(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面コイルと、回路基板と、前記平面コイルと前記回路基板とを電気的に接続するコイルリード部材と、前記回路基板に接続された端子リード部材とを備えた回路ユニットを作製する工程と、
前記回路ユニットの前記回路基板をラミネート電池の負極端子及び正極端子と溶接する工程と、
からなることを特徴とする電池モジュールの製造方法。
前記平面コイルに被覆された前記磁性体シートは、前記ラミネート電池の外周面のうち前記ラミネート電池の接着シール部の折り返し基点となる面に貼り付けられることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の電池モジュールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ラミネート電池のフラット面に、シート状の電磁シールド膜を介して平面コイルを配置し磁気誘導作用で充電される電池モジュールを組み立てる場合、上記従来技術では、平面コイルを回路基板に半田付けしたり、ラミネート電池に接着したり、といった数々の組立作業をラミネート電池と一緒に行う必要がある。これらの組立作業は、ラミネート電池表面に熱、傷、ピンポール、打痕などの様々なダメージを及ぼす場合がある。特に半田付けはラミネート電池表面に熱ダメージを及ぼす可能性があった。そして、当該ダメージは、ラミネート電池の長期信頼性を低下させる原因になる。したがって、ラミネート電池に熱ダメージを与え無い信頼性の高い電池モジュール構成が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、組立時にダメージを与えないことにより、長期信頼性の高い電池モジュール、携帯電子機器、および電池モジュールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
第1の発明は、平面コイルと、回路基板と、前記平面コイルと前記回路基板とを電気的に接続するコイルリード部材と、前記回路基板に接続された端子リード部材とを備えた回路ユニットを作製する工程と、
前記回路ユニットの前記回路基板を前記ラミネート電池の負極端子及び正極端子と溶接接合する工程と、からなることを特徴とする。
【0010】
第
1の発明によると、電池モジュールを、電磁誘導によりラミネート電池に充電する機能に係る平面コイルや回路基板などが予め回路ユニットとして一体化されたものと、回路ユニット内の回路基板と接続されるラミネート電池と、で構成した。すなわち、一体的な回路ユニットにラミネート電池を接続する構成であるので、従来技術のように回路ユニット内の個々の部品を電池モジュールに組み込む組立作業によって、ラミネート電池表面に熱ダメージ、傷、ピンポール、打痕などのダメージを及ぼす危険性がない。さらに、本発明の電池モジュールでは、回路ユニット内の平面コイルに接続されるコイルリード部材は可撓性を有しているので、平面コイルを自在に配設できる。例えば、ラミネートフィルムと所定距離離間させた状態に平面コイルを配置できる。そのため、平面コイルに発生した電流によって、ラミネート電池、特にラミネートフィルムの金属層に渦電流が流れて発熱を伴うことを好適に防止できるので、ラミネート電池の信頼性を高めることができる。
また、回路ユニットと負極端子及び正極端子とは溶接接合により接続されるので、半田を用いた接合を行う場合に比べて半田ボールの飛散等を回避できる。
【0012】
第
2の発明は、第
1の発明において、前記平面コイルは、一方の面に磁性体シートが配設されていることを特徴とする。
第
3の発明は、第1
または第2の発明のいずれか一つの発明において、前記平面コイルは、厚み方向に貫通する空心部と、前記空心部に埋設された磁性体シートとを有することを特徴とする。
第
2、第
3の発明によると、平面コイルの一面や当該平面コイルの空心部に磁性体シートが備わるので、本電池モジュールをワイヤレス給電用の送信器で給電する際に、当該送信器に備わる送信コイルとの結合効率の向上が期待できる。
【0013】
第
4の発明は、第
2の発明において、前記コイルリード部材の一部は、前記平面コイルの前記磁性体シートに接続され、前記コイルリード部材と前記磁性体シートとの接続部は、絶縁性樹脂からなる補強樹脂で覆われたシート補強樹脂部を有することを特徴とする。
第
4の発明によると、コイルリード部材と磁性体シートとの接続部に絶縁性樹脂を設けているので、コイルリード部材の引張強度を向上させることができる。
【0014】
第
5の発明は、第1から第
4の発明のいずれか一つの発明において、前記コイルリード部材と前記回路基板との接続部は、絶縁性樹脂からなる補強樹脂で覆われた基板補強樹脂部を有することを特徴とする。
第
5の発明によると、コイルリード部材と回路基板との接続部に絶縁性樹脂を設けているので、コイルリード部材の引張強度を向上させることができる。
【0015】
第
6の発明は、第
2または第
4の発明において、前記磁性体シートは、前記平面コイルが配設されていない面が前記ラミネート電池に接着されていることを特徴とする。
第
6の発明によると、平面コイルが固定位置に配置されることとなるので、当該平面コイルに接続されたコイルリード部材の飛び出しが少なくて扱いやすい。また、本請求項にかかる電池モジュール電池では、平面コイルとラミネート電池とを一体的に扱えるので、携帯電子機器に組み込まれた状態でも、交換メンテナンスが容易になる。
【0016】
第
7の発明は、第
6の発明において、前記磁性体シートの外形は、前記ラミネート電池の外形形状と同じであることを特徴とする。
第
7の発明によると、ラミネート電池1の貼り付け面と同じ外形形状に形成されることで、平面コイルを磁性体シートに貼り付ける際の基準位置がラミネート電池の外形と合わせやすくなる。
【0017】
第
8の発明は、第
6または第
7の発明において、前記磁性体シートは、貫通孔を有するスペーサシートと積層され、前記平面コイルは、前記貫通孔の中に配置されていることを特徴とする。
第
8の発明によると、平面コイルをスペーサシートの貫通孔に貫通させているため、平面コイルを携帯電子機器に固定する上でスペーサシートを介した固着を行うことができる。しかも、スペーサシートと平面コイルとは厚みが等しいので、携帯電子機器への固定面を平坦にすることが可能となり、固定面の面積をかせげるので携帯電子機器に貼り付ける際の接着力を損なわない。
【0018】
第
9の発明は、第
6の発明において、前記磁性体シートは、前記ラミネート電池の前記磁性体シートの接着されている面の側面まで覆うことを特徴とする。
第
9の発明によると、磁性体シートの接着されている面の側面まで覆うので、平面コイルに被覆された磁性体シートをラミネート電池に接着する場合に、ラミネートフィルムの外周部に生ずる膨らみを防止できるので、強固な接着を可能ができる。
【0019】
第
10の発明は、第
7から第
9の発明のいずれか一つの発明において、前記平面コイルに被覆された前記磁性体シートは、前記ラミネート電池の外周面のうち前記ラミネート電池の接着シール部の折り返し基点となる面に貼り付けられることを特徴とする。
第
10の発明によると、平面コイルに被覆された磁性体シートがラミネートフィルムの接着シール部の折り返し基点となる平坦面に貼り付けられることにより、信頼性のある強固な接着を実現できる。
【0020】
第
11の発明は、第
8の発明において、前記スペーサシートは、熱伝導性両面粘着テープを介して携帯電子機器ケースに固定されていることを特徴とする。
第
11の発明によると、スペーサシートの上層に熱伝導性両面粘着テープが貼り合わされているため、平面コイルの携帯電子機器への固着が一層容易に実現できる。
【0021】
第
12の発明は、第1から第
5の発明のいずれか一つの発明に記載の
製造方法により製造した電池モジュールがケーシングの内壁面に固定された携帯電子機器
の製造方法であって、前記平面コイルは、前記ラミネート電池が固定された内壁面と異なる他の内壁面に熱伝導性両面粘着テープを介して固着されることを特徴とする。
第
12の発明によると、平面コイルが携帯電子機器のケーシング内壁面のうち電池モジュールの固定面と異なる内壁面に固定されるので、ラミネート電池を構成するラミネートフィルム(金属フィルム)と離間した状態で平面コイルを配置可能となり、平面コイルの発熱の影響などを緩和できる。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本発明は、ラミネート電池の特徴である、軽量、薄型、低コストのメリットを活かし高い信頼性を有する電池モジュール、携帯電子機器、および電池モジュールの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)
以下、
図1〜
図4を用いて、本発明の実施例1に係る電池モジュール、携帯電子機器、および電池モジュールの製造方法について説明する。
図1は、本実施例1に係る電池モジュールの基本構成を示す模式的図である。
図2は、
図1に示す電池モジュールを携帯電子機器に組み込んだ状態を模式的に示す縦断面図である。
図3は、後述の電池モジュールを構成する回路ユニットとラミネート電池とを接続する前の状態を表す模式図である。
図4は、
図1に示す電池モジュールに係る回路図である。
【0025】
「電池モジュールの各部構成について」
まず、電池モジュール12の各部構成について説明する。
実施例1に係る電池モジュール12は、例えば、スマートフォン等の各種の携帯電子機器に組み込まれて各部に電力を供給するとともに、ワイヤレス給電用の送信器(図示省略)を介して充電可能に構成される。当該電池モジュール12、少なくとも、携帯電子機器に電力を供給するラミネート電池1と、ラミネート電池1に貼り付けられていない平面コイル3と、ラミネート電池1上に載置された回路基板5と、平面コイル3と回路基板5とを接続するコイルリード線4と、端子リード線11を介して回路基板5と接続され携帯電子機器への給電口となるコネクタ10を含んで構成される。なお、以下の説明では、平面コイル3と、コイルリード線4(コイルリード部材)と、回路基板5と、コネクタ10及び端子リード線11(端子リード部材)と、を総称したもの、すなわち、電池モジュール12のうちラミネート電池1を除いた構成を回路ユニット13とする。
【0026】
ラミネート電池1は、例えば、充放電可能な二次電池であって、電圧が3〜3.7Vと高く、且つ高エネルギー容量密度を有するLiを用いた電池である。ラミネート電池1は、
図2に示すように、電極体1aの周面をラミネートフィルム1bで覆い、当該ラミネートフィルム1b同士を電極体1aの周縁を気密状態で密着させて形成される。
【0027】
電極体1aは、正極材、セパレータ、負極材、を含む電極を多層に亘り積層させたものである。ラミネートフィルム1bは、樹脂層や金属層のフィルムを含んで構成され、
図1に示すように、ラミネート電池1の長手方向に対して電極体1aよりも長く形成されることで、回路基板5を載置可能な形状からなる。また、ラミネート電池1は、ラミネートフィルム1bの回路基板5の載置箇所(部品実装面、テラス部)に、正極端子15と負極端子14とを有し、回路基板5との電気的導通が可能に構成される。
【0028】
正極端子15は、例えばAl材、負極端子14は、例えばNi材よりなる。正極端子15と負極端子14とは、例えば、回路基板5の部品実装面の裏面側にあるNi材で覆われたパターンランド部に溶接される。溶接接合により接続されるので、半田を用いた接合を行う場合に比べて半田ボールの飛散等を回避できる。なお、正極端子15のAl材が溶接しづらい場合、当該Al材にNi材薄板を中継ぎして溶接しても良い。これにより、溶接時のスパークや飛散がなく、ラミネートフィルム1bに対して、ダメージなく溶接できる。溶接以外の正極端子15と負極端子14のパターンランド部との接続方法としては、超音波接合、コネクタ、圧着、などの発熱、飛散を伴わない接続方法を用いても良い。
【0029】
平面コイル3は、例えば、平面視円形状で厚み方向に亘って貫通する空心部を有する空心コイルであって、表面に絶縁層が設けられた単線又は縒り線の導線を略同一平面内に渦巻き状に巻回したコイルである。平面コイル3は、コイルリード線4を介して回路基板5と接続され、ワイヤレス給電用の送信器(図示省略)に備わる送信コイルから共振周波数、または共振周波数近くの周波数で発信される交流磁場と電磁的に結合し、交流電流を生じさせる。ここで、平面コイル3は、
図1に示すように、ラミネート電池1から物理的に離間した状態、すなわち、ラミネート電池1に貼付されない状態に配置される。具体的には平面コイル3は、
図2に示すように、携帯電子機器ケース20(携帯電子機器のケーシング)の内面に、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19(熱伝導性両面粘着テープ)を介して貼り付けられることで、ラミネート電池1(ラミネートフィルム1b)と離間した状態に固定される。当該平面コイル3の配置構造に関しては、後段で詳述する。
【0030】
なお、平面コイル3を構成する空心コイルの空心部は、磁性体で埋める構成としても良い。この様な空心コイルは、例えば、軟磁性材料が分散された樹脂からなる磁性体シートを空心部に埋設させて形成される。当該空心コイルによると、ワイヤレス給電用の送信器に備わる送信コイルとの結合効率の向上が期待できる。また、平面コイル3のコイル形状は、円形以外にも楕円形、四角形などでもよい。携帯電子機器ケース20が立体的な曲面形状の場合は、平面コイル3もケースの形状に合わせて、立体的な曲面形状にしても良い。このように平面コイル3の一面や空心部に磁性体シートが備わると、本電池モジュールをワイヤレス給電用の送信器で給電する際に、当該送信器に備わる送信コイルとの結合効率の向上が期待できる。
【0031】
コイルリード線4は、平面コイル3と回路基板5とを接続し、ワイヤレス給電時に平面コイル3により発生した交流電流を回路基板5に伝送する可撓性の導線である。当該コイルリード線4は、平面コイル3と異なる部材で形成しても良いし、平面コイル3の単線又は縒り線の導線をそのまま延長したものであっても良い。ただし、上述の通り、平面コイル3は携帯電子機器ケース20の内面に固定されるので、当該平面コイル3と回路基板5とを接続するコイルリード線4は、携帯電子機器自体の大きさ次第で線長が長くなる場合も考えられる。このような場合、コイルリード線4は、可撓性のある他のリード線で中継ぎしてもよい。コイルリード線4は可撓性を有しているので、平面コイルを自在に配設できる。例えば、ラミネートフィルムと所定距離離間させた状態に平面コイルを配置できる。そのため、平面コイルに発生した電流によって、ラミネート電池、特にラミネートフィルムの金属層に渦電流が流れて発熱を伴うことを好適に防止できるので、ラミネート電池の信頼性を高めることができる。
【0032】
回路基板5は、ラミネート電池1の充電制御及び携帯電子機器への給電制御を実現するための回路である。当該回路基板5には、例えば、受電回路6と、基板補強樹脂部7aと、保護回路8と、FET(Field Effect Transistor)回路9と、が実装される。
【0033】
受電回路6は、コイルリード線4を介して伝送された交流電流を受電し、当該交流電流の整流及びラミネート電池1の充電制御を行う回路である。
保護回路8は、ラミネート電池1を保護するための機能を実現する回路であり、具体的には、受電回路6により受電された電流の過電流状態やラミネート電池1の温度異常状態等を検知し、電流の遮断等を行う。
FET回路9は、電池モジュール12によるラミネート電池1の充電時の電気的伝送路と、携帯電子機器への給電時の電気的伝送路とを切り替えるスイッチ回路である。
【0034】
基板補強樹脂部7は、コイルリード線4と回路基板5の接続部に設けられ、コイルリード線4を覆う絶縁性樹脂であり、コイルリード線4の引張強度を向上させる。当該基板補強樹脂部7aは、絶縁性樹脂を回路基板5に塗布し固化させて形成される。ここで、絶縁性樹脂は、ポッティング形成される場合にはアクリル系のUV硬化樹脂を、ホットメルト形成される場合にはポリアミド系の熱可塑性樹脂等を用いればよい。なお、端子リード線11の回路基板5との接続部分にも絶縁性樹脂を設けることで端子リード線11の引張強度を向上させても良い。
【0035】
「ラミネート電池の製造工程について」
次に、ラミネート電池1の製造工程について、
図3を用いて説明する。
ここで、ラミネート電池1に使用されるラミネートフィルム(ラミネートフィルム1b)は、既に説明したように、非常に薄く、硬い突起などに圧接されると、応力集中により容易に破損する。そして、
図1に示した構成の電池モジュール12を組み立てる場合、従来構造では、平面コイル3を端子リード線11に継ぎ替える作業や、回路基板5に半田付けする作業や、基板補強樹脂7aの塗布固化作業など、数々の組立作業は、ラミネート電池1を伴った状態で行われる必要があった。そのため、これらの組立作業がラミネート電池1(ラミネートフィルム)表面に熱ダメージ、傷、ピンポール、打痕などのダメージを与える確率が高くなるため、以下の回路ユニット13を用いた搭載機構を採用した。
【0036】
回路ユニット13は、上述の通り、コイルリード線4の一端を平面コイル3に接続し、コイルリード線4の他端を回路基板5に接続し、回路基板5を端子リード線11、およびコネクタ10に接続して一体化する工程で形成されたユニットである。つまり、回路ユニット13は、電磁誘導によりラミネート電池1を充電するための機能構成を予めユニット化したものである。すなわち、当該ユニット化の採用は、電池モジュール12の製造時における熱や応力などのストレス負荷のある工程を、ラミネート電池1と切り離して実施することを可能にするので、ラミネート電池1表面への熱の影響を排除できる。そして、電池モジュール12は、上記工程で完成させた回路ユニット13をラミネート電池1の負極端子14と正極端子15に接続する工程を経て形成される。具体的には、電池モジュール12は、
図3に示す矢印線に沿って回路ユニット13の回路基板5を負極端子14及び正極端子15に近接させ、双方を溶接接合することで形成される。なお、電池モジュール12は、回路基板5と負極端子14及び正極端子15とが溶接された後、負極端子14及び正極端子15を折り返して、当該溶接された回路基板5をラミネートフィルム1bのテラス部に載置し、テラス部に絶縁テープを巻いて固定されることで完成される。
【0037】
ここで、上述のとおり、回路ユニット13とラミネート電池1との接続は溶接でなされるため、高温の半田ボールの飛散がない。そのため、電池モジュール12はラミネート電池1にダメージを与えないモジュール構造となる。したがって、電池モジュール12は、このような搭載機構の採用により、ラミネート電池1の特徴である、軽量、薄型、低コストのメリットを生かし、更に電磁誘導によるラミネート電池1への充電機能の信頼性保持しつつ、コストダウンも図ることができる。なお、回路ユニット13は、この構成に限ったものでなく、適宜必要な部品の追加、削除がなされても良い。
【0038】
「ワイヤレス給電時の動作と携帯電子機器への搭載構造について」
まず、
図4を用いて電池モジュール12によるワイヤレス給電時の動作について簡単に説明する。
図4は、本発明に係る電池モジュールの回路ブロック図である。
平面コイル3は、ワイヤレス給電用の送信器内の送信コイルから、共振周波数、または共振周波数近くの周波数で発信された交流磁場と電磁的に結合し交流電流を発生させる。
【0039】
すると平面コイル3で生じた交流電流は、コイルリード線4を通り回路基板5に流れ込む。当該交流電流は、整流機能と2次電池の充電制御機能とを内蔵した受電回路6により、保護回路8とFET回路9を通して、回路基板5に接続された負極端子14と正極端子15によりラミネート電池1にワイヤレス給電する。なお、当該給電によって充電されたラミネート電池1からの電力は、保護回路8とFET回路9を通して回路基板5に接続される端子リード線11を介して携帯電子機器の各部に供給される。
【0040】
次に、
図2を用いて電池モジュール12の携帯電子機器への搭載構造について説明する。
ここで、平面コイル3は、上述のワイヤレス給電時に、送信器より共振周波数、または共振周波数近くの周波数で交流磁場を受信して交流電流が流れるため、平面コイル3自身が発熱しないように、抵抗値とインダクタンス値が線径、巻数などで管理される。しかし、当該平面コイル3は、金属などが近傍に存在するとインダクタンスが変化し、ワイヤレス給電の結合係数が低下して効率の悪い伝送になってしまうとともに、自身の発熱と渦電流によって金属の発熱などの原因をもたらす。
【0041】
そこで、上述の通り本実施例に係る電池モジュール12では、当該平面コイル3近傍の金属の影響を回避するために、平面コイル3を樹脂フィルム/金属層を含むラミネート電池1から物理的に離間して(ラミネート電池1に貼り合わせずに)配置する。具体的には、平面コイル3は
図2に示すように、当該電池モジュール12が携帯電子機器に搭載された状態で、携帯電子機器ケース20の内面に熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を介して貼り付けられた状態に配置される。そのため、平面コイル3は、金属フィルムを含むラミネートフィルム1bと離間した状態で配置されることとなるので、上記金属の発熱などの影響を緩和できる。また、平面コイル3で発生する熱は、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を介して携帯電子機器ケース20から外気に放熱できる。さらに、平面コイル3とラミネート電池1との間のスペースは、熱抵抗の高い空気や樹脂材が充填されることになるので、ラミネート電池1への熱伝導を回避できる。ここで、平面コイル3と携帯電子機器ケース20との離間距離が平面コイル3の直径の半分以上程度とすることで、上記金属の発熱などの影響緩和効果が得られる。よって、コイルリード線4の長さは予め携帯電子機器ケース20内の配置寸法に合わせて長さが決められる。なお、平面コイル3とラミネート電池1との間のスペースには、金属以外の樹脂部品などであれば適宜に配置されても良い。
【0042】
ここで、上記のように携帯電子機器ケース20内部に電池モジュール12を組み込む工程としては、コネクタ10を携帯電子機器の回路に差し込み、平面コイル3を熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を介して携帯電子機器ケース20に貼るだけで良い。すなわち、電池モジュール12は予めモジュール化されているので、上記工程によるラミネートフィルム1bに対するダメージを低減できる。
【0043】
なお、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19は、予め平面コイル3に貼りつけておくことで、携帯電子機器に貼り付けるコイル構成全体を面一化出来る。また、発熱の少ない環境では、平面コイル3を貼りつけるためのテープとして、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19以外にも、例えば、クッション性のあるポリウレタンフォームやポリエチレンフォームにアクリル系粘着剤を塗布した両面テープを使用しても良い。また、電池モジュール12を輸送する場合は、平面コイル3とラミネート電池1を低粘着テープなどで固定すると、振動によるラミネートフィルムの傷を低減できる。
【0044】
(実施例2)
本発明に係る電池モジュールの実施例2について説明する。ここで、実施例2に係る電池モジュールのうち、実施例1に係る電池モジュールと同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
本実施例2に係る電池モジュール12aは、
図5に示すように、平面コイル3の一面が磁性体シート2で被覆される。ここで、
図5は、本実施例に係る回路ユニット13とラミネート電池1の組立前の状態を模式的に示す図である。
【0046】
電池モジュール12aは、平面コイル3の一方の面を被覆するように磁性体シート2が設けられる。また、電池モジュール12aにおいて、平面コイル3の空心部には中磁性体シート17が設けられ、送信コイルとの結合効率の向上が図られる。
【0047】
磁性体シート2は、軟磁性材料が分散された樹脂からなり、平面コイル3に接着されている。当該磁性体シート2は、平面コイル3と接着させることで、仮に平面コイル3と密着させない場合にインダクタンスが平面コイル3と磁性体シート2の間隔の変動で変化し、共振周波数のズレによって結合係数が変化することを防止できる。また、磁性体シート2には、絶縁性樹脂からなる補強樹脂で覆われたシート補強樹脂部b7で端部が被覆されたコイルリード線4が接続される。コイルリード線4と磁性体シート2との接続部はシート補強樹脂部bを有するので、コイルリード線4の引張強度を向上させることができる。ここで、磁性体シート2は、ワイヤレス給電時の交流磁場により、ラミネートフィルム1bの金属層に渦電流が流れて、水に対するシール強度が損なわれるのを防止するために、比透磁率40以上、膜厚は0.2mm以上であることが好ましい。また、磁性体シート2の比透磁率は40以上であれば構わないが、コスト上の観点から通常200以下とされる。また、ワイヤレス給電時に生じる交流磁場は距離の2乗で減衰するので、磁性体シート2とラミネート電池1との間隙による交流磁場の減衰効果により、磁性体シート2の厚みは薄くすることができ、磁性体シート2のコストダウンが可能となる。
【0048】
当該電池モジュール12aは、
図2に示した携帯電子機器ケース20内に組み込まれた場合、実施例1の平面コイル3単体が携帯電子機器ケース20の内周面に固定される場合と比べて、平面コイル3とラミネート電池1の間の距離を狭くすることが可能となる。
【0049】
なお、実施例1と同様に、携帯電子機器ケース20内部に電池モジュール12を組み込む工程において、電池モジュール12は予めモジュール化されているので、上記工程によるラミネートフィルム1bに対するダメージを低減できる。さらに、平面コイル3で発生する熱は、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を介して携帯電子機器ケース20から外気に放熱できる。また、平面コイル3と接着した磁性体シート2とラミネート電池1との間のスペースは、熱抵抗の高い空気で覆われるので、ラミネート電池1への熱伝導を回避できる。本実施例の構造を採用した電池モジュール12aは、安価に製造可能となり、ワイヤレス給電できる累積回数を多くでき、製品の長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を予め磁性体シート2が接着されていない平面コイル3面に貼っておくと、携帯電子機器に貼り付ける作業性が向上出来るので望ましい。
【0051】
(実施例3)
本発明に係る電池モジュールの実施例3について説明する。ここで、実施例3に係る電池モジュールのうち、上述の実施例に係る電池モジュールと同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。なお、
図6は、本実施例に係る電池モジュール12bを模式的に示す図であり、
図7は、電池モジュール12bが携帯電子機器に搭載された状態における、
図6のA−A断面線に沿った縦断面図である。なお、
図7において、携帯電子機器ケース20は省略する。
【0052】
本実施例3に係る電池モジュール12bは、
図6に示すように、磁性体シート2に接着された平面コイル3が、ラミネート電池1に対して磁性体シート2及びスペーサシート16を挟んで張り合わされた構造からなる。すなわち、磁性体シート2は、平面コイル3が配設されていない面がラミネート電池1に接着されている。平面コイル3が固定位置に配置されることとなるので、平面コイル3に接続されたコイルリード線4の飛び出しが少なくて扱いやすい。また、平面コイル3とラミネート電池1とを一体的に扱えるので、携帯電子機器に組み込まれた状態でも、交換メンテナンスが容易になる。
【0053】
磁性体シート2は、実施例2に係る磁性体シートと同様に軟磁性材料が分散された樹脂からなり、ラミネート電池1の上面に形成される。当該磁性体シート2は、ラミネート電池1の上面と同じ外形形状に形成されることで、平面コイル3を磁性体シート2に貼り付ける際の基準位置がラミネート電池1の外形と合わせやすくなる。
【0054】
スペーサシート16は、平面コイル3の外形よりも大きな貫通孔を有し、磁性体シート2の上部に積層される。すなわち、本実施例3に係る平面コイル3は、
図7に示すように、当該スペーサシート16の貫通孔に埋設された状態で、磁性体シート2に接着される。ここで、スペーサシート16の厚みは、平面コイル3の厚みと同じである。そのため、スペーサシート16と平面コイル3とは、上面が平坦面を形成するので、固定面の面積をかせぐことができ、携帯電子機器に貼り付ける際の接着力を損なわない。
なお、スペーサシート16は、例えば、塩化ビニルやポリエチレン・テレフタレート等の適宜の樹脂材で形成されるものであってよいが、絶縁性を有することが好ましい。
【0055】
(変形例1)
実施例3に係る電池モジュールの変形例1について説明する。ここで、変形例1に係る電池モジュールのうち、上述の実施例に係る電池モジュールと同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図8は本変形例に係る電池モジュール12cの模式的構成を示す縦断面図である。本変形例では、磁性体シート2cがラミネート電池1の外側面を覆う点で実施例3に係る電池モジュールと相違する。
【0057】
図8において、ラミネートフィルム1bを構成するフラット面21(平坦面)は、ラミネート電池1がパッキングされた時、側面の接着シール部の折り返し基点となる面で、平坦性が確保される。一方フラット面21と対抗する面に設けられるラミネートフィルム1bは、外周部に少し膨らみがあり、平面コイル3を接着した磁性体シート2をラミネート電池1に接着する場合、長期的に外周部に剥離が生じる可能性がある。そこで、電池モジュール12cでは、磁性体シート2がラミネート電池1の側面を覆うように構成することで、ラミネート電池1の外周部に生ずる膨らみを防止できるため、より強固な接着を可能とする。さらに、この電池モジュール12cの構造は、電池側面を交流磁場から遮蔽する効果もあり、発熱によるラミネート電池1の信頼性低下を改善する。
【0058】
(変形例2)
実施例3に係る電池モジュールの変形例2について説明する。ここで、変形例2に係る電池モジュールのうち、上述の実施例に係る電池モジュールと同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図9は、本変形例に係る電池モジュール12dの構成を模式的に示す縦断面図である。本変形例では、磁性体シート2がラミネート電池1の底面側に接着される点で実施例3に係る電池モジュールと相違する。
【0060】
図9に示すように、電池モジュール12dは、磁性体シート2に接着された平面コイル3が、ラミネート電池1の外周面のうち前記ラミネート電池の接着シール部の折り返し基点となる面であるフラット面21側に磁性体シート2を挟んで張り合わされた構造からなる。平面コイルに被覆された磁性体シートがラミネートフィルムの接着シール部の折り返し基点となる平坦面に貼り付けられることにより、信頼性のある強固な接着を実現できる。ここで、実施例3と同様に、スペーサシート16は平面コイル3の厚みと同じ厚みである。そのため、スペーサシート16の底面と平面コイル3の底面とが平坦面を形成するので、当該平坦面と平坦性の確保されたフラット面21とが接着されることにより、互いに共助してより信頼性のある強固な接着が実現される。なお、熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19などの熱伝導性両面粘着テープは、予めスペーサシート16と平面コイル3に貼りつけられておくことで、電池モジュール12dの携帯電子機器への組み込みが容易になる。
【0061】
本変形例における電池モジュール12dは、磁性体シート2が予め平面コイル3に接着され、更にその磁性体シート2の上層にスペーサシート16を貼りつけて形成される。また、電池モジュール12dでは、実施例1と同様に電磁誘導により充電する機能を回路ユニット13として予めユニット化される。すなわち、電池モジュール12の製造時における熱や応力などのストレス負荷のある工程は、ラミネート電池1と切り離して実施される。従って、本変形例では実施例1と同じ効果が得られる。
【0062】
なお、本変形例における磁性体シート2は、ワイヤレス給電時の交流磁場により、ラミネート電池1のラミネートフィルム1bの金属層に渦電流が流れて、水に対するシール強度が損なわれるのを防止するために、比透磁率80以上であることが好ましく、膜厚は0.5mm以上であることが好ましい。電池モジュール12の薄型化を求める場合、比透磁率160で膜厚は0.25mmを選択してもよい。
【0063】
次いで、本変形例に係る電池モジュール12dを携帯電子機器に組み込んだ状態について説明する。ここで、
図10は本変形例に係る電池モジュール12dを組み込んだ携帯電子機器の構成を模式的に示す縦断面図である。なお、
図10に示す符号22は、携帯電子機器の制御機能を実現するためのシステム回路部である。
【0064】
図10に示すように、電池モジュール12dは、携帯電子機器ケース20の内面に熱伝導性両面粘着シリコーンテープ19を介して固定される。ここで、携帯電子機器に組み込まれたラミネート電池1は、厚みの経時変化が生じる虞があるので、システム回路部22とラミネート電池1との間に空間を確保する必要がある。すなわち、ラミネート電池1は、電池製造時は平坦だった面でも携帯電子機器ケース20内部にガスが発生すると膨らんでくる。この膨らみはラミネート電池1のフラット面21の対面側で始まる。したがって、システム回路部22とラミネート電池1との間の空間を確保しておくことで、膨張による膨らみを平面コイル3の反対側(すなわち、フラット面21側)に集中させることができる。このように、ラミネート電池を構成するラミネートフィルムと離間した状態で平面コイルを配置可能となり、平面コイルの発熱の影響などを緩和できる。
【0065】
以上、本変形例に係る電池モジュール12dによると、上記磁性体シート2を組み合わせることで、平面コイル3とラミネート電池1の間の距離を十分取れない場合でも、平面コイル3と磁性体シート2とラミネート電池1が一体化した電池モジュールを提供出来る。
【0066】
すなわち、電池モジュール12dは、携帯電子機器の構造に合わせた組み込みが可能となり交流磁場による発熱低減による信頼性の高い電池モジュールとなる。
従って、本発明は、携帯電子機器のワイヤレス給電化を高品質でローコストに実現する電池モジュールを提供できる。
【0067】
更に、本発明にかかる電池モジュールは、携帯電子機器に組み込まれる場合も、平面コイルの固定とコネクタを差し込むだけで平面コイルとラミネート電池の間の距離を十分取れる組み込みが簡単に可能となり、交流磁場による発熱低減とラミネート電池の組み込みダメージ低減が可能となり、モジュール化のメリットを発揮できる。同様に、平面コイルとラミネート電池の間の距離を十分取れない場合でも、平面コイルと磁性体シートが一体化、平面コイルと磁性体シートとラミネート電池が一体化したモジュールを提供出来るので、携帯電子機器の構造に合わせて、組み込みが可能となり交流磁場による平面コイルの発熱低減とラミネート電池の発熱低減による信頼性の高い電池モジュールとなる。従って、本発明は、携帯電子機器のワイヤレス給電化を高品質でローコストに実現する電池モジュールを提供できる。