特許第6351492号(P6351492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351492
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】合成樹脂ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   B65D1/02 212
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-242559(P2014-242559)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101973(P2016-101973A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
(72)【発明者】
【氏名】木虎 修一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 幸治
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206486(JP,A)
【文献】 特開2006−327616(JP,A)
【文献】 特開2002−225836(JP,A)
【文献】 特開2006−327630(JP,A)
【文献】 特開2014−148327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 − 1/48
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打栓によってキャップの嵌合溝に嵌入装着される筒状の口部を具えたダイレクトブロー成形法により成形された合成樹脂ボトルであって、
口部外周には、複数の突出環と1つの係合環が口部の軸方向に並列して環状に突設され、複数の突出環より下方に配置された係合環は、キャップの嵌合溝内に突出する縮径突条と係合する位置に配置されており、
隣り合う突出環との間、および突出環と係合環との間に環状溝が設けられた口部構造を有することを特徴とする合成樹脂ボトル。
【請求項2】
複数の突出環および係合環は、それぞれ外周面に下方に向けて拡径する傾斜面と該傾斜面の大径部側に連続する円筒面とを有することを特徴とする請求項1記載の合成樹脂ボトル。
【請求項3】
複数の突出環が、口部の最も先端側の第1突出環とその下方の第2突出環とからなり、第1突出環の円筒面より第2突出環の円筒面の径の方が大きく、第2突出環の円筒面は係合環の円筒面よりわずかに小さい径であるか、ないしは同一径であることを特徴とする請求項2記載の合成樹脂ボトル。
【請求項4】
上面が口部先端の天面と同一平面をなす第1突出環における、傾斜面に接続する上面外縁の上端角部は、複数の突出環と1つの係合環に代えて、キャップとの単一の係合部として形成され、天面と同一平面をなす上面から湾曲面を経て傾斜面とその下方の円筒面とが形成される係合突条とした場合の、上面と傾斜面とが交差する上端角部に比較して、径方向高さが低く形成され、第1突出環の傾斜面は前記係合突条の傾斜面と微小隙間を有するように形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の合成樹脂ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に使用される、打栓によりキャップを装着可能なボトルに関し、とくに、キャップとの密封性に優れる口部構造を有する合成樹脂ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉可能なキャップが打栓によってボトルの口部に装着された合成樹脂製容器は、調味料等の各種液注出容器として広く利用されている。
キャップをボトル口部に打栓装着した合成樹脂製容器の従来技術として、外周に環状に突出した係合突条を有する口部をキャップの嵌合溝に嵌入し、口部の前記係合突条がキャップ側の縮径突条に係合するとともに、嵌合溝が口部を挟持してキャップを口部に装着固定する口部構造を有する液注出容器がよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−225836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(a)に示すように、上記特許文献1の液注出容器は、ボトルAaとキャップの中栓Ba、中栓Baに螺合するキャップの上蓋Caとからなり、打栓によってボトルAaに中栓Baが嵌合固定されることによって、キャップがボトルAaに装着されている。
ボトルAaは、胴部101の上部に肩部102が形成され、肩部102の上端には略円筒状の口部103が立設されている。
図6(b)に示すように、口部103の上端部には、外周に突出する係合突条104が設けられており、係合突条104は、天面105と同一平面に形成された上面と、上面の外縁に接続する湾曲面110と、湾曲面110に続いて外周面を形成する傾斜面106および円筒面107と、円筒面107に続いて係合突条104の下端面を形成する下端係合部108とを有している。
天面105と傾斜面106とが交差する上端角部a1では、丸め付けされた湾曲面110が形成され、傾斜面106と円筒面107とが交差する部位には、中央角部bが環状に形成されている。
【0005】
一方、中栓Baには、口部103を嵌合する嵌合筒部120が設けられ、嵌合筒部120は、口部103の内周側に嵌入する内筒121の外周面と、外筒122の内周面とにより形成される嵌合溝123を具えている。
125は内容液を案内する注出筒であり、内筒121の上部内周側で連設している。
外筒122の内周面の下端部には、内方に突出する縮径突条124が設けられ、口部103が嵌合溝123に嵌合したときには、縮径突条124が係合突条104の下端係合部108に係合して、キャップがボトルAaから脱落しないように装着固定されるとともに、内筒121の外周面と外筒122の内周面が口部103を挟持している。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の液注出容器のボトルAaは、PET等の2軸延伸ブロー成形によれば、打栓に耐える安定した口部形状が得られるものの、ダイレクトブロー成形による場合には、係合突条104を設ける口部103先端の肉厚部位において、図6(b)に示すように、内周面112にヒケを生じ、わずかな凹部111が発生することがあった。
このような材料のヒケによって凹部111が発生すると、口部103は主として内周面112が内筒121の外周面と密接することによってキャップとのシールを達成しているため、凹部111によってシール圧が低下して内容液が漏出するような場合があった。
【0007】
ダイレクトブロー成形によれば、EVOH等のガスバリア性材料と積層したボトルを容易に製造できる利点があるが、このような口部構造における成形上の問題から、熱充填等の内圧が高まる容器のボトルとして使用することは困難だった。
そのためにダイレクトブロー成形ボトルの口部形状を変えると、2軸延伸ブロー成形等による通常のPETボトルに使用される打栓キャップを、そのままダイレクトブロー成形ボトルに併用することができなかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、ダイレクトブロー成形に際して口部におけるヒケの発生を防止してシール性を高めるとともに、2軸延伸ブロー成形等による通常のPETボトルに使用される打栓キャップが装着可能な合成樹脂ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、合成樹脂ボトルとして、打栓によってキャップの嵌合溝に嵌入装着される筒状の口部を具えたダイレクトブロー成形法により成形された合成樹脂ボトルであって、口部外周には、複数の突出環と1つの係合環が口部の軸方向に並列して環状に突設され、複数の突出環より下方に配置された係合環は、キャップの嵌合溝内に突出する縮径突条と係合する位置に配置されており、隣り合う突出環との間、および突出環と係合環との間に環状溝が設けられた口部構造を有することを特徴とする構成を採用する。
【0010】
合成樹脂ボトルの具体的実施形態として、複数の突出環および係合環は、それぞれ外周面に下方に向けて拡径する傾斜面と該傾斜面の大径部側に連続する円筒面とを有することを特徴とする構成、または、複数の突出環が、口部の最も先端側の第1突出環とその下方の第2突出環とからなり、第1突出環の円筒面より第2突出環の円筒面の径の方が大きく、第2突出環の円筒面は係合環の円筒面よりわずかに小さい径であるか、ないしは同一径であることを特徴とする構成、さらに、上面が口部先端の天面と同一平面をなす第1突出環における、傾斜面に接続する上面外縁の上端角部は、複数の突出環と1つの係合環に代えて、キャップとの単一の係合部として形成され、天面と同一平面をなす上面から湾曲面を経て傾斜面とその下方の円筒面とが形成される係合突条とした場合の、上面と傾斜面とが交差する上端角部に比較して、径方向高さが低く形成され、第1突出環の傾斜面は前記係合突条の傾斜面と微小隙間を有するように形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の合成樹脂ボトルは、口部外周に複数の突出環と1つの係合環が口部の軸方向に並列して環状に突設され、係合環がキャップの縮径突条と係合する位置に配置されているので、口部がキャップの嵌合溝に嵌合したとき、複数の突出環と係合環が嵌合溝内面と3点以上で圧接してキャップを口部に確実に係合するとともに、口部内周面を嵌合溝内面にしっかり圧接して高いシール圧を確保することができる。
また、複数の突出環と1つの係合環の間には環状溝が設けられるので、従来例の係合突条のように肉厚部が連続せず、環状溝の分だけ肉抜きされているので、口部内周面にヒケが発生せず、ダイレクトブロー成形によってもシール性を低下させることがない。そのため、従来例で用いられる通常のPETボトル用打栓キャップをそのまま使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例である合成樹脂ボトルの要部斜視図である。
図2】実施例合成樹脂ボトルにキャップを装着した要部の側面断面図である。
図3】(a)は実施例合成樹脂ボトルの上面図、(b)は実施例合成樹脂ボトルの正面半断面図である。
図4図3(b)の要部Gの拡大図である。
図5】打栓前の閉蓋した状態のキャップの側面断面図である。
図6】従来例の合成樹脂ボトルを示す図であり、(a)はキャップを装着した要部の側面半断面図であり、(b)はヒケを生じたボトル要部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の合成樹脂ボトルについて、実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜5において、Aは合成樹脂ボトル、Cは合成樹脂ボトルAに装着されるキャップである。
キャップCは、キャップ本体C1、およびキャップ本体C1にヒンジC2を介して連設された上蓋C3とからなっている。
【0015】
図1〜3に示すように、合成樹脂ボトルAは、図示しない底部を具えた胴部1と、胴部1に連設して上方に縮径する肩部2と、肩部2の上部に立設する円筒状の口部3とからなる。
口部3の外周には、下部にネックリング5が突設され、上部には先端側から第1突出環7、第2突出環8、係合環9が、それぞれ口部3の軸方向に並列して環状に突出し、キャップCとの係合部を形成している。
口部3の上端には平坦な天面10が形成され、第1突出環の上面と同一平面を形成している。
係合環9の下面には、後述するキャップCの縮径突条60に係合する下端係合部11が、口部3の軸方向に略垂直な面に形成されている。
【0016】
図4に示すように、第1突出環7,第2突出環8、係合環9は、外周面に下方に向かって拡径する円錐面状のそれぞれ第1傾斜面21、第2傾斜面23、係合傾斜面25を有し、各傾斜面の大径部側に連続して、それぞれ第1円筒面22,第2円筒面24,係合円筒面26を有している。
第1突出環7と第2突出環8との間には第1環状溝12が、第2突出環8と係合環9との間には第2環状溝13が形成される。
なお、第1傾斜面21、第2傾斜面23、係合傾斜面25を設けることで、キャップCを打栓する際、キャップ本体C1の下端部が各傾斜面に沿って拡径するため、打栓し易くなる。
【0017】
本実施例では、第1環状溝12および第2環状溝13の深さは、それぞれの底面における口部3の肉厚が、係合環9より下方の口部3の基部14における肉厚より小さくなるように設定されている。
また、本実施例の口部3の内径は27mm程度であるが、下端係合部11から天面10までの高さ、すなわち第1,2突出環7,8と係合環9が設けられた係合部全体の高さ約4.5mmに対して、第1環状溝12および第2環状溝13の(軸方向の)幅はそれぞれ約1mm前後である。
そして、第1、2突出環7,8は、約0.5mm〜1mm程度の(軸方向の)幅を有し、係合環9は、縮径突条60との係合強度を得るため、約1mm以上の(軸方向の)幅を有することが望ましく、とくに、第1突出環7、第2突出環8、係合環9の順で、徐々に(軸方向の幅を)肉厚にするとバランスがとれ、キャップとの嵌合状態が良好となる。
【0018】
第4図中の想像線(2点鎖線)は、従来例で示した2軸延伸ブロー成形等により単一の係合突条が設けられた通常のPETボトルの口部構造を示しており、従来例について図6を参照して説明した前記用語、および前記符号を使用して説明する。
係合環9の下端係合部11と係合円筒面26とは、従来例の係合突条104のそれぞれ下端係合部108,円筒面107とほぼ一致した形状をなしている。
第2突出環8の第2傾斜面23および第2円筒面24は、実施例では、従来例のそれぞれ傾斜面106,円筒面107よりわずかに小さい径となっているが、従来例と同一の径でもよい。
第2傾斜面23と第2円筒面24とが交差する部位は、従来例の中央角部bの軸方向の高さと略一致している。
【0019】
第1突出環7は、上面を天面10と共有しており、その上面と第1傾斜面21が交差して接続する上端角部aの径方向高さは、従来例の係合突条104の上端角部a1の径方向高さより微少高さhだけ低く形成され、第1傾斜面21は、従来例の傾斜面106に対して微小隙間sを有するように径方向高さが低く形成されている。
係合部が単一の係合突条104からなる2軸延伸ブロー成形された通常のPETボトルでは、従来例のように上端角部a1付近に湾曲面110を容易に形成することができるため、キャップの打栓をスムーズに進めることができるのに対して、ダイレクトブロー成形による場合には、第1突出環7にこの微小隙間sを設けないと、上端角部a付近の外縁部形状が鋭利になりやすく、キャップを打栓したときに尖った外縁部がキャップの下端部や嵌合溝51の内面に引っかかり、打栓が困難になる場合があるため、微小隙間sを設けることが望ましい。
【0020】
なお、実施例では、突出環を2つ設けているが、必ずしも2つに限定されず、所定の強度が確保されれば3つ以上設けられても良い。
また、各環状溝の深さや幅は、実施例に限定されず、ヒケを生じないだけの肉抜きとシール性の確保、および係合強度が得られる範囲で適宜設定できる。
【0021】
図5に示すように、キャップ本体C1は、口部3が嵌入する環状の嵌合溝51を具え、注出筒52に連設した嵌合筒部50を有している。
キャップ本体C1の嵌合溝51は、内周側で注出筒52に連設する内筒54の外周面と、内筒54の上部で連設する上壁55の下面と、上壁55の外周側から垂設される外筒56の内周面とによって形成されている。
嵌合溝51の上面を形成する上壁55の下面は、内周側の平坦な頂面58と外周側の角部傾斜面59とが形成され、外筒56内周面の下端部には、内方に突出した縮径突条60が設けられている。
【0022】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
キャップCが打栓工程で上部から押圧され、縮径突条60が第1突出環7、第2突出環8、係合環9を乗り越えて係合環9の下端係合部11に係合し、嵌合溝51に口部3が嵌合して、合成樹脂ボトルAに装着される(図2参照)。
このとき、第1傾斜面21,第2傾斜面23,係合傾斜面25の各傾斜面は、縮径突条60を案内して口部3への嵌合を容易にする。
また、第1突出環7の上面と第1傾斜面21が交差する上端角部aの径方向高さが、従来例の係合突条104の上端角部a1の径方向高さより微少高さhだけ低く形成され、第1傾斜面21が従来例の傾斜面106に対して微小隙間sを有するように径方向高さが低く形成されているから、容易に打栓工程を進めることができる。
【0023】
また、第1傾斜面21、第2傾斜面23は嵌合溝51の角部傾斜面59に圧接し、第1円筒面22,第2円筒面24,係合円筒面26の各円筒面は、外筒56をわずかに外方に押し広げて拡径し、キャップCの縮径突条60に係合する下端係合部11とともにキャップCを口部3に確実に係合する。
本実施例では、第1、第2の突出環7,8および係合環9が3点で外筒56内周面と圧接し、従来例の単一の肉厚部からなる係合突条104より柔軟性をもって接触圧が3点にバランスよく配分され、キャップCを口部3に確実に係合するとともに、口部内周面15を内筒54の外周面にしっかり圧接して必要なシール圧を確保することができる。
【0024】
そして、本実施例の第1突出環7、第2突出環8、係合環9からなる係合部は、従来例の係合突条104のように肉厚部が連続せず、第1環状溝12,第2環状溝13の分だけ肉抜きされているので、内周面15にヒケが生じない。
そのため、口部3の内周面15が内筒54の外周面に確実に圧接し、ダイレクトブロー成形法によって成形された合成樹脂ボトルであっても、シール性を低下させることがない。
そのため、本実施例の合成樹脂ボトルは、従来例の単一の係合突条104からなるPETボトル等に嵌合するキャップを使用することができ、ボトルに応じて使い分けなどをする必要がないから部品管理が容易となり、合成樹脂容器を効率的で低コストに製造することができる。
【0025】
次の表1は、同一の打栓キャップを、本実施例の2つの突出環と係合環とからなる係合部を有する合成樹脂ボトルに嵌合した場合と、1つの突出環と係合環とからなり環状溝が1つだけの係合部を有する合成樹脂ボトルに嵌合した場合との性能を、実験により比較したものである。
【0026】
【表1】
【0027】
キャップ回転トルクとは、キャップに回転力を与えたときにキャップが回転を始めるときのトルクを言い、ボトル口部とキャップとの密着力を示すものであり、その値の大小からシール圧力の大きさを予測できる。
打栓力は、打栓時に要する押圧力を示し、離脱力は、嵌合したキャップを口部から引きはがすときに必要な力を示す。
とくに、熱充填する容器に必要なキャップ回転トルクの基準値は、150N・cm以上であり、突出環が1つのダイレクトブロー成形の合成樹脂ボトルでは、128N・cmと基準値を下回っている。
【0028】
一方、2つの突出環を有する本実施例では、キャップ回転トルクは193N・cmと基準値を大きく上回り、熱充填可能な高いシール性能を有することがわかる。
したがって、本実施例では、合成樹脂ボトルAに対してキャップが容易に回転しないため、口部3と液密に嵌合している内筒54外周面とのシール性を保持することができ、65度以上の高温充填にも充分対応可能な構造となっている。
また、キャップの離脱力も突出環が1つのものが20Nであるのに対して、2つの突出環を有する本実施例は、33Nと上回っており、キャップが脱落しにくくなっている。
このように、ダイレクトブロー成形でヒケを生じないように環状溝を形成しても、突出環が1つだけでは必要なシール圧を得ることができないが、本実施例のように突出環を2つ形成すれば、キャップとの高い嵌合力を得られ、同時に高い密着力、高いシール圧が確保されることがわかる。
この実験結果から、口部係合部の突出環は、少なくとも2つ以上必要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本実施例の合成樹脂ボトルは、ダイレクトブロー成形によっても通常のPETボトルに使用される打栓キャップが装着可能であり、シール性が高くEVOH等のガスバリア性材料と積層することも容易であるから、各種飲料や食品容器として広く利用可能であり、とくに熱充填を必要とする調味料等の容器として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
A、Aa ボトル
Ba 中栓
Ca 上蓋
C キャップ
C1 キャップ本体
C2 ヒンジ
C3 上蓋
a,a1 上端角部
b 中央角部
h 微小高さ
s 微小隙間
1,101 胴部
2,102 肩部
3,103 口部
5,109 ネックリング
7 第1突出環
8 第2突出環
9 係合環
10,105 天面
11,108 下端係合部
12 第1環状溝
13 第2環状溝
14 口部基部
15,112 内周面
21 第1傾斜面
22 第1円筒面
23 第2傾斜面
24 第2円筒面
25 係合傾斜面
26 係合円筒面
50,120 嵌合筒部
51,123 嵌合溝
52,125 注出筒
54,121 内筒
55 上壁
56,122 外筒
58 頂面
59 角部傾斜面
60,124 縮径突条
104 係合突条
106 傾斜面
107 円筒面
110 湾曲面
111 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6