【実施例】
【0041】
本発明の範囲を限定する意図なしで、本発明の実施形態に従った例示的な機器、装置、方法およびそれらの関連した結果が下記に与えられる。読者の便宜のため、タイトルまたはサブタイトルを実施例で使っているが、これは本発明の範囲を決して限定するものではないことが注記される。さらに、特定の理論がここに提案され開示されるが、それが正しいか誤りかに関係なく、本発明が行われる限り、あらゆる特定の理論または作用の方式にかかわらず、本発明の範囲は限定されない。
【0042】
I.GLKは、T細胞中のPKC−θを活性化することにより自己免疫およびNF−κBシグナル伝達を制御する。
【0043】
[方法および材料]
(GLK欠損マウス)
GLKノックアウト(クローンRRO270)による129マウス胎生期ステム細胞クローンをEUCOMMから購入し、これを、台湾のゲノム医学国家研究計画におけるトランスジェニック・マウス・モデル・コアにおいて、C57BL/6の尾胞に注入して、キメラマウスを生成した。全ての動物実験は、国立衛生研究所でIACUCに承認されたプロトコルに従って遂行された。
【0044】
(患者および健常対照者)
米国リウマチ学会基準に基づき、全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)と診断される49人の患者につき、研究を行った。全ての患者は、台中退役軍人総合病院(TVGH:Taichung Veterans General Hospital)のアレルギー・免疫学・リウマチ学部門に付託された。35人の健康な個人が、対照者として登録された。この研究は、TVGHの治験審査委員会に承認され、書面にした告知に基づく同意を全ての個人から得た。
【0045】
(抗体、プラスミドおよび精製タンパク)
抗マウスCD3ε(145−2C11)および抗ヒトCD3ε(OKT3)が、プロテインA−セファロースクロマトグラフィーによりマウス腹水から精製された。GLK、HPK1、p−Erk(T202/Y204)、Erk、p−SLP−76(S376)およびSLP−76に対する抗体が、個々のペプチドでウサギに免疫性を与えることによって生成された。抗p−PKC−θ(T538)抗体および抗p−PKC−θ(S695)抗体は、アップステートバイオテクノロジー社から入手した。抗PKC−θ(C−19)抗体、抗p−PKC−θ(S676)抗体、抗Vav1(D−7)抗体、抗Vav2(E−12)抗体および抗Vav3(K−19)抗体は、サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー社から入手した。抗Flag(M2)抗体、抗Myc抗体、抗HA抗体および抗チューブリン抗体は、SIGMA社から入手した。抗p−IKK(S181)抗体、抗p−PDK1(S214)抗体、抗IKK抗体および抗PDK1抗体は、セルシグナリング社から入手した。細胞内染色用の抗p−PKC−θ(T538)(19/PKC)抗体は、BDファ−ミンゲン社から入手した。抗p−mTOR抗体および抗mTOR抗体は、アブカム社から入手した。
【0046】
GLK、GLKキナーゼデッド(KD:kinase−dead)変異およびFlag−SLP−76に対する発現プラスミドは、前述の通りである。MycタグPKC−θ、HAタグGLKおよびGFPタグGLKは、個々の相補DNAを、pCMV6−AC−Myc、pCMV6−AC−HA、およびpCMV6−AC−GFP(オリジーンテクノロジー社)にそれぞれサブクローニングすることにより構築された。shRNAプラスミドは、国立RNAiコア設備によって作られた。NF−κBリポータープラスミド(pNF−κB−Luc)および標準化されたプラスミド(pRL−Tk)をプロメガ社から購入した。
【0047】
インビトロでの結合アッセイのため、Flag−GLKトランスフェクションHEK293T細胞およびFlag−SLP−76トランスフェクションHEK293T細胞から、精製GLKおよびSLP−76をそれぞれ分離し、その後、Flagペプチド溶出を行った。Sf9昆虫細胞中のかん状ウイルスから発現される精製組み換え型GST−PKC−θを、シグナルケム社より購入した。
【0048】
(過渡的導入およびT細胞活性化)
過渡的導入アッセイのため、ネオン移入システム(インビトロジェン社)を使って細胞を導入した。個々の細胞系または一次細胞の具体的な設定は、以下の通りである:ジャーカットT細胞およびJ14細胞系では、1420V、継続時間30ミリ秒、1パルス;EL4細胞では、1080V、継続時間50ミリ秒、1パルス;プライマリーT細胞では、2000V、継続時間20ミリ秒、2パルス。T細胞活性化を誘発するため、J−TAgおよびEL4細胞を、抗CD3抗体5μg/mlを用いて、示した時間、37℃で刺激した。プライマリーT細胞活性化を誘発するため、3×10
6個の精製T細胞を、抗CD3−ビオチン(500A2;eバイオサイエンス社)3μg/mlおよびストレプトアビジン(シグマ社)3μg/mlを用いて刺激した。
【0049】
(インビトロ・キナーゼ・アッセイ)
抗Flagアガロースビーズを用いて、刺激されないまたは抗CD3刺激を行ったジャーカットT細胞またはJ−14細胞の溶解物(80μg)から、Flag−GLKを免疫沈降した。抗Flag免疫沈降物を、細胞溶解緩衝液により3回洗浄した後、さらにキナーゼ緩衝液により1回洗浄し、または、Flag−GLKの精製用のFlagペプチド溶出液にさらした。抗Flag−GLKビーズまたは精製Flag−GLKを、キナーゼ緩衝液35μl中[γ−
32P]ATP10μCiの存在下または不存在下で、コールドATP500μM、ミエリン塩基性タンパク4μgと共に、40分室温で培養した。サンプルを、SDS−PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により分離した。免疫ブロット分析によって、基質のリン酸化を検出した。または、放射標識されたリン酸塩の基質への導入により検出した。これをタイフーン級スキャナー(GE)によって定量した。
【0050】
(フローサイトメトリー分析)
PMAとイオノマイシンで細胞を2時間刺激し、ゴルジストップ(登録商標)でさらに2時間処理した。細胞を採取し、コ−ルドPBSで洗浄し、その後、示された抗体で、氷上で30分染色した。臨床のサンプル分析のため、別の刺激なしでPBLを直ちにゴルジストップで処理し、その後、室温で、抗表面マーカで染色した。細胞内染色のため、PBLを、サイトフィクス/サイトパーム緩衝液(BDバイオサイエンス)200μl中で2時間透過処理し、パームウォッシュ緩衝液で洗浄し、その後、抗体(1:50希釈物)中で2時間培養した。以下の抗体を染色に用いた:抗mCD3−APC(145−2C11)抗体、抗mCD3−FITC(145−2C11)抗体、抗Foxp3−PE(150D)抗体、抗IFNγ−FITC(XMG1.2)抗体、抗IL−4−PE(11B11)抗体および抗IL1−17A−PE(TC11−18H10.1)抗体を、バイオレジェンド社から購入した。抗mCD4−パシフィックブルー(RM4−5)抗体、抗hCD3−PECy7(SK7)抗体、および、抗hCD19−PE(SJ25C1)抗体を、BDファーミンゲン社から購入した。FACSCantoIIフローサイトメーター(BDバイオサイエンス)を用いてデータを収集し、FlowJoソフトウェアを用いて分析を行った。
【0051】
(インビボT細胞介在の免疫応答およびEAEの誘起)
各々の実験に使われるマウスは、6〜10週齢の性が一致する同腹子であった。免疫性を与えられたマウスからの抗原特異的な(KLH)抗体、T
H1およびT
H2サイトカインの生産は、前記の通り測定された。EAEの誘起は、前記のよう行われた。
【0052】
(インビトロT細胞分化アッセイ)
CD4
+CD25
-細胞を、マウスのリンパ節から精製した。細胞(2.5×10
5)を、抗CD3(2μg/ml)抗体および抗CD28(3μg/ml)抗体と共に、コーティングした48個のウェルのプレート内の500μl培地中で培養した。T
reg分化のため、細胞を、10ng/mlのIL−2、10ng/mlのTGF−β抗体、2.5μg/mlの抗IL4抗体、および2.5μg/mlの抗IFN−γ抗体を含む培地で培養した。T
H17分化のため、細胞を、20ng/mlのIL−6、5ng/mlのTGF−β、50ng/mlのIL−23、5μg/mlの抗IL4抗体および5μg/mlの抗IFN−γ抗体を含む培地で培養した。T
H1分化のため、細胞を、5ng/mlのIL−12および1μg/mlの抗IL4抗体を含む培地中で培養した。T
H2分化のため、細胞を、10ng/mlのIL−4および1μg/mlの抗IFN−γ抗体を含む培地中で培養した。
【0053】
(インビトロ抑制アッセイ)
マウスCD4
+T細胞を、マウスの脾臓およびリンパ節からネガティブに選択した。精製の第2ラウンドでは、マウスCD25に対して磁力結合型抗体を用いて、CD4
+CD25
+T(T
reg)細胞を、CD4
+T細胞から分離した。T
reg細胞を、CD3
+T細胞(終末濃度は2×10
5個の細胞/500μl)に加え、その後、抗CD3抗体で72時間刺激した。
【0054】
(統計的方法)
P値を、スチューデントのt検定によって判定した。臨床サンプルに由来するデータの分析のため、ピアソン相関(r)を最初に使用した。臨床サンプルのフロー・サイトメトリー・データに対する単回帰を用いて、GLK発現T細胞のパーセンテージとSLE患者のSLEDAIとの間に統計学的に高い相関が示された。
【0055】
[結果]
・GLKは、直接にPKC−θをリン酸化して活性化する。
我々は、ジャーカットT細胞中のGLK過剰発現またはGLK siRNAノックダウンに続いて抗CD3刺激を行うことにより、TCRシグナル伝達におけるGLKの役割を研究した(
図1aおよび
図6)。ジャーカットT細胞における抗CD3−誘発NF−κB活性およびIKKリン酸化(ErkまたはmTOR活性はない)は、GLK siRNAまたはGLKのキナーゼデッド(KD)変異によって抑制され、また、GLK過剰発現により促進された(
図1aおよび
図7a,b)。さらに、GLKキナーゼ活性は、1分でTCRシグナル伝達によって誘発され、30分でピークに達した(
図7c)。これらの発見は、GLKがTCR−誘発NF−κB活性化に関与することを示唆するものである。SLP−76がErkおよびIKK経路の両方を調節するため、SLP−76は、GLKの標的ではないと考えられていた。したがって、我々は、PKC−θの活性化に対するGLKの効果の試験を行い、TCRシグナル伝達において、IKK−NF−κBの上流側およびSLP−76の下流側で重要な調節因子であることを試験した。PKC−θリン酸化は、GLKによって調節されるため、我々は、PKC−θをターゲットとすることにより、GLがKIKK−NF−κB経路を活性化したかどうかの試験を行った(
図7d)。PKC−θ siRNAノックダウンは、抗CD3刺激によるGLK−誘発NF−κBの活性化を無効化するので、GLKがPKC−θを標的とすることでNF−κB活性化を誘発することが示された(
図7e)。
【0056】
T細胞シグナル伝達中に、GLKが直接にPKC−θをリン酸化・活性化できるか否かを調べるため、共同免疫沈降アッセイを用いてTCRシグナル伝達中にGLKがPKC−θと相互作用したか否かを、我々は調べた。CD3刺激は、プライマリーT細胞中で、内因性GLKとPKC−θとの間の相互作用を誘発し、GLK−PKCθ相互作用は、PKC−θ活性化を伴発した(
図1b)。HEK293T、ジャーカットおよびEL4細胞系を用いた時も、同様の結果が観測された(
図8a〜c)。精製GLKタンパクおよびPKC−θタンパクの結合アッセイを用いて、GLKとPKC−θとの間の直接の相互作用が、インビトロでさらに実証された(
図1c)。GLKによってPKC−θリン酸化の部位を判定するため、我々は、PKC−θの3つ主要なリン酸化部位であるT538、S676およびS6954でPKC−θリン酸化の試験を行った。T538リン酸化は、PKC−θキナーゼ活性化およびそれ以降のNF−κB活性化に最も重要なものである。免疫沈降Flag−GLKおよびMyc−PKC−θを用いたインビトロ・キナーゼ・アッセイでは、GLKは、T538でPKC−θをリン酸化したが、S676またはS695ではリン酸化しなかった(
図1d)。
【0057】
精製GLKタンパクおよびPKC−θタンパクを用いたインビトロ・キナーゼ・アッセイでは、PKC−θ−T538は、GLKによって直接にリン酸化された(
図1e)。これらを一緒に解釈すれば、我々の結果は、GLKは直接にPKC−θと相互作用し、TCRシグナル伝達中はT538でPKC−θをリン酸化することを示した。
【0058】
・SLP−76は、GLKの直接の上流側調節因子である
SLP−76は、T細胞中の重要な骨格タンパク質であり、TCR−誘発PKC−θ−IKKの活性化に必要である。我々は、SLP−76がTCRシグナル伝達中のGLKの直接の上流側調節因子であったかどうかを問うた。CD3刺激は、プライマリーT細胞中の内因性GLKとSLP−76との間の相互作用を誘発した(
図2a)。SLP−76−GLK相互作用は、GLK−PKC−θ相互作用およびPKC−θ活性化に先行した。同様の結果が、ジャーカットおよびHEK293T細胞を用いて観測された(
図9a〜c)。さらに、SLP−76とGLKとの間の相互作用は、チロシンリン酸化を通して介在された(
図9d)。精製GLKおよびSLP−76を使ったインビトロでの結合アッセイでは、これらの2つのタンパクの間の直接の相互作用が実証された(
図2b)。次に、SLP−76がGLKの活性化に必要か否かにつき、我々は調べた。CD3刺激によって誘発したGLKキナーゼ活性は、SLP−76−欠損J14細胞(
図2c)およびSLP−76 shRNAトランスフェクションジャーカット細胞(
図2d)では無効化されていた。過去の報告によれば、Vav1がSLP−76と関連しPKC−θ転位に関連することが示されており、Vav1がPKC−θ活性化を制御することが示唆される。したがって、Vav1がGLK活性化を調節したか否かを、我々は調べた。しかしながら、TCR誘発GLKキナーゼ活性化は、Vav1 shRNAノックダウンによっては、影響を受けなかった(
図9)。これらのデータは、TCRシグナル伝達中、GLKキナーゼ活性化の調節におけるVav1の関与を排除するものだった。また、別のMAP4K、すなわち、HPK1についても、SLP−76によって活性化し、次いで、SLP−76−S376リン酸化を誘発することにより、このSLP−76活性化を負に調整したため、SLP−76の負のフィードバック調節にGLKが役割を果たしているか否かにつき、我々は検討を行った。SLP−76−S376リン酸化は、HPK1のみにより誘発され、GLKには誘発されなかった(
図2e)事実は、GLKはSLP−76を負に調整するためのフィードバックに関与しないことを示唆するものである。これらの発見は、TCRシグナル伝達中、SLP−76は直接に相互作用しGLKを活性化することを示すものである。
【0059】
・GLKは、インビボにT細胞介在の免疫応答を制御する
インビボにおけるGLKの役割を研究するため、我々は、GLK欠損マウスを生成した(
図11a,b)。T細胞は、GLK欠損マウス中、正常に発育した(
図11c−e)。プライマリーT細胞中において、TCRシグナル伝達のGLK欠損の効果を研究した。我々の過去の観測(
図1)と合致した点としては、CD3(
図3a)またはCD3−CD28共同刺激(
図3b)では、GLK欠損T細胞中、PKC−θおよびIKKのリン酸化が無効化されていたことが挙げられる。これとは対照的に、ErkおよびPDK1活性化は、GLK欠損(
図3b)に影響を受けなかった。
【0060】
また、Ca
2+シグナル伝達に加えて、Lck、LATおよびPLCγ1のリン酸化は影響を受けなかった(
図11fおよび
図8c)。NF−κBシグナル伝達がT細胞増殖を調節することから、我々は、[
3H]チミジン取込みおよびCFSEダイ希釈アッセイを用いて、T細胞増殖へのGLKの効果を研究した。GLK欠損が大いに阻害するT細胞増殖は、CD3刺激により誘発された増殖であり、PMAとイオノマイシン刺激によって誘発された増殖ではない(
図3d,e、
図11g)。PMAおよびイオノマイシンが近接TCRシグナル伝達をバイパスするので、この結果は、GLK活性がTCR近接シグナリング錯体によって誘発されることを示唆している。さらに、GLK欠損T細胞の細胞増殖の低下は、異所的に発現されたGLKによって救われた(
図3f)。これらのデータは、GLKが、T細胞増殖にとって重要であることを実証するものである。
【0061】
我々は次に、GLKがインビボにT細胞介在の免疫応答で重要な役割を果たすかどうかを調査した。我々は、ミョウバンをアジュバントとして用い、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、T細胞依存抗原で、野生型およびGLK−欠損マウスに免疫性を与えた。KLH免疫性が付与されたGLK欠損マウスからのT細胞の増殖性は、KLH再刺激の後、低下した(
図4a)。さらに、GLK欠損マウスからのKLH再刺激後の脾臓のT細胞におけるインターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン2(IL−2)およびIL−4を含むサイトカインのレベルは、非常に低減し(
図4b)、これは、インビボのT細胞活性化が損なわれたことを示唆する。また、GLK欠損マウスにおいて、最初の免疫化および第2の免疫化後の血清中での抗原特異抗体の生成は、非常に低減された(
図4c,d)。これらの結果は、GLKは、免疫応答および抗体産生の機能を搭載する必要があることを示している。
【0062】
・GLK欠損マウスは、自己免疫に耐性を示す。
実験的な自己免疫性脳脊髄炎(EAE:experimental autoimmune encephalomyelitis)は主に、IL−17−生成CD4
+Tリンパ球(T
H17)が介在する。PKC−θ欠損により、EAEおよびT
H17応答が改善された。GLKがPKC−θを活性化したため、我々は次に、実験的な自己免疫性脳脊髄炎モデルを使うことにより、T
H17が介在した自己免疫性疾患におけるGLKの役割を研究した。GLK欠損マウスは、症状をほとんど示さなかったが、その野性型腹子は、激しい実験的自己免疫性脳脊髄炎を増長させた(
図4e)。免疫性を与えられて14日目のマウスの脳および脊髄の中の、浸潤性リンパ球中におけるT
H17細胞のパーセンテージは、GLK欠損マウスでは、非常に低かった(
図4f)。さらに、血清中のIL−17の滴定量は、GLK欠損マウスでは、非常に低かった(
図4g)。GLK欠損マウスにおけるT
H17応答の欠陥がT細胞固有の効果であるか否かを調べるため、我々は、GLK欠損未感作T細胞のインビトロT
H17分化能を測定した。一貫して、T
H1およびT
H2細胞に加えてT
H17細胞のインビトロ分化は、GLK欠損によって低減された(
図4hおよび
図12)。インビトロT
reg分化は、GLK欠損によって影響を受けなかった(
図12)が、GLK欠損T
reg細胞は、インビトロでより高い活性抑圧を示した(
図4i)。これらの結果は、インビボのGLK欠損は、T
H17が介在した自己免疫性疾患の進展からマウスを保護することを示す。欠損TCRシグナル伝達およびT
H17分化は、GLK欠損T細胞中に増加したT
reg機能と共に、GLK欠損マウス耐性に対して、重要な役割を果たすことができる。
【0063】
・ヒトSLE中におけるGLK誘発PKC−θの活性化
ヒト自己免疫性疾患全身性エリテマトーデス(SLE)において、T
H17の介在した炎症は重要な役割を果たしている。GLK欠損マウスにおいて、自己免疫誘起およびT
H17応答が低減し、GLKがPKC−θ−IKK経路を活性化しているため、我々は、GLK−PKC−θ−IKK−IL−17カスケードがヒトSLEに関与するか否かを研究した。我々は、SLE患者49人および35人の対になる健常対照者から分離された末梢血白血球(PBL)中におけるGLK発現およびPKC−θ−IKK活性化を検討した(
図13a)。フローサイトメトリー分析によれば、SLE患者の新たに分離されたPBLからの、B細胞でなく、GLK発現T細胞の、パーセンテージが大きく増加したことが示された(
図5a)。GLK発現T細胞のパーセンテージは、SLE疾患活動性度指数(SLEDAI)と相関した(
図5b;ピアソン相関係数:r=0.773)。特に、GLK表現(GLK
+)T細胞が高パーセンテージ(≧21%)のSLE患者の3分の1(16/49)は、GLKが通常範囲の患者と比較して(r=0.451;表1)、より高い相関を示した(r=0.807、
図5c、表1)。また、SLE患者のGLKタンパク発現の量は増加した(
図5d)。これらの結果は、GLK過剰発現が、30%の患者のSLE発病に関与したことを示唆するものである。表1は、SLEDAIとSLE患者の別々の部分集合から得たGLK
+T細胞のパーセンテージとの間の相関の比較を示す。
【表1】
SLEおよび低GLK
+T細胞をもつ人(<21%)に対し、調整された回帰相関係数は、r
2=0.177、P値=0.008503。
【0064】
我々は次に、SLE患者からのT細胞におけるGLK過剰発現が、PKC−θ−IKK活性化を誘発したか否かにつき調べた。リン酸−PKC−θまたはリン酸−IKK陽性T細胞のパーセンテージは増加し、およびSLE患者からのT細胞中、GLK発現と共に染色した(
図5e)。同様に、免疫ブロット分析は、SLE患者におけるPKC−θ−IKK活性化の誘起を示した(
図5d)。これらのデータは、GLKが、SLE患者からのT細胞において、PKC−θを活性化することを示唆するものである。TNFでなくIL−6でもなく、IL−17の力価が、SLE患者の血清中に増加した(
図8b)。これらの結果は、T細胞中のGLK過剰発現が、狼瘡患者の自己免疫発病を促進することを示唆するものである。したがって、GLKは、T細胞中のPKC−θの直接活性化による自己免疫性疾患の重要な正調節因子である。
【0065】
[検討]
我々の研究の重要な発見は、GLKが、TCRシグナル伝達中にT538でPKC−θを直接にリン酸化するキナーゼとして、認定されたことである。活性化ループ内の残留物T538におけるPKC−θリン酸化は、T細胞中のNF−κB活性化にとって必須である。GLK誘発PKC−θ−IKKリン酸化は、PDK1活性化およびCD28の相互刺激に関係無く、これは、GLK機能がPDK1活性化とは無関係であることを示唆する。これらのデータは、GLKが、TCRシグナル伝達中にPKC−θのすぐ上流側のキナーゼとして機能することを明示するものである。
【0066】
インビトロT細胞分化アッセイの結果は、GLKは、Tヘルパー細胞の分化に対して、固有のポジティブな役割を果たすことをさらに示している。GLKがTヘルパー細胞分化を調節するメカニズムは、依然として解っていない。しかしながら、T
H1、T
H2およびT
H17のインビトロ分化は全て、GLK欠損によって低減し、これは、GLKが、別のTヘルパー分化経路に対して別のサイトカインシグナル伝達経路を調節する代わりに、通常のメカニズム(例えば、TCRシグナル伝達またはIL−2生成を増加)によりTヘルパー細胞分化を調節してもよいことを示唆するものである。
【0067】
GLKのインビボの役割についての我々の研究は、GLKが、最適のT細胞免疫応答および抗体産生に必要であることを実証するものである。GLK欠損マウスへの最初の免疫化および第2の免疫化の後に生じた、抗原特異抗体生成の低減に加えて、IL−2、IFN−γ(T
H1サイトカイン)およびIL−4(T
H2サイトカイン)等のT細胞分泌サイトカインの減少は、PKC−θ欠損T細胞に対して報告される欠損と同様である。また、EAE誘起に対するGLK欠損マウスの耐性およびT
H17応答の低下は、PKC−θ欠損マウスの表現型に合致している。胸腺の天然T
regの数は、GLK欠損マウスでは影響を受けなかった。しかしながら、PKC−θ−NF−κBシグナル伝達が損なわれたことが原因で、PKC−θ欠損マウス、CARMA1欠損マウス、BCL10欠損マウス、またはIKK2突然変異マウスのT
reg数は低減する。PKC−θは、例えばCD28、CD4、CD8、LFA−1の刺激または小胞体(ER:endoplasmic reticulum)応力シグナル伝達等、様々なシグナル伝達経路によって、活性化が可能である。T
reg発達中に、PKC−θ−NF−κBシグナル伝達がどのように活性化されるかは、依然として不明である。我々のデータによれば、GLKが、別の既知のリン酸化部位(例えばS676およびS695)でなく、T538残留物をリン酸化することにより、PKC−θを活性化することが示される。おそらく、GLKは、キナーゼを活性化する唯一のPKC−θではない。したがって、PKC−θ−CARMA1−BCL10−IKK2の活性化は、T
reg中の別のキナーゼによっても可能であるであろうと考えられ、GLK欠損マウス中のT
regの数を正常な値にすることができる。T
regの数は、GLK欠損マウスでは影響を受けなかったが、T
reg活性は、GLK欠損によって増加した。PKC−θは、T
regが介在した抑制に対して負の役割を有する。これらをまとめれば、T
H1、T
H2、T
H17およびT
reg細胞を調節することに対してのGLKの役割は、PKC−θの役割と実質的に合致し、これは、GLKはおそらくTCRシグナル伝達に対してのPKC−θの唯一のアクティベーターであるという仮説を支持するものである。
【0068】
また、この研究では、SLE患者の末梢血T細胞中でGLK発現が誘発され、これは疾患重症度と正に相関したことを、我々は報告するものである。また、SLE患者から分離されるGLK過剰発現によるT細胞は、PKC−θ−IKK活性化の上昇を示し、これは、GLK−PKC−θ−IKK経路の活性化は、SLE発症を制御することを示唆するものである。これは、SLE患者のT細胞中のGLK過剰発現およびPKC−θ−IKK過反応を最初に例証するものである。SLE患者中の血清IL−17の上昇は、過去の報告にも合致している。血清IL−17とSLEDAIとの間の相関と比較すると(ピアソン相関係数:r=0.41)、GLKとSLEDAI(r=0.773)との間の相関は、非常に高く、また顕著である。これらをまとめれば、我々の発見は、GLKが、自己免疫発病学で重要な役割を果たし、SLEの進行についての新しい診断バイオマーカとしての役目を果たすことができることを示し、さらに、GLKおよびその下流PKC−θ−IKKシグナル伝達の抑制が、新しい治療の戦略をSLEに対して提供することができることを示している。
【0069】
II.慢性関節リウマチの新しいバイオマーカとしてのT細胞中のGLK過剰発現
我々の過去の研究では、GLKが、T細胞中のプロテインキナーゼC−θ(PKC−θ)−NF−κBキナーゼの阻害剤(IKK)−NF−κBのシグナル伝達経路を活性化することにより、自己免疫を制御することを実証した(Chuangほか(2011)、「The kinase GLK controls autoimmunity and NF−κB signaling by activating the kinase PKC−θ in T cells」 Nat Immunol,12(11):1113−1118,この文献の全体が、参照事項として本願に包含される)。全身性エリテマトーデス(SLE)患者からのT細胞は、疾患重症度によく相関するGLK過剰発現を示すが、RA中のGLKの役割は解っていない。
【0070】
コラーゲン誘発関節炎(CIA)は、破壊性炎症性の関節滑膜炎類似RAを発達させる、広く研究された動物モデルである。PKC−θ欠損マウスは、応答の低下をCIA[14]に示す。IKK−β抑制は、関節炎動物モデル中の骨および軟骨の破壊に有効な処理である。PKC−θおよびIKKが炎症性関節炎に重要な役割を果たすため、我々は、コラーゲン免疫性付与マウスおよびヒトRA患者からの臨床のサンプルを用いて、RA発病に対する上流側キナーゼGLKの役割可能性を調べた。
【0071】
[材料および方法]
(参加者)
米国リウマチ学会で1987年に修正されたRAの基準を満たす30人の患者を登録した。24人の健康な志願者が、健常対照者の役目を果たした。8人の骨関節炎(OA:osteoarthritis)および8人のRA患者からの滑膜組織および滑液を得た。この研究プロトコルは、台中退役軍人総合病院の臨床調査倫理委員会で承認されたものである。
【0072】
(疾患活動性)
赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(CRP)、および28関節疾患活動性スコア(DAS28)の血清レベルを、RA疾患活動性を評価するために使用した。
【0073】
(GLK欠損マウス)
台湾ゲノム医学国立研究プログラムのトランスジェニック・マウス・モデル・コアにおいて、欧州条件変異マウス作成プログラムからのGLK欠損(RRO270)を有する129マウス胎生期ステム細胞クローンを、マウスラインCB57L/6から尾胞に注入して、キメラマウスを発生させた。GLK欠損マウスを、C57BL/6バックグラウンドで、9世代にわたって戻し交配した。全ての動物実験は、台湾国立衛生研究所の動物実験委員会によって承認されたプロトコルで行われた。
【0074】
(関節炎の誘起およびスコアリング)
従来説明されているように、ワイドタイプ(WT)またはGLK欠損マウスに、コラーゲン誘発関節炎(CIA)を誘発させた(Campbellほか(2000)「Collagen−induced arthritis in C57BL/6(H−2b)mice:new insights into an important disease model of rheumatoid arthritis」 Eur J Immunol.30(6):1568−1575)。12週齢(0日)のマウスに対し、ニワトリ型IIニワトリコラーゲン/フロインド完全アジュバント乳化物(MDバイオサイエンス社、スイス国チューリッヒ)を含む合計100μlのエマルションを、尾部のベースに皮内注射した。同様の注射を、21日に腹膜内に繰り返した。次いで、以下の臨床のスコアを使い、WTまたはGLK欠損マウス中の疾患の臨床結果を示した:1=指の腫れ、2=紅斑、3=足/踝の腫れ4=機能損失。
【0075】
(血清サイトカインの定量)
WTまたはGLK欠損マウスおよびRA患者のTNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−17Aの血清レベルを、製造業者(eバイオサイエンス社、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)のインストラクションに従い、ELISAを使って測定した。
【0076】
(試薬と抗体)
GLK抗体は、個々のペプチドでウサギに免疫性を与えることによって生成されている。ウェスタンブロッティングには、抗p−PKC−θ(T538)抗体(アップステートバイオテクノロジー社、レークプラシッド、ニューヨーク、米国)を用いた。細胞内染色には、抗PKC−θ抗体(サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー社、サンタクルーズ、カリフォルニア、米国)を用いた。フローサイトメトリー分析には、抗hCD3−PECy7(SK7;BDファーミンゲン社、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)抗体、抗p−PKCβE T538(19/PKC;BDファーミンゲン社、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)抗体、および抗p−IKK(2681S)(サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー社、サンタクルーズ、カリフォルニア、米国)抗体を用いた。GLK mRNA検出には、タックマンプローブおよびプライマーセット(アプライドバイオシステム社、フォスター、カリフォルニア、米国)を用いた。
【0077】
(ウェスタンブロット解析およびフローサイトメトリー分析)
免疫ブロッティング分析に対し、滑液白血球および精製末梢血T細胞のサンプリングを、過去の文献に基づいて行った(Chuangほか(2011)「The kinase GLK controls autoimmunity and NF−κB signaling by activating the kinase PKC−θ in T cells」.Nat Immunol.12(11):1113−1118、この文献の全体が、参照事項として本願に包含される)。また、前述のように、末梢血および滑液のフローサイトメトリー分析を行った。
【0078】
(免疫組織化学)
RA患者およびOA患者の滑膜について、GLKの免疫染色を行った。パラフィンで包埋した組織を10分間沸騰し、2分間水で洗浄した。次いで、切片を、予め水素ペルオキシダーゼブロック(サーモサイエンティフィック社、ウォルサム、マサチューセッツ、米国)で1時間培養し、その後、抗CD3抗体(サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー社、サンタクルーズ、カリフォルニア、米国)および抗GLK抗体と共に、4℃で1晩培養した。LVBlue/LVRed(マルチビジョンポリマー検知システム、サーモサイエンティフィック社、ウォルサム、マサチューセッツ、米国)を用いて染色を行った。
【0079】
(統計的分析)
社会科学用統計学パッケージ(SPSS:Statistical Package for the Social Sciences)バージョン13.0ソフトウェア(SPSS社、シカゴ、イリノイ、米国)を、統計的分析に用いた。連続する変数の比較には、スチューデントのt検定を用いた。変数間の相関を判定するためにはピアソンの相関を用いた。RA患者のGLK発現T細胞とDAS28の頻度との間の相関を調べるため、単回帰を用いた。
【0080】
[結果]
・GLK欠損マウスにおけるコラーゲン誘発関節炎の発育低下
GLK欠損マウスでは、T細胞介在の免疫応答が低下することを、我々は以前に実証した(Chuangほか、Nat Immunol.2011;12(11):1113−1118、この文献の全体が、参照事項として本願に包含される)。炎症性関節炎へのGLKの寄与を調べるため、我々は、CIAモデルを使い、野生型(WT)マウスおよびGLK欠損マウスの自己免疫応答の誘起を研究した。WTマウスは、重いCIAを進行させた一方、GLK欠損マウスは、症状を急激に低減させた(
図14A、B)。炎症性サイトカインは、CIA進行中に誘発される。コラーゲン−免疫付与GLK欠損マウスのIL−1β、IL−6およびIL−17Aの血清レベルは、WTマウスと比較して著しく低減したことを、我々は見いだした(
図15C−E)。GLKが炎症性の関節炎に必要であることが、これらの結果から示唆される。
【0081】
・RA患者の人口統計学的データおよび臨床の特徴
RA患者からのT細胞中で、GLKレベルが上昇したか否かを調べるため、RA患者30人(女性66.7%(平均年齢:50.3+/−15.7歳)および健常対照者24人(女性62.5%(平均年齢:33.4+/−8.3歳)を登録した(表2)。表2は、慢性関節リウマチ(RA)患者および健常対照者(HC)の人口統計学的データ、臨床の発現および検査所見を示す。
【0082】
・RA患者からの精製末梢血T細胞中におけるGLK発現の上昇
ウェスタンブロッティングによれば、RA患者からの精製末梢血T細胞中で、GLKのタンパク質レベルが上昇している(
図15A)。RA患者からの精製T細胞中のGLK発現レベルは、健常対照者のGLK発現レベルに比べて、著しく高かった(1.3+/−0.8対0.4+/−0.4、p=0.047、
図15B)。さらに、RA患者において、精製末梢血T細胞中のGLK mRNAレベルは、健常対照者と比較して非常に高かった(12.3+/−18.5対1.0+/−1.2、p=0.029、
図15C)。GLKがPKC−θを活性化するため、GLK誘発PKC−θ活性化がRAに関与しているか否かにつき、我々は研究した。また、PKC−θ活性化は、RA患者からの末梢T細胞内で増加した(
図15A)。
【表2】
#値は、患者の平均+/−標準偏差または人数(%)。
スチューデントのt検定によって判定されるHC対RA患者の*p<0.05、**p<0.001。
RF:リウマチ因子(rheumatoid factor);CCP:環状シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide);DAS28:28関節疾患活動性スコア;ESR:赤血球沈降速度;CRP:C反応性タンパク質;TNF−α:腫瘍壊死因子−α(tumor necrosis factor−α);NA:適用なし。
【0083】
・RA滑液および滑膜組織からのT細胞中におけるGLK発現の増加
次に、我々は、GLKが、ヒトRA患者の滑液の微小環境からのT細胞中で発現されたか否かにつき、研究を行った。ウェスタンブロッティングによれば、RA患者からの滑液白血球中において、GLK発現およびPKC−θ活性化が増加した(
図16A)。フローサイトメトリー分析によれば、RA患者からの滑液中のGLK発現CD3
+T細胞の頻度は、OA患者のそれと比べて非常により高かった(
図16B)。RA患者およびOA患者の滑膜組織に対して、抗GLK(ブルー)および抗CD3(茶色)免疫組織化学染色を行った。
図16Cに例示されるように、GLK発現T細胞は、RA患者からの滑膜組織中で増加したが、OA患者からの滑膜組織では、わずかにしか検出されなかった。
【0084】
・滑液および末梢血からのT細胞中におけるGLK、PKC−θおよびCD3の共局在性
共焦点顕微鏡検査の結果、RA患者の滑液(
図17A)および末梢血(
図17B)の両方からのT細胞中で、PKC−θおよびCD3と共に、GLKが相互局所化されていることが示された。これにより、GLKはT細胞膜上で活性PKC−θと相互作用することが示唆された。
【0085】
・RA疾患活動性によるGLK発現T細胞頻度の相関
RA患者の血清TNF−α(27.6+/−42.4対5.4+/−13.9pg/ml、p=0.019)およびIL−17A(14.2+/−12.1対7.5+/−4.4pg/ml、p=0.015)のレベルは、健常対照者のレベルより高かったが、TGF−β(6.5+/−5.14対5.2+/−7.6 pg/ml、p=0.5)はそうではなかった(
図18A−C)。フローサイトメトリーの分析によれば、RA患者の末梢血T細では、GLK発現、リン酸−PKC−θ陽性、およびリン酸−IKK陽性胞の頻度が、より大きかった(
図18D)。RA患者のGLK発現末梢血T細胞の頻度は、健常対照者に比べて非常に高かった(18.4+/−7.6対10.5+/−5.0、p<0.001、
図18E)。さらに、RA患者では、GLK発現T細胞は、リン酸化PKC−θおよびIKKを発現した。これらのデータによれば、GLK−PKC−θ−IKKカスケードは、ヒトRAの発病に関与していることが示唆される。
【0086】
RA患者において、GLK発現T細胞の頻度は、以下のものと相関していた:圧痛関節数(r=0.500、p=0.005、
図19A);赤血球沈降速度(ESR;r=0.400、p=0.003、
図19B);C反応性タンパク質(CRP;r=0.330、p=0.015、
図19C);又は、28−関節疾患活動性スコア(DAS28;r=0.606、p=0.0005、
図19D)(表3)。単回帰において高い剰余(モジュラス>1)を示した4つの外れ値を除去した後、残りのRA患者の86パーセント(30のうちの26)は、GLK発現T細胞頻度とDAS28との間でより高い相関を示した(r=0.712、p=0.0000639、
図19E)。これらの結果によれば、GLKシグナル伝達は、RAの発病に重要な役割を果たすことが示唆される。表3は、登録された被験者のRA疾患活動性とGLK発現T細胞頻度との間のピアソン相関を示す。
【表3】
RA:慢性関節リウマチ;GLK:GCK−類似キナーゼ;TJC:圧痛関節数;SJC:腫脹関節数;DAS28:28関節疾患活動性スコア;ESR:赤血球沈降速度;CRP:C反応性タンパク質。
【0087】
この研究では、RA患者からの末梢血のT細胞および滑膜組織中にGLKが過剰発現していることを、我々は見いだした。GLK欠損は、マウスのCIAの進行を遅らせた。さらに、GLK発現T細胞の頻度は、RA疾患重症度と非常に相関しており、GLKがRAの発病に寄与していることが示された。この結果は、GLKは新しい診断バイオマーカであり、治療計画に対する潜在的な標的であるということを示唆している。
【0088】
ここ何年かの間、p38MAPKは、RAにおけるTh1/Th17介在慢性炎症の誘起および維持に重要であると考えられていたが、p38MAPKの抑制は、初期試験では顕著な成果を提供していない。GLKは、広く様々な人体組織の中に発現されるセリン/トレオニンキナーゼであり、また、MAPKシグナル伝達の上流側キナーゼである。我々の最近の研究では、GLKが、PKC−θを直接にリン酸化し活性化することにより、IKK−NF−κB経路を誘発することが実証されている。EAEおよびCIAモデルを用いた我々の研究および過去の報告では、GLK欠損マウスとPKC−θ欠損マウスの両方ともに、Th1/Th17が介在した自己免疫応答が低く示されており、これは、GLKシグナル伝達が自己免疫を制御することを示唆するものである。RA患者の末梢血および滑液からのT細胞中で、GLKはPKC−θと共に相互局在化した。さらに、GLK発現T細胞の大部分は、PKC−θ/IKK活性化された細胞であった。我々の知るところ、本研究は、T細胞中におけるGLK過剰発現およびPKC−θ/IKK過反応が、RA患者用の新しいバイオマーカになるという、最初の報告である。さらに、GLK陽性T細胞の頻度は、RA疾患活動性と正に相関し、これは、GLK−PKC−θ−IKK経路が、RAの発病学の中に重要な役割を果たしていることを示すものである。
【0089】
NF−κB経路のアップレギュレーションは、マトリックス分解酵素の合成に重要であり、これは、RAにおける骨侵食を引き起こすが、IKKの抑制が骨および軟骨を破壊から保護する。また、抗CD3−誘発NF−κBの活性化は、GLK過剰発現によって増強され、T細胞系中のGLK siRNAによって抑制される。これは、GLKを抑制することで、RAにおける炎症を軽減することができることを示唆するものである。RA患者に関して、T細胞(T
reg)機能の低下が報告されている一方、PKC−θの抑制が、RA患者から欠損T
reg活動性を回復させることも報告されている。GLK欠損マウスは、T
reg介在の抑制機能が増大されることを示している。したがって、GLK−PKC−θ経路は、T
reg機能をネガティブに調節する。これらをまとめれば、RA患者中のGLKを対立させることで、T細胞介在の免疫応答を低減でき、また、T
reg介在抑制機能を増大させることができるので、GLKがRAに対して有望な治療の標的であることが示唆される。
【0090】
この研究には、いくつかの制約がある。第1に、その設計は横断的であり、GLK発現に関して、薬理治療の影響を評価することを困難なものにしている。過去の報告によれば、グルココルチコイドがPKC−θシグナル伝達を抑制すること、および、TNF−α阻害剤がNF−κB調節遺伝子形質発現を低減することが示された。RA患者のT細胞中のGLK、PKC−θ、IKKまたはNF−κBの発現は、免疫抑制因子により低減されるが、GLKレベルは、まだ非常に高く、少なくとも86%のRA患者に疾患活動性で相関した。第2に、骨破壊および軟骨損傷の発病学におけるGLKの役割は、さらに定義が難しい。それにもかかわらず、我々の結果は、RA患者に対して、GLKと関節炎症との間の関連を実証するものである。
【0091】
我々の結果によれば、GLKがRAの発病に重要な役割を果たし、疾患重症度の潜在的な診断バイオマーカであることが示される。さらに、GLKおよびその下流PKC−θ−IKKシグナル伝達の抑制は、新しい治療の戦略をRAに対して提供することができる。
【0092】
III.胚中心キナーゼ(GCK)類似キナーゼ(GLK/MAP4K3)の発現は、成人発症型スティル病で増加し、活動性マーカとしての機能を果たすことができる
【0093】
GLKの発現の強さは、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者の疾患重症度に対応していることが示された。我々は、成人発症型スティル病(AOSD)の発病におけるGLKの役割を調べたが、これは、同様の臨床のいくつかの特性をSLEと共有する。
【0094】
[方法]
(被験者)
Yamaguchi基準を満たす対象の未治療のAOSDをもつ24人の継続的患者(女性15人および男性9人、平均年齢+/−SD、33.3+/−9.9年)を登録した。感染症、悪性腫瘍または別のリウマチ性疾患をもつ患者は排除した。各々のAOSD患者の疾患活動性スコア(範囲0〜12)を、Pouchotほかによって記載される基準に従って評価した。循環GLK発現T細胞およびTh17関連サイトカインのレベルを初期定量した後、全てのAOSD患者に対して、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬薬剤(NSAID)を受容させた。使用された疾患修正抗リウマチ薬剤(DMARD:Disease−Modifying Anti−Rheumatic Drug)は、メトトレキセート(20人の患者)、ヒドロキシクロロキン(18人の患者)、スルファサラジン(8人の患者)およびアザチオプリン(3人の患者)であった。リウマチ性疾患を有しない12人の年齢が整合する健康な志願者(8人の女性および4人の男性、平均年齢32.4+/−8.2年)が、正常対照者の役目を果たした。エンドトキシフリーなヘパリン化減圧チューブ(KABI−ET;クロモジェニックス社、アントワープ、ベルギー)を用いて末梢血を採取し、試料採集と培養との間の合間でサイトカインが生成されることを回避した。台中退役軍人総合病院の臨床研究倫理委員会は、この研究を承認し(No.C10130)、ヘルシンキ宣言によって全ての参加者から書面による同意を得た。
【0095】
(フローサイトメトリー分析を用いた循環GLK発現T細胞の計量)
最近の研究に記載される技術に基づき、フローサイトメトリー分析を用いて、循環GLK発現T細胞を定量した。ウサギに個々のペプチドで免疫性を与えることによって、GLK抗体を生成した。簡潔には、末梢血単核細胞(PBMC:Peripheral Blood Mononuclear Cell)を採取し、コ−ルドPBSで洗浄し、氷上で30分間、示された抗体で染色した。次いで、PBMCを、他の刺激なしで、ゴルジストップ(10μg/mlのブレフェルジンA、シグマ社、ドイツ)で処理し、その後、抗CD3−アロフィコシアニン[APC]−Cy7(BDファーミンゲン社)、抗CD4−パシフィックブルー(BDファーミンゲン社)、および抗CD8−ペリジニン・クロロフィル・タンパク(PerCP:Peridinin Chlorophyll Protein)シアニン5.5(Cy5.5:cyanin 5.5)(BDファーミンゲン社)を用いて、室温で染色した。細胞内染色のために、PBMCを、サイトフィクス/サイトパーム緩衝液(BDバイオサイエンス)200μlの中で2時間透過処理し、パームウォッシュ緩衝液で洗浄した。ペレットを、100μlの試薬2、サポニン(ベックマンコールター社、米国)を用いて、室温暗所で5分間培養した。サンプルを、0.1%のBSA−PBSで二度洗浄し、PE接合GLK特異mAb(eバイオサイエンス社、米国)で30分室温暗所において培養した。GLK染色には、室温暗所で、アイソタイプコントロールIgG1−PE(eバイオサイエンス社、米国)を用いた。染色後、細胞を洗浄し、その後直ちに、フローサイトメトリー(ベックマンコールター社、米国)を使って分析した。前方性およびサイズ散乱性に基づいてリンパ球をゲートし、少なくとも10,000個のCD3
+細胞を分析した。データは、FACSCantoIIフローサイトメーター(BDバイオサイエンス)を使って収集し、FlowJoソフトウェアによって分析した。
【0096】
(GLK発現ウェスタンブロッティング)
免疫ブロッティング分析のため、我々の最近の研究論文に記載されているように、精製T細胞のサンプリングを行った。GLKについて、実験の各セットからの細胞抽出物と等量を混合した反応液を、泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS)中で、6〜8%SDS−PAGEで分画した。30分、90Vでゲルを泳動し、その後、青色素の前端が底に到達するまで130Vをかけた。トランスブロットSDセミドライ電気泳動的トランスファーセル(バイオラド社、米国)を用いて、ゲルを21Vで1時間、転写バッファー(50mMトリス、384mMグリシン、20%メタノール)中の二フッ化ポリビニリデン膜(PVDF:Polyvinylidene Difluoride)に転写した。
【0097】
TBST(150mM NaCl、20mMトリス−HCl(pH 7.4)、0.1%のTween−20)中で、5%のBSAを用いて、膜を1時間室温でブロックした後、抗GLK(1:1000)で、4℃で1晩プローブ処理した。抗GLKは、適切なペプチドおよび抗β−チューブリン(1:1000、T4026、シグマ社、米国)を用いてウサギに免疫性を与えることにより生成されたものである。膜をTBSTで約3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ接合された第2の抗体(1:6000)と共に、1時間室温で培養した。抗体反応した膜を、TBSTで3回洗浄し、増強イモビロン・ウェスタン・ケミルミネッセントHRPサブストレート(WBKLS0500、ミリポア社、米国)を用いて処理を行い、新型メガカム810サイエンスグレードCCDカメラ(UVP、LLC、CA、米国)で撮影した。β−チューブリンに対してGLKタンパクの相対的な発現レベルを補正し、対照と相対的な値を示した。
【0098】
(GLK発現に対する定量PCR(qPCR:quantitative Polymerase Chain Reaction))
フィコール−パック(商標)プラス(GEヘルスケアバイオサイエンス社、スウェーデン)を用いて、密度勾配遠心分離により、静脈の血液から分PBMCを直接的に分離した。グアニジンイソチオシアネート方法によって、PBMCから全細胞RNAを得て、260nmの分光度測定により定量した。標準的な手順に従い、200Uのモロニーマウス白血病ウィルス・リバース・トランスクリプターゼ(ファーメンタス、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社、米国)を用いて、RNAアリコート2.5μgを逆転写した。タクマンPCRコア試薬キット(アプライドバイオシステムズ社、米国)に供給されているqPCRアッセイによって、GLK mRNA発現レベルを判定した。GLKおよび内部コントロールグリセリンアルデヒド−3−リン酸塩デヒドロゲナーゼ(GAPDH:Glyceraldehydes−3−Phosphate Dehydrogenase)に特異的なプライマーを、アプライドバイオシステムズ社(フォスター市、CA、米国)から入手した。解離曲線プロットによってPCR産物の純度を評価した。GLKのmRNAレベルを補正するために、各々のサンプルで並行して、ハウスキーピング遺伝子GAPDHの転写産物レベルを判定した。GLKの相対的な発現レベルを、比較閾値サイクル(Ct)法で計算し、2
-△△Ctによって評価した(△△Ct=患者(Ct
GLKgene−Ct
GAPDH)−対照者平均(Ct
GLKgene−Ct
GAPDH))。
【0099】
(可溶性のIL−2レセプター(sIL−2R)およびTh17関連サイトカインの血清レベルの定量)
ELISAキット(セルフリー;エンドジェン社、MA、米国)を使って、血清sIL−2Rレベルを判定した。製造業者(eバイオサイエンス社、サンディエゴ、CA、米国)のマニュアルに従い、酵素結合抗体免疫吸着アッセイを用いて、AOSD患者および健常対照者におけるIL−1β、IL−6、IL−17AおよびTNF−αの血清レベルを測定した。
【0100】
[統計学的分析]
結果は、平均+/−標準偏差または中央値(四分位数間領域)で示される。循環GLK発現T細胞の頻度、GLK転写産物およびタンパクの発現レベル、ならびに、Th17関連サイトカインの血清レベルについて、それぞれの群間比較を行うために、非母数のクラスカル・ワリス検定を使用した。この検定が顕著な差を示した時は、マンホイットニーU検定を使用して、正確なp値を判定した。非母数のスピアマンの順位相関試験を使って、相関係数を計算した。有効な治療の後のAOSD患者のフォローアップ中、循環GLK発現T細胞のレベルとGLKの発現レベルとを比較するため、ウイルコクソンの符号順位検定を用いた。その比較のためにウイルコクソンの符号順位検定を用いた。0.05未満の確率のときは、顕著であるとみなされた。
【0101】
[結果]
(AOSD患者の臨床の特性)
表4に示されるように、対象の未治療のAOSDを有する全ての24人の患者は、日常的にスパイク熱(≧39℃)を発症していた。別の通常の発現は、感知しにくい発疹(83.3%、20人)、咽頭炎(70.8%、17人)および関節炎(62.5%、15人)を含んでいた。リンパ節腫脹および肝脾腫大症は、それぞれ10人(41.7%)および6人(25.0%)の患者で見られた。この研究の登録者の年齢や、AOSD患者と健常対照者との間の女性の割合には、顕著な差はなかった。表4は、成人発症型スティル病(AOSD)および健常対照者(HC)で患者の人口統計学的データおよび臨床の特性を示す。
【表4】
データは、平均+/−SDまたは数(パーセンテージ)で表される;NA:適用なし。肝臓機能不全は、アラニンアミノ基転移酵素(ALT:Alanine Aminotransferase)レベル≧40IU/Lであると定義される。CRP:C反応性タンパク質。sIL−2R:可溶性のインターロイキン2レセプター。
【0102】
(AOSD患者中の循環GLK発現T細胞の頻度増加)
対象のAOSDを有する患者1人および健常対照者1人の、末梢血CD3
+T細胞、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞におけるGLK発現のフローサイトメトリー輪郭プロットの代表的な例が、それぞれ、
図20Aおよび20Bに示される。対象のAOSDの患者(中央値=31.85%、四分位[IQ]範囲21.21%〜48.84%)に観測された循環GLK発現CD3
+T細胞平均頻度は、健常対照者(中央値=8.93%、IQ範囲6.81%〜2.08%;p<0.001、
図20C)に比べて大変高かった。
【0103】
(AOSD患者のGLK転写産物およびタンパクの発現増加)
図20Dに示すように、健常対照者(中央値=0.92、IQ範囲0.63〜1.37;p<0.001)に比べて、対象のAOSD患者(中央値=2.35、IQ範囲1.66〜3.88)には、GLK転写産物の相対的な発現における何倍もの増加が観測された。同様に、対象のAOSD患者について、ウェスタンブロッティング(
図20E)によって判定される精製T細胞の溶解物中のGLKの発現が増加した。対象のAOSD患者におけるGLKタンパクの相対的な発現レベル(中央値=1.74、IQ範囲1.47〜2.95)は、対照者における発現レベル(中央値=0.66、IQ範囲0.54〜0.94;p<0.001、
図20F)に比べて著しく高かった。
【0104】
(AOSD患者におけるTh17関連サイトカインの血清レベルの上昇)
図21に示すように、対象のAOSD患者は、血清IL−6(中央値=474.81、IQ範囲156.42〜987.55)、IL−17A(中央値=306.80、IQ範囲152.17〜503.70)、およびTNF−α(中央値=51.85、IQ範囲23.63〜65.93)について、非常に高い中央値レベルを有し、これは、健常対照者(IL−6は中央値=85.78、IQ範囲31.13〜189.98、p<0.001;IL−17Aは中央値=70.90、IQ範囲51.42〜124.53、p<0.001;TNF−αは中央値=24.66、IQ範囲10.50〜37.76、p<0.01)と比較して顕著であった。しかしながら、血清IL−1βレベルについては、AOSD患者とHCとの間で顕著な差はなかった。
【0105】
(AOSD患者のサイトカインに加えてGLK発現と疾患活動性との間の相関)
【表5】
AOSD:成人発症型スティル病;CRP:C反応性タンパク質;sIL−2R:可溶性のインターロイキン2レセプター;IL−1β:インターロイキン−1β;IL−6:インターロイキン−6;IL−17A:インターロイキン−17A;TNF−α:腫瘍壊死因子−α。
*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001は、非母数のスピアマンの順位相関試験によって得られた。
【0106】
表5に示すように、循環GLK発現CD3
+T細胞の頻度は、臨床の活動性スコア、CRPレベル、フェリチンレベルおよびsIL−2Rの血清レベルを含む疾患活動性と正に相関し、これは、AOSD患者のT細胞活性化を反映したものである。同様に、GLKタンパクおよび転写産物の相対的な発現レベルは、AOSD患者の臨床の活動性スコアおよびsIL−2Rレベルに対して正に相関した。Th17関連サイトカインの中では、GLK発現レベルは、IL−6およびIL−17Aの血清レベルと正に相関した。しかしながら、GLK発現と我々のAOSD患者の臨床発現との間に顕著な相関はなかった(データ図示せず)。表5は、循環GLK発現T細胞の頻度が、GLKタンパクの相対的な発現レベル、GLK転写産物および疾患活動性パラメータおよびAOSDをもつ24人の患者のTh17関連サイトカインとの間で相関を有することを示す。
【0107】
(有効な治療後のAOSD患者におけるGLK発現レベルの変化)
12人のAOSD患者は、活性段階および寛解傾向段階の検査に利用可能であった。
図22に示すように、有効な治療後のAOSD患者において、循環GLK発現T細胞のレベルおよびGLKタンパクの相対的な発現レベルに加えて転写産物が、著しく低減され(平均+/−標準誤差、それぞれ、45.77+/−5.58対20.11+/−2.53;3.01+/−0.49対0.93+/−0.17;3.45+/−0.56対1.21+/−0.38、全てでp<0.005)、臨床の寛解傾向およびsIL−2Rの血清レベルの減少(747.8+/−131.8pg/ml対229.1+/−38.5pg/ml、p<0.005)と、平行している。
【0108】
本研究は、健常対照者に比べて、対象のAOSD患者でGLK過剰発現が生じていることを実証する最初の調査である。細胞内シグナリング分子のフローサイトメトリー分析が出現したことにより、不均質細胞群中で単一の細胞を研究する機会が一気に増えた。本研究では、CD4およびCD8部分集合を含むCD3
+T細胞が、対象のAOSDをもつ患者におけるGLK発現の増大を実証する。また、我々の結果では、AOSD患者において、循環GLK発現T細胞が非常に高い頻度で発生し、これは、臨床の活動性スコアや血清フェリチンレベルを含む疾患活動性と相関していることが示された。さらに、AOSD患者では、疾患寛解傾向に伴い平行にGLK生成も減少することが見いだされた。AOSD患者に関係しているこれらのデータは、SLE患者の活性度指数と相関する循環GLK発現T細胞の高いレベルが示されている我々の最近の研究の結果と同様であり、これは、GLK過剰発現はAOSD発病に重要な役割を果たしており、したがってAOSDの潜在的な活動性マーカになり得ることを示唆するものである。しかしながら、ここに記載した発見を確認するためには、大規模な予測研究を行う必要がある。
【0109】
AOSD患者中のタンパクおよび転写産物レベルでGLK発現を証明するため、対象の未治療のAOSDを有する我々の患者からの末梢血リンパ球に対して、GLK発現ウェスタンブロッティングおよびqPCRを実施した。AOSD患者において、GLKタンパク質および転写産物の相対的な発現レベルは、HCに比べて非常に高かったことを、我々は実証した。さらに、我々の研究において、循環GLK発現T細胞の頻度と、GLKタンパク質の発現レベルとの間の正の相関は、過去の研究の発見に合致しており、このことは、細胞内フローサイトメトリーとウェスタンブロッティングとは共に、MAPKシグナル伝達状態を測定する同様のアッセイであることを示している。さらに、転写産物と同様にGLKタンパク質の発現レベルは、我々のAOSD患者における臨床の活動性スコアと著しく相関した。これらのデータは、AOSD患者のT細胞においてGLK過剰発現の第一の直接的かつ確固とした証明を提供する。
【0110】
証明の累積により、Th17細胞は、AOSDおよびSLEの両方の発病に対して重要な役割を果たすことが示される。IL−6は、IL−1βと相乗作用し、Th17細胞の分化および発生を促進する。Th17細胞は、多面的なサイトカイン、IL−17を分泌することができ、これは、炎症誘発性のサイトカインおよびケモカインの発現を誘発することによって組織炎症に寄与する。我々の最近の研究では、GLK欠損マウスは、EAEの進展に耐性を示し、Th17応答を低減させたことが示された。インビトロT細胞分化アッセイからの結果は、GLKが、Th17細胞分化にポジティブな役割を果たすことを示している。本研究での結果は、Th17関連サイトカイン、IL−6およびIL−17Aの血清レベルが向上することを示し、これは、AOSD患者からのT細胞の中にGLKの発現レベルと相関した。我々のデータも、過去の発見を支持し、MAPK経路は、Th17細胞機能の調節に重要な役割を果たし、かつ、IL−17生成は、MAPKに依存する機構が介在することを示している。さらに、MAPKの抑制により、Vogt−Koyanagi−Harada症候群におけるIL−17生成を抑制することができ、かつ、Th17介在自己免疫性疾患、EAEを低減できる。これらの観測によれば、GLK過剰発現あるいはMAPKシグナル伝達が、Th17関連サイトカインの生成に寄与できることが示唆される。しかしながら、GLKアップレギュレーションは、AOSDの発病の最初の現象よりむしろ炎症の随伴現象を代表する可能性が、まだ存在する。
【0111】
我々は、AOSD患者に対する長期的なフォローアップを行い、循環GLK発現T細胞のレベルだけでなく、GLKタンパク質および転写産物の発現レベルも著しく減少することを示し、これは、臨床の寛解傾向と平行的であり、また、有効な治療後の炎症性のパラメータの減少とも平行的である(
図23)。我々の結果は、さらに上流側のMAPKシグナル伝達経路の阻害剤、例えばMAP2K(MKK3またはMKK6)およびMAP3K(形質転換成長因子活性化キナーゼ1、TAK1)が、リウマチ性疾患に対する有望な治療の方法を与えることができるという仮説を支持するものである。上流側MAPキナーゼとしてのGLKはまた、下流側MAPKまたは数個のp38アイソフォームを広く抑制することにより、潜在的な治療の戦略を目標とできる。さらに、抑制すると大きな毒作用を示すp38MAPK等の下流側分子に比べて、上流側シグナル伝達分子は、良い標的とすることができる。
【0112】
AOSDのIL−1βレベルが上昇し、IL−1βレセプターアンタゴニスト(アナキンラ)が炎症性疾患の治療に大きな助けとなるということを報告した研究があるが、我々の結果によれば、AOSD患者と健康体との間には、IL−1βレベルの顕著な差を示さなかった。
【0113】
我々の結果は、Th17関連サイトカインのレベルを増加させることによるGLK過剰発現が、AOSDの発症メカニズムに関与できることを、明らかにした。我々のデータは、GLK過剰発現と炎症性疾患のリストとの間に関連があるということを支持する証拠に加えられる。また、我々の結果において、GLK発現レベルは、AOSDの疾患活動性と正に相関し、これは、GLKが、新しい活動性バイオマーカおよび潜在的な治療の標的として用いる事ができることを示している。
【0114】
IV.GLK診断バイオマーカ
SLE患者の他に、7人の付加的な自己免疫性疾患からの患者サンプルでは、末梢血T細胞のGLK発現が、劇的に増加したことが示された(表6、
図24〜26)。上記で開示されるように、GLK発現は、RAおよびAOSDの疾患重症度と相関した。GLK過剰発現T細胞が、RA患者からの滑膜組織中で検出された。
【0115】
我々のデータによれば、GLK過剰発現末梢血T細胞が、SLE患者中の全てのIL−17生成細胞であったことが示された(
図27)。自己免疫発病におけるGLKの制御作用を研究するため、我々はさらに、Lck−GLKと呼ばれるT細胞特異GLKトランスジェニック(Tg)マウスを生み出した。Lck−GLK Tgマウスは、多数の自己免疫性疾患を自発的に発達させ、血清IL−17およびSLE/慢性関節リウマチ自己抗体が増加していた(
図28および29)。Lck−GLK Tgマウスは、慢性関節リウマチおよび多発性硬化症のフェノタイプを表した。T細胞中のIL−17転写は、トランスジェニックGLKによって誘発された(
図29)。LCK−GLK Tgマウスのこれらの結果によれば、GLK−PKCθ−IKK−IL−17軸の活性化が、自己免疫性疾患に貢献することが示唆される。
【0116】
したがって、GLKは、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、成人発症型スティル病、グレーブス病、シェーグレン症候群、神経脊髄炎、強直性脊椎炎および脱毛症を含む多数の自己免疫性疾患の診断バイオマーカおよび治療の標的となる。
【0117】
腫瘍形成に関与するNF−κB活性化をGLKが誘発することから、我々は、癌腫サンプル中のGLK発現を研究した。我々の最近のデータによれば、ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)、食道癌、膠芽細胞腫、膵管腺癌、乳癌および肝癌中のGLK発現が著しく増加したことが示された(
図30〜35)。mTORではなく、IKKの活性化が、NSCLCにおいて増大した(
図30)。これらのデータによれば、GLKが、mTORから独立した経路を通じて、腫瘍形成に寄与することが示唆される。さらに、腫瘍部分におけるGLK過剰発現は、NSCLC患者では、早期の再発(すなわち末端の転移)とよく相関した(P=0.009;
図36)。我々のデータによれば、GLK過剰発現が腫瘍形成および腫瘍転移を誘発したことが示された(
図37)。したがって、GLKは、多様な癌、例えば肺癌、食道癌、膠芽細胞腫、膵臓癌、乳癌および肝癌に対する新しいバイオマーカおよび治療の標的である。
【0118】
これらをまとめれば、我々のデータによれば、GLKは、自己免疫炎症疾患および癌に対して、新しいバイオマーカおよび治療の標的であることが示された。細胞がGLKを過剰発現させる自己免疫炎症性の疾患/癌の患者に対する治療法として、将来開発されるGLK阻害剤を用いることができるであろう。
【0119】
[結論]
1.GLKは、多様な自己免疫性疾患の新しいバイオマーカである
SLE、慢性関節リウマチおよび成人発症型スティル病患者のT細胞中におけるGLK過剰発現の他、シェーグレン症候群、神経脊髄炎、強直性脊椎炎および脱毛症のT細胞の中にも、GLK過剰発現は見いだされた(
図24)。我々はまた、薬剤未感作なグレーブス病(GD)患者からのT細胞、および、部分的な抗甲状せん治療を受けたが未だ甲状腺中毒の状態にある患者からのT細胞中に、GLKが過剰発現したことを見いだした。これは、フローサイトメトリー、免疫ブロッティングおよび定量PCR法(qPCR)によって判定された(
図25および26)。GLKタンパクレベルおよびmRNAレベルは、GD患者からのT細胞中で上昇した(
図25)。我々の結果によれば、GLK過剰発現は、自己免疫性疾患の発病および重症度に寄与し、自己免疫性疾患の新しいバイオマーカであることが示唆される。表6は、GLKの介在した自己免疫性疾患および癌を示す。
【0120】
2. GLKは、T細胞中のIL−17生成を誘発する
自己免疫の発病におけるGLKの制御作用を研究するため、我々はさらに、T細胞に特異的な促進因子Lckを用いて、T細胞に特異的なGLKトランスジェニックの(Tg)マウスを生成した。血清自己抗体および血清IL−17の特異的な増加により、Lck−GLK Tgマウスは、自発的に多様な自己免疫性疾患を進展させた(
図27〜29)。これらの発見は、GLK−PKCθ−IKK−IL−17軸の活性化は、自己免疫性疾患に寄与することを示唆する。高レベルのGLK遺伝子導入を発現するLck−GLK−Tgマウス(8週齢)は、血清IL−17Aレベルの急激な誘起を示した。IL−17A mRNAレベルは、トランスジェニックGLKによって上昇した(
図29)。これらの結果によれば、GLKがT細胞中のIL−17A生成をプラスに調節するという、SLE患者の我々のデータをさらに裏付けることになる。
【表6】
【0121】
3.多様なタイプの癌におけるGLK過剰発現
肺癌患者において正常な部分と比較して腫瘍部分中で、GLKタンパクレベルが上昇した(85.7%)。食道癌患者において正常な部分と比較して腫瘍部分中で、GLKタンパクレベルが上昇した(58%)。また、膠芽細胞腫、膵臓癌、乳癌および肝癌中においても、GLKが過剰発現した。
【0122】
本発明の例示的な実施形態に関しての前述の説明は、例示および説明の目的にのみ提示されるものであり、本発明を網羅的とするものでもなければ、開示された形態に厳密に限定するものでもない。様々な変形および変更が、上記の教示を考慮した上で可能である。