(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電圧源及び交流の電力系統に接続され、複数のスイッチング素子を含むインバータを有し、前記複数のスイッチング素子のオン・オフにより、前記直流電圧源から供給される直流電力を前記電力系統に対応した交流電力に変換し、前記交流電力を前記電力系統に出力する主回路部と、
前記インバータの出力電流を検出する第1電流検出部と、
前記電力系統の電流を検出する第2電流検出部と、
前記電力系統の電圧を検出する電圧検出部と、
周期的に変化する電圧基準及びキャリア信号を基に、前記複数のスイッチング素子のオン・オフを制御する制御部と、
を備え、
前記キャリア信号の周波数は、前記電圧基準の周波数よりも高く、
前記制御部は、前記インバータの出力電流が上限値及び下限値の範囲内にある場合に第1動作を実行し、前記インバータの出力電流が前記範囲外である場合に第2動作を実行し、
前記第1動作は、前記第1電流検出部で検出された前記インバータの出力電流、前記第2電流検出部で検出された前記電力系統の電流、及び、前記電圧検出部で検出された前記電力系統の電圧を基に、前記主回路部の出力電力を算出し、前記主回路部の出力電力から前記インバータの出力電流の電流指令値を算出し、前記インバータの出力電流の電流指令値を基に、前記電圧基準を補正することにより、前記複数のスイッチング素子を動作させて前記主回路部の出力を制御する動作であり、
前記第2動作は、前記複数のスイッチング素子の動作を停止させ、前記電流指令値を所定の規定指令値に設定するとともに、前記複数のスイッチング素子の動作を停止させた後、前記キャリア信号が所定値になった時に、前記インバータの出力電流を確認し、前記インバータの出力電流が前記範囲内に戻った場合に、前記第1動作を再開する動作である電力変換装置。
前記制御部は、前記複数のスイッチング素子の動作を停止させた後、前記キャリア信号の最大値の時及び最小値の時に、前記インバータの出力電流が前記上限値及び前記下限値の範囲内にあるか否かを確認する請求項1記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、直流電圧源2及び電力系統4に接続されている。電力変換装置10は、例えば、コネクタなどを介して直流電圧源2及び電力系統4に着脱自在に接続される。なお、本願明細書において、「接続」には、直接接触して接続される場合の他に、他の導電性部材などを介して電気的に接続される場合も含むものとする。また、トランスなどを介して磁気的に結合している場合も、「接続」に含むものとする。
【0009】
直流電圧源2は、直流電力を電力変換装置10に供給する。直流電圧源2は、例えば、太陽電池パネルである。直流電圧源2は、例えば、ガスタービンエンジンなどでもよい。直流電圧源2は、直流電力を供給可能な任意の電源でよい。
【0010】
電力系統4は、例えば、電力を需要家の受電設備に供給するための送電線である。電力系統4の供給する電力は、交流である。電力系統4の供給する電力は、例えば、三相交流電力である。電力系統4は、例えば、商用電源の送電線である。電力系統4の交流電力の電圧は、例えば、100V(実効値)である。電力系統4の交流電力の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。電力系統4の電力は、単相交流でもよい。電力系統4は、例えば、自家発電システム内の送電線などでもよい。
【0011】
電力変換装置10は、直流電圧源2から供給される直流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統4に出力する。電力変換装置10は、有効電力を電力系統4に出力する。電力変換装置10は、いわゆるパワーコンディショナである。なお、「電力を電力系統4に出力する」には、送電線などに電力を供給するいわゆる逆潮流の他に、配電盤や分電盤などを介して系統負荷(電子機器など)に電力を供給する場合も含むものとする。
【0012】
電力変換装置10は、主回路部12と、制御部14と、を備える。主回路部12は、インバータ20と、フィルタ・トランス部22と、を含む。インバータ20は、複数のスイッチング素子30を有する。インバータ20は、直流電圧源2に接続されている。インバータ20は、各スイッチング素子30のオン・オフにより、直流電圧源2から供給される直流電力を交流電力に変換する。
【0013】
この例において、インバータ20は、6つのスイッチング素子30をブリッジ接続した三相インバータである。インバータ20は、直流電力を三相交流電力に変換する。例えば、電力系統4が単相交流である場合、インバータ20には、4つのスイッチング素子30をブリッジ接続した単相インバータが用いられる。このように、インバータ20は、単相インバータでもよい。
【0014】
各スイッチング素子30には、例えば、自己消弧型の素子が用いられる。より具体的には、例えば、GTO(Gate Turn-Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられる。
【0015】
各スイッチング素子30は、一対の主電極30a、30bと、各主電極30a、30b間に流れる電流を制御する制御電極30cと、を含む。制御電極30cは、例えば、ゲート電極である。
【0016】
各スイッチング素子30は、制御電極30cに印加される電圧に応じて、オン状態とオフ状態とに変化する。各スイッチング素子30は、例えば、第1電圧を制御電極30cに印加した時にオン状態になる。各スイッチング素子30は、第1電圧よりも低い第2電圧を制御電極30cに印加した時、または、制御電極30cに電圧を印加していない時に、オフ状態になる。オフ状態は、各主電極30a、30b間に実質的に電流が流れない状態である。オフ状態は、例えば、インバータ20での電力変換に影響を与えない範囲の微弱な電流が各主電極30a、30b間に流れる状態でもよい。換言すれば、オン状態は、各主電極30a、30b間に電流が流れる第1状態である。オフ状態は、各主電極30a、30b間に流れる電流が、第1状態よりも低い第2状態である。この例において、各スイッチング素子30は、ノーマリオフ型である。各スイッチング素子30は、ノーマリオン型でもよい。
【0017】
また、各スイッチング素子30には、ダイオードが接続されている。各ダイオードは、各スイッチング素子30のそれぞれの各主電極30a、30bに対して並列に接続される。また、各ダイオードの順方向は、各主電極30a、30b間に流れる電流の方向に対して逆向きに設定される。すなわち、各ダイオードは、いわゆる還流ダイオードである。
【0018】
フィルタ・トランス部22は、フィルタ32と、トランス34と、を含む。フィルタ・トランス部22は、例えば、三相交流電力の相毎に設けられた3つのフィルタ32と、3つのトランス34と、を含む。各フィルタ32は、インバータ20から出力された交流電力の高調波成分を抑制する。各フィルタ32は、例えば、インバータ20から出力された交流電力を正弦波に近づける。各トランス34は、例えば、各フィルタ32から出力された交流電力の電圧を変圧し、変圧後の交流電力を電力系統4に出力する。各トランス34は、例えば、インバータ20から出力された交流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換する。このように、主回路部12は、直流電圧源2から供給される直流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換する。
【0019】
制御部14は、例えば、CPUやMPUなどのプロセッサである。制御部14は、例えば、図示を省略したメモリから所定のプログラムを読み出し、そのプログラムを逐次処理することによって、電力変換装置10の各部を統括的に制御する。プログラムを記憶したメモリは、制御部14内に設けてもよいし、制御部14と別に設け、制御部14に接続してもよい。
【0020】
制御部14は、インバータ20の各スイッチング素子30に接続されている。より具体的には、制御部14は、各スイッチング素子30の制御電極30cに接続されている。制御部14は、各スイッチング素子30のオン・オフを制御する。制御部14は、例えば、各スイッチング素子30の制御電極30cに制御信号を入力し、制御信号の電圧を変化させることによって、各スイッチング素子30のオン・オフを制御する。制御信号は、いわゆるゲート信号である。これにより、制御部14は、例えば、直流電力を電力系統4に応じた電圧及び周波数の交流電力に変換する。
【0021】
制御部14は、例えば、図示を省略した内部電源に接続され、内部電源から供給される電力によって動作する。内部電源は、直流電圧源2や電力系統4に接続される。内部電源は、例えば、バッテリなどの電荷蓄積素子を含み、直流電圧源2や電力系統4から供給される電力を電荷蓄積素子に蓄積する。そして、内部電源は、電荷蓄積素子に蓄積された電力を制御部14に供給する。これにより、例えば、制御部14における瞬時電圧低下の発生が抑制される。内部電源は、例えば、無停電電源である。内部電源は、電力変換装置10に設けてもよいし、電力変換装置10とは別に設けてもよい。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係る制御部の動作を模式的に表すグラフ図である。
図2に表したように、制御部14は、キャリア信号CSと電圧基準VRとを基に、各スイッチング素子30のオン・オフを制御する。制御部14は、三相交流の相毎に電圧基準VRを設定する。すなわち、この例において、制御部14は、3つの電圧基準VRを設定する。3つの電圧基準VRは、例えば、120度ずつ位相をずらして設定される。一方、キャリア信号CSは、各相に共通に用いられる。
【0023】
電圧基準VR及びキャリア信号CSは、周期的に変化する。電圧基準VRは、例えば、正弦波である。電圧基準VRの周波数は、電力系統4の交流電力の周波数に応じて設定される。電圧基準VRの周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。キャリア信号CSは、例えば、三角波である。キャリア信号CSは、鋸波や台形波などでもよい。キャリア信号CSの周波数は、電圧基準VRの周波数よりも高い。キャリア信号CSの周波数は、例えば、1kHz以上である。
【0024】
制御部14は、電圧基準VRとキャリア信号CSとを比較する。制御部14は、例えば、電圧基準VRがキャリア信号CS以上の時に、上アーム側のスイッチング素子30をオンにし、下アーム側のスイッチング素子30をオフにする。この場合、制御部14は、電圧基準VRがキャリア信号CS未満の時に、上アーム側のスイッチング素子30をオフにし、下アーム側のスイッチング素子30をオンにする。このように、制御部14は、上アーム側のスイッチング素子30と、下アーム側のスイッチング素子30と、を交互にオン・オフする。上記と反対に、電圧基準VRがキャリア信号CS以上の時に、上アーム側のスイッチング素子30をオフにし、下アーム側のスイッチング素子30をオンにしてもよい。
【0025】
図1に戻って、電力変換装置10は、第1電流検出部40と、第2電流検出部42と、電圧検出部44と、をさらに備える。
【0026】
第1電流検出部40は、インバータ20の出力電流(以下、インバータ電流と称す)を検出する。第1電流検出部40は、例えば、インバータ20から出力される三相交流電力の各相のインバータ電流を検出する。第1電流検出部40は、制御部14に接続されている。第1電流検出部40は、検出した各相のインバータ電流を制御部14に入力する。
【0027】
第2電流検出部42は、電力系統4の電流(以下、系統電流と称す)を検出する。系統電流は、換言すれば、主回路部12の出力電流である。第2電流検出部42は、例えば、電力系統4の三相交流電力の各相の系統電流を検出する。第2電流検出部42は、制御部14に接続されている。第2電流検出部42は、検出した各相の系統電流を制御部14に入力する。
【0028】
電圧検出部44は、電力系統4の電圧(以下、系統電圧と称す)を検出する。系統電圧は、換言すれば、主回路部12の出力電圧である。電圧検出部44は、例えば、電力系統4の三相交流電力の各相の系統電圧を検出する。電圧検出部44は、制御部14に接続されている。電圧検出部44は、検出した各相の系統電圧を制御部14に入力する。
【0029】
制御部14は、第2電流検出部42及び電圧検出部44の検出結果を基に、電力系統4の電力の異常を検出する。制御部14は、系統電圧及び系統電流が所定の動作範囲から外れた場合、主回路部12の動作を停止させる。制御部14は、いわゆるエラー停止する。すなわち、制御部14は、主回路部12からの交流電力の出力を停止させる。制御部14は、エラー停止した場合、所定の復帰処理が実行されるまで、停止状態を継続する。復帰処理は、例えば、電力変換装置10の電源の再起動や、復帰コマンドの入力などである。
【0030】
制御部14は、例えば、電圧検出部44の検出結果を基に、瞬時電圧低下を検出する。制御部14は、例えば、残電圧率20%以下の状態の継続時間が1秒以下の場合を、瞬時電圧低下として検出する。残電圧率とは、電圧低下の発生する直前の系統電圧の電圧値に対する、発生後の系統電圧の電圧値の比率である。
【0031】
電力変換装置では、電力系統4の擾乱時においても運転を継続するFRT(Fault Ride Through)の要件が定められている。このため、制御部14は、瞬時電圧低下の検出期間においては、運転を継続する。一方、制御部14は、例えば、残電圧率20%以下の状態が1秒よりも長く継続された場合、系統電圧が動作範囲から外れたと判断して、エラー停止する。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図3に表したように、制御部14は、電流判定部50と、電力演算部51と、電力制御部52と、電流指令値選択部53と、電流制御部54と、を含む。
【0033】
電流判定部50には、第1電流検出部40によって検出されたインバータ電流が入力される。電流判定部50は、入力されたインバータ電流が上限値UL以上であるか否かを判定するとともに、インバータ電流が下限値LL以下であるか否かを判定する(
図4(a)参照)。すなわち、電流判定部50は、インバータ電流が、上限値UL及び下限値LLの範囲内にあるか否かを判定する。電流判定部50には、例えば、三相のインバータ電流が入力される。電流判定部50は、各層のインバータ電流のそれぞれについて、上限値UL及び下限値LLの範囲内にあるか否かの判定を行う。電流判定部50は、上記判定の結果を示す判定信号を出力する。
【0034】
図4(a)及び
図4(b)、
図5(a)〜
図5(e)は、第1の実施形態に係る制御部の動作の一例を表すグラフ図である。
図4(a)は、インバータ電流の一例である。
図4(b)は、系統電圧の一例である。
図5(a)は、インバータ電流の一例である。
図5(a)は、
図4(a)で表すインバータ電流の一部を時間軸を拡大して表している。
図5(b)は、キャリア信号CSの一例である。
図5(c)は、各スイッチング素子30の動作の可否を表す動作信号の一例である。
図5(d)は、上側アームのスイッチング素子30の制御電極30cに入力される制御信号の一例である。
図5(e)は、下側アームのスイッチング素子30の制御電極30cに入力される制御信号の一例である。
図5(d)及び
図5(e)では、三相のうちの一相を一例として示している。
【0035】
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)〜
図5(e)に表したように、上限値UL及び下限値LLの絶対値は、インバータ20の定格運転時に流れるインバータ電流の振幅の最大値よりも高く設定される。これにより、制御部14は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50に判定された際に、インバータ電流が過電流であると判断する。上限値ULは、換言すれば、インバータ電流の正側の閾値である。下限値LLは、換言すれば、インバータ電流の負側の閾値である。電流判定部50の出力する判定信号は、換言すれば、インバータ電流が過電流であるか否かを示す信号である。上限値ULの絶対値は、例えば、下限値LLの絶対値と同じである。上限値ULの絶対値は、下限値LLの絶対値と異なってもよい。
【0036】
また、上限値ULは、フィルタ・トランス部22を通過した後の系統電流の換算値において、制御部14がエラー停止する系統電流の動作範囲よりも低く設定される。下限値LLは、フィルタ・トランス部22を通過した後の系統電流の換算値において、制御部14がエラー停止する系統電流の動作範囲よりも高く設定される。
【0037】
図5(c)〜
図5(e)に表したように、制御部14は、上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50が判定した場合に、各スイッチング素子30の動作を停止させる。すなわち、制御部14は、インバータ20からの交流電力の出力を停止させる。これにより、インバータ電流の過電流が抑制される。制御部14は、例えば、系統電流の動作範囲を超えてエラー停止する前に、各スイッチング素子30の動作を停止して過電流を抑制する。制御部14は、いわゆる各スイッチング素子30のゲートブロックを行う。
【0038】
制御部14は、例えば、動作信号をハイからロウに切り替える。そして、制御部14は、例えば、各スイッチング素子30の制御電極30cに第2電圧を印加することにより、各スイッチング素子30の動作を停止させる。
【0039】
制御部14は、例えば、各相のインバータ電流のいずれかで上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると判定された場合に、各スイッチング素子30の全てを停止させる。この例では、各スイッチング素子30の動作を許可する時に、動作信号をハイに設定し、各スイッチング素子30の動作を停止させる時に、動作信号をロウに設定する。動作信号の設定は、上記と反対でもよい。
【0040】
なお、各スイッチング素子30がノーマリオフ型である場合には、制御電極30cへの制御信号の入力を停止することによって、各スイッチング素子30の動作を停止させてもよい。例えば、制御部14と制御電極30cとの間の電気的な接続を、他のスイッチなどで切断することにより、各スイッチング素子30の動作を停止させてもよい。
【0041】
制御部14は、各スイッチング素子30の動作を停止させた後、キャリア信号CSが所定値になった時に、インバータ電流(電流判定部50の判定結果)を確認する。制御部14は、例えば、キャリア信号CSが最大値の時及び最小値の時に、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内にあるか否かを確認する。すなわち、インバータ電流が、適正な範囲内に復帰したか否かを確認する。
【0042】
制御部14は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内に戻った場合に、動作信号をロウからハイに戻し、各スイッチング素子30の動作を再開させる。すなわち、制御部14は、キャリア信号CSの正のピーク値(山)、または、キャリア信号CSの負のピーク値(谷)において、各スイッチング素子30の動作を再開させる。
【0043】
なお、各スイッチング素子30の動作を再開させるタイミングは、キャリア信号CSが最大値の時及び最小値の時に限らない。例えば、キャリア信号CSのゼロクロスの時に、インバータ電流を確認し、各スイッチング素子30の動作を再開させてもよい。各スイッチング素子30の動作を再開させるタイミングは、キャリア信号CSが所定値になった時でよい。例えば、キャリア信号CSが正負に変化する場合には、キャリア信号CSの絶対値が所定値になった時でよい。
【0044】
このように、インバータ電流の過電流を検知した場合に、各スイッチング素子30の動作を一度停止させ、インバータ電流が適正値に戻った後に、各スイッチング素子30の動作を再開させる。瞬時電圧低下に起因する過電流の場合、上記のように、一時的な過電流を抑える。これにより、系統電圧が適正値に復帰した後には、通常の運転に戻ることができる。これにより、瞬時電圧低下の発生時においても、制御部14をエラー停止させることなく、運転を継続することができる。
【0045】
前述のように、キャリア信号CSの周波数は、電圧基準VRの周波数よりも高い。すなわち、キャリア信号CSの周波数は、電力系統4の交流電力の周波数よりも高い。これにより、電力変換装置10では、例えば、各スイッチング素子30を停止させる時間を、キャリア信号CSの数周期程度に抑えることができる。例えば、各スイッチング素子30を停止させる時間を、数μs〜数十μs程度に抑えることができる。
【0046】
例えば、系統電圧の情報を基に、各スイッチング素子のゲートブロック、及び、制御操作量のパラメータ初期化などを行い、瞬時電圧低下時の過電流を抑制して運転を継続する電力変換装置がある。
【0047】
しかしながら、系統電圧の情報でゲートブロックを行った場合、各スイッチング素子を停止させる時間が数msの単位になってしまう場合がある。この場合、各スイッチング素子の動作の再開までに時間がかかり、電力変換装置の出力が、必要以上に低下してしまうことが懸念される。
【0048】
これに対して、本実施形態に係る電力変換装置10では、インバータ電流の過電流を検知して各スイッチング素子30の動作を停止させ、インバータ電流が適正値に戻った後に、各スイッチング素子30の動作を再開させる。これにより、電力変換装置10では、系統電圧の情報を基にゲートブロックを行う場合に比べて、より短い時間で各スイッチング素子30の動作を再開させることができる。従って、電力変換装置10では、瞬時電圧低下時に運転を継続する場合の出力の低下を抑制することができる。
【0049】
例えば、瞬時電圧低下と異なる要因で過電流が発生した場合には、各スイッチング素子30の動作を再開させた後に、再び過電流が検知されることが懸念される。このため、例えば、過電流を検知して各スイッチング素子30の動作を停止させる処理が複数回連続して発生した場合には、制御部14をエラー停止させてもよい。
【0050】
図3に戻って、電力演算部51には、第1電流検出部40に検出されたインバータ電流と、第2電流検出部42に検出された系統電流と、電圧検出部44に検出された系統電圧と、が入力される。電力演算部51には、例えば、各相のそれぞれのインバータ電流、系統電流及び系統電圧が入力される。
【0051】
電力演算部51は、入力されたインバータ電流、系統電流及び系統電圧を基に、主回路部12(電力変換装置10)の出力電力を算出する。電力演算部51は、例えば、主回路部12の出力電力の有効電力及び無効電力を算出する。電力演算部51は、算出した主回路部12の出力電力を電力制御部52に入力する。
【0052】
電力制御部52には、例えば、電力演算部51で算出された主回路部12の出力電力が入力されるとともに、電力指令値が入力される。電力制御部52には、例えば、有効電力の電力指令値と、無効電力の電力指令値と、が入力される。各電力指令値は、例えば、電力系統4を制御する上位のコントローラなどから電力変換装置10に入力される。各電力指令値は、電力変換装置10内で生成してもよい。例えば、直流電圧源2が太陽電池パネルである場合には、太陽電池パネルの出力電圧と出力電流とから求められる最適動作点の電力を電力指令値として用いてもよい。なお、電力制御部52に入力される電力指令値は、有効電力の電力指令値のみでもよい。
【0053】
電力制御部52は、入力された出力電力と各電力指令値とを基に、インバータ電流の電流指令値を算出する。インバータ電流の電流指令値は、主回路部12の出力電力を電力指令値に近づけるための電流指令値である。電力制御部52は、例えば、PI制御によってインバータ電流の電流指令値を算出する。インバータ電流の電流指令値は、例えば、PID制御やI−P制御などの他の制御手法を用いて算出してもよい。電力制御部52は、算出したインバータ電流の電流指令値を電流指令値選択部53に入力する。
【0054】
電流指令値選択部53には、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値が入力されるとともに、電流判定部50の判定信号が入力される。電流指令値選択部53は、予め定められたインバータ電流の規定指令値を含む。規定指令値は、例えば、定数である。この例において、規定指令値は、零である。すなわち、この例において、規定指令値は、インバータ電流が出力されないようにすることを意味する。
【0055】
電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内にあると電流判定部50で判定された場合、電力制御部52によって算出されたインバータ電流の電流指令値を電流制御部54に入力する。一方、電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50で判定された場合、インバータ電流の規定指令値を電流制御部54に入力する。すなわち、電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50で判定された場合、インバータ電流の電流指令値を零に設定する。このように、電流指令値選択部53は、インバータ電流の電流値に応じて、電力制御部52で算出された電流指令値と規定指令値との一方を選択し、電流制御部54に入力する。
【0056】
電流制御部54には、インバータ電流の電流指令値または規定指令値が入力されるとともに、第1電流検出部40によって検出されたインバータ電流が入力される。電流制御部54は、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値が入力された場合、入力された電流指令値とインバータ電流とを基に、インバータ20の出力電圧(以下、インバータ電圧と称す)の電圧指令値を算出する。一方、電流制御部54は、インバータ電流の規定指令値が入力された場合、入力された規定指令値とインバータ電流とを基に、インバータ電圧の電圧指令値を算出する。インバータ電圧の電圧指令値の算出には、例えば、PI制御などが用いられる。
【0057】
制御部14は、電流制御部54で算出されたインバータ電圧の電圧指令値を基に、電圧基準VRを補正する。制御部14は、例えば、インバータ電圧の電圧指令値を基に、電圧基準VRの振幅、位相、及び、直流電圧成分の少なくともいずれかを補正する。
【0058】
これにより、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内にある場合には、電力制御部52に入力された電力指令値に応じて、主回路部12からの出力が制御される。
【0059】
一方、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えている場合には、主回路部12からの出力が、規定指令値に応じた値に制御される
。制御部14は、例えば、規定指令値が入力された場合、電圧基準VRの振幅を零にす
る。
【0060】
このように、制御部14は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えている場合、各スイッチング素子30の制御電極30cに入力する制御信号によって、各スイッチング素子30の動作を停止させるとともに、インバータ電流の電流指令値を規定指令値に設定する。この例では、インバータ電流の電流指令値を零に設定する。そして、制御部14は、各スイッチング素子30の動作を再開させた後、インバータ電流の電流指令値を電力制御部52で算出された電流指令値に戻す。制御部14は、例えば、各スイッチング素子30の動作の再開と実質的に同時に、電流指令値を戻す。電流指令値を戻すタイミングは、これに限ることなく、各スイッチング素子30の動作を再開させた後の任意のタイミングでよい。
【0061】
このように、インバータ電流の過電流が検知された場合に、インバータ電流の電流指令値を零に設定する。これにより、例えば、各スイッチング素子30の動作を再開する際に、過電流のインバータ電流に基づいて、インバータ電圧の電圧指令値が、異常な値に設定されてしまうことを抑制することができる。これにより、例えば、電力変換装置10の動作をより安定させることができる。
【0062】
例えば、過電流を検知してゲートブロックを行った後、インバータ回路への電流指令値を下げ、電流指令値の解除とともに電流指令値を徐々に上げることにより、オーバーシュートを抑制する電力変換装置がある。この場合、電流指令値を徐々に上げる部分において、電力変換装置の出力が低下してしまう。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る電力変換装置10では、例えば、ゲートブロックの解除後にインバータ電流の電流指令値を電力制御部52で算出された電流指令値に戻す。これにより、電流指令値を徐々に上げる場合に比べて、より出力の低下を抑制することができる。また、インバータ電流の過電流が検知された場合に、インバータ電流の電流指令値を零に設定し、インバータ電圧の電圧指令値が異常な値に設定されてしまうことを抑制する。これにより、系統電流(出力電流)のオーバーシュートを抑制することもできる。
【0064】
インバータ電流の規定指令値は、零に限ることなく、任意の値でよい。規定指令値は、例えば、インバータ電流の定格電流の20%以下程度に設定する。これにより、例えば、各スイッチング素子30の動作を再開させた後のインバータ電圧の電圧指令値の異常を抑制できる。但し、規定指令値を零に設定することにより、過電流の抑制効果を最大にすることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。
図6に表したように、制御部104は、リミッタ55を含む。リミッタ55は、電力制御部52と電流指令値選択部53との間に設けられている。リミッタ55には、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値が入力される。リミッタ55は、入力されたインバータ電流の電流指令値が所定の制限値よりも大きい場合に、インバータ電流の電流指令値を制限値に制限する。そして、リミッタ55は、制限後の電流指令値を電流指令値選択部53に入力する。リミッタ55は、例えば、インバータ電流の定格電流の150%以下に電流指令値を制限する。
【0066】
制御部104は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えている場合に、電圧検出部44で検出された系統電圧の検出値を基に、系統電圧が所定値以下か否かを判定する。制御部104は、例えば、系統電圧の残電圧率が20%未満であるか否かを判定する。すなわち、制御部104は、例えば、系統電圧が大幅に低下したか否かを判定する。制御部104は、系統電圧が所定値以下か否かの判定結果を系統電圧情報として電流指令値選択部53に入力する。
【0067】
制御部104は、系統電圧が所定値よりも大きいと判定した場合、上述のように、各スイッチング素子30の動作を停止させる。一方、制御部104は、系統電圧が所定値以下と判定した場合、各スイッチング素子30の動作を継続させる。
【0068】
電流指令値選択部53は、入力された系統電圧情報を基に、系統電圧が所定値以下か否かを確認する。電流指令値選択部53は、系統電圧が所定値よりも大きい場合、上記実施形態で説明したように、判定信号に応じて、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値または規定指令値を選択する。
【0069】
一方、電流指令値選択部53は、系統電圧が所定値以下である場合、リミッタ55から入力されたインバータ電流の電流指令値を選択し、選択した電流指令値を電流制御部54に入力する。すなわち、電流指令値選択部53は、系統電圧が大幅に低下した場合に、制限値に制限された電流指令値を電流制御部54に入力する。
【0070】
系統電圧が大幅に低下した場合には、各スイッチング素子30の動作が許容される可能性がある。一方、系統電圧が大幅に低下した場合、電力指令値に対応させるために、電力制御部52が大幅に高いインバータ電流の電流指令値を算出してしまうことが懸念される。
【0071】
そこで、この例では、系統電圧が大幅に低下した場合に、インバータ電流の電流指令値を所定の制限値に制限して、各スイッチング素子30の動作を継続する。これにより、例えば、瞬時電圧低下時に運転を継続する場合の出力の低下をより抑制することができる。また、リミッタ55の制限値を十分に低く設定しておくことにより、系統電圧が回復した後に、再び過電流が生じてしまうことを抑制することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図7に表したように、制御部114は、指令値保持部56を含む。指令値保持部56は、電力制御部52と電流指令値選択部53との間に設けられている。指令値保持部56には、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値が入力される。指令値保持部56は、定常時のインバータ電流の電流指令値を保持し、保持した電流指令値を電流指令値選択部53に入力する。指令値保持部56は、例えば、過電流が検知される直前のインバータ電流の電流指令値を保持する。
【0073】
指令値保持部56は、例えば、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50で判定された場合に、直前に電力制御部52から入力されたインバータ電流の電流指令値を保持する。そして、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内に戻ったと電流判定部50で判定された場合に、電流指令値の保持を解除する。
【0074】
電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内にあると電流判定部50で判定された場合、電力制御部52によって算出されたインバータ電流の電流指令値を電流制御部54に入力する。一方、電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50で判定された場合、指令値保持部56に保持された定常時のインバータ電流の電流指令値を電流制御部54に入力する。
【0075】
このように、インバータ電流の過電流が検知された場合に設定するインバータ電流の電流指令値は、定常時の電流指令値でもよい。この例においても、上記第1及び第2の実施形態と同様に、瞬時電圧低下時に運転を継続する場合の出力の低下を抑制することができる。例えば、各スイッチング素子30の動作を再開する際に、過電流のインバータ電流に基づいて、インバータ電圧の電圧指令値が、異常な値に設定されてしまうことを抑制することができる。
【0076】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図8に表したように、制御部124は、電力リミッタ60を含む。電力リミッタ60は、電力制御部52に接続されている。
【0077】
電力リミッタ60には、有効電力及び無効電力の電力指令値と、残電圧率の情報と、が入力される。電力リミッタ60は、残電圧率に応じて電力指令値を制限し、制限後の電力指令値を電力制御部52に入力する。残電圧率の情報は、例えば、電圧検出部44で検出された系統電圧の検出値としてもよい。すなわち、系統電圧の検出値を基に、電力リミッタ60に残電圧率を算出させてもよい。
【0078】
電力リミッタ60は、例えば、主回路部12の定格電力(出力電力)が残電圧率に応じた値となるように、電力指令値を制限する。すなわち、電力リミッタ60は、主回路部12の出力電力を残電圧率に応じた値に制限する。例えば、主回路部12が定格電力100%で出力している時、すなわち、定格電流100%で出力している時に、残電圧率20%の瞬時電圧低下が発生したとする。この場合、100%の出力を維持するためには、定格電流を500%にしなければならない。このため、電力リミッタ60は、主回路部12の定格電力を20%に制限する。一方、主回路部12が定格電力20%で出力している時、すなわち、定格電流20%で出力している時に、残電圧率20%の瞬時電圧低下が発生したとする。この場合、定格電流を100%に設定することで、定常時と変わらない定格電力20%の出力が可能になる。例えば、瞬時電圧低下の発生時にも出力電力の低下を抑制するために電流指令値を上げることも可能となる。
【0079】
電力制御部52は、電力リミッタ60から入力された電力指令値を基に、インバータ電流の電流指令値を算出する。そして、電力制御部52は、算出したインバータ電流の電流指令値を電流制御部54に入力する。制御部124では、電流指令値選択部53が省略されている。電流制御部54は、電力制御部52で算出されたインバータ電流の電流指令値とインバータ電流とを基に、インバータ電圧の電圧指令値を算出する。
【0080】
この例においても、瞬時電圧低下時に運転を継続する場合の出力の低下を抑制することができる。例えば、主回路部12の定格電力が低く設定されている場合には、瞬時電圧低下の発生時にも、定常時と変わらない電力を出力することができる。例えば、インバータ電圧の電圧指令値が、異常な値に設定されてしまうことを抑制することもできる。
【0081】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図9に表したように、制御部134は、位相同期回路61と、位相制御部62と、を含む。この例において、制御部134の位相同期回路61及び位相制御部62以外の部分は、第1の実施形態の制御部14と実質的に同じである。制御部134の位相同期回路61及び位相制御部62以外の部分は、制御部104、制御部114または制御部124と実質的に同じとしてもよい。
【0082】
位相同期回路61は、位相制御部62に接続されている。位相同期回路61は、電力系統4の系統電圧の位相を検出する。位相同期回路61は、検出した系統電圧位相を位相制御部62に入力する。位相同期回路61は、いわゆるPLL(Phase Locked Loop)である。
【0083】
位相制御部62は、位相同期回路61及び電流制御部54に接続されている。位相制御部62には、電流制御部54で算出されたインバータ電圧の電圧指令値、及び、位相同期回路61で検出された系統電圧位相が入力される。また、位相制御部62には、系統電圧の位相角指令値が入力される。位相角指令値は、例えば、第2電流検出部42で検出された系統電流や、電圧検出部44で検出された系統電圧などに基づいて算出される。位相角指令値は、例えば、系統電流の検出値や系統電圧の検出値などを位相制御部62に入力することにより、位相制御部62に算出させてもよい。
【0084】
位相制御部62は、入力された電圧指令値、位相角指令値及び系統電圧位相を基に、電圧基準VRを補正する。これにより、位相制御部62は、主回路部12から出力される電圧の電圧値を、電圧指令値に近づけるとともに、主回路部12から出力される電圧の位相を、位相角指令値に近づける。すなわち、位相制御部62は、主回路部12の出力電圧の電圧値を系統電圧の電圧値に近づけるとともに、主回路部12の出力電圧の位相を系統電圧の位相に近づける。換言すれば、主回路部12の出力電圧の位相を、系統電圧の位相に同期させる。
【0085】
位相同期回路61は、座標変換部70と、PI制御部71と、加算器72と、周波数演算部73と、周波数選択部74と、積分器75と、を含む。
【0086】
座標変換部70には、電圧検出部44で検出された各相の系統電圧の検出値が、入力される。座標変換部70は、三相の系統電圧の検出値を、二相の電圧信号に変換する。また、座標変換部70は、静止座標系の二相の電圧信号を、系統電圧と同じ周波数で回転する回転座標系に変換する。座標変換部70は、例えば、二相の電圧信号を、回転座標系の直軸成分の信号(d軸信号)と、直交軸成分の信号(q軸信号)と、に変換する。座標変換部70は、三相の系統電圧の検出値に対して、いわゆるdq変換を行う。d軸信号は、例えば、系統電圧の有効成分である。q軸信号は、例えば、系統電圧の無効成分である。座標変換部70は、PI制御部71に接続されている。座標変換部70は、変換後のd軸信号及びq軸信号をPI制御部71に入力する。
【0087】
PI制御部71は、入力されたd軸信号及びq軸信号に対してPI制御(比例積分制御)を行う。PI制御部71は、d軸信号及びq軸信号のいずれか一方を実質的に零にするように、PI制御を行う。PI制御部71は、例えば、q軸信号を実質的に零にするように、PI制御を行う。これにより、PI制御部71は、例えば、d軸信号及びq軸信号から周波数補正量を算出する。PI制御部71は、加算器72に接続されている。PI制御部71は、PI制御の演算結果を加算器72に入力する。
【0088】
周波数演算部73には、三相の系統電圧のうちの一相が入力されている。周波数演算部73は、例えば、入力された系統電圧の零クロス点を検出し、複数の零クロス点間の時間を算出することにより、系統電圧の周波数を算出する。周波数演算部73は、周波数選択部74に接続されている。周波数演算部73は、算出した周波数を周波数選択部74に入力する。
【0089】
周波数選択部74は、電流判定部50、加算器72及び周波数演算部73のそれぞれに接続されている。周波数選択部74には、周波数演算部73で算出された系統電圧の周波数が入力されるとともに、電流判定部50の判定信号が入力される。また、周波数選択部74は、系統電圧の周波数の基準値を含む。基準値は、例えば、50Hz又は60Hzである。
【0090】
周波数選択部74は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲内にあると電流判定部50で判定された場合、基準値を加算器72に入力する。一方、電流指令値選択部53は、インバータ電流が上限値UL及び下限値LLの範囲を超えていると電流判定部50で判定された場合、周波数演算部73で算出された周波数を加算器72に入力する。
【0091】
加算器72は、積分器75に接続されている。加算器72は、PI制御部71の演算結果に、周波数選択部74から入力された周波数を加算し、加算結果を積分器75に入力する。加算器72は、PI制御部71の演算結果に、周波数演算部73で算出された周波数又は基準値を加算する。すなわち、加算器72は、系統電圧周波数を算出する。
【0092】
積分器75は、加算器72の加算結果を積分することにより、加算結果から系統電圧位相を算出する。すなわち、積分器75は、系統電圧周波数の周波数を積分することにより、系統電圧位相を算出する。積分器75は、位相制御部62に接続されている。積分器75は、算出した系統電圧位相を位相制御部62に入力する。位相制御部62は、積分器75から入力された系統電圧位相に基づいて、前述のように、電圧基準VRの補正を行う。
【0093】
瞬時電圧低下が発生した場合には、系統電圧の周波数も変動している可能性がある。これに対して、制御部134では、位相同期回路61が、系統電圧の周波数を算出し、その周波数を基に系統電圧位相を算出する。そして、位相制御部62が、算出された系統電圧位相を基に、電圧基準VRの補正を行う。これにより、瞬時電圧低下の発生にともなって周波数が変動した場合においても、主回路部12の出力電圧の位相を、系統電圧の位相に適切に同期させることができる。例えば、電力変換装置10の動作をより安定させることができる。
【0094】
制御部134では、周波数選択部74が、電流判定部50の判定信号を基に、周波数の選択を行っている。これに限ることなく、例えば、電圧検出部44で検出された系統電圧の検出値を周波数選択部74に入力し、系統電圧の検出値を基に、周波数の選択を行ってもよい。例えば、系統電圧の検出値が、所定の閾値以上の時に、基準値を選択し、閾値未満の時に、周波数演算部73で算出された周波数を選択する。このように、系統電圧の検出値を基に瞬時電圧低下を検出し、瞬時電圧低下の発生時に、周波数演算部73で算出された周波数を選択してもよい。また、周波数選択部74を設けることなく、常時、周波数演算部73で算出された周波数を基に、系統電圧位相を算出してもよい。
【0095】
図10は、第5の実施形態に係る別の制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図10に表したように、制御部144では、三相系統電圧のそれぞれが、周波数演算部73に入力されている。この例において、周波数演算部73は、三相系統電圧のそれぞれの周波数の平均値を算出し、周波数の平均値を周波数選択部74に入力する。
【0096】
このように、系統電圧が三相交流である場合、算出する系統電圧の周波数は、各相の周波数の平均値でもよい。これにより、例えば、位相の急変にともなう演算周波数の急変を抑制することができる。なお、系統電圧が単相交流である場合には、単相交流の周波数を周波数演算部73に算出させればよい。また、系統電圧が単相交流である場合には、単相交流の系統電圧に対して、PI制御を行えばよい。
【0097】
(第6の実施形態)
図11は、第6の実施形態に係る制御部の一部を模式的に表す機能ブロック図である。
図11に表したように、制御部154では、位相同期回路61が、不平衡判定部76をさらに含む。
【0098】
不平衡判定部76には、電圧検出部44で検出された各相の系統電圧の検出値が、入力される。不平衡判定部76は、各相の系統電圧の検出値を基に、不平衡瞬時電圧低下の発生を判定する。ここで、不平衡瞬時電圧低下とは、各相の系統電圧のそれぞれにおいて、振幅の値が変化する瞬時電圧低下である。
【0099】
不平衡判定部76は、例えば、系統電圧の振幅の最大値の差分を相毎に求める。そして、最大値の差分が所定値以上である場合に、不平衡瞬時電圧低下が発生したと判定する。不平衡判定部76は、PI制御部71に接続されている。不平衡判定部76は、上記判定の結果を不平衡信号としてPI制御部71に入力する。
【0100】
PI制御部71は、不平衡判定部76によって不平衡瞬時電圧低下の発生が判定された場合に、PI制御における比例項のゲイン及び積分項のゲインの少なくとも一方を低下させる。
【0101】
不平衡瞬時電圧低下が発生すると、座標変換部70から出力されるd軸信号及びq軸信号が、系統電圧の周波数の2倍の周波数で振動する場合がある。この時に、正常時と同じゲインでPI制御を行うと、例えば、系統電圧位相が振動してしまう。これにともない、例えば、主回路部12の出力電流が歪んでしまう。一方、PI制御のゲインを低く設定してしまうと、系統電圧の位相変動に対する追従性が低下してしまう。
【0102】
これに対し、制御部154では、正常時においては、PI制御のゲインを比較的高く設定しておき、不平衡瞬時電圧低下の発生時にPI制御のゲインを低くする。これにより、例えば、正常時において、系統電圧の位相変動に対する追従性の低下を抑制できる。そして、不平衡瞬時電圧低下の発生時に、主回路部12の出力電流が歪んでしまうことを抑制できる。電力変換装置10の動作をより安定させることができる。
【0103】
PI制御のゲインは、不平衡瞬時電圧低下の発生していない時と発生している時とで二値的に変化させてもよいし、不平衡瞬時電圧低下の不平衡度に応じて段階的に変化させてもよい。例えば、不平衡度(系統電圧の振幅の最大値の差分)が大きくなるほど、PI制御のゲインを低下させる。これにより、例えば、主回路部12の出力電流の歪みをより適切に抑制できる。電力変換装置10の動作をより安定させることができる。
【0104】
制御部154では、制御部134と同様に、周波数演算部73が、三相系統電圧のうちの一相を用いて周波数を算出する。これに限ることなく、
図10に表した制御部144と同様に、三相系統電圧のそれぞれの周波数の平均値を周波数演算部73に算出させてもよい。
【0105】
実施形態によれば、瞬時電圧低下時に運転を継続する場合の出力の低下を抑制した電力変換装置が提供される。
【0106】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電力変換装置に含まれる、スイッチング素子、インバータ、主回路部、第1電流検出部、制御部、電圧検出部、及び、第2電流検出部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0107】
その他、本発明の実施の形態として上述した電力変換装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電力変換装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0108】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。