(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
AIS(Automatic Identification System)装置は、技術の進歩と共に低廉化、小型化、低消費電力化および高機能化が図られ、航行の安全や利便性の向上のために多くの船舶に搭載されつつある。
【0003】
また、このようなAIS装置は、国際航海する船舶にあっては総トン数が300トン以上の船、領海内のみを航行する船舶にあっては総トン数が500トン以上の船、国際航海をする旅客船の全てに対して搭載義務が課されている。また、搭載義務がない船舶には、無線従事者が居なくても運用が可能な簡易型のAIS装置も多く搭載されつつある。
【0004】
図10は、AIS装置の構成例を示す図である。
図において、アンテナ31AIS、31GPSの給電点は、トランスポンダ40の第一のアンテナ端子および第二のアンテナ端子にそれぞれ接続され、そのトランスポンダ40のディジタル入出力ポートには、縦続接続された集配器50および操作表示部60が接続される。集配器50には、所望の外部機器やセンサ(何れも図示されない。)が接続される。
【0005】
トランスポンダ40は、以下の要素から構成される。
(1) 単極双投であって共通接点が上記第一のアンテナ端子に接続されたスイッチ(SW)41
(2) スイッチ41のメーク(ブレーク)接点に接続された第一の端子を有するハイブリッド(H)42
【0006】
(3) ハイブリッド42の第二ないし第四の端子にそれぞれ接続されたTDMA受信部43-1、43-2およびDSC受信部44
(4) これらのTDMA受信部43-1、43-2およびDSC受信部44の出力にそれぞれ接続された第一ないし第三の復調入力を有する変復調部45
【0007】
(5) 変復調部45の変調出力に接続された変調入力を有し、かつ出力がスイッチ41のブレーク(メーク)接点に接続された送信部46
(6) 上記第二のアンテナ端子に接続された入力を有するGPS受信部47
【0008】
(7) 変復調部45の入出力ポートとGPS受信部47の出力とにそれぞれ接続された入出力ポートに併せて、既述の集配器50に接続されたディジタル入出力ポートとを有する制御部48
【0009】
このような構成のAIS装置では、スイッチ41およびTDMA受信部43-1、43-2は、制御部48の配下で稼働し、他船からアンテナ31AISに到来した受信波を変復調部45に与える。
【0010】
変復調部45は、その受信波を復調することによって、
図11(a) に示す形式でメッセージの各フィールドに配置された伝送情報を得る。なお、このような伝送情報には、例えば、他船の識別情報、船首方位、船位、針路、速度等(以下、「通知情報」という。)が含まれる。制御部48は、このようにして得られた通知情報を所定の形式および内容の情報に変換し、かつ集配器50を介して操作表示部60に引き渡す。操作表示部60は、集配器50を介して制御部48から引き渡された情報を表示することにより、自船舶の航行にかかわる要員に通知する。
【0011】
一方、集配器50は、制御部48の配下で既述の外部機器やセンサと連係することにより、自船の識別情報、船首方位、船位、針路、速度等(以下、「通知情報」という。)を収集し、その制御部48に与える。
【0012】
GPS受信部47は、図示されないGPS衛星からアンテナ31GPSに到来した無線信号に所定の衛星航法を適用することにより、時刻(TDMA受信部43-1、43-2等によって行われる多元接続の基準となる。)と自船(アンテナ31GPS)の位置とを求め、その位置を上記自船の通知情報に組み込まれ得る情報として制御部48に引き渡す。
【0013】
制御部48は、これらの情報を所定の形式に変換して変復調部45に与える。変復調部45は、このような形式の情報で変調された送信波を制御部48の配下で生成する。送信部46は、制御部48の配下でスイッチ41およびアンテナ31AISを介して他船や陸上局宛に、上記送信波を送信する。
【0014】
なお、このような送信波は、制御部48の配下でTDMA受信部43-1、43-2が既述の受信波を受信するために行う同期制御の下で所定の時分割多重方式に適合した送信タイムスロット(制御部48の配下で予約され、あるいは自船に割り付けられる。)の期間に、バースト波として生成される。
【0015】
すなわち、AIS装置は、自船の通知情報を周辺の船舶や陸上局に自動的に通知し、かつ他の船舶から同様に通知される通知情報を取得して所定の処理を施すことにより、船舶の衝突予防、積荷情報等の把握、運航管理業務、海上保安業務、港湾等における運行管制の支援に供される。
【0016】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献5があった。
【0017】
(1) 「船舶から送信された船舶識別信号を受信して、該船舶識別信号から前記船舶の少なくとも位置情報を抽出する船舶位置情報抽出手段と、レーダの探知データから物標の位置を捕捉・追尾する物標捕捉追尾手段と、前記船舶位置情報抽出手段により得られた船舶の位置または速度ベクトルを示す第1のマーク、および前記物標捕捉追尾手段により得られた物標の位置または速度ベクトルを示す第2のマークを同一の表示部に表示するとともに、前記第1のマークの表示位置またはその周辺内において、第1のマークを第2のマークより優先して表示する制御手段とを備える」ことによって、「船舶自動識別装置(AIS)による他船のマークと、自動衝突予防援助装置(ARPA)による物標のマークとを同一表示画面上に表示する際の表示内容の煩雑さを解消し、またARPAの能力を有効に利用できるようにする」点に特徴がある船舶表示装置…特許文献1
【0018】
(2) 「他船の少なくとも位置の情報を含む他船情報を検知する検知手段と、該検知手段により検知された他船情報の重要度を所定条件に従って求め、予め設定した範囲の重要度をもつ他船情報を抽出する他船情報抽出手段と、抽出された他船情報に対応する他船の位置をグラフィック表示する表示制御手段とを備える」ことによって、「他船情報を検知して、他船と自船との相対位置関係または他船同士の相対位置関係をグラフィック表示する際に、他船の数が多くなった時の表示の煩雑化を防いで視認性を高める」点に特徴がある他船表示装置…特許文献2
【0019】
(3) 「ARPAレーダ装置併載船舶のAIS装置が、インターフェイスを介してARPAレーダ装置に接続され、受信する近傍船舶の動的情報とARPAレーダ装置から取得するレーダシンボル情報とを、刻々に比較し、所定の一致が認められる動的情報がないレーダシンボル情報を送信停止警戒情報とし、所定の一致が認められるレーダシンボル情報がない動的情報を無実体通報警戒情報とし、これらの警戒情報を表示装置にて表示して運用者に警戒を促すと共に、前記警戒情報を通報に変換して近傍船舶に送信する」ことによって、「送信AIS装置の送信停止や実体を伴わない動的情報、送信情報の詐称・欺瞞を受信AIS装置が検出して警戒を促すことにより、不正な情報送信に対する抑止効果が働く環境を実現し、ひいてはAIS装置の信頼性を向上する」点に特徴があるAIS送受信情報の信頼性向上方法…特許文献3
【0020】
(4) 「船舶に搭載されて航行支援を行う船舶用航行支援装置において、目標船から送信される目標船情報を受信するAIS(船舶自動識別)装置と、レーダのレーダ信号から捕捉した目標船を追尾するARPA(自動衝突予防援助)装置と、自船位置を特定する自船位置情報特定手段と、前記受信した目標船位置情報と前記特定した自船位置情報から目標船の自船に対する相対位置を演算する目標相対位置演算手段と、前記目標相対位置演算手段で演算された目標船の相対位置から、その目標船と同一の、ARPA装置で追尾中の目標船を特定する同一目標判定手段と、AIS装置にて受信される目標船情報の精度を監視して、AIS装置で受信される目標船情報が誤っているか否かを判定するAIS情報監視手段とを備え、ある目標船に対して、AIS情報監視手段がその目標船情報を誤っていると判定したときに、異常信号を出力する」ことによって、「AIS装置とARPA装置の特性を生かして、ARPA装置によりAIS装置の補完を行い、AIS装置で受信される目標船情報の信頼性を高める」点に特徴がある船舶用航行支援装置…特許文献4
【0021】
(5) 「船舶に搭載されて航行支援を行う船舶用航行支援装置において、目標船または第3者から送信される目標船位置情報を受信する目標船情報受信手段と、自船位置を特定する自船位置情報特定手段と、前記受信した目標船位置情報と前記特定した自船位置情報から目標船の自船に対する相対位置を演算する目標相対位置演算手段と、レーダのレーダ信号から、目標船を継続して追尾し、その履歴から目標船の運動情報を提供する目標船捕捉追尾手段と、前記目標相対位置演算手段で演算された目標船の相対位置と目標船捕捉追尾手段で追尾中の目標船の相対位置とを比較することにより、目標船捕捉追尾手段で追尾中の目標船と同一の、前記目標船情報受信手段でその目標船位置情報を入手した目標船を特定する同一目標判定手段とを備え、前記同一目標判定手段は、さらに、同一判定を行う期間を制限する同一目標判定期間制限手段を備える」ことによって、「レーダ信号から目標船捕捉追尾を行うものと、目標船等から送られてくる目標船情報を受信するものとの、それぞれの特性を生かして補完を行い、目標船についての情報の統合を効率的に行う」点に特徴がある船舶用航行支援装置…特許文献5
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態を示す図である。
本実施形態では、AIS装置10A、10Bは、異なる船舶A、Bにそれぞれ備えられる。
なお、船舶A、Bは、例えば、互いにAIS信号(メッセージ)の送信端や受信端となるAIS装置が個別に搭載された船舶に該当する。
【0039】
このようなAIS装置10Aの構成は、
図10に示すAIS装置とは、制御部48に代えて制御部11Aが備えられた点を除いて同じである。なお、AIS装置10Aの構成要素の符号の末尾には、上記AIS装置10Bの構成要素との峻別のために、記号「A」を付記する。
さらに、AIS装置10Aの構成要素の内、
図10に示すものと機能および構成が同じものについては、上記記号「A」が末尾に付加された点を除いて同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0040】
また、AIS装置10Bの構成については、上記AIS装置10Bの構成と同じである。したがって、AIS装置10Bの構成要素には、上記記号「A」に代わる記号「B」が末尾に付加された同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0041】
図2は、本発明の第一の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
図3は、本発明の第一の実施形態の動作を説明する図である。
以下、
図1、
図2、
図3および
図11を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0042】
本発明の特徴は、本実施形態では、AIS装置10A、10Bが後述するように連係することによって、偽船舶の識別が実現される点にある。
AIS装置10Aでは、制御部11Aは、以下の処理を行う。
【0043】
(1) 船舶Aの識別情報IDAに併せて、図示されない測位センサから集配器50を介して与えられた船舶Aの位置(GPS受信部47Aが行う測位演算の下で得られた位置で代替される可能性がある。)を含んだ「通知情報」を生成する(
図2ステップS1,
図3(1))。
(2) その「通知情報」の全てまたは一部であって、上記「通知情報」または船舶Aの存否(真偽)の判別の基準として好適なもの(以下、「基準情報」という。)を既知の秘密鍵で暗号化することによって、「暗号情報」を生成する(
図2ステップS2,
図3(2))。
【0044】
(3) 変復調部45Aおよび送信部46Aを介して、上記「通知情報」をクラスA位置通報(メッセージ1)(
図11(b))として送信する(
図2ステップS3,
図3(3))。
(4) 変復調部45Aおよび送信部46Aを介して、上記「暗号情報」をバイナリ放送メッセージ(メッセージ8)(
図11(c))として送信する(
図2ステップS4,
図3(4))。
【0045】
なお、このようなクラスA位置通報とバイナリ放送メッセージとの送信の順序、インターバル、対応関係については、予め決められたルールに基づいて規定される。
一方、AIS装置10Bでは、制御部11Bは、以下の処理を行う。
【0046】
(1) TDMA受信部43B-1(43B-2)および変復調部45Bと連係することにより、上記「通知情報」を受信して蓄積する(
図2ステップS5,
図3(5))。
(2) TDMA受信部43B-1(43B-2)および変復調部45Bと連係することにより、上記「暗号情報」を受信する(
図2ステップS6,
図3(6))。
【0047】
(3) その「暗号情報」を既述の秘密鍵に適合した公開鍵に基づいて復号化することによって、上記「基準情報」を復元する(
図2ステップS7,
図3(7))。
(4) これらの「通知情報」と「基準情報」との相関や照合をとることにより、この「通知情報」または船舶Aの真偽を判別する(
図2ステップS8,
図3(8))。
【0048】
(5) 集配器50Bを介して操作表示部60Bに、上記判別の結果を示す2値情報に併せて既述の「通知情報」を引き渡す(
図2ステップS9,
図3(9))。
ここに、船舶Aは偽船舶ではなく、かつAIS装置10Aは、本発明が適用された正規のAIS装置である。
【0049】
しかし、例えば、パソコン等により不正にAISにアクセスした不正規のAIS装置では、上記秘密鍵や公開鍵を取得することができないために、「暗号情報」をバイナリ放送メッセージとして送信することはできない。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、AISの本来的な多元接続方式、通信手順、メッセージの内容・形式等の仕様に対する適合性が損なわれることなく、既存のハードウェア資源が有効に活用されることによって、複雑かつ多くの処理量が必要な無線航法や衛星航法が適用されることなく簡便に確度高く、偽船舶の識別や「通知情報」の真偽の判別が実現される。
【0051】
なお、「基準情報」の秘匿性の確保は、既述の公開鍵方式により限定されず、例えば、以下に列記される何れの構成により実現されてもよい。
・ 共通鍵方式
・ 秘密鍵方式
・ セッション鍵方式
・ ドングル(絶対時刻に同期した計時の結果に基づいて算出され、かつ更新される鍵を与えるものを含む。)の採用
【0052】
また、このような暗号化や復号化のために適用される鍵は、秘匿性の担保等のセキュリティが確保されるならば、AIS装置10A、10Bに既知の情報として予め与えられ、あるいはセキュアな通信路を介してアクセス可能な証明局によって適宜配信されてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、「暗号情報」に変換される「基準情報」には、以下の何れが含まれてもよい、
・ 「通知情報」の全てまたは要部の写し
・ 「通知情報」の真偽の判別に適用されるべきアルゴリズム
【0054】
また、「暗号情報」の無線伝送は、以下の何れの形態で行われてもよい。
(1) バイナリ放送メッセージ(メッセージ8)としてではなく、多様なメッセージのスペアフィールドの活用(ビットスチール方式の採用を含む。)によって形成されるチャネルを介する伝送
【0055】
(2) 暗号化に代えて、あるいは暗号化に併せて施される「圧縮符号化」の採用
が図られて
【0056】
さらに、本実施形態は、制御部11A、11Bによって実行され、かつ既述の処理を行うソフトウェアによって構成されている。
【0057】
しかし、本実施形態は、以下に列記するように、アンテナ31AAIS(31BAIS)とトランスポンダとの間に介装されに下記の何れのアダプタとして構成されてもよい。
(1) 受信波の復調と送信波の変調と行い、かつベースバンド領域で既述の処理(
図2ステップS1〜S9)に等価な処理を行うアダプタ
【0058】
(2) 既述の処理(
図2ステップS1〜S9)の内、バイナリ放送メッセージ(メッセージ8)として受信された「暗号情報」の抽出および復号化を行うことにより「基準情報」を復元し、その「基準情報」を受信波に多重化してトランスポンダに引き渡し、あるいは制御部11A(11B)に直接引き渡すアダプタ
【0059】
(3) 既述の処理(
図2ステップS1〜S9)の内、バイナリ放送メッセージ(メッセージ8)として送信されるべき「基準情報」が制御部11A(11B)から直接、または送信波に重畳された信号として引き渡され、その「基準情報」を示すバイナリ放送メッセージ(メッセージ8)の生成およびこれに該当する無線パケット信号を生成すると共に、他のメッセージを示すバースト状の送信波と同様にアンテナ31AAIS(31BAIS)を介して送信するアダプタ
【0060】
〔第二の実施形態〕
図4は、本発明の第二の実施形態を示す図である。
図において、
図10に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0061】
本実施形態の構成は、
図4に示すように、以下の点で
図10に示す従来例の構成と異なる。
(1) 制御部48に代えて制御部12が備えられる。
(2) 制御部12の所定の通信ポートに接続され、かつ無線LANを介するイッタネットへのアクセスに供されるプロキシサーバ13が備えられる。
【0062】
(3) 上記インタネット上には、船舶運航管理会社や船会社などの信頼し得る機関に個別に備えられた運行管理データベース(図示されない。)に、専用の通信路やセキュアな通信路を介してアクセスするデータベース14が配置される。
【0063】
図5は、本発明の第二の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
図6は、本発明の第二の実施形態の動作を説明する図である。
以下、
図4、
図5および
図6を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0064】
データベース14は、上記船会社に属する個々の船舶について運行管理データベースに登録された運行計画を適宜集約し、かつ更新しつつ蓄積する。
一方、制御部12は、他船に搭載されたAIS装置から無線伝送され、かつTDMA43-1(43-2)および変復調部45によって復元された「通知情報」(例えば、「クラスA位置通報」(メッセージ1)」を取り込むと、以下の処理を行う。
【0065】
(1) 「通知情報」に含まれるMMSI番号、緯度、経度等を抽出する(
図5ステップS1,
図6(1))。
(2) そのMMSI番号に併せてその時点における時刻Tを含む「問い合わせ」を生成する(
図5ステップS2,
図6(2))。
【0066】
(3) プロキシサーバ13およびインタネットを介して上記データベース14に、その「問い合わせ」を送信する(
図5ステップS3,
図6(3))。
(4) この「問い合わせ」に応じてデータベース14から応答として転送された運行計画を取得する(
図5ステップS4,
図6(4))。なお、このような運行計画が取得できなかった場合には、後述する処理(5)〜(7)を省略する。
【0067】
(5) この運行計画の下で該当する他船が上記時刻Tに位置すべき水域を特定する(
図5ステップS5,
図6(5))。
(6) 上記緯度および経度がその水域に所定の精度で一致するか否かを判別し、その判別の結果を示す2値情報を生成する(
図5ステップS6,
図6(6))。
(7) 集配器50を介して操作表示部60に、このような2値情報に併せて既述の「通知情報」を引き渡す(
図5ステップS7,
図6(7))。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、AISの本来的な多元接続方式、通信手順、メッセージの内容・形式等の仕様に対する適合性が損なわれることなく、既存のハードウェア資源が有効に活用されるが、複雑かつ多くの処理量を要する無線航法や衛星航法が適用されることなく、信頼性が高い運用計画を基準として簡便に確度高く、偽船舶の識別や「通知情報」の真偽の判別が実現される。
【0069】
なお、本実施形態では、「通知情報」やその「通知情報」を送信した船舶に関する真偽の判別の基準は、上述した水域と緯度および経度との相関性のみに限定されず、その判別の厳格さの度合いが複数段階のうちの所望の段階に設定されるべき場合には、運行計画および上記「問い合わせ」に盛り込まれるべき項目およびこれらの精度が好適に設定され、かつ操作表示部60等を介してユーザによって与えられる指示に応じて適宜切り替えられてもよい。
【0070】
また、このような基準に盛り込まれるべきアイテムおよび重要度には、航行の輻輳度、海賊の出没しやすさ等々のように、該当する船舶が位置する海域の属性が反映されてもよい。
【0071】
さらに、これらの項目が多数に亘る場合には、項目毎に重要度を示す重みと偏差との積和と所定の閾値との大小関係として、上記2値情報が求められてもよい。
【0072】
また、このような閾値は、既定の定数に限定されず、例えば、ユーザによって設定や更新が適宜行われ、あるいは上記水域の属性に適した値として求められたり更新されてもよい。
【0073】
さらに、データベース14に対する問い合わせとその応答とは、例えば、以下の何れの形態で実現されてもよい。
(1) ウェブサービス
(2) 既述の船舶運航管理会社や船会社に備えられたデータベースに対してデータベース14を介することなく直接行われるアクセス
(3) インタネットを介することなく転送可能なバイナリ放送メッセージ(メッセージ8)の活用
【0074】
また、運行計画の取得が上記バイナリ放送メッセージ(メッセージ8)として行われる場合には、本実施形態は、以下の全てまたは任意の組み合わせとして構成されてもよい。
(1) データベース14が、バイナリ放送メッセージ(メッセージ8)の送受が可能な陸上局に組み込まれ、あるいはインタネットを介してその陸上局によってアクセスされる。
(2) 運行計画の情報量が大きい(大きくなり得る)場合には、暗号化に併せて、あるいはその暗号化に代えて圧縮符号化が図られる。
【0075】
さらに、このような運行計画は、真偽の判別の対象となる船舶や「通知情報」が急速には変化しない状況に対する好ましい対処のため、制御部12の主記憶や外部記憶に一括してダウンロードされ、あるいはキャッシュされてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、既述の通りに制御部12によって実行されるソフトウェアは、例えば、
図10に示す制御部48と連係するコプロセッサやパッケージとして組み込まれることにより、従来のAISトランスポンダ、あるいはその他のAISトランスポンダによる偽船舶の識別の確度を高める装置として構成されてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、制御部12とデータベース14との連係(機能分散や負荷分散)の形態については、既述の形態に限定されず、両者の連係に必要な通信路が確保され、その通信路に要求される伝送速度や実時間性が実現されるならば、如何なるものであってもよい。
【0078】
さらに、上述した各実施形態では、「通知情報」等の真偽の判別の対象となる船舶は、以下の何れの船舶であってもよい。
(1) 操作表示部60を操作する操作者によって指定された船舶
(2) (直近に)位置が通知された船舶
【0079】
〔第三の実施形態〕
図7は、本発明の第三の実施形態を示す図である。
図において、
図10に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
本実施形態の構成は、
図7に示すように、以下の点で
図10に示す従来例の構成と異なる。
(1) レーダ装置70が備えられる。
(2) このレーダ装置70の出力は判別装置80の第一のポートに接続される。
(3) 判別装置80の第二のポートには集配器50の特定の出力ポートが接続され、その判別装置80の出力に指示装置90が接続される。
【0080】
図8は、本発明の第三の実施形態における判別装置の動作フローチャートである。
図9は、本発明の第三の実施形態の動作を説明する図である。
以下、
図7、
図8および
図9を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0081】
レーダ装置70は、トランスポンダ40と共に船舶に搭載され、その船舶の周辺に位置する個々の船舶の探知を行い、この探知の結果を示す指示画像と、その時点におけるレーダ装置70の実体的な覆域(レーダ装置70が正常に稼働しているか否かも意味する。)とを判別装置80に逐次引き渡す(
図9(1))。
このような指示画像には、以下の情報が含まれる。
【0082】
(1) 一般的な指示画像としてして表示されるレーダ画像情報V
(2) そのレーダ画像情報V上に表示されるべき船舶毎の位置(以下、「他船位置情報」という。)p1〜pn
【0083】
なお、このような他船位置情報p1〜pnは、以下の項目に基づいて算出された緯度および経度の対であると仮定する。
・ 自船の位置
・ 自船の船首方向
・ レーダ装置70によって物標の探知が行われるべきレンジの範囲
【0084】
一方、トランスポンダ40の各部は、従来例と同様に、アンテナ31AISに到来した無線信号毎に送信端(他船)である他船から通知された「通知情報」(クラスA位置通報(メッセージ1))I
1〜I
Nを識別する(
図9(2))。制御部48は、集配器50を介して判別装置80に、これらの通知情報I
1〜I
Nを逐次引き渡す(
図9(3))。
【0085】
判別装置80は、以下の処理を行う。
(1) 通知情報I
1〜I
Nの内、含まれる位置情報が指示装置90の指示画面上に表示されるべき水域(上記覆域にも含まれる。)内にある通知情報I
1′〜I
m′を抽出する(
図8ステップS1,
図9(4))。
(2) 上記通知情報I
1′〜I
m′の内、物標探知の結果として上記指示画面が得られるべきスキャンの期間に時間軸上で重なり、あるいは直近の所定の期間内に得られた通知情報i
1′〜i
m′を特定する(
図8ステップS2,
図9(5))。
【0086】
(3) これらの通知情報i
1′〜i
m′に個別に含まれる位置情報(緯度および経度)の列を抽出する(
図8ステップS3,
図9(6))。
(4) 上記他船位置情報p1〜pnの内、このようにして抽出された位置情報の何れかとの「相関性」が所定の上限値を超える「特定の他船位置情報」を識別する(
図8ステップS4,
図9(7))。
【0087】
(5) 上記「特定の他船位置情報」の何れかに対応する船舶(以下、「真船舶」という。)と、このような「真船舶」に該当しない「偽船舶」との何れか一方として、レーダ画像V上に物標として表示されるべき各船舶を識別する(
図8ステップS5,
図9(8))。
【0088】
(6) そのレーダ画像V上に表示される個々の船舶が「真船舶」と「偽船舶」との何れに該当するかを目視で容易に峻別できるように、以下の表示属性の組み合わせの内、好適な組み合わせをレーダ画像Vに適用する(
図8ステップS6,
図9(9))。
【0089】
・ 船舶の位置やその船舶の船首方向等を示すシンボル(例えば、「△」マーク)の全体または一部の線種、太さ、色、形、有無
・ 上記シンボルの塗りつぶし、点滅、揺れの有無、修飾(例えば、「?」等のマークの重畳)の形態(色、濃淡、模様であってもよい。)
・ 上記シンボルに付帯し、「MMSI番号」、「コールサイン」、「船名」等の全てまたは一部を示す文字のフォント、色、フォントの変形(斜体、ボールド、長体、平体、袋文字、反転およびその形態)等
【0090】
・ 影、立体感、点滅の有無や形態
・ 光沢の有無や程度およびその対象部位
・ 不確かさの有無や程度を示唆(暗示)するマークや文字
・ 上記(4) 項に既述の「相関性」のように、「偽船舶に該当する確からしさ」の程度を示す文字や画像(の重畳)
【0091】
なお、このような表示属性により(幾分なりとも)「偽船舶」らしい船舶がレーダ画像V上に位置する場合には、音声メッセージと警報音との双方もしくは何れか一方が並行して発せられてもよい。
【0092】
したがって、本実施形態によれば、AISの本来的な多元接続方式、通信手順、メッセージの内容・形式等の仕様に対する適合性が損なわれることなく、レーダ装置の資源が有効に活用されると共に、複雑かつ多くの処理量を要する無線航法や衛星航法が適用されることなく、しかも、指示画面の目視に頼ることなく偽船舶の識別や「通知情報」の真偽の判別が簡便に確度高く実現される。
【0093】
また、本実施形態によれば、偽船舶であるか否かの判別の結果が表示属性の相違として自動的に指示画面上に表示されるので、多数の船舶が密集する水域(海域)における運用も容易に可能となる。
【0094】
さらに、本実施形態によれば、AISが正常に機能している状態では、レーダ装置70が正常に稼働しているか否かの判別と、そのレーダ装置70による物標探知が可能な水域や地域であるか否かの判別との何れもが可能となる。
【0095】
なお、本実施形態では、既述の他船位置情報p1〜pnは、レーダ装置70によってレーダ画像情報Vに施される画像処理とその地理的なマッピングとの下で得られている。
しかし、これらの他船位置情報p1〜pnは、上記レーダ装置70等によって行われる目標追尾等の処理によって求められてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、上記「特定の他船位置情報」の識別には、例えば、「他船の物理的なサイズ」のように通知情報として通知された該当する他船の属性と、レーダ装置70の実体的な探知性能や覆域との適否や矛盾の有無が参酌されてもよい。
【0097】
さらに、上述した各実施形態では、「通知情報」や他船にかかわる真偽の判別の基準は、複数のクラス(例えば、「完全に信用できる」、「ほぼ信用できる」、「信用できる」、「疑わしい」、「かなり疑わしい」、「完全に疑わしい」等)に区分されて設定されるべき場合には、例えば、操作表示部60を介して操作者によって与えられる指示に応じて、あるいは制御部48、11A、11B、12または判別装置80によって行われる所定の処理の下で適宜設定されてもよい。
【0098】
また、レーダ画像情報V上に盛り込まれるべき船舶等の目標については、上記クラスの内、操作者によって与えられる指示に応じて「任意のクラスの組み合わせ」(例えば、疑わしい船舶のみに限定される。)に設定されれてもよい。
【0099】
さらに、本実施形態では、判別装置80は、トランスポンダ40とレーダ装置70と何れか一方に組み込まれ、あるいは双方に分散して組み込まれてもよい。
【0100】
また、これらの判別装置80、トランスポンダ40およびレーダ装置70の機能や負荷の分散の形態は、如何なるものであってもよい。
【0101】
さらに、本実施形態では、制御部48および判別装置80によって行われる処理は、例えば、その制御部48と連係するコプロセッサやパッケージによって行われることにより、従来のAISトランスポンダ、あるいはその他のAISトランスポンダの活用により「偽船舶の識別の確度を高める装置」として構成されてもよい。
【0102】
また、このような「他船の存否や、その確度の判定」は、例えば、本願と同日の出願に係る発明と、既述の各実施形態の全てまたは一部との組み合わせにより、さらに確度高く実現されてもよい。
【0103】
さらに、上述した各実施形態では、到来する受信波の送信端は、船舶局のみに限定されず、陸上局、ブイ等に搭載されたAISトランスポンダであってもよい。
【0104】
また、上述した各実施形態では、本発明は、船舶局や陸上局に適用されるAISに適用されている。
しかし、本発明は、このようなAISに限定されず、例えば、以下に連記される何れのシステムや装置にも同様に適用可能である。
【0105】
(1) 低軌道を周回する人工衛星にAIS受信機が搭載されることにより、沿岸から80キロメートル以上離れている大洋上の船舶等の航行状態も監視可能とする「人工衛星AIS」
【0106】
(2) 海上の捜索や監視を行う航空機等に搭載されるAISトランスポンダ
(3) 航空機が絶えずその位置や高度を他の航空機および地上局に向けて報知する放送型自動従属監視システム(ADS−B:Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)
【0107】
さらに、上述した各実施形態の構成は、既述の構成に限定されず、本発明の特徴的な処理や機能が実現されるならば、ハードウェアおよびソフトウェアの構成と、各部の機能や負荷の分散の形態との何れも如何なるものであってもよい。
【0108】
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。