(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351462
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】キャビネットの扉ロック構造
(51)【国際特許分類】
E05C 7/04 20060101AFI20180625BHJP
E05C 9/04 20060101ALI20180625BHJP
E05B 63/14 20060101ALI20180625BHJP
E05B 65/00 20060101ALI20180625BHJP
H02B 1/38 20060101ALI20180625BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
E05C7/04
E05C9/04
E05B63/14 C
E05B65/00 D
H02B1/38 D
H05K5/03 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-194124(P2014-194124)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-200169(P2015-200169A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-77987(P2014-77987)
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 拡二
【審査官】
秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−100374(JP,A)
【文献】
特開2003−307067(JP,A)
【文献】
実開平7−14680(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 7/02 − 7/06
E05C 9/04
E05B 63/14
E05B 65/00
H02B 1/38
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの本体の開口部に、観音開き式の一対の扉が設けられたキャビネットの扉ロック構造であって、
一方の扉に開閉操作手段を設けると共に、他方の扉に前記本体の開口部上下端部に係止して扉をロックする鎖錠棒を設け、
当該鎖錠棒は、中央に設けられた回動板の回動により伸縮すると共に、前記回動板には前記開閉操作手段の背部に設けられたベロが係止する係止片を備え、
前記鎖錠棒が前記本体に係止して前記他方の扉がロック状態にあるときに、前記一方の扉が閉扉されて前記開閉操作手段によるロック操作が成されると、前記ベロが前記係止片に係止して前記一方の扉もロックされることを特徴とするキャビネットの扉ロック構造。
【請求項2】
前記回動板には、直接回動操作して前記鎖錠棒のロック/ロック解除を行うための操作部材が設けられて成ることを特徴とする請求項1記載のキャビネットの扉ロック構造。
【請求項3】
前記鎖錠棒がロック解除状態にあるときに、前記一方の扉が閉扉されて前記開閉操作手段によるロック操作が成されると、回動する前記ベロが前記回動板に当接して前記回動板を回動させ、更に前記ベロの回動係合作用により前記係止片に前記ベロが係止し、双方の扉がロック状態となることを特徴とする請求項1又は2記載のキャビネットの扉ロック構造。
【請求項4】
前記回動板は、扉前面に対して回動面が平行となるよう配置されて成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のキャビネットの扉ロック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気機器を収納するキャビネットの扉ロック構造に関し、特に観音開きの扉を備えたキャビネットの扉ロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
観音開きする扉を備えた従来のキャビネットは、最初に開放操作する一方の扉にキャビネット本体の上下端部に係止して開放を阻止するための鎖錠棒が配置され、扉に設けられたハンドルを操作して鎖状棒の係止を解除して開扉操作を可能としている。
そして、このようなキャビネットの他方の扉の形態としては、鎖状棒が設けられていないものと設けた構造のものがあり、設けられていないものは一方の扉を開けた状態では他方の扉も開閉自在であった(例えば、特許文献1参照)。
一方、他方の扉にも鎖錠棒が設けられていたものは、一方の扉を開放してもロック状態を維持でき、自然に開くことはなかった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−49482号公報
【特許文献2】特開平11−146510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記双方の扉に鎖錠棒を設けたものは、収納された電気機器に対してメンテナンス等作業する際に、危険な部位に触れないよう一方を閉じた状態で作業できるため好ましい構造であったが、鎖錠機構が双方の扉に必要であるため、コスト高な構造であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、1つの鎖錠棒を備えただけで観音開きする一方の扉を開放しても他方の扉の閉状態を維持できるキャビネットの扉ロック構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、キャビネットの本体の開口部に、観音開き式の一対の扉が設けられたキャビネットの扉ロック構造であって、一方の扉に開閉操作手段を設けると共に、他方の扉に本体の開口部上下端部に係止して扉をロックする鎖錠棒を設け、当該鎖錠棒は、中央に設けられた回動板の回動により伸縮すると共に、回動板には開閉操作手段の背部に設けられたベロが係止する係止片を備え、鎖錠棒が本体に係止して他方の扉がロック状態にあるときに、一方の扉が閉扉されて開閉操作手段によるロック操作が成されると、ベロが前記係止片に係止して一方の扉もロックされることを特徴とする。
この構成によれば、1つの鎖錠棒を設けるだけで観音開きする双方の扉をロックできるし、一方の扉を開けても他方の扉を閉じてロックした状態を維持させることができ、片方の扉のみ開けた状態での作業がし易い。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、回動板には、直接回動操作して鎖錠棒のロック/ロック解除を行うための操作部材が設けられて成ることを特徴とする。
この構成によれば、操作部材を操作することで回動板を操作できるため、鎖錠棒を備えた他方の扉に別途ロック/ロック解除機能を備えた開閉操作手段を設ける必要がない。よって、部材を削減できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、鎖錠棒がロック解除状態にあるときに、一方の扉が閉扉されて開閉操作手段によるロック操作が成されると、回動するベロが回動板に当接して回動板を回動させ、更にベロの回動係合作用により係止片にベロが係止し、双方の扉がロック状態となることを特徴とする。
この構成によれば、鎖錠棒がロック状態に無くても、開閉操作手段のロック操作で、鎖錠棒を伸張させて扉をロックでき、鎖錠棒の状態にかかわらず簡易な操作でロックできる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、回動板は、扉前面に対して回動面が平行となるよう配置されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、鎖錠棒を伸縮させる機構の奥行きを薄くでき、機器を収納する内部空間を広く取ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの鎖錠棒を設けるだけで観音開きする双方の扉をロックできるし、一方の扉を開けても他方の扉を閉じたロック状態を維持させることができ、片方の扉のみ開けた状態での作業がし易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るキャビネットの扉ロック構造の一例を示し、(a)はキャビネットの斜視図、(b)はA1部拡大図である。
【
図2】左右の扉を開扉したキャビネットの斜視図であり、
図1とは反対方向から見た斜視図である。
【
図4】
図1のキャビネットの扉を閉じてロックした状態の説明図であり、(a)は右側扉を透視した状態のキャビネット説明図、(b)はB部拡大図である。
【
図5】左扉のロックを解除した状態のA1部拡大図である。
【
図6】キャビネットの扉ロック構造の他の例を示し、(a)はキャビネットの斜視図、(b)はC1部拡大図である。
【
図8】
図6のキャビネットの平面ハンドル付近を拡大した正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1,
図2は本発明に係る扉ロック構造を備えたキャビネットの一例を示している。
図1は一方の扉を開扉した状態で、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)はA1部の拡大図である。
図2は双方の扉を開扉した状態を示し、
図1は右下方向から見た図、
図2は左下方から見た図を示している。
図1,2において、1は電気機器等を収納するキャビネットの本体、2は観音開きする一対の扉、3は開閉操作及びロック/ロック解除操作するための平面ハンドル、4は鎖錠棒である。
【0013】
本体1は、背板1a、天板1b、底板1c、左右側板1d,1dを有し、前面が開口され、扉(正面視右側に配置される第1扉2a、左側に配置される第2扉2b)2が開口された前面を閉塞するよう設けられている。
第1扉2aは、右側部が本体1に蝶着され、開閉操作する平面ハンドル3を備えている。第2扉2bは、左側部が本体1に蝶着されて開放端側である右側部の外側に、右側部に沿って鎖錠棒4が取り付けられている。
【0014】
鎖錠棒4は、上部に配置された上部棒体4aと下部に配置された下部棒体4bとが、中央に配置された回動板4cにより連結されている。両棒体4a,4bは上下方向に略一直線に配置され、先端部が第2扉2bに設けられた支持孔21に挿通されて支持されている。尚、回動板4cは第2扉2bの側面に軸着され、棒体4a,4bは軸着部を中心に対向する部位に連結されている。
【0015】
この結果、回動板4cの回動により棒体4a,4bは上下動して鎖錠棒4全体では伸縮動作し、上下方向に伸張した状態では上下端部が第2扉2bから突出して、本体1に形成された係止溝11に係止し、収縮した状態では第2扉2bの縦幅内に収まるよう構成されている。こうして、扉2の上方及び下方に出没可能となっている。尚、
図1は、鎖錠棒4を伸張して、第2扉2bをロックした状態を示している。
【0016】
図3は
図1(b)のA2部を拡大した図であり、回動板4cを示している。
図3に示すように、回動板4cには後述する平面ハンドル3に設けられたベロ31が係止する係止片41と、鎖錠棒4を伸縮操作する操作部材42とが設けられ、第2扉2bの側面に突設された支持軸43に回動可能に連結されている。尚、操作部材42は棒体4a,4bを回動板4cへ連結するねじにより形成されている。
第2扉2bをロックした状態の回動板4cの回動位置では、係止片41が前方に突出するよう配置され、ベロ31を係止する係止凹部41aが下方を向いた状態にあり、平面ハンドル3の操作で上方に回動移動するベロ31を係止するよう配置される。
【0017】
図4は閉扉してロックした状態にあるキャビネットの説明図であり、(a)は第1扉2aを透視状態としたキャビネットの斜視図、(b)はB部拡大図である。平面ハンドル3は第1扉2aを貫通して設けた回転軸33を有し、回転軸33の後端部である第1扉2aの背面にベロ31が固着されている。
平面ハンドル3がハンドルケース32に収納された
図4の状態、或いはハンドルケース32から前方へ引き出しただけの状態(図示せず)では、ベロ31は左側に突出して回動板4cの係止片41に係止されたロック状態にあり、第1扉2aの開放を不可としている。
【0018】
そして、この平面ハンドル3を前方に引き出して側方(右方向)に回動すると、ベロ31が下方に回動して係止片41への係止が解除され、即ちロックが解除されて、第1扉2aを前方へ引くことが可能となり開扉できる。
【0019】
こうして第1扉2aを開いた状態が
図1の状態となる。この状態では第2扉2bはまだロックされた状態にあり、鎖錠棒4を収縮させない限りロック状態は維持される。
第2扉2bのロック解除は、
図3に示す操作部材42を矢印Sの方向へ手動で回転操作して回動板4cを回転させることで実施される。操作部材42の回動操作で鎖錠棒4は収縮して、本体1との係止が解除される。
図5は、こうしてロックを解除した状態のA1部を示している。
【0020】
このように、1つの鎖錠棒4を設けるだけで観音開きする双方の扉2a,2bをロックできるし、一方の扉(第1扉2a)を開けても他方の扉(第2扉2b)を閉じてロックした状態を維持させることができ、片方の扉2のみ開けた状態での作業がし易い。
また、操作部材42を操作することで回動板4cを操作できるため、鎖錠棒4を備えた第2扉2bに別途ロック/ロック解除機能を備えた平面ハンドル等の開閉操作手段を設ける必要がない。よって、部材を削減できる。
【0021】
尚、第2扉2bをロックしない状態でも、平面ハンドル3のロック操作で両扉2をロックできる。具体的に、係止片41が前方へ配置されずに鎖錠棒4を収縮させた
図5に示す状態において、第1扉2aを閉扉操作して平面ハンドル3を下方に回動すると、連動して下方を向いていたベロ31は
図4に示す右方向に回動する。この動作により、ベロ31が回動板4cに当接して、回動板4cを回動させる。その結果、双方の棒体4a,4bは突出動作して第2扉2bをロックする。同時に、回動して前方に突出した係止片41にベロ3が係止して第1扉2aもロックされる。
よって、鎖錠棒4がロック状態に無くても、平面ハンドル3のロック操作で、鎖錠棒4を伸張させて第2扉2b及び第1扉2aをロックでき、鎖錠棒4の状態にかかわらず簡易な操作でロックできる。
【0022】
次に、キャビネットの扉ロック構造の他の形態を説明する。上記形態は鎖錠棒4を伸縮させる回動板4cを第2扉2bの側面に軸着し、その回動面をキャビネットの前後方向としているが、回動面をキャビネット前面となる扉2の前面に平行に配置しても良く、
図6はこのように回動板を配置した構成を示し、(a)はキャビネットの斜視図、(b)はC1部拡大図を示している。以下、上記実施形態と相違する部位を説明する。尚、上記形態と同様の構成要素には同一の符号を付してある。
【0023】
図6に示すように、第2扉2bの開放側側部にはスカート板23が延設され、このスカート板23上に回動板4としての摺動板24が配置されている。
更に拡大した
図7を参照して具体的に説明する。第2扉2bの前面から折り曲げ形成された側辺22の先端となる奥部に、扉前面と平行にスカート板23を延設し、このスカート板23上に摺動板24が取り付けられている。摺動板24は仮想中心Mが設定されて、その仮想中心Mを中心として円弧状の長孔24aが一対形成され、この長孔24aを介してねじ25によりスカート板23に摺動可能にねじ止めされている。
また、摺動板24の第1扉2a側の端部には、平面ハンドル3のベロ31が係止する係止片41が前方に突出形成されているし、仮想中心Mを中心として係止片41に対応する位置には操作部材42が設けられ、手動による摺動操作(回動操作)を可能としている。
【0024】
図8は
図6のキャビネットの平面ハンドル3付近を拡大した正面説明図であり、この
図8に示すように、ベロ31は平面ハンドル3の右側に突出し、平面ハンドル3のロック操作で摺動板24の係止片41に係止して扉2はロックされる。
【0025】
このように、摺動板24を扉2の前面と平行に配置、即ち摺動面(仮想中心Mを中心とした回動面)を扉2の前面と平行に設けても良く、上述した回動板4cを縦配置したキャビネットと同様の効果に加えて、鎖錠棒を伸縮させる機構の奥行きを薄くできるため、機器を収納する内部空間を広げることができる。特に、摺動板24は仮想中心Mの周囲に設けた円弧状の長孔24aの作用で回転させており、軸部材を設けていないため、伸縮機構の奥行きを最小限にできる。
尚、摺動板24は、仮想中心Mの周囲に円弧状の長孔24aを形成して摺動により回転させているが、上記回動板4cの支持軸43と同様の軸部材を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記実施形態は、電気機器を収納するキャビネットについて説明したが、他の用途のキャビネットに対しても良好に使用でき、簡易な構造で観音開きの扉をロックできる。
【符号の説明】
【0027】
1・・本体、2・・扉、2a・・第1扉、2b・・第2扉、3・・平面ハンドル(開閉操作手段)、4・・鎖錠棒、4a・・上部棒体、4b・・下部棒体、4c・・回動板、24・・摺動板(回動板)、24a・・長孔、31・・ベロ、33・・回転軸、41・・係止片、42・・操作部材。