(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部と、前記被検出部とが前記近接状態にある場合、前記検出部の磁性材料は、前記被検出部の磁界により磁気飽和していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の近接スイッチ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る近接スイッチを実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る近接スイッチを模式的に説明する説明図である。
図2は、実施形態1に係る近接スイッチが適用される適用例を模式的に説明する説明図である。
図1に示すように、近接スイッチは、検出部1と、被検出部2と、検出回路3と、発振回路4とを備える。
【0017】
例えば、
図2に示すように検出部1と被検出部2とは、近接した場合に、対向するように、支持部材11と支持部材12とに取り付けられる。そして、支持部材11と支持部材12とは、回動部13を中心に相対回転可能なように、接続されている。
図1及び
図2において、支持部材11と共に被検出部2が支持部材12の検出部1に相対的に近づく方向を接近方向S−on、支持部材11と共に被検出部2が支持部材12の検出部1に相対的に離反する方向を離反方向S−offとする。支持部材11が支持部材12に近づいてもよく、支持部材12が支持部材11に近づいてもよい。
【0018】
検出部1は、軟磁性材料の棒状、線状、板状、らせん状又は不定形状の部材である。
【0019】
本実施形態の検出部1の材料は、軟磁性材料であり、鉄(Fe)とニッケル(Ni)とを含むFeNi合金である。検出部1の材料は、70質量%以上85質量%以下のNiを含み、残部がFeであることが好ましい。検出部1の材料は、78質量%のNiを含み、残部がFeであることがより好ましい。Niを70質量%以上85質量%以下含むことで、検出部1は、高透磁率及び磁化特性に優れるようになる。FeNi合金は、銅(Cu)を0質量%以上6質量%以下、モリブテン(Mo)を0質量%以上6質量%以下含んでいてもよい。また、FeNi合金は、不可避の不純物を含んでもよく、軟磁性を示せば、他の元素を含んでいてもよい。軟磁性材料は、硬磁性材料よりも、外部から磁場を印加したときに磁場の方向に物質中の磁気双極子が容易に向く性質を有している。逆に、硬磁性材料、つまり永久磁石は、外部から磁場を印加したときに磁場の方向に物質中の磁気双極子が向きにくく、特定の方向に磁気双極子が揃ったままとなっているため、実施形態1の検出部1の材料は、軟磁性材料が好ましい。
【0020】
本実施形態の検出部1の材料は、これに限られず、42質量%以上49質量%以下のNiを含み、残部がFeであるFeNi合金であってもよい。また、本実施形態の検出部1の材料は、FeBSi合金、FeCoBSi合金、FeSiAl合金であってもよい。
【0021】
被検出部2は、硬磁性材料、つまり永久磁石であって、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石を用いることができる。被検出部2と検出部1との相対距離が後述する動作距離となった場合、被検出部2が検出部1の軟磁性材料を磁気飽和させる磁界を与えることができる。
【0022】
支持部材11及び支持部材12は、例えばプラスチックで形成されている。回動部13は、例えば、支持部材11及び支持部材12に回転シャフトを挿入して、回転自在に連結するヒンジ機構である。なお、実施形態1の説明として、回動部13により、支持部材11及び支持部材12が近接又は離隔可能な構造を例示したが、これに限られず、スライド機構、バネ機構などどのような支持構造であってもよい。
【0023】
発振回路4は、周波数fの交流電流を検出部1に印加する。例えば発振回路4は交流電源などが例示でき、前記交流電源はトランスを含み、このトランスを介して電流を供給する。
【0024】
検出回路3は、検出部1のインピーダンスの変化を検出できればよい。報知回路5は、検出回路3の出力や検出されたインピーダンスの変化に基づいて、光、音、電波の送信、表示媒体の表示、振動、およびこれらの組み合わせなどで、被検出部2が検出部1に相対的に近づき、所定以上の距離の近接状態になったことを知らせることができる回路である。検出回路3は、RFインピーダンスアナライザが例示できる。
【0025】
ここで、発振回路4が検出部1に流す電流は、表皮効果の影響を受ける。検出部1の軟磁性材料の電気抵抗は、表皮深さdが大きいほど、小さくなる。検出部1の軟磁性材料の電気抵抗率をρ、発振回路4が検出部1に印加する電流の角周波数をω(=2πf)、検出部1の絶対透磁率をμとすると、表皮深さdは下記式(1)で求めることができる。
【0026】
d=(2ρ/(ωμ))
1/2・・・(1)
【0027】
被検出部2が検出部1に相対的に離反する離反方向S−offに所定の距離(以下、動作距離という。)を超えて離れている、非近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和していない。検出部1の軟磁性材料は、絶対透磁率μが大きいので、上述した表皮深さdは浅くなる。このため、検出部1に流れる交流電流の電流が小さく、検出部1のインピーダンス成分が大きくなる。この場合、検出回路3は、検出部1のインピーダンス成分が所定の閾値を超えているので、報知回路5へは出力しない。
【0028】
被検出部2と検出部1とが接近方向S−onに動作距離以下に相対的に接近する、近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和しており、検出部1の絶対透磁率μが空気の透磁率(透磁率=1)に近くなる。このため、被検出部2と検出部1とが離反方向S−offに動作距離を超えて相対的に離れている場合に比較して、被検出部2と検出部1との距離が動作距離以下の場合、上述した表皮深さdは深くなる。このため、検出部1に流れる交流電流の電流が増加し、検出部1のインピーダンス成分が小さくなる。この場合、検出回路3は、検出部1のインピーダンス成分が所定の閾値以下となり、報知回路5へ出力する。報知回路5は、検出回路3の出力に基づいて、光、音、電波の送信などで、被検出部2が検出部1に相対的に近づいて動作距離以下の近接状態になったことを知らせる。
【0029】
以上説明したように、実施形態1の近接スイッチは、軟磁性材料の部材である検出部1と、検出部1に対する相対距離が変化し、当該相対距離に応じた磁界を検出部1に加える永久磁石の被検出部2と、検出部1に加わる磁界の変化に応じた検出部1のインピーダンス成分に基づいて、被検出部2の近接状態を検出する検出回路と、を備える。例えば、通常NiFe合金のキュリー点は350℃付近であり、100℃を大きく超える環境温度で、所定の磁気特性を維持することができる。このため、実施形態1の近接スイッチは、100℃を超える環境温度であっても、安定して、検出部1と被検出部2との近接状態の有無を検出することができる。
【0030】
検出部1の軟磁性材料は、鉄とニッケルとを含むFeNi合金であるため、磁化特性が高く、周波数fに対する周波数応答性を高くすることができる。
【0031】
検出部1の軟磁性材料は、FeNi合金であって、70質量%以上のNiを含む。これにより、絶対透磁率が高く、非近接状態と近接状態との表皮深さdの変化の差分を大きくすることができる。
【0032】
検出部1と、被検出部2とが上述した近接状態にある場合、検出部1の軟磁性材料は、被検出部2の磁界により磁気飽和している。このため、実施形態1の近接スイッチは、機械的な近接スイッチと比べ、故障確率が小さく、信頼性が高い。
【0033】
なお、発振回路4は、表皮効果の小さい周波数fよりも周波数の低い周波数と、上述した周波数fとを交互に検出部1へ印加し、検出回路3は、近接状態でのインピーダンス成分の比を検出してもよい。これにより、例えば、高温環境下で、検出部1が性能劣化する場合、インピーダンス成分の比率が変化するので、早期に交換するよう、検出回路3は、報知回路5へ出力することができる。また、インピーダンス成分の比率で検知を行えば、検出部1が劣化の影響を受けず、長期に安定して使用することができる。
【0034】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る近接スイッチを模式的に説明する説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0035】
実施形態2の近接スイッチは、発振回路4の代わりに、発信回路7と、アンテナ6とを備える。発信回路7は、発信周波数fの信号RWをアンテナ6を介して、距離Lにある検出部1Aへ送信する。検出部1Aは、上述した検出部1と同じ材料である。検出部1Aは、コイル状であって、アンテナ6の信号RWを受信可能な形状となっている。
【0036】
被検出部2と検出部1Aとが離反方向S−off方向に動作距離を超えて離れている、非近接状態の場合、検出部1Aの軟磁性材料は、磁気飽和していない。検出部1Aの軟磁性材料は、絶対透磁率μが大きいので、上述した表皮深さdは浅くなる。このため、検出部1のインピーダンス成分が大きく、検出部1Aにおける信号RWを受けた誘導電流の電流が小さくなる。この場合、検出回路3は、検出部1Aのインピーダンス成分に基づく電流が閾値より小さいので、報知回路5へは出力しない。
【0037】
被検出部2と検出部1Aとが接近方向S−onに動作距離以下の距離にある、近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和しており、検出部1Aの絶対透磁率μが空気の透磁率1に近くなる。このため、動作距離を超えて被検出部2が検出部1Aに相対的に離れている場合に比較して、被検出部2と検出部1Aとの距離が動作距離以下の場合、上述した表皮深さdは深くなる。このため、検出部1Aのインピーダンス成分が小さく、検出部1Aにおける信号RWを受けた誘導電流の電流が増加する。この場合、検出回路3は、検出部1Aのインピーダンス成分に基づく電流が閾値以上となり、報知回路5へ出力する。報知回路5は、検出回路3の出力に基づいて、光、音、電波の送信などで、被検出部2が検出部1Aに相対的に近づいて動作距離以下の近接状態になったことを知らせる。
【0038】
以上説明したように、実施形態2の近接スイッチは、軟磁性材料の部材である検出部1Aと、検出部1Aに対する相対距離が変化し、当該相対距離に応じた磁界を検出部1Aに加える永久磁石の被検出部2と、検出部1Aに加わる磁界の変化に応じた検出部1Aのインピーダンス成分に基づいて、被検出部2の近接状態を検出する検出回路3Aと、を備える。例えば、NiFe合金のキュリー点は460℃であり、100℃を大きく超える環境温度で、所定の磁気特性を維持することができる。このため、実施形態2の近接スイッチは、100℃を超える環境温度であっても、安定して、検出部1Aと被検出部2との近接状態の有無を検出することができる。
【0039】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係る近接スイッチを模式的に説明する説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0040】
実施形態3の被検出部2Aは、いわゆる電磁石であり、導電体のコイル21と、軟磁性材料のコア22とを備える。被検出部2Aは、検出部1との相対距離が所定の距離となった場合、検出部1の軟磁性材料を磁気飽和させる磁界を与えることができる。
【0041】
(実施形態4)
図5は、実施形態4に係る近接スイッチを模式的に説明する説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0042】
実施形態4の近接スイッチは、レファレンス部材8と、検出部1とを並列配置しており、検出部1側に接続する接点1aと、レファレンス部材8側に接続する接点8aを選択して検出回路3へ接続する選択スイッチSW1とを備えている。
【0043】
レファレンス部材8は、磁界の影響を受けない、所定のインピーダンス成分を有する材料であり、例えばMn
2Sbである。選択スイッチSW1は、検出部1側に接続する接点1aと、レファレンス部材8側に接続する接点8aとを交互に選択することで、検出回路3が近接状態でのインピーダンス成分の比率を求めることができる。これにより、例えば、高温環境下で、検出部1が性能劣化する場合、インピーダンス成分の比率が変化するので、早期に交換するよう、検出回路3は、報知回路5へ出力することができる。
【0044】
(実施形態5)
図6は、実施形態5に係る近接スイッチを模式的に説明する説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0045】
実施形態5の近接スイッチは、発振回路4に代わり、発振回路4と発振回路4’を並列配置しており、検出回路3側に接続する接点3aと、発振回路4側に接続する接点4aおよび発振回路4’側に接続する接点4’aとを切り替え可能に接続する選択スイッチSW2とを備えている。
【0046】
発振回路4は、第1周波数f1で発振している。発振回路4’は、第2周波数f2で発振している。周波数f2は、周波数f1よりも周波数が高い。上述したように、近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和しており、検出部1の絶対透磁率μが空気の透磁率(透磁率=1)に近くなる。ここで、発振回路4が検出部1に流す電流は、表皮効果の影響を受けづらい。被検出部2と検出部1とが離反方向S−offに動作距離を超えて相対的に離れている場合に比較して、被検出部2と検出部1との距離が動作距離以下の場合、第1周波数f1及び第2周波数f2における表皮深さは深くなる。
【0047】
第1周波数f1における表皮深さと第2周波数f2における表皮深さとは、上述した式(1)で示したように検出部1に印加する電流の角周波数ωが異なるので、異なる表皮深さになる。発振回路4が印加した第1周波数f1の電流では、検出部1の表皮効果が小さく(表皮深さが深い状態)、検出部1で電流が流れやすい。
【0048】
発振回路4’が印加した第2周波数f2の電流では、検出部1の表皮効果が大きく(表皮深さが浅い状態)、つまり第1周波数f1の電流と比較して検出部1で電流が流れにくい。
【0049】
選択スイッチSW2は、
図6に示す接点4aおよび接点4’aとを交互に選択することで、検出部1に与える周波数を第1周波数f1又は第2周波数f2に切り替えることができる。よって、検出回路3は、発振回路4および発振回路4’をそれぞれを接続した場合の検出部1のインピーダンス成分を求めることができる。これにより、検出回路3は、近接状態において、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比を検出してもよい。
【0050】
被検出部2が検出部1に相対的に離反する離反方向S−offに動作距離を超えて離れている非近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和していない。検出部1の軟磁性材料は、絶対透磁率μが大きいので、上述した表皮深さdは浅くなる。このため、第1周波数f1及び第2周波数f2における検出部1に流れる交流電流の電流は異なる。検出回路は、検出部1に第1周波数f1で印加される電流での検出部1のインピーダンス成分と、第2周波数f2で検出部1に印加される電流での検出部1のインピーダンス成分との比率が1:1とは異なる比率として検出する。この場合、検出回路3は、第1周波数f1に対する第2周波数f2の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲を超えているので、報知回路5へは出力しない。
【0051】
被検出部2と検出部1とが接近方向S−onに動作距離以下の距離にある、近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和しており、検出部1の絶対透磁率μが空気の透磁率1に近くなる。このため、非近接状態の場合に比べ、近接状態の場合、第1周波数f1及び第2周波数f2における検出部1に流れる交流電流の表皮深さdは共に深くなる。その結果、検出回路は、検出部1に第1周波数f1で印加される電流での検出部1のインピーダンス成分と、第2周波数f2で検出部1に印加される電流での検出部1のインピーダンス成分との比率が1:1に近い比率として検出する。この場合、検出回路3は、第1周波数f1に対する第2周波数f2の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲の場合、報知回路5へ出力する。なお、検出回路3は、第2周波数f2に対する第1周波数f1の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲の場合、報知回路5へ出力するようにしてもよい。報知回路5は、検出回路3の出力に基づいて、光、音、電波の送信などで、被検出部2が検出部1に相対的に近づいて動作距離以下の近接状態になったことを知らせる。以上説明したように、また、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率で検知を行えば、検出部1の劣化の影響を低減させ、実施形態5に係る近接スイッチは、長期に安定して使用することができる。
【0052】
また、検出回路3は、近接状態において、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比を検出することで、実施形態5に係る近接スイッチのメンテナンス時期を認知することができる。例えば、高温環境下で、検出部1が性能劣化する場合、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率が変化する。このため、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率が所定の閾値を超えた場合、検出部1を早期に交換するよう、検出回路3は、報知回路5へ出力することができる。
【0053】
(実施形態6)
実施形態6に係る近接スイッチは、
図1で示す実施形態1と同様に、検出部1と、被検出部2と、検出回路3と、発振回路4とを備える。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0054】
実施形態6に係る近接スイッチは、発振回路4が複数の周波数を選択的に発振することができる。例えば、発振回路4は、第1周波数f1及び第2周波数f2を交互に発振することができる。周波数f1は、表皮効果が小さく検出部1のインピーダンスが低く電流が流れる周波数である。周波数f2は、表皮効果が周波数f1と比較して大きく、検出部1でのインピーダンスが高く電流が流れない周波数である。周波数f2は、周波数f1よりも周波数が高い。
【0055】
以上説明したように、実施形態6に係る近接スイッチは、上述した実施形態5の発振回路4’を省略しても検出部1のインピーダンス成分を検出回路3により求めることができる。
【0056】
実施形態6に係る近接スイッチは、被検出部2と検出部1とが非近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和していない。検出部1の軟磁性材料は、絶対透磁率μが大きいので、上述した表皮深さdは浅くなる。このため、第1周波数f1及び第2周波数f2における検出部1に流れる交流電流の電流は異なる。検出回路3は、検出部1に第1周波数f1で印加される電流での検出部1のインピーダンス成分と、第2周波数f2で検出部1に印加される電流での検出部1のインピーダンス成分との比率が1:1とは異なる比率として検出する。この場合、検出回路3は、第1周波数f1に対する第2周波数f2の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲を超えているので、報知回路5へは出力しない。
【0057】
被検出部2と検出部1とが近接状態の場合、検出部1の軟磁性材料は、磁気飽和しており、検出部1の絶対透磁率μが空気の透磁率1に近くなる。このため、非近接状態の場合に比べ、近接状態の場合、第1周波数f1及び第2周波数f2における検出部1に流れる交流電流の表皮深さdは共に深くなる。その結果、検出回路は、検出部1に第1周波数f1で印加される電流での検出部1のインピーダンス成分と、第2周波数f2で検出部1に印加される電流での検出部1のインピーダンス成分との比率が1:1に近い比率として検出する。この場合、検出回路3は、第1周波数f1に対する第2周波数f2の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲の場合、報知回路5へ出力する。なお、検出回路3は、第2周波数f2に対する第1周波数f1の検出部1のインピーダンス成分の比率が所定の範囲の場合、報知回路5へ出力するようにしてもよい。報知回路5は、検出回路3の出力に基づいて、光、音、電波の送信などで、被検出部2が検出部1に相対的に近づいて動作距離以下の近接状態になったことを知らせる。以上説明したように、また、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率で検知を行えば、検出部1の劣化の影響を低減させ、実施形態6に係る近接スイッチは、長期に安定して使用することができる。
【0058】
また、検出回路3は、近接状態において、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比を検出することで、実施形態6に係る近接スイッチのメンテナンス時期を認知することができる。例えば、高温環境下で、検出部1が性能劣化する場合、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率が変化する。このため、第1周波数f1に対する第2周波数f2のインピーダンス成分の比率が所定の閾値を超えた場合、検出部1を早期に交換するよう、検出回路3は、報知回路5へ出力することができる。
【0059】
(評価例)
次に、上述した実施形態1の評価例を実施例1から実施例5により具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって、何ら限定されるものではない。絶対透磁率は、比透磁率と真空の透磁率(4π×10
−7H/m)との積で求めることができる。
【0060】
実施例1の検出部の材料として、直径90μmのワイヤー状のFe
79B
16Si
5をコイル状に巻回したものを用意して、被検出部としての磁石を近づけた。磁石を近づける前の非近接状態(表1では磁石無と表記)では、周波数13.54MHzの交流電流に対するインピーダンス成分Zは、3.96Ωであった。磁石を近づけた近接状態(表1では磁石有と表記)では、13.54MHzでの交流に対するインピーダンス成分Zは、3.16Ωであった。非近接状態(表1では磁石無と表記)と近接状態(表1では磁石有と表記)では、インピーダンス成分の変化率が20%であった。
【0061】
実施例2の検出部の材料として、直径90μmのワイヤー状のFe
67Co
18B
14Si
1をコイル状に巻回したものを用意して、磁石を近づけた。磁石を近づける前の非近接状態(表1では磁石無と表記)では、周波数13.54MHzの交流電流に対するインピーダンス成分Zは、3.46Ωであった。磁石を近づけた近接状態(表1では磁石有と表記)では、周波数13.54MHzの交流電流に対するインピーダンス成分Zは、2.88Ωであった。非近接状態(表1では磁石無と表記)と近接状態(表1では磁石有と表記)では、インピーダンス成分の変化率が17%であった。
【0062】
実施例3の検出部の材料として、直径90μmのワイヤー状のFe
22Ni
78をコイル状に巻回したものを用意して、磁石を近づけた。磁石を近づける前の非近接状態(表1では磁石無と表記)では、周波数13.54MHzの交流電流に対するインピーダンス成分Zは、100Ωであった。磁石を近づけた近接状態(表1では磁石有と表記)では、周波数13.54MHzの交流電流に対するインピーダンス成分Zは、72Ωであった。非近接状態(表1では磁石無と表記)と近接状態(表1では磁石有と表記)では、インピーダンス成分の変化率が28%であった。以上の実施例1から実施例3を表1として記載する。
【0064】
実施例4の検出部の材料として、直径90μmのワイヤー状のFe
79B
16Si
5をコイル状に巻回したものを用意して、磁石を近づけた。磁石を近づける前の非近接状態(表2では磁石無と表記)では、208kHzでの交流に対するインピーダンス成分Zは、1.5Ωであった。磁石を近づけた近接状態(表2では磁石有と表記)では、208kHzでの交流に対するインピーダンス成分Zは、1.4Ωであった。非近接状態(表1では磁石無と表記)と近接状態(表2では磁石有と表記)では、変化率が7%あった。なお、実施例5は、Fe
22Ni
78を用意して、磁石を近づけ磁石が無い状態(表1では磁石無と表記)と磁石を近づけた状態(表1では磁石有と表記)では、インピーダンス成分の変化率が0%であった。
【0065】
実施例5の検出部の材料として、直径90μmのワイヤー状のFe
22Ni
78をコイル状に巻回したものを用意して、磁石を近づけた。磁石を近づける前の非近接状態(表2では磁石無と表記)では、208kHzでの交流に対するインピーダンス成分Zは、27Ωであった。磁石を近づけた近接状態(表2では磁石有と表記)では、208kHzでの交流に対するインピーダンス成分Zは、13Ωであった。非近接状態(表2では磁石無と表記)と近接状態(表2では磁石有と表記)では、インピーダンス成分の変化率が52%であった。以上の実施例4から実施例5を表2として記載する。
【0067】
以上説明したように、FeNi合金は、検出部1として好適であることが分かった。