特許第6351435号(P6351435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351435
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ホウ素サブフタロシアニン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 47/18 20060101AFI20180625BHJP
   C09B 47/20 20060101ALI20180625BHJP
   C09B 67/20 20060101ALN20180625BHJP
   C09D 11/328 20140101ALN20180625BHJP
   B41J 2/01 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   C09B47/18CSP
   C09B47/20
   !C09B67/20 B
   !C09D11/328
   !B41J2/01 501
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-164439(P2014-164439)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-44989(P2015-44989A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】14/012,222
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エイチ・バニング
(72)【発明者】
【氏名】ウルフギャング・ジー・ウェドラー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ヴィ・ドラッペル
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063437(JP,A)
【文献】 特開2011−032443(JP,A)
【文献】 特表2003−500510(JP,A)
【文献】 国際公開第94/024612(WO,A1)
【文献】 特開2008−216589(JP,A)
【文献】 特表2004−528198(JP,A)
【文献】 特開2015−044990(JP,A)
【文献】 Angewandte Chemie, International Edition,2011年,50(15),p.3506-3509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/00
B41J 2/00
C09B 67/00
C09D 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのホウ素サブフタロシアニン化合物
【化1】
[式中、
−X−R、−X−Rおよび−X−Rがそれぞれ、
【化2】
(nは10から50の範囲の整数である)
または
(nは10から50の範囲の整数である)
であり、
Zは、
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
および
【化7】
からなる群から選択される。]。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、−X−R、−X−Rおよび−X−Rがそれぞれ、
【化8】
である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、−X−R、−X−Rおよび−X−Rがそれぞれ、
【化9】
であり、nは10から40の範囲の整数である、化合物。
【請求項4】
前記化合物を用いた印刷サンプルが、35〜53の範囲のa*値、24〜40のb*値、および40〜60のL*値のL*a*b*色空間値を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物を用いた印刷サンプルが、49〜60の範囲のc*値を有する、請求項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホウ素サブフタロシアニン化合物、およびその化合物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷プロセスは、室温で固体であり、高温で液体であるインクを用いることができる。そのようなインクは固体インク、ホットメルトインク、相転移インクなどと称することができる。例えば、米国特許第4,490,731号明細書は、紙などの記録媒体に印刷するための相転移インクを分注する機器を開示している。
【0003】
一般に、ホットメルト相転移インクは、環境温度で固相にあるが、インクジェット印刷装置の高い運転温度では液相で存在する。吐出温度で、液体インクの小滴は印刷装置から放出され、インク小滴が、直接、または中間の加熱された移動ベルトまたはドラムを介して記録媒体の表面と接触する場合、小滴は急速に固化して固化インク滴の所定のパターンを形成する。
【0004】
カラープリント用の相転移インクは、一般に相転移インクに適合する着色剤と組み合わせた相転移インク担体組成物を含む。ホットメルト固体インクプリンターは、多くの場合135℃以上の印字ヘッド温度で作動するので、多くの場合、これらの比較的高い運転温度に耐えることができる、熱に安定でワックス可溶性の着色剤を用いる。そのような着色剤の例は、米国特許第6,472,523号明細書に開示されたフタロシアニン染料である。これらの着色剤は、ホットメルトインク組成物に使用するのに適するシアン染料として使用されることで知られる、高彩度のフタロシアニン発色団構造である。
【0005】
本当に「鮮やかな」マゼンタ染料は手に入れるのが困難であり、可溶性のあるホットメルトインクでかつ安定的なバージョンは得るのがはるかに困難である。最も商業的に入手しやすいマゼンタ染料は、固体インクについての要求性能を満たさない。固体インクでの使用が知られているマゼンタ染料の一例は、米国特許第6,998,493号明細書に開示されたワックス可溶性ローダミン染料である。この染料は、カスタム製作されるので、主として「規模の経済」のために極めて高価である。さらに、この染料は、印刷物で数日以内にインクマトリックスを通って拡散し、他の着色領域へブリードしやすいという問題がある。
【0006】
一般的なフェノキシ置換銅フタロシアニンおよびホウ素サブフタロシアニンの合成のプロセスもまた、化学分野でよく知られている。そのような染料は、現在のホットメルトインクのプラットフォームに一般にあまり可溶性でなく、そのため使用することができない。例えば、ホウ素サブフタロシアニン塩化物として染料の業界において知られるマゼンタ染料は、調製の困難さおよび溶解性の理由で学術的な好奇心以上のものである。以下の式1の化合物を参照のこと。
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知のマゼンタ染料の1つまたは複数の問題に取り組み、および/またはマゼンタ染料の代替品を提供する、新しいマゼンタ染料化合物およびそのような化合物を作製するプロセスは、当業界では前進する1ステップと考えられるであろう。さらに、同一の化学中間化合物を使用するシアンおよびマゼンタ染料の両方などの複数のカスタムメイドの染料を製作する能力によって、潜在的にかなりのコスト削減することができる。
【0008】
本開示は、新規のマゼンタ染料化合物、およびそのような化合物を作製するプロセスを対象とし、以下の1つまたは複数の利点を提供する:ホットメルトインク組成物中のマゼンタ染料の溶解性、ワックス系組成物中の溶解性、比較的高い印字ヘッド温度で使用するのに十分な熱的安定性、比較的低いエネルギーシステムにおいておよび/または低い印字ヘッド温度システムにおいて用いられる能力、UV硬化システムにおいて使用される能力、良好な耐光性、染料拡散についての最小限の傾向、生産に対して低減されたコスト、物性の短所に取り組むためにいくつかの次元において修正され、および/または染料化合物を異なる用途に適合させることを可能にする能力、既知の中間化合物を使用して製作することができるマゼンタ染料、またはシアン染料を製作するために使用されるのと同一の中間体を使用して製作することができるマゼンタ染料。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、ホウ素サブフタロシアニン部分、ホウ素サブフタロシアニン部分の周囲の環式基に位置する複数の可溶化置換基、およびホウ素原子に位置する軸方向の置換基を含む化合物に関する。複数の可溶化置換基は、酸素または硫黄含有官能基、および1個もしくは複数のヘテロ原子を場合によって含有し、長さが8個以上の炭素原子である、置換または非置換、直鎖、分岐または環式、脂肪族または芳香族の末端ヒドロカルビル基を含む。軸方向の置換基は、複素環アミン基、ジアリールケトン基、ベンゾトリアゾール基、ベンジルアルコール基および多環式芳香族炭化水素基からなる群から選択される環式基であり、前記環式基は、酸素含有連結部分によってホウ素原子に結合し、1個以上の追加の置換基で場合によって置換されている。軸方向の基がベンジルアルコール基である場合、ベンジルアルコールのアルコール置換基は前記酸素含有連結部分ではない。
【0010】
本開示の一実施形態は、フタロニトリル化合物をホウ素ハロゲン化塩と反応させて、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体である、1個もしくは複数のヘテロ原子を場合によって含有し、長さが8個以上の炭素原子である、置換または非置換、直鎖、分岐または環式、脂肪族または芳香族の末端ヒドロカルビル基で置換された酸素または硫黄含有官能基を含むフタロニトリル化合物を形成するステップ、ならびに、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素からなる群から選択される、酸素含有連結基によってホウ素原子に結合した環式基を含む少なくとも1種の酸素含有化合物と反応させるステップを含むプロセスにより作製された化合物を対象とする。環式基は、1個以上の追加の置換基で場合によって置換されている。本化合物は、約35〜約53の範囲のa*値、約24〜約40のb*値、および約40〜約60のL*値のL*a*b*色空間値を有する。本化合物は以下の化合物の1つではない。a)フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素−サブフタロシアニン、b)クロロトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、またはc)3−ペンタデシルフェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン。
【0011】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明がいずれも単なる例示および説明であり、請求される本教示に限定されないことを理解されたい。
【0012】
本教示の実施形態がここで詳細に参照され、その例は添付の図面において説明される。図面において、同様の参照番号は、全体にわたって同一の要素を示すために使用される。以下の説明において、その一部を形成し、例証として本教示を実施することができる特定の例示の実施形態を示す添付の図面が参照される。したがって、以下の説明は単なる例示である。
【0013】
本開示の実施形態は、マゼンタ着色剤化合物およびマゼンタ着色剤化合物を形成するための中間化合物を対象とする。着色剤化合物は、ホウ素サブフタロシアニン部分の周囲の環式基に結合した、複数の可溶化置換基を含む置換ホウ素サブフタロシアニン化合物である。軸方向の置換基はまたサブフタロシアニン部分のホウ素原子に結合している。
【0014】
可溶化置換基は、8個以上の炭素原子を含む末端芳香族または脂肪族のヒドロカルビル基に結合した酸素または硫黄含有官能基を含む。ヒドロカルビル基は、置換または非置換、直鎖、分岐または環式であってもよく、酸素、窒素または硫黄などの1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。適切なヒドロカルビル基の例は、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアリール基を含む。
【0015】
ヒドロカルビル基の炭素原子の数は、例えば、相転移インク組成物などの所望のワックス系組成物に着色剤化合物が溶解するように変えることができる。一実施形態において、末端ヒドロカルビルは、C12〜C20もしくはC25アルキルなどの直鎖または分岐のC10〜C50アルキルである。一実施形態において、アルキル基は長さが約15個の炭素原子の直鎖アルキルである。
【0016】
可溶化置換基のアルキル基が結合した酸素または硫黄含有官能基は、所望のフタロニトリル中間体を形成するのに十分な反応性を有する任意の適切な基であってもよい。適切な酸素または硫黄含有官能基の例は、アリールオキシ、スルホキシ、硫黄、酸素またはスルホニル基を含む。
【0017】
本開示のマゼンタ着色剤の軸方向の置換基は、ホウ素原子に位置し、ホウ素原子に連結する酸素含有部分を有する任意の適切な環式基であってもよい。軸方向の置換基は、インクベース中での染料の溶解性をさらに増強するように作用しおよび/または例えば、ラジカル機構、紫外線曝露および/または一重項酸素曝露による分解に対して染料を安定化することによって安定剤として作用することができる。
【0018】
適切な軸方向の置換基の例は、紫外線または遊離ラジカル、一重項酸素、または酸素の他の高い反応性の形態からの攻撃または分解に対して分子を安定化する既知の種類の化合物を含む。特定の例は以下のものを含む。典型的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体であり、光化学的に開始する分解反応に対して効率的な安定剤であるヒンダードアミン光安定剤[HALS]、複素環アミン基、1,3−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジアリールケトン基、可逆的分子内プロトン移動によってUV線から吸収した光エネルギーを熱として放散することにより紫外線吸収剤として働く、ヒドロキシフェニルトリアジンなどのベンゾトリアゾール基、水素ラジカルを供与することによりラジカルを死滅することによってラジカルに対して、染料または他の化合物と競合することができる、ベンジルアルコール基を含有するブチル化ヒドロキシルトルエンなどのヒンダードフェノール、および一重項酸素の失活剤または隔離剤として働くことができる多環式芳香族炭化水素基。上記の軸方向の置換基の例のいくつかにおいて、ヒドロキシル[フェノール性OH]は失活機構の不可欠な部分であり、そのような事例では、アキシアル位のサブフタロシアニンに共有結合するために、それらは追加の−OH、−CH−OH、−CHCH−OHなどで置換されている。環式安定剤基は、以下の例で示すR11、R12、R13およびR14基のいずれかなどの1個以上の追加の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0019】
本開示の中間化合物は、上記のマゼンタ着色剤化合物と同様であってもよいが、ホウ素原子に結合した異なる軸方向の置換基を含んでいてもよい。中間化合物に適する軸方向の置換基の例は、クロロおよびブロモ基などのハロゲンを含むことができる。中間化合物は、一般に本開示のマゼンタ化合物と同様の溶解特性を有することができるが、いくつかの事例において、スミレ色または何か他の色などの異なる色であってもよい。
【0020】
一実施形態において、着色剤化合物は、式I:
【化2】
の化合物である
[式中、
、XおよびXはそれぞれ、他方から独立して、−O−、−S−、−SO−または−SO−であり、
、RおよびRはそれぞれ、他方から独立して、
(1)アルキル中にヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアルキルを含むアルキル、
(2)アリール中にヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアリールを含むアリール、
(3)アリールアルキルのアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアリールアルキルを含むアリールアルキル、または
(4)アルキルアリールのアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が場合によって存在してもよい、置換および非置換のアルキルアリールを含むアルキルアリールであり、
Zは、複素環アミン基、ジアリールケトン基、ベンゾトリアゾール基、ベンジルアルコール基および多環式芳香族炭化水素基からなる群から選択され、酸素含有連結部分によってホウ素原子に結合した環式基である。]。
【0021】
一実施形態において、−X−R、−X−Rおよび−X−R基は、
【化3】
からなる群から選択される[式中、nは約8から約50、または約10から約40、または約15から約25の範囲の整数である。]。一実施形態において、−X−R、−X−Rおよび−X−Rはそれぞれ、
【化4】
である。
【0022】
一実施形態において、式Iの化合物のZ基は、
【化5】
からなる群から選択される[式中、R10’は、−O−、−R14O−および−R14COO−からなる群から選択される連結部分であり、R11、R12およびR13は、独立して、水素原子、アルキル、−R14COOH、ヒドロキシルおよびアルキルヒドロキシルからなる群から選択され、R14はアルキルである。]。Z基の特定の例は以下を含むことができる:
【化6】
上記の基において単結合「」は、式1のアキシアル位のホウ素原子への連結を表す。
【0023】
軸方向の基が上記ベンジルアルコール基である場合、ベンジルアルコールのアルコール置換基は酸素含有連結部分ではない。さらに、本開示の化合物は以下を含まない。a)フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、b)クロロトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン、またはc)3−ペンタデシル−フェノキシトリスペンタデシルフェノキシホウ素サブフタロシアニン。
【0024】
L*a*b*色空間は、L*を明度に、a*およびb*を反対色次元に使用して色を定義する周知の表色系である。一実施形態において、本開示の着色剤化合物は以下のL*a*b*色空間値を有する。約43〜約57、または約45〜約55などの約40〜約60の範囲のL*値、約38〜約50、または約40〜約48などの約35〜約53の範囲のa*値、および約−26〜約−38、または約−28〜約−36などの約−24〜約−40の範囲のb*値。さらに、着色剤化合物は、約49〜約60の範囲の、色度の指標であるc*値を有することができる。一実施形態において、本化合物は、L*a*b*色空間値:約35〜約53の範囲のa*値、約24〜約40のb*値、および約40〜約60のL*値を有することができる。
【0025】
本開示の中間化合物は、Zがハロゲンであること以外は、上で論じた式Iのものと同様であってもよい。そのような中間化合物の例を下記に示す。
【化7】
【0026】
本開示はまた、着色剤化合物を作製するプロセスを対象とする。一実施形態において、本プロセスは、フタロニトリル化合物をホウ素ハロゲン化塩と反応させるプロセスを含む。結果として得られたホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、例えば、上記の中間化合物のいずれであってもよい。次いで、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、少なくとも1種の環式酸素含有化合物と反応させて、マゼンタ色を提供する着色剤化合物を形成する。少なくとも1種の環式の酸素含有化合物は、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素からなる群から選択され、前記環式基は、少なくとも1種のヒドロキシル含有部分で置換されている。
【0027】
本プロセスにおいて用いられるフタロニトリル化合物は、少なくとも8個の炭素原子を有する末端芳香族または脂肪族のヒドロカルビルで置換された酸素含有官能基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、置換または非置換、直鎖、分岐または環式であってもよく、酸素、窒素または硫黄などの1個以上のヘテロ原子を含むことができる。適切なヒドロカルビル基の例は、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールおよびアリール基を含む。
【0028】
一実施形態において、フタロニトリル化合物は、C10〜C50アルキルフェノキシ置換フタロニトリル、およびC10〜C50アルキルスルホン置換フタロニトリル、またはその混合物からなる群から選択される。他の長鎖アルキル置換フタロニトリル化合物も用いることができる。本開示の着色剤化合物を作製するために使用することができる市販のフタロニトリル化合物の一例は、4−(3−ペンタデシルフェノキシ)−フタロニトリルであり、これはJeffrey H.Banningらに発行された米国特許第6,472,523号明細書に開示されている。
【0029】
本開示のプロセスに用いられるアルキルスルホン置換フタロニトリル化合物は、任意の適切な方法によって作製することができる。一実施形態において、アルキルスルフィド−フタロニトリル化合物中の硫黄原子は酸化されてスルホニル官能基を形成する。これは、メチルイソブチルケトンおよび/または氷酢酸などの1種または複数の溶媒にアルキルスルフィド−フタロニトリル前駆体を溶解し、続いて過酸化水素などの強い酸化剤とのスルフィド基の反応などによる任意の所望の方式で遂行することができる。
【0030】
任意の適切なホウ素ハロゲン化塩も用いることができる。一実施形態において、ホウ素ハロゲン化塩は、三塩化ホウ素または三臭化ホウ素である。
【0031】
フタロニトリル化合物とホウ素ハロゲン化塩は、任意の適切な方式で反応させて、所望のホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を形成することができる。一実施形態において、フタロニトリル化合物は、キシレンまたはトルエンなどの非水溶媒と混合される。次いで、窒素などの不活性ガス雰囲気中での加熱、またはディーン・スターク・トラップを用いるなどの任意の適切な方法によってすべてまたは実質的にすべての水を混合物から除去することができる。次いで、結果として得られた混合物は、ホウ素ハロゲン化物塩と合わせ、場合によって非水溶媒に溶解し、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体を形成することができる。
【0032】
次いで、ホウ素サブフタロシアニン塩化物中間体は、適切な環式の酸素含有化合物と混合することができ、これは反応して、ホウ素原子に結合した軸方向の置換基としてハロゲン原子を置き換える。適切な酸素含有化合物の例は、複素環アミン、ジアリールケトン、ベンゾトリアゾール、ベンジルアルコールおよび多環式芳香族炭化水素を含む。前記環式基は、サブフタロシアニンへの軸方向の結合を可能にする少なくとも1種のヒドロキシル含有部分で置換されている。前記環式基は、以下の例で示すR11、R12、R13およびR14基のいずれかなどの1個以上の追加の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0033】
適切な酸素含有化合物の例は、式:
【化8】
のものを含む[式中、R10はヒドロキシル、アルキルヒドロキシルまたはカルボキシル基からなる群から選択され、R11、R12およびR13は、独立して水素原子、アルキル、R14COOH、ヒドロキシルおよびアルキルヒドロキシルからなる群から選択され、R14はアルキルである。]。特定の例は、式の化合物を含む:
【化9】
【実施例】
【0034】
特に断らなければ、すべての部およびパーセントは重量による。
実施例1
【化10】
【0035】
ディーン・スターク・トラップ、凝縮器およびテフロン(登録商標)被覆撹拌磁石を装備した500mLの三首丸底フラスコに、米国特許第6,472,523号明細書の実施例Iに記載されているように調製した4−(3−ペンタデシルフェノキシ)−フタロニトリル化合物50.0gおよびキシレン300mLを装填した。フラスコを、磁石撹拌、凝縮器、ディーンスターク器および軽い窒素雰囲気の下で160℃の油浴に入れた。20時間還流し水をすべて除去した後、キシレン中の1.0Mの三塩化ホウ素42mL(実質約4.5gのBCl)を乾燥条件下に注射器およびセプタムを介して添加した。この溶液はスミレ色になった。生成物は上記の式のものであると考えられた。
【0036】
添加の1時間後、溶液の25%を以下のそれぞれを含有する1リットルの瓶へ等しい割合で失活させた。
実施例1A:アセトニトリル250mL中のトリアセトンアミノアルコール(Creanova)5g
実施例1B:アセトニトリル250mL中の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(アルドリッチ)5g
実施例1C:アセトニトリル250mLおよびトルエン10mL中のNorbloc 6000(Noramco)5g
実施例1D:アセトニトリル250mL中の3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルアルコール(ランカスター(Lancaster))5g
【0037】
3日にわたり4種の反応生成物をおき、アセトニトリルを傾瀉し、下記の反応で示すものと考えられる構造を有する所望の生成物が残った。
【化11】
【0038】
実施例2:m−ペンタデシルフェノール置換サブフタロシアニンの一重項酸素失活安定剤エーテル
ディーン・スターク・トラップ、凝縮器およびテフロン(登録商標)被覆撹拌磁石を装備した500mLの三首丸底フラスコに、Mustang Dye中間体8.75g[4−(3−ペンタデシルフェノキシ)−フタロニトリル化合物、米国特許第6,472,523号明細書実施例1参照]およびキシレン200mLを装填した。フラスコを、磁石撹拌、凝縮器、ディーンスターク器、および軽い窒素雰囲気の下で160℃の油浴に入れた。20時間還流して水をすべて除去した後、キシレン中の1.0Mの三塩化ホウ素20mLを乾燥条件下に(注射器およびセプタムを介して)添加した。溶液はスミレ色になった。添加の1時間後、溶液は、アセトニトリル500mLおよび9−アントラセンメタノール1.25グラムへ失活させ、冷却し2、3日おいた。次いで、溶媒を傾瀉し油性の固体が残った。この構造は下記のものと考えられる。
【化12】
【0039】
実施例3A:オクタデシルスルホン置換サブフタロシアニンの一重項酸素失活安定剤エーテル
【化13】
【0040】
シリコーン油浴中の、テフロン(登録商標)被覆撹拌磁石、凝縮器、ガラス栓、および定圧添加漏斗を備えた24/40 2Lの三首フラスコに、4−オクタデシルスルフィド−フタロニトリル25g、メチルイソブチルケトン137gおよび氷酢酸127gを添加し撹拌を始めた。浴の温度は25℃から90℃に上げ、固体を溶かした。35%のH125mLを添加漏斗に添加し、2時間にわたり徐々に添加し、その間、反応混合物は90℃で撹拌し、次いで90℃で1時間、後加熱した。次いで、撹拌を止め、混合物を25℃にし16時間おいた。フラスコの中味の上に白色の固体ケーキが形成された。液体は傾瀉して除き、固体をブフナー漏斗で収集し、臭気が検知されなくなるまで、メタノールで洗浄した。固体は乾燥して薄層クロマトグラフィー(「TLC」)を用いると出発S−反応体の消失および最終SO生成物の出現を示した。赤外スペクトルを生成物について実施した。構造は上に示したものと考えられた。
【0041】
実施例3B:サブフタロシアニンの形成
【化14】
【0042】
ディーン・スターク・トラップ、凝縮器、およびテフロン(登録商標)被覆撹拌磁石を装備した500mLの三首丸底フラスコに、実施例3Aからの中間体8.75gおよびキシレン200mLを装填した。フラスコを、磁石撹拌、凝縮器、ディーンスターク器、および軽い窒素雰囲気の下で160℃の油浴に入れた。5時間還流して水をすべて除去した後、乾燥条件下に注射器およびセプタムを介してキシレン中の1.0Mの三塩化ホウ素20mLを添加した。この溶液はスミレ色になり、還流を継続した。構造は上に示したものと考えられた。
【0043】
実施例3C
BClの添加の1時間後、溶液は、アセトニトリル約500mLおよび9−アントラセンメタノール1.25グラムを入れた1Lの瓶へ失活させた。2日間試料を静置した。次いで、溶媒は傾瀉して除き、深いマゼンタ色の油が残った。濃いマゼンタ色はトルエン溶液中で明瞭であった。この構造は以下であると考えられる。
【化15】
【0044】
実施例4:インク担体の調製
インクベースは、以下の成分を溶融、混合、濾過することにより調製した:
−ポリエチレンワックス(PE655、ベーカー・ペトロライト社(タルサ、オクラホマ州)(Baker Petrolite, Tulsa, OK)から得た、式CH(CH50CH)、43.59重量部、
−ステアリルステアリン酸アミドワックスステアリルステアリン酸アミドワックス(KEMAMIDERS−180、クロプトン社、グリニッジ、コネティカット州(Crompton Corporation, Greenwich, CT))、19.08重量部、
−Uniqema社、ニューキャッスル、DEから入手した1当量のC−36ダイマー酸と、2当量のエチレンジアミンおよびUNICID700(ベーカー・ペトロライト社、タルサ、OKから入手、末端カルボン酸基を有する長鎖炭化水素)との反応から得られたテトラアミド樹脂、(米国特許第6,174,937号明細書の実施例1に記載されているように調製した)、18.94重量部、
−ABITOLEヒドロアビエチルアルコール(ハーキュリーズ社、ウィルミントン、デラウエア州(Hercules Inc., Wilmington, DE)から入手した)の2当量と1当量のイソフォロンジイソシアナートの反応から得られたウレタン樹脂(米国特許第5,782,966号明細書の実施例1に記載されているように調製した)、11.71重量部、
−3当量のステアリルイソシアナートおよびグリセリン系アルコールの付加物であるウレタン樹脂(米国特許第6,309,453号明細書の実施例4に記載されているように調製した)、6.48重量部、
−NAUGUARD 445抗酸化剤((ユニロイヤル・ケミカル社、ミドルベリー、コネティカット州(Uniroyal Chemical Co., Middlebury, CT))から入手可能)、0.20重量部。
【0045】
その後、上に列挙した600グラムのインクベース成分を上に列挙したパーセントで1リットルのビーカーに添加し、オーブン中135℃で溶融するまで加熱した。続いてビーカーを135℃の加熱マントル一式に挿入し、ビーカーの中味を45分間撹拌した。次いで、結果として得られたインクは、ワットマン#3および0.2ミクロンNAEフィルターの組み合わせに通して濾過し、Mottフィルターアセンブリに置いた。濾過は6時間後に完了するまで135℃で続けた。インクベースを約31gの無色のインクベースを含有する型へ注ぎ冷却させた。
【0046】
実施例5:インク調製
実施例4からの約30.7グラムのインクベースを、磁石撹拌棒を入れた100mLのビーカーに入れ、続いて、溶融するまで135℃の油浴に置いた。次いで、実施例1Aからの約0.45グラムの染料を添加し約3時間撹拌した。次いで、マゼンタ色のインクをアルミニウム型へ注いだ。
【0047】
実施例6:インク試料の印刷
RK Print−Coat Instruments社のKプルーファを使用してインク実施例5からのインクの5つの印刷試料を紙に製作した。これらの校正刷りは、紙上で3つの異なる強度のインク被覆率を示した。