特許第6351330号(P6351330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351330電磁波シールドフィルム、シールドプリント配線板及び電磁波シールドフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351330
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム、シールドプリント配線板及び電磁波シールドフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20180625BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H05K9/00 W
   B32B7/02 104
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-69024(P2014-69024)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192073(P2015-192073A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石岡 宗悟
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−36277(JP,A)
【文献】 特開2012−15311(JP,A)
【文献】 特開2011−166100(JP,A)
【文献】 特開2013−93518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層と、前記導電性接着剤層の前記シールド層側に配置される絶縁層とを少なくとも有する電磁波シールドフィルムであって、
前記シールド層は、導電性フィラー及び導電性フィラー組成物の残留物を含み
前記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が前記導電性接着剤層に埋没していることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記シールド層は、前記導電性フィラーの垂直方向における全部が前記導電性接着剤層に埋没している請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記導電性フィラーは、平均粒子径が1〜500nmである請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板であって、
前記電磁波シールドフィルムは、請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムを含むことを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項5】
支持体フィルムの上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程と、
剥離性フィルムの上に導電性接着剤層を形成する、導電性接着剤層形成工程と、
前記絶縁層の表面に導電性フィラーを配置する、導電性フィラー配置工程と、
前記絶縁層と前記導電性接着剤層とを貼り合わせる、貼り合わせ工程と
を含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記貼り合わせ工程では、前記導電性フィラーが前記絶縁層と前記導電性接着剤層との間に挟まれるように、前記絶縁層と前記導電性接着剤層とを貼り合わせ、前記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部を前記導電性接着剤層に埋没させることにより、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層を形成することを特徴とする電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記貼り合わせ工程の前に、さらに前記絶縁層を硬化する硬化工程を含み、
前記硬化工程では、前記絶縁層の160℃でのナノインデンテーション法により得られる表面弾性率を5〜15GPaにする請求項5に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項7】
支持体フィルムの上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程と、
剥離性フィルムの上に導電性接着剤層を形成する、導電性接着剤層形成工程と、
前記導電性接着剤層の表面に導電性フィラーを配置する、導電性フィラー配置工程と、
前記絶縁層と前記導電性接着剤層とを貼り合わせる、貼り合わせ工程と
を含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記貼り合わせ工程では、前記導電性フィラーが前記絶縁層と前記導電性接着剤層との間に挟まれるように、前記絶縁層と前記導電性接着剤層とを貼り合わせ、前記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部を前記導電性接着剤層に埋没させることにより、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層を形成することを特徴とする電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記貼り合わせ工程の前に、さらに前記絶縁層を硬化する硬化工程を含み、
前記硬化工程では、前記絶縁層の160℃でのナノインデンテーション法により得られる表面弾性率を5〜15GPaにする請求項7に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド特性及び耐屈曲性が良好な電磁波シールドフィルム、それを用いたシールドプリント配線板及びその電磁波シールドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話やタブレット型端末等の通信機器に使用されるプリント配線板には、電子回路から外部への電磁波の放射を遮蔽する目的で、あるいは、外部から電子回路への電磁波の侵入を遮蔽することを目的として、様々な種類の電磁波シールドフィルムが使用されている。このような電磁波シールドフィルムの一例として、シールド層に金属薄膜層を用いた構成が知られている(特許文献1)。また、電磁波シールドフィルムのシールド層の耐屈曲性を向上させる目的で、金属薄膜層に替えて銀ナノ粒子をシールド層とした電磁波シールドフィルムも知られている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−65675号公報
【特許文献2】特開2013−93518号公報
【特許文献3】特表2013−538439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の電磁波シールドフィルムは、絶縁層の上に銀ナノ粒子層を形成し、さらにその上に導電性接着剤層を形成した構成であるため、絶縁層と銀ナノ粒子層及び銀ナノ粒子層と導電性接着剤層との密着性に乏しいという欠点を有する。そのため、屈曲性が要求される部位に電磁波シールドフィルムを使用した場合、これらの層が剥離してしまうという問題があった。すなわち、耐屈曲性が充分ではないという問題があった。
また、特許文献3に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法では、半硬化(B−ステージ)の絶縁層の上に銀ナノ粒子を含むコーティング液を塗布した後、絶縁層を硬化させている。この製造方法で得られる電磁波シールドフィルムは、銀ナノ粒子が絶縁層に取り込まれるため、絶縁層と銀ナノ粒子との密着性が良好である。しかしながら、銀ナノ粒子が絶縁層に取り込まれているため、銀ナノ粒子が導電性接着剤層中の導電性粒子と接触し難い。従って、この製造方法で得られる電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いたとしても、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板との間に充分な導電性を得にくいという欠点を有する。このような電磁波シールドフィルムでは、充分に電磁波を遮蔽できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、充分な耐屈曲性を有し、充分なシールド特性を有する電磁波シールドフィルム、それを用いたシールドプリント配線板及びその電磁波シールドフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、シールド層を形成する銀ナノ粒子等の導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部を導電性接着剤層に埋没させることにより、耐屈曲性を向上させ、シールド特性が向上することを見出し本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層と、上記導電性接着剤層の上記シールド層側に配置される絶縁層とを少なくとも有する電磁波シールドフィルムであって、上記シールド層は、導電性フィラーにより構成されており、上記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が上記導電性接着剤層に埋没していることを特徴とする。
なお、本明細書において「導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が導電性接着剤層に埋没している」とは、電磁波シールドフィルムを断面方向から見たときに、導電性フィラーを構成する粒子の断面の少なくとも一部が、導電性接着剤層の中に入り込んでいる又は押し込まれている状態を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁波シールドフィルムは、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層を有し、上記シールド層は、導電性フィラーにより構成されており、上記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が上記導電性接着剤層に埋没している。そのため、本発明の電磁波シールドフィルムを屈曲させても導電性フィラー同士の接触を維持することができる。その結果、導電性フィラー同士が離間して導電性フィラー間に電流が生じなくなることを防ぐことができる。また、本発明の電磁波シールドフィルムを屈曲させてもシールド層が導電性接着剤層から剥離しにくい。すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは高い耐屈曲性を有する。また、上記の通り、導電性フィラーが導電性接着剤層に埋没しているので、導電性フィラーと導電性接着剤層とが直接接することになる。従って、本発明の電磁波シールドフィルムが用いられたプリント配線板では、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板との間に充分な導電性を得ることができる。これにより、電磁波を充分に遮蔽することができる。すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは高いシールド特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す概略断面図であって、導電性フィラーの垂直方向における全部が導電性接着剤層に埋没している状態を示す図である。
図2図2は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す概略断面図であって、導電性フィラーの垂直方向における一部のみが導電性接着剤層に埋没している状態を示す図である。
図3図3(a)〜(d)は、本発明の第1の電磁波シールドフィルムの製造方法の各工程を順に模式的に示す図である。
図4図4(a)は、本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法の導電性フィラー配置工程を模式的に示す図である。図4(b)は、本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法の貼り合わせ工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0011】
<電磁波シールドフィルム>
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す概略断面図であって、導電性フィラーの垂直方向における全部が導電性接着剤層に埋没している状態を示す図である。
図1に示すように、電磁波シールドフィルム1は、シールド層30を一方の表層部位に含む導電性接着剤層20と、導電性接着剤層20のシールド層30側に配置される絶縁層10とを少なくとも有しており、シールド層30は、導電性フィラー31により構成されており、導電性フィラー31の垂直方向(図1中、両矢印の方向)における全部が導電性接着剤層20に埋没している。
また、導電性接着剤層20は、導電性粒子21と接着性樹脂組成物22とから構成されている。
なお、本明細書において、導電性フィラーの垂直方向における全部が導電性接着剤層に埋没しているとは、導電性フィラーの垂直方向における全部が接着性樹脂組成物に埋没している状態を意味する。
以下、電磁波シールドフィルム1の各構成について詳しく説明する。
【0012】
(絶縁層)
絶縁層10は、導電性接着剤層20及びシールド層30を保護するために設けられる。電磁波シールドフィルム1の絶縁層10の性質としては、所定の機械的強度、耐薬品性及び耐熱性を満たすことが好ましい。
【0013】
絶縁層10の好ましい材料としては、充分な絶縁性を有し、導電性接着剤層20及びシールド層30を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等を用いることができる。
また、絶縁層10は、後述する電磁波シールドフィルム1の製造方法において、導電性フィラー31を含む導電性フィラー組成物32と接触する場合もある。絶縁層10が、上記材料からなると、絶縁層10が導電性フィラー組成物32と接触した際に膨潤しにくくなる。
もし絶縁層10が導電性フィラー組成物32と接触した際に膨潤すると、導電性フィラー31が絶縁層10に埋没しやすくなる。この場合、導電性フィラー31と導電性接着剤層20内の導電性粒子21とが接触しにくくなる。このような電磁波シールドフィルム1をプリント配線板に用いたとしても、シールド層30とプリント配線板との間に充分な導電性が得られにくくなる。
【0014】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等を用いることができる。
【0015】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等を用いることができる。
【0016】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。
【0017】
これらの物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
絶縁層10には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0019】
絶縁層10の厚みは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1〜10μmであることが好ましく、4〜5μmであることがより好ましい。
絶縁層10の厚みが1μm未満であると、薄すぎるので導電性接着剤層20及びシールド層30を充分に保護しにくくなる。
絶縁層10の厚みが10μmを超えると、厚すぎるので電磁波シールドフィルム1が屈曲しにくくなり、また、絶縁層10自身が破損しやすくなる。そのため、屈曲性が要求される部材への適用がしにくくなる。
なお、絶縁層10の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて後述する方法で測定することができる。
【0020】
絶縁層10の硬度は、特に限定されないが、160℃でのナノインデンテーション法により得られる表面弾性率が5〜15GPaであることが好ましく、6〜14GPaであることがより好ましい。
絶縁層10の硬度が5GPa未満であると、導電性フィラー31が絶縁層10に埋没しやすくなる。この場合、導電性フィラー31と後述する導電性接着剤層20内の導電性粒子21とが接触しにくくなる。このような電磁波シールドフィルム1をプリント配線板に用いたとしても、シールド層30とプリント配線板との間に充分な導電性が得られにくい。
絶縁層10の硬度が15GPaを超えると、硬すぎるので、電磁波シールドフィルム1が屈曲しにくくなり、また、絶縁層10自身が破損しやすくなる。そのため、屈曲性が要求される部材への適用がしにくくなる。
【0021】
絶縁層10の導電性接着剤層20側の端部には導電性フィラー31が埋没していないことが好ましい。
【0022】
絶縁層10は単一の層に限定されない。例えば、絶縁層10は、組成や硬度が異なる2以上の層からなっていてもよい。
【0023】
(導電性接着剤層)
図1に示すように、導電性接着剤層20は、一方の表層部位にシールド層30を含み、導電性粒子21と接着性樹脂組成物22とを含んでいる。
【0024】
導電性粒子21は、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0025】
導電性粒子21が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀メッキを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0026】
導電性粒子21の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜15.0μmであることが好ましい。導電性粒子21の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性接着剤層の導電性が良好となる。導電性粒子21の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性接着剤層を薄くすることができる。
【0027】
導電性粒子21の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状等から適宜選択することができる。
【0028】
接着性樹脂組成物22の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
導電性接着剤層20には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤等が含まれていてもよい。
【0030】
導電性接着剤層20における導電性粒子21の配合量は、特に限定されないが、15〜80質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましい。
上記範囲であると、導電性接着剤層20のプリント配線板への接着性が向上する。
【0031】
導電性接着剤層20の厚みは、特に限定されず、必要に応じ適宜設定することができるが、0.5〜20.0μmであることが好ましい。
導電性接着剤層20の厚みが0.5μm未満であると、良好な導電性が得られにくくなる。導電性接着剤層20の厚みが20.0μmを超えると、電磁波シールドフィルム1全体の厚さが厚くなり扱いにくくなる。
なお、導電性接着剤層20の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて後述する方法で測定することができる。
【0032】
(導電性フィラー)
本発明の電磁波シールドフィルムでは、複数の導電性フィラーが互いに接触し、シールド層を形成しており、導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が導電性接着剤層に埋没している。
なお、本明細書において、シールド層とは、複数の導電性フィラーが互いに接触し、導電性フィラー間に電流を生じさせることができる領域のことを意味する。
【0033】
導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が導電性接着剤層に埋没していることにより、電磁波シールドフィルムを屈曲させても、導電性フィラー同士の接触を維持することができる。その結果、導電性フィラー同士が離間して導電性フィラー間に電流が生じなくなることを防ぐことができる。すなわち、シールド特性が低下しにくくなる。また、電磁波シールドフィルムを屈曲させてもシールド層が導電性接着剤層から剥離しにくい。すなわち、電磁波シールドフィルムは高い耐屈曲性を有する。
さらに、導電性フィラーが導電性接着剤層に埋没しているので、導電性フィラーと導電性接着剤層とが直接接することになる。詳しくは後述するが、電磁波シールドフィルムが用いられたプリント配線板では、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板との間に充分な導電性を得ることができる。これにより、電磁波を充分に遮蔽することができる。すなわち、電磁波シールドフィルムは高いシールド特性を有する。
【0034】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部が導電性接着剤層に埋没していれば、導電性フィラーはどのように位置していてもよいが、より多くの部分が導電性接着剤層に埋没していることが好ましく、垂直方向における全部が導電性接着剤層に埋没していることがより好ましい。
図2は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す概略断面図であって、導電性フィラーの垂直方向における一部のみが導電性接着剤層に埋没している状態を示す図である。
図2に示すように、電磁波シールドフィルム2では、導電性フィラー31の垂直方向における一部のみが導電性接着剤層20に埋没している。本発明の電磁波シールドフィルムは図2に示すような構成であってもよい。
なお、本明細書において、導電性フィラーの垂直方向における一部のみが導電性接着剤層に埋没しているとは、導電性フィラーの垂直方向における一部のみが接着性樹脂組成物に埋没している状態を意味する。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性フィラーの垂直方向における一部が絶縁層に埋没していてもよいが、導電性フィラーの垂直方向における絶縁層への埋没は、少ないことが望ましく、全く埋没していないことが望ましい。
導電性フィラー31の導電性接着剤層20に埋没している部分が増えると、絶縁層10を構成する樹脂と、導電性接着剤層20を構成する樹脂(接着性樹脂組成物22)とが直接接触する面積が増えていく。特に、導電性フィラー31の垂直方向における全部が導電性接着剤層20に埋没していると、絶縁層10を構成する樹脂と、導電性接着剤層20を構成する樹脂とが各層の表面全体で互いに接触することになる。そのため、絶縁層10と導電性接着剤層20との密着性が向上する。
【0035】
導電性フィラー31は、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0036】
導電性フィラー31が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀メッキを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これらの中では、シールド層30の抵抗率が小さく、シールド特性が向上させる観点から、銀粉を用いることが好ましい。
【0037】
導電性フィラー31の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜500nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましい。
導電性フィラー31の平均粒子径が1nm未満であると、導電性フィラー組成物32中に導電性フィラー31を均一に分散させやすくなり、後述する電磁波シールドフィルムの製造工程において、シールド層30をムラなく均一に形成しやすくなる。
導電性フィラー31の平均粒子径が500nmを超えると、導電性フィラー31と接着性樹脂組成物22との密着性が低下し、電磁波シールドフィルム1の耐屈曲性も低下する。
【0038】
導電性フィラー31の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状等から適宜選択することができる。
【0039】
(シールド層)
上記の通り、シールド層30は導電性フィラー31により構成されており、シールド層30は、導電性接着剤層20の一方の表層部位に含まれている。
【0040】
絶縁層10、導電性接着剤層20及びシールド層30の厚みは以下の方法により測定することができる。
まず、電磁波シールドフィルム1の断面をSEMを用いて画像を撮影する。次に、上記SEM画像を画像解析ソフトにより2値化(白黒写真化)することにより絶縁層10、導電性接着剤層20及びシールド層30の境界を決定する。次いで、上記画像解析ソフトを用いて各層を垂直方向に横切る線分を描き、その線分の長さから各層の厚さを求める。同様の操作を、各層の水平方向における複数の箇所で行い、厚さの平均値を算出し、その平均値を各層の厚さとする。
【0041】
(その他の構成)
本発明の電磁波シールドフィルムは、絶縁層側に支持体フィルムを備えていてもよく、導電性接着剤層側に剥離性フィルムを有していてもよい。電磁波シールドフィルムが、支持体フィルムや剥離性フィルムを有していると、本発明の電磁波シールドフィルムの輸送や、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたプリント配線板等を製造する際の作業において、本発明の電磁波シールドフィルムが扱いやすくなる。
また、プリント配線板等に本発明の電磁波シールドフィルムを設置する際に、このような支持体フィルムや剥離性フィルムは剥がされることになる。
【0042】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法を2通り説明する。
なお、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0043】
<第1の電磁波シールドフィルムの製造方法>
本発明の第1の電磁波シールドフィルムの製造方法は、支持体フィルムの上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程と、剥離性フィルムの上に導電性接着剤層を形成する、導電性接着剤層形成工程と、上記導電性接着剤層の表面に導電性フィラーを配置する、導電性フィラー配置工程と、上記絶縁層と上記導電性接着剤層とを貼り合わせる、貼り合わせ工程とを含み、上記貼り合わせ工程では、上記導電性フィラーが上記絶縁層と上記導電性接着剤層との間に挟まれるように、上記絶縁層と上記導電性接着剤層とを貼り合わせ、上記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部を上記導電性接着剤層に埋没させることにより、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層を形成することを特徴とする。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0044】
図3(a)〜(d)は、本発明の第1の電磁波シールドフィルムの製造方法の各工程を順に模式的に示す図である。
【0045】
(1)絶縁層形成工程
まず、以下の方法により支持体フィルム40の上に絶縁層10を形成する。
(1−1)絶縁層用樹脂組成物のコーティング工程
まず、図3(a)に示すように、支持体フィルム40の片面に、絶縁層用樹脂組成物11を塗布する。
支持体フィルム40の片面に、絶縁層用樹脂組成物11を塗布する方法としては、特に限定されず、リップコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング等、公知の技術を採用することができる。
絶縁層用樹脂組成物11を構成する主な材料は既に説明した絶縁層10の材料と同じであるので、ここでのこれらの材料の詳細な記載は省略する。
このように塗布された絶縁層用樹脂組成物11は絶縁層10となる。なお、絶縁層10を形成する際には、必要に応じて溶剤(例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール及びジメチルホルムアミド等)、架橋剤や重合用触媒、硬化促進剤等を絶縁層用樹脂組成物11に添加しても良い。
支持体フィルム40の材料は、特に限定されず、例えばポリオレフィン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物、ポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物等を使用することができる。これらは1種単独で使用しても良く、2種以上を併用して使用しても良い。
支持体フィルム40に高い耐熱性が要求されない場合には、安価なポリエステル系樹脂組成物が好ましく用いられる。支持体フィルム40に難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物が好ましく用いられる。支持体フィルム40に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド系樹脂組成物が好ましく用いられる。また、支持体フィルム40と絶縁層用樹脂組成物11との間には、離型剤層を設けても良い。
また、支持体フィルム40の表面には、凹凸形状があってもよい。支持体フィルム40の表面が凹凸形状を有していると、支持体フィルム40上に絶縁層用樹脂組成物11を塗布することで、絶縁層10の表面が凹凸形状を有することになる。絶縁層10の表面が凹凸形状を有していると、支持体フィルム40との密着力を、凹凸の粗さに応じて適宜調整することができる。
支持体フィルム40の厚みは、特に限定されず、適宜設定することができるが、1〜10μmであることが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。
支持体フィルム40の厚みが上記範囲であると、支持体フィルム40の厚みが電磁波シールドフィルム1の厚みに加わるため、所定のサイズに打ち抜きやすく、裁断加工が容易になる。
【0046】
(1−2)硬化工程
絶縁層用樹脂組成物のコーティング工程の後、必要に応じ絶縁層10を硬化する硬化工程を行ってもよい。
なお、硬化工程は、後述する貼り合わせ工程を行う前であれば、どのような時期に行ってもよいが、上記絶縁層用樹脂組成物のコーティング工程の直後に行うことが好ましい。
絶縁層10を硬化させる方法としては、特に限定されず、乾燥したり、活性エネルギー線を照射したり、加熱したりして硬化させる方法があげられる。
絶縁層10を硬化するとは、半硬化(B−ステージ)ではなく充分に硬化させることが好ましい。絶縁層10が充分に硬化されることにより、後述する、貼り合わせ工程において、導電性フィラー31が絶縁層10中に移行することなく導電性接着剤層20へ押し込まれるため、電磁波シールドフィルム1の耐屈曲性及びシールド特性が良好となるからである。さらに、導電性フィラー31が導電性接着剤層20中の導電性粒子21と接触しやすくなり、良好なシールド特性が得られる。
絶縁層10を硬化させる際には、硬化後の絶縁層10の硬度を、160℃でのナノインデンテーション法により得られる表面弾性率が5〜15GPaとなるように硬化することが好ましく、6〜14GPaとなるように硬化することがより好ましい。
【0047】
(2)導電性接着剤層形成工程
次に、以下の方法により剥離性フィルム50の上に導電性接着剤層20を形成する。
(2−1)導電性接着剤層用樹脂組成物の準備工程
まず、導電性粒子21を接着性樹脂組成物22に加え、必要に応じてさらに溶剤(例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール及びジメチルホルムアミド等)を加え、よく混合して導電性接着剤層用樹脂組成物23を準備する。
導電性粒子21の材料及び接着性樹脂組成物22の材料は上記の通りなので、ここでのこれら材料の詳細な記載は省略する。
この工程では、導電性粒子21と接着性樹脂組成物22の合計質量に対し、導電性粒子21が15〜80質量%となるように配合することが好ましい。
【0048】
(2−2)導電性接着剤層用樹脂組成物のコーティング工程
次に、図3(b)に示すように、剥離性フィルム50の片面に導電性接着剤層用樹脂組成物23を塗布し、導電性接着剤層20を形成する。
剥離性フィルム50の片面に導電性接着剤層用樹脂組成物23を塗布する方法としては、上記支持体フィルム40の片面に、絶縁層用樹脂組成物11を塗布する方法と同様の方法を用いることができる。
剥離性フィルム50の材料としては、上記支持体フィルム40と同様の樹脂組成物等を使用することができる。また、剥離性フィルム50の表面には、離型層を設けてもよい。
なお、この工程において導電性接着剤層20の硬度を、絶縁層10の硬度よりも低くすることが好ましい。例えば、導電性接着剤層20の硬度を、160℃でのナノインデンテーション法により得られる表面弾性率が1〜5.5GPaとなるようにすることが好ましく、1〜4.5GPaとなるようにすることがより好ましい。
導電性接着剤層20の硬度が1GPa未満であると、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼り付ける際、導電性接着剤が流動し、目的としない回路とも電気的に接続されてしまう。
導電性接着剤層20の硬度が5.5GPaを超えると、硬すぎるため後の工程において、導電性接着剤層20に導電性フィラー31を押し込みにくくなる。
【0049】
(3)導電性フィラー配置工程
次に、以下の方法により絶縁層10の表面に導電性フィラー31を配置する。
(3−1)導電性フィラー組成物の準備工程
導電性フィラー31を樹脂組成物や有機溶剤に加え、よく混合して導電性フィラー組成物32を準備する。
導電性フィラー31の材料は、上記の通りなのでここでの詳細な説明の記載は省略する。
なお、導電性フィラー31は銀粉であることが好ましい。導電性フィラー31が銀粉である場合には、銀粉が有機溶媒又は樹脂組成物中に分散した導電性インクを導電性フィラー組成物32として使用することができる。このような導電性インクには、銀粉の分散性を安定化させることを目的として、銀粉と配位結合を形成する化合物を加えることができる。このような化合物としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を有する化合物、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、エーテル結(−O−)、チオール基(−S−)、メルカプト基(−SH)、アミノ基(−NH)等を有する化合物を好ましく用いることができる。
有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、水等を用いることができる。樹脂組成物としてはポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
この工程では、導電性フィラー組成物32の全質量に対する導電性フィラー31の配合量は、後の工程でシールド層30が形成できれば、どのような配合量であってもよい。
【0050】
(3−2)絶縁層の表面への導電性フィラーの配置工程
次に図3(c)に示すように、上記絶縁層形成工程で形成した絶縁層10において、支持体フィルム40側でない絶縁層10の表面に導電性フィラー組成物32を塗布し、導電性フィラー組成物32の層を形成する。
絶縁層10の表面に導電性フィラー組成物32を塗布する方法としては、上記支持体フィルム40の片面に、絶縁層用樹脂組成物11を塗布する方法と同様の方法を用いることができる。
絶縁層10に形成された導電性フィラー組成物32の層は、必要に応じて150〜250℃で焼成してもよい。導電性フィラー組成物32を焼成することで、導電性フィラー31相互間の接触を高めることができ、シールド層30の抵抗率を小さくすることができる。これにより電磁波シールドフィルム1のシールド特性を向上させることができる。
【0051】
(4)貼り合わせ工程
次に、以下の方法により絶縁層10と導電性接着剤層20とを貼り合わせる。
図3(d)に示すように、導電性フィラー31が絶縁層10と導電性接着剤層20との間に挟まれるように、絶縁層10と導電性接着剤層20とを貼り合わせる。
この際、導電性フィラー31を導電性接着剤層20に押し込むことにより、導電性フィラー31の垂直方向における少なくとも一部を導電性接着剤層20に埋没させ、シールド層30を一方の表層部位に含む導電性接着剤層20を形成する。
絶縁層10と導電性接着剤層20とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、例えば一対のロール間で押圧して貼り合せることができる。
この工程を経ることにより、導電性フィラー31は、導電性接着剤層20中の導電性粒子21と接触することになる。
このようにして製造された電磁波シールドフィルム1は充分なシールド特性と耐屈曲性とを有する。
【0052】
なお、上記貼り合せ工程では、導電性フィラー31以外の導電性フィラー組成物32の残留物がそのまま残っていてもよい。この残留物は、導電性接着剤層20を構成する成分となる。
【0053】
以上の工程を経て本発明の電磁波シールドフィルム1を製造することができる。
なお、このようにして製造された電磁波シールドフィルム1は、必要に応じて適宜所定の大きさに裁断加工してもよい。裁断方法としては、通常用いられている方法(例えば、打ち抜き法)等を用いることができる。
また、このようにして製造された電磁波シールドフィルム1を使用する際には、支持体フィルム40及び剥離性フィルム50を剥がしてもよい。
【0054】
第1の電磁波シールドフィルムの製造方法により電磁波シールドフィルム1を製造する場合には、絶縁層10に導電性フィラー31を含む導電性フィラー組成物32を塗布するので、絶縁層10と導電性フィラー組成物32との密着性が良好になる。このような状態で絶縁層10と導電性接着剤層20とを貼り合せるので、製造された電磁波シールドフィルム1では、絶縁層10と導電性接着剤層20との密着性が向上する。
【0055】
<第2の電磁波シールドフィルムの製造方法>
本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法は、支持体フィルムの上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程と、剥離性フィルムの上に導電性接着剤層を形成する、導電性接着剤層形成工程と、上記導電性接着剤層の表面に導電性フィラーを配置する、導電性フィラー配置工程と、上記絶縁層と上記導電性接着剤層とを貼り合わせる、貼り合わせ工程とを含み、上記貼り合わせ工程では、上記導電性フィラーが上記絶縁層と上記導電性接着剤層との間に挟まれるように、上記絶縁層と上記導電性接着剤層とを貼り合わせ、上記導電性フィラーの垂直方向における少なくとも一部を上記導電性接着剤層に埋没させることにより、シールド層を一方の表層部位に含む導電性接着剤層を形成することを特徴とする。
【0056】
本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法は、本発明の第1の電磁波シールドフィルムの製造方法の「(3)導電性フィラー配置工程」及び「(4)貼り合わせ工程」を、それぞれ以下の「(3´)導電性フィラー配置工程」及び「(4´)貼り合わせ工程」に置換した方法である。
【0057】
図4(a)は、本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法の導電性フィラー配置工程を模式的に示す図である。図4(b)は、本発明の第2の電磁波シールドフィルムの製造方法の貼り合わせ工程を模式的に示す図である。
【0058】
(3´)導電性フィラー配置工程
(3´−1)導電性フィラー組成物の準備工程
上記「(3−1)導電性フィラー組成物の準備工程」と同様の方法で導電性フィラー組成物を準備する。
(3´−2)導電性接着剤層の表面への導電性フィラーの配置工程
次に図4(a)に示すように、上記導電性接着剤層形成工程で形成した導電性接着剤層20において、剥離性フィルム50側でない導電性接着剤層20の表面に導電性フィラー組成物32を塗布し、導電性フィラー組成物32の層を形成する。
導電性接着剤層20の表面に導電性フィラー組成物32を塗布する方法としては、上記支持体フィルム40の片面に、絶縁層用樹脂組成物11を塗布する方法と同様の方法を用いることができる。
導電性接着剤層20に形成された導電性フィラー組成物32の層は、必要に応じて150〜250℃で焼成してもよい。導電性フィラー組成物32を焼成することで、導電性フィラー31相互間の接触を高めることができ、シールド層30の抵抗率を小さくすることができる。これにより電磁波シールドフィルム1のシールド特性を向上させることができる。
【0059】
(4´)貼り合わせ工程
図4(b)に示すように、導電性フィラー31が絶縁層10と導電性接着剤層20との間に挟まれるように、絶縁層10と導電性接着剤層20とを貼り合わせる。
この際、導電性フィラー31を導電性接着剤層20に押し込むことにより、導電性フィラー31の垂直方向における少なくとも一部を導電性接着剤層20に埋没させ、シールド層30を一方の表層部位に含む導電性接着剤層20を形成する。
この際、導電性フィラー31は、導電性接着剤層20中の導電性粒子21と接触することになる。
【0060】
第2の電磁波シールドフィルムの製造方法でも、電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0061】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムを含む、本発明のシールドプリント配線板について説明する。
【0062】
<シールドプリント配線板>
本発明のシールドプリント配線板は、電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板であり、上記電磁波シールドフィルムは、本発明の電磁波シールドフィルムを含むことを特徴とする。
【0063】
本発明のプリント配線板には、本発明の電磁波シールドフィルムが用いられているので、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板との間に充分な導電性を得ることができる。これにより、電磁波を充分に遮蔽することができる。また、プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板を用いた場合には、耐屈曲性に優れたシールドプリント配線板を得ることができる。
【0064】
本発明のシールドプリント配線板は、例えば以下の方法により製造することができる。
【0065】
まず、ガラスエポキシ基板又はポリイミド等の絶縁性樹脂フィルムからなる基板の少なくとも一表面に、少なくとも信号回路とグランド回路が形成されたプリント配線板を準備する。
【0066】
次に、電磁波シールドフィルムを、導電性接着剤層がプリント配線板のグランド回路と接触するように、プリント配線板に重ね合わせる。
【0067】
次に、加熱加圧によって導電性接着剤層をプリント配線板のグランド回路に接着させることで、シールドプリント配線板が得られる。
【0068】
導電性接着剤層がグランド回路に接着されると同時に、グランド回路とシールド層とが導電性接着剤層を介して電気的に接触し同電位となるため、本発明のシールドプリント配線板は優れたシールド特性を示す。なお、導電性接着剤層をプリント配線板のグランド回路に接着させる際の加熱加圧の条件は適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電磁波シールドフィルム
10 絶縁層
11 絶縁層用樹脂組成物
20 導電性接着剤層
21 導電性粒子
22 接着性樹脂組成物
23 導電性接着剤層用樹脂組成物
30 シールド層
31 導電性フィラー
32 導電性フィラー組成物
40 支持体フィルム
50 剥離性フィルム
図1
図2
図3
図4