特許第6351468号(P6351468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許63514684−メチル−1−ペンテン系重合体を含む消臭性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351468
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む消臭性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20180625BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20180625BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20180625BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20180625BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08L23/20
   A61L9/01 X
   A61L9/16 D
   C08K3/32
   D01F6/46 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-199655(P2014-199655)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69501(P2016-69501A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 太
(72)【発明者】
【氏名】丸子 千明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和俊
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−326700(JP,A)
【文献】 特開平06−211996(JP,A)
【文献】 特開平06−228823(JP,A)
【文献】 特開平07−173722(JP,A)
【文献】 特開平10−221177(JP,A)
【文献】 特開平11−035718(JP,A)
【文献】 特開2000−096344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08F 6/00 − 246/00
A61L 9/00 − 9/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−1−ペンテン系重合体と、4価金属リン酸塩化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤とを含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記消臭剤の含有量が、4−メチル−1−ペンテン系重合体に対して0.1〜10重量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記4価金属リン酸塩化合物が、リン酸ジルコニウムである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−メチル−1−ペンテン系重合体と特定の消臭剤を含む樹脂組成物並びにそれからなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で強度が優れ、様々な形態に成形できる各種樹脂素材は、様々な用途において幅広く用いられている。それら樹脂素材には多様かつ高度な機能の付与が求められているが、なかでも消臭性能の付与は近年の清潔志向などの要因により要求が高まる傾向にあり、各種素材が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1、2では基材の表面に消臭剤とバインダ成分を含む分散液を塗布した後に固定化することによって成形体に消臭性を付与する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、成形体を使用時に表面が擦れて消臭剤が脱落したり、成形体が繊維の場合には洗濯を繰り返し行うことよって消臭剤が流出するなど、持続性に乏しく実用的でなかった。
【0004】
そこで基材からの消臭剤の脱落を防ぐ方法として、特許文献3では消臭剤を基材となる樹脂材料に練り込む技術が開示されているが、消臭剤表面が材料に覆われているために消臭性能が低下するという問題点があった。さらに上記消臭性能の低下を防ぐために特許文献4では基材を多孔質化して、基材の表面積を増加させることで、消臭対象ガスと基材樹脂中の消臭剤が接触しやすくするという技術が開示されているが、多孔質化による基材の機械強度が低下するという問題点があり改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−238777号公報
【特許文献2】特開2002−235280号公報
【特許文献3】特公平7−12431号公報
【特許文献4】特開2012−57004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような背景技術に鑑みてなされたものであって、消臭性の持続性に優れ、かつ消臭性能が高い樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行い、4−メチル−1−ペンテン系重合体の高いガス透過性に着目し、4−メチル−1−ペンテン系重合体と、特定の消臭剤とを含む樹脂組成物を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]に関する。
[1]4−メチル−1−ペンテン系重合体と、下記(A)および(B)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤とを含む樹脂組成物。
(A)4価金属リン酸塩化合物
(B)金属酸化物または複合金属酸化物
[2]前記消臭剤の含有量が、4−メチル−1−ペンテン系重合体に対して0.1〜10重量%である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(A)4価金属リン酸塩化合物が、リン酸ジルコニウムである[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(B)金属酸化物または複合金属酸化物が、酸化亜鉛、または酸化亜鉛と二酸化ケイ素との混合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる射出成形体。
[8][1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる繊維。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消臭性の持続性に優れ、かつ消臭性能が高い樹脂組成物および成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は4−メチル−1−ペンテン系重合体と、
(A)4価金属リン酸塩化合物
(B)金属酸化物または複合金属酸化物
から選ばれる少なくとも1種の消臭剤とを含む。
上記消臭剤の含有量は、4−メチル−1−ペンテン系重合体に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量%である。
【0010】
[4−メチル−1−ペンテン系重合体]
本発明で用いられる4−メチル−1−ペンテン系重合体は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などの公知のオレフィン重合用触媒の存在下で、4−メチル−1−ペンテンを含むモノマーを重合することにより製造される。
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、例えば、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、あるいは4−メチル−1−ペンテンと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、本発明の効果を奏する限り、そのいずれの意味も含む。
【0011】
前記4−メチル−1−ペンテンと共重合する他のモノマーとしては、エチレンおよび4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。該α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数6〜20のα−オレフィンであり、さらに好ましくは炭素原子数8〜20のα−オレフィンである。これらのα−オレフィンは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
4−メチル−1−ペンテン系重合体が共重合体である場合、共重合体を構成する4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の量は、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
本発明で用いられる4−メチル−1−ペンテン系重合体は、好ましくは、下記要件(A−i)および(A−ii)を満たす。
【0013】
(A−i)メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、260℃、5kgf)が、通常1〜500g/10min、好ましくは2〜300g/10min、より好ましくは3〜200g/10minである。MFRが上記範囲にあると、成型時の流動性の点で好ましい。
【0014】
(A−ii)融点(Tm)が、通常210〜250℃、好ましくは215〜245℃、より好ましくは220〜240℃、さらに好ましくは224〜240℃である。融点が210℃以上であると、得られる樹脂組成物および成形体の耐熱強度が優れ、融点が250℃以下であることで得られる樹脂組成物および成形体の衝撃強度の点で好ましい。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、たとえば、次のように測定される。試料3〜7mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で280℃まで加熱し、その試料を、完全融解させるために280℃で5分間保持する。次いで10℃/分で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で280℃まで再度加熱する。この2度目の加熱試験でのピーク温度を、融点(Tm)として採用する。
【0015】
なお、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、一種単独でも、複数の4−メチル−1−ペンテン系重合体を混合して用いてもよい。
【0016】
[4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法]
本発明にかかる4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造は、4−メチル−1−ペンテン系重合体を構成するモノマーに加えて、遷移金属触媒成分および共触媒成分を含む重合触媒を重合反応器に供給する方法により行われる。
【0017】
4−メチル−1−ペンテン系重合体を構成するモノマーの重合は、溶液重合、懸濁重合、バルク重合法などの液相重合法、気相重合法、その他公知の重合方法で行うことができる。また重合を液相重合法で行う場合には、溶媒として不活性炭化水素を用いることもできるし、反応条件下において反応に供する液状のオレフィンを用いることもできる。さらに、本発明において重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行なうことができる。さらに重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行なうこともできる。
【0018】
4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法に用いられる重合触媒を構成する遷移金属触媒成分としては、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体からなる固体状チタン触媒や、メタロセン触媒などが挙げられる。このうち、好ましくは固体状チタン触媒が挙げられ、特に好ましくは、日本国特開2003−105022号公報に記載されている、不活性炭化水素溶媒に懸濁させたマグネシウム化合物と、電子供与体として複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物と、液体状態のチタン化合物とを接触させて得られるチタン、マグネシウム、ハロゲンおよび複数のエーテル結合を有する化合物からなるチタン触媒が挙げられる。
【0019】
不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、デカンおよびドデカンなどが挙げられる。
電子供与体としては、複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物である2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンおよび2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンなどが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、無水塩化マグネシウムおよびメトキシ塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、固体状チタン触媒は、例えば液相重合法の場合、全液体容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常0.0001〜0.5ミリモル、好ましくは0.0005〜0.1ミリモルの量で用いられることが好ましい。
【0021】
また、上記固体状チタン触媒において、ハロゲンおよびチタンの比率(ハロゲン/チタン)は、原子比で、通常2〜100、好ましくは4〜90であり、2以上のエーテル結合を含む化合物およびチタンの比率(2以上のエーテル結合を含む化合物/チタン)は、モル比で、通常0.01〜100、好ましくは0.2〜10であり、マグネシウムおよびチタンの比率(マグネシウム/チタン)は原子比で、通常2〜100、好ましくは4〜50である。
【0022】
上記固体状チタン触媒と共に用いられる共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)としては、有機アルミニウム化合物が挙げられ、たとえば、RanAlX3-nで示される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0023】
anAlX3-n中、nは、1〜3である。Raは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基およびトリル基などであり、nが2または3の場合、同一でも異なっていてもよい。Xは、ハロゲンまたは水素であり、nが2または3の場合、同一でも異なっていてもよい。
【0024】
anAlX3-nで示される有機アルミニウム化合物としては、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムおよびトリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドおよびジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリドおよびエチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリドおよびエチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライドおよびジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
これらのうち、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0025】
共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)の量は、たとえば、遷移金属触媒成分が固体状チタン触媒である場合には、固体状チタン触媒1g当たり、通常0.1〜1000000g、好ましくは100〜1000000gの重合体が生成するような量であればよく、固体状チタン触媒中のチタン原子1モル当たり、通常0.1〜1000モル、好ましくは約0.5〜500モル、より好ましくは1〜200モルの量である。
【0026】
遷移金属触媒成分は、不活性有機溶媒(好ましくは、飽和脂肪族炭化水素)に懸濁して重合反応器に供給するのが好ましい。
【0027】
また、遷移金属触媒成分は3−メチル−1−ペンテンまたは4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンと予備重合した固体触媒成分として用いることが好ましい。予備重合は、遷移金属触媒成分1g当たり、上記のα−オレフィンを通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、より好ましくは1〜200gの量で重合させて行う。また、予備重合は、4−メチル−1−ペンテンの重合における反応系内の触媒濃度よりも高い触媒濃度で行うことができる。
【0028】
本発明では、4−メチル−1−ペンテン系重合体を製造するに際し、溶解重合および懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法が好ましく用いられるが、さらに好ましくは懸濁重合(スラリー重合)法が用いられる。
【0029】
また、本重合時に水素を用いれば、得られる重合体の分子量を調節することができ、メルトフローレートの大きい重合体が得られる。
【0030】
さらに、本重合時に用いる固体状チタン触媒に含まれる電子供与体の種類を選定することにより、得られる重合体の立体規則性を調整することが可能となり、これにより、重合体の融点の調整が可能となる。
【0031】
本発明において、オレフィンの重合温度および重合圧力は、重合方法および重合するモノマーの種類により異なるが、重合温度は、通常10〜200℃、好ましくは30〜150℃に、重合圧力は、通常常圧〜5MPa−G、好ましくは0.05〜4MPa−Gに設定される。
【0032】
[その他の樹脂]
本発明の組成物には、4−メチル−1−ペンテン系重合体の優れた特性を損なわない範囲で、その他の樹脂を添加してもよい。添加量は一般的には30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。その他の樹脂の例にはオレフィン系重合体、ポリエステル、ポリアミド、変性オレフィン系重合体等が挙げられる。
【0033】
上記オレフィン系重合体としては、エチレンおよび炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるものが挙げられる。炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0034】
上記オレフィン系重合体は、上述したα−オレフィンの他、本発明の目的を損なわない範囲で環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基(例えばカルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)および重合性の炭素−炭素二重結合を分子中に有するモノマー(以下、極性基含有モノマーとも記す。)、共役ジエン、非共役ポリエンなどをコモノマーとして含んでもよい。
【0035】
環状オレフィンとしては、炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0036】
官能化ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物や脂環族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、などの官能基含有スチレン誘導体;および3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどが挙げられ、脂環族ビニル化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタンなどが挙げられる。
【0037】
官能化ビニル化合物は、官能化ビニル化合物の単独重合体であっても、共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の具体例として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムなどの不飽和カルボン酸塩、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノエチルエステルなどの不飽和カルボン酸エステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミドなどの不飽和カルボン酸アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記ポリエステルとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいはこれらから選ばれる2種以上のジカルボン酸とから形成される結晶性の熱可塑性樹脂である。このポリエステルは、熱可塑性を示す限り、少量のトリオールやトリカルボン酸等の3価以上のポリヒドロキシ化合物やポリカルボン酸などで変性されていてもよい。このポリエステルの具体例として、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート共重合体等が挙げられる。
【0039】
上記ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンなどのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸類との重縮合によって得られるポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミド、あるいはこれらの成分からなる共重合ポリアミド、さらにはこれらのポリアミドの混合物などが挙げられる。このポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6110、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11、芳香族ナイロン等が挙げられる。
【0040】
[消臭剤]
本発明に用いられる消臭剤は、下記(A)および(B)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる。
(A)4価金属リン酸塩化合物
(B)金属酸化物または複合金属酸化物
【0041】
(A)4価金属リン酸塩化合物
4価金属リン酸塩化合物としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズなどが挙げられ、好ましくはリン酸ジルコニウムである。非晶質、結晶質いずれの化合物も用いることができる。4価金属リン酸塩化合物は、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性ガスの吸着・消臭力が高く、体臭などの消臭効果が認められている。
4価金属リン酸塩化合物からなる消臭剤としては、例えばケスモン(登録商標)NS−10(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0042】
(B)金属酸化物または複合金属酸化物
金属酸化物として好ましくは、亜鉛、ケイ素、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム及びマグネシウムから選ばれる金属元素を含む金属酸化物である。複合金属酸化物としては、上記の金属元素を2種以上含む酸化物、あるいは上記の金属元素と、その他の金属元素とを含む酸化物であってもよい。金属酸化物または複合金属酸化物としてより好ましくは、酸化亜鉛および酸化亜鉛と二酸化ケイ素との混合物である。これらは酢酸・イソ吉草酸等の酸性ガスの消臭効果が高く、体臭などの消臭効果が認められている。
【0043】
酸化亜鉛からなる消臭剤として、ケスモン(登録商標)NS−10K(東亞合成株式会社製)が挙げられ、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の混合物からなる消臭剤として、シュークレンズ(登録商標)KD−211G(ラサ工業株式会社製)が挙げられる。
【0044】
上記(A)および(B)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤は、市販の消臭剤製品を1種単独で用いても良いし、複数種の消臭剤製品を組み合わせて用いても良い。
【0045】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、その用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。かかる樹脂用添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、(透明)核剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも、適宜2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0046】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、前記4−メチル−1−ペンテン系重合体の総重量に対して、合計で、通常5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0047】
充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム)および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの充填剤は1種単独または2種以上の併用いずれでもよい。
【0048】
滑剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0049】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0050】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1〜4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4〜30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、フェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、リン系(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)の酸化防止剤が挙げられる。
難燃剤としては、有機系難燃剤(含窒素系、含硫黄系、含珪素系、含リン系等)、無機系難燃剤(三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、赤リン等)が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
【0053】
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
【0054】
界面活性剤としては非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
帯電防止剤としては、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0056】
上記充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤などの各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、前記4−メチル−1−ペンテン系重合体に対して、それぞれ、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0057】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、上記の4−メチル−1−ペンテン系重合体と、(A)および(B)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤、および、必要により、上記「その他の樹脂」「その他の添加剤」の項で挙げられた各種樹脂および添加剤を配合し、種々公知の方法で混合して製造できる。
【0058】
混合する方法としては例えば、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練して製造することができる。また、消臭剤をマスターバッチ状で添加しドライブレンドまたは溶融混合することもできる。
【0059】
溶融混練を行う場合の温度は、通常220〜300℃、好ましくは250〜290℃である。220℃以上であることで4−メチル−1−ペンテン系重合体が十分に溶融し、300℃以下であることで熱分解が抑制できるので好ましい。混練時間は、通常0.1〜30分間、好ましくは0.5〜5分間の範囲であることで、十分に溶融混練されかつ熱分解を抑えることができる。
【0060】
[成形体]
本発明の樹脂組成物は、ポリ−4−メチル1−ペンテン系重合体が本来持つ成形性を維持しているため種々の成形体に成形加工して用いることができる。得られる成形体は消臭性能に優れ、また、ポリ−4−メチル1−ペンテン系重合体が本来持つ機械強度や透明性、衛生性などの特性を維持しているため、消臭性能を要求される各種成形体に幅広く適用することができる。例えば、射出成形体、フィルム、シート、繊維、中空成形体などが挙げられる。また、繊維としては極細繊維の製造も可能であるため不織布の形態にすることや、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンの形態で用いることもできる。
【0061】
これら成形体は、本発明の樹脂組成物単独で成形されても良いし、その他の各種樹脂や非樹脂材料と多層構造や複合構造をなしていても良い。
【0062】
フィルム、シートの用途例としては、食品などの各種包装用フィルム、ごみ袋、汚物袋、手袋などの各種日用品、壁紙や床材などの建材、自動車用品など挙げられる。
射出成形体の例としては、ゴミ箱、トイレ用品、浴用品、台所用品などの日用品、弁当容器などの各種食品容器や調理用の器具、床材などの建材、冷蔵庫用部材、下駄箱用部材、衣装ケース、スノコ、タンスなどの家具・家庭用品、ペット飼育用品、自動車の内装材、などが挙げられる。
【0063】
繊維あるいは不織布の用途例としては、マスク、紙おむつ、生理用品、カツラなどの衛生用品や医療用品、中空糸フィルター、浄水フィルター、バグフィルター、集塵用フィルターなどの各種フィルター、鞄、靴、ベルト、ジャケット、下着などの衣類、テーブルクロス、カーテン、カーペット、自動車用マットなどの日用品、布団用中綿、布団用側地、布団カバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、シーツ、枕用中綿、枕カバー、ぬいぐるみ用中綿、ダウンジャケットなどの寝具・中綿類などが挙げられる。
【0064】
またモノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンの形態にすることで、ロープ、養生ネット、漁網、釣り糸、ライフジャケット、防虫網、婦人服、紳士服、裏地、アンダーウエア、ダウン、ベスト、ウインドブレーカー、靴下、靴の中敷き、マスク、手術用ガウン、離型布、吸油布、防水布、アウトドアウエア、サポーター、包帯、寝袋用生地、テント用生地、スキーウエア、ゴルフウエア、水着などのスポーツウエア、人工芝、ベルトコンベア基布、光ファイバー、吸音材、断熱材などの用途に好適であり、その用途はこれらに限定されるものではない。
【0065】
[成形体の製造方法]
成形体は、例えばそれぞれ以下に示す方法により製造することができる。
【0066】
(1)押出成形フィルム、押出成形シート
一般的なTダイ押出成形機で成形することにより得られる。例えば一軸押出機にてシリンダ温度250〜300℃およびキャストロール温度0〜90℃で成形を行って押出フィルムやシートを形成する。
【0067】
フィルムまたはシートの厚さは、その使用用途にもよるが、通常5〜1000μm、好ましくは30〜200μmであるとフィルムの生産性に優れ、フィルム成形時にピンホールが生じることがなく、十分な強度も得られることから好ましい。
また本発明の効果を阻害しない限り他の樹脂と多層フィルムとする、または、紙と積層してラミ紙としてもよく、共押出成形法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等を用いることができる。また、フィルム表面にはエンボス加工を施しても良く、フィルム成形時または成形後に延伸してもよい。さらに、成形して得られたフィルムはさらに樹脂の融点未満の温度でのアニーリング処理を行っても良い。
【0068】
(2)延伸フィルム
本発明のフィルムは延伸してもよい。延伸フィルムは、原反シートを製造し、それを延伸すればよい。原反シートの製造方法に特に制限はなく、たとえばプレス成形、押出成形、インフレーション成形などの方法、または溶液流延法などの公知の方法で成形することができる。
【0069】
生産効率性の向上という観点では、押出成形法、インフレーション成形法や、溶液流延法等を用いてもよい。さらに延伸成形体の生産の効率と安定化という観点では、溶融押し出し成形法によって形成された原反シートを延伸配向させることによって、延伸成形体を得ることが好ましい。
【0070】
溶融押出し成形を行う場合、具体的には、一軸押出機にて、所定のシリンダ温度および所定のキャストロール温度で成形を行って原反シートを形成する。溶融押出し成形により原反シートを得る場合に、押出機のロール間で加圧圧縮すると、得られるシートの透明性をより高くすることができる。予め溶融押出し成形により製造しておいた原反シートを、延伸成形装置に供給してもよいし、溶融押出し成形と、延伸成形とを連続的に行ってもよい。
【0071】
形成した原反シートを、延伸機にて所定の延伸速度にて該原反シートの延伸成形を行う。延伸は、一軸延伸、二軸延伸、逐次延伸などのいずれで行ってもよい。
【0072】
延伸温度は、通常、樹脂のガラス転移点(Tg)〜200℃、好ましくはTg〜180℃、より好ましくはTg〜150℃の温度範囲で行われる。また延伸性を改善するために、延伸前に、原反シートを予熱しておくことが好ましい。延伸前の予熱は、Tg〜180℃、より好ましくはTg〜150℃の温度範囲で、通常5分間程度行えば十分である。
【0073】
延伸速度は、通常0.1mm/sec〜500mm/sec、より好ましくは0.5mm/sec〜100mm/secとする。延伸倍率は、通常1.5〜6倍、好ましくは2〜5倍とする。結晶化度・結晶サイズを増加させないためには、延伸倍率を小さくし、延伸速度を大きくすると好ましい場合がある。延伸の方向は、原反シートの押し出し方向に行うことが好ましい。このような条件のもとで延伸すると、延伸ムラや延伸切れを発生させることなく、効率的に延伸成形体を製造することができる。
【0074】
フィルムを延伸することにより、機械的強度を有するフィルムを得ることが可能となる。また、延伸フィルムの厚みは、原反シートの厚み、延伸倍率等を変えることによって調節することができる。延伸フィルムの厚さに特に上限は無く、従来本技術分野において「シート」と呼ばれていたものも含む。また、延伸フィルムを光学フィルムとして用いる場合には、光学用途に使用可能な程度の厚さとする。延伸フィルムの厚みは、通常は10〜200μmであり、好ましくは20〜200μmである。このような範囲であれば、フィルムの生産性がより向上し、またフィルム成形時にピンホールなどを生じることなく、また充分な機械強度も得られる。
【0075】
(3)インフレーションフィルム
本発明のフィルムはインフレーション成形法で作製してもよい。具体的には、一軸押出機にて、所定のシリンダ温度で、インフレーション用ダイから重力方向とは逆方向の上向方向に押出してインフレーションを行い、インフレーションフィルムを得ることができる。
【0076】
インフレーションフィルムの引取速度は通常2〜40m/分、好ましくは4〜30m/分である。フィルムの厚さは特に限定されないが、通常は10〜300μm、好ましくは20〜250μm、更に好ましくは30〜60μmである。
【0077】
(4)射出成形体
成型温度通常250〜300℃、成形サイクル通常20〜120秒で射出成形物が得ることができる。
【0078】
(5)繊維
本発明における樹脂組成物からなる繊維は、例えば、樹脂組成物を溶融したものを紡糸口金に通して押出すことにより、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーン、カットファイバー、不織布として製造することにより得ることができる。
【0079】
モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンを製造する際の溶融紡糸加工における溶融温度は、4−メチル−1−ペンテン系重合体の融点に応じて、適宜選択することができるが、220〜320℃の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は、250〜310℃である。溶融温度が上記の範囲内にあると、4−メチル−1−ペンテン系重合体の過度な熱分解が抑制でき、口金から吐出された繊維状ストランドの伸長粘度が十分に低下するため、機械的強度に優れ、紡糸加工性が良好な繊維を得ることができる。
【0080】
このようにして得られた繊維は、さらに延伸してもよい。この延伸の程度は、例えば4−メチル−1−ペンテン系重合体に少なくとも一軸方向の分子配向が有効に付与される程度に行えば、弾性率や強度を向上させることができる。延伸倍率は通常1.05〜10.0倍の範囲であり、より好ましい範囲は、1.1倍〜7.0倍、さらに好ましい範囲は1.2〜6.0倍である。
【0081】
上記延伸操作を行う場合の延伸温度は、4−メチル−1−ペンテン系重合体のガラス転移温度および融点、あるいは延伸後に得られる繊維の強度および伸度に応じて適宜選択することができるが、35〜200℃であることが好ましく、より好ましい範囲は40〜180℃である。延伸温度が上記の範囲にあると糸切れが抑制され、安定して繊維を得ることができる。
【0082】
上記延伸操作を行う場合は、1段延伸法あるいは2段以上の多段延伸法のいずれの方法であってもよい。
【0083】
上記方法で得られた繊維を使用して、湿式抄造法、シンタリング法、ニードルパンチ法、カード法、クロスレイヤー法、ランダムウエーバー法、エアーフォーミング法等で不織布を製造することができる。
【0084】
また単層繊維からなる不織布を製造する場合には、スパンボンド法、メルトブローン法、カード法等の方法に従って行うことができる。
【0085】
本発明の樹脂組成物からなる繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限はなく、真円断面であってもよく、非円形、いわゆる異形断面であってもよい。異形断面としては、多角型形状、楕円型形状、扁平型形状、繊維表面に多数の枝状部を有する多葉型形状(具体的には3葉から32葉の多葉型形状)、星型形状、C字型形状、H字型形状、S字型形状、T字型形状、Y字型形状、W字型形状、及び井型形状が挙げられる。
【0086】
さらに、本発明の樹脂組成物からなる繊維は、繊維断面に長さ方向に連続する空洞部分を有さない中実繊維であってよく、あるいは長さ方向に連続する1箇所以上の空洞部分を有する中空繊維であってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、実施例において測定した物性は下記の方法に従って実施した。
【0088】
<消臭性能の評価方法>
サンプル1gを5LのPVA系ポリマー製バッグ(ジーエルサイエンス社製、スマートバッグPA)に入れた後、表1に示す初期ガス濃度になるように試験ガスを3L封入し、24時間後にバッグ内の残存ガス濃度を検知管を用いて測定した。下記の式(1)に従って、消臭率を算出し、消臭性能評価の指標とした。
式(1)消臭率(%)={初期ガス濃度(ppm)−24時間後のガス濃度(ppm)/初期ガス濃度(ppm)}×100
【0089】
【表1】
【0090】
[材料]
・4−メチル−1−ペンテン系重合体(A)
三井化学株式会社製TPX(登録商標)、銘柄名:MX002(融点:233℃、MFR(260℃、5kgf):21g/10min)
・ポリプロピレン(B)
株式会社プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)、銘柄名:E−200GP(融点:160℃、MFR(230℃、2.16kgf):1.8g/10min)
・消臭剤(C)
(C−1)ラサ工業株式会社製シュークレンズ(登録商標)、銘柄名:KD−211GF
(C−2)東亞合成株式会社製ケスモン(登録商標)、銘柄名:NS−10
【0091】
[実施例1]
4−メチル−1−ペンテン系重合体(A)100重量部に対して、200℃、14時間の条件で減圧乾燥させた消臭剤(C−1)を1.0重量部添加し、2軸押出機(池貝社製、φ=43mm、L/D=32、シリンダ温度:280℃)で溶融混練を行い、4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物1を得た。
【0092】
さらに、上記樹脂組成物1を120℃、12時間減圧乾燥させた後、一軸押出機(サーモ・プラスチックス工業株式会社製、φ=30mm)にて、シリンダ温度:270℃、ダイス温度:270℃、ロール温度:80℃の条件で厚さ100μmの押出フィルムを作製した。得られた樹脂組成物1のフィルムの消臭性能測定結果を表2にまとめた。樹脂組成物1のフィルムはマトリックス樹脂が高いガス透過性を示す4−メチル−1−ペンテン系重合体であるため、優れた消臭性能を示した。
【0093】
[実施例2]
4−メチル−1−ペンテン系重合体(A)100重量部に対する消臭剤(C−1)の添加量を3.0重量部に変更したこと以外は全て実施例1と同様に行い、4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物2およびフィルムを得た。得られた樹脂組成物2のフィルムの消臭性能測定結果を表2にまとめた。樹脂組成物2のフィルムはマトリックス樹脂が高いガス透過性を示す4−メチル−1−ペンテン系重合体であるため、優れた消臭性能を示した。
【0094】
[実施例3]
消臭成分として、消臭剤(C−2)を使用したこと以外は全て実施例1と同様に行い、樹脂組成物3およびフィルムを得た。得られた樹脂組成物3のフィルムの消臭性能測定結果を表2にまとめた。樹脂組成物3のフィルムはマトリックス樹脂が高いガス透過性を示す4−メチル−1−ペンテン系重合体であるため、優れた消臭性能を示した。
【0095】
[実施例4]
実施例2で得られた樹脂組成物2を120℃、12時間減圧乾燥させた後、70t射出成形機(明機製作所株式会社製、M70B)に供し、シリンダ温度:300℃、金型温度:80℃の射出条件で、100mm×100mm×2mmtサイズの角板を作製した。得られた4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物2の射出成形体の消臭性能測定結果を表2にまとめた。樹脂組成物2の角板はマトリックス樹脂が高いガス透過性を示す4−メチル−1−ペンテン系重合体であるため、優れた消臭性能を示した。
【0096】
[実施例5]
実施例1で得られた樹脂組成物1をキャピラリーレオメーター(東洋精機株式会社製、キャピログラフ1B、バレル径=10mmφ)に供し、設定温度270℃の条件で、穴径1mm(円形)、穴数1のノズルより、シリンダ−速度10mm/minで溶融ポリマーを溶融押出し、紡出糸を室温下で冷却しながら巻取速度10m/minで巻取り、未延伸糸を得た。次いで、加熱延伸機(井元製作所株式会社製)を用いて、送りライン速度0.2m/minで100〜120℃の温度下で6倍延伸し、直径50μmの繊維を得た。得られた繊維の消臭性能測定結果を表2にまとめた。樹脂組成物1の繊維はマトリックス樹脂が高いガス透過性を示す4−メチル−1−ペンテン系重合体であるため、優れた消臭性能を示した。
【0097】
[比較例1]
4−メチル−1−ペンテン系重合体(A)単独を用い、実施例1と同様にフィルムを作製した。得られたフィルムの消臭性能測定結果を表2にまとめた。
【0098】
[比較例2]
ポリプロピレン(B)100重量部に対して、200℃、14時間の条件で減圧乾燥させた消臭剤(C−1)を1.0重量部添加し、2軸押出機(池貝社製、φ=43mm、L/D=32、シリンダ温度:230℃)で溶融混練を行い、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0099】
さらに、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を120℃、12時間減圧乾燥させた後、一軸押出機(サーモ・プラスチックス工業株式会社製、φ=30mm)にて、シリンダ温度:240℃、ダイス温度:240℃、ロール温度:40℃の条件で厚さ100μmの押出フィルムを作製した。得られたポリプロピレン系樹脂組成物のフィルムの臭性能測定結果を表2にまとめた。ポリプロピレン系樹脂組成物のフィルムは消臭性能が不十分であった。
【0100】
【表2】