【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、ホウ素サブフタロシアニン部分、ホウ素サブフタロシアニン部分の周囲の環式基に位置する複数の可溶化置換基、およびホウ素原子に位置する軸方向の置換基を含む化合物に関する。複数の可溶化置換基は、酸素または硫黄含有官能基、および1個もしくは複数のヘテロ原子を場合によって含有し、長さが8個以上の炭素原子である、置換または非置換、直鎖、分岐または環式、脂肪族または芳香族の末端ヒドロカルビル基を含む。軸方向の置換基は、複素環アミン基、ジアリールケトン基、ベンゾトリアゾール基、ベンジルアルコール基および多環式芳香族炭化水素基からなる群から選択される環式基であり、前記環式基は、酸素含有連結部分によってホウ素原子に結合し、1個以上の追加の置換基で場合によって置換されている。軸方向の基がベンジルアルコール基である場合、ベンジルアルコールのアルコール置換基は前記酸素含有連結部分ではない。
【0010】
本開示の一実施形態は、フタロニトリル化合物をホウ素ハロゲン化塩と反応させて、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体である、1個もしくは複数のヘテロ原子を場合によって含有し、長さが8個以上の炭素原子である、置換または非置換、直鎖、分岐または環式、脂肪族または芳香族の末端ヒドロカルビル基で置換された酸素または硫黄含有官能基を含むフタロニトリル化合物を形成するステップ、ならびに、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素からなる群から選択される、酸素含有連結基によってホウ素原子に結合した環式基を含む少なくとも1種の酸素含有化合物と反応させるステップを含むプロセスにより作製された化合物を対象とする。環式基は、1個以上の追加の置換基で場合によって置換されている。本化合物は、約35〜約53の範囲のa*値、約24〜約40のb*値、および約40〜約60のL*値のL*a*b*色空間値を有する。本化合物は以下の化合物の1つではない。a)フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素−サブフタロシアニン、b)クロロトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、またはc)3−ペンタデシルフェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン。
【0011】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明がいずれも単なる例示および説明であり、請求される本教示に限定されないことを理解されたい。
【0012】
本教示の実施形態がここで詳細に参照され、その例は添付の図面において説明される。図面において、同様の参照番号は、全体にわたって同一の要素を示すために使用される。以下の説明において、その一部を形成し、例証として本教示を実施することができる特定の例示の実施形態を示す添付の図面が参照される。したがって、以下の説明は単なる例示である。
【0013】
本開示の実施形態は、マゼンタ着色剤化合物およびマゼンタ着色剤化合物を形成するための中間化合物を対象とする。着色剤化合物は、ホウ素サブフタロシアニン部分の周囲の環式基に結合した、複数の可溶化置換基を含む置換ホウ素サブフタロシアニン化合物である。軸方向の置換基はまたサブフタロシアニン部分のホウ素原子に結合している。
【0014】
可溶化置換基は、8個以上の炭素原子を含む末端芳香族または脂肪族のヒドロカルビル基に結合した酸素または硫黄含有官能基を含む。ヒドロカルビル基は、置換または非置換、直鎖、分岐または環式であってもよく、酸素、窒素または硫黄などの1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。適切なヒドロカルビル基の例は、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアリール基を含む。
【0015】
ヒドロカルビル基の炭素原子の数は、例えば、相転移インク組成物などの所望のワックス系組成物に着色剤化合物が溶解するように変えることができる。一実施形態において、末端ヒドロカルビルは、C
12〜C
20もしくはC
25アルキルなどの直鎖または分岐のC
10〜C
50アルキルである。一実施形態において、アルキル基は長さが約15個の炭素原子の直鎖アルキルである。
【0016】
可溶化置換基のアルキル基が結合した酸素または硫黄含有官能基は、所望のフタロニトリル中間体を形成するのに十分な反応性を有する任意の適切な基であってもよい。適切な酸素または硫黄含有官能基の例は、アリールオキシ、スルホキシ、硫黄、酸素またはスルホニル基を含む。
【0017】
本開示のマゼンタ着色剤の軸方向の置換基は、ホウ素原子に位置し、ホウ素原子に連結する酸素含有部分を有する任意の適切な環式基であってもよい。軸方向の置換基は、インクベース中での染料の溶解性をさらに増強するように作用しおよび/または例えば、ラジカル機構、紫外線曝露および/または一重項酸素曝露による分解に対して染料を安定化することによって安定剤として作用することができる。
【0018】
適切な軸方向の置換基の例は、紫外線または遊離ラジカル、一重項酸素、または酸素の他の高い反応性の形態からの攻撃または分解に対して分子を安定化する既知の種類の化合物を含む。特定の例は以下のものを含む。典型的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体であり、光化学的に開始する分解反応に対して効率的な安定剤であるヒンダードアミン光安定剤[HALS]、複素環アミン基、1,3−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジアリールケトン基、可逆的分子内プロトン移動によってUV線から吸収した光エネルギーを熱として放散することにより紫外線吸収剤として働く、ヒドロキシフェニルトリアジンなどのベンゾトリアゾール基、水素ラジカルを供与することによりラジカルを死滅することによってラジカルに対して、染料または他の化合物と競合することができる、ベンジルアルコール基を含有するブチル化ヒドロキシルトルエンなどのヒンダードフェノール、および一重項酸素の失活剤または隔離剤として働くことができる多環式芳香族炭化水素基。上記の軸方向の置換基の例のいくつかにおいて、ヒドロキシル[フェノール性OH]は失活機構の不可欠な部分であり、そのような事例では、アキシアル位のサブフタロシアニンに共有結合するために、それらは追加の−OH、−CH
2−OH、−CH
2CH
2−OHなどで置換されている。環式安定剤基は、以下の例で示すR
11、R
12、R
13およびR
14基のいずれかなどの1個以上の追加の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0019】
本開示の中間化合物は、上記のマゼンタ着色剤化合物と同様であってもよいが、ホウ素原子に結合した異なる軸方向の置換基を含んでいてもよい。中間化合物に適する軸方向の置換基の例は、クロロおよびブロモ基などのハロゲンを含むことができる。中間化合物は、一般に本開示のマゼンタ化合物と同様の溶解特性を有することができるが、いくつかの事例において、スミレ色または何か他の色などの異なる色であってもよい。
【0020】
一実施形態において、着色剤化合物は、式I:
【化2】
の化合物である
[式中、
X
1、X
2およびX
3はそれぞれ、他方から独立して、−O−、−S−、−SO−または−SO
2−であり、
R
1、R
2およびR
3はそれぞれ、他方から独立して、
(1)アルキル中にヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアルキルを含むアルキル、
(2)アリール中にヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアリールを含むアリール、
(3)アリールアルキルのアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアリールアルキルを含むアリールアルキル、または
(4)アルキルアリールのアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアルキルアリールを含むアルキルアリールであり、
Zは、複素環アミン基、ジアリールケトン基、ベンゾトリアゾール基、ベンジルアルコール基および多環式芳香族炭化水素基からなる群から選択され、酸素含有連結部分によってホウ素原子に結合した環式基である。]。
【0021】
一実施形態において、−X
1−R
1、−X
2−R
2および−X
3−R
3基は、
【化3】
からなる群から選択される[式中、nは約8から約50、または約10から約40、または約15から約25の範囲の整数である。]。一実施形態において、−X
1−R
1、−X
2−R
2および−X
3−R
3はそれぞれ、
【化4】
である。
【0022】
一実施形態において、式Iの化合物のZ基は、
【化5】
からなる群から選択される[式中、R
10’は、−O−、−R
14O−および−R
14COO−からなる群から選択される連結部分であり、R
11、R
12およびR
13は、独立して、水素原子、アルキル、−R
14COOH、ヒドロキシルおよびアルキルヒドロキシルからなる群から選択され、R
14はアルキルである。]。Z基の特定の例は以下を含むことができる:
【化6】
上記の基において単結合「
*」は、式1のアキシアル位のホウ素原子への連結を表す。
【0023】
軸方向の基が上記ベンジルアルコール基である場合、ベンジルアルコールのアルコール置換基は酸素含有連結部分ではない。さらに、本開示の化合物は以下を含まない。a)フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、b)クロロトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、またはc)3−ペンタデシル−フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン。
【0024】
L*a*b*色空間は、L*を明度に、a*およびb*を反対色次元に使用して色を定義する周知の表色系である。一実施形態において、本開示の着色剤化合物は以下のL*a*b*色空間値を有する。約43〜約57、または約45〜約55などの約40〜約60の範囲のL*値、約38〜約50、または約40〜約48などの約35〜約53の範囲のa*値、および約−26〜約−38、または約−28〜約−36などの約−24〜約−40の範囲のb*値。さらに、着色剤化合物は、約49〜約60の範囲の、色度の指標であるc*値を有することができる。一実施形態において、本化合物は、L*a*b*色空間値:約35〜約53の範囲のa*値、約24〜約40のb*値、および約40〜約60のL*値を有することができる。
【0025】
本開示の中間化合物は、Zがハロゲンであること以外は、上で論じた式Iのものと同様であってもよい。そのような中間化合物の例を下記に示す。
【化7】
【0026】
本開示はまた、着色剤化合物を作製するプロセスを対象とする。一実施形態において、本プロセスは、フタロニトリル化合物をホウ素ハロゲン化塩と反応させるプロセスを含む。結果として得られたホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、例えば、上記の中間化合物のいずれであってもよい。次いで、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、少なくとも1種の環式酸素含有化合物と反応させて、マゼンタ色を提供する着色剤化合物を形成する。少なくとも1種の環式の酸素含有化合物は、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素からなる群から選択され、前記環式基は、少なくとも1種のヒドロキシル含有部分で置換されている。
【0027】
本プロセスにおいて用いられるフタロニトリル化合物は、少なくとも8個の炭素原子を有する末端芳香族または脂肪族のヒドロカルビルで置換された酸素含有官能基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、置換または非置換、直鎖、分岐または環式であってもよく、酸素、窒素または硫黄などの1個以上のヘテロ原子を含むことができる。適切なヒドロカルビル基の例は、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアリール基を含む。
【0028】
一実施形態において、フタロニトリル化合物は、C
10〜C
50アルキルフェノキシ置換フタロニトリル、およびC
10〜C
50アルキルスルホン置換フタロニトリル、またはその混合物からなる群から選択される。他の長鎖アルキル置換フタロニトリル化合物も用いることができる。本開示の着色剤化合物を作製するために使用することができる市販のフタロニトリル化合物の一例は、4−(3−ペンタデシルフェノキシ)−フタロニトリルであり、これはJeffrey H.Banningらに発行された米国特許第6,472,523号明細書に開示されている。
【0029】
本開示のプロセスに用いられるアルキルスルホン置換フタロニトリル化合物は、任意の適切な方法によって作製することができる。一実施形態において、アルキルスルフィド−フタロニトリル化合物中の硫黄原子は酸化されてスルホニル官能基を形成する。これは、メチルイソブチルケトンおよび/または氷酢酸などの1種または複数の溶媒にアルキルスルフィド−フタロニトリル前駆体を溶解し、続いて過酸化水素などの強い酸化剤とのスルフィド基の反応などによる任意の所望の方式で遂行することができる。
【0030】
任意の適切なホウ素ハロゲン化塩も用いることができる。一実施形態において、ホウ素ハロゲン化塩は、三塩化ホウ素または三臭化ホウ素である。
【0031】
フタロニトリル化合物とホウ素ハロゲン化塩は、任意の適切な方式で反応させて、所望のホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を形成することができる。一実施形態において、フタロニトリル化合物は、キシレンまたはトルエンなどの非水溶媒と混合される。次いで、窒素などの不活性ガス雰囲気中での加熱、またはディーン・スターク・トラップを用いるなどの任意の適切な方法によってすべてまたは実質的にすべての水を混合物から除去することができる。次いで、結果として得られた混合物は、ホウ素ハロゲン化物塩と合わせ、場合によって非水溶媒に溶解し、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を形成することができる。
【0032】
次いで、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、適切な環式の酸素含有化合物と混合することができ、これは反応して、ホウ素原子に結合した軸方向の置換基としてハロゲン原子を置き換える。適切な酸素含有化合物の例は、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素を含む。前記環式基は、サブフタロシアニンへの軸方向の結合を可能にする少なくとも1種のヒドロキシル含有部分で置換されている。前記環式基は、以下の例で示すR
11、R
12、R
13およびR
14基のいずれかなどの1個以上の追加の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0033】
適切な酸素含有化合物の例は、式:
【化8】
のものを含む[式中、R
10はヒドロキシル、アルキルヒドロキシルまたはカルボキシル基からなる群から選択され、R
11、R
12およびR
13は、独立して水素原子、アルキル、R
14COOH、ヒドロキシルおよびアルキルヒドロキシルからなる群から選択され、R
14はアルキルである。]。特定の例は、式の化合物を含む:
【化9】