(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えば一眼レフカメラの絞り、ズーム、ピント等の調整のための操作手段として、スライド式の電子部品が利用されている。この種の電子部品は、例えば特許文献1の
図16に示すように、フレキシブル回路基板(40)を、金型(10),(30)の円弧状に湾曲するキャビティー(C)内に収納し、キャビティー(C)内のフレキシブル回路基板(40)の下面側から溶融成形樹脂を充填することで、
図12に示すような基台付き基板(1−2)を作成し、この基台付き基板(1−2)の前記フレキシブル回路基板(40)を露出した側に、摺動子(150)を取り付けた移動体(130)を取り付けて構成される。
【0003】
そしてこの電子部品(100)の移動体(130)は、そのレール係合部(131)を基台(60)のレール部(61)に係合することで、円弧状にスライド移動可能となっており、これによってフレキシブル回路基板(40)に形成した摺接パターン(43),(45)上を摺動子(150)が摺動してその検出出力を変化させる。この種のスライド式の電子部品(100)は、例えば、一眼レフカメラの望遠ズームレンズの外筒に取り付けられ、前述のように、絞り、ズーム、ピント等の調整のために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電子部品(100)に用いる基台付き基板(1−2)においては、以下のような問題点があった。
(1)上記電子部品(100)の製造方法は、
図16に示すように、キャビティー(C)を形成する円弧の外周面側と内周面側に金型(10),(30)を配置してその中にフレキシブル回路基板(40)を設置し、その際フレキシブル回路基板(40)の両端を金型(10),(30)のキャビティーCの両外側部分で挟持する構造なので、円弧の範囲が180°以下に限られてしまい、180°以上の円弧を有する基台付き基板を製造することは困難であった。従って、上記基台付き基板(1−2)においては、移動体(130)(即ち摺動子(150))の移動範囲が180°以内に限られてしまう。これらのことから、180°以上の移動範囲で移動体(摺動子)を移動できる、構造の簡単な電子部品が望まれていた。
【0006】
(2)上記電子部品(100)の場合、移動体(130)は円弧状に形成した基台付き基板(1−2)の外周面側を移動する構成である。しかしながら、この種の電子部品を組み込む電子機器の構造によっては、基台付き基板の内周面側に設置した移動体を前記内周面に沿って移動させることでその電気的出力を変化できる、構造が簡単で組み立てが容易な電子部品が望まれていた。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、円弧状に設置したフレキシブル回路基板の内周面側を移動体が移動することができ、且つ移動体の移動範囲(摺動子の摺動範囲)を容易に180°以上にすることができる、構造が簡単で組み立ての容易な電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる電子部品は、内周面が円弧状の基板取付面となっている基台と、前記基台の基板取付面に取り付けられるフレキシブル回路基板と、前記フレキシブル回路基板の内周面に沿うように移動する移動体と、前記移動体に取り付けられて前記フレキシブル回路基板の内周面に設けた摺接パターンに摺接する摺動子と、を具備し、前記基台の円周方向に沿う一方の端辺側に、前記移動体の一方の端辺側に設けた係止部をスライド自在に係止する第1レール部を設け、さらに前記基台の円周方向に沿う他方の端辺側に、前記移動体の他方の端辺側に設けた係止部をスライド自在に係止する第2レール部を形成してなるカバーを取り付けたことを特徴とする。
本発明によれば、円弧状に設置したフレキシブル回路基板の内周面側を移動体が移動する構成の電子部品を容易に構成することができる。移動体をフレキシブル回路基板の内周面側に配置するので、移動体をフレキシブル回路基板の外周面側に配置する構造に比べて、電子部品の外径寸法の小型化が図れる。また本発明によれば、移動体の両端辺側にそれぞれ設けた係止部を係止するために必要な一対の第1,第2レール部の内、一方の第1レール部のみを、基台の一方の端辺側に設け、他方の第2レール部は別部材であるカバーに設けたので、180°以上の円弧からなる基板取付面を有する基台を容易に製造することが可能になる(仮に、基板取付面からその円弧の中心方向に向かって突出する上記第1,第2レール部を、基台の両端辺側に一体成型で設け、且つ基台を円弧状に成形する場合は、円弧が180°を超えると、その成形が金型上困難になる)。これによって移動体の移動範囲(摺動子の摺動範囲)を容易に180°以上とすることができる。またこの電子部品はその構造が簡単で、容易に組み立てができる。
【0009】
また本発明は、前記基台が、略円筒状に形成されて、その内周面を前記基板取付面とし、この基台の一方の端辺には、前記基台の内周面に対して中心方向に向かって突出する第1レール形成部を設け、一方前記カバーには、このカバーを前記基台の他方の端辺に取り付けた際に、前記基台の内周面に対して中心方向に向かって突出する第2レール形成部を設け、前記第1,第2レール形成部にそれぞれ前記第1,第2レール部を形成したことを特徴としている。
これによって、移動体(摺動子)を略360°(更には360°以上)回転することができる。また基台の内周面に対して中心方向に向かって突出する第1,第2レール形成部を基台とカバーの両者に1つずつ形成したので、略円筒状に形成される基台とカバーの両者の製造が何れも容易に行える。また第1,第2レール形成部を基台の内周面に対して中心方向に向かって突出して設け、これら第1,第2レール形成部に第1,第2レール部を形成したので、移動体全体をフレキシブル回路基板の内周側露出面よりも半径方向内側に位置させることができ、略360°にわたって回転する移動体にフレキシブル回路基板(特にフレキシブル回路基板の外部への引出部の部分)が干渉することを容易に避けることができる。
【0010】
また本発明は、前記フレキシブル回路基板の一方の端辺に設けた係合部を、前記第1レール形成部に設けた被係合部に係合することによって、このフレキシブル回路基板を前記基台の基板取付面に取り付けることを特徴としている。
このように構成すれば、簡単にフレキシブル回路基板を基台の基板取付面に取り付けることができる。
【0011】
また本発明は、前記フレキシブル回路基板の一方の端辺を、前記基台内に埋設するようにインサート成形することによって、このフレキシブル回路基板を前記基台の基板取付面に取り付けることを特徴としている。
このように構成すれば、インサート成形によって、容易且つ確実にフレキシブル回路基板の一方の端辺を基台内に埋設して固定することができ、フレキシブル回路基板を基台の基板取付面に取り付けることができる。
【0012】
また本発明は、前記移動体の係止部が、この移動体の外周辺の移動方向の前後において前記第1,第2レール部に挿入される突起によって形成されていることを特徴としている。
移動体の係止部を、この移動体の前後左右の4箇所に設けてこれら4箇所において第1,第2レール部に係合する構造なので、例え第1,第2レール部が円弧状に湾曲していても、移動体の円弧状の移動をスムーズにガイドすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、円弧状に設置したフレキシブル回路基板の内周面側を移動体が移動する構成とすることができる。これによって電子部品の小型化も図れる。また本発明によれば、移動体の移動範囲(摺動子の摺動範囲)を容易に180°以上にすることができる。また本発明に係る電子部品は、構造が簡単で、組み立てが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る電子部品1−1の斜視図、
図2は電子部品1−1を下側から見た斜視図、
図3は電子部品1−1の分解斜視図、
図4は電子部品1−1を下側から見た分解斜視図、
図5は
図1のA−A部分断面拡大図、
図6は
図1のB−B部分断面拡大図である。これらの図に示すように、電子部品1−1は、基台10と、フレキシブル回路基板50と、カバー80と、移動体110と、摺動子130とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは基台10からカバー80を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0016】
基台10は、合成樹脂の一体成形品であり、円形で略筒状に形成されている。基台10の内周面は、360°円弧状で帯状の基板取付面11となっている。基台10の円周方向に沿う下側の端辺(一方の端辺)13には、基台10の内周面に対して中心方向に向かって突出する(即ち、基板取付面11よりもその円弧の中心方向に向かって突出する)第1レール形成部15が設けられている。第1レール形成部15は、略リング状の平板状であって、360°にわたって形成されている。第1レール形成部15の上面中央には、リング状の凹部(凹溝)からなる第1レール部17が360°にわたって形成されている。基台10の基板取付面11下部(外周側壁下部)から第1レール形成部15にわたっては、略等間隔に複数(4つ)の被係合部19が設けられている。被係合部19は、基板取付面11から第1レール部15に至る屈曲部分に略スリット状の貫通孔を設けることで形成されており、第1レール形成部15の下面まで切り欠かれている。これによって第1レール形成部15の被係合部19を設けた側の面15aは、
図5に示すように、前記基板取付面11の表面に下記するフレキシブル回路基板50の厚みを加えた面よりも少し後退した位置となっている。なお、面15aの上部には、傾斜面からなるガイド面15bが形成されている。ガイド面15bは上方向に向かって第1レール部17側に傾斜している。基台10の円周方向に沿う上側の端辺(他方の端辺)21には、略等間隔に複数(4つ)の小突起平板状の取付部23が設けられている。
【0017】
上述のように、基台10は筒状であって、その下側の端辺13のみに、基台10の内周面(基板取付面11)に対して中心方向に突出する第1レール形成部15を設けている構成なので(即ち、筒の上下の端辺に基台10の内周面に対して中心方向に突出する部分を設ける構成ではないので)、その構造上、容易に金型を用いて一体成形することができる。
【0018】
フレキシブル回路基板50は、可撓性を有する細長帯状の合成樹脂フィルム51の一方の表面(内周面となる側)に、長手方向に沿うように、複数本(2本)の摺接パターン55,57と、1本の引出パターン59とを設けて構成されている。なお
図3,
図4では、フレキシブル回路基板50が円弧状(円筒状)に湾曲した状態を示しているが、これは基台10に取り付けたときの状態を示しており、何ら外力が加わっていない時は、平面状の状態となる(下記する
図10でも同様)。合成樹脂フィルム51の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等が用られ、細長帯状で直線状の基板本体部51aの下側の端辺(一方の端辺)61に舌片状で矩形状の突片からなる複数(4つ)の係合部63を設け、また基板本体部51aの上側の端辺(他方の端辺)64に帯状の引出部65を略垂直に接続して構成されている。2本の摺接パターン55、57の内の一方の摺接パターン55は抵抗値の大きい抵抗体パターンであり、他方の摺接パターン57は抵抗値の小さい導体パターンである。前記引出パターン59は摺接パターン55の一端に接続され、摺接パターン55のもう一方の端部と摺接パターン57の一端部にそれぞれ接続された図示しない2本の引出パターンと共に、前記引出部65に引き出されている。前記各係合部63は、前記基台10に設けた各被係合部19に挿入される位置・寸法に形成されている。
【0019】
カバー80は、合成樹脂の一体成形品であり、略円形リング平板状のカバー本体部81の下面中央から、リング状の係止用突起(突条)83を突出し、さらにカバー本体部81の下面の、前記係止用突起83の内側位置に、360°リング状の凹部(凹溝)からなる第2レール部85を形成して構成されている。なお、カバー80の前記係止用突起83を設けた部分から半径方向内方の部分、即ち、
図5に示すように、基台10にカバー80を取り付けた際に基台10の内周面(基板取付面11)に対して中心方向に向かって突出する部分を、第2レール形成部86としている。一方、カバー本体部81の外周辺の複数個所(4か所)からは、矩形状の突部87が突出し、各突部87中には、矩形状の小孔からなる被取付部89が設けられている。各被取付部89は、前記基台10に設けた各取付部23に対向した位置であってこれらを挿入できる寸法形状に形成されている。カバー本体部81の外周辺の所定位置には、前記フレキシブル回路基板50の引出部65を挿入できる寸法の略矩形状の凹部からなる引出部挿通部91が形成されている。一方、係止用突部83の外径寸法は、前記基台10の基板取付面11の表面にフレキシブル回路基板50の厚みを加えた面の内径寸法と略同一に形成されている(
図6参照)。但し、
図5に示すように、係止用突部83の外周面の一部には、前記引出部挿通部91の一部となる凹部(凹溝)83aが形成されている。また、
図5,
図6に示すように、第2レール部85の内周側の内側壁の下部には傾斜面からなるガイド面85aがリング状に形成されている。ガイド面85aは、下方向に向かって半径方向中心側に傾斜している。上述のように、カバー80は略円形リング平板状なので、その構造上、容易に金型を用いて一体成形することができる。
【0020】
図7は移動体110を拡大して示す図であり、
図7(a)は上側から見た斜視図、
図7(b)は下側から見た斜視図、
図7(c)は側面図である。これらの図に示すように移動体110は、合成樹脂の一体成形品であり、略矩形平板状の移動体本体部111と、移動体本体部111の上面中央から突出する柱状の操作部113とを具備して構成されている。移動体本体111はその面全体が、この移動体110の移動方向(スライド方向)Hに沿って、円弧状に湾曲している。この円弧の曲率半径は、前記基台10の基板取付面11の曲率半径と略同一となっている。移動体本体部111の下面には、平面状の摺動子取付面115が形成され、この摺動子取付面115には、一対の小突起状の摺動子取付部117が設けられている。また移動体本体部111の外周辺の移動方向Hの前後の位置(4つの角部近傍位置)には、左右一対ずつ、移動方向Hに直交する方向に向かって突出する略矩形状で小突起状の係止部119が設けられている。各係止部119は、前記基台10に設けた第1レール部17と、前記カバー80に設けた第2レール部85に挿入される形状寸法に形成されている。
【0021】
摺動子130は、弾性金属板製であり、平板状の摺動子基部131の外周の1辺から突出する一対の摺動冊子133をその根元部分で約180°折り曲げて構成されている。摺動子基部131には、前記移動体110の各摺動子取付部117を挿入する小孔からなる被取付部135が設けられている。
【0022】
次に電子部品1−1の組立方法を説明する。まず予め、移動体110の摺動子取付面115に摺動子130の摺動子基部131を当接し、その際、移動体110の各摺動子取付部117を摺動子130の各被取付部135に挿入し、熱カシメ等によって固定しておく。そして、基台10の基板取付面11上に、摺接パターン55,57を内向きとしてリング状に湾曲させたフレキシブル回路基板50を設置する。その際、フレキシブル回路基板50に設けた各係合部63を基台10に設けた各被係合部19に挿入・係止し、これによってフレキシブル回路基板50を基台10の基板取付面11に取り付ける。各被係合部19には、
図5に示すように、ガイド面15bが形成されているので、各係合部63の挿入はスムーズに行える。このようにフレキシブル回路基板50の係合部63を、基台10の被係合部19に係止することによって、簡単にこのフレキシブル回路基板50を基台10の基板取付面11に取り付けることができる。特にフレキシブル回路基板50は、基板取付面11に取り付ける際、広がろうとする方向の弾発力が働いて基板取付面11に密着しようとするので、基板取付面11への密着した取り付けが容易に行える。
【0023】
次に、前記摺動子130を取り付けた移動体110をフレキシブル回路基板50の内周面上に配置し、その際、摺動子130の各摺動冊子133を各摺接パターン55,57に当接する(
図5参照)。このとき同時に、移動体110の下側の2つの係止部119を基台10の第1レール部17に挿入する(
図5参照)。
【0024】
次に、前記基台10の上側の端辺21上に、カバー80を載置し、その際、カバー80の各被取付部89に基台10の各取付部23を挿入し、カバー80の上面から突出する各取付部23を熱カシメして固定する。このとき
図6に示すように、フレキシブル回路基板50の上部の部分は、基台10の基板取付面11とカバー80の係止用突起83の間に挟持され、固定される。つまり、フレキシブル回路基板50は、その上下の端辺61,64近傍部分が固定されることで、基板取付面11への取り付けが確実になる。また同時に、移動体110の上側の2つの係止部119がカバー80の第2レール部85に挿入される(
図5参照)。このとき第2レール部85にはガイド面85aが設けられているので、係止部119の第2レール部85への挿入はスムーズに行える。さらにこのとき、フレキシブル回路基板50の引出部65は、カバー80に設けた引出部挿通部91内を通って、カバー80の上方に引き出される(
図5参照)。以上によって、電子部品1−1の組み立てが完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0025】
以上のようにして組み立てられた電子部品1−1において、移動体110をスライド移動させると、移動体110は湾曲するフレキシブル回路基板50の内周面に沿うように移動し、摺動子130の摺動冊子133が摺接パターン55,57上を摺動し、これによって引出部65に引き出されている引出パターン間の検出出力が変化する。移動体110はこれを360°以上、エンドレスでスライド移動させることができる。すなわち、基板取付面11を構成する360°ある内周面を全て利用して検出出力を得ることができる。
【0026】
以上説明したように、上記電子部品1−1によれば、円弧状に設置したフレキシブル回路基板50の内周面側を移動体110が移動する構成の電子部品を容易に構成できる。また移動体110をフレキシブル回路基板50の内周面側に配置するので、移動体110をフレキシブル回路基板50の外周面側に配置する構造に比べて、電子部品の外径寸法の小型化が図れる。また上記電子部品1−1において、第1,第2レール部17,85の内、一方の第1レール部17のみを基台10の一方の端辺13側に設け、他方の第2レール部85は別部材であるカバー80に設けたので、上述のように、180°以上の円弧からなる基板取付面11を有する基台10を容易に製造することが可能になる。即ち、仮に、基板取付面11からその円弧の中心方向に向かって突出するように形成する第1,第2レール部17,85を基台10の両端辺13,21側に一体成型で設け、且つ基台10を円弧状に成形するとした場合は、円弧が180°を超えると、その成形が金型上困難になるが、この電子部品1−1に用いる基台10及びカバー80の場合はそのような問題は生じない。これによって移動体110の移動範囲(摺動子130の摺動範囲)を容易に180°以上とすることができる。
【0027】
また、基台10の一方の端辺13に基板取付面11よりもその円弧の中心方向に向かって突出する第1レール形成部15を設け、一方カバー80にこのカバー80を基台10の他方の端辺21に取り付けた際に基板取付面11よりもその円弧の中心方向に向かって突出する第2レール形成部86を設け、第1,第2レール形成部15,86の対向する側の面にそれぞれ第1,第2レール部17,85を形成したので、移動体110全体をフレキシブル回路基板50の内周側露出面よりも半径方向内側に位置させることができ、360°にわたって回転する移動体110にフレキシブル回路基板50(特にフレキシブル回路基板50の引出部65の部分)が干渉することを容易に避けることができる。
【0028】
また上記電子部品1−1においては、移動体110の係止部119を、この移動体110の前後左右の4箇所に設けてこれら4箇所において第1,第2レール部17,85に係合する構造なので、例え第1,第2レール部17,85が円弧状に湾曲していても、移動体110の円弧状の移動をスムーズにガイドすることができる。即ち、第1,第2レール部17,85は円弧状に湾曲しているので、移動体110の両側辺全体をこれら第1,第2レール部17,85に挿入すると、これを円弧状に移動する際に摩擦抵抗が大きくなって移動体110のスムーズな移動が阻害される恐れがあるが、この電子部品1−1によれば、移動体110の移動方向の前後左右の4箇所に設けた係止部119を第1,第2レール部17,85に係合するので、移動体110を円弧状に移動する際の摩擦抵抗が少なく、移動体110をスムーズに移動させることができる。
【0029】
図8は本発明の第2実施形態に係る電子部品1−2の斜視図、
図9は電子部品1−2を下側から見た斜視図、
図10はフレキシブル回路基板50−2の斜視図、
図11は
図8のC−C部分断面拡大図、
図12は
図8のD−D部分断面拡大図である。これらの図に示す電子部品1−2において、前記
図1〜
図7に示す電子部品1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「−2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1〜
図7に示す電子部品1−1と同じである。
【0030】
この電子部品1−2において、上記電子部品1−1と相違する点は、フレキシブル回路基板50−2を基台10−2にインサート成形によって取り付けた点のみである。即ちこの電子部品1−2の場合、
図10に示すように、フレキシブル回路基板50−2の基板本体部51a−2の下側の端辺(一方の端辺)61−2全体を、前記
図3に示すフレキシブル回路基板50の下側の端辺61よりも下方に突出し、突出した帯状部分を埋設部73−2として構成している。なお上述のように、フレキシブル回路基板50−2は、何ら外力が加わっていない時は、湾曲しておらず、平面状の状態となっている(つまり円弧状にするためのプレフォーミングは行わない)。
【0031】
そして基台10−2を成形する際に、その金型のリング状のキャビティー内部にフレキシブル回路基板50−2を湾曲させながら挿入し、その際キャビティーの内側の内周面にフレキシブル回路基板50−2の表面側(摺接パターン55−2,57−2を設けた面側)を対向させる。次に、前記フレキシブル回路基板50−2の外周面側(裏面側)に対向するキャビティーの外側の内周面に所定間隔毎に設けた複数のゲートから溶融樹脂をフレキシブル回路基板50−2の裏面(外周面)に向けて射出する。これによって、フレキシブル回路基板50−2はキャビティーの内側の内周面に押し付けられながら溶融樹脂の充填が進み、同時に、
図11,
図12に示すように、フレキシブル回路基板50−2の一方の端辺61−2(埋設部73−2)は、基台10−2内に埋設するようにインサート成形される。このように、ゲートはフレキシブル回路基板50−2の外周面側に対向して設けるのが好ましい。
【0032】
これによって、フレキシブル回路基板50−2は基台10−2の基板取付面11−2に密着して強固に取り付けられる。このように構成すれば、インサート成形によって、容易且つ確実にフレキシブル回路基板50−2の一方の端辺61−2(埋設部73−2)を基台10−2内に埋設して固定することができ、このフレキシブル回路基板50−2を基台10−2の基板取付面11−2に取り付けることができる。同時に、基板取付面11−2のフレキシブル回路基板50−2が位置しない面は、フレキシブル回路基板50−2の表面と同一面となる(言い換えればフレキシブル回路基板50−2は基板取付面11−2内に埋設されている)。このため、リング状となっているフレキシブル回路基板50−2の両端部間の隙間部分X1(
図10参照)の内周側表面とフレキシブル回路基板50−2の内周側表面とが同一面となり、摺動子110−2を360°以上回転するような場合でも前記隙間部分X1に段差(凹凸)が生じず、スムーズな移動が行え、信頼性が向上する。
【0033】
また上述のように、フレキシブル回路基板50−2はプレフォーミングしないまま直接撓めてキャビティー内に挿入して成形するので、フレキシブル回路基板50−2がプレフォーム時に伸びて摺接パターン55−2,57−2が引き延ばされて破断などするといった問題を防止できる。なお、場合によっては、フレキシブル回路基板50−2をプレフォーミングしても良い。
【0034】
なおその他の構成、組立方法、作用効果は、何れも上記電子部品1−1と同様なので、それらの説明は省略する。
【0035】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記例では摺接パターンを一対設けたが、1本または3本以上設けても良い。また上記例では摺接パターンとして、抵抗体パターンと導体パターンを用いたが、スイッチパターン等、他の各種用途に用いるパターンを用いても良い。
【0036】
また上記例では、移動体を360°以上、エンドレスで移動できるように構成したが、何れかの位置にストッパ部などを設けることで、360°以下の所望の角度範囲で移動できるように構成しても良い。その際、移動する角度に応じてフレキシブル回路基板の長さを短くしても良い。また
図11に点線で示すように、基台とカバーの第1,第2レール部の内側の壁面部分を相互に接近するように延ばして移動体の操作部のみを外部に突出するように構成すれば、摺接パターンや摺動子からなる検出手段の部分の防塵効果を向上させることができる。