【文献】
FIRLAK, Melike et al.,Adsorption of Ag(I) Ions from Aqueous Solutions Using Photocured Thiol-Ene Hydrogel,Separation Science and Technology,2013年11月,Vol.48,P.2860-2870,ISSN:0149-6395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献4に記載のイオン交換基やキレート基に貴金属を吸収させる方法では後段に吸着した貴金属を溶離させる工程があるため、溶離液の処理が問題となり、特許文献2に記載の抽出剤を用いる方法では抽出溶剤にクロロホルム、トルエン等の有機溶媒の使用が必須であることが問題である。また、特許文献3に記載の選択的沈殿剤を使用する方法では使用するアミノ化合物が低分子であるため臭気の問題があり、実用に際して困難である。そのため簡便、低コストかつ選択性に優れた貴金属の分離・回収プロセスが切望されている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、新規な金属の分離回収技術を提供すること、すなわち簡便、低コストかつ選択性に優れた金属回収方法及び当該金属回収剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤を用いた金属回収方法により、金属含有溶液中からの貴金属の分離沈殿・回収を簡便に実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)
金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤を用いた金属回収方法、
(2)
金属イオンが配位結合した光硬化性樹脂に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程を含む前項(1)に記載の金属回収方法、
(3)
前記金属イオンと結合可能な基が、アミノ基、フォスフィノ基、カルボキシル基、リン酸基、又はスルフォン基、メカプト基からなる群から選択される1種もしくは2種以上である前項(1)又は(2)のいずれか一項に記載の金属回収方法、
(4)
前記金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂が、(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、シンナモイル基、アリル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基からなる群から選択される1種もしくは2種以上を含有する前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載の金属回収方法、
(5)
前記光硬化性樹脂が下記一般式(1)で表される前項(1)〜(4)のいずれか一項に記載の金属回収方法、
【化1】
(Xは金属配位部位であって、アミノ基、ホスフィノ基、カルボニル基、チオエーテル基、スルフィニル基、ジスルフィド基を表す。Rは連結基を表し、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基を表す。Aは重合部位であって、(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、シンナモイル基、アリル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基を表す。nは2〜3の数を示す。)
(6)
金属含有溶液中に、金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤を添加する工程と、
金属イオンが結合した光硬化性樹脂に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程と、
沈殿した硬化物を焼却処理して金属を回収する工程を有する、前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の金属回収方法、
(7)
下記一般式(1)で表される光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤、
【化2】
(Xは金属配位部位であって、アミノ基、ホスフィノ基、カルボニル基、チオエーテル基、スルフィニル基、ジスルフィド基を表す。Rは連結基を表し、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基を表す。Aは重合部位であって、(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、シンナモイル基、アリル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基を表す。nは2〜3の数を示す。)
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属回収剤を用いた金属回収方法によれば、金属含有溶液中の金属の分離沈殿・回収が簡便、低コストかつ選択性に優れた貴金属の分離・回収技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の金属回収方法の原理について説明する。
本発明の金属回収方法は、金属溶液中から金属を配位結合させる金属配位部位と重合部位を有する光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤を用いて金属の回収方法である。ここで、本発明において金属を配位結合するとは、結合を形成する二つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合をいう。したがって、共有結合に利用される価電子をもつ遷移金属が回収目的の金属となる。
【0010】
まず、遷移金属が溶解している金属含有溶液中に、金属配位部位と重合部位を有する光硬化性樹脂を有効成分とする金属回収剤を添加する。すると、金属配位部位に金属イオンが配位結合する。なお、1個の金属イオンに対して、配位数分の金属配位子が配位結合する。これにより、金属イオンと金属配位部位に配位結合した凝集物が生成する。こうして、金属含有溶液中の金属イオンが金属配位部位にトラップされる。
【0011】
ここで、光硬化性樹脂の配位結合できる置換基の数の方が、金属含有溶液中の金属イオン数と配位数との積より大きくないと、金属含有水中に配位結合できない金属イオンが生じるため、金属回収効率が向上しない。本発明の金属回収方法で形成される凝集物は、本発明の金属回収剤を添加すると、瞬時に形成される。そのため、高速で金属回収を行うことができる。また、本発明の金属回収剤を加える量の添加割合は、溶液中の金属量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%がよい。
【0012】
次に、形成した凝集物に対して活性エネルギー線を照射し凝集物を硬化させる。硬化した凝集物は、当該金属含有溶液中に沈殿する。この沈殿物は、濾過槽を通すことで分離でき、結果として金属を回収することができる。
本発明の金属回収方法は金属を配位した凝集物を活性エネルギー照射により硬化させ、沈殿させる点に特徴を有する。したがって、本発明の金属回収剤を用いた金属回収方法によれば、金属含有溶液中の金属の分離沈殿・回収が簡便、低コストかつ選択性に優れた貴金属の分離・回収をすることができる。
【0013】
以下において、本発明において用いる金属回収剤について説明する。
本発明の金属回収剤は、金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂を有効成分とする。
【0014】
本発明の金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂とは、配位結合的に金属イオンを結合することにより、金属含有液中から金属を回収するために用いられる。すなわち、金属イオンと結合可能な基が金属イオンを供給する金属塩とイオン交換反応し、金属イオンを光硬化性樹脂中に取り込むことができる。
【0015】
金属イオンと結合可能な基としては、置換又は無置換のアミノ基、フォスフィノ基、カルボキシル基、メルカプト基、リン酸基が挙げられる。配位結合させる金属に応じて適状変更することができる。例えば、タングステンの場合はアミノ基が好ましく、パラジウムの場合はメルカプト基が好ましく、インジウムの場合は、フォスフィノ基が好ましい。
【0016】
金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂としては、金属イオンと結合可能な基を有する置換又は無置換の(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、シンナモイル基、アリル基、ビニル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは置換又は無置換の(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基である。
【0017】
本発明で用いられる金属イオンと結合可能な基を有する光硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
(Xは金属配位部位であって、アミノ基、ホスフィノ基、カルボニル基、チオエーテル基、スルフィニル基、ジスルフィド基を表す。Rは連結基を表し、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基を表す。Aは重合部位であって、(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、シンナモイル基、アリル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基を表す。nは2〜3の整数を示す。)
【0018】
前記Xの金属配位部位としては、例えば、置換又は無置換のアミノ基、フォスフィノ基、カルボキシル基、メルカプト基などがあり、その配位原子は窒素、リン、酸素、硫黄を挙げられることができる。具体例としては、リン酸エステル類、ピリジン、アンモニア、トリフェニルホスフィン、硝酸イオン、ビピリジン、エチレンジアミン、フェナントロリン、アセチルアセトン、ターピリジン、エチレンジアミン四酢酸、ポルフィリン、クラウンエーテル類等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくはリン酸エステル類である。
【0019】
前記Aの重合部位としては、置換又は無置換の(メタ)アクリロイル基、アクリロイル基、シンナモイル基、アリル基、ビニル基、ビニルビフェニル基、プロパギル基、グリシジル基、イソシアネート基等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは置換又は無置換の(メタ)アクリロイル基あるいはアクリロイル基である。
【0020】
金属イオンと結合可能な基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、カルボキシル基を有するものとして、(メタ)アクリル酸、ラクトン変性(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート(例えば、共栄社化学(株)社製、HOA−MPL)、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート(例えば、大阪有機化学(株)社製、ビスコート#2100)、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート(例えば、共栄社化学(株)社製、HOA−HH)、エチレンオキシド変性コハク酸アクリレート(例えば、共栄社化学(株)社製、HOA−MS)、β−カルボキシエチルアクリレート(例えば、ダイセルUCB社製、β−CEA)、ω−カルボキシ−ポリカプトラクトンモノアクリレート(例えば、東亜合成(株)社製、アロニックスM−5300)等が挙げられる。リン酸基を有するものとしては、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、日本化薬(株)社製PM−2(エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレートとエチレンオキシド変性リン酸メタクリレートの混合物)等として入手可能である。スルフォン酸基を有するものとしては、ターシャリーブチルアクリルアミドスルフォン酸(例えば、MRCユニテック(株)社製、TBAS)が挙げられる。
【0021】
また、金属イオンと結合可能な基を有するリン酸(メタ)アクリレート化合物としては、リン酸エステル骨格を有する(メタ)アクリレートであれば、モノエステル、ジエステルあるいはトリエステル等特に限定されず、例えば、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、日本化薬(株)社製PM−2(エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート)等として入手可能である。リン酸(メタ)アクリレートは1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。
【0022】
前記Rの連結基としては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル、ビフェニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
以下において、一般式(1)で表される光硬化性樹脂の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される光硬化性樹脂はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0024】
【化4】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基;R
2は炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表す。nは0〜3の整数である。aは1または2の整数である。)
【0025】
酸性リン酸エステルの例としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデ
シルアシッドホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッ
ドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
アシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0026】
本発明の金属回収剤において、配位結合される金属イオンの金属原子としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、後遷移金属、ランタニド、及びアクチニドから選択される金属類が挙げられる。具体的には、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ネオジム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが好ましい。
また、本発明でいう金属としては遷移金属であればよく、白金族金属(パラジウム、ルテニウム、ロジウム オスミウム、イリジウム、白金)及び金、銀、鉄族金属(鉄、ニッケル、コバルト)、クロム族金属(クロム、モリブデン、タングステン、シーボーギウム)、希土類金属(ネオジム、ディスプロシウム、プラセオジム)が例示される。
【0027】
本発明の金属回収方法において、光重合開始剤や硬化促進剤を適状添加することもできる。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン 、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
【0028】
硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルフォスフィン、ビス( メトキシフェニル) フェニルフォスフィン等のフォスフィン類、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル,4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が例示される。
【0029】
以下において、本発明の金属回収剤を用いた金属回収方法を説明する。
本発明の方法において、処理の対象となる金属を含有する液(以下、金属含有溶液という。)とは、各種工業の過程において得られる金属ないしその化合物(特にコロイド状態のもの)を含んでなる溶液をいう。これは水性の液が通常であるが、有機性のものを排除しない。このような金属含有溶液の例としては、無電解メッキ処理を行う際の所謂触媒化工程、すなわちメッキ対象物に白金族系の金属のような触媒の活性核を種付けする工程において使用された(もしくは使用される)金属コロイド粒子を含有する触媒液や、金属を含む素材・材料中から金属を回収するために金属含有固形物を酸やアルカリで処理した浸出・溶解液や、前記浸出・溶解液をイオン交換樹脂や活性炭による吸着、電解採取、沈殿晶析、溶媒抽出法等により処理した後の、微量の金属を含有する残液等が例示される。
【0030】
本発明の処理対象とされる金属含有溶液中の金属の濃度は、液中に少なくとも金属が含まれているのであれば、いずれの濃度であっても良いが、通常は100〜1000mg/Lである。なお、このような金属含有溶液は、必要に応じて、予め濃縮もしくは希釈させた後、本発明の方法に供してもよい。
【0031】
金属含有溶液中の金属と回収剤との吸着・凝集体形成反応は、常温常圧下で迅速に進行するため、特別な反応装置を用意する必要はなく、金属含有溶液と本発明の金属回収剤を、十分混合することで吸着反応は進行し、凝集体を形成するが、必要に応じてpH調整を行った方が好ましい。pH調整には酸としては、硫酸、塩酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸、スルファミン酸等が挙げられ、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。pHは9以下であればいずれのpHでも良いが、好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下である。金属含有溶液と選択的金属回収剤との接触時間は、通常1分〜30分で十分であり、この時間内に凝集体形成反応は完結する。
【0032】
本発明の金属回収方法において用いられる光硬化性樹脂は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。金属含有溶液に対する添加量は通常0.1〜6.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%である。添加量が0.1%より少なすぎると金属を効率的に回収できない。また6.0%よりも多すぎると回収に関与しない光硬化性樹脂が増え、光硬化性樹脂が残留し、無駄になる。
【0033】
金属含有溶液と当該金属回収剤を混合し、凝集体を形成後、当該金属回収剤を混合して形成された凝集体に対して、活性エネルギー線を照射し凝集物を硬化させる。硬化した凝集物は、当該金属含有溶液中に沈殿する。この沈殿物は、濾過槽を通すことで分離でき、結果として金属を回収することができる。
活性エネルギー線の照射は、片側もしくは両面から紫外〜近紫外(波長200〜400nm付近)の光線を照射して硬化させる。照射量は約50〜1500mJ/cm2が好ましく、特に好ましくは、100〜1000mJ/cm2程度である。紫外〜近紫外の光線照射による硬化には、紫外〜近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、または無電極ランプ等が挙げられる。
【0034】
生成した金属の沈殿物は、固液分離が容易なため、分離濾過操作により、効率良く溶液中の固液分離することができ、一般的な脱水機で脱水することができる。脱水機としては、例えば真空脱水機、ベルトプレス機、スクリュープレス機、遠心脱水機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0035】
分離した金属の沈殿物は焼却処理することにより貴金属を回収することができ、種々の利用分野で再利用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に具体的な実施例を示して、本願発明の内容をさらに詳細に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0037】
実施例1
濃度700mg/Lのモリブデン(Mo)を含有する溶液(以下、金属含有溶液)を100ml用意し、ここに金属回収剤としてリン酸エステル(「KAYAMER PR−2」(日本化薬株式会社製))を0.1重量%を添加した。その後30分間、反応させた後、各処理液をろ紙(ADVANTEC製)でろ過し、ろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
【0038】
【化5】
【0039】
実施例2
PM−2の添加量を0.5重量%にした以外は実施例1と同様の方法を用いて、ろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
金属回収剤としてFRM−1000(日本化薬株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
図1にFRM−1000(左:0.1%、右:0.5%)の凝集沈殿物を示す。
【0041】
実施例4
FRM−1000の添加量を0.5重量%にした以外は実施例3と同様の方法を用いて、ろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
【化6】
【0042】
比較合成例1
n−ブチル−ビス(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、及び水分離機を備えた反応器に、アルコール化合物(a)として合成例1の化合物222.3g、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸172.9g(2.4mol)、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物3.46g、熱重合禁止剤としてハイドロキノン1.31g、反応溶媒としてトルエン138.3g、シクロヘキサン59.3g仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が31.7mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物にトルエン507.2g及びシクロヘキサン217.4gを加え、25重量%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15重量%食塩水100gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して比較用の反応性化合物(BPPA)を294.2g(収率87.7%)得た。合成後、
1H−NMRにて構造を確認した。合成後、
1H−NMRにて構造を確認した。
1H-NMR(CDCL
3、δ)
:0.92(t,J=13.5,3H),1.43-1.54(m,4H),1.71-2.06(m,10H),4.21(t,J=5.7,4H),5.84(dd,J=10.5Hz,J=1.52Hz,2H),6.11(dd,J=10.3Hz,J=17.5Hz,2H),6.40(dd,J=17.5Hz,J=1.52Hz,2H)
【0043】
比較例1
金属回収剤として比較合成例1で得られた化合物(BPPA)を使用した以外は実施例1と同様の方法によりろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
【0044】
比較例2
BPPAの添加量を0.5重量%にした以外は比較例1と同様の方法によりろ液中のモリブデンの濃度を求めた。結果を表1に示す。
図4に、BPPA(左:0.1%、右:0.5%)の凝集沈殿物を示す。
【表1】
【0045】
表1より、本発明の金属回収剤を用いた金属回収方法は、比較例1、2と比較して、金属含有液中のMoがほとんど凝集体として沈殿し、液中のMoを回収できることがわかった。