【実施例1】
【0014】
図1〜5において、Aは合成樹脂ボトル、Cは合成樹脂ボトルAに装着されるキャップである。
キャップCは、キャップ本体C1、およびキャップ本体C1にヒンジC2を介して連設された上蓋C3とからなっている。
【0015】
図1〜3に示すように、合成樹脂ボトルAは、図示しない底部を具えた胴部1と、胴部1に連設して上方に縮径する肩部2と、肩部2の上部に立設する円筒状の口部3とからなる。
口部3の外周には、下部にネックリング5が突設され、上部には先端側から第1突出環7、第2突出環8、係合環9が、それぞれ口部3の軸方向に並列して環状に突出し、キャップCとの係合部を形成している。
口部3の上端には平坦な天面10が形成され、第1突出環の上面と同一平面を形成している。
係合環9の下面には、後述するキャップCの縮径突条60に係合する下端係合部11が、口部3の軸方向に略垂直な面に形成されている。
【0016】
図4に示すように、第1突出環7,第2突出環8、係合環9は、外周面に下方に向かって拡径する円錐面状のそれぞれ第1傾斜面21、第2傾斜面23、係合傾斜面25を有し、各傾斜面の大径部側に連続して、それぞれ第1円筒面22,第2円筒面24,係合円筒面26を有している。
第1突出環7と第2突出環8との間には第1環状溝12が、第2突出環8と係合環9との間には第2環状溝13が形成される。
なお、第1傾斜面21、第2傾斜面23、係合傾斜面25を設けることで、キャップCを打栓する際、キャップ本体C1の下端部が各傾斜面に沿って拡径するため、打栓し易くなる。
【0017】
本実施例では、第1環状溝12および第2環状溝13の深さは、それぞれの底面における口部3の肉厚が、係合環9より下方の口部3の基部14における肉厚より小さくなるように設定されている。
また、本実施例の口部3の内径は27mm程度であるが、下端係合部11から天面10までの高さ、すなわち第1,2突出環7,8と係合環9が設けられた係合部全体の高さ約4.5mmに対して、第1環状溝12および第2環状溝13の(軸方向の)幅はそれぞれ約1mm前後である。
そして、第1、2突出環7,8は、約0.5mm〜1mm程度の(軸方向の)幅を有し、係合環9は、縮径突条60との係合強度を得るため、約1mm以上の(軸方向の)幅を有することが望ましく、とくに、第1突出環7、第2突出環8、係合環9の順で、徐々に(軸方向の幅を)肉厚にするとバランスがとれ、キャップとの嵌合状態が良好となる。
【0018】
第4図中の想像線(2点鎖線)は、従来例で示した2軸延伸ブロー成形等により単一の係合突条が設けられた通常のPETボトルの口部構造を示しており、従来例について
図6を参照して説明した前記用語、および前記符号を使用して説明する。
係合環9の下端係合部11と係合円筒面26とは、従来例の係合突条104のそれぞれ下端係合部108,円筒面107とほぼ一致した形状をなしている。
第2突出環8の第2傾斜面23および第2円筒面24は、実施例では、従来例のそれぞれ傾斜面106,円筒面107よりわずかに小さい径となっているが、従来例と同一の径でもよい。
第2傾斜面23と第2円筒面24とが交差する部位は、従来例の中央角部bの軸方向の高さと略一致している。
【0019】
第1突出環7は、上面を天面10と共有しており、その上面と第1傾斜面21が交差して接続する上端角部aの径方向高さは、従来例の係合突条104の上端角部a1の径方向高さより微少高さhだけ低く形成され、第1傾斜面21は、従来例の傾斜面106に対して微小隙間sを有するように径方向高さが低く形成されている。
係合部が単一の係合突条104からなる2軸延伸ブロー成形された通常のPETボトルでは、従来例のように上端角部a1付近に湾曲面110を容易に形成することができるため、キャップの打栓をスムーズに進めることができるのに対して、ダイレクトブロー成形による場合には、第1突出環7にこの微小隙間sを設けないと、上端角部a付近の外縁部形状が鋭利になりやすく、キャップを打栓したときに尖った外縁部がキャップの下端部や嵌合溝51の内面に引っかかり、打栓が困難になる場合があるため、微小隙間sを設けることが望ましい。
【0020】
なお、実施例では、突出環を2つ設けているが、必ずしも2つに限定されず、所定の強度が確保されれば3つ以上設けられても良い。
また、各環状溝の深さや幅は、実施例に限定されず、ヒケを生じないだけの肉抜きとシール性の確保、および係合強度が得られる範囲で適宜設定できる。
【0021】
図5に示すように、キャップ本体C1は、口部3が嵌入する環状の嵌合溝51を具え、注出筒52に連設した嵌合筒部50を有している。
キャップ本体C1の嵌合溝51は、内周側で注出筒52に連設する内筒54の外周面と、内筒54の上部で連設する上壁55の下面と、上壁55の外周側から垂設される外筒56の内周面とによって形成されている。
嵌合溝51の上面を形成する上壁55の下面は、内周側の平坦な頂面58と外周側の角部傾斜面59とが形成され、外筒56内周面の下端部には、内方に突出した縮径突条60が設けられている。
【0022】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
キャップCが打栓工程で上部から押圧され、縮径突条60が第1突出環7、第2突出環8、係合環9を乗り越えて係合環9の下端係合部11に係合し、嵌合溝51に口部3が嵌合して、合成樹脂ボトルAに装着される(
図2参照)。
このとき、第1傾斜面21,第2傾斜面23,係合傾斜面25の各傾斜面は、縮径突条60を案内して口部3への嵌合を容易にする。
また、第1突出環7の上面と第1傾斜面21が交差する上端角部aの径方向高さが、従来例の係合突条104の上端角部a1の径方向高さより微少高さhだけ低く形成され、第1傾斜面21が従来例の傾斜面106に対して微小隙間sを有するように径方向高さが低く形成されているから、容易に打栓工程を進めることができる。
【0023】
また、第1傾斜面21、第2傾斜面23は嵌合溝51の角部傾斜面59に圧接し、第1円筒面22,第2円筒面24,係合円筒面26の各円筒面は、外筒56をわずかに外方に押し広げて拡径し、キャップCの縮径突条60に係合する下端係合部11とともにキャップCを口部3に確実に係合する。
本実施例では、第1、第2の突出環7,8および係合環9が3点で外筒56内周面と圧接し、従来例の単一の肉厚部からなる係合突条104より柔軟性をもって接触圧が3点にバランスよく配分され、キャップCを口部3に確実に係合するとともに、口部内周面15を内筒54の外周面にしっかり圧接して必要なシール圧を確保することができる。
【0024】
そして、本実施例の第1突出環7、第2突出環8、係合環9からなる係合部は、従来例の係合突条104のように肉厚部が連続せず、第1環状溝12,第2環状溝13の分だけ肉抜きされているので、内周面15にヒケが生じない。
そのため、口部3の内周面15が内筒54の外周面に確実に圧接し、ダイレクトブロー成形法によって成形された合成樹脂ボトルであっても、シール性を低下させることがない。
そのため、本実施例の合成樹脂ボトルは、従来例の単一の係合突条104からなるPETボトル等に嵌合するキャップを使用することができ、ボトルに応じて使い分けなどをする必要がないから部品管理が容易となり、合成樹脂容器を効率的で低コストに製造することができる。
【0025】
次の表1は、同一の打栓キャップを、本実施例の2つの突出環と係合環とからなる係合部を有する合成樹脂ボトルに嵌合した場合と、1つの突出環と係合環とからなり環状溝が1つだけの係合部を有する合成樹脂ボトルに嵌合した場合との性能を、実験により比較したものである。
【0026】
【表1】
【0027】
キャップ回転トルクとは、キャップに回転力を与えたときにキャップが回転を始めるときのトルクを言い、ボトル口部とキャップとの密着力を示すものであり、その値の大小からシール圧力の大きさを予測できる。
打栓力は、打栓時に要する押圧力を示し、離脱力は、嵌合したキャップを口部から引きはがすときに必要な力を示す。
とくに、熱充填する容器に必要なキャップ回転トルクの基準値は、150N・cm以上であり、突出環が1つのダイレクトブロー成形の合成樹脂ボトルでは、128N・cmと基準値を下回っている。
【0028】
一方、2つの突出環を有する本実施例では、キャップ回転トルクは193N・cmと基準値を大きく上回り、熱充填可能な高いシール性能を有することがわかる。
したがって、本実施例では、合成樹脂ボトルAに対してキャップが容易に回転しないため、口部3と液密に嵌合している内筒54外周面とのシール性を保持することができ、65度以上の高温充填にも充分対応可能な構造となっている。
また、キャップの離脱力も突出環が1つのものが20Nであるのに対して、2つの突出環を有する本実施例は、33Nと上回っており、キャップが脱落しにくくなっている。
このように、ダイレクトブロー成形でヒケを生じないように環状溝を形成しても、突出環が1つだけでは必要なシール圧を得ることができないが、本実施例のように突出環を2つ形成すれば、キャップとの高い嵌合力を得られ、同時に高い密着力、高いシール圧が確保されることがわかる。
この実験結果から、口部係合部の突出環は、少なくとも2つ以上必要であることがわかる。