(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の弾性繊維用処理剤は、無機層状化合物を必須に含有する。以下、弾性繊維用処理剤の各成分について説明する。
【0009】
〔無機層状化合物〕
無機層状化合物は、本発明の弾性繊維用処理剤に必須の成分である。
無機層状化合物は、高接圧下においても、繊維‐繊維間の膠着を防止することができる成分である。無機層状化合物が解舒性向上に優れている理由としては、無機層状化合物は劈開し易いため、高接圧下においては劈開し、繊維表面を斑なく覆うことができ、解舒性に寄与していることが考えられる。
又、紡糸工程や編工程においては繊維とローラー、ガイド、編針等との間に摩擦が生じる。ローラー、ガイド、編針等の機械摩耗が懸念されるが、無機層状化合物は劈開し易いため、繊維の傷みや機械摩耗を防止するという点で優れている。
さらに、上記無機層状化合物は、制電性に優れる。無機層状化合物が制電性に優れている理由は、親水性が高く繊維表面に水分を保持させやすい為と考えられる。
【0010】
上記無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している化合物をいう。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。
【0011】
無機層状化合物としては、親水性が高いために制電性に優れるという観点から、層状ケイ酸塩及び/又は層状複水酸化物が好ましい。
【0012】
上記層状ケイ酸塩は、一般に(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。
【0013】
上記(i)の2層構造タイプの層状ケイ酸塩の具体例としては、特に限定されないが、カオリナイト、ベルチェリン等が挙げられる。
上記(ii)の3層構造タイプの層状ケイ酸塩の具体例としては、特に限定されないが、セリサイト、グローコナイト、マイカ、パイロフィライト、カネマイト、タルク、モンモリロナイト、スメクタイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、等が挙げられる。
これらの中でも、紡糸工程や編工程の機械摩耗の防止や、処理剤に添加した時の安定性の観点から、スメクタイト、モンモリロナイト及びタルクが好ましい。
【0014】
上記層状複水酸化物の具体例としては、特に限定されないが、スティッヒタイト、ハイドロタルサイト、ジョグレナイト、パイロオーライト、ハイドロカルマイト、バーバートナイト、ミックスネライト、モツコレアイト、リーベサイト、タコバイト、マッセナイト等が挙げられる。中でも、紡糸工程や編工程の機械摩耗の防止や、処理剤に添加した時の安定性の観点から、ハイドロタルサイト、マッセナイト及びミックスネライトが好ましい。
【0015】
上記無機層状化合物のモース硬度は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、3以下が最も好ましい。8超では、機械摩耗や繊維の傷みが発生する可能性がある。上記無機層状化合物のモース硬度の好ましい下限値は、1である。
【0016】
無機層状化合物は粉体として提供される場合はそのまま用いてもよいが、ジェットミルやボールミル、ビーズミルを使用するなど、公知の方法を用いて微粒子化することができる。上記無機層状化合物の平均粒子径は、特に限定はないが、0.001〜500μmが好ましく、0.005〜50μmがより好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.03〜5μmが特に好ましく、0.05〜1μmが最も好ましい。無機層状化合物の平均粒子径が0.001μm未満では、添加による効果が見られないことがある。一方、500μm超では、繊維表面から脱落しやすく、紡糸後の工程でスカムの原因となる場合がある。
ここでいう、平均粒子径とは、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の平均粒子径を意味する。
【0017】
無機層状化合物は、有機物でイオン交換等の処理し、分散性等を改良したものも用いることができる。当該有機物としては、特に限定されないが、第4級アンモニウム塩、フォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩、ラウリン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、硫酸塩又はスルホン酸塩等を挙げることができる。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、特に限定されないが、ジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、特に限定されないが、ステアリン酸塩等を挙げることができる。
硫酸塩の具体例としては、特に限定されないが、ドデシル硫酸塩等を挙げることができる。
スルホン酸塩の具体例としては、特に限定されないが、ドデシルスルホン酸塩等を挙げることができる。
【0018】
〔平滑剤〕
本発明の弾性繊維用処理剤は、シリコーン油、鉱物油及びエステル油より選ばれる少なくとも1種である平滑剤をさらに含むと、繊維/金属間の摩擦を低減する観点から好ましい。
【0019】
シリコーン油としては、特に限定はないが、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン等を挙げることができる。1種または2種以上を併用してもよい。
【0020】
鉱物油としては、特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。これらの中でも、鉱物油としては、臭気の発生が低いという理由から、流動パラフィンが好ましい。鉱物油は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0021】
エステル油としては、特に限定はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを挙げることができる。エステル油としては、たとえば、下記から選ばれる脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを例示できるが、下記脂肪酸やアルコールを原料としないエステルであってもよい。エステル油は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0022】
脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であってもよい。前記脂肪酸としては、たとえば、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセレン酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0023】
アルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級アルコールであっても、環状のアルコールであっても、芳香族環を含有するアルコールであっても良い。前記アルコールとしては、たとえば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0024】
〔その他成分〕
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、制電性や解舒性を向上させるために、シリコーンレジンをさらに含有していてもよい。シリコーンレジンとは、3次元架橋構造を有するシリコーンを意味し、その他の変性シリコーン等をさらに含有してもよい。シリコーンレジンは、一般に、1官能性構成単位(M)、2官能性構成単位(D)、3官能性構成単位(T)および4官能性構成単位(Q)から選ばれた少なくとも1種の構成単位からなっている。
シリコーンレジンとしては、たとえば、MQシリコーンレジン、MQTシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、DTシリコーンレジン等のシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0025】
MQシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるR
1R
2R
3SiO
1/2(但し、R
1、R
2およびR
3はいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO
4/2と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
MQTシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるR
4R
5R
6SiO
1/2(但し、R
4、R
5およびR
6はいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO
4/2と、3官能性構成単位であるRSiO
3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0026】
Tシリコーンレジンとしては、たとえば、3官能性構成単位であるRSiO
3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン(その末端は炭化水素基のほか、シラノール基やアルコキシ基となっていても良い。)等を挙げることができる。
DTシリコーンレジンとしては、たとえば、2官能性構成単位であるR
7R
8SiO
2/2(但し、R
7およびR
8はいずれも炭化水素基である。)と、3官能性構成単位であるRSiO
3/2(但し、Rは炭化水素基である。)等を挙げることができる。
【0027】
本発明の弾性繊維用処理剤は、解舒性の効果を高めるために、高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)をさらに含有していてもよい。
高級脂肪酸の金属塩としては、従来弾性繊維に用いられている公知のものを用いることができ、たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの高級脂肪酸の金属塩のうちでも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が好ましい。
【0028】
高級脂肪酸の金属塩はジェットミルやビーズミルを使用するなど、公知の方法を用いて微粒子化することができる。平均粒子径について、特に限定はないが、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜3μmがさらに好ましく、0.05〜2μmが特に好ましい。高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が0.01μm未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が5μm超であると、繊維表面から脱落しやすく、紡糸後の工程でスカムの原因となる場合がある。なお、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用い、相対屈折率を分散質と分散媒に応じて設定し、体積基準の平均粒子径を測定した。
【0029】
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性や制電性を向上させるために、変性シリコーンをさらに含有していてもよい。変性シリコーンとは、一般には、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)等のポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖、側鎖両末端の少なくとも1ヶ所において、反応性(官能)基または非反応性(官能)基が少なくとも1つ結合した構造を有するものをいう。
【0030】
変性シリコーンとしては、たとえば、長鎖アルキル基(炭素数6以上のアルキル基や2−フェニルプロピル基等)を有する変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン;エステル結合を有する変性シリコーンであるエステル変性シリコーン;アルコール性水酸基を有する変性シリコーンであるカルビノール変性シリコーン;酸無水物基またはカルボキシル基を有する変性シリコーンであるカルボキシ変性シリコーン;アミノ基を有する変性シリコーンであるアミノ変性シリコーン;メルカプト基を有する変性シリコーンであるメルカプト変性シリコーン;グリシジル基または脂環式エポキシ基等のエポキシ基を有する変性シリコーン等のエポキシ変性シリコーン;ポリオキシアルキレン基(たとえば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基等)を有する変性シリコーン等のポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができる。
【0031】
本発明の弾性繊維用処理剤は、無機層状化合物を分散させる分散媒として、水を用いても良い。水は繊維上から揮発し無機層状化合物だけが残されるため、平滑性が不足する場合がある。このため、前記平滑剤や変性シリコーンを溶解または乳化して併用してもよい。
【0032】
本発明の弾性繊維用処理剤は、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常弾性繊維の処理剤に用いられる成分をさらに含有することができる。
【0033】
〔弾性繊維用処理剤〕
本発明の弾性繊維処理剤全体に占める無機層状化合物の重量割合は、0.001〜30重量%が好ましく、0.01〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%がさらに好ましく、0.5〜5重量%が最も好ましい。0.001重量%未満では解舒性が劣ることがあり、30重量%を超えると添加量に見合う効果が得られないことがある。
【0034】
本発明の処理剤が平滑剤を含むときには、弾性繊維用処理剤全体に占める平滑剤の重量割合は、40〜99.9重量%が好ましく、50〜98重量%がより好ましく、70〜95重量%がさらに好ましく、80〜90重量%が特に好ましい。40重量%未満の場合、平滑性が低下することがある。
【0035】
本発明の処理剤がシリコーンレジンを含むときには、弾性繊維用処理剤全体に占めるシリコーンレジンの重量割合は、特に限定はないが、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。シリコーンレジンの重量割合0.01重量%未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、10重量%超であると、処理剤性能の適正なバランスを維持できないことがある。
【0036】
本発明の処理剤が高級脂肪酸の金属塩を含むときには、弾性繊維用処理剤全体に占める高級脂肪酸の金属塩の重量割合は、特に限定はないが、0.01〜10重量%が好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましく、0.5〜3重量%が特に好ましい。高級脂肪酸の金属塩の重量割合が0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、10重量%超であると、多量の添加に見合う効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0037】
本発明の処理剤が変性シリコーンを含むときには、弾性繊維用処理剤全体に占める変性シリコーンの重合割合は、特に限定はないが、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。変性シリコーンの重量割合が0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、10重量%超であると、処理剤の適正な性能とならないことがある。
【0038】
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法としては、公知の方法を適用でき、成分を任意の順番で添加混合できる。無機層状化合物や高級脂肪酸金属塩の様な粉体を、処理剤に添加混合すると、均一に混合できない場合があるため、粉体の添加後にホモミキサー、ホモジナイザー、ジェットミル又はビーズミルで処理する事が好ましい。粉体の添加後に、この様な処理を加える事で製品の安定性が向上する。
【0039】
本発明の弾性繊維用処理剤の粘度(25℃)は、3〜50mm
2/sが好ましく、5〜30mm
2/sがさらに好ましく、8〜20mm
2/sが特に好ましい。3mm
2/s未満では、弾性繊維用処理剤の揮発が問題となる場合があり、50mm
2/sを超えると弾性繊維がローラーに取られて糸切を生じる場合がある。
【0040】
[弾性繊維]
本発明の弾性繊維は、弾性繊維全体に上記弾性繊維用処理剤が0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%付与されている弾性繊維である。0.1重量%より少ないと本発明の効果が充分でなく、15重量%を越えると不経済である。付与方法については、公知の方法を採用できる。
【0041】
本発明の弾性繊維(弾性繊維本体)としては、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー等を使用した弾性を有する繊維であり、その伸度は通常300%以上である。またソフトなストレッチ性のあるポリオレフィン系弾性繊維、及びポリトリメチレンテレフタレート繊維を含めてもよい。
【0042】
本発明の弾性繊維は、たとえば、ポリウレタンウレア弾性繊維は、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで過剰のイソシアネートの80〜100%と反応させて鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜800m/minで紡糸することにより製造できるポリウレタンウレア弾性繊維が好適である。
【0043】
本発明の処理剤は、弾性繊維の繊度が5〜4000dtexの繊維に用いるのが好ましい。
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツ等のアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
【実施例】
【0044】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)および部は、特に限定しない限り、「重量%」および「重量部」を示す。実施例における各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0045】
[解舒向上剤の評価方法]
(粒子径)
平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用い、相対屈折率を分散質と分散媒に応じて設定し、体積基準の平均粒子径を測定した。
【0046】
〔解舒性評価方法〕
図1において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(1)をセットし、巻き取り側に紙管(2)をセットする。巻き取り速度を一定速度にセットした後、ローラー(3)及び(4)を同時に起動させる。この状態では糸(5)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れないので、解舒点(6)は
図1に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(5)の解舒点(6)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(7)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は下式aによって求める。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=((巻取速度−解舒速度)÷解舒速度)×100 (式a)
また、以下の評価基準で○以上を合格とした。
◎:10(%)未満(非常に良好)
○:10以上60(%)未満(良好)
×:60(%)超(不良)
【0047】
〔編成張力測定法〕
図2において、チーズ(8)から縦取りした弾性糸(9)を、コンペンセーター(10)を経てローラー(11)、編み針(12)を介して、Uゲージ(13)に付したローラー(14)を経て速度計(15)、巻き取りローラー(16)に連結する。速度計(15)での走行速度が定速(100m/分)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(13)で測定し、繊維/編み針間の摩擦(g)を計測する。
【0048】
〔制電性評価方法〕
上記編成張力の
図2において、走行糸条より1cmのところで春日式電位差測定装置(17)で糸上静電気量を測定する。
また、以下の評価基準で○以上を合格とした。
◎:2.0(kv)未満(非常に良好)
○:2.0以上10.0(kv)未満(良好)
×:10(kv)超(不良)
【0049】
〔繊維間摩擦係数測定方法〕
図3において、処理剤が付与された弾性繊維のモノフィラメントを50〜60cm程取り、一方の端に荷重T1(18)を吊り、ローラー(19)を介して、Uゲージ(20)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(20)で測定し、下式bにより、繊維間摩擦係数を求める。
摩擦係数(F/FμS)=1/θ・ln(T2/T1) (式b)
(式bにおいて、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1g)
【0050】
(紡糸原液の調整)
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2−ジアミノプロパンのジメチルアセトアミド溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度27%のジメチルアセトアミド溶液を得た。30℃での粘度は1500mPaSであった。
【0051】
(実施例1〜38、40〜51及び比較例1〜5)
処理剤(表中の配合量は重量部)は、下記に記載の成分を任意の順番で混合することで調製した。無機層状化合物については、表1〜4では、層状ケイ酸塩を使用し、表5及び6では、層状複水酸化物を使用した。比較例1〜5では、無機層状化合物を使用しなかった。処理剤の全成分を混合後、ビーズミルを用いて分散を行うことで調製した。なお、表中の無機層状化合物及びステアリン酸マグネシウムの平均粒子径は、ビーズミル分散後の測定値である。
(実施例39)
表中の比率で鉱物油とステアリン酸マグネシウムを混合し、ビーズミルで分散して鉱物油溶液を作製した。この時のステアリン酸マグネシウムの平均粒子径は0.94μmであった。次に、表中の比率でジメチルシリコーンとハイドロタルサイトを混合し、ビーズミルで分散してジメチルシリコーン溶液を作製した。この時のハイドロタルサイトの平均粒子径は0.94μmであった。当該鉱物油溶液及び当該ジメチルシリコーン溶液を、当該鉱物油溶液:当該ジメチルシリコーン溶液=45:55(重量比)で混合し、処理剤を調整した。
【0052】
なお、表中のシリコーンレジン、ポリエーテル変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンは以下のものを使用した。
シリコーンレジン*1:MQシリコーンレジン、550mm
2/s(25℃)
ポリエーテル変性シリコーン*2:側鎖PO/EO変性型、150mm
2/s(25℃)
アミノ変性シリコーン*3:側鎖変性型、アミン価 28KOHmg/g、3500mm
2/s(25℃)
【0053】
次に、ポリウレタン紡糸原液を230℃のN
2気流中に吐出して乾式紡糸した。紡糸中走行糸に調製した処理剤を繊維に対して6 重量% 付与した後、毎分500mの速度でボビンに巻き取り44dtex/4fチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズを80℃、50%RHの雰囲気中に72時間放置して評価に供した。これらの結果を表1〜7に示す。
(但し、実施例1〜32、実施例41は、それぞれ、参考例1〜32、参考例41とする。)
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
表1〜6から分かるように、実施例1〜51では、無機層状化合物を含有する弾性繊維用処理剤を用いているので、良好な解舒性及び制電性を有している事が分かる。
一方、無機層状化合物を含有しない弾性繊維用処理剤(比較例1〜5)は、本発明の効果は得られてない。