭蓋骨10を切断して、悪性骨腫瘍を取り除くことで切断位置11の形状に対応した骨欠損部14を形成する(図5(c)参照。)。
【0082】
この際、骨欠損部14における切断面(側面)15が頭皮側(上側)から脳側(下側)に突出するテーパ面で構成されるように、骨欠損部14を形成する。
【0083】
前述のとおり、前記工程[1B]において頭蓋骨10に付されたマーキング12は、マーキングガイド3の内表面31と頭蓋骨10の切断位置11における外表面13との形状が合致している。そのため、骨欠損部14における切断面15が、頭皮側から脳側に突出するテーパ面で構成されるように骨欠損部14を形成することで、骨補填材2の形状に対応した骨欠損部14を確実に形成することができることから、患者の負担を低減させることができる。
【0084】
[3B]次に、頭蓋骨10の切断面15と、骨補填材2の側面とを突き合わせるようにして、骨補填材2を骨欠損部14に嵌め込むことで、骨欠損部14に骨補填材2を補填し(図5(d)参照。)、その後、切開した頭皮を閉じる。
【0085】
この骨欠損部14は、前記工程[1B]、[2B]を経て形成されたものであり、骨補填材2の形状に合致したものであるため、骨欠損部14に骨補填材2を、ズレ等を生じることなく、確実に補填することができる。
【0086】
また、骨補填材2は、本工程[3B]において、初めて、頭蓋骨10に接触されることになるため、前記背景技術で説明したような、骨補填材をマーキングガイドとして用いる方法とは異なり、骨補填材を、再度、滅菌する必要がない。したがって、手術中における時間と手間を低減することが可能となる。
【0087】
以上のような工程を経ることで、頭蓋骨10への骨欠損部14の形成と、骨欠損部14に対する骨補填材2の補填とを同時に施す同時再建手術が行われる。
【0088】
なお、前述のとおり、骨補填材セット1を用いた同時再建手術が適用される悪性骨腫瘍では、腫瘍部位、すなわち、骨欠損部を形成すべき位置(切断位置11)に膨隆が生じていることがある。そのため、腫瘍部位にこのような膨隆が生じている場合には、骨欠損部14に補填する骨補填材2を、健常時の形状が復元されるように、膨隆した個所を除いた状態で作製することがより好ましい。
【0089】
また、このような膨隆が腫瘍部位に生じることを考慮して、骨補填材セット1が備える骨補填材2およびマーキングガイド3のうち、マーキングガイド3の構成を、以下に示すような第2実施形態および第3実施形態のような構成のものとしてもよい。
【0090】
(第2実施形態)
まず、本発明の骨補填材セットの第2実施形態が備えるマーキングガイドについて説明する。
【0091】
図6は、本発明の骨補填材セットの第2実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
【0092】
以下、第2実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドについて、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0093】
第2実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3では、マーキングガイド3の形状が異なること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0094】
すなわち、本実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3は、図6に示すように、その全体形状が円環状をなす枠体で構成されており、膨隆が生じた腫瘍部位との接触が回避されるように、貫通孔35が形成されていること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0095】
このようなマーキングガイド3によっても、マーキングガイド3の内表面31の外周をガイド(定規)として用いて、頭蓋骨10の切断位置11にマーキング12を付すことができる。
【0096】
よって、かかる構成のマーキングガイド3を備える骨補填材セット1を用いても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0097】
(第3実施形態)
次に、本発明の骨補填材セットの第3実施形態が備えるマーキングガイドについて説明する。
【0098】
図7は、本発明の骨補填材セットの第3実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
【0099】
以下、第3実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドについて、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0100】
第3実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3では、マーキングガイド3の形状が異なること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0101】
すなわち、本実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3は、図7に示すように、その全体形状が円環状をなす枠体で構成され、さらに、この枠体の内表面31の内周が頭蓋骨10の切断位置11における外表面の形状に合致させて形成されており、膨隆が生じた腫瘍部位との接触が回避させるとともに、枠体の内表面31の内周をガイドとして用い得るように、貫通孔36が形成されていること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0102】
このようなマーキングガイド3によっても、マーキングガイド3の内表面31の内周をガイド(定規)として用いることで、頭蓋骨10の切断位置11にマーキング12を付すことができる。
【0103】
よって、かかる構成のマーキングガイド3を備える骨補填材セット1を用いても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0104】
また、マーキングガイド3を頭蓋骨10に宛てがう操作を容易に行うこと、すなわち、マーキングガイド3を頭蓋骨10に宛てがう方向を容易に知り得るように、骨補填材セット1が備える骨補填材2およびマーキングガイド3のうち、マーキングガイド3の構成を、以下に示すような第4実施形態のような構成のものであってもよい。
【0105】
(第4実施形態)
次に、本発明の骨補填材セットの第4実施形態が備えるマーキングガイドについて説明する。
【0106】
図8は、本発明の骨補填材セットの第4実施形態が備えるマーキングガイドを示す平面図である。
【0107】
以下、第4実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドについて、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイドとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0108】
第4実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3では、マーキングガイド3の外表面32の構成が異なること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0109】
すなわち、本実施形態の骨補填材セット1が備えるマーキングガイド3は、図8に示すように、その外表面32に、マーキングガイド3を患者の頭蓋骨10に宛てがった際に、正中線に対して平行となる方向に沿って、複数(本実施形態では3つ)のマーカー38が点状をなして並んで形成されていること以外は、前記第1実施形態の骨補填材セットが備えるマーキングガイド3と同様の構成となっている。
【0110】
このようなマーキングガイド3とすることで、マーキングガイド3を患者の頭蓋骨10に宛てがう際に、複数のマーカー38が形成されている方向が、正中線に対して平行となるようにすることで、マーキングガイド3を頭蓋骨10に宛てがう方向を容易に知り得ることができる。すなわち、複数のマーカー38を、マーキングガイド3を頭蓋骨10に宛がう方向を決定する目印として用いることができるため、マーキングガイド3を頭蓋骨10に宛てがう操作をより容易に行うことができる。
【0111】
よって、かかる構成のマーキングガイド3を備える骨補填材セット1を用いても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0112】
なお、マーカー38は、マーキングガイド3を、頭蓋骨に宛てがう方向を決定し得るものであれば、本実施形態のように、正中線に対して平行となる方向に沿って、複数のものが形成されている必要はなく、例えば、前記宛てがう方向を示す矢印が少なくとも1つ設けられているような構成のものであってもよい。
【0113】
以上、本発明のマーキングガイドおよび骨補填材セットを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0114】
例えば、本発明では、前記第1〜第4実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0115】
また、本発明の骨補填材セットを用いて骨補填材が補填される骨は、上記頭蓋骨に限らず、頬骨、顎骨等の他の骨にも適用することができる。
【0116】
さらに、各実施形態の骨補填材セットにおいて、骨補填材とマーキングガイドとの取り違いを防止することを目的に、マーキングガイドを骨補填材と異なる色のものとしてもよい他、マーキングガイドの外表面の少なくとも一部を平坦面で構成してもよいし、マーキングガイドの外表面に取手を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 骨補填材セット
2 骨補填材
3 マーキングガイド
10 頭蓋骨
11 切断位置
12 マーキング
13 外表面
14 骨欠損部
15 切断面
21 内表面
22 外表面
23 側面
31 内表面
32 外表面
33 側面
35 貫通孔
36 貫通孔
38 マーカー
100 石膏模型
101 切断位置
102 腫瘍位置
103 切除部位
104 切断面
105 欠損部位
106 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9