(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部であって、奥壁、上壁、下壁、及び一対の側壁を有し前記上壁の一端部、前記下壁の一端部、及び前記側壁の一端部によって前記容器本体開口部が形成された壁部を備え、前記上壁の内面、前記下壁の内面、前記側壁の内面、及び前記奥壁の内面によって、複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と、
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり、前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体とを備え、
前記基板収納空間と前記容器本体の外部の空間とを連通可能とする複数の通気路を利用して容器内部の気体を置換できる基板収納容器であって、
前記通気路は、外部の空間から容器内部に気体を供給するために用いられる給気孔あるいは容器内部の空間から外部の空間に気体を放出するために用いられる排気孔を有し、
前記奥壁の内面の左右方向の中央部あるいはその近傍で前記下壁から前記上壁の間に形成され、前記給気孔から供給された気体を前記容器本体の前記奥壁から前記容器本体開口部の方向に流通させる気体噴出制御機構を有し、
前記気体噴出制御機構は、
一端に開口部を有し中空筒状で前記奥壁の方向に気体を放出する1つ又は複数の開口を有する管状気体流通部と、
前記給気孔と前記管状気体流通部の一端を気体が流通可能に接続する接続部を有し、
前記管状気体流通部は、前記奥壁の内面の近傍に2つ対向して設けられ、
前記管状気体流通部の開口は、前記奥壁の左右方向の中央部に向けられ、
前記給気孔に供給された気体は、前記接続部を通じて前記管状気体流通部に供給され、その後前記管状気体流通部の前記開口から放出され、さらに前記容器本体の前記奥壁に当った後に前記容器本体開口部の方向に気体が流通することを特徴とする基板収納容器。
前記奥壁側に配置された複数の前記給気孔のそれぞれに対して一組の前記管状気体流通部と前記接続部をそれぞれ接続し、複数の前記管状気体流通部からの気体を前記奥壁の方向に同時に放出することを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態による基板収納容器1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1に基板Wが収納された様子を示す分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2を示す下方斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、第二側壁26及び上壁23を省略した上方斜視図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、上壁23を省略した上方平面図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の気体噴出制御機構101の、
図4のA−A線に沿った断面図である。
【0020】
ここで、説明の便宜上、後述の容器本体2から蓋体3へ向かう方向(
図1における右上から左下へ向かう方向)を前方向と定義し、その反対の方向を後方向と定義し、これらをあわせて前後方向と定義する。また、後述の下壁24から上壁23へと向かう方向(
図1における上方向)を上方向と定義し、その反対の方向を下方向と定義し、これらをあわせて上下方向と定義する。また、後述する第2側壁26から第1側壁25へと向かう方向(
図1における右下から左上へ向かう方向)を左方向と定義し、その反対の方向を右方向と定義し、これらをあわせて左右方向と定義する。
【0021】
また、基板収納容器1に収納される基板W(
図1参照)は、円盤状のシリコンウェーハ、ガラスウェーハ、サファイアウェーハ等であり、産業に用いられる薄いものである。本実施形態における基板Wは、直径300mm〜450mmのシリコンウェーハである。
【0022】
図1に示すように、基板収納容器1は、上述のようなシリコンウェーハからなる基板Wを収納して、工場内の工程において搬送する工程内容器として用いられたり、陸運手段・空運手段・海運手段等の輸送手段により基板を輸送するための出荷容器として用いられるものであり、容器本体2と、蓋体3と、側方基板支持部としての基板支持板状部5と、奥側基板支持部(図示せず)と、蓋体側基板支持部としてのフロントリテーナ(図示せず)とを有している。
【0023】
容器本体2は、一端部に容器本体開口部21が形成され、他端部が閉塞された筒状の壁部20を有する。容器本体2内には基板収納空間27が形成されている。基板収納空間27は、壁部20により取り囲まれて形成されている。壁部20の部分であって基板収納空間27を形成している部分には、基板支持板状部5が配置されている。基板収納空間27には、
図1に示すように、複数の基板Wを収納可能である。
【0024】
基板支持板状部5は、基板収納空間27内において対をなすように壁部20に設けられている。基板支持板状部5は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能である。基板支持板状部5の奥側には、奥側基板支持部(図示せず)が設けられている。
【0025】
奥側基板支持部(図示せず)は、基板収納空間27内においてフロントリテーナ(図示せず)と対をなすように壁部20に設けられている。奥側基板支持部(図示せず)は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、複数の基板Wの縁部の後部を支持可能である。
【0026】
蓋体3は、容器本体開口部21を形成する開口周縁部31(
図1等)に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能である。フロントリテーナ(図示せず)は、蓋体3の部分であって蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに基板収納空間27に対向する部分に設けられている。フロントリテーナ(図示せず)は、基板収納空間27の内部において奥側基板支持部(図示せず)と対をなすように配置されている。
【0027】
フロントリテーナ(図示せず)は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより複数の基板Wの縁部の前部を支持可能である。フロントリテーナ(図示せず)は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、奥側基板支持部(図示せず)と協働して複数の基板Wを支持することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wを保持する。
【0028】
基板収納容器1は、プラスチック材等の樹脂で構成されており、特に説明が無い場合には、その材料の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチルテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等が上げられる。これらの成形材料の樹脂には、導電性を付与する場合には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性物質が選択的に添加される。また、剛性を上げるためにガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。
【0029】
以下、各部について、詳細に説明する。
図1等に示すように、容器本体2の壁部20は、奥壁22と上壁23と下壁24と第1側壁25と第2側壁26とを有する。奥壁22、上壁23、下壁24、第1側壁25、及び第2側壁26は、上述した材料により構成されており、一体成形されて構成されている。
【0030】
第1側壁25と第2側壁26とは対向しており、上壁23と下壁24とは対向している。上壁23の後端、下壁24の後端、第1側壁25の後端、及び第2側壁26の後端は、全て奥壁22に接続されている。上壁23の前端、下壁24の前端、第1側壁25の前端、及び第2側壁26の前端は、奥壁22に対向する位置関係を有し、略長方形状をした容器本体開口部21を形成する開口周縁部31を構成する。
【0031】
開口周縁部31は、容器本体2の一端部に設けられており、奥壁22は、容器本体2の他端部に位置している。壁部20の外面により形成される容器本体2の外形は箱状である。壁部20の内面、即ち、奥壁22の内面、上壁23の内面、下壁24の内面、第1側壁25の内面、及び第2側壁26の内面は、これらによって取り囲まれた基板収納空間27を形成している。開口周縁部31に形成された容器本体開口部21は、壁部20により取り囲まれて容器本体2の内部に形成された基板収納空間27に連通している。基板収納空間27には、最大で25枚の基板Wを収納可能である。
【0032】
図1に示すように、上壁23及び下壁24の部分であって、開口周縁部31の近傍の部分には、基板収納空間27の外方へ向かって窪んだラッチ係合凹部40A、40B、41A、41Bが形成されている。ラッチ係合凹部40A、40B、41A、41Bは、上壁23及び下壁24の左右両端部近傍に1つずつ、計4つ形成されている。
【0033】
図1に示すように、上壁23の外面においては、リブ28が、上壁23と一体成形されて設けられている。このリブ28は、容器本体の剛性を高めるために設けられている。
【0034】
また、上壁23の中央部には、トップフランジ29が固定される。トップフランジ29は、AMHS(自動ウェーハ搬送システム)、PGV(ウェーハ基板搬送台車)等において基板収納容器1を吊り下げる際に、基板収納容器1において掛けられて吊り下げられる部分となる部材である。
【0035】
図1及び
図2に示すように、下壁24の四隅には、通気路として、2種類の貫通孔である給気孔45と排気孔46が形成されている。本第一実施形態においては、下壁24の前方の2箇所の貫通孔は、容器内部の気体を排出するための排気孔46であり、後方の2箇所の貫通孔は、容器内部に気体を給気するための給気孔45である。給気孔45と排気孔46の貫通孔には、それぞれ給気用フィルタ部80と排気用フィルタ部81が配置されている。
【0036】
図5に示すように給気用フィルタ部80は、フィルタ部ハウジングとしてのハウジング82と、フィルタ83と、逆止弁84とを有している。フィルタ83と逆止弁84は、ハウジング82の部分に固定されている。フィルタ83は、逆止弁84よりも基板収納空間27側に配置されている。給気用フィルタ部80は、逆止弁84によりフィルタ83を通して容器本体2の外部の空間から基板収納空間27へのみ気体を通過可能である。その際、フィルタ83は、容器本体2の外部空間からの気体に含まれるパーティクル等が通過することを阻止する。
【0037】
また、排気用フィルタ部81は、給気用フィルタ部80と同様な構成となるが、逆止弁の機能が給気用の逆止弁84とは異なり、基板収納空間27から容器本体2の外部の空間へのみ気体を通過可能となっている。
【0038】
図3および
図4に示すように、容器本体2の基板収納空間27の奥壁22の内面の近傍には、気体噴出制御機構として、気体噴出部101が2つ対向して設けられている。気体噴出部101としては、上述した基板収納容器1の樹脂以外にも、ポリエチレン、ポリプロピレン等も用いることができる。
【0039】
これらの気体噴出部101は、給気孔45の上部に配置されている。
図5に示すように、気体噴出部101は、複数の開口を有する管状気体流通部110と、給気用フィルタ部80と管状気体流通部110とを接続するための接続部120と、から構成されている。管状気体流通部110には複数の開口111が設けられている。複数の開口111は、容器本体2の奥壁の左右方向の中央部に向けられている。管状気体流通部110の内部には、複数の開口111から均一量の気体が噴出するように、気流制御板112が設けられている。開口111から噴出する気体の流量が複数の開口111で均一になるように、この気流制御板112や開口111の大きさ、配置は適宜設計可能である。本第1実施形態では、基板収納容器1において上下方向に収納する複数のシリコンウェーハの間になるように、開口111は、配置されている。
【0040】
図1等に示すように、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部31の形状と略一致する略長方形状を有している。蓋体3は容器本体2の開口周縁部31に対して着脱可能であり、開口周縁部31に蓋体3が装着されることにより、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞可能である。蓋体3の内面(
図1に示す蓋体3の裏側の面)であって、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞しているときの開口周縁部31のすぐ後方向の位置に形成された段差の部分の面(シール面30)に対向する面には、環状のシール部材4が取り付けられている。シール部材4は、弾性変形可能なポリエステル系、ポリオレフィン系など各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム製、シリコンゴム製等により構成されている。シール部材4は、蓋体3の外周縁部を一周するように配置されている。
【0041】
蓋体3が開口周縁部31に装着されたときに、シール部材4は、シール面30と蓋体3の内面とにより挟まれて弾性変形し、蓋体3は、容器本体開口部21を密閉した状態で閉塞する。開口周縁部31から蓋体3が取り外されることにより、容器本体2内の基板収納空間27に対して、基板Wを出し入れ可能となる。
【0042】
蓋体3においては、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋体3の左右両端部近傍に設けられており、
図1に示すように、蓋体3の上辺から上方向へ突出可能な2つの上側ラッチ部32A、32Bと、蓋体3の下辺から下方向へ突出可能な2つの下側ラッチ部(図示せず)と、を備えている。2つの上側ラッチ部32A、32Bは、蓋体3の上辺の左右両端近傍に配置されており、2つの下側ラッチ部は、蓋体3の下辺の左右両端近傍に配置されている。
【0043】
蓋体3の外面においては操作部33が設けられている。操作部33を蓋体3の前側から操作することにより、上側ラッチ部32A、32B、下側ラッチ部(図示せず)を蓋体3の上辺、下辺から突出させることができ、また、上辺、下辺から突出させない状態とすることができる。上側ラッチ部32A、32Bが蓋体3の上辺から上方向へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部40A、40Bに係合し、且つ、下側ラッチ部(図示せず)が蓋体3の下辺から下方向へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部41A、41Bに係合することにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部31に固定される。
【0044】
蓋体3の内側においては、基板収納空間27の外方へ窪んだ凹部(図示せず)が形成されている。凹部(図示せず)及び凹部の外側の蓋体3の部分には、フロントリテーナ(図示せず)が固定されて設けられている。
【0045】
フロントリテーナ(図示せず)は、フロントリテーナ基板受け部(図示せず)を有している。フロントリテーナ基板受け部(図示せず)は、左右方向に所定の間隔で離間して対をなすようにして2つずつ配置されている。このように対をなすようにして2つずつ配置されたフロントリテーナ基板受け部は、上下方向に25対並列した状態で設けられている。基板収納空間27内に基板Wが収納され、蓋体3が閉じられることにより、フロントリテーナ基板受け部は、基板Wの縁部の端縁を挟持して支持する。
【0046】
上述のような基板収納容器1において、気体噴出制御機構による気体の置換は、以下のとおりに行われる。
【0047】
工場内の工程において基板収納容器1が工程内容器として用いられているときには、容器本体2において下壁24は下部に位置し上壁23は上部に位置している。この基板収納容器1へのガスパージの方法は、蓋体3で容器本体2の容器本体開口部21を塞いで行う場合と、基板収納容器1から蓋体3を外した状態で行う場合の2通りがある。以下、蓋体3で容器本体2を塞いだ状態での説明を行う。
【0048】
容器本体2が蓋体3によりその容器本体開口部が閉じられた状態で、容器本体2の下壁24の給気孔45に設けられた給気用フィルタ部80にパージガスが供給される。給気用フィルタ部80内の逆止弁84は容器本体2の外部から容器本体2内部の基板収納空間27へのみ気体が通過でき、その逆の向きには気体は通過できない。よって、給気用フィルタ部80の入り口に供給されたパージガスは、逆止弁84、フィルタ83を通過する。
【0049】
給気用フィルタ部80を通過したパージガスは、接続部120を通り管状気体流通部110に入る。管状気体流通部110に入ったパージガスは、そのパージガスの圧力で、管状気体流通部110の上方向に上昇する。その際、管状気体流通部110の内部に設けられた気流制御板112によりその流量が調整され、開口111からパージガスが噴出される。気流制御板112の位置や、気流制御板112の大きさを適宜調整することで、この噴出されるパージガスの流量は、複数の開口111で均一にすることができる。
図5に示すように第1実施形態においては、管状気体流通部110の上方向に従い、気流制御板112の長さは長くなっている。さらに、開口111の大きさも上方向に従い、大きくなっている。
【0050】
本第1実施形態では、上述の管状気体流通部110を2セット設けている。それぞれの管状気体流通部110の開口111から出たパージガスは、
図4の矢印で示したように、それぞれ容器本体2の奥壁22の左右方向の中央部に噴出される。すると、これらのパージガスは奥壁22で反射され、容器本体開口部21に向けて、その向きを変える。つまり、あたかも奥壁22の左右方向の中央部から容器本体開口部21に向けてパージガスが噴出されている状態となる。その後、容器本体2の下壁24の前方向に配置された排気孔46に設けられた排気用フィルタ部81から、容器本体2の内部の気体が外部に放出される。
所定の時間の間、給気用フィルタ部80にパージガスを供給し、排気用フィルタ部81から気体を放出させることにより、基板収納容器1のガスパージを行う。
【0051】
なお、基板収納容器1から蓋体3を外した状態でガスパージを行った場合には、排気用フィルタ部81から外部に放出される気体の量が少なくなり、容器本体開口部から放出される気体の量が多くなるだけで、ガスパージそのものは同様に行われる。勿論、ガスパージ終了後速やかに蓋体3を容器本体2に取り付ける必要があることは言うまでもない。また、本第1実施形態においては、管状気体流通部が2つの場合の実施例であるが、これに限られない。例えば、管状気体流通部を1つとしても良いことは言うまでもない。その際、奥壁で反射されたパージガスが容器本体開口部の向けて流れるようにするために、奥壁の形状を一部変更したり、奥壁にリブや突起を設けて気体の流れを調整することができる。さらに、管状気体流通部の開口は、本実施形態では26個であるが、この数は適宜変更可能である。例えば、開口の数を1つとし、その形状を上下方向に長い矩形状とすることもできる。
【0052】
上記構成の第1実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0053】
上述のように基板収納容器1は、一端部に容器本体開口部が形成され他端部が閉塞された筒状の壁部であって、奥壁、上壁、下壁、及び一対の側壁を有し上壁の一端部、下壁の一端部、及び側壁の一端部によって容器本体開口部が形成された壁部を備え、上壁の内面、下壁の内面、側壁の内面、及び奥壁の内面によって、複数の基板を収納可能であり容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と、容器本体開口部に対して着脱可能であり、容器本体開口部を閉塞可能な蓋体とを備え、基板収納空間と容器本体の外部の空間とを連通可能とする複数の通気路を利用して容器内部の気体を置換できる基板収納容器であって、通気路は、外部の空間から容器内部に気体を供給するために用いられる給気孔あるいは容器内部の空間から外部の空間に気体を放出するために用いられる排気孔を有し、奥壁の内面の左右方向の中央部あるいはその近郷で下壁から上壁の間に形成され、給気孔から供給された気体を容器本体の奥壁から容器本体開口部の方向に流通させる気体噴出制御機構を有する。
【0054】
さらに、気体噴出制御機構は、一端に開口部を有し中空筒状で奥壁の方向に気体を放出する複数の開口を有する管状気体流通部と、給気孔と管状気体流通部の一端を気体が流通可能に接続する接続部を有し、給気孔に供給された気体は、接続部を通じて管状気体流通部に供給され、その後管状気体流通部の複数の開口から放出され、さらに容器本体の奥壁に当った後に容器本体開口部の方向に気体が流通する構成とした。
【0055】
特に、奥壁側に配置された複数の給気孔のそれぞれに対して一組の管状気体流通部と接続部をそれぞれ接続し、複数の管状気体流通部からの気体を奥壁の方向に同時に放出する構成とした。
【0056】
この構成により、給気用フィルタ部に供給されたパージガスは、容器本体の奥壁の左右方向の中央部に一旦放出され、その後、奥壁で反射されることで、あたかも奥壁の左右方向の中央部にパージガスが供給されたのと同じ状態となり、容器本体の奥から容器本体開口に向けて、放射上にパージガスが流れる。つまり、パージガスは、容器本体の基板収納空間内で滞留することなく、給気用フィルタ部から排気用フィルタ部あるいは容器本体開口部に放射状に流れる。
さらに、管状気体流通部の開口や流体制御部を適宜設計することで、容器内部を流れるガスパージの気体の流量も、容器の上下方向において、均一にすることができる。
よって、容器本体の基板収納空間内の気体の置換を効率的に行い、短時間で且つ均一なガスパージを行える基板収納容器を提供することができる。このため、半導体の処理工程においてシリコンウェーハがパージガスにさらされている割合を長くし、しかも均一な気体置換が行えるため、シリコンウェーハ上に作製される半導体チップの歩留まりを向上させることができる。さらに、短時間で効率よく気体置換を行うことができるので、プロセル時間を短縮させ、コストダウンにも寄与する。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による基板収納容器1について
図6から
図9を参照しながら説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、第二側壁26及び上壁23を省略した上方斜視図である。
図7は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、上壁23を省略した上方平面図である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1の気体噴出制御機構201の、
図7のB−B線に沿った断面図である。
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1の気体噴出制御機構201の、
図8の領域Cにおける拡大図である。
【0058】
第2実施形態による基板収納容器は、気体噴出制御機構201として、奥壁気体流通部210が設けられている点において、第1実施形態による基板収納容器1とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態による基板収納容器1の構成と同様であるため、第1実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図6および
図7に示すように、容器本体2の基板収納空間27の奥壁22の内面から所定の距離離れて、気体噴出制御機構201が設けられている。気体噴出制御機構201は、2つの給気孔45の上部に配置されている。
図8および
図9に示すように、気体噴出制御機構201は、複数の開口211を有する奥壁気体流通部210と、2つの給気用フィルタ部80と奥壁気体流通部210を接続するための接続部220と、から構成されている。奥壁気体流通部210の複数の開口211は、容器本体2の奥壁の左右方向の中央部から容器本体開口部21に向けて設けられている。奥壁気体流通部210の内部には、複数の開口211から均一量の気体が噴出するように、気流非通気部212と気体通気部213が設けている。開口211から噴出する気体の流量が複数の開口211で均一になるように、気流非通気部212と気体通気部213や開口211の大きさ、配置は適宜設計可能である。本第2実施形態では、開口211の基板収納容器1に上下方向に収納する複数のシリコンウェーハの間になるように配置されている。
【0060】
上述のような基板収納容器1において、気体噴出制御機構201による気体の置換は、以下のとおりに行われる。
第1実施形態と同様に、容器本体2が蓋体3によりその容器本体開口部21が閉じられた状態で、容器本体2の下壁24の給気孔45に設けられた給気用フィルタ部80にパージガスが供給される。
【0061】
給気用フィルタ部80を通過したパージガスは、接続部220を通り奥壁気体流通部210に入る。奥壁気体流通部210に入ったパージガスは、そのパージガスの圧力で、奥壁気体流通部210の上方向に上昇する。
図9に示すように、開口211の両端部に気流非通気部212が形成され、開口近傍の他の部分は気流通気部が形成されている。開口211の近傍に設けられた気流非通気部212により、接続部220から直接パージガスが開口から放出されることを防止している。
図9中の矢印は、開口211から放出されるパージガスの様子を模式的に示したものである。このような構成により、パージガスは、気流非通気部212から気流通気部に周り込んだ後に、開口211から放出される。その際、2つの接続部からの気体は、開口211にて合成される。
【0062】
気流非通気部212の形状や開口211の位置、大きさを適宜設計することで、複数の開口211から放出されるパージガスの流量は、均一にすることができる。
図8に示すように第2実施形態においては、奥壁気体流通部210の上方向にゆくに従い、開口211の左右方向の長さを短くしている。
【0063】
奥壁気体流通部210の開口211から放出されたパージガスは、その後第1実施形態と同様に、排気用フィルタ部81あるいは容器本体開口部21から基板収納容器1の外部に放出され、ガスパージが行われる。
【0064】
上記構成の第2実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
上述のように基板収納容器1の気体噴出制御機構は、容器本体開口部の方向に気体を放出するための複数の開口を有する奥壁気体流通部と、給気孔と奥壁気体流通部を気体が流通可能に接続する接続部を有し、給気孔に供給された気体は、接続部を通じて奥壁気体流通部に供給され、その後奥壁気体流通部の複数の開口から放出されることで容器本体の奥壁から前記容器本体開口部の方向に気体が流通する構成とした。
【0065】
この構成により、第1実施形態の効果に加え以下のような効果を有する。
2つの給気用フィルタ部に供給されるパージガスの流量のバランスが悪い場合、極端には、1つの給気用フィルタ部のみからパージガスが供給されるような状況でも、奥壁気体流通部の開口にて複数の給気用フィルタ部からのパージガスが合成される。これにより、開口から放出されるパージガスの流量は均一化され、より安定したガスパージを実現できる。
【0066】
ここで、本実施形態では、奥壁気体流通部の開口が容器本体開口側にのみ存在する場合について説明したが、奥壁側にも開口があっても良い。また、本実施形態では、奥壁気体流通部を、奥壁から所定の距離離れて配置した場合について説明したが、奥壁気体流通部と奥壁との間をなくして近接させてもよいし、奥壁気体流通部の一部を奥壁と共有しても良い。さらに、奥壁気体流通部の開口は、本実施形態では24個であるが、この数は適宜変更可能である。例えば、開口の数を1つとし、その形状を上下方向に長い矩形状とすることもできる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による基板収納容器1について
図10から
図13を参照しながら説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、第二側壁26及び上壁23を省略した上方斜視図である。
図11は、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2において、上壁23を省略した上方平面図である。
図12は、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2の正面図である。
図13は、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1の気体放出制御部310の、
図11のD−D線に沿った断面図である。
【0068】
第3実施形態による基板収納容器は、気体噴出制御機構として、気体放出制御部310と気体制御凸部312と気体放出方向制御部313とが設けられている点において、第1実施形態による基板収納容器1とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態による基板収納容器1の構成と同様であるため、第1実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0069】
図10から
図11に示すように、2つの給気孔45の上部に気体放出制御部310は、それぞれ設けられている。
図13に示すように、気体放出制御部310には、給気用フィルタ部80との接続部320と、給気用フィルタ部80からの気体を所定の方向(気体放出方向制御部313の方向)にその向きを変えるための所定の角度を持つ通路321が形成され、その先端に開口311が形成されている。このとき、開口311は、奥壁22の内面の左右方向の中央部に向けられている。また、気体放出方向制御部313は、基板収納空間27で、奥壁22の直前の下壁24に設けられ、気体放出制御部310から放出された気体の向きを変えるための斜面314を有している。この斜面314は、気体放出制御部310から放出された気体がこの斜面314で反射された後、奥壁22に沿って上方向に上昇する角度を有している。さらに、気体制御凸部312は、奥壁22に複数個配置され、気体放出方向制御部313からの気体の向きを容器本体開口部21の方向に変えるために配置されている。気体制御凸部312により容器本体開口部21の方向に向きを変えられた気体が、基板収納空間27内で均一になるように、その配置、大きさ、数は、適宜設計可能である。本第3実施形態においては、気体制御凸部312は、奥壁22の左右方向に4列配置されている。奥壁22の上方向に向かうにつれて気体制御凸部312の左右方向の長さは、長くなる。
【0070】
上述のような基板収納容器1において、第3実施形態における気体噴出制御機構による気体の置換は、以下のとおりに行われる。
給気用フィルタ部80を通過したパージガスは、気体放出制御部310に供給され、その向きを変えて開口311から放出される。気体放出制御部310からパージガスは、容器本体2の後方向で気体放出方向制御部313に向け放出される、その後、パージガスは、気体放出方向制御部313の斜面314で反射されて奥壁22に沿って上方向へその向きが変えられる。奥壁22に沿って上昇するパージガスは、気体制御凸部312により、その向きが容器本体開口部21へ変えられる。気体制御凸部312からのパージガスは、その後第1実施形態と同様に、排気用フィルタ部81あるいは容器本体開口部21から、基板収納容器1の外部に放出され、ガスパージが行われる。
【0071】
上記構成の第3実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
上述のように,基板収納容器1の気体噴出制御機構は、給気孔に接続され、給気孔に供給された気体を奥壁の方向に放出する気体放出制御部と、気体放出制御部からの気体を容器本体開口部の方向に気体の流通方向を変えるための複数の気体制御凸部とを有し、給気孔に供給された気体は、気体放出制御部により奥壁に供給され、奥壁に形成された複数の気体制御凸部に放出され気体の流通方向を変えることで容器本体の壁部から容器本体開口部の方向に気体が流通する構成とした。
【0072】
この構成により、第1実施形態の効果に加え、気体放出制御部、気体放出方向制御部、気体制御凸部は、第1実施形態の構成に比べ、その構成サイズを小さくすることができる。よって、これらの構成を製造する際の材料を少なくすることができる。さらに基板収納空間内の専有体積を少なくすることもできる。また、構成要素が小さいことから、基板収納空間に収納するシリコンウェーハからの距離を長くすることができ、シリコンウェーハへのパーティクル等のコンタミを低減することができる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
【0074】
例えば、管状気体流通部や奥壁気体流通部、気体放出制御部の形状は、本実施形態の形状に限定されない。特に、開口の数、配置、大きさは、適宜変更可能性である。また、容器本体及び蓋体の形状、容器本体に収納可能な基板Wの枚数や寸法は、本実施形態における容器本体2及び蓋体3の形状、容器本体2に収納可能な基板Wの枚や寸法に限定されない。